説明

窒化物半導体太陽電池

【課題】GaN系半導体からなる太陽電池に良好なタンデム構造を実現できるようにする。
【解決手段】窒化物半導体太陽電池は、III-V族窒化物半導体からなり、第1のpn接合を含む第1の半導体層102と、III-V族窒化物半導体からなり、第1の半導体層102とは禁制帯幅が異なる第2のpn接合を含む第2の半導体層104とを有している。第1の半導体層102と第2の半導体層104との間には、第1の半導体層102及び第2の半導体層104のそれぞれとオーミック接触して形成され、且つ亜鉛を含む酸化物層である第1のコンタクト層103が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電に利用可能な薄膜型の窒化物半導体太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止に向け省エネルギー化が注目されており、これを実現する技術の中でも太陽光により電力を得る、いわゆる太陽光発電が注目されている。これを実現するためのデバイスが太陽電池であり、半導体のpn接合に光を照射した場合に生じる電子正孔対を光起電流として取り出すことにより電力を得ることができる。
【0003】
太陽電池を高効率化するには、幅広い波長帯域を含む太陽光をできるだけ効率的に利用する必要があり、禁制帯幅が単一のpn接合ではその向上に限界がある。この問題を解決すべく提案されたのが、禁制帯幅が互いに異なる複数のpn接合を積層し、積層したpn接合の間をp接合によって接続するタンデム(スタック)構造である。p接合はいわゆるトンネル電流により、互いに隣接するpn接合に対してオーミック電極として機能する。この構成により、各pn接合が効率的に太陽光を吸収して光電変換を行えるようになるため、より高効率動作が可能となる。これまでに用いられてきた太陽電池は多結晶シリコン又はアモルファスシリコン系の材料により構成されてきたが、より短波長領域を高効率に変換するには、より禁制帯幅が大きい材料を用いて積層する必要がある。
【0004】
窒化ガリウム(GaN)に代表されるIII-V族窒化物化合物半導体(一般式InAlGa1−x−yN(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1である。)以下、GaN系半導体と呼ぶ。)はその組成を変化させることにより、紫外域から赤外域まで幅広い波長帯域をカバーし得る材料である。従って、GaN系半導体をタンデム構造として積層できれば、より高効率な太陽電池の実現が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−048197号公報
【特許文献2】特開2008−235878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、GaN系半導体は、特にp型層のキャリア濃度の値を十分に大きくできないことから、必要なトンネル電流が得られるp接合をGaN系半導体により実現することは困難である。すなわち、GaN系半導体を用いる太陽電池は、良好なタンデム構造を実現できず、高効率動作を行えないという問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、GaN系半導体からなる太陽電池に、良好なタンデム構造を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、窒化物半導体太陽電池を、pn接合を含む複数の窒化物半導体層の間にそれぞれ亜鉛を含む酸化物層を設ける構成とする。
【0009】
具体的に、本発明に係る窒化物半導体太陽電池は、III-V族窒化物半導体からなり第1のpn接合を含む第1の半導体層と、III-V族窒化物半導体からなり第1の半導体層とは禁制帯幅が異なる第2のpn接合を含む第2の半導体層と、第1の半導体層と第2の半導体層との間にそれぞれとオーミック接触して形成され、且つ亜鉛を含む酸化物層とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の窒化物半導体太陽電池によると、III-V族窒化物半導体からなり、共にpn接合を含む第1の半導体層と第2の半導体層との間にそれぞれとオーミック接触して形成され、且つ亜鉛を含む酸化物層を備えているため、第1の半導体層と第2の半導体層との間で良好なオーミック接触を実現できる。これにより、良好なタンデム構造を実現できるので、窒化物半導体太陽電池の高効率化を実現できる。
【0011】
本発明の窒化物半導体太陽電池において、亜鉛を含む酸化物層は、マグネシウム及びカドミウムのうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0012】
このようにすると、亜鉛を含む酸化物層の禁制帯幅を適当な値に設計することができ、酸化物層による光吸収を抑制できるため、より変換効率が高い太陽電池を得ることができる。
【0013】
本発明の窒化物半導体太陽電池において、第2の半導体層側から入射光が入射され、第2のpn接合の禁制帯幅は第1のpn接合の禁制帯幅よりも大きく、且つ酸化物層の禁制幅は第1のpn接合の禁制帯幅よりも大きいことが好ましい。
【0014】
このように、第1のpn接合と第2のpn接合との間、及び亜鉛を含む酸化物層と第2のpn接合との間で、各禁制帯幅の値を入射側で大きく設計することにより、第2のpn接合での光吸収を大きくする一方、酸化物層中での光吸収が抑制されるため、より変換効率が大きい薄膜型の太陽電池を実現することができる。
【0015】
本発明の窒化物半導体太陽電池において、第1の半導体層、酸化物層及び第2の半導体層には、周期的な凹凸形状が形成されていてもよい。
【0016】
このようにすると、第1の半導体層等の結晶性が向上して、光吸収をより大きくすることができるため、より高効率な薄膜型の太陽電池を得ることができる。
【0017】
本発明の窒化物半導体太陽電池は、第1の半導体層、酸化物層及び第2の半導体層を保持する基板をさらに備えていてもよい。
【0018】
このようにすると、より光吸収を大きくし得る薄膜型の太陽電池を実現できる。
【0019】
この場合に、基板にはグラファイトを用いることができる。このようにすると、各半導体層の成長用の基板にサファイア等を用いる場合と比べて、より低コストで高効率な太陽電池を実現することができる。
【0020】
また、この場合に、基板には、その主面に周期的な凹凸形状が形成されていてもよい。このようにすると、第1の半導体層等の結晶性が向上して、光吸収をより大きくすることができるため、より高効率な薄膜型の太陽電池を得ることができる。
【0021】
本発明の窒化物半導体太陽電池は、基板と第1の半導体層との間で、且つ基板と接するように形成された窒化アルミニウム層をさらに備えていてもよい。
【0022】
このようにすると、第1の半導体層等の結晶性をさらに良好にすることができる。
【0023】
本発明の窒化物半導体太陽電池は、第1の半導体層と酸化物層との間及び第2の半導体層と酸化物層との間の少なくとも一方に、第1の半導体層及び第2の半導体層よりも低い温度で形成されたIII-V族窒化物半導体からなる第3の半導体層をさらに備えていてもよい。
【0024】
このように、第3の半導体層を設けることにより、亜鉛を含む酸化物層から第1の半導体層及び第2の半導体層への亜鉛の拡散が抑制されるため、酸化物層と第1及び第2の半導体層との間のオーミック接触がより良好となるので、より高効率な薄膜型の太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る窒化物半導体太陽電池によると、良好なタンデム構造を実現できるため、
より高効率な太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体太陽電池を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るグラファイトシート上のGaN成長におけるX線回折ロッキングカーブを示し、初期層にAlNを用いた場合とGaNを用いた場合とを比較したグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体太陽電池を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係るグラファイトシートの表面に形成する凹凸形状を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIVb−IVb線における断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の一変形例に係る窒化物半導体太陽電池を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態の一変形例に係る窒化物半導体太陽電池の製造方法を示す工程順の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0028】
図1に示すように、第1の実施形態に係る窒化物半導体太陽電池は、フレキシブル基板であるグラファイトシート100の上に、例えば、厚さが約20nmの窒化アルミニウム(AlN)からなる初期層101、窒化インジウムガリウム(In0.4Ga0.6N)からなるpn接合を含む第1の半導体層102、酸化亜鉛(ZnO)からなる第2のコンタクト層105、窒化アルミニウムガリウム(Al0.2Ga0.8N)からなるpn接合を含む第3の半導体層106、及び酸化亜鉛(ZnO)からなる第3のコンタクト層107が順次エピタキシャル成長により形成されている。
【0029】
第3のコンタクト層109の上には、例えばインジウム錫酸化物(ITO)からなる表面電極108が形成され、さらに、第3のコンタクト層109は、表面電極108を含めその全面を覆うように、例えば窒化シリコン(SiN)からなる反射防止膜109が形成されている。また、グラファイトシート100における初期層101と反対側の面上には、金(Au)からなる裏面電極110が形成されている。
【0030】
ここで、入射光を受ける第3の半導体層106は主に紫外領域の入射光を吸収して光起電流に変換し、その下の第2の半導体層104は主に青紫領域の入射光を吸収して光起電流に変換し、その下の第1の半導体層102は主に可視領域の入射光を吸収して光起電流に変換する。
【0031】
第1の実施形態においては、第1の半導体層102を形成するよりも前に、グラファイトシート100の主面上にAlNからなる初期層101を、例えば有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法又はパルスレーザデポジション(Pulsed Laser Deposition:PLD)法により形成している。AlNはグラファイトシート100上において、GaN系半導体層の結晶性を改善する効果がある。
【0032】
図2に、グラファイトシート100の上に初期層101としてAlNを用いた場合とGaNを用いた場合とについて、各初期層101の上にGaN層をそれぞれ形成した場合のX線回折によるロッキングカーブ(GaN(0002)ピーク)を測定した結果を示す。いずれの層も、結晶成長にはMOCVD法を用いている。図2から明らかなように、AlNを初期層として用いることにより、該AlNからなる初期層の上に形成されるGaN層の結晶性が改善されることが分かる。
【0033】
図1に示す窒化物半導体太陽電池を作製するには、AlNからなる初期層101の上に、MOCVD法により、In0.4Ga0.6Nからなり、pn接合を含む第1の半導体層102を形成する。続いて、PLD法により、ZnOからなる低抵抗の第1のコンタクト層103を形成する。この後は、同様に、第1のコンタクト層103の上にGaNからなり、pn接合を含む第2の半導体層104、ZnOからなる第2のコンタクト層105、Al0.2Ga0.8Nからなり、pn接合を含む第3の半導体層106、及びZnOからなる第3のコンタクト層107を順次形成する。なお、pn接合におけるp型層を形成するp型のドーパントには、例えばマグネシウム(Mg)を用いることができ、n型層を形成するn型のドーパントには、例えばシリコン(Si)を用いることができる。
【0034】
ここで、第1のコンタクト層103及び第2のコンタクト層105の厚さはそれぞれの下側に位置するpn接合によって吸収される波長に対し、十分な透過性を有する必要がある。従って、コンタクト層103、105の厚さは、10nm程度かそれ以下であることが望ましい。また、最上部に形成される第3のコンタクト層107の厚さは、100nm程度であればよい。
【0035】
また、第1の半導体層102、第2の半導体層104及び第3の半導体層106の厚さは、それぞれ例えば0.5μm、0.3μm及び0.3μm程度であればよい。さらには、各半導体層102、104、106は、それぞれのpn接合の間にアンドープ層が形成された、いわゆるpin型接合とすることが望ましい。pin型接合におけるアンドープ層によって光の吸収量を多くすることにより、太陽電池の変換効率を向上することができる。なお、各半導体層102、104、106を構成するpn接合の光を吸収する各アンドープ層の厚さは、直列抵抗を増大させない程度に十分に厚いことが望ましく、例えば500nm程度であることが望ましい。
【0036】
さらに、第1の実施形態においては、ZnOからなる各コンタクト層103、105、107は、それぞれの下側に形成された半導体層102、104、106よりもそれぞれ禁制帯幅が大きく、従って光吸収を抑制された透明導電膜として機能することが望ましい。具体的には、各コンタクト層103、105、107を構成するZnOに、該ZnOの禁制帯幅を調整可能なマグネシウム(Mg)若しくはカドミウム(Cd)又はその両方を添加するとよい。例えば、第1コンタクト層103は、第1の半導体層102のIn0.4Ga0.6Nよりも禁制帯幅が大きいZn0.8Cd0.2Oであることが望ましい。また、第2のコンタクト層105は、GaNよりも禁制帯幅が大きいZn0.9Mg0.1Oであることが望ましく、第3のコンタクト層107は、Al0.2Ga0.8Nよりも禁制帯幅が大きいZn0.5Mg0.5Oであることが望ましい。
【0037】
また、第1のコンタクト層103の上側及び下側、第2のコンタクト層105の上側及び下側、並びに第3のコンタクト層107の下側に、初期層101及び各半導体層102、104、106の成長温度よりも低い温度で成長したInAlGaNからなり、亜鉛(Zn)の各半導体層102、104、106中への拡散を抑制する拡散抑制層を設けてもよい。例えば、第1のコンタクト層103の上側及び下側に設ける拡散抑制層は、厚さを5nmとし、組成をAlNとすればよい。
【0038】
なお、第1の実施形態においては、各半導体層102、104、106の成長方法にMOCVD法を用い、各コンタクト層103、105、107の成長方法にPLD法を用いたが、成長方法はこのうちのいずれか1種類を用いてもよい。成長方法を1種類に限定すると、成長途中の半導体層等が大気に開放されることなく連続的に成長されるため、成長途中の半導体層等の界面に自然酸化膜等が形成されることがない。従って、第1の実施形態に係る窒化物半導体太陽電池を、直列抵抗の値を増大させることなく形成することができる。
【0039】
以上説明した通り、第1の実施形態においては、亜鉛(Zn)を含む導電性の酸化物からなる第1のコンタクト層103をそれぞれpn接合を含む窒化物半導体からなる第1の半導体層102と第2の半導体層104との間に形成し、第2のコンタクト層105をそれぞれpn接合を含む第2の半導体層104と第3の半導体層106との間に形成している。これにより、良好なオーミック接触を有するタンデム型の太陽電池を形成することが可能となり、より高効率な窒化物半導体太陽電池を実現することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図3及び図4を参照しながら説明する。図3において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0041】
図3に示すように、第2の実施形態に係るグラファイトシート100Aは、その主面に周期的な凹凸形状が形成されている。このように、GaN系半導体層を成長させる成長用基板の主面に周期的な凹凸形状を設けると、AlNからなる初期層101及びその上のIn0.4Ga0.6Nからなる第1の半導体層102等の初期成長核の形成に周期性が生じる。この周期性により、結晶構造の面内回転が抑制される結果、各半導体層102、104等の結晶性がより向上する。このため、太陽電池の高効率動作が可能となる。
【0042】
その上、グラファイトシート100Aの主面に凹凸形状を形成することにより、pn接合を含む第1の半導体層102等は、結晶面における(0001)面以外の面を多く含む、いわゆる無極性面となる。このため、各半導体層102、104、106はGaN系半導体に生じる固有の分極の影響を受けることがなくなるので、太陽電池の高効率動作が可能となる。また、この凹凸形状はZnOからなる第3のコンタクト層107の表面にも形成されるため、入射光の吸収量が大きくなるので、より高効率な太陽電池を実現できる。
【0043】
図4(a)及び図4(b)にグラファイトシート100Aの主面に形成する周期的な凹凸形状の一例を示す。ここでは、図4(a)及び(b)に示すように、平面六角形状の複数の凹み100aが六角形の各頂点を形成するように配置されている。なお、各凹み100aの一辺の長さは、例えば0.5μm程度でよく、各凹み100aの配置の間隔は20μm程度とすればよい。このような形状とすることにより、前述したように、GaNの(0001)面を形成する場合に、各凹み100aが結晶形成の核として機能するため、結晶の面内回転が抑制されて、より結晶性に優れたGaNを形成することができる。
【0044】
なお、グラファイトシート100Aに周期的な凹み100aを形成するには、例えばリソグラフィ法により、グラファイトシート100Aの主面上に周期的な凹み100aを開口したレジストパターンを形成し、形成したレジストパターンをマスクとして、エッチング、例えば酸化性雰囲気によるアッシングを行えばよい。
【0045】
(第2の実施形態の一変形例)
以下、本発明の第2の実施形態の一変形例について図5を参照しながら説明する。図5において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本変形例に係る窒化物半導体太陽電池は、主面に凹凸形状が形成されたグラファイトシート100Aと初期層101とが除去され、裏面電極110Aが第1の半導体層102における第1のコンタクト層102と反対側の面上に形成される構成を採る。なお、裏面電極110Aには金(Au)を用いることができる。
【0047】
以下、前記のように構成された本変形例に係る窒化物半導体太陽電池の製造方法について図6を参照しながら説明する。
【0048】
まず、図6(a)に示すように、グラファイトシート101aの主面に、前述した方法により、周期的な凹凸形状を形成する。
【0049】
次に、図6(b)に示すように、第1の実施形態と同様にして、AlNからなる初期層101、In0.4Ga0.6Nからなる第1の半導体層102、ZnOからなる第1のコンタクト層103、GaNからなる第2の半導体層104、ZnOからなる第2のコンタクト層105、Al0.2Ga0.8Nからなる第3の半導体層102及びZnOからなる第3のコンタクト層107を順次形成する。
【0050】
次に、図6(c)に示すように、成膜したGaN系半導体層からグラファイトシート101Aを剥離する。グラファイトシート101Aはフレキシブルであるため、粘着シート等を用いて容易に剥離することができる。続いて、グラファイトシート101Aが剥離されて露出した初期層101を、例えば塩素ガスを用いたドライエッチングにより除去する。その後、初期層101が除去されて露出した第1の半導体層102の裏面上に、真空蒸着法又はめっき法等により、Auからなる裏面電極110Aを形成する。
【0051】
次に、図6(d)に示すように、第3のコンタクト層107の上に、表面電極108と反射防止膜109とを形成することにより、図5に示す窒化物半導体太陽電池を得る。
【0052】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態及びその変形例においては、pn接合の積層数(タンデム数)を3層としたが、上層から基板側に向かって禁制帯幅が順次小さくするように形成した4層以上の半導体層を積層してもよい。
【0053】
また、各実施形態及びその変形例においては、GaN系半導体の成長にMOCVD法又はPLD法を用いたが、これに限られず、例えば分子線エピタキシ(MBE)法等の他の結晶成長方法を用いてもよい。さらに、各半導体層と各コンタクト層とを連続的に成長することにより、各層の界面に劣化を生じさせないようにしてもよい。
【0054】
また、GaN系半導体の成長用基板として、グラファイトシートを用いたが、該成長用基板はグラファイトシートに限られず、例えば安価なシリコン(Si)を用いてもよい。
【0055】
以上説明したように、各実施形態に係る窒化物半導体太陽電池は、低コストで且つフレキシブルなグラファイトシート100の上に、禁制帯幅が互いに異なる窒化物半導体からなるpn接合を含む半導体層102、104、106を積層し、各半導体層の間に、例えばZnOからなるコンタクト層103、105、107をそれぞれ形成している。このpn接合は、例えばグラファイトシート100側からIn0.4Ga0.6N、GaN及びAl0.2Ga0.8Nにより構成され、それぞれ可視領域、青紫領域及び紫外領域の太陽光を吸収して、電子正孔対を形成する。窒化物半導体層の間に形成されたZnOからなるコンタクト層は、その上下に形成されたpn接合を含む半導体層と良好なオーミック接触を実現し且つ入射光を透過するため、窒化物半導体太陽電池の高効率動作を可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る窒化物半導体太陽電池は、良好なタンデム構造を実現でき、太陽光発電に利用可能な薄膜型の窒化物半導体太陽電池等に有用である。
【符号の説明】
【0057】
100 グラファイトシート(フレキシブル基板)
100A グラファイトシート(フレキシブル基板)
100a 凹み
101 初期層
102 第1の半導体層
103 第1のコンタクト層
104 第2の半導体層
105 第2のコンタクト層
106 第3の半導体層
107 第3のコンタクト層
108 表面電極
109 反射防止膜
110 裏面電極
110A 裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-V族窒化物半導体からなり、第1のpn接合を含む第1の半導体層と、
III-V族窒化物半導体からなり、前記第1の半導体層とは禁制帯幅が異なる第2のpn接合を含む第2の半導体層と、
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間にそれぞれとオーミック接触して形成され、且つ亜鉛を含む酸化物層とを備えていることを特徴とする窒化物半導体太陽電池。
【請求項2】
前記酸化物層は、マグネシウム及びカドミウムのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項3】
前記第2の半導体層側から入射光が入射され、
前記第2のpn接合の禁制帯幅は、前記第1のpn接合の禁制帯幅よりも大きく、
且つ前記酸化物層の禁制幅は、前記第1のpn接合の禁制帯幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項4】
前記第1の半導体層、酸化物層及び第2の半導体層には、周期的な凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項5】
前記第1の半導体層、酸化物層及び第2の半導体層を保持する基板をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項6】
前記基板はグラファイトからなることを特徴とする請求項5に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項7】
前記基板は、その主面に周期的な凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項 5又は6に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項8】
前記基板と前記第1の半導体層との間で、且つ前記基板と接するように形成された窒化アルミニウム層をさらに備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の窒化物半導体太陽電池。
【請求項9】
前記第1の半導体層と前記酸化物層との間及び前記第2の半導体層と前記酸化物層との間の少なくとも一方に、前記第1の半導体層及び第2の半導体層よりも低い温度で形成されたIII-V族窒化物半導体からなる第3の半導体層をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8に記載の窒化物半導体太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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