説明

窓ガラス若しくは散乱ガラスのクリーニングのために自動車内に設けられる装置

本発明は、自動車の窓ガラスのクリーニングのための装置に関し、この場合に洗浄ノズル(9)は水平な軸線を中心として旋回可能にノズルホルダー内に支承されている。ノズルホルダー(4)は自動車の車体薄板内に堅く取り付けられている。洗浄ノズル(9)の旋回によって、窓ガラスを洗浄液体で濡らそうとする噴霧域は調節されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラス若しくは散乱ガラスのクリーニングのために自動車内に設けられる装置であって、ノズルホルダーに保持された洗浄ノズル及び、該洗浄ノズルの傾斜角の調節のための手段を有している形式のものに関する。
【0002】
この種の装置は例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19652083A1号明細書により公知である。この場合、洗浄ノズルはノズルホルダー内に不動に組み込まれている。ノズルホルダーは車体薄板の切欠き部内に保持されていて、ばね部材によって、調節可能なストッパに対して緊定されている。ノズルホルダーは、調節可能なストッパと逆の側の領域に支承部を有している。ストッパの調節によって、ノズルホルダーは全体的に旋回させられ、その結果、洗浄ノズルの傾斜角は調節される。このようにして、洗浄ノズルの洗浄液体噴流は自動車内への組み込みの後に調節され、ひいてはクリーニングすべき窓ガラスの、隣接の車体部分に対する誤差が補償される。さらに、洗浄液体噴流は例えば自動車の事故の後にも改めて調節され得る。
【0003】
しかしながら前記公知の装置においては欠点として、ノズルホルダーは大きな寸法を有していて、自動車の車体薄板内に大きな切欠きを必要とし、或いはボンネットの下側に組み込まれねばならない。さらに該装置は、洗浄液体管路及び洗浄ノズルのための差し込み接続部を備えていて2つのシール箇所を有しており、該シール箇所はシール性を保証するために特別な処理を必要としている。
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の装置を改善して、ノズルホルダーの寸法を著しく小さくして、車体薄板のできるだけ小さい切欠き部内に装着できるようにすることである。
【0005】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成では、洗浄ノズルの傾斜角の調節のための手段は、ノズルホルダーに対する、洗浄ノズルの傾斜角を調節するように形成されている。
【0006】
前記構成によって、ノズルホルダーは車体薄板に不動に取り付けられ若しくは固定されるようになっている。ノズルホルダーの大きな寸法の支承部は、本発明に基づく前記構成によって不要である。従って、ノズルホルダーは極めて小さい寸法を有している。ノズルホルダーの取り付け若しくは固定のために、車体薄板は、洗浄ノズルへの洗浄液体供給のため並びにノズルホルダーの取り付け手段のための小さな切欠き部しか必要としない。従って車体薄板の切欠き部は、公知の装置に比べて極めて小さく形成されている。ノズルホルダーを車体薄板の切欠き部内に不動に組み込むことによって、該切欠き部は簡単にシールされ得る。従って本発明に基づく装置は、自動車の車体薄板の見える部分への取り付けのために適している。
【0007】
洗浄ノズルは、本発明に基づく有利な実施態様では洗浄ノズルを、ノズルホルダー内に配置された挿入体内に取り付けられ若しくは固定され、かつ該挿入体を回転可能に保持してあることによって経済的に製作される。挿入体内での洗浄ノズルの固定は、係止結合若しくは差し込み結合によって行われる。
【0008】
洗浄ノズルに対する天候の影響若しくは走行風の影響は、本発明の別の有利な実施態様に基づき、ノズルホルダーが洗浄ノズルの領域で該洗浄ノズルによって形成すべき洗浄液体噴流の直径よりも大きな開口を有していることによって排除されている。
【0009】
洗浄ノズルの噴霧能力への傾斜角度の影響は、ノズルホルダーが、流れ方向で見て挿入体及び洗浄ノズルの直前に、即ちすぐ上流に配置されていて洗浄媒体供給部と洗浄ノズルとを接続するために旋回領域全体にわたって形成された室を有していることによって、簡単に避けられている。
【0010】
組立を簡単にするために、本発明の別の有利な実施態様では、ノズルホルダーはきのこ形に形成されていて、きのこ形のノズルホルダーの傘部分の下面に車体薄板への結合のために設けられた係止手段を有している。このような構成手段はさらに洗浄ノズルのための、車体薄板の切欠き部の簡単な密閉を可能にしている。
洗浄ノズルは有利な実施態様では、挿入体内に配置された流体ノズルとして若しくは集中噴流ノズル(ポイント・ジェット・ノズル[point-jet nozzle])として形成されている。
【0011】
挿入体と洗浄ノズルとの結合部は、有利には係止結合部若しくは差し込み結合部として形成されている。
【0012】
挿入体と洗浄ノズルとの結合部は、挿入体を洗浄ノズルとして構成することによって避けられ、この場合に、挿入体は、洗浄液体噴流の形成のための切欠き部を有している。簡単な構成では、切欠き部は挿入体の縦軸線に対して垂直に延びる孔であり、該孔は通路として作用して洗浄液体噴流を生ぜしめるようになっている。孔は後から簡単に形成可能である。本発明の有利な実施態様では、このような孔は挿入体の製作の際に、例えば射出成形型の適当な成形に基づき形成される。
【0013】
ノズルの使用は、挿入体内の孔を下流に向かって先細にすることによって避けられる。孔のこのような先細は、連続的に若しくは段階的に行われていてよい。
【0014】
複雑なパターンの切欠き部を用いる場合には、円柱状若しくは円錐状或いは円錐台状の挿入体を2つの構成部分で形成すると有利である。この場合に、挿入体はその縦軸線に沿って2つの半円柱体若しくは半円錐体或いは半円錐台体に分割されており、該両方の半円柱体若しくは半円錐体或いは半円錐台体は1つの円柱体若しくは円錐体或いは半円錐台体の形成のために分割面で互いに接触している。切欠き部は有利には少なくとも1つの半円柱体若しくは半円錐体の分割面の領域に配置されている。両方の半円柱体若しくは半円錐体に設けられた成形エレメント、例えばピン若しくは孔は、半円柱若しくは半円錐体の相互の位置決めのための相互係合部として用いられている。
【0015】
半円柱体若しくは半円錐体の簡単な組立は、半円柱体若しくは半円錐体を半円柱体若しくは半円錐体の分割面の1つの縁部で互いに一体的に、その結果失われないように結合してある場合に達成される。このような結合は、フィルムヒンジ若しくは一体ヒンジによって簡単に行われ、該フィルムヒンジ若しくは一体ヒンジは半円柱若しくは半円錐体の製作に際して形成される。
【0016】
切欠き部の形成のために必要な型(工具)は、洗浄液体噴流の形成のための切欠き部を、1つの半円柱体若しくは半円錐体の分割面の領域に配置してあり、かつ別の半円柱体若しくは半円錐体の分割面をシール面として形成してある場合に、簡単に成形される。このような手段は、切欠き部が、振動する洗浄液体噴流の形成のための流動パターンとして形成されている場合に特に有利である。
【0017】
洗浄ノズルの傾斜角度を特に簡単に調節するために本発明の実施態様では、挿入体若しくは洗浄ノズルを円筒形若しくは円錐形或いは円錐台状に形成して、該挿入体若しくは洗浄ノズルに、回転工具の装着のための、ノズルホルダーの外側からアクセス可能な手段を設けてある。回転工具の装着のための手段は、最も簡単な実施態様ではねじ回しのために挿入体の片側に配置されたスリットである。
【0018】
本発明は複数の実施例を可能にするものである。本発明の基本原理を明確にするために、複数の実施例を図面に示して以下に詳細に説明する。図面において、
図1は、車体薄板の切欠き部内に固定されたノズルホルダーを備える本発明に基づく装置を示す図面であり、
図2は、図1の本発明に基づく装置の拡大断面図であり、
図3a及び図3bは、図1に基づく装置の各挿入体を示す図面であり、
図4は図1に基づく、2つの半円柱から形成された挿入体を示す図面である。
【0019】
図1には、自動車の窓ガラス1のクリーニングのための装置を示してあり、該装置は車体薄板3の切欠き部2内に配置されたノズルホルダー4を備えている。窓ガラス1は、自動車のヘッドライトの散乱ガラスであってもよい。ノズルホルダー4は、きのこ形に形成されていて、軸部として、洗浄液体管路(図示省略)の接続のための接続管片5を有している。傘部分内に挿入体6を次のように配置してあり、即ち挿入体の縦軸線は車両縦軸線に対して横方向に向けられている。傘部分の下面は、係止フックとして形成された係止手段7,8を有していて、ノズルホルダー4を移動しないように車体薄板3に保持している。挿入体6は、図2に示す洗浄ノズル9の保持のために用いられている。挿入体6は、ノズルホルダー4内に水平な軸線を中心として回転可能にかつ軸線方向移動不能に支承されていて、ねじ回しの差し込みのためのスリット10を有している。挿入体6の回動によって、図2に示す洗浄ノズル9によって形成される洗浄液体噴流14の傾斜角を調節するようになっている。洗浄液体噴流14の傾斜角の調節範囲は、図面に鎖線で示してある。
【0020】
図2は装置の、図1の拡大断面図である。図面から明らかなように、洗浄ノズル9は液体ノズルとして形成されていて、挿入体6に比べて著しく小さく形成されている。このような液体ノズルの洗浄液体噴流14は、著しく細く、かつ1つの平面内で振動させられるようになっている。ノズルホルダー4は洗浄ノズル9の出口領域に大きな開口11を有している。開口11は、洗浄ノズル9によって形成される洗浄液体噴流14の傾斜角の大きな調節範囲を可能にしていて、天候の影響及び走行風に対する洗浄ノズル9の保護のための縁部12を画定している。ノズルホルダー4内には、流れ方向で見て洗浄ノズル9の上流側に室13を配置してある。室13は、あらゆる傾斜角で洗浄ノズル9への洗浄液体の十分な供給を保証している。
【0021】
図3aは、図1に基づく挿入体6の斜視図である。円柱状の挿入体6は、一方の端面に回動のためのスリット10を有していて、洗浄液体噴流14の傾斜角を調節可能にしている。挿入体6の縦軸線15に対して垂直に切欠き部16を設けてある。切欠き部16は、孔によって形成されており、該孔は下流側へ、クリーニングすべき窓ガラス(図示省略)に向かって先細になっている。孔16の先細は領域17で段階的に行われている。このような孔は洗浄液体噴流14の形成のためのノズルとして機能するものである。
【0022】
図3bの挿入体6は、図3の挿入体6に対して一面で円錐形の外周輪郭によって異なっており、かつ他面で挿入体6の切欠き部16内には、集中噴流ノズルとして形成された洗浄ノズル9をクリップ止めしてある。
【0023】
図4に示す挿入体6は、2つの半円柱6a,6bから成っており、該半円柱はフィルムヒンジ18を介して互いに一体に結合されている。両方の半円柱6a,6bを互いに折り畳み重ね合わせることによって、両方の半円柱は分割面19a,19bで互いに接触して、その結果、一緒に挿入体6を形成している。半円柱6a,6bはそれぞれ開口20a,20bを有しており、該開口は室13に接続していて、洗浄液体の流過を可能にしている。半円柱6bの分割面19b内で切欠き部(凹設部)16は、開口20bに続いて流動パターン21として形成されている。流動パターン21は、開口20a,20bを経て流入する洗浄液体から、振動する洗浄液体噴流14を生ぜしめるように作用しており、該洗浄液体噴流は挿入体6から出口開口22を通って流出する。半円柱6aの分割面19aは、実施例では流動パターン21の閉鎖のためのシール面を形成している。接合状態での半円柱6a,6bの相互の位置決めのために、半円柱6bは突起部23を有しており、該突起部は半円柱6aの溝穴24内に係合している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車体薄板の切欠き部内に固定されたノズルホルダーを備える本発明に基づく装置の側面図
【図2】図1の本発明に基づく装置の拡大断面図
【図3A】図1に基づく装置の挿入体の実施例の斜視図
【図3B】図1に基づく装置の挿入体の別の実施例の斜視図
【図4】図1に基づく、2つの半円柱から形成された挿入体の斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 窓ガラス、 2 切欠き部、 3 車体薄板、 4 ノズルホルダー、 5 接続管片、 6 挿入体、 7,8 係止手段、 9 洗浄ノズル、 10 スリット、 11 開口、 12 縁部、 13 室、 14 洗浄液体噴流、 15 縦軸線、 16 切欠き部、 18 フィルムヒンジ、 19a,19b 分割面、 20a,20b 開口、 21 流動パターン、 22 出口開口、 23 突起部、 24 溝穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス若しくは散乱ガラスのクリーニングのために自動車内に設けられる装置であって、ノズルホルダーに保持された洗浄ノズル及び、該洗浄ノズルの傾斜角の調節のための手段を有している形式のものにおいて、前記手段はノズルホルダー(4)に対する、洗浄ノズル(9)の傾斜角を調節するように形成されていることを特徴とする、窓ガラス若しくは散乱ガラスのクリーニングのために自動車内に設けられる装置。
【請求項2】
洗浄ノズル(9)は、ノズルホルダー(4)内に配置された挿入体(6)内に取り付けられており、該挿入体(6)は回転可能に保持されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ノズルホルダー(4)は、洗浄ノズル(9)の領域で洗浄ノズル(9)によって形成すべき洗浄液体噴流の直径よりも大きな開口を有している請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ノズルホルダー(4)は、流れ方向で見て挿入体(6)若しくは洗浄ノズル(9)の直前に配置されていて洗浄媒体供給部と洗浄ノズル(9)とを接続するために旋回領域全体にわたって形成された室(13)を有している請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
ノズルホルダー(4)はきのこ形に形成されていて、きのこ形の傘部分の下面に車体薄板(3)への結合のために設けられた係止手段(7,8)を有している請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
挿入体(6)若しくは洗浄ノズル(9)は円筒形若しくは円錐形に形成されていて、回転工具の装着のための、ノズルホルダー(4)の外側からアクセス可能な手段を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
挿入体(6)は洗浄ノズル(9)として構成されており、この場合に、挿入体(6)は、洗浄液体噴流(14)の形成のための切欠き部(16)を有している請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
洗浄液体噴流(14)の形成のための切欠き部(16)は、孔から成っている請求項7に記載の装置。
【請求項9】
孔(16)は、下流に向かって連続的に若しくは段階的に先細になっている請求項8に記載の装置。
【請求項10】
挿入体(6)は該挿入体の縦軸線(15)に沿って2つの半円柱体(6a,6b)若しくは半円錐体に分割されており、該半円柱体(6a,6b)若しくは半円錐体は1つの円柱体若しくは円錐体の形成のために分割面(19a,19b)で互いに接触している請求項7に記載の装置。
【請求項11】
半円柱体(6a,6b)若しくは半円錐体は、分割面(19a,19b)の1つの縁部で互いに一体に結合され、有利にはフィルムヒンジによって互いに一体に結合されており、これによって半円柱体若しくは半円錐体は互いに折り重ねられた状態で1つの円柱体若しくは円錐体を形成している請求項10に記載の装置。
【請求項12】
洗浄液体噴流(14)の形成のための切欠き部(16)は、半円柱体(6a,6b)若しくは半円錐体の少なくとも1つの分割面(19a,19b)の領域に配置されている請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
洗浄液体噴流(14)の形成のための切欠き部(16)は、1つの半円柱体(6b)若しくは半円錐体の分割面(19b)の領域に配置されており、別の半円柱体(6a)若しくは半円錐体の分割面(19a)は、シール面(19)として形成されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
切欠き部(16)は、振動する洗浄液体噴流(14)の形成のための流動パターン(21)を成している請求項10から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
半円柱体(6a,6b)若しくは半円錐体に、成形部分(23,24)、有利にはピン若しくは突起部、或いは溝穴若しくは孔を配置してある請求項10から13のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503353(P2007−503353A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524353(P2006−524353)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051475
【国際公開番号】WO2005/021341
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】