説明

窒素酸化物除去触媒及びこれを用いた窒素酸化物除去装置

【課題】リン、砒素等の触媒毒成分による触媒の劣化が少なく、かつ、耐酸性および耐熱性に優れた窒素酸化物除去触媒を提供する。
【解決手段】担体が細孔を有し、排ガス中の窒素酸化物を除去する活性成分を含む窒素酸化物除去触媒であって、前記細孔の平均直径が20〜100Åであり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が全細孔容積に対して80%以上であり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が触媒1g当たり0.1〜0.4cmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物除去触媒及びこれを用いた窒素酸化物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、各種工場、自動車等から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)は、環境悪化の原因物質である。その効果的な除去方法として、アンモニア(NH)を還元剤とした選択的接触還元による排煙脱硝法が火力発電所を中心に用いられている。触媒には、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)あるいはタングステン(W)を活性成分にした酸化チタン(TiO)系触媒が使用されている。特に、活性成分の一つとしてバナジウムを含む触媒は、活性が高いだけでなく、排ガス中に含まれる不純物による劣化が小さいこと、比較的低温度から使用できることなどから、現在の脱硝触媒の主流になっている(特許文献1)。
【0003】
近年、米国では、PRB炭と称される亜瀝青炭や瀝青炭など、低品位の石炭を使用するボイラが増加する傾向にある。また、排ガス規制が強化されてきたことから、ボイラへの脱硝装置の設置が増加している。
【0004】
一般に、米国で多く産出される亜瀝青炭の中には、高品位の石炭に比べて、燃焼時の排ガスおよび灰にリンを多く含むものがある。リンは脱硝触媒にとって触媒毒になることから、リンを多く含有する石炭の燃焼排ガス処理においては、高品位の石炭を使用する場合に比べて脱硝触媒の性能低下が大きいという問題があった。しかしながら、これまでにリンによる劣化を防止することを目的とした対策は採られていなかった。
【0005】
特許文献2には、焼却炉、熱分解炉、溶融炉等から排出される排ガスを浄化する排ガス処理用触媒であって、酸化チタンからなる担体と、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、これらの金属元素の二種以上の混合物、及びこれら金属元素の二種以上の固溶体の各酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む触媒成分とから構成され、酸強度(H)が−5.6より弱い(H≧−5.6である)触媒であることを特徴とする排ガス処理用触媒が開示されている。加えて、触媒の比表面積が90m/g以上であることも構成要件として開示されている。
【0006】
特許文献3には、窒素酸化物及びリン化合物を含有する排ガスの窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去用触媒であって、多孔質の担体と、前記担体の細孔に担持された活性成分とを有し、前記担体の細孔の平均細孔直径は、直径3.4〜14Åの細孔を測定するガス吸着法による計測で8〜9Åであることを特徴とする窒素酸化物除去用触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57−36012号公報
【特許文献2】特開2000−70712号公報
【特許文献3】特開2008−221203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リン、砒素等の触媒毒成分による触媒の劣化が少なく、かつ、耐酸性および耐熱性に優れた窒素酸化物除去触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の窒素酸化物除去触媒は、担体が細孔を有し、排ガス中の窒素酸化物を除去する活性成分を含む窒素酸化物除去触媒であって、前記細孔の平均直径が20〜100Åであり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が全細孔容積に対して80%以上であり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が触媒1g当たり0.1〜0.4cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リン、砒素等の触媒毒成分による触媒の劣化が少なく、かつ、耐酸性および耐熱性に優れた窒素酸化物除去触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による実施例の窒素酸化物除去装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の脱硝システムを示す概略構成図である。
【図3A】窒素酸化物除去触媒の細孔直径が20Å未満である場合の例を示す模式断面図である。
【図3B】窒素酸化物除去触媒の細孔直径が20〜100Åである場合の例を示す模式断面図である。
【図3C】窒素酸化物除去触媒の細孔直径が100Åより大きい場合の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、窒素酸化物除去触媒(単に触媒とも呼ぶ。)、およびその製造方法、並びに窒素酸化物除去装置に関し、特に、リン化合物による劣化を防止することができる窒素酸化物除去触媒および窒素酸化物除去装置に関する。
【0013】
窒素酸化物除去触媒は、酸化チタンを担体とし、これに活性成分を担持して使用する場合が多いが、排ガス中のリン、砒素等の触媒毒成分に対する耐久性を付与するには、直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した場合、前記触媒が有する細孔の直径が20〜100Åであることが望ましい。このため、前記細孔を有する酸化チタンが有効である。
【0014】
リンによる触媒の劣化を防ぐためには、酸化チタン担体の平均細孔径および全細孔の総容積に対して100Å以下の細孔の占める容積の割合を最適化することが望ましい。さらに、活性成分を担持した後の触媒としての平均細孔径、及び全細孔の総容積に対して100Å以下の細孔の占める容積の割合を最適化し、触媒の全細孔の積算容積を最適化することが望ましい。
【0015】
本発明の窒素酸化物除去触媒は、直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ、前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して80%以上であり、かつ、前記平均細孔直径20〜100Åの細孔容積が触媒1g当たりで0.1〜0.4cmであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の窒素酸化物除去触媒は、前記担体が酸化チタンを含み、かつ、前記活性成分がジルコニウム(Zr)、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、バナジウム(V)の群から選択される少なくとも1種類の金属を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の窒素酸化物除去触媒は、前記酸化チタンに含まれるチタンのモル数に対する前記活性成分の割合がモル比率で1/4〜1/9であることを特徴とする。
【0018】
本発明の窒素酸化物除去装置は、上記の窒素酸化物除去触媒を用いたことを特徴とする。
【0019】
本発明の脱硝システムは、燃焼器と排ガス流路とを含み、上記の窒素酸化物除去装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
PRB炭燃焼ボイラにおいて、リンは、還元性の強い亜リン酸や有機リン酸として排ガス中にガス状態で存在すると考えられる。排ガス中のリン化合物は、窒素酸化物除去触媒に到達すると触媒成分に吸着される。リン化合物は、還元剤のアンモニアと同じ点に強固に吸着されるため、アンモニアの吸着を阻害し、触媒の脱硝活性が低下すると推定される。
【0022】
また、リンに類似する成分として砒素がある。砒素も排ガス中にガス状態で亜ヒ酸等の形態で存在すると考えられている。
【0023】
上記のようなリン及び砒素の挙動を前提とすると、リン化合物や砒素化合物が侵入しにくいメソ細孔を形成し、メソ細孔中に脱硝活性成分元素を担持すれば、脱硝活性が維持できるとともに、リン被毒又は砒素被毒による触媒の劣化を防止することが可能である。
【0024】
具体的には、本発明の触媒は、前記担体がチタン酸化物であることが望ましく、担体上に窒素酸化物除去成分が担持されていることが望ましい。
【0025】
さらに、前記担体に窒素酸化物除去成分を担持した前記触媒は20〜3000Åの直径を有する細孔を測定するガス吸着法で計測される細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、直径が20〜100Åの細孔の容積が該ガス吸着法で計測される細孔の全細孔容積に対して80%以上を占めることが望ましい。
【0026】
これにより、窒素酸化物除去性能が維持できるとともに、リン被毒による触媒の劣化を防止することが可能である。すなわち、細孔の少なくとも一部は、被毒物質が細孔に吸着しても細孔の内部の活性成分に窒素酸化物が拡散及び吸着可能である。
【0027】
触媒の細孔径と、リン、砒素などの被毒物質との関係については、以下のように考えられている。
【0028】
図3A〜3Cを用いて説明する。
【0029】
図3Aは、窒素酸化物除去触媒の細孔直径が20Å未満である場合の例を示す模式断面図である。図3Bは、窒素酸化物除去触媒の細孔直径が20〜100Åである場合の例を示す模式断面図である。図3Cは、窒素酸化物除去触媒の細孔直径が100Åより大きい場合の例を示す模式断面図である。
【0030】
図3Aにおいて、窒素酸化物除去触媒の担体101は、直径20Å未満の細孔111の内部に窒素酸化物を除去する活性成分102を有する。被毒物質103が酸化リン(V)(P10)の場合、分子径は約9Åであり、被毒物質103が酸化砒素(V)(As10)の場合、分子径は約8Åである。被毒物質103が細孔111の入口部に吸着し、入口部の全部又は大部分を塞いでしまう。
【0031】
このため、分子径が約4Åの一酸化窒素104(NO)や分子径が約3Åのアンモニア105(NH)が細孔111内部に拡散しにくくなり、活性成分102に吸着しにくくなると考える。
【0032】
図3Bにおいて、窒素酸化物除去触媒の担体101は、直径20〜100Åの細孔111を有する。この場合、被毒物質103が細孔111の入口部に吸着したとしても、入口部の一部を塞ぐに過ぎず、一酸化窒素104やアンモニア105は細孔111の内部に拡散して活性成分102に吸着することができると考える。
【0033】
図3Cにおいて、窒素酸化物除去触媒の担体101は、直径100Åより大きい細孔111を有する。この場合、被毒物質103が細孔111の内部まで拡散して活性成分102に吸着しやすくなる。このため、活性成分102が被毒され、一酸化窒素104やアンモニア105が細孔111の内部に拡散しても活性成分102に吸着することができなくなると考える。
【0034】
以上の説明は、窒素酸化物除去触媒の細孔直径の適切な範囲を厳密に証明するものではないが、後述の実験事実を説明する観点から有力なものである。
【0035】
すなわち、細孔直径が20〜100Åの範囲にあるメソ細孔を有することの意味は、次の通りである。
【0036】
細孔直径が20Åよりも小さい場合、排ガス中のリン化合物が細孔の入口部を閉塞させることにより、細孔の内部に担持された窒素酸化物除去成分(活性成分)が窒素酸化物除去性能を十分に発揮し得ない。
【0037】
逆に、細孔直径が100Åより大きい場合、細孔直径よりもリン化合物の分子直径がはるかに小さく、細孔の内部にリン化合物も容易に侵入して窒素酸化物除去成分を被毒するため、窒素酸化物除去性能が十分発揮できない。
【0038】
次に、本発明の窒素酸化物除去方法について説明する。
【0039】
本発明の窒素酸化物除去方法は、還元剤を用いる選択接触還元法と呼ばれるものである。還元剤にアンモニアを用いる場合もある。
【0040】
還元剤としてアンモニア以外の化合物、例えば分解してアンモニアを発生する尿素などの物質、あるいは炭化水素、一酸化炭素(CO)などを流通してもよい。
【0041】
本発明の対象とする窒素酸化物には、NO、N、NO、Nなどが含まれ得るが、これら化合物が共存する場合にそれらの反応を全て分離して分析することは困難である。
【0042】
アンモニアを還元剤とした場合、200〜450℃程度の温度範囲において、以下の反応が起こり、N及びHOが生成する。
【0043】
3NO+4NH→7/2N+6H
4NO+4NH+O→4N+6H
すなわち、数%程度の酸素ガス共存下で、アンモニアを用いて数百ppmのNOを触媒上で還元する方法である。
【0044】
次に、本発明の窒素酸化物浄化装置について説明する。
【0045】
図1は、本発明の窒素酸化物除去装置を示す概略構成図である。
【0046】
本図において、窒素酸化物浄化装置は、NOxを含有する排ガス1が通過する煙道2(排ガス流路)と、煙道2中にアンモニア3を散布するノズル4と、触媒層5が充填された窒素酸化物浄化器6と、窒素酸化物が浄化されて無害になった排ガス7が導かれる煙道8とを備えている。窒素酸化物浄化器6内に、本発明の窒素酸化物除浄化用触媒が充填されている。窒素酸化物浄化触媒の形状は板状である。板状以外に、粒子状又はハニカム状を用いてもよい。
【0047】
まず、NOxを含有する排ガス1が煙道2に導かれる。煙道2には、アンモニア3を噴霧するノズル4が設置されており、アンモニアを含有する排ガスとなって窒素酸化物除去器6に導かれる。窒素酸化物除去器6には触媒層5が配置され、加熱された触媒層5上でNOxが還元されて無害なN及びHOが生成する。N及びHOは、排ガス7に混合されて煙道8を通過して排出される。
【0048】
図2は、本発明の脱硝システムを示す概略構成図である。
【0049】
本図において、ボイラ9(燃焼器)の下流側には、脱硝設備10、電気集塵器13、脱硫塔11及び煙突14が配置されている。アンモニアを排ガス中に均一に噴霧できるようにするため、煙道2にはノズル4が設置されている。ノズル4は、アンモニア製造設備15と接続している。
【0050】
ボイラ9からの燃焼排ガスは、煙道2においてノズル4から噴霧されたアンモニアを含みながら、所定温度に加熱された脱硝設備10に導かれる。脱硝設備10は、図1の窒素酸化物除去器6と略同様の構成を備えており、この脱硝設備10において排ガス中のNOxは還元されて無害なN及びHOになる。電気集塵器13は、排ガス中の粉塵を除去するために配置される。石炭焚きボイラの場合には、SOx濃度が高いため、電気集塵器13の後段に、脱硫塔11が設置され、SOxを除去することができるようになっている。
【0051】
次に、窒素酸化物除去触媒について説明する。
【0052】
チタンの原料としては、チタニアゾル、硫酸塩、塩化物、シュウ酸塩、ペルオキソクエン酸アンモニウム四水和塩またはチタンテトライソプロポキシドのようなチタンを含む金属アルコキシドなどが使用される。水酸化チタンまたはチタニアを含むゾル液も使用できる。また、市販されている酸化チタン粉末を使用することも可能である。
【0053】
〔触媒の調製〕
本発明においては、実施例1〜4の4種類の触媒を調製した。
【0054】
これらの実施例において、担体は酸化チタンとした。チタンの原料は四塩化チタンを使用した。活性成分にはモリブデン及びバナジウムを用いた。
【0055】
触媒の調製においては、まず、1L(リットル)の純水に高純度四塩化チタン(純度98%以上)を50g秤量した四塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液をさらに66g精秤し、純水と混合して全量で3Lの四塩化チタン水溶液を作製した。
【0056】
この四塩化チタン水溶液に15%アンモニア水を毎分2gの速度で添加し、水酸化チタンの沈殿を合成した。沈殿合成の終点はpH7とした。
【0057】
沈殿生成溶液を静置して沈殿を十分沈降させた後、ろ過洗浄し、沈殿を回収した。回収した沈殿は、120℃で5時間以上乾燥したのち、乳鉢で十分粉砕し、300℃で2時間加熱し、チタニア担体を作製した。
【実施例1】
【0058】
実施例1においては、活性成分のモリブデン及びバナジウムを同時に担持する方法を用いた。
【0059】
過酸化水素水溶液にモリブデン酸アンモン試薬及びバナジン酸アンモニウムを同時に溶解し、この溶液をチタニア担体粉末に滴下して含浸した。また、バナジン酸アンモニウムの代わりに、メタバナジン酸アンモン試薬を用いてもよい。モリブデンとバナジウムとの配合比は、モル比でモリブデン:バナジウム=2.5:1.0とした。含浸後は、チタニア担体粉末を乾燥し、500℃で焼成した。
【実施例2】
【0060】
実施例2における活性成分の担持法は、モリブデンとバナジウムとを段階的にチタニア担体に含浸する方法である。
【0061】
過酸化水素水溶液にモリブデン酸アンモン試薬を溶解し、これをチタニア担体粉末に滴下して含浸し、乾燥後、500℃で焼成し、モリブデン担持チタニア粉末を得た。
【0062】
続いて、過酸化水素水溶液にメタバナジン酸アンモニウム試薬を溶解した溶液をモリブデン担持チタニア担体粉末に滴下して含浸し、乾燥後、500℃で焼成し、本実施例の触媒を得た。モリブデンとバナジウムの配合量は実施例1と同一である。
【実施例3】
【0063】
実施例3における活性成分の担持法は、モリブデンとバナジウムとを同時にチタニア担体に含浸する方法である。
【0064】
含浸液は、モノエタノールアミンを純水に溶解したモノエタノールアミン水溶液を使用し、この水溶液に酸化モリブデンと酸化バナジウムを溶解した。酸化モリブデン及び酸化バナジウムの配合量は、モリブデンとバナジウムとのモル比に換算してモリブデン:バナジウム=2.5:1.0とした。含浸後は乾燥し、500℃で焼成した。
【実施例4】
【0065】
実施例4における活性成分は、モリブデンを担持する方法を用いた。
【0066】
過酸化水素水溶液にモリブデン酸アンモン試薬を溶解し、この溶液をチタニア担体粉末に滴下して含浸した。モリブデンとバナジウムとの配合比は、モル比でチタン:モリブデン=9:1とした。含浸後は乾燥し、500℃で焼成した。
【0067】
(比較例1)
比較例1は、担体が実施例1〜4と同一の酸化チタンであり、活性成分にバナジウムを用いたものである。バナジウムの担持法は含浸法である。含浸液は、過酸化水素水溶液にメタバナジン酸アンモニウム試薬を溶解した溶液を使用し、チタニア担体粉末に滴下して含浸し、乾燥後、500℃で焼成して比較例1の触媒を得た。
【0068】
(比較例2)
酸化チタン担体の原料は、ミレニアムイノーガニックケミカルズ製の酸化チタン粉末G53.0gを使用した。バナジウム担持量は、チタンとバナジウムとのモル比で95:5である。バナジウムの含浸担持には、バナジウムの原料としてメタバナジン酸アンモニウム試薬を用い、その所定量0.231gを水2.3g及び過酸化水素水1.0gの混合液に溶解した。
【0069】
はじめに、バナジン酸アンモニウムを少量ずつ水に添加し、続いて、過酸化水素水を少量添加して含浸用の溶液を調製した。含浸の際には、酸化チタン粉末の表面に満遍なくバナジン酸アンモニウム溶液を滴下し、全量滴下した後に室温で30分放置し、さらに、120℃で1時間乾燥した後に500℃で2時間焼成して、バナジウムを担持した比較例2の触媒を得た。
【0070】
(比較例3)
比較例3は、酸化チタン及び酸化バナジウムの2成分系触媒である。酸化チタン担体の原料は、ミレニアムイノーガニックケミカルズ製の酸化チタン粉末G53.0gを使用した。バナジウム担持量は、チタンとバナジウムとのモル比で95:5である。バナジウムの含浸担持には、バナジウムの原料としてメタバナジン酸アンモニウム試薬を用い、その所定量0.231gを水2.3gと過酸化水素水1.0gの混合液に溶解した。
【0071】
はじめに、バナジン酸アンモニウムを少量ずつ水に添加し、続いて、過酸化水素水を少量添加して含浸用の溶液を調製した。含浸の際には、酸化チタン粉末の表面に満遍なくバナジン酸アンモニウム溶液を滴下し、全量滴下した後に室温で30分放置し、さらに、120℃で1時間乾燥した後に600℃で2時間焼成し、バナジウムを担持した比較例3の触媒を得た。
【0072】
〔窒素酸化物除去率測定法〕
窒素酸化物除去性能の測定法は、以下の通りである。
【0073】
調製した触媒粉末は、プレス成形後に粉砕し、これを10〜20mesh(1.7mm〜870μm)に分級して粒状触媒とした。使用前の粒状触媒の窒素酸化物浄化性能について、常圧流通式反応装置を用いて、以下の条件で測定した。
【0074】
ガス組成は、NO:200ppm、NH:240ppm、CO:12%、O:3%、HO:12%、N:バランスである。
【0075】
空間速度(SV)は、120000h−1である。
【0076】
反応温度は、350℃である。
【0077】
初期NOx除去率ηoは、下記式(1)により算出した。
【0078】
ηo(%)=(入口NOx濃度−出口NOx濃度)÷(入口NOx濃度)×100 (1)
初期NOx除去率ηoのときの速度定数koは、下記式(2)の関係がある。
【0079】
ko∝ln{1/(1−ηo/100)} (2)
〔リン被毒処理〕
以下の方法により、実際の排ガス中の被毒物質であるリン化合物を模擬した被毒後の触媒を調製した。
【0080】
触媒重量に対しP換算で4wt%相当と同量のリンを含むリン酸水溶液を粒状触媒に含浸した。室温で30分放置した後、120℃で乾燥後、350℃で2時間焼成してリン被毒処理後の触媒を得た。
【0081】
この処理で調製した被毒後触媒を用いて、リン被毒後NOx除去率ηを測定した。
【0082】
リン被毒後触媒によるNOx除去率ηは、下記式(3)により算出できる。
【0083】
η(%)=(入口NOx濃度−出口NOx濃度)÷(入口NOx濃度)×100 (3)
ηと速度定数kとの関係は、下記式(4)の通りである。
【0084】
k∝ln{1/(1−η/100)} (4)
劣化率k/kを下記式(5)から求めて耐毒性能を判定した。
【0085】
k/k=ln{1/(1−η/100)}/ln{1/(1−ηo/100)} (5)
ここで、劣化率k/kは、kを初期(リン被毒処理前)の触媒の速度定数、kをリン被毒処理後の触媒の速度定数としたときの速度定数比である。
【0086】
k/k=1の場合は触媒の劣化がなく、k/kの値が小さいほど劣化の程度が大きいことを意味する。
【0087】
本発明の実施例1〜4について、BET法による比表面積、全細孔容積、初期NOx除去率ηo、リン被毒後NOx除去率η、及び劣化率k/kを評価した結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜3は、TiO/MoO/V組成の3成分系である。初期NOx除去率が81〜87%、劣化率が0.7以上であり、本発明のNOx除去性能としては満足できる結果である。
【0090】
実施例4は、TiO/MoO組成の2成分系である。初期NOx除去率は72%、劣化率は0.7である。活性成分がMoOの単独の場合、MoOにVを加えた3成分系と比べて初期NOx除去率および劣化率ともに低下する。これがVの有無による効果の違いである。
【0091】
比較例1の触媒成分は、実施例1〜3と同一の成分、組成である。初期NOx除去率は79%、劣化率0.5であり、本発明の実施例1〜3と比べてリン被毒後の劣化の程度が大きい。比較例2の触媒はTiO/V組成であり、劣化率は0.5にとどまった。
【0092】
比較例3では劣化率は0.9と高値であった半面、初期NOx除去率が50%にとどまった。
【0093】
表1に示す初期NOx除去率と劣化率の違いを検討した結果を実施例2にて示す。
【0094】
実施例1〜4および比較例1〜3の各触媒の物性値を表2に示す。表2の値は焼成温度500℃での結果である。
【0095】
【表2】

【0096】
実施例1〜4においては、細孔径(細孔直径)が20〜3000Åの細孔容積(総細孔容積)が0.1cm/g以上であり、直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が50〜60Åであり、総細孔容積に対する、20〜100Åの細孔容積の割合(細孔容積率)が89〜97%と極めて高い値を示す。
【0097】
一方、比較例1においては、総細孔容積が0.2cm/g以上と大きな細孔容積を有する触媒であるが、平均細孔径が65Åであり、総細孔容積に対する20〜100Åの細孔容積率が54%であり、本発明によって有効と考えられる物性値の範囲外である。
【0098】
比較例2においては、総細孔容積が0.3cm/g以上であるが、平均細孔径が161Åであり、20〜100Åの細孔容積率が25%であり、これも本発明によって有効と考えられる物性値の範囲外である。
【0099】
また、比較例3においては、総細孔容積が0.1cm/g以下であるため、本発明によって有効と考えられる物性値の範囲外であり、表1に示す初期NOx除去率は目標値に達していない。
【0100】
なお、細孔直径20〜100Åの細孔容積が触媒1g当たり0.4cmより大きく、かつ、所望の活性を有する窒素酸化物除去触媒は、作製することが困難であった。
【符号の説明】
【0101】
1:排ガス、2:煙道、3:アンモニア、4:ノズル、5:触媒層、6:窒素酸化物浄化器、7:排ガス、8:煙道、9:ボイラ、10:脱硝設備、11:脱硫塔、13:電気集塵器、14:煙突、15:アンモニア製造設備、101:担体、102:活性成分、103:被毒物質、104:一酸化窒素、105:アンモニア、111:細孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体が細孔を有し、排ガス中の窒素酸化物を除去する活性成分を含む窒素酸化物除去触媒であって、前記細孔の平均直径が20〜100Åであり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が全細孔容積に対して80%以上であり、直径20〜100Åの前記細孔の容積が触媒1g当たり0.1〜0.4cmであることを特徴とする窒素酸化物除去触媒。
【請求項2】
前記担体が酸化チタンを含み、かつ、前記活性成分がジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びバナジウムの群から選択される少なくとも1種類の金属を含むことを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物除去触媒。
【請求項3】
前記酸化チタンに含まれるチタンのモル数に対する前記活性成分の割合がモル比率で1/4〜1/9であることを特徴とする請求項2記載の窒素酸化物除去触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒素酸化物除去触媒を用いたことを特徴とする窒素酸化物除去装置。
【請求項5】
燃焼器と排ガス流路とを含み、請求項4記載の窒素酸化物除去装置を備えたことを特徴とする脱硝システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2011−45849(P2011−45849A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197673(P2009−197673)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】