説明

空調システム

【課題】ファンを有する発熱機器を収納した複数のラック列が配置された施設において、ラック内の発熱機器を効率良く冷却し、かつ発熱機器からの排気を効率良く空調装置に戻すとともに、空調空気を適切に分配供給し、さらに冗長性の確保も容易にする。
【解決手段】室Rには、サーバ12〜15を搭載したラック11が整列したラック列が収容されている。室Rの天井部1には天井給気チャンバ2が設けられ、ラック列の背面側空間Wの上部における天井部には空調機21が配置され、空調機21の吸込口23背面側空間Wに面し、空調機21の吹出口24は天井給気チャンバ2内に位置している。天井給気チャンバ2内の空調空気は、天井部に設けられた給気口7から、前面側空間Cへと流れ出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバをはじめとする、ファンを有する発熱機器を収容しているラックのある室の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばサーバ機器(以下、単にサーバと言うことがある)を収容しているサーバルームの空調方式は、水冷や空冷方式の違いの他、床下チャンバ方式や室内直吹き方式などの組み合わせにより、これまでも様々な空調方式が採用されている。このなかで現在、サーバルームで最も普及している空調方式は空冷の床吹出し方式である。これは、サーバラックを対向配置して、サーバ吸込み面が向い合せとなったコールドアイルに、床下チャンバから冷気を給気し、ラック背面が向い合せとなったホットアイルにサーバ排熱を集約して、CRAC(Computer Room Air Conditioner)へ戻す方式である。この方式では、給気がサーバ排気と混ざりあう影響が少なくなるため、給気温度を高めに設定することが可能となり、ランニングコストの削減に寄与できる。
【0003】
しかしながらこの空調方式では、コールドアイルへの給気風量が不足すると、サーバ内の冷却ファンによりコールドアイルが周囲よりも負圧となり、熱の廻り込みなどが生じる。特にラック上部のサーバ吸込み温度が高くなるため、サーバからの要求以上に多くの風量給気が必要であった。
【0004】
一方熱の廻り込みを物理的に防止する方法として、コールドアイルやホットアイルを壁で区画するキャッピング技術が提案されている。コールドアイルのキャッピングでは、ラック吸込み面に対し、上部からの熱の廻り込みが軽減されるため、その分、給気温度を高めることにより高い省エネ運転が可能となる。またホットアイルのキャッピングでは、サーバからの排熱空気を効率良く捕集してCRACへ戻すことができるため、熱の混合を避け、サーバ吸込み空気を適正な温度に管理し易いメリットがある。
【0005】
その他、サーバルームの冷却方法としては、冷却対象空間にミストを噴霧してその蒸発潜熱を利用する方法(特許文献1)、サーバラック内の上端部に冷却ユニットを取り付け、ラック内のサーバの前面に対して当該ユニットからの冷却風を流下させる方法(特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−110469号公報
【特許文献2】特開2006−301758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらサーバラックを対向配置して、サーバ吸込み面が向い合せとなったコールドアイルに、床下チャンバから冷気を給気し、ラック背面が向い合せとなったホットアイルにサーバ排熱を集約してCRACへ戻す方式、ならびにコールドアイルやホットアイルを壁で区画するキャッピング技術のいずれにおいても、未実装ラックや負荷の少ないサーバ、あるいは規格外のサーバ等の存在により開口部(ラックにおける空間部)がある場合、給気がサーバの冷却に使用されないままホットアイルへ流出することとなる。これを防ぐためには、多数のブランクパネルにて流出を防止する方策が採られているが、運用管理の煩雑さが問題となっている。また、冗長性を持たせるため、複数のCRACに対して床下を同一の給気チャンバとするのが一般的であるが、ケーブルなどの床下障害物の増減の影響などにより、たとえば運用初期と中期とでは給気風量が変更してしまうことが多く、その都度吹出し口のシャッタを調整する手間があった。また、キャッピング内外との圧力差を検知し、インバータによってCRACの風量を可変させて運用する方法も考案されているが、複数台のCRACで床下が同一チャンバである場合は、他の吹出し口からの給気風量も変動してしまうため、複数のキャッピングに対して適正風量の給気を行うことが難しい問題点があった。
さらに冷却対象空間にミストを噴霧してその蒸発潜熱を利用する方法では、ミストの制御が難しく、場合によってはサーバに不測の事態が発生するおそれがある。またサーバラック内の上端部に冷却ユニットを取り付ける方法では、ラックへのサーバの搭載台数が少なくなり、またラック内上部に冷却ユニットを取り付けているため、ドレンの処理に極めて留意する必要があり、その分装置構成が複雑化する。しかも冷却ユニットのモータからの発熱も懸念される。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、サーバに代表されるファンを有する発熱機器を収納した複数のラック列が配置された施設において、ミストの噴霧を行なわず、かつドレン周りの処理も容易で、かつ省エネルギー下でラック内の機器を効率良く冷却し、かつ当該機器からの排気を効率良く空調装置に戻すとともに、空調空気を適切に分配供給し、さらに冗長性の確保も容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、発熱機器を搭載したラックが整列したラック列のある室を空調するシステムであって、前記発熱機器はファンを有し、前面側で吸気して背面側で排気するものであり、前記室の天井部には天井給気チャンバが設けられ、前記天井給気チャンバ内の下面には、断熱材が設けられ、前記ラック列の背面側空間の上部における天井部に冷却器が配置され、前記冷却器における冷却対象空気の入口側は前記背面側空間に通じ、前記冷却器によって降温された空気の出口側は前記天井給気チャンバ内に位置し、前記冷却器によって降温された空気は、前記ラック列の前面側空間の上部における前記天井給気チャンバに設けられた給気部から、当該前面側空間または各ラックへと給気されることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、ラック背面からの温度の高い空気は背面側空間を上昇し、冷却器の入口側に達する。そしてたとえば冷却コイルなどの冷却器によって冷却された後の降温した空気は、天井給気チャンバ内へと流出し、給気部から前面側空間内に流下する。すなわち発熱機器のファンと、空気温度の密度差によって、室と天井給気チャンバとの間を循環する。したがって、低温空気を必要とする発熱機器のファンの要求風量に応じて、天井給気チャンバから冷気が、いわば自動的に分配されることになる。このように低温空気が上方から給気されるため、床下給気と比較して均一な温度で発熱機器に供給できる。また基本的には空気温度の相違に基づく密度差による給排気方式のため、送風動力の大幅な削減も可能となる。もちろんミストは使用せず、冷却器は前記ラック列の背面側空間の上部における天井部に設けられており、真下にはラック列が存在しないので、ドレンの処理も容易である。そのうえ天井部に多数の冷却器を設置することができるので、冗長性の確保も容易である。
【0011】
なお、本発明において、発熱機器は必ずしも発熱機器本体内にファンを有している必要はなく、発熱機器本体とは別体のファンが、発熱機器本体の近傍外側に設けられている構成のものであってもよい。
また前記冷却器における冷却対象空気の入口側が前記背面側空間に通ずるとは、冷却器の入口側が、前記背面側空間に面している場合だけではなく、たとえばダクトやフレキシブル継手等を介して、天井部に設けた開口吸込口と冷却器の入口側とが接続されている場合も含む。
【0012】
前記ラック列は、前記発熱機器の前面同士が対向するように、複数整列して配置され、各ラック列の上部と天井部との間には、遮蔽板が設けられていてもよい。これによって、背面側の暖気が前面側に回りこむことを抑制することができ、より効率のよい発熱機器の冷却を実施することができる。
【0013】
前記給気部は、天井給気チャンバに開口された給気口であってもよい。また天井給気チャンバに通ずるダクトとし、当該ダクトの吹き出し部分を、ラック内に位置させてもよい。この場合、ラックは、前面及び側面が密閉型、背面が開放型とし、当該ラック内の前面側にラック内給気チャンバを構成し、前記ダクトの吹き出し部分は、当該ラック内給気チャンバ内に開口しているようにすれば、より効率のよい冷却を実施することができる。なおラック下面については、発熱機器の下面で相当程度密閉されるが、もちろん別途パネル等によって密閉するようにすれば、さらに効率のよい冷却を実施することができる。
【0014】
前記ラック内給気チャンバの内部には、ラック内給気チャンバの内部を水平に仕切るパンチングメタルまたはフィルタが配置されていてもよい。これによって、重力に伴う負の浮力(下降流)の動圧を軽減し、発熱機器の要求風量にさらに近づけることが可能となる。これらパンチングメタルまたはフィルタは、必要に応じて、上下方向に複数配置してもよい。
【0015】
前記ラック内給気チャンバの圧力を検出する圧力センサを有し、当該圧力センサからの圧力信号に基づいて、前記冷却器の操作部が制御されるように構成すれば、過剰な冷却や給気風量の不足を防止することができる。ここで冷却器の操作部とは、たとえば圧縮機や冷却器を流通する冷水などの冷媒の流量を調整する弁であり、また冷却器が空気調和機のような、送風機を備えたものである場合、送風機のモータやインバータである。
【0016】
前記冷却器の操作部に接続されるケーブルは、前記背面側空間の上部に施工されていることが好ましい。これによって床下空間へのケーブルの施工を必要とせず、しかもケーブルからの発熱により、背面側空間での温度成層形成を容易にして、室内下部温度をより低温化することができ、ラック内の機器にとっては有利である。
【0017】
前記背面側空間と室外とを区画する壁面における天井部に近い部位に外気ガラリを設ければ、中間期や冬季では、温度差換気により室内上部の高温空気が室外へ流出すると同時に冷気が室内に流入し、空調機の吸込み温度を低下できる。これにより、空調機の冷却エネルギーを減少させることができ、その分省エネが図れる。
【0018】
前記冷却器は、天井給気チャンバ内に配置され、当該天井給気チャンバ内は、少なくとも冷却器本体または仕切り板によって、冷却対象空気の入口側領域と、降温された空気の出口側領域とに仕切られているようにしてもよい。すなわち、冷却器本体のみで、あるいは冷却器と仕切板とで仕切られるようにしてもよい。これによって、発熱機器のファンと密度差による、天井給気チャンバの給気部→前面側空間→発熱機器→背面側空間→天井給気の冷却器入口側領域→冷却器→冷却器出口側領域→天井給気チャンバの給気部という空気の循環が効率よく行なえる。
【0019】
本発明は冷却器のみならず、もちろん空気調和機を使用することができ、その場合、当該空気調和機の吸込口が前記背面側空間に通じ、当該空気調和機の吹出口が前記天井給気チャンバ内に位置しているようにすればよい。この場合、空気調和機は、天井給気チャンバ内に設置されていてもよく、また天井部のパネルに直接設置されていてもよい。後者の場合には、空気調和機の吸い込み口が、背面側空間に面するように設置すればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発熱機器を収納した複数のラック列が配置された施設において、ミストの噴霧を行なわず、かつドレン周りの処理も容易で、かつラック内の機器を効率良く冷却し、かつ当該機器からの排気を効率良く冷却器に戻すことができ、しかもファンの要求風量に応じて、低温空気を適切に分配供給することが可能である。また冗長性の確保も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態にかかる空調システムの構成の概略を示す説明図である。
【図2】サーバの前面同士を対向配置した他の実施の形態にかかる空調システムの構成の概略を示す説明図である。
【図3】天井給気チャンバとラックとをダクトで接続した他の実施の形態にかかる空調システムの構成の概略を示す説明図である。
【図4】図3の空調システムに用いることができるラックの前面側の斜視図である。
【図5】図3の空調システムに用いることができるラックの背面側の斜視図である。
【図6】図4のラックのラック内給気チャンバに通気部材を設けた様子を示す側面の説明図である。
【図7】空調機に代えて冷却器を使用した空調システムの構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明すると、図1は基本となる空調システムの構成の概要を示しており、室Rの天井部1には、天井給気チャンバ2が形成されている。この天井給気チャンバ2の下面側には、ドレンパン3、断熱材4が配され、また天井給気チャンバ2の上面側には、断熱材5が配されている。
【0023】
室Rの床6上には、ラック11が設置され、ラック11には、上下方向に4台のサーバ12、13、14、15が上から順に搭載されている。各サーバ12、13、14、15の背面側には、各々ファンFが設けられており、これにより前面側空間Cから空気を吸い込み、また各サーバ11〜14の排熱を、背面側空間Wに排気するようになっている。これら各サーバ11〜14のファンFは、負荷の変動に応じて回転速度が切り替えられ、熱負荷が大きいほど、回転速度が高くなるように構成されている。
【0024】
ラック11は、直線状に整列して室R内に配置されており、図面の手前から奥方向に複数配列されてラック列が構成されている。
【0025】
空調機21は、前記ラック列の背面側空間Wの上部における天井部1に、その下面が天井部1の下面と略同一面となるように設けられている。この空調機21は、CRACとして構成されるパッケージ型空調機であり、送風機22の他に、熱交換器,圧縮機,凝縮器,制御機構,エアフィルタ等(いずれも図示せず)を備えている。空調機21は、天吊りによって天井部1に設けられている。尤も、送風機22と熱交換器は、1の筐体に収納される必要はなく、いずれかを天井給気チャンバ2内に設けてもよい。なお圧縮機や凝縮器は室外に設けられ、熱交換器と冷媒配管される。送風機22の能力は、空気循環系からファンFの能力分を減じた能力、たとえば後述する吸込口23と給気口7間に空気を搬送できるものだけのものであってもよい。
【0026】
空調機21の吸込口23は背面側空間Wに面し、空調機21の空調空気の吹出口24は天井給気チャンバ1内に位置し、水平方向に空調空気が天井給気チャンバ1内に吹き出されるようになっている。そして天井給気チャンバ1には、前面側空間Cに面して開口している給気口7が形成されている。
【0027】
ラック11の上方背面側の天井部1には、ケーブルラック8が設けられており、このケーブルラック8には、ラック11内の各サーバ12〜15に接続されるたとえば電力ケーブル、通信ケーブル、その他各種のケーブル9が収容されている。このうち一部は、たとえば吸込口23など、天井給気チャンバ2内に通ずる開口部を経て、空調機21の操作部、たとえば冷媒流量調整弁や送風機23のモータに接続される。
【0028】
本実施の形態にかかる空調システムは以上のような構成を有しており、ラック11に搭載されているサーバ12〜15からの熱は、ファンFによって背面側空間Wへと排気される。背面側空間Wの暖気は、空調機21のファン22によって吸込口23から空調機21へと吸い込まれる。そして吸い込まれた暖気は、空調機21によって所定の温度まで降温され、空調空気として、両側の吹出口24から天井給気チャンバ2内へと水平に吹き出される。
【0029】
天井給気チャンバ2内へと吹き出された空調空気は、天井給気チャンバ2内に行き渡り、給気口7から室Rの前面側空間Cへと流れ出る。このとき、ラック11内の各サーバ12〜15のファンFは、その負荷に応じて回転しており、すなわち熱負荷の大きいサーバでは、回転速度が高くなって空調空気(冷気)の要求風量が多くなっている。したがって、前面側空間Cへと流れ出た空調空気(冷気)は、各サーバ12〜15のファンFの要求風量に応じて、自動的にかつ適切に分配されることになる。また天井部1に設けた給気口7からの上方給気のため、これまでの床下給気と比較すると、均一な温度で各サーバ12〜15に空調空気を供給することができる。そのうえ基本的には空気温度の相違に基づく密度差による給排気方式のため、空調機21の機外静圧を小さくすることができ、その結果送風動力の大幅な削減も可能となっている。
【0030】
各サーバ12〜15に対する冷却は、前記した空調空気(冷気)によって行なわれるので、ミストの噴霧は不要である。また空調機21で発生するドレンについても、まず空調機21の設置場所が、ラック列の背面側空間Wの上部に配置されているので、万が一結露等によって空調機21から滴が垂れ落ちても、ラック11のサーバ12〜15に落ちることはない。また天井給気チャンバ2内にドレンパン3が施工されているので、ドレンの処理も容易である。ラック列の背面側空間Wの上部に複数の空調機21を設置することが可能であるから、冗長性の確保も容易である。
【0031】
またこの例では、ラック11の上方背面側の天井部1に配置されたケーブルラック8に、ラック11内の各サーバ12〜15に接続される各種のケーブル9が収容されているので、まず床下空間へのケーブルの施工を必要としない。しかも各種ケーブル9からの発熱により、背面側空間Wでの温度成層形成が促進されているので、室Rの床6の温度をより低温化することができる。したがってラック11内のサーバ12〜15にとって、より好ましい温度環境となっている。しかもこのケーブルラック8の存在によって、背面側空間Wと前面側空間Cとの間の空気の流通を抑えることでき、より効率のよい空調空気の前面側空間Cへの給気、並びに背面側空間Wの暖気の吸い込みを実現している。
【0032】
次に他の実施の形態について説明する。図2は、サーバ12〜15の前面同士が対向するようにラック11を配置して、ラック列を構成したものであり、したがって、たとえば前面側空間Cは、2つのラック列の間に創出され、各ラック列は、1の前面側空間Cを共有していることになる。そしてこの例では、各ラック11の上部と天井部との間に遮蔽板31が設けられている。これによって前面側空間Cと背面側空間Wとをほぼ完全に区画することが可能になっており、背面側空間Wへの空調空気(冷気)の流出を抑えることができ、より効率的なサーバ12〜15の冷却が可能となっている。なおサーバの未搭載部分に生じた開口部については、必要に応じてラック11に対して、適宜ブランクパネル32を取り付け、前面側空間Cと背面側空間Wとの遮断性を向上させてもよい。
【0033】
さらに他の実施の形態について説明する。図3は、サーバ12〜15の前面同士が対向するようにラック11配置して、ラック列を構成するとともに、給気部としてダクト41を採用したものである。すなわち、天井給気チャンバ2に通ずるダクト41によって、各ラック11と天井給気チャンバ2とを接続したものである。ダクト41の吹き出し部分は、ラック11内に位置している。これによって、天井給気チャンバ2内の空調空気を、直接ラック11内の各サーバ12〜15に供給することができ、さらにサーバ12〜15に対する冷却効率が向上する。
【0034】
この場合、各ダクト41に、適宜風量調整ダンパあるいはモータダンパを設けてもよい。これによって、未実装ラックや負荷の少ないサーバラックなどにおいてはブランクパネルを取り付けることなしに、給気風量を全閉、あるいは調整することができ、過剰な給気を簡易に抑えることが可能である。
【0035】
また背面側空間Wの上部に外気ガラリ42を設けてもよい。これにより、中間期や冬季では、温度差換気により室R内上部の高温空気が室外へ流出すると同時に冷気が室R内に流入し、空調機21の吸込み温度を低下できる。これにより、空調機21の冷却に要するエネルギーを減少させることができ、その分省エネが図れる。
【0036】
また図3に示した例の場合、さらに冷却効率を高めるため、各ラック11の構成を、例えば図4、図5に示したように、背面側、上面側のみを開放型とし、他の面は密閉型としてもよい。すなわち図4、図5に示したラック11は、前面に例えばガラス板等のパネル11aが取り付けられ、側面にも適宜のパネル11b、11cが取り付けられている。そして背面と上面の一部には、メッシュ等通気性のある部材で覆われた開口部11d、11eが形成されている。かかる構成によって、ラック11内の前面側には、ダクト41と通ずるラック内給気チャンバ43が構成されることになる。したがってダクト41から供給された空調空気は、このラック内給気チャンバ43に流出する。一方サーバ12等からの排熱はラック11の背面の開口部11dや上面の開口部11eからのみ排熱されるという、一方向流が形成され、ラック11内の熱の循環が低減される。もちろん背面側空間Wに放出された熱は、自然対流により室上部に運ばれるため、空調機21毎の吸込み温度のばらつきを抑えることができ、かつ室温で最も高い温度の吸引となるため、冷却効率の高い運転が可能となる。
【0037】
またこの場合、ラック内給気チャンバ43内に、チャンバ内の圧力を検出する圧力センサ44を設置し、この圧力センサ44からの圧力信号に基づいて、空調機21からの風量や、給気温度を制御するように構成すれば、過剰な冷却や給気風量の不足を防止することができる。
【0038】
またダクト41をラック11に接続した例においては、図6に示したように、ラック内給気チャンバ43の内部に、ラック内給気チャンバ43の内部を水平に仕切るパンチングメタルまたはフィルタなどの通気性部材46が配置されていてもよい。これによって、重力に伴う負の浮力(下降流)の動圧を軽減し、サーバ12〜15の要求風量にさらに近づけることが可能となる。これら通気性部材46は、必要に応じて、最上段のサーバ12の下面と、最下段のサーバ15の上面の間に、上下方向に複数配置してもよい。
【0039】
なお前記した実施の形態は、送風機22を備えた空調機21を用いたが、これに代えて、たとえば冷却コイルからなる冷却器を採用してもよい。図7はその場合の構成の概略を示しており、この例では、冷却器51が天井給気チャンバ2内に設置されている。また冷却器51の本体で、天井給気チャンバ2内が冷却対象空気、すなわちサーバ12〜15の排気によって昇温した空気の入口側領域Aと、冷却器51によって降温された空気の出口側領域Bとに仕切られている。そして入口側領域Aの天井部には、吸込口52が形成されている。他方、各ラック11の上部と天井部1との間には遮蔽板31が設けられている。
【0040】
かかる構成によれば、冷却器51によって冷却されて温度が低下した空気は、給気口7から前面側空間Cへと流出し、サーバ12〜15のファンFによって、各サーバごとに必要量が取り入れられ、サーバが冷却される。そして昇温した空気は、背面側空間Wへと排気され、天井部1へと上昇し、吸込口52から天井給気チャンバ2内に流入し、冷却器51によって冷却される。なおここでは圧力センサ44が圧力の降下を検知すると、たとえば冷却器51の冷媒流量調整弁や圧縮機回転数を減じるといった運転を採用できる。
【0041】
したがって、図7に示した例では、空気温度に相違する空気の密度差とサーバ12〜15のファンFのみによって、そのような循環系が構成される。したがって前記した実施の形態よりもさらにエネルギーを節約することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、サーバ等、ファンを有する発熱機器を搭載したラックを収容している室の空調に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 天井部
2 天井給気チャンバ
3 ドレンパン
4、5 断熱材
6 床
7 給気口
8 ケーブルラック
9 各種ケーブル
11 ラック
12、13、14、15 サーバ
21 空調機
22 送風機
23 吸込口
24 吹出口
31 遮蔽板
32 ブランクパネル
41 ダクト
42 外気ガラリ
43 ラック内給気チャンバ
44 圧力センサ
46 通気性部材
51 冷却器
52 吸込口
A 入口側領域
B 出口側領域
C 前面側空間
F ファン
R 室
W 背面側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機器を搭載したラックが整列したラック列のある室を空調するシステムであって、
前記発熱機器はファンを有し、前面側で吸気して背面側で排気するものであり、前記室の天井部には天井給気チャンバが設けられ、
前記天井給気チャンバ内の下面には、断熱材が設けられ、
前記ラック列の背面側空間の上部における天井部に、冷却器が配置され、
前記冷却器における冷却対象空気の入口側は前記背面側空間に通じ、前記冷却器によって降温された空気の出口側は前記天井給気チャンバ内に位置し、
前記冷却器によって降温された空気は、前記ラック列の前面側空間の上部における前記天井給気チャンバに設けられた給気部から、当該前面側空間または各ラックへと給気されることを特徴とする、空調システム。
【請求項2】
前記ラック列は、前記発熱機器の前面同士が対向するように、複数整列して配置され、各ラック列の上部と天井部との間には、遮蔽板が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記給気部は、天井給気チャンバに開口された給気口であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記給気部は、天井給気チャンバに通ずるダクトであり、当該ダクトの吹き出し部分は、ラック内に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記ラックは、前面及び側面が密閉型、背面が開放型であり、当該ラック内の前面側にラック内給気チャンバが構成され、前記ダクトの吹き出し部分は、当該ラック内給気チャンバ内に開口していることを特徴とする、請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記ラック内給気チャンバの内部には、ラック内給気チャンバの内部を水平に仕切るパンチングメタルまたはフィルタが配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記ラック内給気チャンバの圧力を検出する圧力センサを有し、当該圧力センサからの圧力信号に基づいて、前記冷却器の操作部が制御されることを特徴とする、請求項5または6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記冷却器の操作部に接続されるケーブルは、前記背面側空間の上部に施工されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の空調システム。
【請求項9】
前記背面側空間と室外とを区画する壁面における天井部に近い部位に外気ガラリが設けられていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の空調システム。
【請求項10】
前記冷却器は、天井給気チャンバ内に配置され、当該天井給気チャンバ内は、少なくとも冷却器本体または仕切り板によって、冷却対象空気の入口側領域と、降温された空気の出口側領域とに仕切られていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の空調システム。
【請求項11】
前記冷却器は空気調和機であり、当該空気調和機の吸込口が前記背面側空間に通じ、当該空気調和機の吹出口が前記天井給気チャンバ内に位置していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−81528(P2011−81528A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232152(P2009−232152)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】