説明

空調室外機接続型冷温水式床冷暖房ユニット

【課題】ビルマルチ空調室外機の冷媒配管のループ内に他の複数の空調室内機と同様に接続可能で、冷温水による床輻射冷暖房が可能なユニットで自動制御を含め内部の機器全てが工場等で組立て、配管、調整完了の状態で現地に納入することで、大幅な工程工数の削減でコストダウン出来る床輻射冷暖房システムを提供する。
【解決手段】冷媒配管の途中に分岐管を付け、電子膨張弁を通して冷媒対水熱交換器で冷温水を造り床下に敷設された循環パイプに供給して床面を冷却加熱し床からの輻射をえる、併用する空調室内機の空調空気を床下に吹き込み床吹出し口から居室内に吹出し、体流との複合効果が得られる、同様にリモコン等でコントロールが出来て、自動制御システムも基盤に組み付け、他の機器との通信を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の床冷暖房ユニットは、冷媒対水の熱交換器を搭載していて居室のペリカウンターやデッドスペースと呼ばれる柱型の隣又はパイプスペース等に設置するが、床下に13mmφのポリエチレン管等の冷温水管を敷設する最も近い所に設置するのが望ましい、図4の様に空調室外機から複数の室内機に配管する冷媒配管から分岐して該ユニット図9−30の設置場所までその冷媒配管を配管して、冷房時液側(往)を図4の冷媒対水熱交換器図4−19の冷媒側入口に電子膨張弁を通じて接続、出口 図1−20の冷房時ガス側(戻)をヒートポンプ空調屋外機に配管接続して冷房時、水側吐出管図4−22に16℃の冷水、と暖房時は熱交換器の冷媒側を逆循環させて40℃以上の温水を得て床下敷設管に接続循環させ床面を冷却、加温して床輻射冷暖房に供する事の出来るユニットを提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の大型空調機と併用する、冷温水式床輻射冷暖房システムでは床下循環と床下吹込み空調を併用するので、大型空調機へ冷温水(冷水7℃、温水45℃)を供給する大口径(50〜65mmφ)の循環ポンプ、同口径の配管や、40mm以上の厚みを必要とする保温材でこの配管の結露と熱漏れを防ぎ、また床下敷設管用に冷温水をヘッダーに供給し、3方電動弁の比例、またはON,OFF制御で室温、床温を制御しているのが主であった、システムの循環ループ内には冷温水の膨張、収縮を吸収する膨張タンクを設置している。
更に従来の冷温水式床冷暖房システムは居室等の床下に管を敷設して、冷温水を循環させる為、管寄せ(ヘッダー)を機械室、またはパイプスペース等に取付け、屋外または機械室に冷温水発生機やチリングユニットを据付、床下吹込み空調を併用するため、居室中央の床下までのダクト設備と機械室内に空調機(エアーハドリングウニット又はパッケージ型)、メインダクト、冷温水配管を配管、保温断熱し、場合により、水対水の熱交換器を取付け配管する等の比較的大掛りな設備システムがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の冷温水を使用した床冷暖房システムは冷温水を造る、冷温水発生器、又はウオーターチリングユニット、大口径配管、管寄せ、大型水対水熱交換器、膨張タンク、大口径ポンプ、三方向電動弁等の他に空調機(冷温水コイル搭載のエアーハドリングユニット)が必要な為中小の比較的小規模の建物には採用出来ない場合が多く、通常これ等の規模の建物はビルマルチヒートポンプ空調システムと呼ばれる直膨型の空調機で図5の様な多数の室内機を冷媒配管で接続して、1台又は2台以上組み合わせた室外機と接続して冷暖房に供する場合が多く、このシステムで冷温水式床冷暖房を提供する事は不可能であった。
冷温水を使用しない、空調空気のみの全空気方式の床冷暖房システムも現存するが、窓面からの日射負荷が多かったり、負荷が大きい場合はこの全空気方式の床冷暖房システムでは対応出来ない場合もあり、直膨式ビルマルチヒートポンプ空調システムで冷媒配管を接続して冷温水方式の床冷暖房システムが構築出来ないかの課題があった、この発明はこれ等の課題を解決するために成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決する為の請求項1の発明は、ビルマルチ空調室外機の冷媒配管系統に接続して従来の大型システムと同等の能力を得るコンパクトなユニットである事を特徴とする、図1はこのユニットの展開図である、冷房時マルチ空調室外機で圧縮、凝縮され、吐出されて来る冷媒は液状になっていて図1−10の冷媒対水熱交換器の入口に取り付けられた、電子膨張弁図1−11に流入して該熱交換器内で蒸発して、気体(ガス状)になってこの熱交換器の冷媒側出口から空調室外機に戻る、この蒸発時冷媒の大きな蒸発潜熱が熱交換器の水側を循環する水を冷却する、即ちこの熱交換器は冷房時蒸発器となる、暖房時は該熱交換器は凝縮器となり大きな凝縮潜熱で循環水を加温する、床下敷設循環管には通常図1−17の架橋ポリエチレン管が用いられ、ヘッダー図1−1、ポンプ図1−6他全ての配管を満水状態にしてポンプ図1−6を運転循環する、図4−3は水の膨張、収縮を吸収する密閉形膨張タンク、図1−9は循環流量計、図1−5は圧力温度計、図1−4は自動空気抜き弁、図1−7は電動三方弁、図1−15は自動制御盤である、この発明は以上の構成よりなる床輻射冷暖房ユニットである。
【0005】
また請求項2の発明はこのユニットを図2の様に更に超コンパクト化し鋼板製の箱に組込んだユニットで、例えば冷房能力で最も需要が多いと予想される6kW(約100mの平均的負荷)のケーシング(扉付鋼板製の箱)の寸法は図3の様になる、この大きさであれば居室のペリカウンター、柱形をふかした壁の中、パイプシャフト等設置場所は色々考えられ、高さが低い横長型、床下取付け型も工場製作が出来、工事施工場所での省力化で大幅なコスト削減が可能である、図2の様に正面扉に操作機器を取付け前面操作型とする事も出来るが、隠蔽取付けの場合等正面操作ではなく、遠方操作にして正面扉は内部点検時のみの使用とする事も出来る多くの特徴を有するユニットである、またこのユニットの配管、配線の取出しは全て下面にある。
【0006】
また請求項3の発明は、該ユニットが暖房時の課題である寒冷地での能力の低下の問題を解決する物である、一般のヒートポンプ式空調機での暖房能力は外気の熱を回収して居室を暖房するシステムである事から外気の影響を受けるのは当然であるが、最近のマルチ空調室外機は−5℃までは殆ど能力は低下せずこの温度以下が問題であり、室外機の蒸発器の冷媒蒸発温度の下限リミットが殆ど機器で−20〜−25℃で動作し運転が25分〜30分間停止するのが暖房能力低下の最も大きな原因である、マルチ空調室外機の冷媒蒸発温度を10℃位上昇させれば、下限リミットが動作する事なく暖房能力の低下はこれ程なく、この冷媒温度を10℃上昇させるのがヒートパケージと呼ぶ装置である、この装置には電気ヒーターを用いる方式と温水還管の温水を用いる方式がある
図6は温水還管の温水を用いる方式のフロー図である、図8−10の熱交換器から空調室外機に戻る冷媒を図8−8のシェル&チューブ型ヒートパッケージのチューブの方に接続し加温されてから室外機に戻す、シェル側にはヘッダーからの戻り温水35℃を循環させていて冷媒温度を検出して図8−7の電動3方弁で温度調節をする、電気ヒーター式の場合は図8−8に電気ヒーターが組み込まれていて冷媒の温度を感知してヒーターの通電をON,OFFして制御する加熱装置で必要がある時のみ通電されるので無駄がなく空調機の効率を上げる装置ある事を特徴とする。
【0007】
真夏に床を冷やす輻射冷房システムは結露対策が極めて重要で如何なる場合でも結露が発生すると、このシステムは成立しない、
床冷房システムは過去色々実験計画、実証施工されたが、その殆どが高温多湿な我が国の特に大都市周辺は、ヒートアイランド現象の影響もあって失敗例が多くあると聞く、失敗の殆どが床表面、床下の結露である、該システムは図9の通り結露防止を冷水温度、床温度、露点温度の制御で施す、冷房時循環する冷水の温度を床冷房に最適な温度である16℃に水温センサー図9−40、調節計35、増幅器39、電子膨張弁11で制御され、居室内の床に万遍無く敷設されたパイプ内をこの冷水が循環し床面を裏側から冷却し、床表面を床冷房時の最適温度21℃になる様に床温度測温抵抗体センサー36、調節計図35、で電動3方弁7、を制御する、更に居室内の露点温度が20℃を上回る時は露点温度検出器34、調節器35、の信号をリレ37、を経て同じ3方弁を切替えて熱交換器には戻らず3方弁のバイパス側に戻る、この冷水はバイパス循環のため床面を冷却する事無く、床裏面の熱を受けて上昇し床表面温度も室内負荷で上昇するので結露は発生せず、システムはスタンバイ状態になる、通常冷房時の空調設定温度は26〜28℃であるから、露点20℃の時の相対湿度は70〜63%であり、これ以上の湿度の状態から併用する床吹込形空調機の運転で室温を設定温度まで下げると室温よりも先に湿度が下がり、再び循環を開始する運転状態になる、安全で確実な結露防止システムである。
【発明の効果】
【0008】
このユニットの発明により、ビルマルチ空調室外機の冷媒配管ループに空調室内機と同様に配管接続して冷温水式床輻射冷暖房システムが施工出来る事となり100〜200mの居室が多くある建物では1室に1基多数取付ける、又は大空間の居室でもこのユニットを30m置きに設置すると大口径の冷温水管及び断熱保温は不要で小口径の冷媒配管で事足り、大口径の遁環ポンプ、水対水熱交換器は不要となり、機械室も不要で、このユニットは工場生産後、納入され現地取り付けの為大幅な施工工数の削減、施工費の削減、制御システムは工場で調整済みなので現地での調整は不要となり全体として大幅なコストの削減が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図5はビルマルチ空調室外機31から3台の空調室内機23,1台の空調室内機床下吹出し型24、と冷温水式床輻射冷暖房ユニット30、を2基組み合わせた場合を想定したブロック図である、室内機をもっと多数取付ける場合は空調室外機も2〜3基を連動で取付ける事になり室内機全台数の合計能力の90%(極寒冷地では120%)位の室外機が適切となりますが、この合計能力内に該ユニットの能力も加算する必要があり、またこのユニットは特に冷房時単独では使用できず、必ず空調室内機、(床下吹出し型、床下取付け型)と併用する必要がある、
【実施例1】
【0010】
図7は該ユニット30と床吹出し型空調室内機23、床下取付け型空調室内機24を組み合せた実施例である、空調室内機23はペリカウンター内に取付け室内空気吸込み口25から吸込んだ空気を床下に吹き込む、吹き込まれた空調空気は、床下内で熱をやり取りして床吹出し口26から居室内に吹出し対流効果を齎し吸込み口25から空調機へ戻る、床下取付け超薄型空調室内機24、は床下空気を吸込み床下へ吹出すが、居室が比較的広く、この空調室内機24の床下吹出し空調室内機23の空気流が届かない距離に床吹出し口26がある場合にもてきしている、該ユニト30もペリカウンター内に隠蔽とりつけ床敷設管17を居室内全面に敷設し床面を冷却、加温して輻射効果を齎す。
【実施例2】
【0011】
図8はマルチ空調室外機31から該床輻射冷暖房ユニット30、床下取付け型空調室内機24、の組み合わせである、床に取付けられた吸い込み口25から吸込まれた空気は床下取付け型空調機で冷却、加温された空調空気を床吹き出し口26から吹出し居室内2mの高さ付近(図中の点線)を横流して吸込み口に戻る、床面からは輻射35が放射され、輻射領域36は対流と輻射の複合効果で極めて快適な空間が得られまたこの時、縦のゾーンを形成して上部空間34は非空調空間となり大幅な省エネルギーの空調が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】開放型床輻射冷暖房ユニットの展開斜視図である。
【図2】ケーシング収納型該ユニットの正面図である。
【図3】ケーシング収納型該ユニット6kWの寸法図である。
【図4】冷媒対水、プレート式熱交換器の正面図、側面図である。
【図5】ビルマルチヒートポンプ空調システムの室外機、室内機の機器接続フロー図である
【図6】該ユニットの暖房モードでのヒートパッケージシステムの フロー図である
【図7】該ユニットの他多数の空調室内機を組み合わせた実施例の斜視図である。
【図8】ビルマルチ空調室外機と該ユニット床下収納型室内機を組合せた床輻射冷暖房システムのフロ図である。
【図9】該ユニットシステムの自動制御フロー図である。
【符号の説明】
【0013】
1. ヘッダー管
2. サービス弁
3. 膨張タンク
4. 自動空気抜き弁
5. 圧力温度計
6. 循環ポンプ
7. 電動3方弁
8. ヒートパッケージ
9. 流量計
10. 冷媒対水熱交換機
11. 電子膨張弁
13. 補給水管
15. 自動制御盤
16. 敷設管用弁
17. 床下敷設架橋ポリエチレン管
18. 冷媒配管
19. 熱交換器1次冷媒側入口
20. 熱交換器1次冷媒側出口
21. 熱交換器2次水側入口
22. 熱交換器2次水側出口
23. 床吹出し型空調室内機
24. 床下取付け型空調室内機
25. 室内空気吸込み口
26. 床吹出し口
27. 床温度センサー
30. 冷温水式床輻射冷暖房ユニット
31. ビルマルチヒートポンプ空調室外機
32. 冷媒分岐管
33. 居室の床仕上げ面
34. 非空調空間
35. 調節計
36. 輻射領域空調空間
37. リレーボックス
38. ユニット内配管
39. 電子膨張弁用増幅器
40. 水温センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
この発明のユニットは空冷式のビル、マルチ空調システム等の空調室外機図5、図8の31と複数の該ユニット図5の23、24の様に複数の空調室内機の全てを冷媒配管図5の18で接続出来、また同室外機、室内機、ユニット、リモコンを2芯の電線で配線結線する事でリモコンによる通信も可能な超コンパクトユニットで図1の様に冷媒対水熱交換器10、電子膨張弁11、循環ポンプ6、膨張タンク3、弁組付管寄せ(ヘッダー)1、3方向電動弁7、センサー類、制御盤15を纏めて搭載し、機器の組付け、配管、保温等の組立、電源配線、制御配線を全て完了、耐圧、通水試運転も完了させて現地の施工現場に納入出来るため、建設現場等では大幅な工期の短縮、コストの削減が可能な事を特徴とする該床冷暖房ユニット。
【請求項2】
請求項1,のユニットは図1の様に開放の状態で現地に納入する場合と、図2の様に金属のケーシングに組み込んだ状態で納入する場合とがあり、開放型図1、ケーシング組込み型図2の二種類とし、何れも居室の負荷又は容積に応じ、何KW開放型、何KWケーシング組込み型と機種を選定し、ユニットとして設置予定場所に合わせて設計、製作され納入出来、又ケーシング組込み型は正面盤面、図2−15の様に操作計器を取付け、正面から操作する場合と正面盤面には何も付けずに遠方操作とする事も出来、各種の建物に適合出来る壁隠蔽、床下取隠蔽取付けが出来る該ユニット、ケーシング組込み型。
【請求項3】
このユニットをビルマルチ空調機(ヒートポンプ式)に接続する時、寒冷地での使用に際して冬季の極寒時−5℃以下では、暖房能力が減少して暖房効果不足を来たす事がある、この解消に該ユニットに取付け可能な図1−8のヒートパッケージと称する電気ヒーターによる冷媒加熱装置、及び図6の暖房時の温水還管と熱交換器の戻り管の間に取付けた図6の温水タンク式熱交換による冷媒加熱装置で、暖房時のみ、寒冷地で外気温度と負荷に応じて電力容量又はタンク装置容積を選択し、制御機能によりヒートパッケージが必要な時のみ温度調整機能で、通電のON、OFF又は温水3方弁で流路を切替え、冷媒循環の戻り側の冷媒を加温して空調室外機に還して暖房効率を大きく上昇させる、尚このヒートパッケージは暖房時のみ動作して、冷房時は動作しない様に制御された、省電力形である事を特徴とするヒートパッケージユニット。
【請求項4】
この発明のユニットは図9の結露発生防止方式として床表面は室内の露点温度を検出して、床輻射冷房の最適床表面温度21℃より1〜2℃低い露点温度の20℃に設定する、室内露点温度が20℃以上になれば床下に敷設された循環管へは三方弁図9−7を切替え16℃の冷水の供給を停止しバイパス循環させると、床下循環管内図9−17の水温は、室内負荷と床裏面からの受熱で徐々に上昇するので、床表面温度も徐々に上昇して結露は発生しない、併設されている空調機の運転で湿度が下がり、露点温度が設定温度に下がるまで、床下敷設の循環管はバイパスサイクルのままなので床温度は下がらない、従って床表面の結露は発生しない、またこの結露防止のための室内露点温度を検出する検出器図9−34の最も有効な取付け高さは実験の結果床上30cmである、この図9の自動制御フローによる有効で安全な結露防止システムの全てとする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−281319(P2008−281319A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148581(P2007−148581)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(592147790)株式会社インターセントラル (11)
【出願人】(507173595)
【Fターム(参考)】