説明

窒素含有フェノール樹脂

【課題】耐熱性、難燃性に優れる窒素含有フェノール樹脂を提供する。
【解決手段】窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂である。この窒素含有化合物はエチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である。 窒素含有フェノール樹脂は窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、難燃性に優れる窒素含有フェノール樹脂に関し、また、エポキシ樹脂等と混合し、硬化した際には難燃性、密着性に優れた硬化物が得られる樹脂組成物に関する。特に、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料等に好適に用いることができ、さらにハロゲン系の難燃剤を使用しなくても難燃性に優れる硬化物を得る事が出来る環境対応型のエポキシ樹脂組成物の成分として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂組成物は、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れた硬化物が得られることから、半導体封止材、プリント配線基板、塗料、注型材料用途等に好適に用いられている。例えば、半導体分野では、現在大部分の半導体装置においてエポキシ樹脂組成物を用いた封止材料が用いられており、難燃性を付与するために臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、難燃助剤としてアンチモン化合物が配合されている。しかし、近年の環境・安全への取り組みの中で、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系の難燃剤や、発ガン性が疑われているアンチモン化合物を使用しない地球環境にやさしい新規の難燃化方法が求められている。
【0003】
さらに近年の技術革新に伴い、エポキシ樹脂組成物において、硬化剤として用いられるフェノール樹脂にも耐熱性、耐湿性、難燃性等の向上が求められている。特にハロゲンフリーで高度な難燃性を持つ材料の要求は強い。
このような耐熱性、耐湿性、難燃性等を向上させるフェノール樹脂として、例えば、特許文献1に示されるような分子内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂が提案されているが、高度な難燃性を示すものの、耐熱性、電気特性等で充分満足できるものではない。
【0004】
また、特許文献2においてはアラルキル型フェノール樹脂が、特許文献3においてはジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が提案されている。これらは、いずれもフェノール樹脂の水酸基濃度を低下させることが目的であり、これによりフェノール樹脂のメチレン結合の酸化を防止して、難燃性を向上させようとするものである。しかし、これらの樹脂では高度な難燃性を示すものの、エポキシ樹脂との硬化性、耐熱性、密着性の点で充分満足できるものではない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−226464号公報
【特許文献2】特公昭47−13782号公報
【特許文献3】特許第3721319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、耐熱性、難燃性に優れる窒素
含有フェノール樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題が窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂によって達成されることが見出されたことに基づくものである。即ち、本発明は以下の構成からなる。
(1)窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂であって、窒素含有化合物がエチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である窒素含有フェノール樹脂。
(2)窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造の上記(1)に記載の窒素含有フェノール樹脂。
(3)窒素含有フェノール樹脂が、窒素含有化合物のジメチロール体1モルに対し、1.0〜3.0モルのフェノール類が縮合反応して得られたものである上記(1)または(2)に記載の窒素含有フェノール樹脂。
(4)窒素含有化合物のジメチロール体が、窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物の反応により得られたものである上記(1)〜(3)いずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂。
【0008】
(5)ホルムアルデヒド系化合物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンのいずれかである上記(4)に記載の窒素含有フェノール樹脂。
(6)窒素含有化合物のジメチロール体が、窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物の反応後に中和したものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂とエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
(8)固形分で窒素含有フェノール樹脂1.0当量に対し、エポキシ樹脂が0.8〜1.2当量である上記(7)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(9)充填剤を含む上記(7)または(8)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により耐熱性、難燃性に優れる窒素含有フェノール樹脂が得られ、これとエポキシ樹脂等とを併用した熱硬化性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、密着性に優れる硬化物が得られる。特に、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト、塗料、接着剤、複合材料等に好適に用いることができ、さらにハロゲン系の難燃剤を使用しなくても難燃性に優れる硬化物を得る事が出来る環境対応型のエポキシ樹脂組成物に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳しく説明する。
本発明の窒素含有フェノール樹脂は特定の窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させることによって得られる。
ここで、特定の窒素含有化合物は、窒素含有化合物1モルに対して、ホルムアルデヒド系化合物2モルが反応し得る2官能性の化合物であることが好ましく、具体的には、エチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である。これらの一種を単独で、若しくは二種以上を併用しても良い。
【0011】
窒素含有化合物のジメチロール体の製造
窒素含有化合物のジメチロール体は窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物を付加反応させことによって得られる。この反応においては窒素含有化合物1.0モルに対し、ホルムアルデヒド系化合物2.0〜2.1モルが好ましく、さらに好ましくは2.0〜2.05モルである。
【0012】
ホルムアルデヒド系化合物としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン(メタホルムアルデヒド)を使用することができる。ホルムアルデヒド系化合物が2.0モル未満であると、未反応の窒素含有化合物、あるいは窒素含有化合物のモノメチロール体が生成し、ジメチロール体の純度が低下し好ましくない。また、ホルムアルデヒド系化合物が2.1モルを超えると、未反応の窒素含有化合物、あるいは窒素含有化合物のモノメチロール体の生成は低減できるものの、未反応のホルムアルデヒド系化合物が増え、好ましくない。
【0013】
反応は水、若しくは有機溶媒の存在下、無触媒で、若しくは塩基性触媒の存在下で反応するのが良い。反応温度は45℃から80℃以下、好ましくは45℃から70℃以下、さらに好ましくは45℃から50℃以下で、1時間から10時間程度が良い。反応温度が45℃未満の場合には反応が遅く効率的ではない。また、反応温度が80℃を超えると、反応の制御が困難であり、また副反応が起きることもあり好ましくない。
【0014】
反応に用いる有機溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が単独で、若しくは二種以上を併用して使用でき、窒素含有化合物100重量部に対して、0から1,000重量部、好ましくは10から100重量部程度、必要に応じて使用することができる。
【0015】
反応に用いる塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等反応を促進する目的で適宜使用することができる。半導体封止材等の電気絶縁性を要する場合には、反応終了後に酸で中和後、水洗浄するなどして触媒を除去することが好ましい。中和に用いる酸としては燐酸、蓚酸、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが使用できる。
窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物の反応はGPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)、若しくは1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)等で窒素含有化合物のジメチロール体の生成を確認することができる。
【0016】
窒素含有フェノール樹脂の製造
本発明の窒素含有フェノール樹脂は、窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを縮合反応させることにより得られる。
この反応では窒素含有化合物のジメチロール体1.0モルにフェノール類1.0〜3.0モルを縮合反応することが好ましい。ここで用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール等のキシレノール類等の一価フェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(ジヒドロキシナフチル)メタン、テトラメチルビフェノール、ビフェノール、ヘキサメチルビフェノール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類等の二価フェノール類;トリスヒドロキシフェニルメタン等の三価フェノール類を挙げることができる。特にフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール類、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6−キシレノール、レゾルシン、ハイドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等などを単独で、若しくは二種以上を併用して使用することができる。
【0017】
反応は水、若しくは有機溶媒の存在下、酸触媒の存在下で反応するのが良い。反応温度は70℃から150℃以下、好ましくは80℃から120℃以下、さらに好ましくは90℃から110℃以下で、1時間から10時間程度が良い。反応温度が70℃未満の場合には反応が遅く効率的ではない。また、反応温度が150℃を超えると、反応の制御が困難であり、また副反応が起きることもあり好ましくない。
【0018】
反応に用いる有機溶媒としては上記の溶媒が使用できる。また、反応に用いる酸触媒としては、蓚酸、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸を使用することができ、特に、加熱により分解する蓚酸が好ましい。窒素含有化合物のジメチロール体100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜8重量部、更に好ましくは0.1重量部から5重量部を適宜使用することができる。
反応後は、必要に応じて水洗し、加熱減圧して縮合水、及び未反応のフェノール類を除去することができる。樹脂は軟化点を有する固形の樹脂としても得られ、必要により有機溶媒に溶解して樹脂溶液をすることもできる。
【0019】
本発明の窒素含有フェノール樹脂は上述した方法により得られるが、窒素含有化合物のジメチロール体を得た後に、これとフェノール類を反応させるところに特徴を有する。即ち、この方法により、窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造のオリゴマーが得られる。
この窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返される構造により、本発明の窒素含有フェノール樹脂は耐熱性、難燃性を発現し、該窒素含有フェノール樹脂を含む硬化性樹脂組成物は難燃性、密着性に優れた硬化物が得られる。
【0020】
窒素含有フェノール樹脂を含む硬化性樹脂組成物
本発明の窒素含有フェノール樹脂は、それだけでも耐熱性、難燃性を有するが、ヘキサメチレンテトラミン、エポキシ樹脂等と一緒に加熱硬化することで、更に耐熱性、難燃性、金属に対する密着性等を発揮する。
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の二価のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール変性型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等の三価以上のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、有機リン化合物で変性されたエポキシ樹脂などが挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、二種以上を混合してもよい。
エポキシ樹脂の混合割合は窒素含有フェノール樹脂1.0当量に対し、エポキシ樹脂を0.8〜1.2当量が好ましい。
【0021】
硬化反応を促進する目的で、硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられ、これらは単独で、若しくは二種以上を併用して使用することができる。
【0022】
また本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じて、無機充填剤、改質剤として使用される熱硬化性および熱可塑性樹脂、顔料、シランカップリング剤、離型剤等の種々の配合剤を目的に応じて添加することができる。無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は適用用途や所望特性によって、望ましい範囲が異なるが、例えば半導体封止材用途に使用する場合は、線膨張係数や難燃性を鑑みれば高い方が好ましく、組成物全体量に対して65重量%以上が好ましく、特に好ましくは85重量%以上である。また導電ペーストや導電フィルムなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0023】
改質剤として使用される熱硬化性および熱可塑性樹脂としては種々のものが全て使用できるが、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で使用できる。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて配合されるその他の配合剤を均一に混合するため、若しくは作業性を向上させる等の目的や、用途や加熱硬化条件に応じて、粘度調整を行っても良い。この時使用できる溶剤としては、特に限定されないがメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらを単独で若しくは二種以上を併用して使用しても良い。
【実施例】
【0025】
以下に窒素含有フェノール樹脂の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、部および%は質量基準である。
窒素含有フェノール樹脂の合成
実施例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、エチレン尿素100部、25%水酸化ナトリウム8部を仕込み内温を50℃にして、37%ホルマリン188部を1時間かけて滴下した。その後、50℃で2時間反応し、反応後のGPCを図1に示す。未反応のエチレン尿素の消失を確認し、燐酸6部を添加し中和することでエチレン尿素のジメチロール体を得た。次に、フェノール328部、蓚酸1.5部を仕込み、還流温度で4時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去した。GPCによる重量平均分子量370、軟化点80℃の窒素含有フェノール樹脂288部を得た。図2の1H-NMRスペクトルより、エチレン尿素とフェノールとを結合するメチレン結合のみが発現しており、エチレン尿素及びフェノールが交互に繰り返した構造のオリゴマーが得られた。
【0026】
実施例2
エチレン尿素とホルマリンの反応は、実施例1と同様に行い、エチレン尿素ジメチロール体を得た。その後、燐酸6部で中和して、次に、フェノール273部、蓚酸1.5部を仕込み、還流温度で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去した。GPCによる重量平均分子量420、軟化点90℃の窒素含有フェノール樹脂305部を得た。
【0027】
実施例3
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、プロピレン尿素100部、25%水酸化ナトリウム8部を仕込み仕込み内温を50℃にして、37%ホルマリン162部を1時間かけて滴下した。その後、50℃で3時間反応し、プロピレン尿素ジメチロール体を得た。その後、燐酸6部中和して、次に、フェノール282部、蓚酸2部を仕込み、還流温度で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去した。GPCによる重量平均分子量370、軟化点90℃の窒素含有フェノール樹脂300部を得た。
【0028】
実施例4
プロピレン尿素とホルマリンの反応は、実施例3と同様に行い、プロピレン尿素ジメチロール体を得た。その後、燐酸6部で中和して、次に、フェノール235部、蓚酸1.5部を仕込み、還流温度で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去した。GPCによる重量平均分子量480、軟化点95℃の窒素含有フェノール樹脂315部を得た。
【0029】
実施例5
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、ヒダントイン100部、25%水酸化ナトリウム8部を仕込み仕込み内温を50℃にして、37%ホルマリン162部を1時間かけて滴下した。その後、50℃で3時間反応し、ヒダントインジメチロール体を得た。その後、燐酸6部で中和して、次に、フェノール282部、蓚酸2部を仕込み、還流温度で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去した。GPCによる重量平均分子量530、軟化点100℃の窒素含有フェノール樹脂255部を得た。
【0030】
比較例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール100部、p−キシレングリコールジメチルエーテル88部、p−トルエンスルホン酸0.08部を仕込み、150℃で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去し、フェノールアラルキル樹脂を得た。
【0031】
比較例2
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、メラミン100部、37%ホルマリン129部を仕込み、70℃で2時間メチロール反応を行い、次に、フェノール448部を仕込み、200℃の温度まで3時間かけて昇温し、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去し、トリアジン変性フェノール樹脂を得た。
【0032】
比較例3
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール100部、37%ホルマリン50部、蓚酸0.5部を仕込み、還流温度で5時間反応後、200℃、50mmHgの減圧下で未反応フェノールを除去し、ノボラック樹脂を得た。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物の調製
実施例6〜10、比較例4〜6
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた樹脂100質量部と、オルソクレゾール型エポキシ樹脂(エポキシ当量205)をフェノール性水酸基と等量になるように配合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が60%になるように均一に溶解し、熱硬化性樹脂組成物を得た。これらを上記の実施例1〜5、比較例1〜3の順に対応させて実施例6〜10、比較例4〜6とする。
【0034】
実施例11〜15、比較例7〜9
実施例1〜5で得られた窒素含有フェノール樹脂、比較例1〜3で得られた樹脂のそれぞれにオルソクレゾール型エポキシ樹脂(エポキシ当量205)をフェノール性水酸基と等量になるように配合し、硬化促進剤のトリフェニルフォスフィンをエポキシ樹脂100部に対して1部添加して120℃にて溶融混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られた熱硬化性樹脂組成物30部と溶融シリカ70部を粉末混合して、金型にて樹脂配合物を170℃−15分、圧力30kg/cm2で加圧成形する。その後、170℃−3.5時間後硬化して、テストピースを作成した。これらを前記の順に対応させて実施例11〜15、比較例7〜9とした。
【0035】
特性評価試験
本発明の熱硬化性樹脂組成物及び比較例の試料について、密着性、ガラス転移温度、線熱膨張係数、難燃性を次の方法により評価した。
密着性の評価
試料を銅張り積層板(FR−4)に厚さ50μmで塗布し、80℃のオーブンに30分間入れ、溶媒を除去した。その後、200℃のオーブンに5時間入れ、銅張り積層板の上に、硬化塗膜を得た。硬化塗膜にカッターを用いて、碁盤目を作成し、セロハンテープにより剥離試験を行った。残った碁盤目の値を記載した。値が大きい程、密着性に優れる。
【0036】
(2)耐熱性と熱膨張係数の評価
実施例11〜15、比較例7〜9で得られたテストピースを用いて、耐熱性の評価としてTMA法にてガラス転移温度及び線膨張係数を測定した。昇温速度:10℃/分。結果を表2に示す。
【0037】
(3)難燃性の評価
耐熱性評価で得られたテストピースを用いて、難燃性評価を行った。試験方法はUL規格に準じたJIS K6911B法で難燃性を測定した。
テストピース:130×13×2 mm
試験方法:メタンガスボンベを用いて、バーナーの炎の高さを19mmの青色炎に調節し、クランプで長さ方向を鉛直に保持した試験片の下端中央部に10秒間接炎する。(バーナーと試験片下端は、9.5mm間隔をとる。)接炎後、バーナーを試験片から離し、フレーミング時間を測定する。フレーミングが止まったら直ちに炎を再度、試験片の同じ箇所に10秒間当てた後、離し、フレーミング時間を測定する。
・炎を取り去った後のフレーミング時間:10秒以内V−0級、30秒以内V−1級、
・5個1組の試験片に計10回接炎した後のフレーミング時間の合計 50秒以内 V−0級 250秒以内 V−1級
実施例6〜10、比較例4〜6について、密着性の測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】


実施例11〜15、比較例7〜9について、ガラス転移点、熱膨張係数、難燃性の測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により耐熱性、難燃性に優れる窒素含有フェノール樹脂が得られ、これとエポキシ樹脂等とを併用した熱硬化性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、密着性に優れる硬化物が得られる。特に、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト、塗料、接着剤、複合材料等に好適に用いることができ、さらにハロゲン系の難燃剤を使用しなくても難燃性に優れる硬化物を得る事が出来る環境対応型のエポキシ樹脂組成物として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1におけるエチレン尿素とホルマリンの反応生成物のGPCグラフである。
【図2】実施例1における窒素含有フェノール樹脂の1H−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂であって、窒素含有化合物がエチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である窒素含有フェノール樹脂。
【請求項2】
窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造の請求項1に記載の窒素含有フェノール樹脂。
【請求項3】
窒素含有フェノール樹脂が、窒素含有化合物のジメチロール体1モルに対し、1.0〜3.0モルのフェノール類が縮合反応して得られたものである請求項1または2に記載の窒素含有フェノール樹脂。
【請求項4】
窒素含有化合物のジメチロール体が、窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物の反応により得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂。
【請求項5】
ホルムアルデヒド系化合物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンのいずれかである請求項4に記載の窒素含有フェノール樹脂。
【請求項6】
窒素含有化合物のジメチロール体が、窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物の反応後に中和したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の窒素含有フェノール樹脂とエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
固形分で窒素含有フェノール樹脂1.0当量に対し、エポキシ樹脂が0.8〜1.2当量である請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
充填剤を含む請求項7または8に記載の熱硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−266403(P2008−266403A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109080(P2007−109080)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】