説明

空気調和装置

【課題】比較的簡単な構成で、連絡配管及び連絡電線にノイズ電流が伝搬されるのを防止できるようにする。
【解決手段】液連絡管(23)及びガス連絡管(24)と連絡電線(26)との間には直列共振回路(45)が形成される。インピーダンス回路(40)のインピーダンスは、直列共振回路(45)のインピーダンスよりも低くなっている。そして、インピーダンス回路(40)の一端は、コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点に接続される一方、他端は、アースライン(27)に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒が流通する連絡配管によって室外機及び室内機が接続されて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、この室外機及び室内機は、電源線及び通信線を含む連絡電線により接続されている。
【0003】
特許文献1には、ノイズフィルタと、ノイズフィルタとは別に、室外機の各電源ラインとアース間にインダクタとコンデンサの直列回路を設け、その定数を直列共振周波数がAMラジオ放送の周波数と一致するように設定した構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、室内機と室外機の通信線より発生するノイズを抑制してラジオノイズの低減を図るために、室内機の電子制御装置の回路グランドと室内機本体のシャーシアースとの間を、コンデンサを介して接続するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−201140号公報
【特許文献2】特開平5−196286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の空気調和装置は、連絡配管及び連絡電線がアンテナを形成したときに伝搬されるノイズ電流については何ら考慮されていない。
【0007】
具体的に、連絡配管及び連絡電線の間には、等価回路で表される直列共振回路が形成される。この直列共振回路では、特定の周波数領域においてインピーダンスが低くなり、ノイズ電流が流出しやすくなる。このようなノイズ電流が所定の大きさを超えると、雑端(雑音端子電圧)等の原因となるおそれがある。この対策として、ノイズフィルタやフェライトコア等を別途設けることが考えられるが、コストアップに繋がるため好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、連絡配管及び連絡電線にノイズ電流が伝搬されるのを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮機(11)及び熱源側熱交換器(12)を有する室外機(1A)と、利用側熱交換器(14)を有する室内機(1B)とを備え、該室外機(1A)及び該室内機(1B)が、冷媒が流通する連絡配管(23,24)と、電源線及び通信線を含む連絡電線(26)とによって接続された空気調和装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記圧縮機(11)に電力を供給する駆動回路(31)と、
前記連絡配管(23,24)と前記連絡電線(26)との間に形成されるインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するインピーダンス回路(40)とを備え、
前記駆動回路(31)は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路(32)と、互いに直列に接続された2つのコンデンサ(35a,35a)を有し且つ該コンバータ回路(32)で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ回路(33)と、該コンデンサ回路(33)で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路(34)とを有し、
前記インピーダンス回路(40)の一端は、前記コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点に接続される一方、他端は、前記室外機(1A)を接地するためのアースライン(27)に接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、圧縮機(11)には駆動回路(31)から電力が供給される。インピーダンス回路(40)のインピーダンスは、連絡配管(23,24)と連絡電線(26)との間に形成されるインピーダンスよりも低くなっている。駆動回路(31)は、コンバータ回路(32)と、互いに直列に接続された2つのコンデンサ(35a,35a)を有するコンデンサ回路(33)と、インバータ回路(34)とを有している。コンバータ回路(32)では、交流電圧が直流電圧に変換される。コンバータ回路(32)で変換された直流電圧は、コンデンサ回路(33)で平滑化される。コンデンサ回路(33)で平滑化された直流電圧は、インバータ回路(34)で交流電圧に変換される。また、インピーダンス回路(40)の一端がコンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点に接続される一方、他端が室外機(1A)を接地するためのアースライン(27)に接続される。
【0012】
このような構成とすれば、ノイズフィルタやフェライトコア等を別途設けることなく、比較的簡単な構成で、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)にノイズ電流が伝搬されるのを防止することができる。
【0013】
具体的に、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)の間には、等価回路で表される直列共振回路が形成される。この直列共振回路では、特定の周波数領域(1〜30MHz)においてインピーダンスが低くなり、ノイズ電流が流出しやすくなる。このようなノイズ電流が所定の大きさを超えると、雑端(雑音端子電圧)等の原因となるおそれがある。
【0014】
これに対し、本発明では、コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点とアースライン(27)との間に、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)の間に形成される直列共振回路(45)のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するインピーダンス回路(40)を接続したから、ノイズ電流がアースライン(27)からインピーダンス回路(40)側にバイパスされることとなる。これにより、ノイズ電流が連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)側に流出することが抑えられ、ノイズ電流に起因する雑端(雑音端子電圧)を低減することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記インピーダンス回路(40)は、前記連絡配管(23,24)及び前記連絡電線(26)により形成される直列共振回路(45)の共振周波数の少なくとも1つと一致する周波数においてインピーダンスが低下する特性を有することを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)により直列共振回路(45)が形成される。インピーダンス回路(40)は、直列共振回路(45)の共振周波数の少なくとも1つと一致する周波数においてインピーダンスが低下する特性を有している。
【0017】
このような構成とすれば、インピーダンス回路(40)は、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)により形成される直列共振回路(45)の共振周波数の少なくとも1つと一致する周波数において、インピーダンスが低下するから、ノイズ電流の流出を低減するために構成部品(例えば、ノイズフィルタ等)を大型化する必要がなく、コスト低減に有利となる。
【0018】
第3の発明は、第1又は2の発明において、
前記インピーダンス回路(40)は、LCR直列共振回路で構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明では、インピーダンス回路(40)は、LCR直列共振回路で構成される。このような構成とすれば、比較的簡単な構成で、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)側にノイズ電流が伝搬されるのを防止することができる。
【0020】
第4の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記連絡配管(23,24)内の冷媒の流通を許可又は停止する閉鎖弁(16)を備え、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記閉鎖弁(16)に接続されて該閉鎖弁(16)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とするものである。
【0021】
また、第5の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記室外機(1A)の室外ケーシング(1a)に接続されて該室外ケーシング(1a)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、第6の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記室外機(1A)内に配索された機内配管(21〜25)に接続されて、該機内配管(21〜25)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、第7の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記圧縮機(11)に接続されて該圧縮機(11)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とするものである。
【0024】
第4乃至第7の発明によれば、インピーダンス回路(40)を、閉鎖弁(16)、室外機(1A)の室外ケーシング(1a)、室外機(1A)内に配索された機内配管(21〜25)、又は圧縮機(11)を介してアースライン(27)に接続することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点とアースライン(27)との間に、連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)の間に形成される直列共振回路(45)のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するインピーダンス回路(40)を接続したから、ノイズ電流がアースライン(27)からインピーダンス回路(40)側にバイパスされることとなる。これにより、ノイズ電流が連絡配管(23,24)及び連絡電線(26)側に流出することが抑えられ、ノイズ電流に起因する雑端(雑音端子電圧)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る冷凍装置の一例である空気調和装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】電力供給装置の駆動回路の概略構成を示す回路図である。
【図3】各回路のインピーダンス特性を示すグラフ図である。
【図4】液連絡管及びガス連絡管と連絡電線とで形成されるダイポールアンテナをモデル化した図である。
【図5】ダイポールアンテナを等価回路で表した直列共振回路を示す図である。
【図6】周波数と電流値との関係を示すグラフ図である。
【図7】共振周波数の発生状態を示す図である。
【図8】周波数とノイズレベルとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
−全体構成−
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍装置の一例である空気調和装置の概略構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る空気調和装置(1)は、室外機(1A)と室内機(1B)とを有し、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えている。
【0029】
前記冷媒回路(10)は、圧縮機(11)と、熱源側熱交換器(12)と、膨張弁(13)と、利用側熱交換器(14)とが順に冷媒配管によって接続されることで形成されている。また、冷媒回路(10)は四路切換弁(17)を備え、冷媒循環が可逆に構成されている。
【0030】
前記圧縮機(11)、熱源側熱交換器(12)、及び膨張弁(13)は、室外機(1A)の室外ケーシング(1a)に収容されて室外空間に設置されている。一方、利用側熱交換器(14)は、室内機(1B)の室内ケーシング(1b)に収容されて室内空間に設置されている。
【0031】
前記室外機(1A)と室内機(1B)とは、液冷媒が流通する液連絡管(23)と、ガス冷媒が流通するガス連絡管(24)とを介して接続されている。液連絡管(23)及びガス連絡管(24)は、連絡配管を構成している。液連絡管(23)及びガス連絡管(24)に沿って、電源線及び通信線を含む連絡電線(26)(図2参照)が配線されている。
【0032】
前記圧縮機(11)の吐出側は、吐出管(21)を介して四路切換弁(17)の第1ポートに接続されている。また、四路切換弁(17)の第2ポートには、室外ガス管(22)の一端が接続されている。室外ガス管(22)の他端には、熱源側熱交換器(12)のガス側端部が接続されている。
【0033】
前記熱源側熱交換器(12)は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって構成されている。熱源側熱交換器(12)には、室外ファン(12a)が近接して配置されている。熱源側熱交換器(12)の液側端部には、液連絡管(23)の一端が接続されている。
【0034】
前記液連絡管(23)には、膨張弁(13)が設けられている。さらに、液連絡管(23)の膨張弁(13)よりも利用側熱交換器(14)側には、冷媒の流通を許可又は停止する閉鎖弁(16)が設けられている。液連絡管(23)の他端は、利用側熱交換器(14)の液側端部に接続されている。
【0035】
前記利用側熱交換器(14)は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって構成されている。利用側熱交換器(14)には、室内ファン(14a)が近接して配置されている。利用側熱交換器(14)のガス側端部には、ガス連絡管(24)の一端が接続されている。ガス連絡管(24)の他端は、四路切換弁(17)の第4ポートに接続されている。さらに、ガス連絡管(24)の四路切換弁(17)よりも利用側熱交換器(14)側には、閉鎖弁(16)が設けられている。
【0036】
前記四路切換弁(17)は、第1〜第4ポートを備え、第1ポート及び第2ポートを連通させるとともに第3ポート及び第4ポートを連通させる第1の状態(図1の実線)と、第1ポート及び第4ポートを連通させるとともに第2ポート及び第3ポートを連通させる第2の状態(図1の破線)とに切換可能に構成されている。
【0037】
前記四路切換弁(17)の第3ポートには、吸入管(25)の一端が接続されている。吸入管(25)の他端は、圧縮機(11)に接続されている。
【0038】
前記吐出管(21)、室外ガス管(22)、液連絡管(23)、ガス連絡管(24)、及び吸入管(25)は、室外ケーシング(1a)内に配索された機内配管を構成しており、例えば銅管等により形成される。各配管(21〜25)は、金属の配管ブラケット(図示省略)によって室外ケーシング(1a)に固定され、室外ケーシング(1a)に取り付けられたアースライン(27)(図2参照)を介して接地されている。
【0039】
〈電力供給装置〉
図2は、電力供給装置の駆動回路の概略構成を示す回路図である。図2に示すように、室外機(1A)の室外ケーシング(1a)の内部には、冷媒回路(10)の各構成部品の各駆動部に電力を供給するための電力供給装置(30)が設けられている。
【0040】
前記電力供給装置(30)は、圧縮機(11)のモータ(18)等の各駆動部に供給する電力の制御や変換を行うための駆動回路(31)を備えている。なお、図2では、駆動回路(31)の一例として圧縮機(11)のモータ(18)に接続された圧縮機(11)用の駆動回路(31)を示している。
【0041】
前記駆動回路(31)は、交流の入力側においてノイズを低減させるノイズフィルタ(39)と、ノイズフィルタ(39)を介して商用電源(38)に接続されたコンバータ回路(32)と、コンデンサ回路(33)と、駆動部である圧縮機(11)のモータ(18)に接続されたインバータ回路(34)とをそれぞれ備えている。
【0042】
前記コンバータ回路(32)は、三相交流電源である商用電源(38)に接続されている。このコンバータ回路(32)は、商用電源(38)の交流電圧を直流電圧に変換するための回路であり、ダイオード(32a)を有している。
【0043】
前記コンデンサ回路(33)は、コンバータ回路(32)とインバータ回路(34)との間に接続されている。このコンデンサ回路(33)は、AC電源ラインとアースライン(27)との間に設けられたYコン(35)と、AC電源ライン同士を繋ぐコンデンサであるXコン(36)とを備えている。
【0044】
前記Yコン(35)は、互いに直列に接続された2つのコンデンサ(35a,35a)で形成されている。両コンデンサ(35a,35a)間の中性点には、後述するインピーダンス回路(40)の一端が接続されている。また、インピーダンス回路(40)の他端は、ファストン端子(19)によって圧縮機(11)近傍に電気的に接続されている。これにより、インピーダンス回路(40)は、圧縮機(11)を介してアースライン(27)に接地される。
【0045】
前記コンデンサ回路(33)では、コンバータ回路(32)で整流された電圧が平滑化される。その結果、インバータ回路(34)側に直流電圧を安定して供給することができる。また、コンバータ回路(32)とコンデンサ回路(33)との間には、リアクトル(37)が接続されている。
【0046】
前記インバータ回路(34)は、コンデンサ回路(33)で平滑化された直流電圧を三相交流電圧に変換し、変換後の交流電圧を負荷となるモータ(18)に供給するものである。インバータ回路(34)は、スイッチング素子(34a)を有している。なお、スイッチング素子(34a)は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS−FET(MOS Field Effect transistor)等が用いられている。インバータ回路(34)では、スイッチング素子(34a)のスイッチングが制御されることにより、モータ(18)に出力される交流電圧及びその周波数が増減し、モータ(18)の回転速度が調節される。
【0047】
このような構成により、電力供給装置(30)では、商用電源(38)の交流電圧をコンバータ回路(32)において直流電圧に変換し、直流電圧をインバータ回路(34)において所望の周波数の交流電圧に変換した後、圧縮機(11)のモータ(18)等の駆動部に供給する。
【0048】
また、前記圧縮機(11)及び各構成部品の駆動回路(31)の各スイッチング素子(34a)は、他の電装品(図示省略)とともに室外ケーシング(1a)内に設けられた基板(50)に実装されている。基板(50)の底面には、空冷用の放熱フィン(51)が取り付けられている。
【0049】
前記インピーダンス回路(40)は、コイル(L1)と、コンデンサ(C1)と、抵抗器(R1)とが直列に接続されたLCR直列共振回路で構成されている。図3に示すように、このインピーダンス回路(40)のインピーダンスは、液連絡管(23)及びガス連絡管(24)と連絡電線(26)との間に形成される直列共振回路(45)のインピーダンスよりも低くなるように設定されている。さらに、インピーダンス回路(40)は、直列共振回路(45)の共振周波数の少なくとも1つと一致する周波数においてインピーダンスが低下する特性を有している。このような構成とすれば、ノイズ電流の流出を低減するために構成部品(例えば、ノイズフィルタ等)を大型化する必要がなく、コスト低減に有利となる。なお、連絡電線(26)のインダクタンスをコイル(L1)に含むように定数選定を行う必要がある。
【0050】
図4に示すように、液連絡管(23)及びガス連絡管(24)と連絡電線(26)とは、ダイポールアンテナを形成している。このダイポールアンテナには、商用電源(38)と電流計(47)とが接続されている。図5に示すように、このダイポールアンテナは、コイル(L2)と、コンデンサ(C2)と、抵抗器(R2)とが直列に接続された直列共振回路(45)の等価回路として表すことができる。
【0051】
ここで、図6に示すように、全長L[m]のダイポールアンテナに周波数f[MHz]の高周波を加えてその周波数を変化させた場合には、電流値が最大となる共振周波数fが観測される。また、このような共振は、図7に示すように、共振周波数fの奇数倍の周波数においても発生している。
【0052】
ここで、国際規格CISPR14によると、空気調和装置(1)の配管長さの試験条件は5m±0.3mであることから、配管長さが4m,5m,8mの場合において、共振が発生する範囲について検討する。なお、配管長さとは、液連絡管(23)(又はガス連絡管(24))の長さのことであり、液連絡管(23)と連絡電線(26)との合計長さである全長L[m]の半分の長さである。
【0053】
ここで、配管長さが4mのときに最初に共振が発生する周波数は15.6MHz、次に共振が発生する周波数は30MHz以上である。また、配管長さが5mのときに最初に共振が発生する周波数は12.5MHz、次に共振が発生する周波数は30MHz以上である。さらに、配管長さが8mのときに最初に共振が発生する周波数は7.8MHz、次に共振が発生する周波数は23.4MHzである。そのため、誤差等を考慮すると、共振周波数は5〜30MHzの範囲で限定するのが好ましい。
【0054】
ここで、空気調和装置(1)において、スイッチング素子(34a)がスイッチング動作を行うと、内部電極の対地間電位変動によって高周波電流が流れる。この高周波電流の一部は、液連絡管(23)及びガス連絡管(24)と連絡電線(26)との間に形成される直列共振回路(45)を経由してノイズ電流として商用電源(38)側へ流れ出すものの、高周波電流の大半はインピーダンス回路(40)側に流れてインバータ回路(34)側に帰還する。これはインピーダンス回路(40)の方が、直列共振回路(45)に比べてインピーダンスが低いからである。
【0055】
図8は、周波数とノイズレベルとの関係を示すグラフ図である。図8に示すように、インピーダンス回路(40)を設けた場合には、インピーダンス回路(40)を設けない場合に比べて、ノイズ電流が低減していることが分かる。これにより、ノイズ電流に起因する雑端(雑音端子電圧)を低減することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、インピーダンス回路(40)の他端を圧縮機(11)近傍に電気的に接続することでアースライン(27)に接続するようにしたが、この形態に限定するものではない。例えば、インピーダンス回路(40)を、閉鎖弁(16)、室外機(1A)の室外ケーシング(1a)、室外機(1A)内に配索された機内配管としての各冷媒配管(21〜25)、又は圧縮機(11)の本体ケーシング等を介してアースライン(27)に接続してもよい。また、インピーダンス回路(40)は、ファストン端子(19)ではなくネジ止めによって接続してもよい。さらに、インピーダンス回路(40)は、電線ではなく、基板(50)上に形成されたパターンによって構成されていてもよい。
【0057】
−運転動作−
次に、前記空気調和装置(1)の運転動作を説明する。この空気調和装置(1)は、四路切換弁(17)を切り換えることにより、冷房運転と暖房運転とを行う。
【0058】
〈冷凍サイクル〉
冷房運転では、四路切換弁(17)は第1の状態(図1の実線状態)となり、圧縮機(11)の吐出側と熱源側熱交換器(12)とが連通し、且つ圧縮機(11)の吸入側と利用側熱交換器(14)とが連通する。そして、圧縮機(11)及び各ファン(12a,14a)が駆動される。その結果、冷媒は、図1の実線矢印に示す方向に循環し、熱源側熱交換器(12)が凝縮器、利用側熱交換器(14)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0059】
一方、暖房運転では、四路切換弁(17)は第2の状態(図1の破線状態)となり、圧縮機(11)の吐出側と利用側熱交換器(14)とが連通し、且つ圧縮機(11)の吸入側と熱源側熱交換器(12)とが連通する。そして、圧縮機(11)及び各ファン(12a,14a)が駆動される。その結果、冷媒は、図1の破線矢印に示す方向に循環し、利用側熱交換器(14)が凝縮器、熱源側熱交換器(12)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0060】
−実施形態の効果−
以上のように、本実施形態に係る空気調和装置(1)によれば、コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点とアースライン(27)との間に、直列共振回路(45)のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するインピーダンス回路(40)を接続したから、ノイズ電流がアースライン(27)からインピーダンス回路(40)側にバイパスされることとなる。これにより、液連絡管(23)、ガス連絡管(24)及び連絡電線(26)側にノイズ電流が流出することが抑えられ、ノイズ電流に起因する雑端(雑音端子電圧)を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、連絡配管及び連絡電線にノイズ電流が伝搬されるのを防止できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0062】
1 空気調和装置
1A 室外機
1B 室内機
1a 室外ケーシング
11 圧縮機
12 熱源側熱交換器
14 利用側熱交換器
16 閉鎖弁
21 吐出管(機内配管)
22 室外ガス管(機内配管)
23 液連絡管(連絡配管、機内配管)
24 ガス連絡管(連絡配管、機内配管)
25 吸入管(機内配管)
26 連絡電線
27 アースライン
31 駆動回路
32 コンバータ回路
33 コンデンサ回路
34 インバータ回路
35a コンデンサ
40 インピーダンス回路
45 直列共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)及び熱源側熱交換器(12)を有する室外機(1A)と、利用側熱交換器(14)を有する室内機(1B)とを備え、該室外機(1A)及び該室内機(1B)が、冷媒が流通する連絡配管(23,24)と、電源線及び通信線を含む連絡電線(26)とによって接続された空気調和装置であって、
前記圧縮機(11)に電力を供給する駆動回路(31)と、
前記連絡配管(23,24)と前記連絡電線(26)との間に形成されるインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するインピーダンス回路(40)とを備え、
前記駆動回路(31)は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路(32)と、互いに直列に接続された2つのコンデンサ(35a,35a)を有し且つ該コンバータ回路(32)で変換された直流電圧を平滑化するコンデンサ回路(33)と、該コンデンサ回路(33)で平滑化された直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路(34)とを有し、
前記インピーダンス回路(40)の一端は、前記コンデンサ回路(33)の両コンデンサ(35a,35a)間の中性点に接続される一方、他端は、前記室外機(1A)を接地するためのアースライン(27)に接続されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記インピーダンス回路(40)は、前記連絡配管(23,24)及び前記連絡電線(26)により形成される直列共振回路(45)の共振周波数の少なくとも1つと一致する周波数においてインピーダンスが低下する特性を有することを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記インピーダンス回路(40)は、LCR直列共振回路で構成されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記連絡配管(23,24)内の冷媒の流通を許可又は停止する閉鎖弁(16)を備え、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記閉鎖弁(16)に接続されて該閉鎖弁(16)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記室外機(1A)の室外ケーシング(1a)に接続されて該室外ケーシング(1a)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記室外機(1A)内に配索された機内配管(21〜25)に接続されて、該機内配管(21〜25)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記インピーダンス回路(40)の他端は、前記圧縮機(11)に接続されて該圧縮機(11)を介して前記アースライン(27)に接続されていることを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−226700(P2011−226700A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96210(P2010−96210)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】