説明

空気圧縮機の廃熱利用装置

【課題】空気圧縮機から吐出される圧縮空気の保有熱を効率良く回収し、回収した熱エネルギーを空気圧縮機の消費電力節減に利用可能にする。
【解決手段】オイルフリー型空気圧縮機16の吐出経路12と低沸点媒体が循環する循環経路14とを備え、循環経路14に圧縮空気の保有熱で低沸点媒体を加熱し蒸発させる蒸発器22と、蒸発器22の上流側で圧縮空気の保有熱で低沸点媒体を余熱するプレヒータ24とを備えている。蒸発器22で蒸発し高圧となった低沸点媒体でスクロール型膨張機30を回転させ、スクロール型膨張機30の回転軸に接続された発電機36で発電させる。スクロール型膨張機30を出た低沸点媒体を凝縮器32で冷却し凝縮させる。発電機36で発電した電力でオイルフリー型空気圧縮機16の消費電力を補う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気の保有熱を有効利用して、空気圧縮機の消費電力を節減するようにした空気圧縮機の廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機から吐出される圧縮空気は、例えば200℃もの高温に達するため、特許文献1に開示されているように、冷却水を用いたアフタークーラで冷却したり、さらには、冷媒を用いた冷凍式ドライヤで冷却し、圧縮空気に含まれる水分を凝縮させ分離して使用している。空気圧縮機本体は水冷、空冷等の手段で過熱を防止している。空気圧縮機は、一般的な工場で最も消費電力が大きな機械のひとつであり、工場の消費電力のうち大きな割合を占めている。そのため、空気圧縮機の消費電力の節減が望まれている。
【0003】
特許文献1には、冷凍式ドライヤの下流側で、アフタークーラで圧縮空気を冷却して加熱された冷却水を用いて圧縮空気を再加熱するリヒータを設けた構成が開示されている。冷凍式ドライヤで冷却しすぎた圧縮空気をリヒータで再加熱し、圧縮空気の圧力を再上昇させることで、空気圧縮機の負荷を低減し、空気圧縮機の消費電力を軽減している。特許文献1には、さらに、リヒータで消費しきれなかった熱エネルギーを含む冷却水をボイラ設備に送って利用するようにした構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、オイルフリー型空気圧縮機から吐出した圧縮空気と給水との間で熱交換し、該給水を蒸発させて蒸気を発生させる排熱ボイラを設け、圧縮空気の熱を蒸気エネルギーとして回収する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−101184号公報
【特許文献2】特開2010−270729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された消費電力節減手段は、アフタークーラで圧縮空気と冷却水との一次熱交換で冷却水に吸収した熱を、リヒータで二次熱交換して、圧縮空気に戻すという2度の熱交換を経ているので、熱回収率が低下するという問題がある。また、特許文献1及び特許文献2では、圧縮空気の保有熱をボイラで蒸気エネルギーとして回収しているが、蒸気エネルギーとして回収しても、直接的に空気圧縮機の消費電力節減に結びつかないという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、空気圧縮機から吐出される圧縮空気の保有熱を効率良く回収し、回収した熱エネルギーを空気圧縮機の消費電力節減に利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明の空気圧縮機の廃熱利用装置は、空気圧縮機と、該空気圧縮機の吐出経路と、低沸点媒体が循環する循環経路と、吐出経路及び循環経路に介設され、空気圧縮機から吐出した圧縮空気又は該圧縮空気に含まれる潤滑油と低沸点媒体とを熱交換させ、低沸点媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発した低沸点媒体が導入され、低沸点媒体によって回転力を付与される膨張機と、該膨張機から吐出した低沸点媒体を冷却して凝縮させる凝縮器とを備え、膨張機に発生した回転力によって空気圧縮機の動力を軽減するように構成したものである。
【0009】
本発明装置では、空気圧縮機から吐出される圧縮空気の保有熱で低沸点媒体を蒸発させ、蒸発した低沸点媒体で膨張機を稼働させるようにしている。そのため、圧縮空気の保有熱を効率良く膨張機の回転動力に変換できる。低沸点媒体として、例えば、ペンタン、アンモニア等を用いることができる。また、空気圧縮機として、例えば、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機、クロー圧縮機、レシプロ圧縮機等を用いることができる。
【0010】
低沸点媒体によって回転する膨張機の回転軸に発電機を接続すれば、電力を発生でき、この電力を使うことで、空気圧縮機の消費電力を節減できる。あるいは膨張機の回転軸を空気圧縮機の駆動モータの出力軸に接続することで、空気圧縮機の回転トルクを低減でき、これによって、空気圧縮機の消費電力を節減できる。
【0011】
空気圧縮機がオイルフリー型空気圧縮機の場合、空気圧縮機から吐出した圧縮空気を熱源として用い、圧縮空気の保有熱で低沸点媒体を蒸発させる。空気圧縮機がオイル使用圧縮機の場合、圧縮熱を保有し、圧縮空気から油分離器で分離した潤滑油の保有熱で低沸点媒体を蒸発させる。
【0012】
本発明装置において、空気圧縮機がオイルフリー型空気圧縮機である場合、潤滑油によって冷却されない高温の圧縮空気を蒸発器に導入できる。そのため、低沸点媒体に供給する熱量を増大できるので、膨張機で回収できる動力を増大できる。空気圧縮機がオイル式空気圧縮機である場合、圧縮空気が潤滑油で冷却されるため、圧縮空気の温度がオイルフリー型のように高くならない。それでも潤滑油は100℃前後の温度となるので、この温度で十分低沸点媒体を蒸発させることができる。そのため、膨張機によって動力を回収し、空気圧縮機の消費電力を節減できる。
【0013】
本発明装置において、空気圧縮機の吐出経路及び低沸点媒体の循環経路に介設され、蒸発器で熱交換された後の圧縮空気又は該圧縮空気に含まれる潤滑油で、該蒸発器で熱交換される前の低沸点媒体を余熱するプレヒータを備えているとよい。該プレヒータを備えることで、蒸発器の負荷を軽減できると共に、低沸点媒体を圧縮空気で段階的に加熱することで、圧縮空気と低沸点媒体との熱交換効率を向上できる。
【0014】
本発明装置において、低沸点媒体の循環経路に介設され、低沸点媒体を循環させる循環ポンプと、空気圧縮機の吐出経路から分岐し循環ポンプに導設された分岐路と備え、該分岐路から循環ポンプに圧縮空気を導入し、圧縮空気によって循環ポンプを駆動するように構成するとよい。これによって、圧縮空気の一部を利用して循環ポンプの動力を不要にでき、その分消費電力を軽減できる。
【0015】
本発明装置において、空気圧縮機の吐出経路に介設されたアフタークーラと、該アフタークーラから冷却媒体を凝縮器に導入する冷却媒体導入路とを備え、凝縮器で該冷却媒体によって低沸点媒体を冷却するように構成するとよい。該アフタークーラは、特許文献1に開示されているような冷凍式ドライヤであってもよい。冷凍式ドライヤは、冷凍サイクルを構成する冷凍装置で冷媒を冷却し、この冷媒を用いて圧縮空気を冷却する。この場合、凝縮器に導入される冷却媒体は、該冷媒であってもよいし、該冷媒と熱交換して冷却されたブラインであってもよいし、あるいは該冷媒又は該ブラインと熱交換して冷却された冷却水、外気等であってもよい。
【0016】
本発明装置において、構成機器が単一のハウジング内に収容され、該ハウジングに外気導入口及び外気排出口が設けられ、凝縮器は、外気流形成装置と、外気流で低沸点媒体を冷却する熱交換器とを備えており、外気流形成装置で外気導入口から外気を導入し、ハウジングの内部で該熱交換器を通って低沸点媒体を冷却し、外気排出口から排出する外気流を形成させるようにするとよい。この外気流形成装置は、例えば、空気ブロアや送風機等であり、ハウジング内に形成した外気流によって凝縮器の低沸点媒体を冷却すると共に、空気圧縮機を含む構成機器の冷却及び換気を行うことができる。これによって、別途構成機器の冷却装置を設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明装置によれば、空気圧縮機の吐出経路及び低沸点媒体の循環経路に介設された蒸発器で、空気圧縮機から吐出した圧縮空気又は該圧縮空気に含まれる潤滑油と低沸点媒体とを熱交換させ、低沸点媒体を蒸発させ、蒸発した低沸点媒体を膨張機に導入して膨張機を作動させるようにしたので、空気圧縮機から吐出する圧縮空気の保有熱を効率良く膨張機の動力として回収できると共に、回収した動力で空気圧縮機の消費電力を節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【図2】本発明装置の第2実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【図3】本発明装置の第3実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【図4】本発明装置の第4実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【図5】前記第4実施形態の変形例を示す系統図である。
【図6】本発明装置の第5実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【図7】本発明装置の第6実施形態に係る廃熱利用装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0020】
(実施形態1)
本発明装置をオイルフリー型空気圧縮機に適用した第1実施形態を図1によって説明する。図1に示す本実施形態の廃熱利用装置10Aは、圧縮機の吐出経路12と、低沸点媒体の循環経路14、及びこれら経路に介設された機器類とで構成されている。駆動モータ18によってオイルフリー型空気圧縮機16が駆動され、オイルフリー型空気圧縮機16の駆動によって、エアフィルタ20を介して外気aが吸引される。オイルフリー型空気圧縮機16から吐出した圧縮空気は、蒸発器22及びプレヒータ24を経て、エアレシーバ26に一旦貯留された後、需要先に供給される。
【0021】
一方、循環経路14は、蒸発器22及びプレヒータ24に接続されると共に、循環ポンプ28、スクロール型膨張機30及び凝縮器32が介設されている。低沸点媒体は、循環ポンプ28によって循環経路14内を矢印方向へ循環する。凝縮器32は外気流と低沸点媒体とを熱交換させる熱交換器を構成している。凝縮器32にファン34が付設されており、ファン34によって外気流a0が形成される。この外気流a0によって凝縮器32を流れる低沸点媒体を冷却し凝縮させる。スクロール型膨張機30の回転軸には発電機36が接続され、スクロール型膨張機30の回転によって電力が発生するように構成されている。
【0022】
オイルフリー型空気圧縮機16は、例えば、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機、クロー圧縮機、レシプロ式圧縮機等が用いられる。低沸点媒体は、例えば、ペンタンや、アンモニア等の冷媒が用いられる。図中の各領域に、廃熱利用装置10Aの理解の助けとするため、一例として、圧縮空気及び低沸点媒体の温度値及び圧力値を記している。この圧力値はすべてゲージ圧力である。
【0023】
かかる構成において、低沸点媒体は、蒸発器22で、オイルフリー型空気圧縮機16から吐出された高温高圧の圧縮空気と熱交換し、加熱されて蒸発する。但し、その前に、低沸点媒体は、プレヒータ24で、蒸発器22から出た圧縮空気によって余熱される。こうして、2段階で低沸点媒体を加熱することで、蒸発器22の負荷を軽減すると共に、熱交換効率を向上させている。蒸発して高圧となった低沸点媒体は、スクロール型膨張機30に導入され、膨張機30を回転させながら減圧する。スクロール型膨張機30が回転することで、発電機36で電力が発生する。スクロール型膨張機30から大気圧で流出した低沸点媒体は、凝縮器32で外気流a0で冷却され凝縮する。凝縮した低沸点媒体は、循環ポンプ28で再びプレヒータ24に導入される。
【0024】
本実施形態によれば、オイルフリー型空気圧縮機16から吐出される圧縮空気の保有熱で低沸点媒体を蒸発させ、蒸発して高圧になった低沸点媒体でスクロール型膨張機30を回転させ、電力を発生させるので、圧縮空気の保有熱を効率良くスクロール型膨張機30の回転動力に変換できる。そして、発電機36で電力を発生できるので、オイルフリー型空気圧縮機16の消費電力を節減できる。また、オイルフリー型空気圧縮機16を用いているので、潤滑油で冷却されない高温の圧縮空気を発生できる。その圧縮空気で低沸点媒体を加熱するので、低沸点媒体との熱交換量を増加でき、低沸点媒体の蒸発量を増加できる。そのため、スクロール型膨張機30の回転速度を増大でき、発電量を増大できる。
【0025】
また、プレヒータ24及び蒸発器22で低沸点媒体を2段階に亘って加熱しているので、蒸発器22の負荷を軽減できると共に、圧縮空気と低沸点媒体との間の熱交換効率を向上できる。
【0026】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図2により説明する。本実施形態の廃熱利用装置10Bは、オイルフリー型空気圧縮機16とスクロール型膨張機30とを駆動モータ18の単一の出力軸18aに接続したものである。その他の構成は前記第1実施形態と同一である。本実施形態では、低沸点媒体によってスクロール型膨張機30が回転することで、オイルフリー型空気圧縮機16の回転トルクを低減できる。
【0027】
本実施形態によれば、オイルフリー型空気圧縮機16の回転トルクを低減することで、オイルフリー型空気圧縮機16の消費電力を節減できる。また、オイルフリー型空気圧縮機16を用いているため、低沸点媒体の蒸発量を増加でき、そのため、スクロール型膨張機30の回転速度を増大できるので、オイルフリー型空気圧縮機16の回転トルクの低減量を増大できる。
【0028】
(実施形態3)
次に、本発明装置の第3実施形態を図3により説明する。本実施形態の廃熱利用装置10Cは、プレヒータ24の下流側吐出経路12aに分岐路38を設け、分岐路38を循環ポンプ28に導設している。分岐路38から圧縮空気の一部を循環ポンプ28に導入し、循環ポンプ28の駆動力として使用する。使用後の圧縮空気cは、循環ポンプ28に設けられた排出路40から排出される。その他の構成は前記第1実施形態と同一である。
【0029】
本実施形態によれば、圧縮空気の一部を循環ポンプ28に導入し、循環ポンプ28の駆動力として使用するので、循環ポンプ28の動力を不要にできる。
【0030】
(実施形態4)
次に、本発明装置の第4実施形態を図4により説明する。本実施形態の廃熱利用装置10Dは、プレヒータ24の下流側であってエアレシーバ26の上流側吐出経路12aに、冷凍式ドライヤ42が設けられている。冷凍式ドライヤ42と凝縮器32との間に、冷凍式ドライヤ42で冷却された冷媒又はブラインの循環路44が配設されている。凝縮器32は、循環路44から流入する冷媒又はブラインと低沸点媒体とを熱交換する熱交換器の構造をしている。その他の構成は前記第3実施形態と同一である。
【0031】
かかる構成において、冷凍式ドライヤ42から低温の冷媒又は該冷媒と熱交換して冷却されたブライン、あるいは冷媒又はブラインと熱交換して冷却された冷却水又は外気が、循環路44から凝縮器32に導入される。凝縮器32で、低沸点媒体がこれらの冷却媒体で冷却され凝縮する。低沸点媒体の冷却に供した後の冷却媒体は、循環路44を経て冷凍式ドライヤ42に戻され、再び冷却される。本実施形態によれば、冷凍式ドライヤ42にから凝縮器32に冷却媒体を送ることで、低沸点媒体の冷却効果を向上できる。
【0032】
次に、前記第4実施形態の変形例を図5により説明する。本変形例は、図示された部位の構成以外は、前記第4実施形態と同一の構成をしている。本変形例の凝縮器32は、第1実施形態と同様な構成をなしている。即ち、外気aを導入するファン34が付設され、外気流aと低沸点媒体とを熱交換させる熱交換器を構成している。また、凝縮器32とファン34との間に熱交換器46が配設されている。冷凍式ドライヤ42と熱交換器46との間に冷却媒体の循環路44が設けられ、熱交換器46に第4実施形態と同様の冷却媒体が供給される。
【0033】
かかる構成において、ファン34によって熱交換器46及び凝縮器32に向けて外気aが導入され、熱交換器46は、該冷却媒体によって外気aを冷却し、冷却された外気aが凝縮器32を流れる低沸点媒体を冷却する。このように、熱交換器46を追設することで、凝縮器32を流れる外気aの温度を予め下げることができるので、低沸点媒体の冷却効果を向上できる。
【0034】
(実施形態5)
次に、本発明装置の第5実施形態を図6により説明する。本実施形態の廃熱利用装置10Eは、オイルフリー型空気圧縮機16と駆動モータ18、冷凍式ドライヤ42より上流側の吐出経路12a、及び廃熱利用装置を構成する循環路44、蒸発器22、プレヒータ24、凝縮器32、熱交換器46が単一のハウジング48の内部に収容された圧縮機ユニットを構成している。ハウジング48には、凝縮器近傍の側壁に外気導入口48aが設けられ、外気導入口48aと反対側で、オイルフリー型空気圧縮機近傍の側壁に、外気排出口48bが設けられている。外気導入口48aに面してファン34が配置されている。その他の構成は前記第4実施形態の変形例(図5)と同一である。
【0035】
かかる構成において、ファン34によって外気導入口48aから外気aが導入される。外気aは、熱交換器46で冷却され、冷却された外気aが凝縮器32で低沸点媒体を冷却して凝縮させる。外気導入口48aから導入された外気aは、ハウジング48の内部で外気流a0を形成する。外気流a0は、オイルフリー型空気圧縮機16を始め、ハウジング48内の各機器を冷却し、その後外気排出口48bから流出する。
【0036】
こうして、本実施形態によれば、ハウジング48内に導入され、熱交換器46で冷却された外気aで低沸点媒体を冷却し凝縮させるほか、ハウジング48内に形成された外気流a0で、ハウジング48内を換気する。また、外気流a0でハウジング48内の機器類、特に高温になっているオイルフリー型空気圧縮機16を冷却できるので、別途特別な冷却装置が不要となる。
【0037】
(実施形態6)
次に、本発明をオイル式空気圧縮機に適用した第6実施形態を図7により説明する。本実施形態の廃熱利用装置10Fは、オイル式空気圧縮機50にオイル経路52から潤滑油が供給される。吐出経路12には潤滑油を含む圧縮空気が吐出される。圧縮空気は冷却作用をもつ潤滑油を含むため、オイルフリー型空気圧縮機と比べて低温になっている。吐出経路12に油分離器54が設けられている。油分離器54で潤滑油が分離された圧縮空気は、冷却水等を用いたアフタークーラ55で冷却された後、エアレシーバ26に一時貯留され、その後、需要先に供給される。
【0038】
圧縮空気から分離された潤滑油は、オイル経路56を通って蒸発器22に送られ、蒸発器22で低沸点媒体を加熱し、低沸点媒体を蒸発させる。蒸発器22の上流側のオイル経路56に温度調整用の三方弁58が介設されている。三方弁58で潤滑油の一部がオイル経路60に分流される。これによって、蒸発器22に導入される潤滑油量を調整することで、蒸発器22における低温運転を防止し、潤滑油の乳化を防止する。プレヒータ24で低沸点媒体は潤滑油によって余熱される。プレヒータ24の下流側でオイル経路56はオイル経路60と共にオイル経路52に合流している。オイル経路52にオイルフィルタ62が介設され、オイル経路52及び60を流れ、オイル経路52に流入した潤滑油は、オイルフィルタ62でゴミ等を除去され、オイル式空気圧縮機50に流入する。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0039】
本実施形態によれば、圧縮空気を冷却して大量の熱量を含む潤滑油を蒸発器22及びプレヒータ24に導入することで、低沸点媒体を蒸発させ、高圧にしてスクロール型膨張機30に導入できる。そのため、スクロール型膨張機30を回転させて発電機36で発電できる。従って、オイル式空気圧縮機であっても、圧縮空気の保有熱を利用して空気圧縮機の消費電力を節減できる。
【0040】
オイル式空気圧縮機を用いた場合、第2実施形態(図2)のように、オイル式空気圧縮機の駆動モータ18の出力軸18aに膨張機30を接続し、低沸点媒体で膨張機30を回転させることで、オイル式空気圧縮機の回転トルクを低減するようにしてもよい。この例では、オイル式空気圧縮機の回転トルクを低減することで、オイル式空気圧縮機の消費電力を節減できる。
【0041】
また、オイル式空気圧縮機を用いた場合、第3実施形態(図3)のように、プレヒータ24の下流側吐出経路12aに分岐路38を設け、分岐路38を循環ポンプ28に導設するようにしてもよい。この例では、圧縮空気の一部で循環ポンプ28を駆動し、循環ポンプ28を駆動した後の圧縮空気cを排出路40から排出する。そのため、圧縮空気の一部を用いて循環ポンプ28を駆動できるので、循環ポンプ28の動力が不要になる。
【0042】
また、オイル式空気圧縮機を用いた場合、第4実施形態(図4)のように、プレヒータ24の下流側でかつエアレシーバ26の上流側の吐出経路12aに、冷凍式ドライヤ42を設け、冷凍式ドライヤ42で冷却された冷却媒体を凝縮器32に導入し、低沸点媒体を冷却するようにしてもよい。これによって、凝縮器32での低沸点媒体の冷却効果を向上できる。
【0043】
また、オイル式空気圧縮機を用いる場合、第4実施形態の変形例(図5)のように、冷凍式ドライヤ42の設置に加えて、凝縮器32、熱交換器46及びファン34を並設した構成としてもよい。これによって、熱交換器46は、冷凍式ドライヤ42から送られる冷却媒体で外気aを冷却し、この冷却された外気aにより凝縮器32を流れる低沸点媒体を冷却するので、低沸点媒体の冷却効果を向上できる。
【0044】
また、オイル式空気圧縮機を用いる場合、第5実施形態(図6)のように、単一のハウジング48の内部に、オイル式空気圧縮機を含む各構成機器を収容し、凝縮器32近傍のハウジング側壁に外気導入口48aを設けると共に、外気導入口48aと反対側で、オイル式空気圧縮機近傍の側壁に外気排出口48bを設けるようにしてもよい。外気導入口48aに面して設けたファン34で外気導入口48aから外気aを導入し、ハウジング48の内部に外気流a0を形成する。この外気流a0によって凝縮器32の低沸点媒体を冷却すると共に、ハウジング48内の換気と、オイル式空気圧縮機を含む各構成機器の冷却を行うようにする。これによって、別途特別な冷却装置が不要になる。
【0045】
さらに、オイル式空気圧縮機を用いる場合、第1実施形態から第5実施形態までの構成を任意に組み合わせた構成としてもよい。これによって、各実施形態で得られる作用効果を相乗的に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、空気圧縮機から吐出される圧縮空気の保有熱を効率良く回収し、回収した熱エネルギーを空気圧縮機の消費電力節減に利用可能になる。
【符号の説明】
【0047】
10A、10B、10C、10D、10E,10F 廃熱利用装置
12、12a 吐出経路
14 循環経路
16 オイルフリー型空気圧縮機
18 駆動モータ
18a 出力軸
20 エアフィルタ
22 蒸発器
24 プレヒータ
26 エアレシーバ
30 スクロール型膨張機
32 凝縮器
34 ファン
36 発電機
38 分岐路
40 排出路
42 冷凍式ドライヤ
44 循環路
46 熱交換器
48 ハウジング
48a 外気導入口
48b 外気排出口
50 オイル式空気圧縮機
52、56、60 オイル経路
54 油分離器
55 アフタークーラ
58 三方弁
62 オイルフィルタ
a 外気
a0 外気流
c 圧縮空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機と、該空気圧縮機の吐出経路と、低沸点媒体が循環する循環経路と、前記吐出経路及び前記循環経路に介設され、前記空気圧縮機から吐出した圧縮空気又は該圧縮空気に含まれる潤滑油と低沸点媒体とを熱交換させ、低沸点媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発した低沸点媒体が導入され、低沸点媒体によって回転力を付与される膨張機と、該膨張機から吐出した低沸点媒体を冷却して凝縮させる凝縮器とを備え、
前記膨張機に発生した回転力によって前記空気圧縮機の動力を軽減するように構成したことを特徴とする空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項2】
前記吐出経路及び前記循環経路に介設され、前記蒸発器で熱交換された後の圧縮空気又は該圧縮空気に含まれる潤滑油で、該蒸発器で熱交換される前の低沸点媒体を余熱するプレヒータを備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記循環経路に介設され、低沸点媒体を循環させる循環ポンプと、前記吐出経路から分岐し前記循環ポンプに導設された分岐路と備え、
該分岐路から前記循環ポンプに圧縮空気を導入し、圧縮空気によって前記循環ポンプを駆動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記蒸発器又は前記プレヒータより下流側の前記吐出経路に介設されたアフタークーラと、該アフタークーラから冷却媒体を前記凝縮器に導入する冷却媒体導入路とを備え、
前記凝縮器は、前記冷却媒体によって前記低沸点媒体を冷却する熱交換器で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項5】
構成機器が単一のハウジング内に収容され、該ハウジングに外気導入口及び外気排出口が設けられ、
前記凝縮器は、外気流形成装置と、外気流で前記低沸点媒体を冷却する熱交換器とを備えており、
前記外気流形成装置で前記外気導入口から外気を導入し、前記ハウジングの内部で前記熱交換器を通り、前記外気排出口から排出する外気流を形成させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記空気圧縮機がオイルフリー型空気圧縮機であり、前記蒸発器でオイルフリー型空気圧縮機から吐出した圧縮空気との熱交換で前記低沸点媒体を蒸発させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記膨張機に回転軸を介して発電機を接続し、膨張機の回転力で前記発電機を駆動し発電させるように構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記膨張機の回転軸を前記空気圧縮機を駆動するモータの出力軸に接続し、膨張機の回転によって空気圧縮機の回転トルクを低減させるように構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の空気圧縮機の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64350(P2013−64350A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203104(P2011−203104)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】