説明

空気集熱式ソーラー除湿涼房システム

【課題】太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱式ソーラーシステムで、夏季等高温時に冷房ができるものであり、しかも、フロンガスを使用しない環境保全に適した冷房であり、かかる冷房設備として暖房のシステム設備を利用するので安価かつ省エネルギー的であり、室内に送る空気として低温中湿となったほど良い涼感が得られる空気を得ることを簡単かつ確実にできる。
【解決手段】第1デシカントモジュール50、冷却コイル51、第2デシカントモジュール52、ファン7を組み込んだデシカント空調機としてのハンドリングボックス5A,5Bの2組からなり、再生運転と除湿運転を切り換えるバッチ方式で再生運転と除湿運転を同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根面を太陽熱集熱部としその直下で集熱した空気を、屋根裏空間である小屋裏に設置したダンパー、ファンを設けたハンドリングボックスを介して立下りダクトにより床下に送り、蓄熱し、また、室内に吹き出すことにより、太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱式ソーラーシステムで、除湿涼房機能を加えた空気集熱式ソーラー除湿涼房システムおよびそれに使用するハンドリングボックスおよび空気集熱式ソーラー除湿涼房方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱式ソーラーシステムで、夏季等高温時に冷房ができるものとして下記特許文献のソーラーシステムハウスがある。その冷房設備は、フロンガスを使用しないので、環境保全に適した快適な冷房であり、さらに、かかる冷房設備として暖房のシステム設備を利用するので安価かつ省エネルギー的なものである。
【特許文献1】特許第2731993号公報
【特許文献2】特開平6−313632号公報
【0003】
図14についてその内容を説明する。これらは太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱機構として、屋根板1の直下に屋根勾配を有する空気流路2を形成し、その下面はグラスウール等の断熱材を配した断熱層として構成する。この空気流路2の一端は軒先下面または小屋裏換気のための小屋裏空間に外気取入口3として開口し、他端は断熱材による集熱ボックスとしての棟ダクト4に連通させる。
【0004】
入口ダンパー6、ファン7及び出口ダンパー8を設けたハンドリングボックス5を第1のハンドリングボックスとして屋根裏空間に設置するとともに、このハンドリングボックス5の入口ダンパー6の流入側を前記棟ダクト4に連通させ、出口ダンパー8の流出側の一方は立下りダクト10の上端に接続する。立下りダクト10の下端は蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13に開口し、該空気流通空間13から室内への吹出口14を設けた。前記屋根板1の頂上部近傍は金属板の上方にガラス板25を設ける。
【0005】
前記ハンドリングボックス5の入口ダンパー6の流入側は前記のごとく、棟ダクト4に接続されるが、この入口ダンパー6の流入側は天井等で吸込口23により室内に開口する循環用ダクト22にも接続され、該入口ダンパー6はこの棟ダクト4側と循環用ダクト22側との流路を切り換える流路切り換えダンパーとして構成した。
【0006】
第2のハンドリングボックスとして、ファン26を内蔵したハンドリングボックス27を屋根裏空間に設置する。前記循環用ダクト22を分岐して第2のハンドリングボックス27の流入側に接続し、また、外気取入れダクト28もこの第2のハンドリングボックス27の流入側に接続し、第2のハンドリングボックス27内に循環用ダクト22との接続部と外気取入れダクト28の接続部の流入量を調整する流入量調整ダンパー29を設けた。
【0007】
図中、30,31はシリカゲル、ゼオドライト、活性炭などの巨大な表面積を持った、つまり、無数の細孔を有する物質である吸着剤32を充填した吸着剤充填容器であり、この吸着剤充填容器30,31はダクトで流入側相互、流出側相互を接続して並列に接続した。この吸着剤充填容器30,31相互の接続中点にはサイクル切り換えダンパー33,34を配設するが、これら吸着剤充填容器30,31の流入側のサイクル切り換えダンパー33を配設した合流部には第1のハンドリングボックス5の出口ダンパー8の流出側の他の一方と、第2のハンドリングボックス27の流出側を該サイクル切り換えダンパー33で切り換え可能に接続する。
【0008】
一方、吸着剤充填容器30,31の流出側のサイクル切り換えダンパー34を配設した合流部には吸着剤充填容器30,31の流出側と立下りダクト10の上部とを連結する送気ダクト35と排気ダクト36とを該サイクル切り換えダンパー34で切り換え可能に接続する。
【0009】
送気ダクト35の途中に、外気に放熱する放熱コイル37との冷媒水の循環をポンプ39で行う冷却コイル38と散水設備40とを吸着剤充填容器30,31側から見て順次配設した。
【0010】
前記排気ダクト36に給湯コイル15を設け、この給湯コイル15は図示は省略するが、循環配管で貯湯槽と連結し、該貯湯槽には、追焚き用の補助ボイラーを途中へ設けて、風呂や洗面所、台所へとつながる給湯配管を接続する。
【0011】
また、第1のハンドリングボックス5内で、入口ダンパー6とファン7との間に補助暖房コイル41を設け、この補助暖房コイル41は補助ボイラーに組込む暖房専用ボイラーに接続させる。
【0012】
次に、使用法について説明する。夏季等高温時に冷房を行う場合には、第1のハンドリングボックス5の入口ダンパー6は該ハンドリングボックス5の流入側を前記棟ダクト4に連通させ、循環用ダクト22側を閉じる。また、出口ダンパー8は立下りダクト10側を閉じる。さらに、吸着剤充填容器30,31は例えば図示のごとく吸着剤充填容器31の流入側を第1のハンドリングボックス5に接続し、吸着剤充填容器30の流入側を第2のハンドリングボックス27に接続するようにサイクル切り換えダンパー33を設定し、吸着剤充填容器31の流出側を排気ダクト36に接続し、吸着剤充填容器30の流出側を送気ダクト35に接続するようにサイクル切り換えダンパー34を設定する。
【0013】
このようにして、第2のハンドリングボックス27に内蔵したファン26を駆動すれば、室内に開口する循環用ダクト22からの室内の空気と外気取入れダクト28からの外気が流入量調整ダンパー29で調整されて第2のハンドリングボックス27内に入り、ここから吸着剤充填容器30に送られる。該吸着剤充填容器30では吸着剤32により室内や屋外からの湿った空気は乾燥済の吸着剤32の吸着作用で除湿される。
【0014】
吸着という現象は、吸着剤32のごとき巨大な表面積を持った、つまり、無数の細孔を有する物質に分子が物理的に取り込まれる現象であり、温度を上げ、あるいは真空にすると吸着された分子は飛び出す。これが脱着である。空気中にある水分子、すなわち水蒸気は激しく運動しているので、運動エネルギー(潜熱)を有する。水分子が吸着剤32に吸着されて動けなくなると潜熱を放出し、空気温度が上がるが、この原理を利用したのが吸着式除湿冷房である。
【0015】
除湿され温度が上がった空気は、吸着剤充填容器30から出て送気ダクト35を流れ、外気に放熱する放熱コイル37との冷媒水の循環をポンプ39で行う冷却コイル38を通過してある程度温度を下げる。相対湿度はこの温度降下にともない多少上昇するが、まだ、乾燥空気である。
【0016】
次いで、散水設備40で水を噴霧して加湿することで、この空気は冷風となり、立下りダクト10内を流下し、蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13へ入る。この空気流通空間13では加冷熱空気が床パネルを介して直接床面下を冷やすのと、蓄熱土間コンクリート11に蓄冷熱させるのと、吹出口14から冷風として直接室内へ吹き出されるのとの3通りの冷房作用を行う。
【0017】
このようにして、吸着剤充填容器30では吸着剤32の全体が湿ってきた場合には、吸着剤充填容器30の流入側を第1のハンドリングボックス5に接続するようにサイクル切り換えダンパー33を切り換え、吸着剤充填容器30の流出側を排気ダクト36に接続するようにサイクル切り換えダンパー34を切り換える。これにより、吸着剤充填容器31が今度は前記吸着を行うようになる。
【0018】
そして、第1のハンドリングボックス5のファン7を駆動すれば、金属板である屋根板1が屋根板の直下で屋根勾配を有する空気流路2へ入った外気(温度約30°、湿度約75%)を温め、温度約80°、湿度約10%以下の高温の超乾燥した空気にする。
【0019】
この超乾燥空気は、棟ダクト4に集められてからファン7により第1のハンドリングボックス5に入り、この第1のハンドリングボックス5から吸着剤充填容器30に入り、湿っている吸着剤32を該吸着剤32の脱着作用で乾燥させる。
【0020】
このように湿った吸着剤32を脱着して自分が加湿される時は超乾燥空気は、絶対湿度が上がるとともに潜熱をうばわれて温度が下がり、湿った空気として排気ダクト36から排出される。これにより吸着剤充填容器30内の吸着剤32は乾燥したものとなり、次の吸着に備える。
【0021】
なお、前記排気ダクト36から排出される空気はまだ高温のものであり、給湯コイル15で、ここに循環配管を介して貯湯槽(図示せず)から送り込まれる水が加熱され、湯として貯湯槽へ蓄えられ、さらにここから必要に応じて追焚き用の補助ボイラーで再加熱されて給湯配管から各所へ給湯される。
【0022】
このように2つの吸着剤充填容器30,31が交互に吸着と脱着を繰り返すが、脱着乾燥した吸着剤32はその水分量だけエネルギーを失ったことになるが、吸着時にこの失ったエネルギーを回収する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、この図14に示すソーラーシステムハウスでは、吸着塔で除湿され温度が上がった空気は、冷却コイルを通過してある程度温度を下げるが、まだ、乾燥空気であり、低温中湿となった空気を得るには、散水設備で水を噴霧して加湿することが必要となる。
【0024】
このような散水設備を設けなければならないのでは、水回りその他の配慮が必要となり、また、場所も取るし、面倒でもある。
【0025】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱式ソーラーシステムで、夏季等高温時に冷房ができるものであり、しかも、フロンガスを使用しない環境保全に適した冷房であり、かかる冷房設備として暖房のシステム設備を利用するので安価かつ省エネルギー的であり、室内に送る空気として低温中湿となったほど良い涼感が得られる空気を得ることを簡単かつ確実にできる空気集熱式ソーラー除湿涼房システムおよびそれに使用するハンドリングボックスおよび空気集熱式ソーラー除湿涼房方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、太陽熱集熱部に接続して室内に空気を送る空調機として、第1デシカントモジュール、冷却コイル、第2デシカントモジュール、ファンを組み込んだデシカント空調機の2組のからなり、再生運転と除湿運転を切り換えるバッチ方式で再生運転と除湿運転を同時に行うもので、再生運転時には高温低湿の集熱空気が第1デシカントモジュールを乾燥させた後、中温中湿となり、この中温中湿の空気は冷却コイルにより冷却され、低温高湿となって第2デシカントモジュールに水分を吸着させてから排気され、除湿運転時には低温高湿の外気を取り入れて第1デシカントモジュールで除湿し、中温低湿となった空気を冷却コイルで冷却し、さらに再生運転時に第2デシカントモジュールに吸着させておいた水分を用いて気化冷却を行い、低温中湿となった空気を室内に送ることを要旨とするものである。
【0027】
請求項1記載の本発明によれば、デシカント空調機は第1デシカントモジュール、冷却コイル、第2デシカントモジュールと2組のデシカントモジュールを組み込むことに特徴があり、再生運転時のデシカント空調機では、高温低湿の集熱空気が第1デシカントモジュールを乾燥させた後、中温中湿となり、この中温中湿の空気は冷却コイルにより冷却され、低温高湿となって第2デシカントモジュールに水分を吸着させる。
【0028】
除湿運転時のデシカント空調機では、低温高湿の外気を取り入れて第1デシカントモジュールで除湿し、中温低湿となった空気を冷却コイルで冷却するが、空気を室内に送る前に、再生運転時に第2デシカントモジュールに吸着させておいた水分を用いて気化冷却を行い、ほど良い涼感が得られる低温中湿となった空気を室内に送ることができる。
【0029】
請求項2記載の本発明は、太陽熱集熱部に接続して室内に空気を送る空調機としてのハンドリングボックスであり、前後にダンパーボックスを設け、第1デシカントモジュール、冷却コイル、第2デシカントモジュール、ファンを組み込んだことを要旨とするものである。
【0030】
請求項2記載の本発明によれば、再生運転と除湿運転を切り換えるバッチ方式で再生運転と除湿運転を同時に行う2組からなり、同一機構のものを使用できるとともに、前後にダンパーボックスを設けることで、コンパクトなハンドリングボックスとして形成でき、別途に配管上にファンやダンパーを設けることで配管を複雑にするようなことを防止できる。
【0031】
請求項3記載の本発明は、請求項1の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムにおいて、第1デシカントモジュール、第2デシカントモジュールの再生運転と除湿運転の切替運転は、いずれかのデシカントモジュールの出口湿度が設定値に達する時間と切替設定時間を比べて、どちらかが設定値に達すれば行うことを要旨とするものである。
【0032】
請求項3記載の本発明によれば、第1デシカントモジュール、第2デシカントモジュールの再生運転と除湿運転の切替運転を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
以上述べたように本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムおよびそれに使用するハンドリングボックスおよび空気集熱式ソーラー除湿涼房方法は、太陽エネルギーで空気を加熱して暖房が得られる空気集熱式ソーラーシステムで、夏季等高温時に冷房ができるものであり、しかも、フロンガスを使用しない環境保全に適した冷房であり、かかる冷房設備として暖房のシステム設備を利用するので安価かつ省エネルギー的であり、室内に送る空気として低温中湿となったほど良い涼感が得られる空気を得ることを簡単かつ確実にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1、図2は本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムの1実施形態を示す説明図で、夏季の動きの状態を示す。
【0035】
先に、空気集熱式ソーラーシステムの概要を図5について説明すると、太陽熱集熱部として、屋根板1の直下に屋根勾配を有する空気流路2を形成し、その下面はグラスウール等の断熱材を配した断熱層として構成する。この空気流路2の一端は軒先下面または小屋裏換気のための小屋裏空間に外気取入口3として開口し、他端は断熱材による集熱ボックスとしての棟ダクト4に連通させる。前記屋根1の頂上部近傍は金属板の上方にガラス板25を設けた。棟ダクト4には温度センサー61を設ける。
【0036】
屋根部での集熱空気温度は金属板による屋根板1の太陽熱取得と同時に屋根板1を通しての外気への熱損失の結果として、屋根板1のみの集熱面での上昇温度には限界があるが、屋根板1の上を更にガラス板25で覆うことにより、集熱空気温度の上昇限界を上昇させさらに高温の集熱が可能となり、また外部の風による集熱温度への影響を少なくすることができる。
【0037】
棟ダクト4に棟温度センサー61を設け、室内に室温センサー62を設け、屋外に外気温センサー63を設ける。
【0038】
図中5A,5Bは、太陽熱集熱部に接続して室内に空気を送る空調機としてのハンドリングボックスであり、図6、図7にその詳細を示すように、前後に入口ダンパー6と出口ダンパー8をそれぞれ内蔵したダンパーボックス6a,8aを設け、第1デシカントモジュール50、冷却コイル51、第2デシカントモジュール52、ファン7を組み込んだ。
【0039】
第1デシカントモジュール50、第2デシカントモジュール52は、メッシュ材により偏平かご状に形成した容器に吸着材を収めたものであり、図示の例では相互の下端が結合するようにV型に配置されるものとしたが、他の実施形態として平行に斜めに配置するなど他の配置も可能である。
【0040】
吸着材にはシリカゲルを使用し、第1デシカントモジュールと第2デシカントモジュールに充填した。
【0041】
冷却水は井戸水を想定して冷却コイル51と井戸(図示せず)の内部に配置する放熱コイルとを、冷媒水の循環をポンプで行う循環配管で連結してもよいが、井戸の代わりにクーリングタワー冷却した水を代用してもよい。
【0042】
ハンドリングボックス5A,5Bの出口ダンパー8の流出側の一方は排気ダクト9により屋外に開口し、他を立下りダクト10の上端に連結する。立下りダクト10の下端は蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13に開口し、該空気流通空間13から室内への吹出口14を設けた。
【0043】
ハンドリングボックス5A,5Bの入口ダンパー6側の流入側の一方を接続ダクト53を介して前記棟ダクト4に連通させ、他方は立下りダクト54の上端に連結する。ハンドリングボックス5Aに接続する立下りダクト54と、ハンドリングボックス5Bに接続する立下りダクト54とは、いずれか一方を他方の途中に合流させてもよい。
【0044】
本実施形態では、前記蓄熱土間コンクリート11の下に免震ピット55を有する床下2層構造のものであり、前記立下りダクト54の下端はこの免震ピット55に開口させた。
【0045】
なお、前記立下りダクト54の下端は免震ピット55ではなく、空気流通空間55aに開口させることも考えられる。
【0046】
図中56は余剰集熱時の排気ダクトで、一端は棟ダクト4に接続し、他端は屋外に開口する。排気ダクト56同士は途中で合流させ、その先に強制排気ファン57を設けた。
【0047】
棟ダクト4からハンドリングボックス5Aへの接続ダクト53の途中を分岐し、この分岐ダクト60の途中にモーターダンパ58aを設けてその先を、棟ダクト4からハンドリングボックス5Bへの接続ダクト53の途中に合流させる。なお、この分岐ダクト60とモーターダンパ58aは棟ダクト4と連絡させることで省略できる。
【0048】
排気ダクト56の途中にも、モーターダンパ58b、58cを設けた。この場合も棟ダクト4と連絡させることでモーターダンパ58cを無くすことができ、排気ダクト56も複雑にすることを防止できる。
【0049】
次に、使用法について説明すると、図4に示すように、冬の集熱時にはモーターダンパ58aは閉じ、入口ダンパー6は立下りダクト54の接続口を閉じ、棟ダクト4へ連結する接続ダクト53の接続口を開く。また、出口ダンパー8は排気ダクト9の接続口を閉鎖し、ファン7と立下りダクト10の接続口を連通させる。冷却コイル51は作用させない。
【0050】
金属板である屋根板1が空気流路2へ入った外気を温め、この温められた空気は勾配に沿って上昇して棟ダクト4に集められてからファン7によりハンドリングボックス5A,5Bに入り、ハンドリングボックス5A,5Bから立下りダクト10内を流下し、蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13へ入る。この空気流通空間13では加熱空気が床パネル12を介して直接床面下を温めるのと、蓄熱土間コンクリート11に蓄熱させるのと、吹出口14から温風として直接室内へ吹き出されるのとの3通りの暖房作用を行う。
【0051】
棟ダクト4の温度センサー61が30℃以上で前記集熱運転を行う。
【0052】
夏季では、ハンドリングボックス5A,5Bのいずれか一方、図1ではハンドリングボックス5Aが除湿運転を行い、免震ピット55の空気を吸い込み、除湿低温高湿の空気を取り入れて第1デシカントモジュール50で除湿し、中温低湿となった空気を冷却コイル51で冷却し、さらに再生運転時に第2デシカントモジュール52に吸着させておいた水分を用いて気化冷却を行い、低温中湿となった空気を立下りダクト10を介して床下空間を経由して室内に送る。
【0053】
もう一つのハンドリングボックス5Bは、再生運転を行い、金属板である屋根板1が空気流路2へ入った外気を温め、この温められた空気は勾配に沿って上昇して棟ダクト4に集められた高温低湿の集熱空気がハンドリングボックス5Bに入り、第1デシカントモジュール50を乾燥させた後、中温中湿となる。
【0054】
この中温中湿の空気は冷却コイル51により冷却され、低温高湿となって第2デシカントモジュール52に水分を吸着させてから排気ダクト9により排気される。
【0055】
以上の除湿涼房運転は棟温≧40℃の時に行い、棟温≧90℃になると、棟温度が上がり過ぎないように、モーターダンパ58b、58cを開き、強制排気ファン57で排気ダクト56から屋外に排気する。
【0056】
デシカントが水蒸気を吸着できなくなったら、図2に示すようにハンドリングボックス5A,5Bの除湿運転と再生運転とを交代させる。乾燥したデシカントは、水蒸気を吸着して除湿冷却する動作になり、飽和したデシカントは集熱空気で乾燥再生する動作になる。
【0057】
夏季の夜間は図3に示すように、外気取り込み運転となる。棟温≦室温−2℃かつ外気温≦室温−3℃の時である。ただし、室温≦23℃になると外気取り込み運転は停止する。
【0058】
このような運転フローについては、再生運転時の第1デシカントモジュール50と第2デシカントモジュール52のいずれか、例えば第1デシカントモジュール50の出口湿度と時間による切り替え制御を行う。
【0059】
第1デシカントモジュール50の出口湿度が設定値に達する時間と切替設定時間を比べて、どちらかが設定値に達すれば、切替運転を行う。
【0060】
第1デシカントモジュール50の出口湿度は湿度センサーによる測定値を用いる方法と第1デシカントモジュールの入口温度・出口温度・外気温湿度から第1デシカントモジュール50の出口湿度を求める計算値を用いる方法がある。測定値を用いる方法は測定値をそのまま制御に使える便利さはあるが、高性能の湿度センサーは高価であり、1年毎にセンサー部分の補正が必要で相当なメンテナンスー費用が発生する弱点がある。計算値を用いる方法の特徴は安価で半永久的な温度センサーで制御を行うことである。
【0061】
以下に本発明の効果を確認するための実験結果について説明する。運転方法としては、集熱空気の温度によりソーラー除湿涼房システムを作動するが、再生運転と除湿運転の切換はデシカント空調機のデシカントモジュールを少しでも再生したら除湿涼房に使う方法(除湿涼房優先)と完全に再生してから除湿涼房に使う方法(再生優先)が考えられる。
【0062】
実験では棟温(集熱空気温度)が40℃以上であれば、ソーラー除湿涼房システムを稼動させ、除湿涼房優先として30分の時間間隔で切換運転を行うことと、再生優先として第1デシカントモジュールの出口相対湿度が10%まで低下したら、再生完了と判断し切換運転を行うことの2種類の実験を行った。
【0063】
図8と図9に除湿涼房優先の実験と再生優先の実験の気象データを示す。両方とも概ね晴天日であり、気温と相対湿度の気象条件が類似している。図10と図11に除湿涼房優先の実験結果を示す。朝7時20分頃に棟温が40℃に達し運転開始となり、17時30分頃に棟温が40℃未満になり運転停止となった。切換運転はハンドリングボックス5Aが除湿運転から、ハンドリングボックス5Bが再生運転からの開始となり、30分毎に交代で再生運転と除湿運転を行っている。棟温は11時前後に局所的な雲の影響で急激に低下するものの、徐々に上昇し90℃まで達している。12時10分〜20分の間に棟温が90℃で上下変動するのは、棟温が90℃以上になると、オーバーヒート防止対策用の強制排気ファン57を稼動するように制御したためである。
【0064】
再生運転時のハンドリングボックス5Aの入口・出口空気の温度差は朝から昼にかけて大きくなり、昼から夕方にかけて小さくなっている。これは図10b)と図11b)の第1デシカントモジュール50の出口相対湿度の変動からもわかる。第1デシカントモジュール50ように、朝から再生と除湿の切換運転をしながら昼頃に再生完了の状態に近づいたことと夕方に棟温が低下するからであると考えられる。除湿運転時の第1デシカントモジュール50の入口・出口空気の温度差は朝から徐々に大きくなり、夕方に運転が停止するまでその差が朝より大きい。
【0065】
第2デシカントモジュール52の入口・出口空気の温度差は再生運転時と除湿運転時とともにほぼ同じであり、再生運転時に吸着された分が除湿運転時にそのまま使われていることがわかる。また、朝方は除湿運転時に第1デシカントモジュール50の入口・出口空気の温度差と第2デシカントモジュール52の入口・出口空気の温度差の差が小さい。この結果、図10c)と図11c)のハンドリングボックス5A,5Bの入口・出口絶対湿度の変動からわかるように、11時までシステム全体の除湿効果はほとんど見られなかった。
【0066】
図12と図13に再生優先の実験結果を示す。朝7時30分頃に運転開始となり、17時30分頃に運転停止となった。朝方はシステム全体の除湿効果が見られなかった除湿涼房優先の実験結果を踏まえて、1組のハンドリングボックス5A,5Bの第1デシカントモジュール50をしっかり再生してから除湿運転を開始することにしたため、ハンドリングボックス5Aが再生運転時にハンドリングボックス5Bは運転停止となっている。
【0067】
その後からは再生運転と除湿運転を同時に行うが、再生運転のハンドリングボックスが再生完了となったら、運転の切換を行った。図12に示すように、ハンドリングボックス5Aは7時30分から10時まで約2時間30分で第1デシカントモジュール50の出口の相対湿度が約40%から10%となり、再生完了となったが、特に9時から10時にかけて第1デシカントモジュール50の出口の空気温度が急上昇し、相対湿度は急降下している。
【0068】
しっかり再生してから除湿運転を開始したため、ハンドリングボックス5Aの入口・出口絶対湿度の変動からわかるように、10時からシステム全体の除湿効果が見られる。再生運転から除湿運転に切り換わった時の10時に予想外の実測値を示しているのは、5分ほどハンドリングボックス5Aのファンが停止していたからである。
【0069】
図13に示すように、ハンドリングボックス5Bは再生運転開始から棟温が高かったため、10時から約1時間で再生が完了している。11時から15時30分までは約30〜50分で再生完了となるが、その後は第1デシカントモジュール50の出口の相対湿度が10%となるまで再生することが困難であることと、夕方は再生能力が低下しても除湿能力は高いことを除湿涼房優先の実験結果でわかったため、1時間毎に切換運転を行った。
【0070】
その結果、図12c)と図13c)のハンドリングボックス5A,5B入口・出口絶対湿度の変動からわかるように、棟温が40℃未満となり運転が停止するまでシステム全体の除湿効果が見られた。運転停止中である10時までにハンドリングボックス5Bに除湿効果が見られるのは、換気扇により24時間換気を行っており、外気が空調対象室内の換気口からだけではなくハンドリングボックスを通過して導入されるからである。
【0071】
また、オーバーヒート防止対策用の強制排気ファン57は弱(棟温90℃以上)・中(棟温95℃以上)・強(棟温100℃以上)の3段階の制御をしており、11時〜12時30分に棟温が3段階の動きとなっている。
【0072】
本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムを試作し、除湿涼房優先(時間間隔による制御)と再生優先(デシカントモジュール出口相対湿度による制御)の運転実験を行い、しっかり再生を行ってから除湿運転を開始する再生優先の運転方法がより有効であることがわかった。また、オーバーヒート防止対策用の強制排気ファン57が制御の通りに作動することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムの1実施形態を示す夏季の昼間の動きの除湿涼房その1の説明図である。
【図2】本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムの1実施形態を示す夏季の昼間の動きの除湿涼房その2の説明図である。
【図3】本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムの1実施形態を示す夏季の夜間の動きの説明図である。
【図4】本発明の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムの1実施形態を示す冬季の動きの説明図である。
【図5】空気集熱式ソーラーの概要を示す説明図である。
【図6】ハンドリングボックスの側面図である。
【図7】ハンドリングボックスの平面図である。
【図8】実験結果の気象データその1を示すグラフである。
【図9】実験結果の気象データその2を示すグラフである。
【図10】実験結果その3を示すグラフである。
【図11】実験結果その4を示すグラフである。
【図12】実験結果その5を示すグラフである。
【図13】実験結果その6を示すグラフである。
【図14】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1…屋根板 2…空気流路
3…外気取入口 4…棟ダクト
5…ハンドリングボックス 5A,5B…ハンドリングボックス
6…入口ダンパー 6a…ダンパーボックス
7…ファン 8…出口ダンパー
8a…ダンパーボックス 9…排気ダクト
10…立下りダクト 11…蓄熱土間コンクリート
12…床パネル 13…空気流通空間
14…吹出口 15…給湯コイル
22…循環用ダクト 23…吸込口
25…ガラス板 26…ファン
27…ハンドリングボックス 28…外気取入れダクト
29…流入量調整ダンパー 30,31…吸着剤充填容器
32…吸着剤 33,34…サイクル切り換えダンパー
35…送気ダクト 36…排気ダクト
37…放熱コイル 38…冷却コイル
39…ポンプ 40…散水設備
41…補助暖房コイル
50…第1デシカントモジュール 51…冷却コイル
52…第2デシカントモジュール 53…接続ダクト
54…立下りダクト 55…免震ピット
55a…空気流通空間
56…排気ダクト 57…強制排気ファン
58a,58b,58c…モーターダンパ
60…分岐ダクト 61…棟温度センサー
62…室温センサー 63…外気温センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱集熱部に接続して室内に空気を送る空調機として、第1デシカントモジュール、冷却コイル、第2デシカントモジュール、ファンを組み込んだデシカント空調機の2組からなり、再生運転と除湿運転を切り換えるバッチ方式で再生運転と除湿運転を同時に行うもので、再生運転時には高温低湿の集熱空気が第1デシカントモジュールを乾燥させた後、中温中湿となり、この中温中湿の空気は冷却コイルにより冷却され、低温高湿となって第2デシカントモジュールに水分を吸着させてから排気され、除湿運転時には低温高湿の外気を取り入れて第1デシカントモジュールで除湿し、中温低湿となった空気を冷却コイルで冷却し、さらに再生運転時に第2デシカントモジュールに吸着させておいた水分を用いて気化冷却を行い、低温中湿となった空気を室内に送ることを特徴とした空気集熱式ソーラー除湿涼房システム。
【請求項2】
太陽熱集熱部に接続して室内に空気を送る空調機としてのハンドリングボックスであり、前後にダンパーボックスを設け、第1デシカントモジュール、冷却コイル、第2デシカントモジュール、ファンを組み込んだことを特徴とする空気集熱式ソーラー除湿涼房システムに使用するハンドリングボックス。
【請求項3】
請求項1の空気集熱式ソーラー除湿涼房システムにおいて、第1デシカントモジュール、第2デシカントモジュールの再生運転と除湿運転の切替運転は、いずれかのデシカントモジュールの出口湿度が設定値に達する時間と切替設定時間を比べて、どちらかが設定値に達すれば行うことを特徴とする空気集熱式ソーラー除湿涼房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−196817(P2008−196817A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34338(P2007−34338)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年10月12日・13日 日本太陽エネルギー学会、日本風力エネルギー学会主催の「平成18年度 日本太陽エネルギー学会 日本風力エネルギー学会 合同研究発表会」に文書をもって発表
【出願人】(399015986)オーエム計画株式会社 (7)
【Fターム(参考)】