説明

空気調和装置

【課題】加湿器、除湿機、空気清浄機、冷暖房装置などの空気調和装置を用いて、室内を抗菌・抗ウイルス環境に維持する。
【解決手段】送風ファンにより室内空気を吸込み、所定の空気調質手段により所定の状態に調質処理した上で室外に吹き出す空気送風系を備えてなる空気調和装置において、濃度コントロールの可能な二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を付加する抗菌・抗ウイルス剤付加手段を設け、該抗菌・抗ウイルス剤付加手段を介して室内へ吹き出す空気に対して所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤を混合するようにし、同抗菌・抗ウイルス剤を混合した空気によって室内を抗菌・抗ウイルス環境に形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、室内に供給される空気中に気化させた所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤を付加することにより、快適かつ清浄な空気環境を形成し得るようにした空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、加湿機、除湿機、空気清浄機、芳香付加装置、ヒートポンプ式の冷暖房装置など、室内空気を快適な状態に調質(調和)する各種の空気調和装置が提供されるようになっており、快適環境形成商品として多くのユーザーに愛されている。
【0003】
それらの中には、例えばプラズマイオン発生装置を備え、除菌機能を発揮させるようにしたものもある(特許文献1)。このような装置によると、ある程度は室内空気中の細菌の増殖を抑制することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−84055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、鳥インフルエンザ(人から人に感染する)に代表されるような新しいタイプのインフルエンザウイルスに対する恐怖が増大しており、何らかの対策が必要とされている。
【0006】
そのようなウイルス対策の一つとして、上述のような室内生活環境における細菌抑制対策は有効であり、ウイルス感染の拡大を低コストに防止することができる。
【0007】
しかし、上記従来の空気調和装置のプラズマイオン発生手段におけるマイナスイオンは、一般細菌に対して若干の除菌作用を有するだけなのが現状であり、鳥インフルエンザウイルスなどの新型ウイルスには有効な抑制作用を有していない。
【0008】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、マイナスイオンなどに比べて遥かに制菌作用が高く、鳥インフルエンザなどの新型ウイルスにも有効な二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を濃度コントロール可能な形にして使用し、室内へ吹き出される調質空気中に混合することにより、新型ウイルスに対する抑制効果をも実現した空気調和装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような有効な課題解決手段を備えて構成されている。
【0010】
(1) 請求項1の発明
この発明は、送風ファンにより室内空気を吸込み、所定の空気調質手段により所定の状態に調質処理した上で室外に吹き出す空気送風系を備えてなる空気調和装置において、濃度コントロールの可能な二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を付加する抗菌・抗ウイルス剤付加手段を設け、該抗菌・抗ウイルス剤付加手段を介して室内へ吹き出す空気に対して所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤を混合するようにし、同抗菌・抗ウイルス剤を混合した空気によって室内を抗菌・抗ウイルス環境に形成するようにしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成によると、当該空気調和装置の送風系路に設けられた二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤付加手段によって、室内に吹き出される調質空気が鳥インフルエンザなどの新型ウイルスに対する制菌作用を有するものとなり、これによって室内空気環境の快適化、抗ウイルス性の高い清浄化を図ることができる。
【0012】
しかも、抗菌・抗ウイルス剤付加手段による抗菌・抗ウイルス剤は、所定の濃度に濃度コントロールされ、人体にとって安全な濃度範囲、臭いの低い濃度レベルで使用されるようになっているから、極めて安全であり、また快適性を阻害しない。
【0013】
(2) 請求項2の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、抗菌・抗ウイルス剤付加手段は、空気吸込部から空気吹出部に至る送風系路上において、少なくとも電気回路基板設置部よりも空気流下流側に位置して設けられていることを特徴としている。
【0014】
このような構成によると、電気回路基板等電装品部分を酸化作用の強い二酸化塩素系の薬剤が通過することを避けることができ、電装品の錆びの発生、劣化を回避することができる。
【0015】
(3) 請求項3の発明
この発明は、上記請求項1又は2の発明の構成において、空気調質手段が加湿手段であって、その加湿部が、吸水型のフィルタと該吸水型のフィルタを加熱して水を蒸発させる加熱手段とからなり、抗菌・抗ウイルス剤付加手段は、抗菌・抗ウイルス剤を含浸させた吸水フィルタにより構成されていることを特徴としている。
【0016】
このような構成によると、水を吸上げて送風系路を流れる空気中に水分を付加する吸水フィルタのフィルタ素材中の抗菌・抗ウイルス剤が、同水分の付加と同時に一緒に付加され、加熱蒸発されて抗菌・抗ウイルス性のある加湿空気となって室内に吹き出され、室内を抗菌・抗ウイルス性の環境に形成する。
【0017】
(4) 請求項4の発明
この発明は、上記請求項3の発明の構成において、抗菌・抗ウイルス剤の放出量は、加熱手段の発熱量を電気的に制御することにより調節されるようになっていることを特徴としている。
【0018】
このような構成によると、所定の空気吹出量の下において、吸水フィルタ中の水分を加熱蒸発させる加熱手段の発熱量(加熱量)を変えることにより、空気量との関係において所望の抗菌・抗ウイルス剤濃度の加湿空気を吹き出させることができ、有効なウイルス抑制効果を得られる範囲で、しかも人体に対して安全な濃度に確実に調節することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の結果、本願発明によると、従来のようなマイナスイオンによる場合と異なり、確実に室内空気の制菌効果を実現することができるようになり、鳥インフルエンザなどの新型ウイルス対策として有効なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、いくつかの本願発明の最良の実施の形態について説明する。
【0021】
(最良の実施の形態1)
先ず図1〜図4は、吸水フィルタ型の加湿器として構成した本願発明の最良の実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示している。
【0022】
この実施の形態の加湿器は、例えば図1ないし図3に示すように、室内空気を循環させる送風ファン3と、室内空気を加湿する加湿手段4と、該加湿手段4に対して水Wを供給する水供給手段5とを具備した加湿器本体1と、把手39を有して上記加湿器本体1に対して着脱自在とされ、かつ装着状態において前記水供給手段5に対して水Wを補給できるように構成された水タンク2とを備えて構成されており、前記加湿器本体1は、一側に前記送風ファン3の駆動源であるファンモータ6を合成樹脂製の気密シール壁を介して内蔵した立設部1aを有する略L字形状とされている。
【0023】
前記送風ファン3は、前記加湿器本体1において前記立設部1aに隣接して設けられており、前記ファンモータ6により回転駆動される合成樹脂製のファンロータ7と該ファンロータ7を囲繞するスクロールタイプの合成樹脂製ファンケーシング8とからなっている。該ファンケーシング8は、その空気吸込口8aを前記立設部1aの反対側(吸水フィルタ11側)に開口させる一方、その空気吹出口8bを上向きに開口させて配設されており、該空気吹出口8bの開口は、前記立設部1aに沿って上方に延設されたカバー部1cの上面から斜め前面にかけて形成された合成樹脂製の加湿空気吹出グリル9に臨まされている。
【0024】
前記加湿手段4は、前記加湿器本体1の底部側中央の平面部1b上において、前記ファンケーシング8に隣接して形成された貯水槽10と、該貯水槽10の水W中に下端が浸漬され、且つ前記ファンケーシング8の空気吸込口8aに対向するように着脱自在に立設された吸水フィルタ11とからなっている。この吸水フィルタ11は、例えば図4に示すように、吸湿性に優れた材質(例えば布)からなるフィルタ生地11aをプリーツ(ひだ)状に多数回折って形成されている。
【0025】
なお、この吸水フィルタ11と前記ファンケーシング8の空気吸込口8aとの間には、所定の隙間Sを介在させている。このようにすると、吸水フィルタ11の全面を加湿領域として利用することができる(図1および図3参照)。
【0026】
同吸水フィルタ11の上方には、さらに必要なスイッチ類を備えた操作パネル12Aが設けられている。該操作パネル12Aには、それぞれ電気回路基板15側のマイコンに接続された、電源をON,OFFするメインスイッチ、送風ファン3の風量を複数段階に切り換える風量切換スイッチ、ヒータユニット16の発熱量を可変する加熱量可変スイッチ等(図示省略)が設けられている。符号15が電気回路基板であり、同操作パネル12Aの下方に設けられた合成樹脂製の制御ボックス12B内に気密シール状態で収納されており、電源回路、ヒータユニット16内の加熱量制御回路部、ファンモータ6の駆動回路、マイコン等を備えている。
【0027】
また、前記吸水フィルタ11の背面側には、前記送風ファン3により空気吸込口8aから吸い込まれた室内空気を所定の温度に予熱するための通風可能な上述のヒータユニット16が配設されている。該ヒータユニット16の背面側には室内からの空気吸込口(図示省略)が形成されている。
【0028】
さらに、前記水供給手段5は、前記加湿器本体1底部中央の平面部1bにおいて、前記貯水槽10に接続するように隣接形成された水通路17と、前記水タンク2の給水口21が装着される第1貯水部18と、前記水タンク2のフロート26が装着される第2貯水部19とにより構成されている。
【0029】
そして、水タンク2が装着された状態においては、前記吸水フィルタ11の前後は前板1dおよび背板1eにより閉塞されており(図2参照)、上記図示しない空気吸込口から吸い込まれて、上記ヒータユニット16により予熱された室内空気Aが、上記吸水フィルタ11と水タンク2との間の空間を経て上記吸水フィルタ11を通過し、該吸水フィルタ11を通過する際に該吸水フィルタ11から加熱蒸発する水蒸気で加湿され、上記ファンケーシング8の空気吸込口8aに吸い込まれる空気通路20が形成されるようになっている。
【0030】
前記水タンク2の底面2a中央部には、給水口21が形成されており、該給水口21には、給水キャップ22が螺着脱自在に取り付けられている。該給水キャップ22には、水タンク2の装着時において前記第1貯水部18の中心部に立設されたピン状の開弁作動部材23により開弁操作される弁機構24が設けられている。なお符号25は弁機構24を閉弁方向に付勢するコイルスプリングである。
【0031】
そして、同弁機構24は、上記水タンク2が、上記第1貯水部18から上方に取り外された時には、同コイルスプリング25の作用により上記弁機構24の弁体を閉じる。他方、逆に第1貯水部18上に装着されると、上記開弁作動部材23により上記弁機構24が上記コイルスプリング25に拡して開弁されて、第1貯水部18内に水タンク2から水Wが供給される。
【0032】
ところで、この実施の形態の場合、上記図4に示す吸水フィルタ11のフィルタ生地11a中には所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤が含浸されている。
【0033】
この抗菌・抗ウイルス剤には、例えばフリーラジカルによる強力な酸化作用を有し、細菌、真菌、ウイルス等の主要タンパク質を酸化修飾するとともに硫化水素などの悪臭物質をも酸化修飾する二酸化塩素系の薬剤で、水により希釈しても長期間一定の安定した濃度を維持することができるようになったものが採用されている。
【0034】
一般に二酸化塩素(ClO2)は、亜塩素酸塩(NaClO2)に酸を混合させて発生させるが、該二酸化塩素ガスは非常に水に溶けやすい反面、水に溶けている二酸化塩素ガス濃度は不安定で、安定した濃度を維持することができない難点がある。
【0035】
したがって、これまでの一般的な二酸化塩素液剤は、濃度管理が不可能で、人体に影響する環境の下では抗菌・抗ウイルス剤として使用することができなかった。
【0036】
しかし、この実施の形態の抗菌・抗ウイルス剤では、二酸化塩素溶存ガス、亜塩素酸塩、PH調整剤を所定の条件で同時に用いることにより、二酸化塩素濃度を長期に亘って一定に維持できるようにした二酸化塩素系の薬剤を用いている(例えば特許第3110724号に示されるものなど)。
【0037】
したがって、濃度管理が可能で、人体に影響する環境下でも安心して使用することができるようになっている。
【0038】
このような構成によると、上述のような抗菌・抗ウイルス剤を含んだ吸水フィルタ11部分に、上記第1貯水部18部分からの水が吸水されて次第に上端側まで上昇してくる。すると、該上昇してくる水Wの中に順次上記水Wに溶けやすい二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤がスムーズに溶け込んでゆく。そして、続いて該抗菌・抗ウイルス剤が溶け込んだ水Wを含んだ吸水フィルタ11部分に上記ヒータユニット16を介して予熱された室内空気が供給されると、水Wの蒸発と同時に所定の濃度の二酸化塩素ガスが発生し、送風ファン3により加湿空気吹出グリル9から室内に吹き出される。
【0039】
そして、それによって室内のウイルス、細菌、真菌等のタンパク質が酸化修飾されて除菌されるとともに、硫化水素等の悪臭成分が酸化修飾されて消臭浄化される。
【0040】
以上の構成によると、送風ファン3により室内の空気を吸込み、加湿手段4により所定の湿度に加湿処理した上で室内に吹き出す空気送風系を備えてなる空気調和装置において、濃度コントロールの可能な二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を含浸させた抗菌・抗ウイルス剤付加手段としての吸水フィルタ11を設け、該抗菌・抗ウイルス剤を含浸させた吸水フィルタ11を介して室内へ吹き出す空気に対して所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤を混合するようにし、同抗菌・抗ウイルス剤を混合した空気によって室内を抗菌・抗ウイルス環境に形成するようにしたことを特徴としている。
【0041】
このような構成によると、当該空気調和装置の送風系路に設けられた吸水フィルタ11から水とともに気化する二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤によって、室内に吹き出される加湿空気が鳥インフルエンザなどの新型ウイルスに対する制菌作用を有するものとなり、これによって室内空気環境の快適化とともに、抗ウイルス性の高い清浄化を図ることができる。
【0042】
しかも、抗菌・抗ウイルス剤付加手段としての吸水フィルタ11によって空気中に混合される抗菌・抗ウイルス剤は、予じめ所定の濃度に濃度コントロールされ、人体にとって安全な濃度範囲、臭いの低い濃度レベルで使用されるようになっているから、極めて安全であり、また快適性を阻害しない。
【0043】
また、同構成において、上記抗菌・抗ウイルス剤付加手段としての吸水フィルタ11は、空気吸込部から加湿空気吹出グリル9に至る送風系路上において、少なくとも電気回路基板15やファンモータ6とは、気密性のある合成樹脂製のシール壁を介して確実に隔離されている。
【0044】
このような構成によると、電気回路基板15やファンモータ6等電装品部分を酸化作用の強い二酸化塩素系の薬剤が通過することを確実に避けることができ、電装品部分の錆びの発生、劣化を回避することができる。
【0045】
また、以上の構成では、加湿部が、吸水型のフィルタ11と該吸水型のフィルタ11を加熱して水を蒸発させるヒータユニット16とからなり、抗菌・抗ウイルス剤付加手段が、抗菌・抗ウイルス剤を含浸させた吸水フィルタ11により構成されている。
【0046】
このような構成によると、水を吸上げて送風系路を流れる空気中に水分を付加する吸水フィルタ11のフィルタ素材11a中の抗菌・抗ウイルス剤が、同水分の付加と同時に一緒に付加され、加熱蒸発されて抗菌・抗ウイルス性のある加湿空気となって室内に吹き出され、室内を抗菌・抗ウイルス性の環境に形成する。
【0047】
そして、その時の抗菌・抗ウイルス剤の放出量は、ヒータユニット16の発熱量を電気的に制御することにより調節されるようになっている。
【0048】
このような構成によると、所定の空気吹出量の下において、吸水フィルタ11中の水分を加熱蒸発させるヒータユニット16の発熱量(加熱量)をマイコンを利用して可変調節することにより、空気量との関係において適切な抗菌・抗ウイルス剤濃度の加湿空気を吹き出させることができ、有効なウイルス抑制効果を得られる範囲で、しかも人体に対して安全な濃度に確実に調節することができる。
【0049】
以上の結果、同構成によると、従来のようなマイナスイオンによる場合と異なり、確実に室内空気の制菌効果を実現することができるようになり、鳥インフルエンザなどの新型ウイルス対策として有効なものとなる。
【0050】
しかも、同構成においては、抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50は、空気吸込口から空気吹出口に至る送風系路上において、送風ファンや電気回路基板等の設置部よりも空気流下流側である空気吹出口付近に位置して設けられている。
【0051】
したがって、ファンモータや電気回路基板等電装品部分を酸化作用の強い二酸化塩素系の薬剤が通過することを避けることができ、電装品の錆びの発生、劣化を回避することができる。
【0052】
(変形例)
以上の場合において、さらに水タンク2内の水(H2O)中に上述した二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を予じめ所定の濃度で混合溶解させて置くことも可能である。
【0053】
このような構成によると、あらかじめ抗菌・抗ウイルス剤を含んだ水タンク2内の水Wが、上記第1貯水部18から吸水フィルタ11の下部に供給され、吸水フィルタ11によって吸水されて上昇する。そして、同状態で該抗菌・抗ウイルス剤が溶け込んだ水Wを含んだ吸水フィルタ11部分に上記ヒータユニット16を介して予熱された室内空気が供給されると、水Wの蒸発と同時に所定の濃度の二酸化塩素ガスが発生し、送風ファン3により加湿空気吹出グリル9から室内に吹き出される。
【0054】
そして、これによって室内のウイルス、細菌、真菌等の除菌、悪臭等の浄化が図られる。同構成の場合、吸水フィルタ11の生地11aに含浸させてある抗菌・抗ウイルス剤を吸水と同時に溶け込ませる場合に比べて、より溶解が確実であり、濃度のコントロールも正確になる。したがって、抗菌・抗ウイルス剤の付加性能を一層有効に向上させることが可能となる。
【0055】
しかも、この場合にも、抗菌・抗ウイルス剤が送風空気中に気化混入されるのは、あくまでも吸水フィルタ11部分であるから、同吸水フィルタ11部分以降(下流側)の送風通路の酸化防止対策(通路金属部の樹脂コーティング、電気回路基板15やファンモータ6部分の樹脂シール)を施しておけば足りる。
【0056】
(最良の実施の形態2)
次に図5および図6は、加湿ロータ型の加湿器として構成した本願発明の最良の実施の形態2に係る空気調和装置の構成を示している。
【0057】
この実施の形態の加湿器40は、例えば図5および図6に示すように、本体ケース40aと、該本体ケース40a内に収納された送付ファン44と、水受けトレー49と、該水受けトレー49内の第1の貯水部49a上に設けられ、同第1の貯水部49aに水を供給する水供給手段である水タンク48と、同水受けトレー49の第2の貯水部49b部分に、下部を浸漬する形で回転可能に設けられた回転加湿フィルタ45と、上記送付ファン44から回転加湿フィルタ45への送風系路の途中にあって当該送風系路を流れる空気を所定の温度に加熱するヒータユニット51と、上記回転加湿フィルタ45を経て加湿された空気を分割して流す第1,第2の2つの分流通路a,bの内の小径側第2の分流通路bに設けられた抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50とから構成されている。
【0058】
上記送付ファン44は、例えばシロッコファン(側方吸込み遠心方向吹出タイプの多翼ファン)よりなり、本体ケース40aの側部に設けられた空気吸込口41から室内の空気A1を吸込み、上記ヒータユニット51を介して所定の温度に加熱した後に上記回転加湿フィルタ45に供給する。
【0059】
回転加湿フィルタ45は、例えば図6に示すように、複数枚のフィルタプレート45a,45a・・・、両端側2枚のカバープレート45b、45b、フィルタ回転軸36及びフィルタギヤ45dからなっている。
【0060】
フィルタプレート45a,45a・・・は、例えば合成樹脂製(ABS)の円板状部材であり、その両側プレート面には全面に亘って水の付着性を高めるための所定の表面処理又は表面加工が施されている。
【0061】
カバープレート45b、45bは、フィルタプレート45a,45a・・・と同形で少し小径の合成樹脂製の円板状部材であり、それぞれスペーサとしての円形の凸部を介してフィルタプレート45a,45a・・・を軸方向に多数枚並設した回転加湿フィルタ45の両端部に配置されている。
【0062】
そして、同回転加湿フィルタ45両側の水受けトレー49側の隔壁35,35には、U字状溝の軸受部がそれぞれ形成されており、それら各軸受部に回転加湿フィルタ45の回転軸36が回動自在に軸支されている。
【0063】
上述のような構成の加湿器において、その加湿能力を向上させるためには、上述した回転加湿フィルタ45のフィルタプレート45a,45a・・・各々の水の汲み上げ能力を高くすることが必要である。そのような要請に応える構成として、フィルタプレート45a,45a・・・のプレート面に親水処理を施せば一応水の付着性を高めることができる。
【0064】
しかし、加湿器の場合、季節や環境に応じて必要とされる加湿量(調整範囲)には相当な幅があり、一定レベル以上の大きな加湿能力が要求されるような場合には、それだけでは足りない。
【0065】
そこで、この実施の形態では、上記親水処理に加えて、さらに水の毛細管作用および表面張力を利用して一段と厚さの厚い水膜をプレート面の全体に広く、かつ速やかに形成することができるように、図示はしないが、フィルタプレート45a,45a・・・のプレート面全体にハニカム形状の凹条の溝(また凸状のリブ)を形成している。
【0066】
すなわち、この実施の形態では、凹条の溝(また凸状のリブ)をハニカム形状に屈曲させ、それをフィルタプレート45a,45a・・・の周端面と回転軸挿通孔45cおよびスペーサ凸部部分を除く全面に連続させて展開する。そして、それにより同凹条の溝部分の毛細管作用(または凸状のリブにより水との壁面の接触角を小さくし、表面張力を大きくする作用)を利用して水を速やかに侵入展張させることによって、それら凹条の溝(または凸状のリブ)間の六角形状のハニカム面部分に可能な限り厚い水膜を形成するとともに、その広がり力、係留力を大きくするようにしてポンピング力を大きくしている。
【0067】
一方、上記水受けトレー49は、本体ケース40aの左側に位置して左右に対向する垂直な隔壁の間に形成されるフィルタ収納部を兼ねた第2の貯水部49bと、その外側(左側)に水平に一体成形された第1の貯水部49aとからなっている。
【0068】
第1の貯水部49aには、水タンク48側の給水口部48aが嵌合される給水口嵌合壁46b、該給水口嵌合壁46bの中央部に設けられた水タンク48の給水口部48a内に内設する弁を開放するための軸状の突部46a、上記給水口嵌合壁46bの水流出口部から水が供給される貯水溝、該貯水溝の背面側に設けられた安全装置としてのフロートスイッチ、貯水溝と上記第2の貯水部49bとを連通する連絡口(上下方向の隙間部参照)等が設けられている。
【0069】
水タンク48の給水口部48aが給水口嵌合壁46bに載置されると、上記軸状の突部46aにより弁の弁体部分を開放し、所定量の水が給水口嵌合壁46bの開口部を介して第1の貯水部49aの貯水溝内に流出する。この貯水溝に流出した水の一部は、ガイド壁でガイドされながら上記連絡口を介して第2の貯水部49b内に流入し、貯水溝の水の高さと同じ高さまで水を貯留する。
【0070】
そして、上述のように、回転加湿フィルタ45は、円板状のフィルタプレート45a,45a・・・を多数枚並設することによって構成されているとともに、該回転加湿フィルタ45の下部を第2の貯水部49bに浸漬した状態で回転駆動され、同回転駆動状態において上記送付ファン44およびヒータ部51により温風を供給することにより、フィルタプレート45a,45a・・・の表面に付着した水を蒸発させることによって加湿空気を形成するようになっている。
【0071】
そして、同加湿された空気は、送付ファン44の上方に形成された第1,第2の分流通路a,bを介して第1,第2の空気吹出口42a,42bから室内に吹き出される。
【0072】
ところで、第2の貯水部49bの回転加湿フィルタ45から第1,第2の空気吹出口42a,42bの間は、中間仕切壁を介して上述のように2本の分流通路a,bに形成されており、小径側第2の分流通路b側には、二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50が設けられており、同第2の分流通路bから流れ出て行く加湿空気A3には所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤が気化混合され、第1の分流通路a側の通常の加湿空気A2とともに室内に吹き出される。
【0073】
そして、それによって室内に吹き出される加湿空気がトータルとして鳥インフルエンザなどの新型ウイルスに対する制菌作用を有するものとなり(A2+A3)、抗ウイルス性の高い加湿清浄化を図ることができる。
【0074】
上記第2の分流路bに設けられている抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50は、例えば上記実施の形態1のものと同様の長期間安定した一定の濃度に維持することができる二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を必要量吸着保持させたポーラス材(又はそれと同様の通風可能な粒状物の混合体)により構成されており、同抗菌・抗ウイルス剤が通風時に加湿空気A2中の水蒸気に速やかに溶け込んで抗菌・抗ウイルス性の加湿空気A3となり、通常の加湿空気A2とともに室内に吹き出されるようにしている。そして、該抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50は、所定時間使用されると、交換される。
【0075】
(変形例1)
また、上記抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50は、例えば上記抗菌・抗ウイルス剤を所定の濃度に希釈して貯留する溶液タンクと、該溶液タンク内の二酸化塩素薬剤液を吸い出して、上記第2の分流通路bにおける空気の流通負圧を利用して霧吹き状に加湿空気A2中に吹き出す霧吹き装置とから構成することもできる。
【0076】
このような構成にすると、より加湿空気に対する二酸化塩素の付加性能が向上する。
【0077】
(変形例2)
さらに、また上記抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット50は、上記変形例1の構成の溶液タンク内の二酸化塩素溶液を注出ポンプにより注出してノズル部から霧吹き状に吹き出させるようにしてもよい。
【0078】
その場合、電動式の注出ポンプを使用してもよいが、例えば図7に示すように、第2の分流通路bの側壁部に半円状の凹部を形成し、そこに吹出空気流によって回転する風車56を軸装し、同風車56の回転による駆動力を利用して注出ポンプ52を駆動し、溶液タンク51内の二酸化塩素溶液を注出してノズル部53から吹き出させるようにしてもよい。
【0079】
このようにすると、上述した送風ファン44の風量が増大すると、それに比例して加湿空気A3中の二酸化塩素濃度も上がり、溶液濃度さえ管理しておけば、特別な濃度制御が不要となる。
【0080】
図7中、52aは風車56の回転軸と注出ポンプ52の駆動軸とを連結する連結軸、54は溶液注出パイプ、55は溶液吐出パイプである。
【0081】
(最良の実施の形態3)
次に図8は、吸着型の除湿器に適用した本願発明の最良の実施の形態3に係る空気調和装置の構成を示している。
【0082】
この実施の形態の除湿器60は、空気吸込口61および空気吹出口62を有する本体ケース60aと、該本体ケース60a内の送風系路途中に下半分部分を介装させた状態で、回転可能に設けられた吸湿ロータ63と、同送風系路途中に設けられた送風ファン66と、同送風系路の送風ファン66よりも下流側に設けられた抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット68と、上記吸湿ロータ63を半回転させた上方位置で吸着された水分を加熱蒸発させて脱水するヒータユニット64と、上記吸湿ロータ63から脱着された水を水回収通路65を介して回収貯留する水タンク67とから構成されている。抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット68は、上記実施の形態2のものと同様のものが採用されている(変形例1,2のものを含めて)。
【0083】
吸湿ロータ63は、ハニカム構造のゼオライト等水分の吸脱着が可能な多孔質の吸質部材からなっており、上記送風系路中に介装された下半分側部分で空気吸込口61から吸込んだ空気A1中の水分を吸着し、乾燥させた上で、除湿空気A2として送風ファン66に供給する。そして、送風ファン66により、上記抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット68を介して抗菌・抗ウイルス剤を所定の濃度に混合し、抗菌・抗ウイルス機能を有するドライエアA3として室内に吹き出す。
【0084】
一方、同吸湿ロータ63の上半分側部分は、ヒータユニット64に対応した脱水部となっており、ヒータユニット64によって加熱されることにより、下方側送風系路中にある時に吸着された水分を放出し、上記水回収通路65を介して水タンク67内に回収する。
【0085】
このような構成によると、室内空気の最適な除湿が可能となると同時に、部屋の中の菌、真菌、ウイルス等を滅菌、抑制することができる。
【0086】
特に、細菌問題になっている鳥インフルエンザウイルス等の各種ウイルス対策として有効である。
【0087】
(変形例)
以上の除湿ロータ63は、水分の吸脱着が容易なゼオライト等の多孔質部材よりなっている。
【0088】
したがって、例えば図9に示すように、その水分吸着部側と水分放出部側との各々に白抜き矢印で示すような方向の送風系路を対応させ、それらの送風路の何れか一方に切り換えて室内に吹き出させるようにすると、除湿と加湿両方の機能をもった空気調和装置として構成することができ、同装置において送風ファン66および空気吹出通路を共通にすると、何れの場合にも上述のような抗菌・抗ウイルス機能を付加することができる。
【0089】
なお、図中符号43bは、上記除加湿ロータ43の回転支軸であり、該回転支軸43bは駆動モータ48のロータ軸48aに連結され、回転可能となっている。
【0090】
<その他の実施の形態>
(1) 本願発明は、以上のような加湿器、除湿器、除加湿器のほか、空気清浄機や熱交換器を備えた冷暖房装置等の各種空気調和、空気調整装置にも全く同様に適用することができる。
【0091】
(2) またスチーム式の加湿器に適用した場合、アロマオイルを入れる皿に、上述した二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を入れると、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(3) さらに、以上各実施の形態の構成において、例えば運転休止中における機内ガス充満による錆びの発生を抑えるために、運転休止中(運転停止後)であっても、ファンを少し(一瞬)回転させて、定期的に二酸化塩素ガスを外部へ出し、本体内に溜めないようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】吸水フィルタ型の加湿機として構成した本願発明の最良の実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】同装置の一部切欠平面図である。
【図3】同装置の水平断面図である。
【図4】同装置における吸水フィルタ部分の斜視図である。
【図5】回転加湿フィルタ型の加湿器として構成された本願発明の最良の実施の形態2に係る空気調和装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】同装置における回転加湿フィルタ部分の構成を示す斜視図である。
【図7】同装置における抗菌・抗ウイルス剤付加ユニットの構成の一例を示す一部切欠斜視図である。
【図8】吸着型の除湿器として構成された本願発明の最良の実施の形態3に係る空気調和装置の構成を示す縦断面図である。
【図9】同装置を除加湿機として変形した時の除加湿ロータ部の構成と作用を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1は加湿器本体、2は水タンク、3は送風ファン、11は吸水フィルタ、11aは生地、15は電気回路基板、44は送風ファン、45は回転加湿フィルタ、50は抗菌・抗ウイルス剤付加ユニット、63は吸湿ロータ、66は送風ファン、68は抗菌・抗ウイルス剤付加ユニットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファンにより室内空気を吸込み、所定の空気調質手段により所定の状態に調質処理した上で室外に吹き出す空気送風系を備えてなる空気調和装置において、濃度コントロールの可能な二酸化塩素系の抗菌・抗ウイルス剤を付加する抗菌・抗ウイルス剤付加手段を設け、該抗菌・抗ウイルス剤付加手段を介して室内へ吹き出す空気に対して所定の濃度の抗菌・抗ウイルス剤を混合するようにし、同抗菌・抗ウイルス剤を混合した空気によって室内を抗菌・抗ウイルス環境に形成するようにしたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
抗菌・抗ウイルス剤付加手段は、空気吸込部から空気吹出部に至る送風系路上において、少なくとも電気回路基板設置部よりも空気流下流側に位置して設けられていることを特徴とする請求項1記載の空気調和装置。
【請求項3】
空気調質手段が加湿手段であって、その加湿部が、吸水型のフィルタと該吸水型のフィルタを加熱して水を蒸発させる加熱手段とからなり、抗菌・抗ウイルス剤付加手段は、抗菌・抗ウイルス剤を含浸させた吸水フィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の空気調和装置。
【請求項4】
抗菌・抗ウイルス剤の放出量は、加熱手段の発熱量を電気的に制御することにより調節されるようになっていることを特徴とする請求項3記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−2155(P2010−2155A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163194(P2008−163194)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】