説明

窒素ドープカーボンナノチューブの製造方法

本発明は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を流動床において製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床において窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは通常、少なくともIijimaによる1991年における記述以来、当業者に知られている(S.Iijima、Nature 第354巻、第56〜58頁、1991年)。それ以来、用語カーボンナノチューブとは、カーボンを含み、および3〜80nmの範囲の直径および直径の数倍、少なくとも10倍の長さを有する円筒体のことである。これらのカーボンナノチューブのさらなる特性は、1以上の規則的な炭素原子の層であり、カーボンナノチューブは通常、異なった形態のコアを有する。カーボンナノチューブについての同義語は、例えば「カーボンフィブリル」または「中空カーボン繊維」または「カーボンバンブー」または(巻構造の場合には)「ナノスクロール」または「ナノロール」である。
【0003】
これらのカーボンナノチューブは、その寸法および特定の特性から、複合材料の製造のために工業的に重要である。さらなる重要な可能性は電子工学およびエネルギー用途であるが、これらは通常、黒鉛カーボンよりも高い特定の電導性を有するからである。カーボンナノチューブは、これらが上記の特性(直径、長さ等)について極めて均一である場合、特に有利である。
【0004】
これらのカーボンナノチューブを、ヘテロ原子、例えば第5主族(例えば窒素)の原子で、カーボンナノチューブの製造方法の間に塩基性触媒を得るためにドープする可能性が同様に知られている。
【0005】
窒素ドープカーボンナノチューブの通常の既知の製造方法は、古典カーボンナノチューブ用の従来の製造方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法をベースとする。
【0006】
アーク放電法およびレーザーアブレーション法では、とりわけ、煤煙、非晶質炭素および大きな直径を有する繊維が副生成物としてこれらの製造方法において形成されるので、得られるカーボンナノチューブは通常、該方法から得られた生成物および該方法を経済的に魅力の無いものにする複雑な後処理工程に付されなければならない。
【0007】
対照的に、触媒法は、品質の高い生成物を該方法によって良好な収率で製造することができるので、カーボンナノチューブの経済的製造のための優位性を示す。触媒法の場合には、担持系を用いる方法と「浮遊触媒」法との間で区別される。
【0008】
前者は通常、それ自体が活性であり得る担体マトリックス上に配置される触媒を用いるが、後者の用語は通常、触媒が前駆体からカーボンナノチューブを製造するための反応条件下で形成される方法のことである。
【0009】
Maldonado等(Carbon 2006、44(8)、第1429〜1437頁)は、先行技術による「浮遊触媒」の典型的な実施態様を開示する。窒素ドープカーボンナノチューブの製造方法は、NHおよびキシレンまたはピリジンの存在下での触媒成分(フェロセン)のインサイチュ分解を特徴とする。このような方法の通常の欠点は、このような方法を実施するための高価な有機金属化学薬品の使用が避けられないことである。さらに、有機金属化学化合物の大多数は、健康に極めて有害であるか、または発癌性の疑いが少なくとも持たれている。
【0010】
WO2005/035841A2には、電導性コアおよびそこに堆積した窒素ドープカーボンナノチューブの層を含む電極の製造を含む方法が開示されている。該方法は、上記の定義に従う「浮遊触媒」法であり、関連する欠点を有する。
【0011】
Van Dommele等およびMatter等(S.van Dommele等、およびSurf.Sci.and Cat.、2006年、第162巻、第29〜36頁、編集:E.M. Gaigneaux等、P.H.Matter等、J.Mol.Cat A:Chemical 第264巻、(2007年)、第73〜81頁)はそれぞれ、窒素ドープカーボンナノチューブを、コバルト、鉄またはニッケルをSiOまたはMgOマトリックス上に含む担持触媒上で、アセトニトリルまたはピリジンをカーボンおよび窒素源としてカーボンナノチューブの形態でそこに堆積させるために用いる、先行技術による担持法の典型的な実施態様を開示する。これらの製造方法は、とりわけ、実験室において固定床反応器中で行うことを特徴とする。
【0012】
これらの方法の代替法は、US2007/0157348に開示されており、窒素ドープカーボンナノチューブはHOプラズマを用いて固定床中で触媒により製造される。とりわけ、該方法は、次いでカーボンナノチューブが形成される基材表面上での触媒金属層の製造を含む。従って、これは、カーボンナノチューブを製造するための異なった担持法の特定の実施態様である。
【0013】
上記の方法(担持法および「浮動性触媒」法)はまた、通常、触媒による化学気相堆積(触媒的炭素蒸着、CCVD)の総称として当業者に既知である。全てのCCVD法の特徴は、触媒として称される用いる金属成分が合成法の過程の間に消費されることである。かかる消費は通常、例えば、粒子を完全に被覆する(これは「エンキャッピング」として当業者に既知である)粒子全体上のカーボンの堆積のため、金属成分の不活性化に起因する。
【0014】
再活性化は通常、不可能または経済的に実現不可能である。示された触媒の消費のため、用いた触媒を基準とするカーボンナノチューブの高収率により触媒および方法に実質的な要件が求められる。カーボンナノチューブの工業的製造のために、ナノチューブの特定の特性ならびに用いるエネルギーおよび操作材料の最小化を維持しながらの高い空間時間収率は全ての工業的方法に求められる。
【0015】
例えば、Van Dommele等およびMatter等ならびにUS2007/0157348の先に開示された方法のような方法は、固定床反応器中で行われ、従って、任意の不活性化触媒の交換および置き換えは極めて困難を伴ってのみ可能であるので、上記の問題に対して有利ではない。このように支持された実施態様は同様に、窒素ドープカーボンナノチューブを形成する出発材料の反応に利用可能な触媒金属部位が、基材の粒子の表面上にのみ存在する点で不利である。次に、これは、1分子あたり窒素ドープカーボンナノチューブの達成可能な収率または基材の量についてこれらの実施態様の特有の制限を生じさせる。さらに、用いる反応器の型は、カーボンナノチューブ形成中に固定床の体積が大きく変化するので長期間の連続操作に適していない。従って、反応器のこれらの種類のスケールアップは、効率的な方法において可能ではない。
【0016】
これらに制限されない方法は、とりわけ、流動床法である。DE102006017695A1には、流動床におけるカーボンナノチューブの製造を含む方法が開示されている。とりわけ、カーボンナノチューブを新たな触媒の導入および生成物の取り出しを伴って連続的に製造することができる流動床の操作の有利な様式は、開示されていない。同様に、用いる出発物質がヘテロ原子を含んでよいことが記載されている。カーボンナノチューブをドープする窒素を生じさせる出発物質の使用は、開示されていない。
【0017】
DE102006007147には、用いた触媒を基準とする高収率を達成するため、およびカーボンナノチューブの有利な生成物特性を達成するための代替法が開示されている。ここでは、触媒活性金属成分を高い割合で含み、従って所望の高い収率を導く触媒が開示されている。同様に、用いる出発材料がヘテロ原子を含んでよいことが記載されている。カーボンナノチューブの窒素ドーピングを生じさせる出発材料の使用は、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2005/035841号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0157348号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102006017695号明細書
【特許文献4】独国特許第102006007147号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature 第354巻」、第56〜58頁、1991年
【非特許文献2】Maldonado他、「Carbon 2006」、44(8)、第1429〜1437頁
【非特許文献3】S.van Dommele他、「Surf.Sci.and Cat.」、2006年、第162巻、第29〜36頁、編集:E.M. Gaigneaux他
【非特許文献4】P.H.Matter他、「J.Mol.Cat A:Chemical 第264巻」、2007年、第73〜81頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
かかる状況下、本発明の課題は、窒素ドープカーボンナノチューブを製造することを可能とし、先行技術による非ドープカーボンナノチューブの有利な特性、例えば3〜150nmの外部直径およびアスペクト比L:D>10(側面寸法と直径との比)を損なわずにスケールアップすることができる方法を提供することである。該方法は、好ましくは、連続的に操作可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
意外にも、上記の課題は、少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つの金属(M)の金属塩(MS)の溶媒(L)中での溶液から少なくとも1つの金属(M)を沈殿させて、固体(F)を含む懸濁液(S)を得る工程、
b)懸濁液(S)から固体(F)を分離および必要に応じて後処理して、不均一金属触媒(K)を得る工程、
c)不均一触媒(K)を流動床に導入する工程、
d)炭素および窒素を含む少なくとも1つの出発物質(E)の反応または少なくとも1つが炭素を含み、少なくとも1つが窒素を含む少なくとも2つの出発物質(E)を、流動床において不均一金属触媒(K)上で反応させて、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を得る工程、
e)窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を流動床から放出する工程
を含むことを特徴とする、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の製造方法によって解決することができることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例5からの窒素ドープカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、実施例6からの窒素ドープカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法の工程a)に用いる少なくとも1つの金属(M)は通常、遷移金属を含んでなる。本発明の方法の工程a)に用いる少なくとも1つの金属(M)は通常、遷移金属を含んでなる。好適な金属(M)は、リストFe、Ni、Cu、W、V、Cr、Sn、Co、MnおよびMoから選択される金属(M)である。特に好適な金属(M)は、Co、Mn、FeおよびMoである。
【0024】
本発明の工程a)に通常用いる 少なくとも1つの金属(M)の金属塩(MS)は通常、溶媒(L)に溶解性の少なくとも1つの金属(M)の金属塩(MS)(例えば酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩および塩化物)を含んでなる。少なくとも1つの金属(M)の好ましい金属塩(MS)は、硝酸塩、炭酸塩および塩化物である。
【0025】
本発明の方法の工程a)に通常用いる溶媒(L)には、短鎖(C〜C)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールもしくはブタノール、または水ならびにこれらの混合物が包含される。特に好ましいものは水である。
【0026】
本発明の方法の工程a)における沈殿は、例えば、温度、濃度における変化(溶媒の蒸発による場合を含む)により、pHにおける変化により、および/または沈殿剤またはその組み合わせの添加によりもたらすことができる。
【0027】
好ましいものは、沈殿剤の添加によりまたは沈殿剤を少なくとも用いる上記の実施態様の組み合わせにより行われる本発明の方法の工程a)における沈殿である。適当な沈殿剤は、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ウレア、アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物の上記の溶媒中での溶液である。好ましいものは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物の溶液である。
【0028】
沈殿は、回分式にまたは連続的に行うことができる。好ましいものは、連続的な沈殿である。特に好ましいものは、少なくとも1つの金属(M)の金属塩溶液(MS)および必要に応じて沈殿剤を、輸送装置により、高い混合強度を有する混合装置中において混合することである。極めて特に好ましいものは、スタティックミキサー、Y−ミキサー、多積層ミキサー、バルブミキサー、マイクロミキサー、(2液)ノズルミキサーである。これらの装置と同様の当業者に既知のさらなるミキサーを上記の目的のために同様に用いることができる。
【0029】
本発明による工程a)の好ましいさらなる発展では、表面活性物質(例えばイオン界面活性剤もしくは非イオン界面活性剤またはカルボン酸)を添加して沈殿挙動を改良し、および製造した固体の表面を改質する。
【0030】
同様に、本発明による工程a)の好ましいさらなる発展では、少なくとも1つの金属(M)と共に触媒活性混合化合物を形成する少なくとも1つのさらなる成分(I)を添加する。
【0031】
可能性のあるさらなる成分(I)には、例えばMg、Al、Si、Zr、Tiならびに当業者に既知である混合金属酸化物を形成するさらなる元素、およびこれらの塩および酸化物が包含される。好ましいさらなる成分(I)は、物質Mg、AlおよびSiならびにこれらの塩および酸化物である。
【0032】
本発明の方法の工程a)は、特に好ましくは、上記の特に好ましい異なった金属(M)の少なくとも2つの金属塩(MS)が、さらなる成分(I)と共に、7を越えるpHで、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ウレア、アルカリ金属カーボネートおよび沈殿剤としてのヒドロキシドの添加により沈殿するように行う。
【0033】
次いで、本発明に方法による工程a)から得られる懸濁液(S)は、本発明による固体(F)を溶媒(L)中に含み、固体(F)は好ましくは用いる金属塩(MS)の金属(M)の水酸化物および/または炭酸塩および/または酸化物および/またはさらなる成分(I)または上記の成分の混合物を含む。
【0034】
本発明の方法の工程b)における分離は通常、固体(F)を、懸濁液(S)から当業者に既知の通常の固液分離法により分離して行う。このような方法の非限定的な例として、ろ過、溶媒の蒸発、遠心分離などを挙げ得る。
【0035】
本発明の方法の工程b)における分離は、連続的または回分式に行うことができる。好ましくは、工程b)の操作の連続様式である。
【0036】
本発明の方法の工程b)における分離の好ましいさらなる発展では、分離は、ろ過、次いで少なくとも1つの固体(F)の洗浄を行う形態で行われる。洗浄は、当業者に既知の方法、例えば膜処理により実施することができる。好ましくは、ろ過、プレス乾燥、スラリー化、洗浄およびプレス乾燥の形態でのさらなる発展により包含される分離を行うことである。特に好ましくは、洗浄およびプレス乾燥の形態での分離後に、スラリー化、洗浄およびプレス乾燥のプロセス工程を分離後に数回行うことである。
【0037】
本発明では、スラリー化は、溶媒(L)中に固体(F)を懸濁する工程を含む。
【0038】
本発明では、プレス乾燥は、液体を固体(F)の懸濁液から、多くとも、粒子間の毛管水の割合に相当する得られる固体のケーキ中における液体の割合が得られるまで押し出す工程を含んでなる。従って、本発明の方法の工程b)中での後処理における乾燥とは区別される。
【0039】
本発明の方法の工程b)の好ましいさらなる発展による分離は、連続的または回分式に行うことができる。特に好ましいものは、連続的に行うことである。極めて特に好ましくは、洗浄用の膜処理を用いて連続的に行う工程である。
【0040】
このさらなる発展は、本発明の方法の工程b)に本発明の方法の工程a)における沈殿から運び込まれる任意の塩または他の物質を固体(F)から取り除くことができるので、純度、従って不均一金属触媒(K)の活性を増加させることができるため、特に有利である。
【0041】
本発明の方法の工程b)は、懸濁液から分離した後に固体(F)の後処理を伴ってまたは伴わずに行うことができる。好ましくは、後の不均一金属触媒(K)の品質を増加させるために固体(F)の後処理を行う。
【0042】
本発明の方法の工程b)における後処理は通常、少なくとも1つの固体(F)の乾燥および/または固体(F)の焼成を含む。焼成は、工程a)における沈殿および工程b)における固体F)の分離後に、固体F)が、金属(M)、さらなる成分(I)および必要に応じて酸素を任意の割合で含む混合相および/または合金の形態でない場合にのみ必要である。
【0043】
焼成の形態で後処理を行う場合、後処理は好ましくは乾燥後に行う。
【0044】
固体(F)が工程a)中における沈殿および工程b)における分離後に、任意の割合で金属(M)、必要に応じてさらなる成分(I)および必要に応じて酸素を含む混合相および/または合金を含む場合には、これは既に、必要に応じて、以下に記載のように、乾燥の形態で、必要に応じて焼成によって後処理しなければならない本発明による不均一金属触媒(K)である。
【0045】
後処理における乾燥工程は、好ましくは、空気中において大気圧(1013hPa)下で150℃〜250℃の範囲での温度で実施する。特に好ましくは、約180℃の温度にて大気圧(1013hPa)下で空気中において乾燥することが好ましい。
【0046】
本発明の方法の工程b)をバッチ式に行う場合には、接触乾燥器(例えばパドル乾燥器)を用いる乾燥が好適である。
【0047】
本発明の方法の工程b)を連続的に実施する場合には、噴霧乾燥が乾燥に好ましい。
【0048】
固体(F)の通常の滞留時間は、乾燥の形態での回分式後処理における乾燥工程において、4〜18時間の範囲である。好ましくは、約12時間の滞留時間である。
【0049】
固体(F)の通常の滞留時間は、乾燥の形態での連続的後処理における乾燥工程において、0.1〜60秒、好ましくは1〜10秒の範囲である。
【0050】
固体(F)の焼成は通常、約250℃〜650℃、好ましくは約300℃〜600℃の温度で行う。乾燥の場合には、焼成は好ましくは、大気圧(1013hPa)下で空気中において行う。
【0051】
焼成工程における固体(F)の滞留時間は通常、2〜12時間、好ましくは約4時間の範囲である。
【0052】
焼成を連続的に行う場合には、焼成は、例えば本発明の方法の工程c)の流動床とは異なった流動床において、または回転式管炉、トンネル窯、移動床反応器または当業者に既知の同様の装置において存在させることができる。このような装置をいずれの個々の場合においてどのように構成しなければならないかは、通常、当業者に知られている。
【0053】
得られる不均一金属触媒(K)は好ましくは、形態M:M:IO:IOの混合物および/または合金と、本発明による金属(M)を含む成分M、Mおよび好ましいさらなる成分(I)の少なくとも一部の酸化物を含む成分IOおよびIOとを含む。同時に、上記の表現は、100%まで添加する、得られる不均一金属触媒(K)の成分の量による割合のことである。特に好ましくは、MはMnであり、上記の表現中の量による割合は2〜65%である。特に好ましくは、同様に、MがCoであり、量による割合が2〜80%である。好ましくは、同様に、IOがAlであり、量による割合が5〜75%である。好ましくは、同様に、IOがMgOであり、量による割合が5〜70%である。
【0054】
極めて特に好ましくは、MnおよびCoの量による同様の割合を有する不均一金属触媒(K)である。この場合には、好ましくは2:1〜1:2、特に好ましくは1.5:1〜1:1.5のMn/Co比である。
【0055】
得られる不均一金属触媒(K)は同様に、20μm〜1500μmの範囲の粒子の外径、特に好ましくは30μm〜600μmの範囲の粒子の外径、極めて特に好ましくは30μm〜100μmの粒子の外径を有する粒子を含む。粒径分布は、この場合には、例えばレーザー光散乱によりまたは篩い分けにより測定することができる。
【0056】
沈殿における粒径制御の方法は、当業者に知られている。これは、例えば、沈殿浴において十分に長い滞留時間により得られる。
【0057】
不均一金属触媒(K)が、所望の範囲よりも広い粒径分布の画分を有する場合には、後処理はさらに、本発明の方法の本発明による工程b)の好ましいさらなる発展において分類を含む。可能性のある分類法は、当業者に既知であり、例えば篩い分けまたは精査である。
【0058】
分類後に得られた過剰に多量な粒子の画分は、本発明の方法の本発明による工程b)の好ましいさらなる発展では、粉砕され、再び分類される。
【0059】
分類、およびとりわけ、さらなる発展によるさらなる分類を伴う粉砕は、不均一金属触媒の特定の触媒表面積が、プロセス工学的理由のために理想的に用いることができる粒径と比べて、このようにして最適化することができるので有利である。比較的小さい粒子は、凝集してダストを形成する傾向があるが、これは、プロセス工学的観点から不利であり、一方、比較的大きい粒子は、より小さい特定の表面積を有するので、本発明の方法の所望の空間時間収率について不利である。
【0060】
本発明の方法およびその好ましい実施態様および工程b)までのさらなる発展は、用いる任意のさらなる成分(I)および少なくとも1つの金属(M)の共沈および後処理を、得られる不均一金属触媒(K)の多孔性および該不均一金属触媒(K)の表面上の少なくとも一つの金属(M)の触媒活性部位の形態を窒素ドープカーボンナノチューブが高い収率および所望のサイズの周辺での小さいサイズ分布で得られるように設定するように制御することができるので特に有利である。
【0061】
従って、不均一金属触媒(K)は、表面が少なくとも1つの金属(M)の触媒活性部位を有する多孔質構造を有する。従って、用いる不均一金属触媒(K)の量当たりの窒素ドープカーボンナノチューブのより高い収率は、多孔質不均一金属触媒(K)の内部にも出発物質が到達し易いので、本発明による不均一金属触媒(K)を用いて得ることができる。
【0062】
不均一触媒の場合に知られているように、不均一金属触媒の状態調節は、さらなる後処理として有利であり得る。該状態調節は、例えば、反応性大気による処理、または例えば触媒特性を向上させるための蒸気を含む。状態調節は、成形および/または分類に先行して、またはそれらに続いて行うことができる。特定の場合、反応性ガス、例えば水素、炭化水素、COまたは蒸気のガスの混合物等による不均一触媒(K)の状態調節は、特定の反応性不均一金属触媒(K)を得るために有利であってよい。このような状態調節は、不均一金属触媒(K)中に存在する金属化合物の酸化状態を変更可能とするだけでなく、得られる触媒構造の形態に影響を与えることを可能とする。好ましいものは、触媒の直接使用、還元的状態調節または不均一金属触媒(K)に存在する金属化合物の対応する炭化物中への完全または部分変換といった状態調節である。
【0063】
本発明の方法の工程c)における流動床への不均一金属触媒(K)の導入は、連続的または回分式に行うことができる。流動床への不均一金属触媒(K)の連続的導入が好ましい。不均一金属触媒(K)は、記載のように導入前に還元するか、金属(M)の酸化形態で添加するか、または沈殿水酸化物または炭酸塩の形態で添加することができる。
【0064】
本発明の方法の工程c)に用いる流動床は、泡形成性流動床、乱流流動床またはガス経路の噴出による流動床を含んでよく、内部または外部循環性流動床を用いることができる。不均一金属触媒(K)を粒子で既に充填された流動床に導入することもできる。これらの粒子は、不活性粒子であってよく、および/または全体または部分的にさらなる不均一金属触媒(K)から構成されてよい。これらの粒子はまた、カーボンナノチューブの凝集体または窒素ドープカーボンナノチューブであってよい。
【0065】
本発明を実施するために用いる流動床は、適当な高耐熱性鋼または触媒効果に対して不活性である物質、例えばグラファイトまたは溶融シリカを含むことができる。これらの材料は、本発明による流動床を含む反応帯域中での条件により該材料に置かれた特定の必要性に起因して用いられる。
【0066】
本発明の方法により工程d)における反応は通常、炭素および窒素を含む少なくとも1つの出発物質(E)を用いて、または少なくとも1つが炭素を含み、および少なくとも1つが窒素を含む少なくとも2つの出発物質(E)を用いて行う。好ましくは、前記反応は、炭素および窒素を含む少なくとも1つの出発物質(E)を用いて行う。特に好ましくは、上記反応は、下記の反応帯域における条件下で気体形態で存在する窒素含有有機化合物を含む少なくとも1つの出発物質(E)を用いて行う。極めて特に好ましくは、上記反応は、リストアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アクリロニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル、ピリジン、ピロール、ピラゾール、ピロリジンおよびピペリジンから選択される少なくとも1つの出発物質(E)を用いて行う。
【0067】
好ましくは、カーボンおよび窒素を含む少なくとも1つの出発物質(E)に加えて、窒素を含有しないさらなる出発物質(E)を用いる。好ましいものは、リスト下記の反応帯域における条件下で気体形態で存在するメタン、エタン、プロパン、ブタンおよび高級脂肪族化合物ならびに下記の反応帯域における条件下で気体形態で存在するエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンおよび高級オレフィン、下記の反応帯域における条件下で気体形態で存在するアセチレンまたは芳香族炭化水素から選択されるさらなる出発物質(E)である。
【0068】
本発明による流動床では、本発明の方法の工程d)のように反応を行うための反応帯域が存在し、反応帯域は、本発明による反応温度、本発明による反応圧および導入されたガスの本発明によるガス速度を特徴とする。
【0069】
導入されたガスは、気相における本発明による少なくとも1つの出発物質(E)ならびにさらなるガスを含む。さらなるガスは好ましくは、水素および/または不活性ガスを含む。不活性ガスは好ましくは、新規なガスまたは窒素を含む。
【0070】
反応帯域に導入されたガスの混合物の組成物は通常、0〜90体積%の水素、0〜90体積%の窒素またはアルゴンのような不活性ガス、および5〜100体積%の気体状態での少なくとも1つの出発物質(E)、好ましくは0〜50体積%の水素、0〜80体積%の窒素またはアルゴンのような不活性ガス、および10〜100体積%の気体状態での少なくとも1つの出発物質(E)、特に好ましくは0〜40体積%の水素、0〜50体積%の窒素またはアルゴンのような不活性ガス、および20〜100体積%の気体状態での少なくとの1つの出発物質(E)である。
【0071】
少なくとも1つの出発物質(E)は、反応帯域において気体形態で存在するために、当業者に通常既知の装置、例えば熱交換器を用いて、本発明による流動床への導入前に蒸発させるか、または流動床中に他の物質の状態で供給しおよび反応帯域中に入る前に流動床において蒸発させることができる。
【0072】
少なくとも1つの出発物質(E)を含むガス流は、直接に、または本発明の方法の工程d)の好ましいさらなる発展によれば、予備加熱された形態で流動床および/または流動床の反応帯域に導入することができる。少なくとも1つの出発物質(E)を含むガス気流は、好ましくは25℃〜300℃、特に好ましくは200℃〜300℃に、流動床および/または流動床の反応帯域に入る前に予備加熱される。この目的のために用いるべき装置は、通常、当業者に既知の装置である。
【0073】
本発明の方法の工程d)のように反応を行う反応帯域における本発明による温度は通常、300℃〜1600℃、好ましくは500℃〜1000℃、特に好ましくは600℃〜850℃の範囲である。
【0074】
非常に低い温度は遅い反応速度を生じさせるので、高い空間時間収率の本発明による課題は達成されない場合がある。非常に高い温度はガス状の少なくとも1つの物質(E)の自発的な熱分解を生じさせるので、不均一金属触媒(K)全体を、生成物、すなわち窒素ドープカーボンナノチューブにもはや変換することができない。
【0075】
本発明の方法の工程d)のように反応を行う反応帯域における本発明による圧力は通常、0.05bar〜200bar、好ましくは0.1bar〜100bar、特に好ましくは0.2bar〜10barの範囲である。
【0076】
本発明による圧力、および本発明による上記の温度および好ましい温度と共に好ましい圧力は、通常、全ての、とりわけ好ましい出発物質(E)を気相中に存在可能にする反応帯域における条件を生じさせる。少なくとも1つの出発物質(E)が上記のように気相中において流動床に導入されない場合には、これらの条件を上流に有する流動床に蒸発帯域を付与するか、または例えばこれらの条件下で少なくとも1つの出発物質(E)の蒸発のために上記の装置を操作する必要がある。
【0077】
本発明の方法の流動床は通常、工程d)において操作されるので、少なくとも反応帯域において、ガス速度は、流動床に存在する全ての粒子について最少流動化速度の1.1〜60倍であるように設定される。最少流動化速度は、好ましくは2〜30倍、特に好ましくは5〜20倍である。さらに、ガス速度は好ましくは、流動床において個々の粒子それぞれの設定速度より小さくなるように設定される。
【0078】
非常に高いガス速度は、比較的微細な凝集粒子、とりわけ、ほとんどまたは全く反応していない触媒の放出を生じさせる。非常に低いガス速度は、比較的多くの凝集体の脱流動化を生じさせ、従って、反応器の内容物の望ましくない固化を生じさせる。
【0079】
最少流動化速度は、流動床の操作に関する当業者に既知の用語であり、文献(Daizo Kunii、Octave Levenspiel、「Fluidization Engineering」、第2版、Butterworth−Heinemann Boston、ロンドン、シンガポール、シドニー、トロント、ウェリントン、1991年)に包括的に記載されている。この最少流動化速度を決定する方法は同様に、当業者に既知である。最少流動化速度は、個々の粒子の沈降速度とは異なる。この違いについての理論的背景は当業者に知られている。しかしながら、より良好に理解するために、個々の粒子の沈降速度は、これらの個々の粒子の床の最少流動化速度よりも大きいといえる。
【0080】
これらの速度のそれぞれの決定は、不均一金属触媒(K)の粒子サイズが本発明の方法またはその好ましい変法の1つに従って設定されるので可能である。
【0081】
流動床または少なくとも上記条件下での流動床の反応帯域または記載のガス速度の操作は、流動床からの個々の粒子の放出を避けることを可能とし、同時に激しい混合、従って固体での少なくとも1つのガス状の出発物質(E)を含むガス流の接触を保証することを可能とし、次いで、本発明による不均一金属触媒(K)上での最大変換を生じさるので有利である。流動化に関する粒子特性の分布、例えば粒子密度および直径は、本発明の方法に用いる不均一金属触媒(K)の場合に特に広く、窒素含有カーボンナノチューブの高い特定の収率(添加触媒の量当たりの製造された生成物の量)を与えるので、記載の実施態様による方法を行うことは特に有利である。
【0082】
ガス速度が個々の粒子のそれぞれの沈降速度よりも低くなるように設定する要件を充足する代わりに、放出された粒子を循環するための装置、例えばサイクロンを、流動床の下流に設置することができる。これは、上記の要件に加えて、操作の異常の場合に放出を避けることを可能とするために存在させることもできる。
【0083】
本発明による実施態様および本方法の工程d)の好ましい実施態様によれば、その後、本発明による窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)が不均一金属触媒(K)上に形成され、その結果、不均一金属触媒(K)の粒子は、本発明によれば、分割され、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の凝集粒子および不均一金属触媒(K)の残存物が形成される。
【0084】
本発明の方法の工程e)において窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の放出は通常、所望の最大凝集径に達した窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の凝集粒子を流動床から取り出す方法で行う。
【0085】
放出は、本発明の方法の工程e)において、回分式または連続的に行うことができる。本発明の方法の工程e)の回分式実施態様は、流動床から、成長時間が経過した後、適当な放出装置を用いて簡単な取り出しによって行うことができる。本発明では、少なくとも1つの出発物質(E)を含むガス流の流動床への導入は、予め停止し得る。
【0086】
しかしながら、本発明の方法の工程e)のような放出は、好ましくは、連続的に行う。特に好ましくは、連続的に工程e)を行うこと、および流動床に篩い分け放出装置を付与することである。このような装置は、例えば篩いとして、流動床当業者に通常既知であり、微粒子の流動床および流動床の反応帯域への循環を同様に行う。このような装置は、選択された最大径を越える直径を有する凝集体のみが反応器から取り出され、より小さい粒子が反応器中に残存することを確実とする。
【0087】
このような装置は、流動床において内部的に設置されてよく、または流動床の外側に外部的に配置され、輸送回路により後に接続されてよい。これは、例えば、適当な篩いから作ることができ、または空気分類、例えばジグザグ分類器を用いて行うことができる。
【0088】
篩い分け装置を用いる連続的な実施態様は、このようにして、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の不均一金属触媒(K)の収率および残存物含量に基づく一定の生成物品質を保証することが可能であるのでとりわけ有利である。
【0089】
本発明の方法全体およびその実施態様は、驚くべき有利な方法で、連続的な、不均一触媒による窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の製造を流動床において可能とする。とりわけ、不均一金属触媒(K)を、連続的な沈殿により、金属塩溶液(MS)から、その後の反応工程に適合した特性を得るためのさらなるプロセス工程と組み合わせて流動床において製造して、製造された窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を形成するための驚くべき有利な態様を見出した。
【0090】
さらに、意外にも、本発明の方法によって製造された不均一金属触媒(K)は、その後の使用において窒化物を形成せず、従って窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を製造するための触媒活性の損失がないことを示すことが見出された。その結果、とりわけ、後の実施例に開示のように用いる不均一金属触媒(K)の量当たりの窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の収率を得ることができる。
【0091】
その全体として、本明細書に示された方法は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を、用いた触媒の量を基準とする高い収率で、非常に良好な品質と高い割合の黒鉛材料とを組み合わせて製造することを可能とし、これらのカーボンナノチューブは、同時に、幾何学的寸法の極めて狭い分布を有する。
【0092】
本発明の方法のさらなる優位性として簡単なスケールアップを挙げ得るが、これは、開示された方法のプロセス工程の全ての実施態様を、連続的に、簡単な様式で、当業者が容易にスケールアップすることができる装置により行うことができるからである。
【0093】
本発明の方法およびその好ましい変法によって製造された窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)は実質的に、低含量の不均一金属触媒(K)のため、さらなる仕上げを行わずに常に用いることができる。
【0094】
それにも拘わらず仕上げが望まれる場合には、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を、この目的のために当業者に通常知られている方法を(例えば、触媒および担体の残存物の化学的溶解により、非常に少量で形成される非晶質炭素の酸化によりまたは不活性ガスまたは反応性ガス中での熱後処理により)さらに用いて精製することができる。
【0095】
同様に、製造したカーボンナノチューブを、例えば向上した結合をマトリックス中に得るために、または表面特性を目標とした様式での所望の使用に適合させるために化学機能化することも可能である。
【0096】
本発明により製造した窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を、多くの材料において接着剤として、機械的強化のために、電気伝導性の向上、着色、耐燃性の向上のために用いることができる。
【0097】
好ましくは、本発明により製造した窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を、電気および/または熱電導性および/または機械特性の向上のために複合材料の成分としてポリマー、セラミックまたは金属中において用いることである。
【0098】
好ましくは、本発明により製造した窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を、導体トラックおよび導電性構造を製造するために用いることである。
【0099】
特に好ましくは、バッテリー、コンデンサー、VDU(例えばフラットVDU)または点灯装置中で、ならびに電界効果トランジスタとして用いることである。
【0100】
本発明により製造した窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の他の使用として、例えば水素またはリチウムのための貯蔵媒体としての、例えばガスの精製のための膜中での、例えば化学反応中での触媒活性成分のための触媒としてまたは担持材料としての、燃料電池中での、医療分野における、例えば細胞組織の成長を制御するための構造としての、診断分野における、例えばマーカーとしての、および化学的および物理的分析における(例えば原子間力顕微鏡において)使用が挙げられる。
【0101】
本発明の方法および本発明により用いた触媒を、いくつかの実施例を用いて以下に説明するが、該実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0102】
本発明による触媒の製造
実施例1
2441.4mLの脱イオン水中の947.3gのCo(NO・6HO、2441.4mLの脱イオン水中の830.1gのMn(NO・4HO、1709mLの脱イオン水中の1757.8gのAl(NO・9HOおよび1709mLの脱イオン水中の1494.1gのMg(NO・6HOの4つの溶液を調製した。Mn−およびCo−含有溶液およびAl−およびMg−含有溶液をいずれの場合にも組み合わせ、室温で5分間撹拌した。次いで、得られる二成分溶液を同様に組み合わせ、5分間撹拌した。濁りは希釈HNOの滴下によって溶解した。このようにして得られた溶液を以下、溶液Aと称する。以下、溶液Bと称す溶液は、1464.8gのNaOHを4882.8mLの脱イオン水中に撹拌投入することにより製造した。室温で、2つの溶液AおよびBを、激しい連続的な混合が確実となるように、ポンプを用いてバルブミキサーにより運んだ。得られた懸濁液の流れを約500mLの脱イオン水の初期投入を含む容器中に撹拌して、pH10を維持しながら集めた。溶液Aの体積フローは、2.8L/時であった。溶液Bの体積フローBは、一定pHを保証するように継続的に調節した。このようにして得られた固体をろ過し、次いでNaOHを含まないように置換洗浄により洗浄した。ろ過ケーキを終夜180℃で空気中において乾燥し、次いで、400℃で空気中において4時間焼成した。焼成により1046.9gの黒色固体を得た。用いた成分の理論比は、Mn:Co:Al:MgO=17:18:44:21であった。
【0103】
実施例2
1439mLの脱イオン水中の863.4gのCo(NO・6HO、1439mLの脱イオン水中の736.8gのMn(NO・4HO、575.6mLの脱イオン水中の264.8gのAl(NO・9HOおよび431.7mLの脱イオン水中の230.2gのMg(NO・6HOの4つの溶液を調製した。Mn−およびCo−含有溶液およびAl−およびMg−含有溶液をいずれの場合にも組み合わせ、室温で5分間撹拌した。次いで、得られた二つの溶液を同様に組み合わせ、5分間撹拌した。濁りは希釈HNOの滴下によって溶解した。このようにして得られた溶液を以下、溶液Aと称する。以下に溶液Bと称す溶液は、544.3gのNaOHを2099.3mLの脱イオン水中に撹拌投入することにより製造した。室温で、2つの溶液AおよびBを、連続的な混合が確実となるように、ポンプを用いてバルブミキサーにより運んだ。得られた懸濁液の流れを約500mLの脱イオン水の初期投入を含む容器中に撹拌して、pH10を維持しながら集めた。溶液AおよびBの体積フローはそれぞれ、2.8L/時および約1.5L/時であった。溶液Bの体積フローは、一定pHを保証するように継続的に調節した。このようにして得られた固体をろ過し、次いでNaOHを含まないように置換洗浄により洗浄した。ろ過ケーキを終夜180℃で空気中において乾燥し、次いで、400℃で空気中において4時間焼成した。焼成により550gの黒色固体を得た。用いた成分の理論比は、Mn:Co:Al:MgO=36:39:16:9であった。
【0104】
窒素含有炭素ナノチューブの製造
本発明の方法による窒素ドープカーボンナノチューブの製造の4つ実施例を以下にします。全ての関連する実験パラメータは、表1に示す。実施例5(低装填を有する触媒、供給ガスへエチレンを添加せず)を詳細に本明細書に記載する。
【0105】
実施例5
24gの実施例1からの触媒を、100mmの内径を有し、350gの窒素含有カーボンナノチューブ凝集体の初期投入が既に存在する耐高温性ステンレス鋼製の流動床反応器に導入する。該反応器を750℃の反応温度に外側から電気的に加熱し、反応器を不活性にした後、15g/分のアセトニトリル、25標準L/分の窒素および3.6標準L/分の水素からなる反応混合物を装置中に多孔板により反応器の下端で供給する。表在ガス速度は、反応器の下端にて、操作条件下で、0.27m/秒である。供給ガス混合物は、上流の電気的に加熱した固定床(直径:50mm、高さ:1000mm、ガラス製ラシヒリングで充填)において製造し、アセトニトリルを計量ポンプによりこの中に液体形態で計量し、窒素および水素をガス状形態で気化アセトニトリル中に過熱ガス混合物が固定床から約200℃の温度で出、流動床に入るように導入する。窒素ドープカーボンナノチューブは、初期投入した触媒上で流動床において形成され、その結果、触媒粒子が分割され、窒素ドープカーボンナノチューブの凝集体および触媒残存物を形成する。供給ガスを、触媒が完全に不活性化されるまで触媒に90分間供給し、触媒の活性を、反応器中でガスクロマトグラフィーを用いて決定した水素発生により監視する。反応器を窒素により不活性にした後、220gの黒色粉末を反応器から取り出し、さらに約350gの生成物が反応器中に次のバッチのための初期投入として残存する。堆積した窒素ドープカーボンナノチューブの構造および形態をTEM分析により決定した(FEI製装置、型:Tecnai20、Megaview III;製造業者により規定の方法)。導入した窒素の量をESCA分析により決定する(ThermoFisher製の装置、ESCALab 220iXL、製造業者により規定の方法)。用いた触媒を基準とする窒素含量(以下、収率と呼ぶ)を、焼成後の触媒の量(mcat,0)および反応後の重量増加(mtotal−mcat,0)に基づいて定義した:収率=(mtotal−mcat,0)/mcat,0。本明細書において詳細に検討した実施例5の場合では、8.2gのNCNT/触媒〔g〕の収率が得られ、生成物の窒素含量は4.28重量%である。
【0106】
表1は、詳細に上に記載した実施例5と同様の方法で別に行ったさらなる実施例を示す。Mn−Co−Al−Mg化合物をベースとする触媒により、用いた触媒の量を基準とする窒素ドープカーボンナノチューブの高収率を得る。用いた触媒の量を基準とする窒素ドープカーボンナノチューブの収率は、さらなる炭素供与体としてエチレンの供給ガスへの添加により増加させることができるが、その後、反応器から取り出した生成物の窒素含量は減少する。
【0107】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つの金属(M)の金属塩(MS)の溶媒(L)中での溶液から少なくとも1つの金属(M)を沈殿させて、固体(F)を含む懸濁液(S)を得る工程、
b)懸濁液(S)から固体(F)を分離および必要に応じて後処理して、不均一金属触媒(K)を得る工程、
c)不均一触媒(K)を流動床に導入する工程、
d)炭素および窒素を含む少なくとも1つの出発物質(E)、または少なくとも1つが炭素を含み、少なくとも1つが窒素を含む少なくとも2つの出発物質(E)を、流動床において不均一金属触媒(K)上で反応させて、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を得る工程、
e)窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)を流動床から放出する工程
を含むことを特徴とする、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの金属(M)は、遷移金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属塩(MS)は、溶媒(L)中で溶解性である少なくとも1つの金属(M)の金属塩(MS)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
沈殿を、工程a)において、沈殿剤の添加により行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの金属(M)と共に触媒活性混合化合物を形成する少なくとも1つのさらなる成分(I)を、工程a)において沈殿に添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
分離を、工程b)において、ろ過を行い、次いで固体(F)の少なくとも1つの洗浄を行う形態で実施することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
固体(F)の後処理を行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
後処理は、工程b)において、固体(F)の少なくとも1つの乾燥および/または固体(F)の焼成を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不均一金属触媒(K)は、形態M:M:IO:IOの混合物および/または合金を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
は、Mnであり、2〜65%の量による割合で存在し、Mは、Coであり、2〜80%の量による割合で存在し、IOは、Alであり、5〜75%の量による割合で存在し、IOは、MgOであり、5〜70%の量による割合で存在することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
不均一金属触媒(K)は、20μm〜1500μm、好ましくは30μm〜600μm、特に好ましくは30μm〜100μmの範囲の外径を有する粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
反応を、工程d)において、300℃〜1600℃、好ましくは500℃〜1000℃、特に好ましくは600℃〜850℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
流動床を、工程d)において、流動床に存在する全粒子の最少流動化速度の1.1〜60倍であるガス速度を少なくとも反応帯域において設定するように操作することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
電気および/または熱伝導性および/または機械特性を向上させるための複合材料の成分としてのポリマー、セラミックまたは金属における、請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって製造された窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の使用。
【請求項15】
導体トラックおよび/または導電性構造を製造するための、請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって製造された窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−506255(P2011−506255A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538413(P2010−538413)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010419
【国際公開番号】WO2009/080204
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】