説明

空気調和機の制御装置

【課題】生産ラインにおける試験時間の短縮を可能とする空気調和機の制御装置を得ること。
【解決手段】商用交流電圧を整流する整流回路7と、整流回路7により整流された電圧を平滑して直流母線電圧とする平滑コンデンサ9と、直流母線電圧を任意の周波数の交流電圧に変換して圧縮機モータ12を駆動するインバータ部11と、直流母線電圧から制御電源電圧を生成するトランス10と、制御電源電圧が供給されて動作し、外部からの指令に基づいてインバータ部11を駆動制御する制御部8と、を備え、制御部8は、外部からの圧縮機モータ拘束通電指令に基づいて、圧縮機モータ12が動作しない程度の低トルクを与える圧縮機モータ拘束通電を継続して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の制御装置は、交流電源から供給される交流電力を直流に変換するコンバータ部と、その直流を任意周波数の交流に変換し圧縮機モータを動作させるインバータ部と、インバータ部を制御する制御部とを備えている。コンバータ部は、ダイオードブリッジ等の整流回路により整流された直流電圧を平滑する平滑コンデンサを有しているが、一般に、この平滑コンデンサは容量が大きく、室外機の運転中に蓄積された充電電荷が運転停止後に残留し、その残留電荷が放電して制御部に与える制御電源電圧が低下するまでの期間は、制御部が動作した状態が維持される。
【0003】
運転停止後に平滑コンデンサの残留電荷を急速放電させる技術として、運転停止時、三相インバータ回路のスイッチング素子の1つに常時開成指令を与えて欠相運転を行うことにより、モータを回転させることなく平滑コンデンサの残留電荷を放電させる技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−287396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、欠相運転を停止する際にも制御部による停止制御が必要となるため、欠相運転停止後も制御電源電圧が供給可能な電荷が平滑コンデンサに残留した状態が維持される。したがって、上記従来技術では、生産ラインにおける試験において、試験の途中一旦制御部を停止して再起動させる必要がある場合や、あるいは、試験終了後に制御部を停止して次の工程に移行させる場合に、交流電力の供給を停止してから制御部が停止するまでの時間が長くなり、試験時間が長くなる、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生産ラインにおける試験時間の短縮を可能とする空気調和機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる空気調和機の制御装置は、商用交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路により整流された電圧を平滑して直流母線電圧とする平滑コンデンサと、前記直流母線電圧を任意の周波数の交流電圧に変換して圧縮機モータを駆動するインバータ部と、前記直流母線電圧から制御電源電圧を生成するトランスと、前記制御電源電圧が供給されて動作し、外部からの指令に基づいて前記インバータ部を駆動制御する制御部と、を備え、前記制御部は、外部からの圧縮機モータ拘束通電指令に基づいて、前記圧縮機モータが動作しない程度の低トルクを与える圧縮機モータ拘束通電を継続して実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる圧縮機モータの拘束運転の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施の形態2にかかるファンモータの拘束運転の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態3にかかる電子制御式膨張弁の動作の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかる空気調和機の制御装置について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、生産ライン上の試験工程において、室外機100は、生産設備200に設けられた商用交流電源1からブレーカ2を介して端子台4および端子台5に商用交流電圧が供給される。ブレーカ2の制御は、設備側コントローラ3により実施される。設備側コントローラ3は、ブレーカ2の制御の他に、試験工程における室外機100への一連の指令を出力する。
【0013】
室外機100は、端子台4および端子台5と、制御装置300と、圧縮機モータ12とを備えている。制御装置300は、商用交流電圧を直流母線電圧に変換するコンバータ部400と、直流母線電圧を任意の周波数のU相,V相,W相の三相交流に変換して圧縮機モータ12を駆動するインバータ部11と、直流母線電圧から制御電源電圧を生成するトランス10と、制御電源電圧が供給され、生産設備200の設備側コントローラ3あるいは室内機(図示せず)からの指令に基づいてインバータ部11を駆動制御する制御部8とを備えている。コンバータ部400は、供給された商用交流電圧を整流する整流回路(ダイオードブリッジ)7と、整流された電圧を平滑する平滑コンデンサ9と、直流電圧を昇圧するためのリアクタ6とを備えている。
【0014】
つぎに、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程について、図1および図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。
【0015】
本実施の形態では、生産ライン上の各試験工程において、試験終了あるいは中断後に生産設備200側のブレーカ2を開いて商用交流電圧の供給を遮断すると共に、圧縮機モータ12が動作しない程度の低トルクを与える圧縮機モータ拘束通電を実施することにより、直流母線電圧と共にトランス10が生成する制御電源電圧が低下し、制御部8の動作が停止するまで平滑コンデンサ9に充電された残留電荷を急速に放電させる。このように制御することにより、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0016】
室外機100の生産ライン上の各試験工程において、まず、設備側コントローラ3は、ブレーカ2を閉じて(ステップST101)、室外機100に商用交流電圧の供給を開始する(ステップST102)。
【0017】
直流母線電圧が上昇すると、トランス10が生成する制御電源電圧がONとなり(ステップST103)、制御部8が起動して(ステップST104)、生産設備200の設備側コントローラ3あるいは室内機(図示せず)との通信を開始する(ステップST105)。
【0018】
制御部8は、生産設備200の設備側コントローラ3あるいは室内機(図示せず)のどちらと通信したかを判別することにより、試験モードか(生産設備200の設備側コントローラ3と通信)否か(室内機と通信)を判別する(ステップST106)。
【0019】
試験モードである(設備側コントローラ3と通信)場合(ステップST106;Yes)、制御部8は、設備側コントローラ3から受信した指令に基づいてテスト動作を行う(ステップST107)。
【0020】
当該試験が終了あるいは中断すると(ステップST108)、設備側コントローラ3は、ブレーカ2を開いて(ステップST109)商用交流電圧の供給を停止すると共に(ステップST110)、圧縮機モータ拘束通電指令を送信する(ステップST111)。
【0021】
制御部8は、設備側コントローラ3から受信した圧縮機モータ拘束通電指令に基づいて、インバータ部11を制御して、圧縮機モータ12の拘束通電を行う(ステップST112)。これにより、平滑コンデンサ9の残留電荷が急速に放電し、制御電源電圧がOFFとなる(ステップST113)。
【0022】
設備側コントローラ3は、室外機100に対する試験が完了して制御部8を再起動させる必要がないかを判定し(ステップST114)、制御部8を再起動させる必要がない場合は(ステップST114;Yes)、当該試験工程における処理を終了する。
【0023】
引き続き試験を行うため制御部8を再起動させる必要がある場合は(ステップST114;No)、ステップST101に戻り、ステップST101〜ステップST114の処理を繰り返し実行する。
【0024】
なお、ステップST106において、試験モードでない(室内機と通信:通常動作モードである)と判定された場合は(ステップST106;No)、制御部8は、室内機から受信した指令に基づいて通常動作を行う(ステップST115)。室内機内のブレーカ(図示せず)が開かれると(ステップST116)、制御部8は、制御動作を停止し、平滑コンデンサ9の残留電荷が放電して、トランス10が生成する制御電源電圧がOFFとなる(ステップST113)。そして、室内機内のブレーカが閉じられ商用交流電圧が供給されるまで、制御電源電圧のOFF状態が維持され、室内機内の制御部(図示せず)が起動判定した場合(ステップST114;Noに相当)、ステップST101に戻り、ステップST101〜ステップST114の処理を繰り返し実行する。
【0025】
図3は、実施の形態1にかかる圧縮機モータの拘束運転の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。図3(a)は、圧縮機モータ12の拘束運転を行った場合のタイムチャートを示し、図3(b)は、圧縮機モータ12の拘束運転を行っていない場合のタイムチャートを示している。
【0026】
図3(a)に示す圧縮機モータ12の拘束運転を行った場合の例では、ステップST101においてブレーカ2を閉じた時刻をT1、ステップST102において制御電源電圧がONとなり、制御部8が起動した時刻をT2、ステップST106においてブレーカ2を開くと共に、圧縮機モータ拘束通電指令を送信し、ステップST107において圧縮機モータ12の拘束通電を開始した時刻をT3、平滑コンデンサ9の残留電荷が放電し、ステップST108において制御電源電圧がOFFとなった時刻をT4としている。
【0027】
図3(b)に示す圧縮機モータ12の拘束運転を行っていない場合の例では、時刻T1〜時刻T3は、図3(a)に示すタイミングと等しく、制御電源電圧がOFFとなる時刻をT5としている。
【0028】
図3に示すように、生産ライン上における試験の終了あるいは中断後に圧縮機モータ12の拘束運転を行った場合(図3(a))には、圧縮機モータ12の拘束運転を行っていない場合(図3(b))と比較して、試験時間をT5−T4分だけ短縮することができる。
【0029】
以上説明したように、実施の形態1にかかる空気調和機の制御装置によれば、平滑コンデンサにより平滑された直流母線電圧から制御部に供給する制御電源電圧を生成し、商用交流電圧の供給停止に合わせて外部から入力される圧縮機モータ拘束通電指令に基づいて、圧縮機モータが動作しない程度の低トルクを与える圧縮機モータ拘束通電を継続して実施するようにしたので、平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させることができ、商用交流電圧の供給が停止してから制御部の動作が停止するまでの時間を短縮することができるので、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態1では、圧縮機モータを拘束通電して平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させるようにしたが、本実施の形態では、室外機に備えられたファンモータを拘束通電することにより平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させる例について説明する。
【0031】
図4は、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。図4に示すように、室外機100aは、実施の形態1において説明した構成に加え、ファンモータ14を備えている。また、室外機100aは、実施の形態1において説明した制御装置300に代えて、制御装置300aを備えている。
【0032】
実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置300aは、実施の形態1において説明した制御部8に代えて、同様に制御電源電圧により動作し、生産設備200の設備側コントローラ3あるいは室内機(図示せず)からの指令に基づいてインバータ部11およびファンモータ駆動用インバータ部13への運転指令を出力する制御部8aを備え、さらに、直流母線電圧を任意の周波数のU相,V相,W相の三相交流に変換してファンモータ14を駆動するファンモータ駆動用インバータ部13を備えている。なお、実施の形態1と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0033】
つぎに、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程について、図4および図5を参照して説明する。図5は、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。なお、実施の形態1と同一または同等の処理には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施の形態では、生産ライン上の各試験工程において、試験終了あるいは中断後に生産設備200側のブレーカ2を開いて商用交流電圧の供給を遮断すると共に、ファンモータ14が動作しない程度の低トルクを与えるファンモータ拘束通電を実施することにより、実施の形態1と同様に、直流母線電圧と共にトランス10が生成する制御電源電圧が低下し、制御部8aの動作が停止するまで平滑コンデンサ9に充電された残留電荷を急速に放電させる。このように制御することにより、実施の形態1と同様に、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0035】
図5に示すように、ステップST101〜ステップST110の各処理は、実施の形態1において説明した各処理と同一であり、ステップST111およびステップST112が異なる。
【0036】
設備側コントローラ3は、ステップST110において商用交流電圧の供給を停止すると共に、ファンモータ拘束通電指令を送信する(ステップST211)。
【0037】
制御部8aは、設備側コントローラ3から受信したファンモータ拘束通電指令に基づいて、ファンモータ駆動用インバータ部13を制御して、ファンモータ14の拘束通電を行う(ステップST212)。これにより、平滑コンデンサ9の残留電荷が急速に放電し、制御電源電圧がOFFとなる(ステップST113)。以降のステップST113〜ステップST116の各処理は、実施の形態1において説明した各処理と同一である。
【0038】
図6は、実施の形態2にかかるファンモータの拘束運転の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。図6(a)は、ファンモータ14の拘束運転を行った場合のタイムチャートを示し、図6(b)は、ファンモータ14の拘束運転を行っていない場合のタイムチャートを示している。
【0039】
図6(a)に示すファンモータ14の拘束運転を行った場合の例では、ステップST101においてブレーカ2を閉じた時刻をT1、ステップST102において制御電源電圧がONとなり、制御部8aが起動した時刻をT2、ステップST206においてブレーカ2を開くと共に、ファンモータ拘束通電指令を送信し、ステップST207においてファンモータ14の拘束通電を開始した時刻をT3、平滑コンデンサ9の残留電荷が放電し、ステップST108において制御電源電圧がOFFとなった時刻をT4としている。
【0040】
図6(b)に示すファンモータ14の拘束運転を行っていない場合の例では、時刻T1〜時刻T3は、図6(a)に示すタイミングと等しく、制御電源電圧がOFFとなる時刻をT5としている。
【0041】
図6に示すように、生産ライン上における試験の終了あるいは中断後にファンモータ14の拘束運転を行った場合(図6(a))には、ファンモータ14の拘束運転を行っていない場合(図6(b))と比較して、試験時間をT5−T4分だけ短縮することができる。
【0042】
以上説明したように、実施の形態2にかかる空気調和機の制御装置によれば、平滑コンデンサにより平滑された直流母線電圧から制御部に供給する制御電源電圧を生成し、商用交流電圧の供給停止に合わせて外部から入力されるファンモータ拘束通電指令に基づいて、ファンモータが動作しない程度の低トルクを与えるファンモータ拘束通電を継続して実施するようにしたので、平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させることができ、商用交流電圧の供給が停止してから制御部の動作が停止するまでの時間を短縮することができるので、実施の形態1と同様に、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態1および2では、圧縮機モータあるいはファンモータを拘束通電して平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させるようにしたが、本実施の形態では、室外機に備えられた電子制御式膨張弁を駆動することにより平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させる例について説明する。
【0044】
図7は、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置を適用した空気調和機の室外機と生産設備との一接続例を示す図である。図7に示すように、室外機100bは、実施の形態1において説明した構成に加え、電子制御式膨張弁16を備えている。また、室外機100bは、実施の形態1において説明した制御装置300に代えて、制御装置300bを備えている。
【0045】
実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置300bは、実施の形態1において説明したトランス10に代えて、直流母線電圧から第1の制御電源電圧および第2の制御電源電圧を生成するトランス10aを備えている。また、制御装置300bは、第1の制御電源電圧が供給され、電子制御式膨張弁16を駆動する電子制御式膨張弁駆動部15を備え、実施の形態1において説明した制御部8に代えて、第2の制御電源電圧が供給され、生産設備200の設備側コントローラ3あるいは室内機(図示せず)からの指令に基づいてインバータ部11および電子制御式膨張弁駆動部15への運転指令を出力する制御部8bを備えている。なお、実施の形態1と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
つぎに、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置を適用した室外機の試験工程について、図7および図8を参照して説明する。図8は、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置を適用した室外機の試験工程の一例を示すフローチャートである。なお、実施の形態1と同一または同等の処理には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施の形態では、生産ライン上の各試験工程において、試験終了あるいは中断後に生産設備200側のブレーカ2を開いて商用交流電圧の供給を遮断すると共に、電子制御式膨張弁16を動作させることにより、実施の形態1と同様に、直流母線電圧と共にトランス10が生成する制御電源電圧が低下し、制御部8bの動作が停止するまで平滑コンデンサ9に充電された残留電荷を急速に放電させる。このように制御することにより、実施の形態1と同様に、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0048】
図8に示すように、ステップST101〜ステップST110の各処理は、実施の形態1において説明した各処理と同一であり、ステップST111およびステップST112が異なる。
【0049】
設備側コントローラ3は、ステップST110において商用交流電圧の供給を停止すると共に、膨張弁動作指令を送信する(ステップST311)。
【0050】
制御部8bは、設備側コントローラ3から受信した膨張弁動作指令に基づいて、電子制御式膨張弁駆動部15を制御して、電子制御式膨張弁16を動作させる(ステップST312)。これにより、平滑コンデンサ9の残留電荷が急速に放電し、制御電源電圧がOFFとなる(ステップST113)。以降のステップST113〜ステップST116の各処理は、実施の形態1において説明した各処理と同一である。
【0051】
図9は、実施の形態3にかかる電子制御式膨張弁の動作の有無による試験工程タイムチャートの差異を示す図である。図9(a)は、電子制御式膨張弁16の動作を行った場合のタイムチャートを示し、図9(b)は、電子制御式膨張弁16の動作を行っていない場合のタイムチャートを示している。
【0052】
図9(a)に示す電子制御式膨張弁16の動作を行った場合の例では、ステップST101においてブレーカ2を閉じた時刻をT1、ステップST102において制御電源電圧がONとなり、制御部8bが起動した時刻をT2、ステップST306においてブレーカ2を開くと共に、膨張弁動作指令を送信し、ステップST307において電子制御式膨張弁16の動作を開始した時刻をT3、平滑コンデンサ9の残留電荷が放電し、ステップST108において制御電源電圧がOFFとなった時刻をT4としている。
【0053】
図9(b)に示す電子制御式膨張弁16の動作を行っていない場合の例では、時刻T1〜時刻T3は、図9(a)に示すタイミングと等しく、制御電源電圧がOFFとなる時刻をT5としている。
【0054】
図9に示すように、生産ライン上における試験の終了あるいは中断後に電子制御式膨張弁16の動作を行った場合(図9(a))には、電子制御式膨張弁16の動作を行っていない場合(図9(b))と比較して、試験時間をT5−T4分だけ短縮することができる。
【0055】
以上説明したように、実施の形態3にかかる空気調和機の制御装置によれば、平滑コンデンサにより平滑された直流母線電圧から制御部に供給する制御電源電圧を生成し、商用交流電圧の供給停止に合わせて外部から入力される膨張弁動作指令に基づいて、電子制御式膨張弁を継続して動作させるようにしたので、平滑コンデンサに充電された残留電荷を急速に放電させることができ、商用交流電圧の供給が停止してから制御部の動作が停止するまでの時間を短縮することができるので、実施の形態1と同様に、生産ラインにおける試験時間を短縮することができる。
【0056】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 商用交流電源
2 ブレーカ
3 設備側コントローラ
4 端子台
5 端子台
6 リアクタ
7 整流回路(ダイオードブリッジ)
8,8a,8b 制御部
9 平滑コンデンサ
10,10a トランス
11 インバータ部
12 圧縮機モータ
13 ファンモータ駆動用インバータ部
14 ファンモータ
15 電子制御式膨張弁駆動部
16 電子制御式膨張弁
100,100a,100b 室外機
200 生産設備
300,300a,300b 制御装置
400 コンバータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電圧を平滑して直流母線電圧とする平滑コンデンサと、
前記直流母線電圧を任意の周波数の交流電圧に変換して圧縮機モータを駆動するインバータ部と、
前記直流母線電圧から制御電源電圧を生成するトランスと、
前記制御電源電圧が供給されて動作し、外部からの指令に基づいて前記インバータ部を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部からの圧縮機モータ拘束通電指令に基づいて、前記圧縮機モータが動作しない程度の低トルクを与える圧縮機モータ拘束通電を継続して実施することを特徴とする空気調和機の制御装置。
【請求項2】
商用交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電圧を平滑して直流母線電圧とする平滑コンデンサと、
前記直流母線電圧を任意の周波数の交流電圧に変換してファンモータを駆動するファンモータ駆動用インバータ部と、
前記直流母線電圧から制御電源電圧を生成するトランスと、
前記制御電源電圧が供給されて動作し、外部からの指令に基づいて前記ファンモータ駆動用インバータ部を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部からのファンモータ拘束通電指令に基づいて、前記ファンモータが動作しない程度の低トルクを与えるファンモータ拘束通電を継続して実施することを特徴とする空気調和機の制御装置。
【請求項3】
商用交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電圧を平滑して直流母線電圧とする平滑コンデンサと、
前記直流母線電圧から第1の制御電源電圧および第2の制御電源電圧を生成するトランスと、
前記第1の制御電源電圧が供給されて動作し、電子制御式膨張弁を駆動する電子制御式膨張弁駆動部と、
前記第2の制御電源電圧が供給されて動作し、外部からの指令に基づいて前記電子制御式膨張弁駆動部を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部からの膨張弁動作指令に基づいて、前記電子制御式膨張弁を継続して動作させることを特徴とする空気調和機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239289(P2012−239289A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106283(P2011−106283)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】