説明

空洞状集合体の吸水性を利用した低水位でも揚水する水車

【課題】水量、水位が低くても揚水機能を果たすことのできる揚水水車を提供する。また同時に揚水された水が濾過されてゴミや異物を取り除くことができ、従来に比べ、構成部品点数が極めて少なく製造コストの安価な揚水水車を提供する。
【解決手段】水車の外周円上に沿って連続的な鋸歯形状となる空洞状集合体であるスポンジを設定し、このスポンジの吸水特性と水車回転に伴う形状特の変位を利用して、たとえ低水量、低水位であっても揚水の機能を果たす揚水水車を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流を利用して水を汲み上げる揚水水車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の揚水水車は、水位の高さが一定水準以上無ければ水流を利用して水を汲み上げることができなかった。一定水準以上の高さとは、水車に設けられている柄杓の中に水が流れ込み、汲み上げることの可能な水位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−165027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の揚水水車は、水位の高さが一定水準以上無ければ水流を利用して水を汲み上げることができなかった。一定水準以上の高さとは、水車に設けられている柄杓が水をすくい上げることのできる高さである。その水位の高さとは、水車が回転して柄杓が水車の下に来たときに、水車の規模、柄杓の大きさ、または設定された角度や、柄杓自体を構成している材料の厚みなどによって異なるので、具体的な数値単位で表現することはできないが、一般的に普及している揚水水車は、水路底面から水面までの高さ、つまり、水位が柄杓自体の水没可能な程度の高さが確保できないと水を汲み上げることができない。用水路などでは、水位が恒常的に変化しており、水位が一定水準以下まで下がっている状態のときには、柄杓に水を組み入れることができず、揚水水車としての機能を果たさなくなる。本発明は、従来の揚水水車が最低限必要としている水位高さのたとえ数分の一程度の水位しか確保できない状態であっても、揚水水車としての機能を果たすべく構成されたものである。
特許文献1については、揚水水車として、揚程との関係で水車の直径が制限されないという効果を目的としており、本発明とは目的、構造構成ともに異なっており、本課題を解決するものとはなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するため本発明は、水車の外周円上にスポンジ3を設置し、これを外周板6、側面板5、及び中円盤7で囲む。外周板上に沿って設けられている空洞状集合体であるスポンジ3は、連続的に鋸歯形状をしており、含水したスポンジ12が水車上部に来たときに、水をスポンジ12から離脱させ落下させるための角部9が設定されている。外周板6と側面板5には、図2に示す如く吸水口2が設定されており、この吸水口2が水車の下端に来たとき、つまり、水面に接触したときに、ここから水が浸入してスポンジ3に浸み込むようになっている。スポンジ3に浸み込んだ水は、含水したスポンジ12として水車の回転に伴い上方へと運ばれる。図5の断面図に示す如く、反時計方向に円弧を描きながら上方に運ばれていく水は、鋸歯形状をしたスポンジの角部9が下方向を向き始めたときに、角部9に集中して、重力によって含水したスポンジ12から離脱して下方へと水が落ちるように構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
従来、揚水水車 がその機能を果たすために必要としていた最低水位を、本発明は従来の数分の一程度の水位であっても揚水機能を果たすことができる。また、揚水された水は、外周板6と側面板5に設定されている吸水口2とスポンジ3の表面によって濾過されるために水中のゴミ、異物などを浄化して取り除くことができる。さらには、従来の揚水水車に比べ構成している部品点数が著しく少ない為に、製造コストを安く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の形態について、図面を参照にしつつ手順を追って詳細に説明すれば、図1に示す外周板6と側面板5には、吸水口2が設定されており、この吸水口2が水車の下端に来たとき、つまり、水面に接触したときに、ここから水が浸入してスポンジ3に浸み込むようになっている。吸水口2の位置や大きさ、その形状については、どのような形態であってもほとんど問題は無く、スポンジ3に水が供給され易くかつ、水流中のゴミなどが詰まりにくいものであれば良い。外周板6と側面板5の目的は、内部に設定されているスポンジ3の形状保護と同時に、板に開けられた吸水口2によって、スポンジ3内に入る以前の水中にあるやや大きなゴミなどを大雑把に取り除き濾過するという一次フィルターの目的も持たせている。水はこの一次フィルターである外周板6、側面板5の吸水口2を通過してから、さらにスポンジ3の表面によって細かいゴミなどは濾し取られて浸み込んでいくという行程となる。外周板6及び、側面板5が、網板状のものであっても機能は果たす。ゴミ、異物、枯葉、枯れ枝などの多い水路などでは、板面に穴をいくつか開けるよりも、網状の板のほうが水を吸収し易く、スポンジ3に水を吸収するときもゴミを濾過し易いので、作動上有利である。図1に示すa-a’線は、従来の揚水水車の柄杓の大きさがスポンジ3と同じ大きさと仮定して最低限必要と思われる仮定水位の高さである。本発明の構成であれば、外周板6に設けられた吸水口2さえ水面に届けば、スポンジ3に水が浸み込むので汲み上げることが可能である。水車の外円周上に沿って設けられている空洞状集合体である海綿状のもの、いわゆるスポンジ3は、図2の図面上でB−B´断面として図4にその形態を示すように連続的に鋸歯形状を構成して円周の内側を向いている。図5の断面図に示す如く、円弧を描きながら反時計方向に上方へと運ばれていく水、つまり含水状態のスポンジ12は、鋸歯形状をしたスポンジ12の角部9が水車の回転に伴い下方向を向き始めたときに、スポンジ12に浸み込んでいる水が重力によってこの角部9に集中して、スポンジ内部に保持することができなくなり、スポンジ12から離れて下方向へと水が落ちる。この揚水された水10は、角部9から離脱して落ちる際には、実際にはスジ状の滝のように連続して落下していくのであるが、水路の水位が低い場合には、連続的にはつながらずに途切れる状態で落下する。さらに水位が低くなるとこれが水滴状になって落下する。図5,6,7に示すのは、揚水された水10が図面として視認上把握し易いように水が落下している状態を水滴の容態の図柄とした。このときの水を切りやすく落とし易い角度として図5の水車上部の位置にθ角として記したが、この角度は、17〜22°程度が機能上最も効率が高いと思われる。この角度が浅いと、スポンジに浸み込んでいる水が十分な高さまで保持して揚水することができない。また、その逆であるとスポンジ12が水車の上地点に来たときに水を十分に落下させること、つまり、水を十分に切ることができずに揚水効率が著しく低下してしまう。前述のθの角度17〜22°にてスポンジの鋸歯形状を構成すれば、図6,7に示す揚水受け皿8に供給される水量を最大量とすることができる。つまり、揚水効率が最も高くなるという訳である。以上の構成に加え、水流を利用して水車自体を回転駆動させるための羽根板1を、図2の中円盤7より左側に設定している。羽根板1の状態を、A−A’断面図として図3に記載した。本発明が従来の揚水水車と構成上大きく異なっている点は、海綿状の空洞状集合体の持つ吸水性を利用している点と、水車回転に伴う空洞状集合体を構成している形状角度の変位を利用している点である。そして、これを利用することによって水車の汲み上げる水の入り口と、出口が異なっている点である。この構成、構造とすることによって低水位でも水を汲み上げることを可能としたものである。従来の柄杓を利用した揚水水車では、汲み上げる水の入り口と出口は同じ箇所であるから、必要最低水位がどうしても高くなってしまうのである。本発明は、以上の構造、及び作動原理である。
【実施例1】
【0008】
基本構造は上記の如くであるが、上記の基本構造をさらに利用幅を広める形態として、水の流れの無い水溜りのような水場では、水車を水流の力を利用して回転させることができないので、このような環境下では、水車の一部にハンドルや足漕ぎペダルなどを取り付けて人力にて水車を回転させれば、揚水することが可能である。
【実施例2】
【0009】
実施例1の水の流れの無い水場の状況において、人力でなく電気モーターや、内燃機関の動力を用いて水車を回転させれば、揚水することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の側面図。
【図2】本発明を水路の上流側から見た正面図。
【図3】図2に示すA−A´断面図
【図4】図2に示すB−B´断面図
【図5】B−B´断面図に水の方向を示した図。
【図6】B−B´断面図に水の方向を示した図。
【図7】側面から見た外観図に水の方向を示した図。
【符号の説明】
【0011】
1. 羽根板
2. 吸水口
3. スポンジ
4. 心棒穴
5. 側面板
6. 外周板
7. 中円盤
8. 揚水受け皿
9. 角部
10.
揚水された水
11.
羽根板側面板
12.
含水状態のスポンジ



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成したスポンジを設定し、材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる空洞状集合体の吸水性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項2】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成した空洞状集合体からなるフィルターを設定し、材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項3】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成した空洞状集合体からなるファイバーを設定し、材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項4】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成した空洞状集合体からなる布を設定し、材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項5】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成した空洞状集合体からなる素材のものを設定し、材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項6】
水車の外円周上に沿って鋸歯形状を構成した空洞状集合体からなる素材のものを設定し、これを外周板、側面板で囲み、空洞状集合体の材質の特性によって吸水、揚水し、角度を持たせたその形状構成によって水を落下させる素材特性と形状特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5,6記載の水車回転の駆動力を、人力によって水車を回転させて揚水する空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6記載の水車回転の駆動力を、電気モーター及び、内燃機関の動力によって水車を回転させて揚水する空洞状集合体の吸水特性を利用した低水位でも揚水する水車。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−80375(P2011−80375A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231384(P2009−231384)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(505343480)
【Fターム(参考)】