説明

空間機能提示装置、空間機能提示システム

【課題】目的とする物品に空間機能提示装置を取り付けて見つけ出し易くする場合に、使用開始及びその後の設置作業時間を減少させる。
【解決手段】空間機能提示装置1、1a、1b、1cは、外部との無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールによって受信したデータに応じて所定の動作を行う機能モジュールと、を含んで構成され、全てのモジュールを一体として取付け自在に構成されている。これら空間機能提示装置1a、1b、1cを、調剤に用いられる薬品を収容する容器に取り付けておき、LEDを発光させることで、必要なものを直感的に見つけ出し易くする。有線方式を採用する場合に比べ、使用開始及びその後の設置作業時間が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空間機能提示装置、空間機能提示システムに関し、特に同種の物品のなかから目的とする物品を見つけ出し易くするための空間機能提示装置、空間機能提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬局には、薬品が置かれている薬品棚が多く設けられている。この薬品棚の薬は、五十音順に並べられていることが多い。そして、薬局での調剤行為は、調剤者が病院で出された処方箋を見ながら、薬品を薬品棚から見つけ出し、この見つけ出した薬品を用いて行われる。多くの薬品棚から目的とする薬品を見つけ出すのは困難であり、取り間違いを誘発している。
【0003】
特許文献1では、薬品棚に収納されている薬剤瓶の底面にデータキャリア及びLED(Light Emitting Diode)を取り付けておき、薬品が選択された時にLEDを発光させることで、目的の薬品を見つけ易くする技術が記載されている。
【特許文献1】特開2004−148036号公報(段落[0031]〜[0035])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている技術を採用する場合、薬品棚に特別な装置を取り付けなければならず、使用開始までに設置作業時間が多くかかる。また、後に薬品棚が増えたり、薬品の種類が追加されたりした場合にも、特別な装置を追加する必要があり、同様に設置作業時間が多くかかるという問題がある。
本発明は上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は使用開始及びその後の設置作業時間を減少させることのできる空間機能提示装置、空間機能提示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1による空間機能提示装置は、外部との無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールによって受信したデータに応じて所定の動作を行う機能モジュールと、を含み、全てのモジュールを一体として取付け自在に構成されていることを特徴とする。このように構成すれば、目的とする物品に空間機能提示装置を取り付けて見つけ出し易くする場合に、使用開始及びその後の設置作業時間を減少させることができる。
【0006】
本発明の請求項2による空間機能提示装置は、請求項1において、自装置に付与されたIDを記憶する記憶モジュールを更に含み、前記通信モジュールによって受信したIDと前記記憶モジュールに記憶されているIDとが一致した場合にのみ前記機能モジュールを起動することを特徴とする。このように構成すれば、複数の空間機能提示装置のうち、必要な装置のみを動作させることができ、その他の装置の消費電力を抑えることができる。このため、電源には小容量の電池を用いることができ、装置全体のサイズを小さくできる。
【0007】
本発明の請求項3による空間機能提示装置は、請求項1又は2において、前記機能モジュールは、前記データの内容に応じて発光するランプを含むことを特徴とする。このように構成すれば、目的とする物品に空間機能提示装置を取り付けてランプを点灯させることにより、必要なものを直感的に見つけ出し易くすることができる。特に、処方箋と発光色
とを対応付ければ、複数の調剤者が同時に作業を行うことができる。
【0008】
本発明の請求項4による空間機能提示装置は、請求項1又は2において、前記機能モジュールは、前記データの内容に応じて音声を出力するブザーを含むことを特徴とする。このように構成すれば、目的とする物品に空間機能提示装置を取り付けて音声出力させることにより、必要なものを直感的に見つけ出し易くすることができる。また、例えば調剤者が異なる棚(すなわち、間違った棚)をアクセスした際には警告ブザーを発することで、ヒューマンエラーを防止できる。
【0009】
本発明の請求項5による空間機能提示装置は、請求項1から4のいずれか1項において、前記通信モジュールは、他の装置とアドホック通信を行うことを特徴とする。このように構成すれば、サーバからの無線通信電波が届かない場合、電波の届く空間機能提示装置の1つがリピータとしての機能を有し、他の装置が中継的な役割を果たすことで、アドホック通信を実現できる。
【0010】
本発明の請求項6による空間機能提示装置は、請求項1から5のいずれか1項において、近接するICタグに記憶されているデータを読取るタグ読取りモジュールを更に含み、前記タグ読取りモジュールによって読み取ったデータを用いて所定の処理を行うことを特徴とする。このように構成すれば、読み取ったデータを用いて様々な処理を行うことができる。例えば、薬剤のヒートシールにICタグを貼り付け、機能モジュールにICタグのリーダを取り付ければ、棚に収容されている薬の種類、個数を自動的に判断し、その棚に入っている薬の種類を自動的にサーバへ送ることができ、薬剤の在庫管理を行うこともできる。
【0011】
本発明の請求項7による空間機能提示システムは、
請求項2から6のいずれか1項に記載の空間機能提示装置と、前記空間機能提示装置に該装置識別用のIDを付与するサーバ装置とを含み、前記空間機能提示装置は、前記サーバ装置によって付与されたIDを前記記憶モジュールに記憶することを特徴とする。このように構成すれば、初めて使用する空間機能提示装置については、その記憶モジュールにはID番号が記憶されていないので、IDを付与して記憶させることができる。また、空間機能提示装置が故障した場合には、その故障した装置の代わりに新たな空間機能提示装置を容易に導入できる。
【0012】
本発明の請求項8による空間機能提示システムは、請求項7において、前記空間機能提示装置は、調剤に用いられる薬品を収容する容器に取り付られ、前記容器に収容されている薬品に対するアクセスが行われたことを検出するセンサモジュールを前記空間機能提示装置に更に設けたことを特徴とする。このように構成すれば、容器から薬品を取り出した場合にのみ、LEDの発光を停止させることができ、取り出し忘れや重複して取り出すことを防止できる。なお、本明細書における「容器」という語句には棚も含むものとする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明は、外部との通信を行う通信モジュールと、その通信モジュールによって受信したデータに応じて所定の動作を行う機能モジュールとを一体化した装置を取付け自在に構成することにより、その装置を取り付けた物品に様々な機能を付与することができるという効果がある。特に、薬品棚に並べられている薬品を収容する容器に取り付けることにより、目的とする薬品に迅速にアクセスでき、その後の薬品追加も容易になるので、使用開始及びその後の設置作業時間を減少させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(システム全体の構成)
図1は、本発明による空間機能提示システムの実施形態の構成を示すブロック図である。同図に示されているように、空間機能提示システムは、ホストとしての役割を有するサーバ10と、クライアントとしての役割を有する空間機能提示装置1a、1b、1cとを含んで構成されている。サーバ10には、空間機能提示装置1が接続されており、他の空間機能提示装置1a、1b、1c、との間で情報の授受が行われる。なお、サーバ10には、例えば、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)を利用する。
【0015】
サーバ10に接続されている空間機能提示装置1は、上記の空間機能提示装置1a、1b、1c、を統括する役割を果たす。空間機能提示装置1は、サーバ10の筐体裏側などに取り付られる。
空間機能提示装置1a、1b、1cは、すべて同様の構成になっていても良いし、それぞれ異なる構成になっていても良い。本例のシステムでは、クライアントとして、3つの空間機能提示装置1a、1b、1cが設けられているが、その数に限定されることはない。これら空間機能提示装置1、1a、1b、1c、は通常時省電力モード(スリープモード)で動作する。そして、トリガ信号の入力に応答して特定の装置のみがウェイクアップし、他の装置はスリープ状態に戻るように制御される。このように制御することで、電池モジュール14によるボタン電池程度の電源で数年間は電池交換などのメンテナンスは不要になる。
【0016】
個々の空間機能提示装置1a、1b、1c、は、通信モジュールによる送受信機能を有しており、お互いにアドホック通信が可能である。すなわち、サーバに接続されている空間機能提示装置1からの無線通信電波が届かない場合、電波の届く空間機能提示装置の1つがリピータとしての機能を有し、他の装置が中継的な役割を果たすことで、アドホック通信を実現できる。
空間機能提示装置は、小型・安価・長寿命であり、かつ、省電力無線であることから、システムのインストールはユーザが行うことができる。
【0017】
(空間機能提示装置の構成)
図2は、図1中の空間機能提示装置1、1a、1b、1cの構成例を示すブロック図である。同図に示されているように、空間機能提示装置は、通信モジュール11と、タイマモジュール12と、記憶モジュール13と、電池モジュール14と、処理モジュール15と、機能モジュール16と、インタフェースモジュール17とを含んで構成されている。
そして、これら空間機能提示装置は、全てのモジュールを一体として取付け自在に構成されている。例えば粘着テープの粘着力によって、目的とする物品や場所に貼付できるように構成されている。マジックファスナー(登録商標)(面ファスナー)によって貼付できるように構成しても良い。
【0018】
タイマモジュール12は、時間を管理し、スリープモードの状態から一定時間毎に空間機能提示装置を起動させたり、起動後一定時間経過したらスリープモードに移行させたりする処理を行う部分である。このように、特定時間のみ装置を動作させることで、消費電力を抑え、電池モジュール14の電池容量を節約できる。なお、このタイマモジュール12が管理している時間は、サーバ10からデータを送信して校正できるものとする。
【0019】
記憶モジュール13は、個々の空間機能提示装置に付与されているIDと、その機能を実現するプログラムとを記憶する部分である。この記憶モジュール13は、半導体メモリを用いて構成すれば良い。小型のハードディスク装置を用いて構成しても良い。
電池モジュール14は、空間機能提示装置の各部に電力を供給する部分である。この電
池モジュール14には、例えば周知のボタン電池を用いる。サーバ10からデータを送信することで、空間機能提示装置全体の電源をオフにしても良い。
処理モジュール15には、周知のPIC(Programmable Integrated Circuit)などの簡易CPU(Central Processing Unit)を使う。この処理モジュール15は、記憶モジュール13に記憶されているプログラムに従って所定の処理を行う。
【0020】
(通信モジュール)
通信モジュール11は、アンテナANTを有しており、このアンテナANTを介して他の通信モジュールと無線通信を行う。例えば、サーバ10に接続されている空間機能提示装置1の通信モジュールと他の空間機能提示装置1a、1b、1c、との間で無線通信を行う。この通信モジュール11は小電力無線機器であり、使用に際し免許は不要である。また、有線によるシステムに比べ設置にかかるコスト、時間が大幅に短縮できる。すなわち、特許文献1のように有線によるシステムを採用すると、ケーブルの配線や接続のためにコスト及び時間がかかるのに対し、本システムのように無線方式を採用すれば、そのような問題は生じない。
【0021】
空間機能提示装置1a、1b、1c、からサーバ10に接続されている空間機能提示装置1に情報を発する場合、トリガ信号、受信ID番号(後述するサーバのIDである「0」)の後に、空間機能提示装置自身の発信ID番号、機能番号および情報をサーバに送ることにより、空間機能提示装置の機能モジュールが、センサなどを有する場合には、その情報をサーバに集約することを可能とする。
【0022】
(機能モジュール)
機能モジュール16には、種々の機能を具備させることができる。物理的な機能としては、単なるLED点灯、文字表示、音声出力するブザーなどに加え、スイッチやセンサ的な機能を有するもの、アクチュエータなど機械的な機能を有するものなどが考えられる。周知のICタグを具備させても良い。複数種類の機能を具備させても良い。
この機能モジュール16については、一部又は全部を、後付け追加できる構成としても良い。
この機能モジュール16には、センサ測定時やアクチュエータ動作時など、その機能を発現させる時にのみ電源が供給されるので、消費電力を抑え、電池モジュール14の電池容量を節約できる。
【0023】
(インタフェースモジュール)
インタフェースモジュール17は、上記の処理モジュール15と機能モジュール16との信号授受におけるインタフェースとしての機能を果たす。例えば、機能モジュール16の出力がアナログ信号であれば、それをディジタル信号に変換して処理モジュール15に伝達する機能を有する。シリアル信号をパラレル信号に変換したり、電圧レベルを変換したりする機能を果たす場合もある。
【0024】
(サーバの構成)
図3は、図1中のサーバ10の構成例を示すブロック図である。同図に示されているように、サーバ10は、空間機能提示装置1のインタフェースモジュール17との間での信号授受の際にシリアル−パラレル変換処理、プロトコル変換処理などを行うインタフェース10aと、ネットワーク100に接続するためのネットワークアダプタ10bと、サーバ10の各部を制御するためのプログラム10cを記憶するハードディスク10dと、プログラム10cの実行の際の記憶領域となるメモリ10eと、ディスプレイなどの表示部10fと、キーボードやマウスなどの入力部10gと、各部を制御するCPU10hとを含んで構成されている。
サーバ10は、ネットワークアダプタ10bを介してネットワーク100に接続されている。そして、個々の空間機能提示装置にネットワークアドレスを割り振ることで、外部ネットワークから各空間機能提示装置にアクセスできるようになっている。
【0025】
(空間機能提示装置の導入・追加)
個々の空間機能提示装置のIDは、個々にサーバ10に接続されている空間機能提示装置1のアンテナANTに近づけてIDを教え込む形式を採用する。万が一、いずれかの空間機能提示装置が故障した場合には、その故障した装置の代わりに新たな空間機能提示装置を導入する。その場合、新たな空間機能提示装置をサーバシステムのアンテナに近づけてIDを書込むことで修復が簡便である。また、空間機能提示装置は安価であることから、故障した空間機能提示装置は基本的に使い捨てとする。
【0026】
(データ構造)
サーバから送信され、空間機能提示装置において受信されるデータの構造が図4に示されている。同図を参照すると、サーバ10に接続されている空間機能提示装置1から送信されるデータには、他の空間機能提示装置をウェイクアップさせるためのトリガ信号21、受信側の空間機能提示装置を特定するための受信ID番号22、発信側のサーバを特定するための発信ID番号23、動作させる機能モジュールを示す機能番号24、および、付加情報25が含まれている。
【0027】
空間機能提示装置は、通常スリープ状態にあり、内部タイマによる起動、もしくはサーバ10から送信されるデータに含まれているトリガ信号21によりウェイクアップする。
空間機能提示装置は、トリガ信号21の後の受信ID番号22が自装置の記憶モジュールに記憶されているID番号と一致しない場合、スリープ状態に戻る。一方、ID番号同士が一致する場合には、機能番号24を読み込み、対応する機能を発現する。ID番号の認証はハードウェア的にPLL(Phase Locked Loop)ロジックで行うか、ソフトウェア処理で行うものとする。
発信ID番号23は、例えば、サーバ10からの場合「0」とする。受信ID番号22は空間機能提示装置に固有、もしくは重複しても可能な番号とする。重複して同じ番号を持つ空間機能提示装置がある場合は、サーバ10から1つのデータを送れば、複数の空間機能提示装置が動作する。
【0028】
機能番号24は、例えば、LEDを点灯させる場合、赤LED点灯であれば「1」、青LED点灯であれば「2」、黄LED点灯であれば「3」とする。また、ID番号を記憶モジュールに書込む場合に「0」とするなど、機能番号と対応する動作とを事前に決めておく。すなわち、初めて使用する空間機能提示装置については、その記憶モジュールにはID番号が記憶されていない。この場合、機能番号24によってID番号の書込みが指示されていれば、そのID番号が記憶モジュールに書込まれる。
付加情報25は、例えば、ID番号を記憶モジュールに書込む場合に、書込むべきID番号がこれに相当する。
【0029】
(通信モジュールの他の機能)
通信モジュール11は、以下のような機能を具備していても良い。例えば、通信モジュール11がリプライ機能を有していても良い。すなわち、サーバ10からの機能番号が、例えばリプライ要求である場合、受信後すぐに空間機能提示装置はサーバ10へ上述したデータ構造を有するリプライ信号を送信する。
このリプライ機能を用いることにより、サーバに接続されている空間機能提示装置1と他の空間機能提示装置とが無線通信でつながっていることを確認できると共に、サーバに接続されている空間機能提示装置1と同様の機能をある特定の機能モジュールが行うことも可能である。つまり、サーバに接続されている空間機能提示装置1と他の空間機能提示
装置との無線接続の確認をすることにより、サーバに接続されている空間機能提示装置1から特定の空間機能提示装置への無線接続ができない場合には、他の空間機能提示装置が中継的役割を果たすためのアドホック通信を行うことができる。
【0030】
また、複数の空間機能提示装置のうち、1つの装置を主装置、他の装置をその従属装置とし、主装置から従属装置に対してポーリング信号を送信することで通信を行っても良い。これにより、ポーリング信号を受信するまではスリープモードのままであるため、消費電力を抑えることができる。
なお、通信モジュール11は、基本的には送受信機能を有するが、必要に応じて送信だけ、受信だけの機能だけを有するようにしても良い。
【0031】
(調剤薬局棚における表示システム)
空間機能提示装置の事例として、調剤薬局棚における表示システムについて説明する。
空間機能提示装置を調剤棚それぞれに貼り付け、ピックアップする棚の位置を直感的に調剤者に提示することで、調剤者のヒューマンエラーを排除することができる。処方箋のデータを打ち込むレセプトコンピュータ(以下、レセコンと呼ぶ)を図1中のサーバ10とし、このサーバ10に空間機能提示装置を接続する。この空間機能提示装置は、薬の棚の位置にある空間機能提示装置と共に、調剤薬局棚における表示システムを構成する。なお、レセコンとは、治療にかかった医療費を保険者である市町村や保険組合に請求するためのレセプト(調剤報酬明細書)を作成するコンピュータである。
【0032】
(薬品棚の構成例)
図5は、薬品棚の構成例を示す概略図である。同図に示されているように、薬品棚は、薬品を収容するための容器となる複数の棚によって構成されている。
本例では、5段5列に並んだ25個の棚それぞれに、空間機能提示装置1a〜1k、1m〜1zが設けられている。各棚に設けられている空間機能提示装置は、本例では、機能モジュールとして3個のLEDを有している。3個のLEDは、例えば赤色、黄色、青色、にそれぞれ発光するものを用いる。同図中の各棚の丸の中に「R」と記載されているものが赤色に発光するLED、同じく「Y」と記載されているものが黄色に発光するLED、同じく「B」と記載されているものが青色に発光するLED、である。
【0033】
これら3個のLEDを用いることによって、調剤案件ごとに発光色を変えた表示を実現する。調剤案件ごとに発光色を変えることで、複数の調剤者の調剤業務を同時にサポートすることができる。
すなわち、上記3種類の発光色と3枚の処方箋とを一対一に対応付ければ、ある処方箋に関連する薬剤が収容されている棚に設けられている空間機能提示装置の赤色発光LEDを発光させることにより、その処方箋に関連する薬剤をすぐに見つけ出すことができる。処方箋に複数種類の薬剤が記載されている場合は、それら薬剤が収容されている棚に設けられている空間機能提示装置のLEDが同時に発光することになる。
【0034】
他の2枚の処方箋についても同様に、それぞれ、黄色発光LED、青色発光LED、を発光させれば、その処方箋に関連する薬剤をすぐに見つけ出すことができる。
そして、ある処方箋に関連する薬剤を見つけ出すことができた場合には、その処方箋に対応するLEDの発光を停止させる。その場合、センサを機能モジュールとして空間機能提示装置に設けておき、調剤者が棚をアクセスしたことをこのセンサで検出したタイミングでLEDの発光を停止させれば良い。このようにすれば、容器から薬品を取り出した場合にのみ、LEDの発光を停止させることができ、取り出し忘れや重複して取り出すことを防止できる。なお、発光停止したLEDの発光色は、次に処理すべき他の処方箋と対応付けられる。
【0035】
なお、薬剤棚に収容される薬剤は、五十音順に並べられる必要は無く、収容されている薬剤を撤去したり、新たに薬剤を追加収容したりする場合にも薬剤の並べ替えは不要である。
さらに、薬剤のヒートシールにICタグなどを貼り付けることができる場合、機能モジュールにICタグのリーダを取り付けることで、例えば棚にある薬の種類、個数を自動的に判断し、その棚に入っている薬の種類を自動的にサーバ10へ送ることができ、薬剤の在庫管理を行うこともできる。
【0036】
ところで、機能モジュール16に文字表示器を設けておけば、薬剤名などの文字を表示することも可能である。しかし、表示した文字の内容を調剤者が理解するのに時間がかかることもあるので、上記のように発光色で認識させるという単純で直感的に理解しやすい構成が好ましい。
調剤業務において、個々の棚に空間機能提示装置を取り付けることから、機能として、LEDなどの表示装置だけではなく、調剤者がその棚にアクセスしたことをセンシングするデバイスやブザーなどを機能モジュールとして組み込むことにより、LEDなどの表示を停止することを可能とするだけではなく、種々の機能を実現できる。例えば、調剤者が異なる棚(すなわち、間違った棚)をアクセスした際には警告ブザーを発することで、ヒューマンエラーを防止できる。
【0037】
(動作処理例)
以下、以上説明した空間機能提示装置の動作処理例について図6を参照して説明する。同図において、空間機能提示装置は、通常時には、スリープモードになっている(ステップS101)。これにより、消費電力を抑えることができ、小容量の電池を電源として用いることができる。このスリープモードにおいて、トリガ信号を受信すると(ステップS102)、ウェイクアップ処理を行い(ステップS103)、受信したID番号を読み取る(ステップS104)。読み取ったID番号が一致しない場合は、再びスリープモードに移行する(ステップS105→S101)。
【0038】
一方、読み取ったID番号が一致した場合は、発信ID番号、機能番号、および、付加情報を読み取る(ステップS106)。そして、機能モジュールを起動させる(ステップS107)。その後、必要な動作が終了したら、タイマモジュール12の処理により、再びスリープモードに移行する(ステップS107→S101)。
以上のように、空間機能提示装置を、通常時はスリープモードとし、必要な場合にのみ動作させることによって、消費電力を抑えることができるので、小容量の電池を電源として採用することができる。このため、空間機能提示装置全体を小型化できると共に、装置の長寿命化を実現できる。
【0039】
(応用例)
上述した空間機能提示システムは、空間機能提示装置を取り付ける物品や対象を変えることで種々の用途に利用することができる。例えば、図書館などの書庫では、人間が特定の本を検索する業務を行っている。しかしながら、書籍の配列順序に統一が取られていることは少なく、背表紙に張られたタグの番号を参考に検索している。上述した空間機能提示装置を書籍に貼付し、図書業務に空間機能提示システムを適用することにより、検索の効率化が図れる。同様に、レンタルビデオ等のレンタル業務に適用することもできる。
また、生活空間においては、物理的な機能、情報的な機能を有する個々の機器の制御を一括管理することを可能とするミドルウェアとして利用することができる。この場合、上述した空間機能提示装置を全ての家電製品に取付けておけば、各製品の電源オンオフを制御することができる。
【0040】
(まとめ)
本発明は、情報システム機器の持つ情報と、空間的に分散配置された機器とを通信プロトコルで結ぶことにより、利用者が直感的に理解しやすい情報を提供する手段、及び物理的な機能を提示する手段、を実現することができる。これにより、調剤行為におけるヒューマンエラーを削減できるなど、種々の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、同種の物品のなかから目的とする物品を見つけ出し易くする場合に用いることができる。その他、機能モジュールの有する機能により種々の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による空間機能提示システムの実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の空間機能提示装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1中のサーバの構成例を示すブロック図である。
【図4】サーバから送信され、空間機能提示装置において受信されるデータの構造の例を示す図である。
【図5】薬品棚の構成例を示す概略図である。
【図6】空間機能提示装置の動作処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1、1a〜1k、1m〜1z 空間機能提示装置
10 サーバ
10a インタフェース
10b ネットワークアダプタ
10c プログラム
10d ハードディスク
10e メモリ
10f 表示部
10g 入力部
10h CPU
11 通信モジュール
12 タイマモジュール
13 記憶モジュール
14 電池モジュール
15 処理モジュール
16 機能モジュール
17 インタフェースモジュール
21 トリガ信号
22 受信ID番号
23 発信ID番号
24 機能番号
25 付加情報
100 ネットワーク
ANT アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールによって受信したデータに応じて所定の動作を行う機能モジュールと、を含み、全てのモジュールを一体として取付け自在に構成されていることを特徴とする空間機能提示装置。
【請求項2】
自装置に付与されたIDを記憶する記憶モジュールを更に含み、前記通信モジュールによって受信したIDと前記記憶モジュールに記憶されているIDとが一致した場合にのみ前記機能モジュールを起動することを特徴とする請求項1記載の空間機能提示装置。
【請求項3】
前記機能モジュールは、前記データの内容に応じて発光するランプを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の空間機能提示装置。
【請求項4】
前記機能モジュールは、前記データの内容に応じて音声を出力するブザーを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の空間機能提示装置。
【請求項5】
前記通信モジュールは、他の装置とアドホック通信を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空間機能提示装置。
【請求項6】
近接するICタグに記憶されているデータを読取るタグ読取りモジュールを更に含み、前記タグ読取りモジュールによって読み取ったデータを用いて所定の処理を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空間機能提示装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の空間機能提示装置と、前記空間機能提示装置に該装置識別用のIDを付与するサーバ装置とを含み、前記空間機能提示装置は、前記サーバ装置によって付与されたIDを前記記憶モジュールに記憶することを特徴とする空間機能提示システム。
【請求項8】
前記空間機能提示装置は、調剤に用いられる薬品を収容する容器に取り付られ、
前記容器に収容されている薬品に対するアクセスが行われたことを検出するセンサモジュールを前記空間機能提示装置に更に設けたことを特徴とする請求項7記載の空間機能提示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−6693(P2006−6693A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189407(P2004−189407)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】