空気溜りのシミュレーション方法及びシミュレーションプログラム
【課題】実際の浸漬工程に近い状態での空気溜りの評価を可能とする。
【解決手段】対象物の表面形状のデータを複数の要素に分割して数値計算のための解析モデルを構築し(S1)、重力方向、初期条件を設定すると(S2,S3)、エアポケット判定計算処理を実施し、気液境界線を検出する(S4)。次に、気液境界線の高さHに修正高さΔHを加算して境界線を修正し(S5)、ポスト処理を実行する(S6)。このポスト処理では、シミュレーション結果を容易に把握可能とするための可視化処理を行い、エアポケットの高さやエアポケットの高さと境界面積との比に応じて序列付けや数値化を行い、これらの序列あるいは数値に応じてエアポケットの色相を変化させる等して識別表示する。これにより、実際の浸漬工程で生じるであろうエアポケットに対する対策の難易度を知ることができる。
【解決手段】対象物の表面形状のデータを複数の要素に分割して数値計算のための解析モデルを構築し(S1)、重力方向、初期条件を設定すると(S2,S3)、エアポケット判定計算処理を実施し、気液境界線を検出する(S4)。次に、気液境界線の高さHに修正高さΔHを加算して境界線を修正し(S5)、ポスト処理を実行する(S6)。このポスト処理では、シミュレーション結果を容易に把握可能とするための可視化処理を行い、エアポケットの高さやエアポケットの高さと境界面積との比に応じて序列付けや数値化を行い、これらの序列あるいは数値に応じてエアポケットの色相を変化させる等して識別表示する。これにより、実際の浸漬工程で生じるであろうエアポケットに対する対策の難易度を知ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬処理を施す際にワークに生じる空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法及びシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電着塗装やメッキ等におけるワークの浸漬工程においては、均一な塗膜やメッキ膜を形成させるために、ワークに空気溜り(エアポケット)を生じさせないことが重要である。このエアポケットは、複雑な形状のワークを浸漬した際に、その隙間にできる凹部、例えば、自動車等の車体であれば、フード内面、ルーフ内面、フロア下面等の凹部等の空間に空気が残留する現象であり、このエアポケットが発生すると、塗装不良やメッキ不良が発生してしまう。
【0003】
そこで、ワークを浸漬処理する状態をコンピュータを用いてシミュレーションし、エアポケットの発生状況を予測する手法が提案されている。エアポケットのコンピュータシミュレーションとしては、ワークの表面形状を、メッシュやノード等の複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを、要素の特徴点(例えば、重心点、頂点、内心点、外心点、垂心点)同士の重力方向の位置を比較して判定する幾何学的な手法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ワークの各表面をその頂点座標データに基づいて任意数の三角ポリゴン(三角形の要素)に分割し、各々の三角ポリゴンについて空気と浸漬槽内の液体との状態変化を時々刻々と計算することにより、ワークを入槽角の姿勢にて浸漬槽に模擬浸漬した際にエアポケットとなりうる表面部位であるか否かの判定を行う手法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−51750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の幾何学的な手法によるエアポケットのシミュレーションは、塗料等の浸漬液や被塗装物等のワークが静止した状態での評価を行っている。しかしながら、実際の浸漬工程においては、塗料が流れていたり、被塗装物が揺れていたりする等、幾何学的なシミュレーションでは評価が不十分な点が多い。
【0006】
例えば、図13に示す電着塗装されたワーク(カットモデル)100で検証すると、このワーク100においては、塗料で塗装された領域R1に対して、図中の上部の領域R2でエアポケットの発生により素材の地肌が露出している。すなわち、このワーク100の例では、図中の左側の穴101から上の部分では内部の空気が抜けず、穴101の上端より上にエアポケットが発生することが予想されるが、実際には、塗料の流れやワークの揺れ等により、穴より所定高さだけ高い位置にエアポケットが発生し、エアポケットと塗装部との境に気液境界線が現れている。
【0007】
一方、このワーク100に対して、従来の幾何学的な手法でシミュレーションを実施した結果は、図14に示される。図14のシミュレーション結果では、塗料に浸漬されたメッシュ群Mlとエアポケットに相当するメッシュ群Ma(図中の濃い部分)とが識別表示される。しかしながら、このシミュレーションでは、実際の塗装ラインにおける塗料の流れや被塗装物の揺れ等の影響を考慮していないため、エアポケットの領域Rは穴101の上端位置まで広がっており、図13の領域R2で示される実際のエアポケット形状よりも大きくなってしまう。
【0008】
このように、従来の幾何学的な手法では、エアポケットが発生していることはわかるが、どこにどの程度のエアポケットが発生しているかを的確に評価することは困難である。すなわち、従来の幾何学的な手法によるエアポケットのシミュレーションでは、実際に発生するエアポケットの対応策を考える上での情報が十分とは言えず、ワークの浸漬条件を変更すればエアポケットを無くせるのか、或いはワークの設計変更による形状変更で対応せざるを得ないのかといった判断まで踏み込むことはできない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、実際の浸漬工程に近い状態での空気溜りの評価を可能とする空気溜りのシミュレーション方法及びシミュレーションプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明による空気溜りのシミュレーション方法は、浸漬処理を施すワークの形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法において、属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明による空気溜りのシミュレーションプログラムは、浸漬処理を施す対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションするコンピュータが実行可能な空気溜りのシミュレーションプログラムにおいて、属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実際の浸漬工程に近い状態での空気溜りの評価が可能となり、ワークの浸漬条件を変更すればエアポケットを無くせるのか、或いはワークの形状変更で対応せざるを得ないのかといった判断まで行うことが可能となり、単なる目安に止まらない実用的なシミュレーションへと発展させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図12は本発明の実施の一形態に係り、図1はシミュレーション装置の基本構成図、図2は車体の塗装ラインの概略説明図、図3はフロアパネルの概略斜視図、図4はフロアパネルを複数の要素に分割した解析モデルを示す説明図、図5はメッシュによる境界線の高さを示す説明図、図6はノードによる境界線の高さを示す説明図、図7はワークの揺れを示す説明図、図8は境界線の変更を示す説明図、図9は境界線の表示とメッシュ分割を示す説明図、図10はエアポケットシミュレーションプログラムのフローチャート、図11はエアポケット断面を示す説明図、図12はエアポケット高さ/境界面積の表示例を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態におけるシミュレーション装置1は、自動車のボディシェル等のワークに電着塗装やメッキ処理等の浸漬処理を施す際に、ワークに生じる空気溜り(エアポケット)をシミュレーションするものである。このエアポケットのシミュレーション装置1は、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ等の単一のコンピュータ、或いはネットワークを介して相互に接続される複数のコンピュータを用いて構成される。
【0015】
以下では、便宜上、シミュレーション装置1を単一のコンピュータで構成する例について説明する。このコンピュータとしてのシミュレーション装置1は、演算装置10、キーボードやマウス等の入力装置11、CRTや液晶ディスプレイ等の表示装置12、磁気ディスクや光ディスク等の外部記憶装置13等を備えている。
【0016】
演算装置10は、CPU、ROM及びRAM等の内部メモリ、入出力インターフェース等を備えており、内部のROM、外部記憶装置13、外部の記憶媒体に記憶させたシミュレーションプログラム、或いは、図示しないネットワークや通信装置を介して外部からロードしたシミュレーションプログラムをCPUで実行し、入力装置11を介して指示された解析対象のワーク(対象物)を擬似的に浸漬槽内に浸漬させ、その浸漬によって対象物に発生するエアポケットをシミュレーションする。
【0017】
例えば、本発明によるシミュレーションの適用例として、車体ボディの電着塗装時における電着液及び空気の分布を数値解析し、被塗装物におけるエアポケットの発生を予測するシミュレーションが挙げられる。ここで、車体ボディの塗装ラインについて、図2を用いて簡単に説明する。
【0018】
図2に示すように、溶接等により複数の車体パネルを互いに接合して構成される自動車の車体ボディ20は、搬送装置21のハンガに搭載された状態で塗装ラインにて略水平方向へ搬送される。塗装ラインでは、電着塗装の前処理として、車体パネルに脱脂、水洗、表面調整、皮膜化成、水洗等の処理が施される。
【0019】
これらの処理の後、車体ボディ20は電着槽22に向かって降下し、電着液23に浸漬された状態で略水平に移動する。この状態で、車体ボディ20と電着槽22内の電極(図示せず)に電圧を加えることにより、車体パネルに塗料が析出するようになっている。この後、搬送装置21により車体ボディ20は電着槽22から引き上げられ、水洗により車体パネルに電着せずに付着している電着液23が除去される。
【0020】
演算装置10において実行されるシミュレーションプログラムの機能は、モデル構築部10a、エアポケット判定部10b、境界線修正部10c、ポスト処理部10dによって表現することができる。演算装置10は、対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化した解析モデルによる幾何学的手法を用いてエアポケットの発生をシミュレーションし、シミュレーション結果を表示装置12に出力して表示させる。尚、表示装置12には、シミュレーション結果のみならずシミュレーション過程を表示させるようにしても良い。
【0021】
本発明によるエアポケットのシミュレーションは、従来の幾何学的な手法によって求めた気体と液体との気液境界線(以下、単に「境界線」と記載する場合もある)に対して、実際の塗料等の浸漬液の状態や浸漬槽内のワークの状態を考慮した修正を行い、より現実に近いエアポケット形状を求めることができる。以下、本実施の形態におけるエアポケットシミュレーションについて説明する。
【0022】
モデル構築部10aは、対象物の形状データを複数の要素に分割して解析モデルを構築する。解析モデルを構成する手法としては、対象物の表面形状を複数の所定の形状に分割して表現するメッシュを用いる手法や、対象物の表面に複数の節点(ノード)を配置する手法等を用いることができる。
【0023】
例えば、車体ボディ20を構成する図3に示すようなフロアパネル26を例に挙げて説明すると、図3に示すフロアパネル26を、図4に示すように、フロアパネル26の表面を複数のメッシュ29に分割して数値計算のための解析モデルを構築する。以下では、対象物の表面形状を三角形のメッシュで表現したサーフェスモデルを用い、このサーフェスモデルのメッシュデータを三次元空間に配置して解析モデルを構築する例を主として説明するが、解析モデルの要素としてノードを用いる場合においても処理は同様である。
【0024】
尚、解析モデルの要素としてのメッシュの形状は、三角形の形状に限られず、矩形や多角形の形状であっても良い。個々のメッシュには、例えば、自己を識別するためのメッシュ番号、メッシュの節点(ノード)の所定の基準点に対する座標値(三次元空間のXYZ座標軸における座標値)、メッシュの属性等のデータが付与される。以下では、便宜上、XYZ直交座標系におけるZ軸の方向は、重力と反対方向であるものとする。
【0025】
また、外部記憶装置13には、エアポケットのシミュレーション処理に必要な各種のデータが格納されている。例えば、外部記憶装置13は、対象物毎に個別の識別番号(レコード番号)が付された属性レコード群で構成されるデータベースを有し、個々の属性レコードに、各メッシュのメッシュ番号、ノード点座標値、属性データ等が対応付けて記述される。
【0026】
エアポケット判定部10bは、解析モデルを形成する個々のメッシュに対して、エアポケットの箇所に相当する気体の属性と電着液等の浸漬個所に相当する液体の属性との何れかを設定する。このメッシュの属性は、当初、全メッシュが気体の属性に設定され(浸漬前)、その中で所定の初期条件を満足するメッシュの属性が液体に設定される。そして、気体の属性を有するメッシュに対して、メッシュの属性が液体となるか気体のままであるか(つまり、エアポケットとなるか否か)を隣接メッシュとの比較によって判定し、液体と判定されたとき、そのメッシュの属性を液体に変更し、属性データを書き換える。
【0027】
尚、隣接メッシュとは、判定対象のメッシュに対して節点或いは辺を共有するメッシュである。
【0028】
このエアポケットの判定は、基本的に、浸漬液の比重が空気の比重よりも大きいことを前提としている。すなわち、或るメッシュの属性を判定する際に、判定対象のメッシュと比較対象のメッシュとを、Z方向(重力と反対方向)の高さで比較する。そして、比較対象メッシュが判定対象メッシュよりも高く液体の属性を有していれば、相対的に低い判定対象メッシュにも浸漬液が空気を押しのけて浸入し、浸漬液により満たされるものと判断して、判定対象メッシュの属性データを液体とする。これに対して、相対的に高い比較対象メッシュの属性が気体である場合には、判定対象メッシュの属性データは変更せず、比較対象を変更して判定を繰り返す。そして、この判定を繰り返して全メッシュの属性が液体と気体とに分離・決定され、属性が気体と決定されたメッシュの存在によって示されるエアポケットの気液境界線が導き出される。この気液境界線は、複数本導き出される場合もある。
【0029】
境界線修正部10cは、エアポケットの気液境界線を修正し、実際の浸漬工程に近い状態でエアポケットを評価するための基準とする。すなわち、ワークの形状をメッシュ等の複数の要素に分割して各要素の属性を気体と液体とに分離して得られる気液境界線Lは、図5に示すように凹凸がある。従って、各境界線のZ方向の高さHをそれぞれ求め、この高さHを、実際の浸漬工程に対応した修正高さΔHで修正することにより、気液境界線Lを変更してエアポケットを評価するための基準とする。
【0030】
本形態においては、境界線Lの高さHは、境界線を構成するメッシュの辺(エッジ)の長さにより加重平均して求める。ここで、属性が気体であるメッシュを「液外メッシュ」、属性が液体であるメッシュを「液内メッシュ」とし、境界線を構成する液内メッシュのエッジの数がnであるものとすると、図5に示すように、液内メッシュのエッジの長さをli、また、このエッジの中点の高さをhiとしたとき、境界線の高さHは、以下の(1)式で表現することができる。尚、(1)式におけるΣは、i〜nについての総和を示すものとする。
H=Σ(li×hi)/Σli …(1)
この場合、図6に示すように、解析モデルの要素としてノード(図中の黒丸で示す)を用いる場合には、液体の属性のノード(液内ノード)のうち最も高い位置にあるノードと、隣接する気体の属性のノード(液外ノード)との中間を結んだラインが境界線Lとして導き出される。この場合には、エッジの長さliは、境界線と、この境界線に隣接するノードとの距離、エッジの中点の高さhiは、境界線と、この境界線に隣接するノードとの間の中点の高さとして、(1)式を適用する。
【0031】
一方、実際の浸漬工程に対応した修正高さΔHは、予め実際の浸漬条件を考慮して定めた一定値や、気液境界線を形成する液内メッシュの中の最も高い位置等でも良いが、一般的には、塗料等の浸漬液の流れ、ワークの揺れ、ワークのフック部(釣下げ部)から端部までの距離、ワークの内部か外部か等の条件によって変化する。従って、本形態においては、これらの条件と修正高さΔHとの相関関係について予め基礎実験を行い、実験式を取得する。
【0032】
例えば、図7に示すように、或るエアポケットAPにおいて、フックHKからの水平方向距離が最も長い境界線位置までの距離(端部までの距離)Lと修正高さΔHとの関係は、ワークの揺れ角度をθとして、幾何学的に以下の(2)式のようになる。但し、(2)式においては、揺れ角度θが微小な角度(略1°程度)であるため、フックHKからの垂直方向距離を無視している。
ΔH=L×tan2θ …(2)
【0033】
次に、以下の(3)式に示すように、境界線Lの高さHに修正高さΔHを加算し、新たな境界線L’の高さHsとして修正する。そして、図8に示すように、高さHs以下の液外メッシュを液内メッシュに変更し、境界線の高さを変更する。この境界線の高さ変更は、全ての境界線について実施する。
Hs=H+ΔH …(3)
ポスト処理部10dは、シミュレーション結果を容易に把握可能とするための可視化処理やシミュレーション結果のデータ出力を行う。シミュレーション結果の可視化処理においては、図9に示すように、修正前の境界線Lと修正後の境界線の高さHs(=H+ΔH)とを同時にライン表示させ、更には、修正前後の境界線を境に、液外から液内に属性を変更されたメッシュと、修正前の境界線を形成する液内メッシュとを色相や濃淡等によって識別表示する。
【0034】
また、エアポケットの高さや境界線の内側のエアポケットの境界面積を求めることにより、実際に発生するエアポケットの評価を可能とする指標を提供する。ここで、エアポケット高さは、修正後の境界線からエアポケットの最高点までの高さであり、エアポケット境界面積は、修正した境界線で形成される平面に接するエアポケットの面積である。
【0035】
エアポケットを評価する指標としては、エアポケット高さ、エアポケットの高さと境界面積との比、エアポケット形状の座標値(エアポケットの位置及び方向;浸漬液が浸入し易いか否か)等を指標として導入し、これらに応じて序列付けや数値化を行う。そして、シミュレーション結果を表示する際にも、エアポケットに相当する気体の属性のメッシュを、これらの序列あるいは数値に応じた色相や濃淡で区別して表示することにより、実際の浸漬工程で生じるであろうエアポケットに対する対策の難易度を知ることができる。
【0036】
例えば、エアポケットの高さを用いてシミュレーション結果を評価する場合には、エポケット高さの値が大きい程、つまりエアポケットの深さが深い程、エアポケットを強調表示することで、エアポケットの対策が容易か否かを知ることができる。更に、詳細にエアポケットのシミュレーション結果を評価する場合には、エアポケットの高さと境界面積との比を用い、この値が大きくなる程、つまりエアポケットが細く尖った形状になればなる程、エアポケットを強調表示することで、対策の難易度を知ることができる。
【0037】
次に、演算装置10のCPUで実行されるエアポケットのシミュレーションプログラムについて、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
図10のシミュレーションプログラムでは、先ず、ステップS1において、対象物の表面形状のデータを複数の要素に分割して数値計算のための解析モデルを構築する。本形態においては、三角形のメッシュを用いた解析モデルを構築する。
【0039】
次に、ステップS2へ進んで解析モデルにおける重力方向を設定した後、ステップS3へ進み、対象物が電着液等に浸漬される前の周辺が空気で満たされた状態のシミュレーションとして、一旦、全てのメッシュを気体の属性(液外メッシュ)に設定する。さらに、対象物を浸漬した初期状態のシミュレーションとして、メッシュを液体の属性と気体の属性とに分離するための初期条件を設定する。
【0040】
本実施の形態においては、初期状態でのメッシュの属性を液体(液内メッシュ)に決定する条件として、ワークのフリーエッジに接するメッシュを初期メッシュに設定する。そして、この初期メッシュの属性を気体から液体に変更する。ここで、フリーエッジとは、ワークの縁の部分、即ちワークの端部及びワークに形成された穴の縁の部分を意味する。初期メッシュとは、ワークのフリーエッジに接する要素であって、フリーエッジに接するメッシュとは、そのメッシュを構成する辺がフリーエッジに接していることを言う。
【0041】
尚、初期に属性を液体として決定する条件として、ワークに対してその周囲よりかつ水平より上側の視線方向から見て認識可能なメッシュを初期メッシュとしても良い。この場合においても、初期メッシュ決定後の処理は同じである。
【0042】
次に、ステップS3からステップS4へ進み、エアポケット判定計算処理を実施して、エアポケットの発生をシミュレーションする。この判定計算処理は、各メッシュの重力と反対方向の高さの比較により、それぞれの属性を決定してエアポケットの発生を判定する処理であり、従来の手法を用いることができる。各メッシュの高さの比較は、例えば、それぞれのメッシュの重心点、内心点、外心点、垂心点等のZ方向(重力と反対方向)における位置や、それぞれのメッシュが有する各頂点のうちの最も高い頂点(Z方向の位置が最も高い頂点)等の特徴点を比較することで行う。
【0043】
例えば、重心点の位置を比較する場合には、判定対象とするメッシュと隣接メッシュとのそれぞれの重心点のZ方向における高さを比較し、隣接メッシュの重心点が判定対象メッシュの重心点よりも高いまたは同じ場合、隣接メッシュの属性が液体であれば、判定対象メッシュの属性を液体に決定する。一方、隣接メッシュの重心点が判定対象メッシュの重心点よりも低い場合には、判定対象メッシュの属性は変更せず、比較対象を変更して判定を繰り返す。この判定を初期メッシュを含む全メッシュについて実行し、液内メッシュと液外メッシュとの境界を気液境界線として検出する。
【0044】
以上のステップS4のエアポケット判定計算処理により気液境界線が検出されると、ステップS5へ進む。ステップS5は、本発明の境界線修正ステップに相当し、ステップS4のエアポケット判定計算処理で得られる境界線に対して、前述の(1)式によって境界線の高さHを求めた後、境界線の高さHに前述の(2)式による修正高さΔHを加算し、新たな境界線の高さHsを求めることにより、境界線を修正する。
【0045】
尚、境界線の修正処理は、ステップS4で一度計算した結果に対して、修正高さΔHだけ境界線を高くすることが重要である。判定計算の途中にて評価指標をΔHだけ増分して判定することはNGである。
【0046】
その後、ステップS6へ進み、本発明のポスト処理に相当する処理を実行する。すなわち、ステップS6のポスト処理では、シミュレーション結果を可視化処理して表示装置12へ出力したり、シミュレーション結果のデータのファイルへの出力を行う。このポスト処理は、エアポケットの有無を表示(図9参照)するに止まらず、エアポケットの高さHap、或いはエアポケットの高さと境界面積との比[Hap/Rap]に応じて序列付けや数値化を行い、これらの序列あるいは数値に応じてエアポケットの色相を変化させる等して識別表示する。
【0047】
例えば、図11に示すような断面形状を有する部材を例に取ると、この部材のA部,B部,C部に予想されるエアポケットをシミュレーションした結果を、各部のエアポケットの高さAHi(i=1,2,3)と境界面積ASi(i=1,2,3)との比[AHi/ASi]にて評価し、図12に示すように表示する。図12においては、[AH1/AS1]の数値が最も小さいA部のエアポケットを例えば青色で表示し、次に、[AH3/AS3]の数値が大きいC部のエアポケットを例えば黄色で表示し、[AH2/AS2]の数値が最も大きいB部のエアポケットを例えば赤色で表示する。
【0048】
これにより、エアポケットの配色からエアポケットの対策の難易度を即座に判断することができる。つまり、青色のエアポケットは、部材の釣り角度等を調整することで対策できる可能性があるが、赤色のエアポケットは対策が困難であり、空気穴を設ける等の構造変更が必要であると言ったように、エアポケットの危険性をインタラクティブに判断することが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、実際の塗装ライン等の浸漬工程の状態を考慮してエアポケットの気液境界線を修正するため、実際の浸漬工程に近い状態でのエアポケットの評価を行うことができる。また、エアポケットの高さや高さ/境界面積等によって序列或いは数値化することで、エアポケットの危険度を知ることができ、単なる目安に止まることなく、より実用的なシミュレーションへと発展させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】シミュレーション装置の基本構成図
【図2】車体の塗装ラインの概略説明図
【図3】フロアパネルの概略斜視図
【図4】フロアパネルを複数の要素に分割した解析モデルを示す説明図
【図5】メッシュによる境界線の高さを示す説明図
【図6】ノードによる境界線の高さを示す説明図
【図7】ワークの揺れを示す説明図
【図8】境界線の変更を示す説明図
【図9】境界線の表示とメッシュ分割を示す説明図
【図10】エアポケットシミュレーションプログラムのフローチャート
【図11】エアポケット断面を示す説明図
【図12】エアポケット高さ/境界面積の表示例を示す説明図
【図13】エアポケットが発生した被塗装物のカットモデルを示す説明図
【図14】従来の幾何学的手法によるシミュレーション結果を示す説明図
【符号の説明】
【0051】
1 シミュレーション装置
10 演算装置
10a モデル構築部
10b エアポケット判定部
10c 境界線修正部
10d ポスト処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬処理を施す際にワークに生じる空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法及びシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電着塗装やメッキ等におけるワークの浸漬工程においては、均一な塗膜やメッキ膜を形成させるために、ワークに空気溜り(エアポケット)を生じさせないことが重要である。このエアポケットは、複雑な形状のワークを浸漬した際に、その隙間にできる凹部、例えば、自動車等の車体であれば、フード内面、ルーフ内面、フロア下面等の凹部等の空間に空気が残留する現象であり、このエアポケットが発生すると、塗装不良やメッキ不良が発生してしまう。
【0003】
そこで、ワークを浸漬処理する状態をコンピュータを用いてシミュレーションし、エアポケットの発生状況を予測する手法が提案されている。エアポケットのコンピュータシミュレーションとしては、ワークの表面形状を、メッシュやノード等の複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを、要素の特徴点(例えば、重心点、頂点、内心点、外心点、垂心点)同士の重力方向の位置を比較して判定する幾何学的な手法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ワークの各表面をその頂点座標データに基づいて任意数の三角ポリゴン(三角形の要素)に分割し、各々の三角ポリゴンについて空気と浸漬槽内の液体との状態変化を時々刻々と計算することにより、ワークを入槽角の姿勢にて浸漬槽に模擬浸漬した際にエアポケットとなりうる表面部位であるか否かの判定を行う手法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−51750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の幾何学的な手法によるエアポケットのシミュレーションは、塗料等の浸漬液や被塗装物等のワークが静止した状態での評価を行っている。しかしながら、実際の浸漬工程においては、塗料が流れていたり、被塗装物が揺れていたりする等、幾何学的なシミュレーションでは評価が不十分な点が多い。
【0006】
例えば、図13に示す電着塗装されたワーク(カットモデル)100で検証すると、このワーク100においては、塗料で塗装された領域R1に対して、図中の上部の領域R2でエアポケットの発生により素材の地肌が露出している。すなわち、このワーク100の例では、図中の左側の穴101から上の部分では内部の空気が抜けず、穴101の上端より上にエアポケットが発生することが予想されるが、実際には、塗料の流れやワークの揺れ等により、穴より所定高さだけ高い位置にエアポケットが発生し、エアポケットと塗装部との境に気液境界線が現れている。
【0007】
一方、このワーク100に対して、従来の幾何学的な手法でシミュレーションを実施した結果は、図14に示される。図14のシミュレーション結果では、塗料に浸漬されたメッシュ群Mlとエアポケットに相当するメッシュ群Ma(図中の濃い部分)とが識別表示される。しかしながら、このシミュレーションでは、実際の塗装ラインにおける塗料の流れや被塗装物の揺れ等の影響を考慮していないため、エアポケットの領域Rは穴101の上端位置まで広がっており、図13の領域R2で示される実際のエアポケット形状よりも大きくなってしまう。
【0008】
このように、従来の幾何学的な手法では、エアポケットが発生していることはわかるが、どこにどの程度のエアポケットが発生しているかを的確に評価することは困難である。すなわち、従来の幾何学的な手法によるエアポケットのシミュレーションでは、実際に発生するエアポケットの対応策を考える上での情報が十分とは言えず、ワークの浸漬条件を変更すればエアポケットを無くせるのか、或いはワークの設計変更による形状変更で対応せざるを得ないのかといった判断まで踏み込むことはできない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、実際の浸漬工程に近い状態での空気溜りの評価を可能とする空気溜りのシミュレーション方法及びシミュレーションプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明による空気溜りのシミュレーション方法は、浸漬処理を施すワークの形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法において、属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明による空気溜りのシミュレーションプログラムは、浸漬処理を施す対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションするコンピュータが実行可能な空気溜りのシミュレーションプログラムにおいて、属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実際の浸漬工程に近い状態での空気溜りの評価が可能となり、ワークの浸漬条件を変更すればエアポケットを無くせるのか、或いはワークの形状変更で対応せざるを得ないのかといった判断まで行うことが可能となり、単なる目安に止まらない実用的なシミュレーションへと発展させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図12は本発明の実施の一形態に係り、図1はシミュレーション装置の基本構成図、図2は車体の塗装ラインの概略説明図、図3はフロアパネルの概略斜視図、図4はフロアパネルを複数の要素に分割した解析モデルを示す説明図、図5はメッシュによる境界線の高さを示す説明図、図6はノードによる境界線の高さを示す説明図、図7はワークの揺れを示す説明図、図8は境界線の変更を示す説明図、図9は境界線の表示とメッシュ分割を示す説明図、図10はエアポケットシミュレーションプログラムのフローチャート、図11はエアポケット断面を示す説明図、図12はエアポケット高さ/境界面積の表示例を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態におけるシミュレーション装置1は、自動車のボディシェル等のワークに電着塗装やメッキ処理等の浸漬処理を施す際に、ワークに生じる空気溜り(エアポケット)をシミュレーションするものである。このエアポケットのシミュレーション装置1は、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ等の単一のコンピュータ、或いはネットワークを介して相互に接続される複数のコンピュータを用いて構成される。
【0015】
以下では、便宜上、シミュレーション装置1を単一のコンピュータで構成する例について説明する。このコンピュータとしてのシミュレーション装置1は、演算装置10、キーボードやマウス等の入力装置11、CRTや液晶ディスプレイ等の表示装置12、磁気ディスクや光ディスク等の外部記憶装置13等を備えている。
【0016】
演算装置10は、CPU、ROM及びRAM等の内部メモリ、入出力インターフェース等を備えており、内部のROM、外部記憶装置13、外部の記憶媒体に記憶させたシミュレーションプログラム、或いは、図示しないネットワークや通信装置を介して外部からロードしたシミュレーションプログラムをCPUで実行し、入力装置11を介して指示された解析対象のワーク(対象物)を擬似的に浸漬槽内に浸漬させ、その浸漬によって対象物に発生するエアポケットをシミュレーションする。
【0017】
例えば、本発明によるシミュレーションの適用例として、車体ボディの電着塗装時における電着液及び空気の分布を数値解析し、被塗装物におけるエアポケットの発生を予測するシミュレーションが挙げられる。ここで、車体ボディの塗装ラインについて、図2を用いて簡単に説明する。
【0018】
図2に示すように、溶接等により複数の車体パネルを互いに接合して構成される自動車の車体ボディ20は、搬送装置21のハンガに搭載された状態で塗装ラインにて略水平方向へ搬送される。塗装ラインでは、電着塗装の前処理として、車体パネルに脱脂、水洗、表面調整、皮膜化成、水洗等の処理が施される。
【0019】
これらの処理の後、車体ボディ20は電着槽22に向かって降下し、電着液23に浸漬された状態で略水平に移動する。この状態で、車体ボディ20と電着槽22内の電極(図示せず)に電圧を加えることにより、車体パネルに塗料が析出するようになっている。この後、搬送装置21により車体ボディ20は電着槽22から引き上げられ、水洗により車体パネルに電着せずに付着している電着液23が除去される。
【0020】
演算装置10において実行されるシミュレーションプログラムの機能は、モデル構築部10a、エアポケット判定部10b、境界線修正部10c、ポスト処理部10dによって表現することができる。演算装置10は、対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化した解析モデルによる幾何学的手法を用いてエアポケットの発生をシミュレーションし、シミュレーション結果を表示装置12に出力して表示させる。尚、表示装置12には、シミュレーション結果のみならずシミュレーション過程を表示させるようにしても良い。
【0021】
本発明によるエアポケットのシミュレーションは、従来の幾何学的な手法によって求めた気体と液体との気液境界線(以下、単に「境界線」と記載する場合もある)に対して、実際の塗料等の浸漬液の状態や浸漬槽内のワークの状態を考慮した修正を行い、より現実に近いエアポケット形状を求めることができる。以下、本実施の形態におけるエアポケットシミュレーションについて説明する。
【0022】
モデル構築部10aは、対象物の形状データを複数の要素に分割して解析モデルを構築する。解析モデルを構成する手法としては、対象物の表面形状を複数の所定の形状に分割して表現するメッシュを用いる手法や、対象物の表面に複数の節点(ノード)を配置する手法等を用いることができる。
【0023】
例えば、車体ボディ20を構成する図3に示すようなフロアパネル26を例に挙げて説明すると、図3に示すフロアパネル26を、図4に示すように、フロアパネル26の表面を複数のメッシュ29に分割して数値計算のための解析モデルを構築する。以下では、対象物の表面形状を三角形のメッシュで表現したサーフェスモデルを用い、このサーフェスモデルのメッシュデータを三次元空間に配置して解析モデルを構築する例を主として説明するが、解析モデルの要素としてノードを用いる場合においても処理は同様である。
【0024】
尚、解析モデルの要素としてのメッシュの形状は、三角形の形状に限られず、矩形や多角形の形状であっても良い。個々のメッシュには、例えば、自己を識別するためのメッシュ番号、メッシュの節点(ノード)の所定の基準点に対する座標値(三次元空間のXYZ座標軸における座標値)、メッシュの属性等のデータが付与される。以下では、便宜上、XYZ直交座標系におけるZ軸の方向は、重力と反対方向であるものとする。
【0025】
また、外部記憶装置13には、エアポケットのシミュレーション処理に必要な各種のデータが格納されている。例えば、外部記憶装置13は、対象物毎に個別の識別番号(レコード番号)が付された属性レコード群で構成されるデータベースを有し、個々の属性レコードに、各メッシュのメッシュ番号、ノード点座標値、属性データ等が対応付けて記述される。
【0026】
エアポケット判定部10bは、解析モデルを形成する個々のメッシュに対して、エアポケットの箇所に相当する気体の属性と電着液等の浸漬個所に相当する液体の属性との何れかを設定する。このメッシュの属性は、当初、全メッシュが気体の属性に設定され(浸漬前)、その中で所定の初期条件を満足するメッシュの属性が液体に設定される。そして、気体の属性を有するメッシュに対して、メッシュの属性が液体となるか気体のままであるか(つまり、エアポケットとなるか否か)を隣接メッシュとの比較によって判定し、液体と判定されたとき、そのメッシュの属性を液体に変更し、属性データを書き換える。
【0027】
尚、隣接メッシュとは、判定対象のメッシュに対して節点或いは辺を共有するメッシュである。
【0028】
このエアポケットの判定は、基本的に、浸漬液の比重が空気の比重よりも大きいことを前提としている。すなわち、或るメッシュの属性を判定する際に、判定対象のメッシュと比較対象のメッシュとを、Z方向(重力と反対方向)の高さで比較する。そして、比較対象メッシュが判定対象メッシュよりも高く液体の属性を有していれば、相対的に低い判定対象メッシュにも浸漬液が空気を押しのけて浸入し、浸漬液により満たされるものと判断して、判定対象メッシュの属性データを液体とする。これに対して、相対的に高い比較対象メッシュの属性が気体である場合には、判定対象メッシュの属性データは変更せず、比較対象を変更して判定を繰り返す。そして、この判定を繰り返して全メッシュの属性が液体と気体とに分離・決定され、属性が気体と決定されたメッシュの存在によって示されるエアポケットの気液境界線が導き出される。この気液境界線は、複数本導き出される場合もある。
【0029】
境界線修正部10cは、エアポケットの気液境界線を修正し、実際の浸漬工程に近い状態でエアポケットを評価するための基準とする。すなわち、ワークの形状をメッシュ等の複数の要素に分割して各要素の属性を気体と液体とに分離して得られる気液境界線Lは、図5に示すように凹凸がある。従って、各境界線のZ方向の高さHをそれぞれ求め、この高さHを、実際の浸漬工程に対応した修正高さΔHで修正することにより、気液境界線Lを変更してエアポケットを評価するための基準とする。
【0030】
本形態においては、境界線Lの高さHは、境界線を構成するメッシュの辺(エッジ)の長さにより加重平均して求める。ここで、属性が気体であるメッシュを「液外メッシュ」、属性が液体であるメッシュを「液内メッシュ」とし、境界線を構成する液内メッシュのエッジの数がnであるものとすると、図5に示すように、液内メッシュのエッジの長さをli、また、このエッジの中点の高さをhiとしたとき、境界線の高さHは、以下の(1)式で表現することができる。尚、(1)式におけるΣは、i〜nについての総和を示すものとする。
H=Σ(li×hi)/Σli …(1)
この場合、図6に示すように、解析モデルの要素としてノード(図中の黒丸で示す)を用いる場合には、液体の属性のノード(液内ノード)のうち最も高い位置にあるノードと、隣接する気体の属性のノード(液外ノード)との中間を結んだラインが境界線Lとして導き出される。この場合には、エッジの長さliは、境界線と、この境界線に隣接するノードとの距離、エッジの中点の高さhiは、境界線と、この境界線に隣接するノードとの間の中点の高さとして、(1)式を適用する。
【0031】
一方、実際の浸漬工程に対応した修正高さΔHは、予め実際の浸漬条件を考慮して定めた一定値や、気液境界線を形成する液内メッシュの中の最も高い位置等でも良いが、一般的には、塗料等の浸漬液の流れ、ワークの揺れ、ワークのフック部(釣下げ部)から端部までの距離、ワークの内部か外部か等の条件によって変化する。従って、本形態においては、これらの条件と修正高さΔHとの相関関係について予め基礎実験を行い、実験式を取得する。
【0032】
例えば、図7に示すように、或るエアポケットAPにおいて、フックHKからの水平方向距離が最も長い境界線位置までの距離(端部までの距離)Lと修正高さΔHとの関係は、ワークの揺れ角度をθとして、幾何学的に以下の(2)式のようになる。但し、(2)式においては、揺れ角度θが微小な角度(略1°程度)であるため、フックHKからの垂直方向距離を無視している。
ΔH=L×tan2θ …(2)
【0033】
次に、以下の(3)式に示すように、境界線Lの高さHに修正高さΔHを加算し、新たな境界線L’の高さHsとして修正する。そして、図8に示すように、高さHs以下の液外メッシュを液内メッシュに変更し、境界線の高さを変更する。この境界線の高さ変更は、全ての境界線について実施する。
Hs=H+ΔH …(3)
ポスト処理部10dは、シミュレーション結果を容易に把握可能とするための可視化処理やシミュレーション結果のデータ出力を行う。シミュレーション結果の可視化処理においては、図9に示すように、修正前の境界線Lと修正後の境界線の高さHs(=H+ΔH)とを同時にライン表示させ、更には、修正前後の境界線を境に、液外から液内に属性を変更されたメッシュと、修正前の境界線を形成する液内メッシュとを色相や濃淡等によって識別表示する。
【0034】
また、エアポケットの高さや境界線の内側のエアポケットの境界面積を求めることにより、実際に発生するエアポケットの評価を可能とする指標を提供する。ここで、エアポケット高さは、修正後の境界線からエアポケットの最高点までの高さであり、エアポケット境界面積は、修正した境界線で形成される平面に接するエアポケットの面積である。
【0035】
エアポケットを評価する指標としては、エアポケット高さ、エアポケットの高さと境界面積との比、エアポケット形状の座標値(エアポケットの位置及び方向;浸漬液が浸入し易いか否か)等を指標として導入し、これらに応じて序列付けや数値化を行う。そして、シミュレーション結果を表示する際にも、エアポケットに相当する気体の属性のメッシュを、これらの序列あるいは数値に応じた色相や濃淡で区別して表示することにより、実際の浸漬工程で生じるであろうエアポケットに対する対策の難易度を知ることができる。
【0036】
例えば、エアポケットの高さを用いてシミュレーション結果を評価する場合には、エポケット高さの値が大きい程、つまりエアポケットの深さが深い程、エアポケットを強調表示することで、エアポケットの対策が容易か否かを知ることができる。更に、詳細にエアポケットのシミュレーション結果を評価する場合には、エアポケットの高さと境界面積との比を用い、この値が大きくなる程、つまりエアポケットが細く尖った形状になればなる程、エアポケットを強調表示することで、対策の難易度を知ることができる。
【0037】
次に、演算装置10のCPUで実行されるエアポケットのシミュレーションプログラムについて、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
図10のシミュレーションプログラムでは、先ず、ステップS1において、対象物の表面形状のデータを複数の要素に分割して数値計算のための解析モデルを構築する。本形態においては、三角形のメッシュを用いた解析モデルを構築する。
【0039】
次に、ステップS2へ進んで解析モデルにおける重力方向を設定した後、ステップS3へ進み、対象物が電着液等に浸漬される前の周辺が空気で満たされた状態のシミュレーションとして、一旦、全てのメッシュを気体の属性(液外メッシュ)に設定する。さらに、対象物を浸漬した初期状態のシミュレーションとして、メッシュを液体の属性と気体の属性とに分離するための初期条件を設定する。
【0040】
本実施の形態においては、初期状態でのメッシュの属性を液体(液内メッシュ)に決定する条件として、ワークのフリーエッジに接するメッシュを初期メッシュに設定する。そして、この初期メッシュの属性を気体から液体に変更する。ここで、フリーエッジとは、ワークの縁の部分、即ちワークの端部及びワークに形成された穴の縁の部分を意味する。初期メッシュとは、ワークのフリーエッジに接する要素であって、フリーエッジに接するメッシュとは、そのメッシュを構成する辺がフリーエッジに接していることを言う。
【0041】
尚、初期に属性を液体として決定する条件として、ワークに対してその周囲よりかつ水平より上側の視線方向から見て認識可能なメッシュを初期メッシュとしても良い。この場合においても、初期メッシュ決定後の処理は同じである。
【0042】
次に、ステップS3からステップS4へ進み、エアポケット判定計算処理を実施して、エアポケットの発生をシミュレーションする。この判定計算処理は、各メッシュの重力と反対方向の高さの比較により、それぞれの属性を決定してエアポケットの発生を判定する処理であり、従来の手法を用いることができる。各メッシュの高さの比較は、例えば、それぞれのメッシュの重心点、内心点、外心点、垂心点等のZ方向(重力と反対方向)における位置や、それぞれのメッシュが有する各頂点のうちの最も高い頂点(Z方向の位置が最も高い頂点)等の特徴点を比較することで行う。
【0043】
例えば、重心点の位置を比較する場合には、判定対象とするメッシュと隣接メッシュとのそれぞれの重心点のZ方向における高さを比較し、隣接メッシュの重心点が判定対象メッシュの重心点よりも高いまたは同じ場合、隣接メッシュの属性が液体であれば、判定対象メッシュの属性を液体に決定する。一方、隣接メッシュの重心点が判定対象メッシュの重心点よりも低い場合には、判定対象メッシュの属性は変更せず、比較対象を変更して判定を繰り返す。この判定を初期メッシュを含む全メッシュについて実行し、液内メッシュと液外メッシュとの境界を気液境界線として検出する。
【0044】
以上のステップS4のエアポケット判定計算処理により気液境界線が検出されると、ステップS5へ進む。ステップS5は、本発明の境界線修正ステップに相当し、ステップS4のエアポケット判定計算処理で得られる境界線に対して、前述の(1)式によって境界線の高さHを求めた後、境界線の高さHに前述の(2)式による修正高さΔHを加算し、新たな境界線の高さHsを求めることにより、境界線を修正する。
【0045】
尚、境界線の修正処理は、ステップS4で一度計算した結果に対して、修正高さΔHだけ境界線を高くすることが重要である。判定計算の途中にて評価指標をΔHだけ増分して判定することはNGである。
【0046】
その後、ステップS6へ進み、本発明のポスト処理に相当する処理を実行する。すなわち、ステップS6のポスト処理では、シミュレーション結果を可視化処理して表示装置12へ出力したり、シミュレーション結果のデータのファイルへの出力を行う。このポスト処理は、エアポケットの有無を表示(図9参照)するに止まらず、エアポケットの高さHap、或いはエアポケットの高さと境界面積との比[Hap/Rap]に応じて序列付けや数値化を行い、これらの序列あるいは数値に応じてエアポケットの色相を変化させる等して識別表示する。
【0047】
例えば、図11に示すような断面形状を有する部材を例に取ると、この部材のA部,B部,C部に予想されるエアポケットをシミュレーションした結果を、各部のエアポケットの高さAHi(i=1,2,3)と境界面積ASi(i=1,2,3)との比[AHi/ASi]にて評価し、図12に示すように表示する。図12においては、[AH1/AS1]の数値が最も小さいA部のエアポケットを例えば青色で表示し、次に、[AH3/AS3]の数値が大きいC部のエアポケットを例えば黄色で表示し、[AH2/AS2]の数値が最も大きいB部のエアポケットを例えば赤色で表示する。
【0048】
これにより、エアポケットの配色からエアポケットの対策の難易度を即座に判断することができる。つまり、青色のエアポケットは、部材の釣り角度等を調整することで対策できる可能性があるが、赤色のエアポケットは対策が困難であり、空気穴を設ける等の構造変更が必要であると言ったように、エアポケットの危険性をインタラクティブに判断することが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、実際の塗装ライン等の浸漬工程の状態を考慮してエアポケットの気液境界線を修正するため、実際の浸漬工程に近い状態でのエアポケットの評価を行うことができる。また、エアポケットの高さや高さ/境界面積等によって序列或いは数値化することで、エアポケットの危険度を知ることができ、単なる目安に止まることなく、より実用的なシミュレーションへと発展させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】シミュレーション装置の基本構成図
【図2】車体の塗装ラインの概略説明図
【図3】フロアパネルの概略斜視図
【図4】フロアパネルを複数の要素に分割した解析モデルを示す説明図
【図5】メッシュによる境界線の高さを示す説明図
【図6】ノードによる境界線の高さを示す説明図
【図7】ワークの揺れを示す説明図
【図8】境界線の変更を示す説明図
【図9】境界線の表示とメッシュ分割を示す説明図
【図10】エアポケットシミュレーションプログラムのフローチャート
【図11】エアポケット断面を示す説明図
【図12】エアポケット高さ/境界面積の表示例を示す説明図
【図13】エアポケットが発生した被塗装物のカットモデルを示す説明図
【図14】従来の幾何学的手法によるシミュレーション結果を示す説明図
【符号の説明】
【0051】
1 シミュレーション装置
10 演算装置
10a モデル構築部
10b エアポケット判定部
10c 境界線修正部
10d ポスト処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬処理を施すワークの形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法において、
属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、
上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップと
を備えることを特徴とする空気溜まりのシミュレーション方法。
【請求項2】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記境界線を形成する上記複数の要素の高さを平滑化して直線化した上で、上記浸漬条件としてワークの揺れに基づく修正高さを加えるにより、上記境界線を修正することを特徴とする請求項1記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項3】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記修正高さを、上記ワークの釣下げ部における揺れ角度と上記ワークの釣下げ部から端部までの水平方向距離との相関関係について予め求めた実験式に基づいて算出することを特徴とする請求項2記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項4】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記評価データを、上記空気溜りの深さと面積との少なくとも一方に基づいて算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項5】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記空気溜りの可視化処理を、上記評価データに基づく序列或いは数値の大きさに応じて上記空気溜りを識別表示する処理とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項6】
浸漬処理を施す対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションするコンピュータが実行可能な空気溜りのシミュレーションプログラムにおいて、
属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、
上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップと
を備えることを特徴とする空気溜まりのシミュレーションプログラム。
【請求項7】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記境界線を形成する上記複数の要素の高さを平滑化して直線化した上で、上記浸漬条件としてワークの揺れに基づく修正高さを加えるにより、上記境界線を修正することを特徴とする請求項6記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項8】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記修正高さを、上記ワークの釣下げ部における揺れ角度と上記ワークの釣下げ部から端部までの水平方向距離との相関関係について予め求めた実験式に基づいて算出することを特徴とする請求項7記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項9】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記評価データを、上記空気溜りの深さと面積との少なくとも一方に基づいて算出することを特徴とする請求項6〜8の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項10】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記空気溜りの可視化処理を、上記評価データに基づく序列或いは数値の大きさに応じて上記空気溜りを識別表示する処理とすることを特徴とする請求項6〜9の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項1】
浸漬処理を施すワークの形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションする空気溜りのシミュレーション方法において、
属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、
上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップと
を備えることを特徴とする空気溜まりのシミュレーション方法。
【請求項2】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記境界線を形成する上記複数の要素の高さを平滑化して直線化した上で、上記浸漬条件としてワークの揺れに基づく修正高さを加えるにより、上記境界線を修正することを特徴とする請求項1記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項3】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記修正高さを、上記ワークの釣下げ部における揺れ角度と上記ワークの釣下げ部から端部までの水平方向距離との相関関係について予め求めた実験式に基づいて算出することを特徴とする請求項2記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項4】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記評価データを、上記空気溜りの深さと面積との少なくとも一方に基づいて算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項5】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記空気溜りの可視化処理を、上記評価データに基づく序列或いは数値の大きさに応じて上記空気溜りを識別表示する処理とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーション方法。
【請求項6】
浸漬処理を施す対象物の形状を複数の要素のデータでモデル化し、各要素の属性が気体であるか液体であるかを決定して空気溜りをシミュレーションするコンピュータが実行可能な空気溜りのシミュレーションプログラムにおいて、
属性が気体であると決定された要素と属性が液体であると決定された要素との境界線を、上記ワークの実際の浸漬条件に基づいて修正する境界線修正ステップと、
上記修正後の境界線に基づいて空気溜りを評価した評価データを算出し、該評価データに基づいて上記空気溜りを可視化処理するポスト処理ステップと
を備えることを特徴とする空気溜まりのシミュレーションプログラム。
【請求項7】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記境界線を形成する上記複数の要素の高さを平滑化して直線化した上で、上記浸漬条件としてワークの揺れに基づく修正高さを加えるにより、上記境界線を修正することを特徴とする請求項6記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項8】
上記境界線修正ステップにおいては、
上記修正高さを、上記ワークの釣下げ部における揺れ角度と上記ワークの釣下げ部から端部までの水平方向距離との相関関係について予め求めた実験式に基づいて算出することを特徴とする請求項7記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項9】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記評価データを、上記空気溜りの深さと面積との少なくとも一方に基づいて算出することを特徴とする請求項6〜8の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【請求項10】
上記ポスト処理ステップにおいては、
上記空気溜りの可視化処理を、上記評価データに基づく序列或いは数値の大きさに応じて上記空気溜りを識別表示する処理とすることを特徴とする請求項6〜9の何れか一に記載の空気溜りのシミュレーションプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2008−49269(P2008−49269A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228114(P2006−228114)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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