説明

空調機の室内機吹き出し温度制御方法

【課題】冷媒ポンプにより冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空調機の室内機吹き出し温度制御技術を提供する。
【解決手段】蒸発圧力Peが決まると、蒸発温度Teは一義的に定まる。吹き出し温度を下げるためには、蒸発圧力を下げる必要がある。図8に示すようにサイクルを低圧側にシフト(R→R’)させて、蒸発圧力をPe→Pe’にすればよい。このための一方策として、減圧弁開度の調節がある。具体的には、減圧弁開度を絞ることによりCD間の差圧がΔPからΔP’に増加し、蒸発圧力はPe’(Pe’<Pe)となる。これに対応して、蒸発温度は低温側(Te→Te’)に変化する。逆に、室内側吹き出し温度を上げるためには、蒸発圧力を上げて蒸発温度を高くする必要がある。図9に示すように減圧弁開度を大きくしてCD間の差圧をΔP”に減少させて、蒸発圧力をPe”(Pe”>Pe)に上げる。これに対応して、蒸発温度は高温側(Te→Te”)に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の運転制御方法に係り、特に、冷媒ポンプにより冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空調機の室内機吹き出し温度制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
室内機と室外機とを冷媒配管で結び、冷媒ポンプにより冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空調機(以下、冷媒ポンプ式空調機ともいう)が公知である(例えば、特許文献1)。さらに圧縮サイクルと冷媒ポンプサイクルを切り替えて使用可能な空調機も実用に供されている。このような空調機を圧縮式空調機と組み合わせることにより、夏期等の外気温が高いときは圧縮式空調機又は圧縮サイクルにより運転し、冬期等の外気温が低いときは冷媒ポンプ式空調機を併用する運転が可能となる。このような運転方式の採用により、圧縮式空調機のみのシステムと比較して通年の消費電力を減少させることが可能となり、省エネ性に優れた空調システムが実現できる。
本願出願人は、かかる冷媒ポンプ式空調機に関して、室外側送風機の風量を変化させて冷媒圧力を制御し、外気温度低下時における室内熱交換器の霜付着による冷房能力低下を防止する技術を開示している(上記文献)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−55446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒ポンプ式空調機においては、室内側吹き出し温度は外気温による成り行き制御が一般的であり、上述のような圧縮式空調機と組み合わせた空調システムにおいては、吹き出し温度が空調機間で不均一となるが、従来、特に問題視されていなかった。
しかしながら、近年、データセンター(情報通信機械室)においては二重床方式を採用するケースが多く、この場合、二重床内の温度不均一が問題となる。特に、クローズドラックは、近接空調機の吹き出し温度の影響を直接受けるため、床内温度均一化が強く求められる。このため、冷媒ポンプ式空調機についても、吹き出し温度制御の必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記各課題を解決するためのものであって、以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係る空調機の吹き出し温度制御方法は、
(1)冷媒ポンプと、減圧弁と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を備え、これら要素を結ぶ冷媒配管内に充填した冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空調機(冷媒ポンプ式空調機)において、減圧弁開度の制御により、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理することを特徴とする。
【0006】
本発明の作用は以下の通りである。図6を参照して、冷媒ポンプ式空調機において、冷媒は凝縮器において外気と熱交換して冷却され、液状態で冷媒ポンプに導かれ、ここで昇圧されて蒸発器に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとなって凝縮器に戻る。以上の冷媒循環により、冷凍サイクルを構成している。
冷媒ポンプ式空調機の冷凍サイクルRは、p−h線図上に図7の通り示される。ここに、A→Bは室外機凝縮器における凝縮工程、B→Cは冷媒ポンプによる昇圧工程、C→Dは減圧弁における減圧工程、D→Eは冷媒配管通過時の圧損工程、である。
蒸発圧力Peが決まると、蒸発温度Teは一義的に定まる。また、室内側吹き出し温度TbはTb=Te+αであるから、吹き出し温度を下げるためには、蒸発圧力を下げる必要がある。すなわち、図8に示すようにサイクルを低圧側にシフト(R→R’)させて、蒸発圧力をPe→Pe’にすればよいことになる。
蒸発圧力を下げるための一方策として、減圧弁開度の調節がある。具体的には、減圧弁開度を絞ることによりCD間の差圧がΔPからΔP’に増加し、蒸発圧力はPe’(Pe’<Pe)となる。これに対応して、蒸発温度は低温側(Te→Te’)に変化することになる。
逆に、室内側吹き出し温度を上げるためには、蒸発圧力を上げて蒸発温度を高くする必要がある。このためには図9に示すように。サイクルRを高圧側R”にシフトさせればよい。具体的には、低圧側にシフトさせる場合とは逆に、減圧弁開度を大きくしてCD間の差圧をΔP”に減少させて、蒸発圧力をPe”(Pe”>Pe)に上げる。これに対応して、蒸発温度は高温側(Te→Te”)に変化することになる。
【0007】
(2)上記空調機において、室内側送風機の風量制御により、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理することを特徴とする。
蒸発圧力を制御する他の方法として、室内側送風機の風量調整によることもできる。具体的には、室内吹き出し温度が上限閾値を超える場合には、室内側送風機の風量を下げて蒸発器における熱交換を抑制し、蒸発温度を低温側にシフトさせる。
室内吹き出し温度が下限閾値を下回る場合には、室内側送風機の風量を上げて熱交換を促進し、蒸発温度を高温側にシフトさせる制御を行う。
以上の制御により、(1)と同様の吹き出し温度管理が可能となる。
【0008】
(3)上記(2)の発明において、室内側送風機の風量制御によっても、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理できないときは、さらに、減圧弁の開度制御を行うことを特徴とする。
室内側送風機の風量制御と減圧弁の開度制御を併せて行うことにより、より効果的に吹き出し温度を制御することが可能となる。
【0009】
(4)上記各発明において、さらに、冷媒ポンプの循環量制御により、蒸発器側の冷媒過熱度を適正範囲に管理することを特徴とする。具体的には、過熱度が過剰に高いときは冷媒ポンプの周波数を上昇させ、過熱度が不足しているときは冷媒ポンプの周波数を低下させることにより制御できる。
蒸発器出口にて冷媒が飽和温度に達していない(過熱度がとれていない)場合、冷媒は気液の状態で室内機から室外機へ移動する。その際、室内機と室外機を連絡する冷媒配管が逆勾配の場合、配管途中で液溜まりを生じて冷媒が適正に循環せず、十分な性能を発揮しないことが懸念される。
一方、蒸発器出口にて冷媒過熱度が過度に高いと、蒸発器において顕熱熱交換の割合が高くなるため、過熱度が適正な場合と比較して熱交換効率が低下する。
これらを回避するため、冷媒過熱度を適正範囲に維持するものである。
【0010】
本発明の作用は以下の通りである。図10を参照して、冷媒ポンプ標準周波数において昇圧幅ΔPのときの冷凍サイクルをR,周波数上昇により昇圧幅ΔP’としたときの冷凍サイクルをR’とし、蒸発器入口E,E’における冷媒圧力Ps、Ps’のときの冷媒温度をTs、Ts’とする。それぞれの飽和点における飽和温度はTe、Te’であるから,両サイクルの過熱度はそれぞれ、
ΔTe=Ts−Te、
ΔTe’=Ts’−Te’
で示される。同図よりΔTe’<ΔTeであるから、冷媒ポンプ循環量の増加により過熱度小となる。逆に、循環量減少により過熱度大となる。
【0011】
(5)上記各発明において、室内機吸い込み温度が許容上限温度(Tm)を超える場合には、室内吹き出し温度に関わらず、減圧弁開度を最大とすることを特徴とする。
室内吹き出し温度を目標温度範囲に維持しても、所定の冷房能力が維持されないと支障を生じる場合がある。例えば、ラック内のICT装置が高負荷で稼動している場合には、冷気風量が確保されないと、たとえ吸い込み温度が低くても高温障害等による稼動停止を招くおそれがある。
本発明は、減圧弁開度が絞られることによる管内抵抗の増加により、冷媒循環量が少なくなることを回避し、冷房能力確保を優先するものである。
【発明の効果】
【0012】
上記各発明によれば、冷媒ポンプ式空調機において室内側吹き出し温度制御が可能となる。
これにより、圧縮式空調機と組み合わせた空調システムにおいて、吹き出し温度の均一化が可能となる。特に、二重床方式、かつ、クローズドラックを収容するデータセンターにおいて、二重床内の温度を均一でき、省エネ性とICT装置の安定的稼動確保の両立が可能という効果がある。
また、対人空調の場合においては不快感の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態に係る空調システム1の構成を示す図である。
【図2】第一の実施形態の吹き出し温度制御フローを示す図である。
【図3】第二の実施形態の吹き出し温度制御フローを示す図である。
【図4】第三の実施形態の吹き出し温度制御フローを示す図である
【図5】第四の実施形態の吹き出し温度制御フローを示す図である。
【図6】本発明に係る冷媒ポンプ式空調機の構成を示す図である。
【図7】冷媒ポンプ式空調機の冷凍サイクルを示す図である。
【図8】減圧弁開度を絞ったときの(室内側送風機風量を上げた)ときの、冷凍サイクルの変化を示す図である。
【図9】減圧弁開度を開けた(室内側送風機風量を下げた)ときの、冷凍サイクルの変化を示す図である。
【図10】冷媒ポンプ循環量と凝縮器における過熱度の関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る空調システムの各実施形態について、図1乃至9を参照してさらに詳細に説明する。重複説明を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係る空調システム1は、情報通信機械室(データセンター)5内に収容される複数のサーバラック3(以下、ラック3と略称)を、冷媒ポンプ式空調機2により冷却するシステムである。なお、機械室5内には圧縮式空調機も含め、複数の空調機が配置されているが、ここでは図示を省略してある。
【0015】
空調機2は、蒸発器2f、減圧弁2d及び室内側送風機2gを備えた室内機2aと、凝縮器2e、室外側送風機を2hを備えた室外機2bと、冷媒ポンプ2jと、これらを接続する冷媒配管2iと、を主要構成として備えている。蒸発器2fには、後述の冷媒温度、冷媒圧力計測用のセンサS3、S4が配設されている。
運転時において冷媒配管2i内を循環する冷媒は、凝縮器2eにおいて外気と熱交換して冷却凝縮し、液状態で冷媒ポンプ2jに吸引される。ここで昇圧された後、減圧弁2dで減圧されて蒸発器2fに送られ、冷房対象である室内空気に冷熱を与えて自らは蒸発し、ガス状態で凝縮器2eに戻る。
【0016】
機械室5内部は、床パネル5d及び天井パネル5eにより、中央の機械室空間5aと、床パネル5d下部の二重床空間5cと、天井パネル5e上部の天井空間5bと、に区画されている。室内機2aと二重床空間5c又は天井空間5bとは、それぞれ往き側ダクト2k又は戻り側ダクト2mを介して結ばれている。往き側ダクト2k及び戻り側ダクト2mには、それぞれ吹き出し温度及び戻り空気温度計測用のセンサS1、S2が配設されている。
ラック3内には、複数のICT装置3aが格納されている。各サーバ3aから発生する熱は、それぞれの冷却ファン(図示せず)により、前面から吸気した空気とともに背面に排気される。機械室5内には、開口床面5hから吸気して上面から排気するクローズドラック3bも収容されている。
【0017】
かかる構成により、機械室5内の各ラックの冷却は以下のように行われる。すなわち、空調機2に戻された室内空気は、蒸発器2fにおいて冷気となり、送風機2gにより往き側ダクト2kを介して二重床空間5cに送出される。さらに、穴あきパネル5fを通過してコールドアイル6に供給され、各ラック3内に吸込まれてサーバ3aを冷却し、高温排気となってホットアイル7に排出される。冷気の一部は開口床面5hを介してクローズドラック3bに供給され、高温排気となり上面から排出される。高温排気は機械室空間5a内を上昇して、天井パネル5eの吸込口5gから天井空間5bに導かれ、戻り側ダクト2mを通過して空調機2に戻される。
【0018】
空調システム1の運転制御は、制御部4の指令により行われる。制御部4は、信号線4bを介してセンサS1−S4から送られる循環空気温度、冷媒圧力情報に基づいて、空調機2の機器制御部2nに対して、後述の各運転制御実行を指令するように構成されている。さらに、制御部4は、冷媒蒸気圧テーブルを備えており、後述の蒸発圧力・温度、凝縮圧力・温度、過熱度等の演算を可能に構成されている。
【0019】
空調システム1は以上のように構成されており、次に図2をも参照して、本実施形態における行われる吹き出し温度制御フローについて説明する。なお、以下の制御は制御部4からの指令により行われる。
初期状態において、冷媒ポンプ周波数及び減圧弁開度はデフォルト値に設定されている(S101)。その状態から、所定の時間間隔で吹き出し温度(Tb)が温度センサS1により計測される(S102)。次いで、Tbが上限閾値(TH)と下限閾値(TL)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S103)。両閾値内の場合には(S103においてY)、次回まで現状運転条件が維持される。
S103においてTb>THの場合には、吹き出し温度が高すぎると判定され、減圧弁2dの開度が1段階絞られる(S104)。なお、最低開度に至った場合には、その状態が維持される。各操作において最低、最高段階に至るまで1段階ずつ変化させることについては、以下、同様である。
上記操作により、上述の図8に示すように蒸発圧力が低下するため、冷凍サイクルはRからR’にシフトし、蒸発温度はTeからTe’に低下する。これに伴い、吹き出し温度Tbも低下する。
一方、S103においてTb<TLの場合には、吹き出し温度が低すぎると判定され、減圧弁2dの開度が1段階開けられる(S105)。上記操作により、上述の図9に示すように蒸発圧力が上昇するため、冷凍サイクルはRからR”にシフトし、蒸発温度はTeからTe”に上昇する。これに伴い、吹き出し温度Tbも上昇する。
【0020】
以上の工程に引き続いて、温度センサS3、圧力センサS4の計測値に基づき、蒸気圧テーブルを用いて冷媒過熱度(ΔTs)の演算が行われる(S106)。次いで、ΔTsが上限閾値(T1)と下限閾値(T2)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S107)。T1≧ΔTs≧T2の場合には(S107においてY)、過熱度適正と判定され、次回まで現状運転条件が維持される。
ΔTs>T1の場合には過熱度過剰と判定され、冷媒ポンプ2jの周波数が1段階上げられる(S108)。これに伴い上述の図10に示すように、冷凍サイクルはRからR’に移行し、蒸発温度は上昇する。その結果、吹き出し温度Tbも上昇する。また、一方、ΔTs<T2の場合には過熱度不足と判定され、冷媒ポンプ2jの周波数が1段階下げられる(S109)。これに伴い、図10と逆の作用により吹き出し温度Tbは低下する。
【0021】
なお、本実施形態では冷媒ポンプサイクル専用の空調機2を用いる例を示したが、冷媒ポンプサイクルと圧縮サイクルを切り替えるタイプの空調機を用いる態様とすることもできる。
【0022】
(第二の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、上述の実施形態において減圧弁開度を増減したときに、蒸発圧力が想定外の挙動を示した場合には、操作前の状態に戻す制御形態に関する。本実施形態の構成は、空調システム1と同一であるので重複説明を省略する。
次に、図3を参照して、本実施形態における吹き出し温度制御フローについて説明する。
S201からS205までのフローは、第一の実施形態のS101からS105までのフローと基本的に同一である。但し、S201において、蒸発器圧力Peをも計測している点が追加されている。
S203においてTb>THの場合には、吹き出し温度が高すぎると判断され、減圧弁2dの開度が1段階絞られる(S204)。その後、再度、蒸発器圧力Pe’が計測される(S206)。さらに、従前の蒸発器圧力Peと比較され(S207)、Pe’>Peの場合には減圧弁開度が調整前の開度に戻される(S208)。Pe’≦Peの場合には(S207においてN)、現状開度が維持される。
一方、S203においてTb<THの場合には、吹き出し温度が低すぎると判断され、減圧弁2dの開度が1段階開けられる(S205)。その後、再度、蒸発器圧力Pe’が計測される(S209)。さらに、従前の蒸発器圧力Peと比較され(S210)、Pe’<Peの場合には減圧弁開度が調整前の開度に戻される(S211)。Pe’≧Peの場合には(S210においてN)、現状開度が維持される。
【0023】
(第三の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は室内側送風機の風量制御及び減圧弁の開度制御により、吹き出し温度を管理する形態に係る。本実施形態の構成についても、空調システム1と同一であるので重複説明を省略する。
図4を参照して、初期状態において室内側送風機2gの回転数及び減圧弁2dの開度はデフォルト値に設定されている(S301)。その状態から、所定の時間間隔で吹き出し温度(Tb)が計測される(S302)。次いで、Tbが上限閾値(TH)と下限閾値(TL)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S303)。両閾値内の場合には(S303においてY)、次回まで現状運転条件が維持される。
【0024】
S303においてTb>THの場合には、吹き出し温度が高すぎると判断され、室内側送風機2gの回転数が1段階下げられる(S304)。
その後、再度、吹き出し温度(Tb)が計測され(S305)、吹き出し温度が上限閾値以下に低下したか否かが判定される(S306)。閾値以下に治まった場合には(S306においてY)、次回まで現状運転条件が維持される。吹き出し温度高の状態(Tb>TH)が解消されていない場合には、次いで減圧弁2dの開度が1段階絞られる(S307)。
【0025】
S303においてTb<TLの場合には、吹き出し温度が低すぎると判断され、室内側送風機2gの回転数が1段階上げられる(S308)。その後、再度、吹き出し温度(Tb)が計測され(S309)、吹き出し温度が下限閾値以上に上昇したか否かが判定される(S310)。閾値以上に治まった場合には(S310においてY)、次回まで現状運転条件が維持される。吹き出し温度低の状態(Tb<TL)が解消されていない場合には、次いで減圧弁2dの開度が1段階開けられる(S311)。
【0026】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、以上の工程に引き続いて、冷媒加熱度が過剰又は不足の場合には、冷媒ポンプ循環量の調整により過熱度を適正範囲に管理する形態とすることもできる。
【0027】
(第四の実施形態)
さらに、図5をも参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、第一の実施形態において冷房能力確保を優先する制御に係る。
S401からS403までのフローは、第一の実施形態のS101からS103までのフローと同一である。S403においてY、すなわち、TH≧Tb≧TLの場合には、次回まで現状運転条件が維持される。また、Tb>THの場合には、減圧弁2dの開度が1段階絞られる(S407)。
S403においてTb<TLの場合には、減圧弁2dの開度調整に先立ち、室内側吸込み温度(Tr)が計測され(S404)、Trが許容上限値(Tm)を超えているか否かの判定が行われる(S405)。許容上限値以内の場合には(S405においてN)、減圧弁2dの開度が1段階開けられる(S406)。これにより吹き出し温度は上昇傾向となる。
S405においてY、すなわちTrが許容上限値を超えている場合には冷房負荷が高い状態と判定し、能力確保を優先して吹き出し温度上昇のための減圧弁の制御は行わず、次回まで現状運転条件が維持される。

【0028】
なお、本実施形態では、吸込み温度(Tr)に基づいて冷房負荷を判定する例を示したが、吹き出し温度、吸込み温度、室内側送風機風量(回転数より演算)より求める冷気供給量に基づいて判定する形態とすることもできる。
また、S405においてTrが許容上限値を超えている場合に、現状運転条件を維持する形態としたが、能力確保を確実にするため冷媒ポンプ周波数を高くする制御を行う形態とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、熱源、冷媒、空調方式、建築構造等の種類を問わず、冷媒ポンプ式空調機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1・・・・空調システム
2・・・・冷媒ポンプ式空調機
2a・・・室内機
2b・・・室外機
2d・・・減圧弁
2e・・・凝縮器
2f・・・蒸発器
2g・・・室内側送風機
2i・・・冷媒配管
2j・・・冷媒ポンプ
4・・・・制御部
S1〜S3・・・温度センサ
S4・・・圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ポンプと、減圧弁と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を備え、これら要素を結ぶ冷媒配管内に充填した冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空調機において、
減圧弁開度の制御により、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理することを特徴とする空調機の吹き出し温度制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空調機において、
室内側送風機の風量制御により、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理することを特徴とする空調機の吹き出し温度制御方法。
【請求項3】
請求項2において、室内側送風機の風量制御によっても、室内吹き出し温度を所望の範囲に管理できないときは、さらに、
減圧弁の開度制御を行うことを特徴とする空調機の吹き出し温度制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、さらに、
冷媒ポンプの循環量制御により、蒸発器側の冷媒過熱度を適正範囲に管理することを特徴とする空調機の室内機吹き出し温度制御方法。
【請求項5】
請求項1、3又は4のいずれかにおいて、
室内機吸い込み温度が許容上限温度(Tm)を超える場合には、室内吹き出し温度に関わらず、減圧弁の開度を最大とすることを特徴とする空調機の室内機吹き出し温度制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−67944(P2012−67944A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211610(P2010−211610)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】