空調制御装置および方法
【課題】空調空間を目的の空調環境へ制御するための操作量を分布系流動解析手法で算出する場合でも良好な応答性を得る。
【解決手段】操作量算出部15Bで、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、状態推定部15Cで、これら操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、フィードバック制御部15Dで、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御する。
【解決手段】操作量算出部15Bで、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、状態推定部15Cで、これら操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、フィードバック制御部15Dで、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御技術に関し、特に空間内の目的場所における空調環境を制御するための空調制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内を所望の空調環境に維持する場合、空気調和すべき空調空間に空調設備を設けるとともに、当該空調エリアを代表する位置に温度センサを配置し、温度センサの出力に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定するものとなっている。
また、オフィスなどの大空間の場合、例えば大空間を区分して設けた空調エリアごとに、シングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態が考えられる。
【0003】
しかしながら、例えばオフィスでは、熱源となる人・照明・電気機器などの配置や、空気の流れの障害となる机、椅子、間仕切りなどの配置については作業効率が優先されており、このような室内レイアウトが空調制御を優先して設計されることはない。このため、空調設備の吹出口と温度センサの位置関係は、いわゆる温度干渉が強くならざるを得なくなる。
【0004】
したがって、シングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態では、このような温度干渉により操作量が安定しにくくなり、良好な制御が困難になる。例えば、所望の空調環境に移行させる際に温度変化幅が大きいと、制御状態にばらつきが生じ、全系的な安定状態を各フィードバック制御系が個別に探索するようなちぐはぐな動作になるため、操作量が安定しなくなる。
【0005】
これに対して、従来、分布系熱流動解析手法を用いて、空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御技術が提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。この技術は、対象となる空調空間における初期の空調状況を順解析することにより、当該空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを推定し、この分布データと目的場所における目標温度とを逆解析することにより、空調制御に関する新たな操作量を推定し、この新たな操作量に基づいて、空調空間に設置されている各空調設備の吹出口における吹出速度や吹出温度を算出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4016066号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】原山和也・本田光弘・綛田長生原、「分布系シミュレーションを用いた室内任意空間の温熱環境制御技術の開発」、平成22年度大会、I−20、社団法人空気調和・衛生工学会、平成22年9月1日
【非特許文献2】加藤信介・小林光・村上周三、「不完全混合室内における換気効率・温熱環境形成効率評価指標に関する研究 第2報-CFDに基づく局所領域の温熱環境形成寄与率評価指標の開発」、東大生研:空気調和・衛生工学論文集No.69、pp.39-47、1998.4
【非特許文献3】安部恒平、桃瀬一成、木本日出夫、「随伴数値解析を利用した自然対流場の最適化」、日本機械学会論文集(B編)、70巻691号、pp.729-736、2004.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、目的場所の温度が目標温度に達するのに時間を要するため、良好な応答性が得られないという問題点があった。
前述したように、分布データと目的場所における目標温度とを逆解析して、空調制御に関する新たな操作量を推定した場合、得られた操作量は、目的場所の温度が目標温度となった状態における定常的な操作量を示している。このため、このような操作量から算出した吹出速度や吹出温度で各空調設備を制御した場合、目的場所の温度は目標温度に達するものの、目標温度に達するまでの所要時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、空調空間を目的の空調環境へ制御するための操作量を分布系流動解析手法で算出する場合でも、良好な応答性が得られる空調制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を、空調機器ごとに算出する操作量算出部と、状態推定部で得られた操作量を分布系流動順解析することにより、空調空間に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定部と、状態推定部で推定した状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により操作量算出部で得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システムへ指示することにより、空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えている。
【0011】
この際、フィードバック制御部で、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、偏差に対応する新たな操作量を算出し、操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、フィードバック制御部で、各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、各センサに共通する連動係数を求めるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明にかかる空調制御方法は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御方法であって、操作量算出部が、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を、空調機器ごとに算出する操作量算出ステップと、状態推定部が、状態推定部で得られた操作量を分布系流動順解析することにより、空調空間に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定ステップと、フィードバック制御部が、状態推定部で推定した状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により操作量算出部で得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システムへ指示することにより、空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御ステップとを備えている。
【0014】
この際、フィードバック制御ステップで、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、偏差に対応する新たな操作量を算出し、操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として算出するようにしてもよい。
【0015】
また、フィードバック制御ステップで、各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、各センサに共通する連動係数を求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分布系熱流動解析手法を用いて、空間内の目的場所における空調環境を制御する場合でも、良好な応答性が得られる。また、各吹出口から吹き出す調和空気に対する操作量のバランスを大きく崩すことなく、吹出口ごとに調和空気を連動させてフィードバック制御することができ、高い安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】空調システムの構成例を示す説明図である。
【図3】空調制御装置での空調制御動作を示すフロー図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。
【図6】第1の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【図7】連動係数の時間変化を示すグラフである。
【図8】連動風量の時間変化を示すグラフである。
【図9】計測温度の時間変化を示すグラフである。
【図10】目的場所温度の時間変化を示すグラフである。
【図11】第2の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【図12】第3の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。
【図13】第3の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、空調システムの構成例を示す説明図である。
【0019】
この空調制御装置10は、全体として、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調システム20を制御することにより、空調空間30の目的場所Xにおける空調環境を制御する機能を有している。
【0020】
空調システム20には、主な構成として、空調処理装置21、空調機器22、および温度センサ23が設けられている。
空調処理装置21は、全体として、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、通信回線Lを介して空調制御装置10から指示された操作量に基づいて、空調機器22により各吹出口から空調空間30へ吹き出す調和空気を制御することにより、空調空間30全体の空調環境を制御する機能と、温度センサ23により空調空間30内の温度を計測し、通信回線Lを介して空調制御装置10へ通知する機能とを有している。
【0021】
図2の例では、空調空間30がゾーンZ1〜Z5の5つのゾーンに区分されている。これらゾーンZ1〜Z5には、空調機器22としてVAV1〜VAV5がそれぞれのゾーンZ1〜Z5の天井に設けた吹出口F1〜F5にそれぞれ設置されているとともに、温度センサ23としてTH1〜TH5がそのゾーンの壁にそれぞれ設置されている。これらゾーンZ1〜Z5は、壁により空間として明確に区分されているわけではなく、それぞれのVAV1〜VAV5から吹き出された調和空気が互いに対流する。このため、ゾーン間で温度干渉が発生する状況にある。
【0022】
VAV1〜VAV5は、空調処理装置21を介して空調制御装置10から指示された、吹出風量Vm1〜Vm5などの操作量に基づいて、空調機(図示せず)から供給された調和空気を調整し、各吹出口F1〜F5からそれぞれに対応するゾーンZ1〜Z5へ吹き出す機能を有している。
TH1〜TH5は、それぞれに対応するゾーンZ1〜Z5内の室温Tp1〜Tp5を計測し、空調処理装置21へ通知する機能を有している。
【0023】
[発明の原理]
温度分布と空調空間30内の目的場所における目標温度とから新たに生成した設定温度分布をCFD逆解析すれば、各吹出口から吹き出す調和空気に関する、空調空間30を設定温度分布とするための操作量をそれぞれ推定できる。このようにして得られた操作量は、設定温度分布を維持するための定常的な操作量であるため、空調空間30の温度分布が設定温度分布に到達するまでの到達時間が長い。
【0024】
一般に、設定値までの到達時間を短縮する場合、フィードバック制御が用いられる。フィードバック制御は、予め設定された制御特性に基づいて、設定値と計測値との偏差に対応する、前回の操作量に対する差分、すなわち操作量差分を求め、この操作量差分に基づき対象を制御する制御方法である。
【0025】
例えば、フィードバック制御のうち最も一般的なPID制御では、偏差に対する、比例成分(P:Proportinal)、積分成分(I:Integral)、微分成分(D:Differential)の3つの成分の組み合わせで操作量差分を求める制御特性を用いる。比例成分に対する係数をKp、積分成分に対する係数をKi、微分成分に対する係数をKdとした場合、偏差に対する操作量差分は、次の式(1)で求められる。
操作量差分=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差 …(1)
【0026】
したがって、このようなフィードバック制御を、例えば前述の図2に示したように、ゾーンZ1〜Z5ごとに実行すれば、空調空間30の温度分布が設定温度分布に到達するまでの到達時間を短縮できる。実際には、ゾーンZ1〜Z5の温度は、温度センサTH1〜TH5で計測するため、これら温度センサTH1〜TH5の位置における設定温度が必要となる。これについては、操作量をCFD順解析すれば、これら温度センサTH1〜TH5の位置における設定温度を求めることができる。
【0027】
このようにして、ゾーンZ1〜Z5の温度センサTH1〜TH5で計測した計測温度が設定温度となるよう、設定温度と計測温度との偏差に応じた操作量を求めて、各吹出口からの調和空気を各ゾーンで独立して制御した場合、ゾーン間での干渉が発生する。このため、各ゾーンの温度センサにおける室温が設定温度に到達しても、空調空間30内の目的場所における室温が目標温度に達しているとは限らない。これは、各ゾーンの温度センサにおける室温が設定温度に到達させるための操作量の組合せは、複数存在するからである。
【0028】
したがって、目的場所における室温が目標温度に達するよう、各ゾーンでのフィードバック制御を調整する必要がある。本発明では、ゾーン間での干渉があまり変化しない場合、目的場所における室温が目標温度から逸れ難いことに着目し、ゾーン間での干渉があまり変化しないよう、すなわち各ゾーンでの調和空気に対する操作量のバランスが大きく崩れないよう、各ゾーンの新たな操作量を連動させて補正するようにしたものである。
【0029】
本発明では、操作量を連動させて補正するため、連動係数を導入し、各ゾーンの調和空気に関する操作量と、連動係数とをパラメータとして、操作量を補正した連動操作量を求める計算式を定義する。この計算式については、操作量に連動係数を乗算することにより連動操作量を求める方法、あるいは、操作量に設定した調整幅に連動係数を乗算し、得られた値を操作量に加える方法など、各種の計算方法がある。
【0030】
連動係数を求める方法については、分布系流動順解析で求めた操作量について、さらに分布系流動逆解析することにより、各ゾーンに設けられたセンサの計測位置における空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、得られた状態設定値と当該センサで得られた状態計測値との偏差に対応する新たな操作量を、予め設定された空調制御特性に基づいて求め、元の操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として計算すればよい。
【0031】
このような発明の原理に基づいて、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、得られた操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御するようにしたものである。
【0032】
[空調制御装置]
次に、図1および図3を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成について詳細に説明する。図3は、空調制御装置での空調制御動作を示すフロー図である。
この空調制御装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0033】
通信I/F部11は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線Lを介して接続された空調システムなどの外部装置との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや入出力データなどの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0034】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で用いる各種処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み出されて実行されるプログラムであり、予め外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して記憶部14へ格納される。
【0035】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ入力部15A、操作量算出部15B、状態推定部15C、フィードバック制御部15D、および空調指示部15Eがある。
【0036】
データ入力部15Aは、空調システム20などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力された、演算処理部15で用いる各種処理情報を、記憶部14へ予め格納する機能を有している。
【0037】
操作量算出部15Bは、データ入力部15Aで取得した境界条件データ14Aと設定条件データ14BとをCFD順解析することにより、空調空間30全体の温度分布などの空調環境を推定する機能と、CFD順解析で得られた空調環境とデータ入力部15Aで取得した目的データ14CとをCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、操作量データ14Dとして出力する機能とを有している。
【0038】
分布系流動解析手法とは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を基本として、境界条件から空間の温度や気流等の分布を数値計算によって求める技術である。一般的なCFDでは、対象空間を網目状の小空間に分割し、隣接する小空間間における熱流を解析する。
【0039】
操作量算出部15BにおけるCFD順解析は、この分布系流動解析手法を用いて、空調空間30に関する境界条件データ14Aおよび設定条件データ14Bから、空調空間30内の温度分布や気流分布などの空調環境を算出する技術であり、具体的には非特許文献2などの公知技術を用いればよい。
一方、操作量算出部15BにおけるCFD逆解析は、CFD順解析を行うことにより、所望の空調環境を実現したい場所に対する設備の感度(または寄与)を求め、この感度の大きさによって操作量を調整することにより、目的の空調環境を実現するための最終的な操作量を算出する技術であり、具体的には非特許文献2や非特許文献3などの公知技術を用いればよい。
【0040】
境界条件データ14Aは、空調空間30の空調環境に対する影響度を示すデータであり、空調空間30の空調環境に与える影響が変化する構成要素ごとに、当該時点における境界条件として、風速、風向・温度で示される影響度が登録されている。この境界条件データ14Aには、データ入力部15Aにより空調システム20から取得した、各空調機器22から吹き出す調和空気の吹出風量や吹出温度など、空調システム20における調和空気の制御状況を示すデータも含まれている。
【0041】
設定条件データ14Bは、空調空間30に関する位置および形状や、空調システム20で生成された調和空気の吹出口など、空調空間30の空調環境に影響を与える構成要素に関する位置および形状を示す空間条件データ、空調空間30に配置された各発熱体に関する配置位置および発熱量、さらには形状を示す発熱体データなど、熱流動解析処理を行う際の設定条件となる各種データが含まれている。
【0042】
目的データ14Cは、空調空間30内の目的場所Xにおける目標温度Txsを示すデータである。
操作量データ14Dは、空調空間30を目的空調環境へ制御するための、空調機器22ごとの操作量を示すデータである。
【0043】
状態推定部15Cは、操作量算出部15Bで得られた操作量データ14Dに含まれる各操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、状態推定値データ14Eとして出力する機能とを有している。
状態推定部15CにおけるCFD順解析は、操作量算出部15BにおけるCFD順解析と同様の技術であり、具体的には非特許文献2などの公知技術を用いればよい。
【0044】
フィードバック制御部15Dは、状態推定部15Cで得られた状態推定値データ14Eに含まれる状態設定値と、空調システム20からの状態計測値データ14Fに含まれる各センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求める機能と、この連動係数により操作量算出部15Bで得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求める機能と、得られた各連動操作量を含む連動操作量データ14Gを、空調指示部15Eから空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御する機能とを有している。
【0045】
空調指示部15Eは、フィードバック制御部15Dからの連動操作量データ14Gに含まれる連動操作量を、通信I/F部11を介して空調システム20へ指示する機能を有している。
【0046】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10の演算処理部15は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて、図4の空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、境界条件データ14Aや設定条件データ14Bが予め記憶部14に格納されているものとする。ここでは、各空調機器22から吹き出す空調空気の風量を操作することにより、空調空間30内の温度を制御する場合を例として説明する。
【0047】
まず、操作量算出部15Bは、データ入力部15Aで取得した境界条件データ14Aと設定条件データ14Bとを記憶部14から読み出してCFD順解析することにより、空調空間30全体の空調環境を推定する(ステップ100)。
次に、操作量算出部15Bは、CFD順解析で推定した空調環境と、空調空間30内の目的場所Xにおける目標温度Txsを示す目的データ14CとをCFD逆解析することにより、各空調機器22に関する、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量として、各空調機器22での風量Vsiを算出し、操作量データ14Dとして出力する(ステップ101)。
【0048】
続いて、状態推定部15Cは、操作量算出部15Bで得られた操作量データ14Dに含まれる各風量VsをCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各温度センサ23の計測位置における設定温度Tsをそれぞれ推定し、状態推定値データ14Eとして出力する(ステップ102)。この際、状態推定部15Cは、必要に応じて、境界条件データ14Aや設定条件データ14Bを参照する。
【0049】
この後、データ入力部15Aは、各温度センサ23で計測した計測温度Tpを空調システム20から取得して、状態計測値データ14Fとして記憶部14へ格納する(ステップ110)。
【0050】
続いて、フィードバック制御部15Dは、状態推定部15Cからの状態推定値データ14Eに含まれる設定温度Tsと、記憶部14から読み出した状態計測値データ14Fに含まれる温度センサ23での計測温度Tpとから、これら温度センサ23での個別偏差ΔTを算出する(ステップ111)。
この際、個別偏差ΔTについては、温度センサ23ごとに、状態推定部15Cで推定した当該温度センサTHiの設定温度Tsiと、当該温度センサTHiで計測した計測温度Tpiとの個別偏差ΔTi=Tsi−Tpiを求める。
【0051】
図5は、第1の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。ここでは、温度センサTH1〜TH5の計測位置における設定温度Tsi[゜C]が、それぞれ「26.0」,「26.5」,「26.5」,「27.0」,「25.0」であり、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tp[゜C]が、それぞれ「28.0」,「27.0」,「28.0」,「27.0」,「26.0」となっている。したがって、温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTi[゜C]は、「2.0」,「0.5」,「1.5」,「0.0」,「1.0」となる。
【0052】
次に、フィードバック制御部15Dは、このようにして算出した個別偏差ΔTiに基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数Raを算出する(ステップ112)。
連動係数Raの算出方法としては、これら個別偏差ΔTiと対応する個別係数Riを求め、これら個別係数Riを統計処理することにより、連動係数Raを求める。
【0053】
この際、個別係数Riは、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、個別偏差ΔTiに対応する新たな操作量Vniを算出し、操作量算出部15Bで得られた操作量Vsiを新たな操作量Vniとするための係数を個別係数Riとして算出する。
この際、統計処理としては、平均値算出、中央値算出、最大値または最小値選択などの処理を用いればよい。また、統計処理として、目的場所Xからの距離が最も近い、あるいは遠い温度センサTHiの個別係数Riを連動係数Raとして選択する処理を行うようにしてもよい。
【0054】
なお、個別係数Riの算出方法は、操作量Vsから連動係数Raにより連動操作量Vmを算出する算出式に依存する。例えば、操作量Vsiに連動係数Raを乗算して得られた差分操作量を操作量Vsiに加えて連動操作量Vmiを算出する場合、個別係数Riは、操作量Vsiで新たな操作量Vniを除算したものを1から減算することにより求められる。具体的には、操作量Vsi=100[m3/min]で、新たな操作量Vni=120[m3/min]の場合、個別係数RiはRi=1−Vni/Vsi=1−120/100=20%となる。
【0055】
この後、フィードバック制御部15Dは、このようにして算出した連動係数Raにより状態推定部15Cで推定した各設操作量Vsを補正して各連動操作量Vmを算出し、連動操作量データ14Gとして出力する(ステップ113)。
【0056】
図6は、第1の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vsi[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。したがって、前述の例によれば、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi×(1+Ra)で求められ、それぞれ「120」,「48」,「72」,「36」,「12」となる。
【0057】
続いて、空調指示部15Eは、フィードバック制御部15Dで得られた連動操作量に基づいて、空調空間30全体の空調環境を制御する空調推定制御を、通信I/F部11を介して空調システム20へ指示する(ステップ114)。
【0058】
この後、フィードバック制御部15Dは、境界条件データ14A、設定条件データ14B、あるいは目的データ14Cに変更があった場合(ステップ115:YES)、操作量Vsおよび設定温度Tsを再計算するため、ステップ100へ戻る。
一方、境界条件データ14A、設定条件データ14B、あるいは目的データ14Cに変更がない場合(ステップ115:NO)、新たな計測温度Tpに応じた連動操作量Vmを計算するため、ステップ110へ戻る。
【0059】
[動作例]
本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作例について説明する。
図7は、連動係数の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が連動係数Ra[%]を示している。この例では、空調制御が開始された時刻T0において、ある程度大きな連動係数値を示しており、その後の時刻T1までの期間に補正不要を示すゼロまで低下し、これ以降の時刻T2までゼロで一定である。
【0060】
図8は、連動風量の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が連動操作量に対応する連動風量V[m3/min]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動風量Vm1〜Vm5の変化が示されている。連動風量Vm1〜Vm5は、空調制御が開始された時刻T0において、ある程度大きな操作量を示しており、その後の時刻T1までの期間に元の風量Vs1〜Vs5まで低下し、これ以降の時刻T2まで一定である。これら連動風量Vm1〜Vm5は、個別に増減することなく互いに連動して変化していることが分かる。
【0061】
図9は、計測温度の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が計測温度Tp[゜C]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tp1〜Tp5の変化が示されている。計測温度Tp1〜Tp5は、空調制御が開始された時刻T0において、図5に示した計測温度Tpiをそれぞれ示しており、その後の時刻T1までの期間に設定温度Ts1〜Ts5までそれぞれなだらかに推移し、これ以降の時刻T2まで一定である。
【0062】
図10は、目的場所温度の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が目的場所温度Tx[゜C]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、目的場所Xにおける目的場所温度Txaの変化と、各空調機器VAV1〜VAV5での風量を風量Vs1〜Vs5に固定した場合における、目的場所Xにおける目的場所温度Txbの変化とが示されている。
【0063】
目的場所温度Txa[゜C]は、空調制御が開始された時刻T0において、初期値「27.5」を示しており、その後の時刻T1までの期間に目標温度「26.0」までなだらかに推移し、これ以降の時刻T2まで一定である。一方、目的場所温度Txb[゜C]は、空調制御が開始された時刻T0において、初期値「27.5」を示しており、時刻T1より後の時刻T2になって初めて目標温度「26.0」に到達している。
したがって、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合、目標温度までの到達時間が時刻T2から時刻T1へ短縮されたことになる。
【0064】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、操作量算出部15Bで、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、状態推定部15Cで、これら操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定するようにしたものである。
【0065】
そして、フィードバック制御部15Dで、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御するようにしたものである。
【0066】
これにより、空調制御開始から空調空間30が目的空調環境となるまでの全体の到達時間を短縮することができる。空調空間30を目的の空調環境へ制御するための操作量を分布系流動解析手法で算出する場合でも、良好な応答性が得られる。また、各空調機器22の吹出口から吹き出す調和空気に対する操作量のバランスを大きく崩すことなく、吹出口ごとに調和空気を連動させてフィードバック制御することができ、高い安定性が得られる。
【0067】
また、本実施の形態では、空調制御装置10において、空調空間20の空調環境のうち温度分布を制御する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、風速、湿度、CO2など、空調空間20における温度以外の空調環境についても、温度センサ23に代えて、これら状態を検出するセンサを用いることにより、前述と同様に制御することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
第1の実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて連動操作量を算出する際、連動係数Raを操作量Vsに乗算して得られた差分操作量を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求める場合を例として説明した。本実施の形態では、予め割り当てた調整幅Vwに連動係数Raを乗算した値を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求める場合について説明する。
【0069】
本実施の形態において、フィードバック制御部15Dは、操作量Vsに対して、予め設定された調整率Rwを乗算することにより調整幅Vwを算出する機能を有している。
図11は、第2の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vs[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。したがって、調整率Rw=60%(±30%)の場合、空調機器VAV1〜VAV5に関する調整幅Vwi[m3/min]は、Vwi=Vsi×Rwで求められ、それぞれ「60」,「24」,「36」,「18」,「6」となる。
【0070】
したがって、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi+Vwi×Rで求められ、それぞれ「112」,「44.8」,「67.2」,「33.6」,「11.2」となる。
【0071】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、予め割り当てた調整幅Vwに連動係数Raを乗算した値を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求めるようにしたので、連動操作量Vmの変化を調整幅Vwで制限することができ、高い安定性が得られる。
【0072】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
第1の実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて連動操作量を算出する際、各温度センサ23の位置における温度について、それぞれ同じ方向へ変化するよう、各吹出口から吹き出す調和空気の操作量を調整する場合について説明した。
しかしながら、温度センサTH1の位置では温度を下げる方向で操作量を調整し、温度センサTH2の位置では温度を上げる方向で操作量を調整する必要がある場合もある。
【0073】
本実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて、各温度センサ23の位置でそれぞれ個別の方向で温度を調整する場合、それぞれの温度センサ23の位置における個別偏差ΔTiの極性に応じて、連動係数Raによる操作量Vsの増減を決定する場合について説明する。なお、以下では、本実施の形態を第1の実施の形態にかかる連動風量の算出方法に適用した場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、第2の実施の形態にかかる連動風量の算出方法など、他の連動風量の算出方法にも同様にして適用できる。
【0074】
図12は、第3の実施の形態にかかる個別偏差の算出例であり、第1の実施の形態と同様に、フィードバック制御部15Dにおいて、温度センサ23ごとに、状態推定部15Cで推定した当該温度センサTHiの設定温度Tsiと、当該温度センサTHiで計測した計測温度Tpiとの個別偏差ΔTi=Tsi−Tpiを求め、これら個別偏差ΔTiを統計処理することにより代表偏差ΔTを求める。
【0075】
図12の例では、温度センサTH1〜TH5に対する設定温度Tsi[゜C]が、それぞれ「26.0」,「26.5」,「26.5」,「27.0」,「25.0」であり、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tpi[゜C]が、それぞれ「25.5」,「27.0」,「28.0」,「26.5」,「26.0」となっている。この場合、温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTi[゜C]は、「−0.5」,「0.5」,「1.5」,「−0.5」,「1.0」となる。
【0076】
続いて、フィードバック制御部15Dは、予め設定された温度偏差と調和空気の操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前述の代表偏差ΔTに対応する連動係数Raを算出する。この際、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動係数Raには、対応する温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTiの極性が付与される。
【0077】
図13は、第3の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vs[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。ここで、空調制御特性に基づいて各個別偏差ΔTiから求めた連動係数RaがRa=20%であった場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動係数Rai[%]は、それぞれ対応する温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTiの極性に基づいて、「−20」,「+20」,「+20」,「−20」,「+20」となる。
【0078】
したがって、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi×(1+Ri)で求められ、それぞれ「88.0」,「44.8」,「67.2」,「26.4」,「11.2」となる。
【0079】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、それぞれの温度センサ23の位置における個別偏差ΔTiの極性に応じて、連動係数Raによる操作量Vsの増減を決定するようにしたので、温度センサ23の位置における温度を、それぞれ個別の方向で調整することができ、高い精度で、目的場所の温度を目標温度へ調整することができる。
【0080】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10…空調制御装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…境界条件データ、14B…設定条件データ、14C…目的データ、14D…操作量データ、14E…状態推定値データ、14F…状態計測値データ、14G…連動操作量データ、15…演算処理部、15A…データ入力部、15B…操作量算出部、15C…状態推定部、15D…フィードバック制御部、15E…空調指示部、20…空調システム、21…空調処理装置、22…空調機器、23…温度センサ、30…空調空間、Z1〜Z5…ゾーン、VAV1〜VAV5…空調機器、F1〜F5…吹出口、TH1〜TH5…温度センサ、X…目的場所、Txs…目標温度、Tx,Txa,Txb…目的場所温度、Ts,Tsi…設定温度、Tp,Tpi…計測温度、ΔTi…個別偏差、Vs,Vsi…操作量(風量)、Ra…連動係数、Ri…個別係数、Vm,Vmi…連動操作量(連動風量)、Rw…調整率、Vw,Vwi…調整幅。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御技術に関し、特に空間内の目的場所における空調環境を制御するための空調制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内を所望の空調環境に維持する場合、空気調和すべき空調空間に空調設備を設けるとともに、当該空調エリアを代表する位置に温度センサを配置し、温度センサの出力に応じて空調機器から供給される調和空気の風量・風向・温度などの操作量を決定するものとなっている。
また、オフィスなどの大空間の場合、例えば大空間を区分して設けた空調エリアごとに、シングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態が考えられる。
【0003】
しかしながら、例えばオフィスでは、熱源となる人・照明・電気機器などの配置や、空気の流れの障害となる机、椅子、間仕切りなどの配置については作業効率が優先されており、このような室内レイアウトが空調制御を優先して設計されることはない。このため、空調設備の吹出口と温度センサの位置関係は、いわゆる温度干渉が強くならざるを得なくなる。
【0004】
したがって、シングルループのフィードバック制御系を複数構成する形態では、このような温度干渉により操作量が安定しにくくなり、良好な制御が困難になる。例えば、所望の空調環境に移行させる際に温度変化幅が大きいと、制御状態にばらつきが生じ、全系的な安定状態を各フィードバック制御系が個別に探索するようなちぐはぐな動作になるため、操作量が安定しなくなる。
【0005】
これに対して、従来、分布系熱流動解析手法を用いて、空間内の目的場所における空調環境を制御する空調制御技術が提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。この技術は、対象となる空調空間における初期の空調状況を順解析することにより、当該空調空間の温度および気流の分布を示す分布データを推定し、この分布データと目的場所における目標温度とを逆解析することにより、空調制御に関する新たな操作量を推定し、この新たな操作量に基づいて、空調空間に設置されている各空調設備の吹出口における吹出速度や吹出温度を算出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4016066号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】原山和也・本田光弘・綛田長生原、「分布系シミュレーションを用いた室内任意空間の温熱環境制御技術の開発」、平成22年度大会、I−20、社団法人空気調和・衛生工学会、平成22年9月1日
【非特許文献2】加藤信介・小林光・村上周三、「不完全混合室内における換気効率・温熱環境形成効率評価指標に関する研究 第2報-CFDに基づく局所領域の温熱環境形成寄与率評価指標の開発」、東大生研:空気調和・衛生工学論文集No.69、pp.39-47、1998.4
【非特許文献3】安部恒平、桃瀬一成、木本日出夫、「随伴数値解析を利用した自然対流場の最適化」、日本機械学会論文集(B編)、70巻691号、pp.729-736、2004.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、目的場所の温度が目標温度に達するのに時間を要するため、良好な応答性が得られないという問題点があった。
前述したように、分布データと目的場所における目標温度とを逆解析して、空調制御に関する新たな操作量を推定した場合、得られた操作量は、目的場所の温度が目標温度となった状態における定常的な操作量を示している。このため、このような操作量から算出した吹出速度や吹出温度で各空調設備を制御した場合、目的場所の温度は目標温度に達するものの、目標温度に達するまでの所要時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、空調空間を目的の空調環境へ制御するための操作量を分布系流動解析手法で算出する場合でも、良好な応答性が得られる空調制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を、空調機器ごとに算出する操作量算出部と、状態推定部で得られた操作量を分布系流動順解析することにより、空調空間に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定部と、状態推定部で推定した状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により操作量算出部で得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システムへ指示することにより、空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えている。
【0011】
この際、フィードバック制御部で、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、偏差に対応する新たな操作量を算出し、操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、フィードバック制御部で、各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、各センサに共通する連動係数を求めるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明にかかる空調制御方法は、空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、空調機器での操作量を指示することにより、空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御方法であって、操作量算出部が、空調空間の構成および空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、目的空調環境下における空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、空調空間を目的空調環境へ制御するための操作量を、空調機器ごとに算出する操作量算出ステップと、状態推定部が、状態推定部で得られた操作量を分布系流動順解析することにより、空調空間に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定ステップと、フィードバック制御部が、状態推定部で推定した状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により操作量算出部で得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システムへ指示することにより、空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御ステップとを備えている。
【0014】
この際、フィードバック制御ステップで、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、偏差に対応する新たな操作量を算出し、操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として算出するようにしてもよい。
【0015】
また、フィードバック制御ステップで、各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、各センサに共通する連動係数を求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分布系熱流動解析手法を用いて、空間内の目的場所における空調環境を制御する場合でも、良好な応答性が得られる。また、各吹出口から吹き出す調和空気に対する操作量のバランスを大きく崩すことなく、吹出口ごとに調和空気を連動させてフィードバック制御することができ、高い安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】空調システムの構成例を示す説明図である。
【図3】空調制御装置での空調制御動作を示すフロー図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。
【図6】第1の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【図7】連動係数の時間変化を示すグラフである。
【図8】連動風量の時間変化を示すグラフである。
【図9】計測温度の時間変化を示すグラフである。
【図10】目的場所温度の時間変化を示すグラフである。
【図11】第2の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【図12】第3の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。
【図13】第3の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、空調システムの構成例を示す説明図である。
【0019】
この空調制御装置10は、全体として、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調システム20を制御することにより、空調空間30の目的場所Xにおける空調環境を制御する機能を有している。
【0020】
空調システム20には、主な構成として、空調処理装置21、空調機器22、および温度センサ23が設けられている。
空調処理装置21は、全体として、パーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、通信回線Lを介して空調制御装置10から指示された操作量に基づいて、空調機器22により各吹出口から空調空間30へ吹き出す調和空気を制御することにより、空調空間30全体の空調環境を制御する機能と、温度センサ23により空調空間30内の温度を計測し、通信回線Lを介して空調制御装置10へ通知する機能とを有している。
【0021】
図2の例では、空調空間30がゾーンZ1〜Z5の5つのゾーンに区分されている。これらゾーンZ1〜Z5には、空調機器22としてVAV1〜VAV5がそれぞれのゾーンZ1〜Z5の天井に設けた吹出口F1〜F5にそれぞれ設置されているとともに、温度センサ23としてTH1〜TH5がそのゾーンの壁にそれぞれ設置されている。これらゾーンZ1〜Z5は、壁により空間として明確に区分されているわけではなく、それぞれのVAV1〜VAV5から吹き出された調和空気が互いに対流する。このため、ゾーン間で温度干渉が発生する状況にある。
【0022】
VAV1〜VAV5は、空調処理装置21を介して空調制御装置10から指示された、吹出風量Vm1〜Vm5などの操作量に基づいて、空調機(図示せず)から供給された調和空気を調整し、各吹出口F1〜F5からそれぞれに対応するゾーンZ1〜Z5へ吹き出す機能を有している。
TH1〜TH5は、それぞれに対応するゾーンZ1〜Z5内の室温Tp1〜Tp5を計測し、空調処理装置21へ通知する機能を有している。
【0023】
[発明の原理]
温度分布と空調空間30内の目的場所における目標温度とから新たに生成した設定温度分布をCFD逆解析すれば、各吹出口から吹き出す調和空気に関する、空調空間30を設定温度分布とするための操作量をそれぞれ推定できる。このようにして得られた操作量は、設定温度分布を維持するための定常的な操作量であるため、空調空間30の温度分布が設定温度分布に到達するまでの到達時間が長い。
【0024】
一般に、設定値までの到達時間を短縮する場合、フィードバック制御が用いられる。フィードバック制御は、予め設定された制御特性に基づいて、設定値と計測値との偏差に対応する、前回の操作量に対する差分、すなわち操作量差分を求め、この操作量差分に基づき対象を制御する制御方法である。
【0025】
例えば、フィードバック制御のうち最も一般的なPID制御では、偏差に対する、比例成分(P:Proportinal)、積分成分(I:Integral)、微分成分(D:Differential)の3つの成分の組み合わせで操作量差分を求める制御特性を用いる。比例成分に対する係数をKp、積分成分に対する係数をKi、微分成分に対する係数をKdとした場合、偏差に対する操作量差分は、次の式(1)で求められる。
操作量差分=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差 …(1)
【0026】
したがって、このようなフィードバック制御を、例えば前述の図2に示したように、ゾーンZ1〜Z5ごとに実行すれば、空調空間30の温度分布が設定温度分布に到達するまでの到達時間を短縮できる。実際には、ゾーンZ1〜Z5の温度は、温度センサTH1〜TH5で計測するため、これら温度センサTH1〜TH5の位置における設定温度が必要となる。これについては、操作量をCFD順解析すれば、これら温度センサTH1〜TH5の位置における設定温度を求めることができる。
【0027】
このようにして、ゾーンZ1〜Z5の温度センサTH1〜TH5で計測した計測温度が設定温度となるよう、設定温度と計測温度との偏差に応じた操作量を求めて、各吹出口からの調和空気を各ゾーンで独立して制御した場合、ゾーン間での干渉が発生する。このため、各ゾーンの温度センサにおける室温が設定温度に到達しても、空調空間30内の目的場所における室温が目標温度に達しているとは限らない。これは、各ゾーンの温度センサにおける室温が設定温度に到達させるための操作量の組合せは、複数存在するからである。
【0028】
したがって、目的場所における室温が目標温度に達するよう、各ゾーンでのフィードバック制御を調整する必要がある。本発明では、ゾーン間での干渉があまり変化しない場合、目的場所における室温が目標温度から逸れ難いことに着目し、ゾーン間での干渉があまり変化しないよう、すなわち各ゾーンでの調和空気に対する操作量のバランスが大きく崩れないよう、各ゾーンの新たな操作量を連動させて補正するようにしたものである。
【0029】
本発明では、操作量を連動させて補正するため、連動係数を導入し、各ゾーンの調和空気に関する操作量と、連動係数とをパラメータとして、操作量を補正した連動操作量を求める計算式を定義する。この計算式については、操作量に連動係数を乗算することにより連動操作量を求める方法、あるいは、操作量に設定した調整幅に連動係数を乗算し、得られた値を操作量に加える方法など、各種の計算方法がある。
【0030】
連動係数を求める方法については、分布系流動順解析で求めた操作量について、さらに分布系流動逆解析することにより、各ゾーンに設けられたセンサの計測位置における空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、得られた状態設定値と当該センサで得られた状態計測値との偏差に対応する新たな操作量を、予め設定された空調制御特性に基づいて求め、元の操作量を新たな操作量とするための係数を連動係数として計算すればよい。
【0031】
このような発明の原理に基づいて、本実施の形態にかかる空調制御装置10は、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、得られた操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御するようにしたものである。
【0032】
[空調制御装置]
次に、図1および図3を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成について詳細に説明する。図3は、空調制御装置での空調制御動作を示すフロー図である。
この空調制御装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0033】
通信I/F部11は、専用のデータ通信回路からなり、通信回線Lを介して接続された空調システムなどの外部装置との間でデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや入出力データなどの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0034】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15で用いる各種処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み出されて実行されるプログラムであり、予め外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して記憶部14へ格納される。
【0035】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ入力部15A、操作量算出部15B、状態推定部15C、フィードバック制御部15D、および空調指示部15Eがある。
【0036】
データ入力部15Aは、空調システム20などの外部装置や記録媒体から通信I/F部11を介して入力された、演算処理部15で用いる各種処理情報を、記憶部14へ予め格納する機能を有している。
【0037】
操作量算出部15Bは、データ入力部15Aで取得した境界条件データ14Aと設定条件データ14BとをCFD順解析することにより、空調空間30全体の温度分布などの空調環境を推定する機能と、CFD順解析で得られた空調環境とデータ入力部15Aで取得した目的データ14CとをCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、操作量データ14Dとして出力する機能とを有している。
【0038】
分布系流動解析手法とは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を基本として、境界条件から空間の温度や気流等の分布を数値計算によって求める技術である。一般的なCFDでは、対象空間を網目状の小空間に分割し、隣接する小空間間における熱流を解析する。
【0039】
操作量算出部15BにおけるCFD順解析は、この分布系流動解析手法を用いて、空調空間30に関する境界条件データ14Aおよび設定条件データ14Bから、空調空間30内の温度分布や気流分布などの空調環境を算出する技術であり、具体的には非特許文献2などの公知技術を用いればよい。
一方、操作量算出部15BにおけるCFD逆解析は、CFD順解析を行うことにより、所望の空調環境を実現したい場所に対する設備の感度(または寄与)を求め、この感度の大きさによって操作量を調整することにより、目的の空調環境を実現するための最終的な操作量を算出する技術であり、具体的には非特許文献2や非特許文献3などの公知技術を用いればよい。
【0040】
境界条件データ14Aは、空調空間30の空調環境に対する影響度を示すデータであり、空調空間30の空調環境に与える影響が変化する構成要素ごとに、当該時点における境界条件として、風速、風向・温度で示される影響度が登録されている。この境界条件データ14Aには、データ入力部15Aにより空調システム20から取得した、各空調機器22から吹き出す調和空気の吹出風量や吹出温度など、空調システム20における調和空気の制御状況を示すデータも含まれている。
【0041】
設定条件データ14Bは、空調空間30に関する位置および形状や、空調システム20で生成された調和空気の吹出口など、空調空間30の空調環境に影響を与える構成要素に関する位置および形状を示す空間条件データ、空調空間30に配置された各発熱体に関する配置位置および発熱量、さらには形状を示す発熱体データなど、熱流動解析処理を行う際の設定条件となる各種データが含まれている。
【0042】
目的データ14Cは、空調空間30内の目的場所Xにおける目標温度Txsを示すデータである。
操作量データ14Dは、空調空間30を目的空調環境へ制御するための、空調機器22ごとの操作量を示すデータである。
【0043】
状態推定部15Cは、操作量算出部15Bで得られた操作量データ14Dに含まれる各操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定し、状態推定値データ14Eとして出力する機能とを有している。
状態推定部15CにおけるCFD順解析は、操作量算出部15BにおけるCFD順解析と同様の技術であり、具体的には非特許文献2などの公知技術を用いればよい。
【0044】
フィードバック制御部15Dは、状態推定部15Cで得られた状態推定値データ14Eに含まれる状態設定値と、空調システム20からの状態計測値データ14Fに含まれる各センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求める機能と、この連動係数により操作量算出部15Bで得られた各操作量を補正することにより連動操作量を求める機能と、得られた各連動操作量を含む連動操作量データ14Gを、空調指示部15Eから空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御する機能とを有している。
【0045】
空調指示部15Eは、フィードバック制御部15Dからの連動操作量データ14Gに含まれる連動操作量を、通信I/F部11を介して空調システム20へ指示する機能を有している。
【0046】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10の演算処理部15は、起動時あるいはオペレータ操作に応じて、図4の空調制御処理を開始する。なお、空調制御処理の実行開始に先立って、境界条件データ14Aや設定条件データ14Bが予め記憶部14に格納されているものとする。ここでは、各空調機器22から吹き出す空調空気の風量を操作することにより、空調空間30内の温度を制御する場合を例として説明する。
【0047】
まず、操作量算出部15Bは、データ入力部15Aで取得した境界条件データ14Aと設定条件データ14Bとを記憶部14から読み出してCFD順解析することにより、空調空間30全体の空調環境を推定する(ステップ100)。
次に、操作量算出部15Bは、CFD順解析で推定した空調環境と、空調空間30内の目的場所Xにおける目標温度Txsを示す目的データ14CとをCFD逆解析することにより、各空調機器22に関する、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量として、各空調機器22での風量Vsiを算出し、操作量データ14Dとして出力する(ステップ101)。
【0048】
続いて、状態推定部15Cは、操作量算出部15Bで得られた操作量データ14Dに含まれる各風量VsをCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各温度センサ23の計測位置における設定温度Tsをそれぞれ推定し、状態推定値データ14Eとして出力する(ステップ102)。この際、状態推定部15Cは、必要に応じて、境界条件データ14Aや設定条件データ14Bを参照する。
【0049】
この後、データ入力部15Aは、各温度センサ23で計測した計測温度Tpを空調システム20から取得して、状態計測値データ14Fとして記憶部14へ格納する(ステップ110)。
【0050】
続いて、フィードバック制御部15Dは、状態推定部15Cからの状態推定値データ14Eに含まれる設定温度Tsと、記憶部14から読み出した状態計測値データ14Fに含まれる温度センサ23での計測温度Tpとから、これら温度センサ23での個別偏差ΔTを算出する(ステップ111)。
この際、個別偏差ΔTについては、温度センサ23ごとに、状態推定部15Cで推定した当該温度センサTHiの設定温度Tsiと、当該温度センサTHiで計測した計測温度Tpiとの個別偏差ΔTi=Tsi−Tpiを求める。
【0051】
図5は、第1の実施の形態にかかる個別偏差の算出例である。ここでは、温度センサTH1〜TH5の計測位置における設定温度Tsi[゜C]が、それぞれ「26.0」,「26.5」,「26.5」,「27.0」,「25.0」であり、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tp[゜C]が、それぞれ「28.0」,「27.0」,「28.0」,「27.0」,「26.0」となっている。したがって、温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTi[゜C]は、「2.0」,「0.5」,「1.5」,「0.0」,「1.0」となる。
【0052】
次に、フィードバック制御部15Dは、このようにして算出した個別偏差ΔTiに基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数Raを算出する(ステップ112)。
連動係数Raの算出方法としては、これら個別偏差ΔTiと対応する個別係数Riを求め、これら個別係数Riを統計処理することにより、連動係数Raを求める。
【0053】
この際、個別係数Riは、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、個別偏差ΔTiに対応する新たな操作量Vniを算出し、操作量算出部15Bで得られた操作量Vsiを新たな操作量Vniとするための係数を個別係数Riとして算出する。
この際、統計処理としては、平均値算出、中央値算出、最大値または最小値選択などの処理を用いればよい。また、統計処理として、目的場所Xからの距離が最も近い、あるいは遠い温度センサTHiの個別係数Riを連動係数Raとして選択する処理を行うようにしてもよい。
【0054】
なお、個別係数Riの算出方法は、操作量Vsから連動係数Raにより連動操作量Vmを算出する算出式に依存する。例えば、操作量Vsiに連動係数Raを乗算して得られた差分操作量を操作量Vsiに加えて連動操作量Vmiを算出する場合、個別係数Riは、操作量Vsiで新たな操作量Vniを除算したものを1から減算することにより求められる。具体的には、操作量Vsi=100[m3/min]で、新たな操作量Vni=120[m3/min]の場合、個別係数RiはRi=1−Vni/Vsi=1−120/100=20%となる。
【0055】
この後、フィードバック制御部15Dは、このようにして算出した連動係数Raにより状態推定部15Cで推定した各設操作量Vsを補正して各連動操作量Vmを算出し、連動操作量データ14Gとして出力する(ステップ113)。
【0056】
図6は、第1の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vsi[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。したがって、前述の例によれば、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi×(1+Ra)で求められ、それぞれ「120」,「48」,「72」,「36」,「12」となる。
【0057】
続いて、空調指示部15Eは、フィードバック制御部15Dで得られた連動操作量に基づいて、空調空間30全体の空調環境を制御する空調推定制御を、通信I/F部11を介して空調システム20へ指示する(ステップ114)。
【0058】
この後、フィードバック制御部15Dは、境界条件データ14A、設定条件データ14B、あるいは目的データ14Cに変更があった場合(ステップ115:YES)、操作量Vsおよび設定温度Tsを再計算するため、ステップ100へ戻る。
一方、境界条件データ14A、設定条件データ14B、あるいは目的データ14Cに変更がない場合(ステップ115:NO)、新たな計測温度Tpに応じた連動操作量Vmを計算するため、ステップ110へ戻る。
【0059】
[動作例]
本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作例について説明する。
図7は、連動係数の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が連動係数Ra[%]を示している。この例では、空調制御が開始された時刻T0において、ある程度大きな連動係数値を示しており、その後の時刻T1までの期間に補正不要を示すゼロまで低下し、これ以降の時刻T2までゼロで一定である。
【0060】
図8は、連動風量の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が連動操作量に対応する連動風量V[m3/min]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動風量Vm1〜Vm5の変化が示されている。連動風量Vm1〜Vm5は、空調制御が開始された時刻T0において、ある程度大きな操作量を示しており、その後の時刻T1までの期間に元の風量Vs1〜Vs5まで低下し、これ以降の時刻T2まで一定である。これら連動風量Vm1〜Vm5は、個別に増減することなく互いに連動して変化していることが分かる。
【0061】
図9は、計測温度の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が計測温度Tp[゜C]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tp1〜Tp5の変化が示されている。計測温度Tp1〜Tp5は、空調制御が開始された時刻T0において、図5に示した計測温度Tpiをそれぞれ示しており、その後の時刻T1までの期間に設定温度Ts1〜Ts5までそれぞれなだらかに推移し、これ以降の時刻T2まで一定である。
【0062】
図10は、目的場所温度の時間変化を示すグラフであり、横軸が時間[min]を示し、縦軸が目的場所温度Tx[゜C]を示している。ここでは、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合における、目的場所Xにおける目的場所温度Txaの変化と、各空調機器VAV1〜VAV5での風量を風量Vs1〜Vs5に固定した場合における、目的場所Xにおける目的場所温度Txbの変化とが示されている。
【0063】
目的場所温度Txa[゜C]は、空調制御が開始された時刻T0において、初期値「27.5」を示しており、その後の時刻T1までの期間に目標温度「26.0」までなだらかに推移し、これ以降の時刻T2まで一定である。一方、目的場所温度Txb[゜C]は、空調制御が開始された時刻T0において、初期値「27.5」を示しており、時刻T1より後の時刻T2になって初めて目標温度「26.0」に到達している。
したがって、本実施の形態を適用してフィードバック制御を行った場合、目標温度までの到達時間が時刻T2から時刻T1へ短縮されたことになる。
【0064】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、操作量算出部15Bで、空調空間30の空調環境をCFD逆解析することにより、空調空間30を目的空調環境へ制御するための操作量を空調機器22ごとに算出し、状態推定部15Cで、これら操作量をCFD順解析することにより、空調空間30に設けられた各センサの計測位置における目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定するようにしたものである。
【0065】
そして、フィードバック制御部15Dで、得られた状態設定値とセンサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を空調システム20へ指示することにより、空調機器22を連動させてフィードバック制御するようにしたものである。
【0066】
これにより、空調制御開始から空調空間30が目的空調環境となるまでの全体の到達時間を短縮することができる。空調空間30を目的の空調環境へ制御するための操作量を分布系流動解析手法で算出する場合でも、良好な応答性が得られる。また、各空調機器22の吹出口から吹き出す調和空気に対する操作量のバランスを大きく崩すことなく、吹出口ごとに調和空気を連動させてフィードバック制御することができ、高い安定性が得られる。
【0067】
また、本実施の形態では、空調制御装置10において、空調空間20の空調環境のうち温度分布を制御する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、風速、湿度、CO2など、空調空間20における温度以外の空調環境についても、温度センサ23に代えて、これら状態を検出するセンサを用いることにより、前述と同様に制御することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
第1の実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて連動操作量を算出する際、連動係数Raを操作量Vsに乗算して得られた差分操作量を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求める場合を例として説明した。本実施の形態では、予め割り当てた調整幅Vwに連動係数Raを乗算した値を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求める場合について説明する。
【0069】
本実施の形態において、フィードバック制御部15Dは、操作量Vsに対して、予め設定された調整率Rwを乗算することにより調整幅Vwを算出する機能を有している。
図11は、第2の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vs[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。したがって、調整率Rw=60%(±30%)の場合、空調機器VAV1〜VAV5に関する調整幅Vwi[m3/min]は、Vwi=Vsi×Rwで求められ、それぞれ「60」,「24」,「36」,「18」,「6」となる。
【0070】
したがって、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi+Vwi×Rで求められ、それぞれ「112」,「44.8」,「67.2」,「33.6」,「11.2」となる。
【0071】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、予め割り当てた調整幅Vwに連動係数Raを乗算した値を操作量Vsに加算することにより連動操作量Vmを求めるようにしたので、連動操作量Vmの変化を調整幅Vwで制限することができ、高い安定性が得られる。
【0072】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
第1の実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて連動操作量を算出する際、各温度センサ23の位置における温度について、それぞれ同じ方向へ変化するよう、各吹出口から吹き出す調和空気の操作量を調整する場合について説明した。
しかしながら、温度センサTH1の位置では温度を下げる方向で操作量を調整し、温度センサTH2の位置では温度を上げる方向で操作量を調整する必要がある場合もある。
【0073】
本実施の形態では、フィードバック制御部15Dにおいて、各温度センサ23の位置でそれぞれ個別の方向で温度を調整する場合、それぞれの温度センサ23の位置における個別偏差ΔTiの極性に応じて、連動係数Raによる操作量Vsの増減を決定する場合について説明する。なお、以下では、本実施の形態を第1の実施の形態にかかる連動風量の算出方法に適用した場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、第2の実施の形態にかかる連動風量の算出方法など、他の連動風量の算出方法にも同様にして適用できる。
【0074】
図12は、第3の実施の形態にかかる個別偏差の算出例であり、第1の実施の形態と同様に、フィードバック制御部15Dにおいて、温度センサ23ごとに、状態推定部15Cで推定した当該温度センサTHiの設定温度Tsiと、当該温度センサTHiで計測した計測温度Tpiとの個別偏差ΔTi=Tsi−Tpiを求め、これら個別偏差ΔTiを統計処理することにより代表偏差ΔTを求める。
【0075】
図12の例では、温度センサTH1〜TH5に対する設定温度Tsi[゜C]が、それぞれ「26.0」,「26.5」,「26.5」,「27.0」,「25.0」であり、温度センサTH1〜TH5での計測温度Tpi[゜C]が、それぞれ「25.5」,「27.0」,「28.0」,「26.5」,「26.0」となっている。この場合、温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTi[゜C]は、「−0.5」,「0.5」,「1.5」,「−0.5」,「1.0」となる。
【0076】
続いて、フィードバック制御部15Dは、予め設定された温度偏差と調和空気の操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前述の代表偏差ΔTに対応する連動係数Raを算出する。この際、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動係数Raには、対応する温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTiの極性が付与される。
【0077】
図13は、第3の実施の形態にかかる連動操作量の算出例である。ここでは、空調機器VAV1〜VAV5に対する操作量である風量Vs[m3/min]が、それぞれ「100」,「40」,「60」,「30」,「10」となっている。ここで、空調制御特性に基づいて各個別偏差ΔTiから求めた連動係数RaがRa=20%であった場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動係数Rai[%]は、それぞれ対応する温度センサTH1〜TH5での個別偏差ΔTiの極性に基づいて、「−20」,「+20」,「+20」,「−20」,「+20」となる。
【0078】
したがって、連動係数Ra=20%の場合、空調機器VAV1〜VAV5に対する連動操作量である連動風量Vmi[m3/min]は、例えばVmi=Vsi×(1+Ri)で求められ、それぞれ「88.0」,「44.8」,「67.2」,「26.4」,「11.2」となる。
【0079】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、それぞれの温度センサ23の位置における個別偏差ΔTiの極性に応じて、連動係数Raによる操作量Vsの増減を決定するようにしたので、温度センサ23の位置における温度を、それぞれ個別の方向で調整することができ、高い精度で、目的場所の温度を目標温度へ調整することができる。
【0080】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10…空調制御装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…境界条件データ、14B…設定条件データ、14C…目的データ、14D…操作量データ、14E…状態推定値データ、14F…状態計測値データ、14G…連動操作量データ、15…演算処理部、15A…データ入力部、15B…操作量算出部、15C…状態推定部、15D…フィードバック制御部、15E…空調指示部、20…空調システム、21…空調処理装置、22…空調機器、23…温度センサ、30…空調空間、Z1〜Z5…ゾーン、VAV1〜VAV5…空調機器、F1〜F5…吹出口、TH1〜TH5…温度センサ、X…目的場所、Txs…目標温度、Tx,Txa,Txb…目的場所温度、Ts,Tsi…設定温度、Tp,Tpi…計測温度、ΔTi…個別偏差、Vs,Vsi…操作量(風量)、Ra…連動係数、Ri…個別係数、Vm,Vmi…連動操作量(連動風量)、Rw…調整率、Vw,Vwi…調整幅。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、
前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、前記空調空間を前記目的空調環境へ制御するための操作量を、前記空調機器ごとに算出する操作量算出部と、
前記状態推定部で得られた前記操作量を分布系流動順解析することにより、前記空調空間に設けられた各センサの計測位置における前記目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定部と、
前記状態推定部で推定した前記状態設定値と前記センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、前記各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により前記操作量算出部で得られた前記各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を前記空調システムへ指示することにより、前記空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記フィードバック制御部は、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前記偏差に対応する新たな操作量を算出し、前記操作量を前記新たな操作量とするための係数を前記連動係数として算出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空調制御装置において、
前記フィードバック制御部は、前記各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、前記各センサに共通する前記連動係数を求めることを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御方法であって、
操作量算出部が、前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、前記空調空間を前記目的空調環境へ制御するための操作量を、前記空調機器ごとに算出する操作量算出ステップと、
状態推定部が、前記状態推定部で得られた前記操作量を分布系流動順解析することにより、前記空調空間に設けられた各センサの計測位置における前記目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定ステップと、
フィードバック制御部が、前記状態推定部で推定した前記状態設定値と前記センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、前記各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により前記操作量算出部で得られた前記各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を前記空調システムへ指示することにより、前記空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の空調制御方法において、
前記フィードバック制御ステップは、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前記偏差に対応する新たな操作量を算出し、前記操作量を前記新たな操作量とするための係数を前記連動係数として算出することを特徴とする空調制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の空調制御方法において、
前記フィードバック制御ステップは、前記各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、前記各センサに共通する前記連動係数を求めることを特徴とする空調制御方法。
【請求項1】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御装置であって、
前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、前記空調空間を前記目的空調環境へ制御するための操作量を、前記空調機器ごとに算出する操作量算出部と、
前記状態推定部で得られた前記操作量を分布系流動順解析することにより、前記空調空間に設けられた各センサの計測位置における前記目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定部と、
前記状態推定部で推定した前記状態設定値と前記センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、前記各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により前記操作量算出部で得られた前記各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を前記空調システムへ指示することにより、前記空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記フィードバック制御部は、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前記偏差に対応する新たな操作量を算出し、前記操作量を前記新たな操作量とするための係数を前記連動係数として算出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空調制御装置において、
前記フィードバック制御部は、前記各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、前記各センサに共通する前記連動係数を求めることを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
空調空間に設けられた空調機器を制御する空調システムに対して、前記空調機器での操作量を指示することにより、前記空調空間を任意の目的空調環境へ制御する空調制御方法であって、
操作量算出部が、前記空調空間の構成および前記空調空間内の空調環境への影響を示す条件データと、前記目的空調環境下における前記空調空間内の目的場所での目標値を示す目的データとに基づいて、前記空調空間内の空調環境を分布系流動解析することにより、前記空調空間を前記目的空調環境へ制御するための操作量を、前記空調機器ごとに算出する操作量算出ステップと、
状態推定部が、前記状態推定部で得られた前記操作量を分布系流動順解析することにより、前記空調空間に設けられた各センサの計測位置における前記目的空調環境の状態を示す状態設定値をそれぞれ推定する状態推定ステップと、
フィードバック制御部が、前記状態推定部で推定した前記状態設定値と前記センサで計測した状態計測値との偏差に基づいて、前記各操作量を連動させて補正するための連動係数を求め、この連動係数により前記操作量算出部で得られた前記各操作量を補正することにより連動操作量を求め、得られた各連動操作量を前記空調システムへ指示することにより、前記空調機器を連動させてフィードバック制御するフィードバック制御ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の空調制御方法において、
前記フィードバック制御ステップは、予め設定された偏差と操作量差分との関係を示す空調制御特性に基づいて、前記偏差に対応する新たな操作量を算出し、前記操作量を前記新たな操作量とするための係数を前記連動係数として算出することを特徴とする空調制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の空調制御方法において、
前記フィードバック制御ステップは、前記各センサごとに個別の連動係数を求め、これら個別係数を統計処理することにより、前記各センサに共通する前記連動係数を求めることを特徴とする空調制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−2671(P2013−2671A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131995(P2011−131995)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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