説明

窓開き構造のためのマーカー

本発明は、窓開き構造を同定するための原形質膜マーカーに関する。本発明はまた、原形質膜マーカー及び光学顕微鏡を用いて窓開き構造を視覚化する方法にも関する。本発明はまた、窓開き構造に対する原形質膜マーカーを同定する方法にも関する。特に、本発明は、窓開き構造多孔板の成分としてのモエシンの特徴付けに関する。とりわけ、本発明は、原形質膜マーカーとしてのモエシンの使用に関する。内皮細胞の窓又は透過性の同定のための原形質膜マーカーとしてモエシンを使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮出願第60/628,085号(2004年11月15日提出)の優先権を主張する。上記出願の教示全体を参照により本明細書中に組み込む。
【0002】
本発明は、窓開き構造に対するマーカーに関する。本発明はまた、マーカー及び光学顕微鏡を用いて窓開き構造を視覚化する方法にも関する。本発明はまた、窓開き構造に対するマーカーを同定する方法にも関する。特に、本発明は、窓開き構造に対するマーカーとしてモエシンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
窓開き構造は、細胞間透過性を制御する、カベオラ、経内皮チャネル及び小胞血管細胞小器官とともにある、内皮細胞下の構造である。細胞間透過性は、内皮細胞を越える血漿成分の通過として説明される。血管−組織交流の正確な制御は、心臓血管系との器官生理学の適切な統合にとって重要である。したがって、自由な血液−組織交流に対する最初のバリアである微小血管の内皮細胞は、血管壁を横切る巨大分子及び液体の流れを媒介し監視するために、窓開き構造などの非常に特殊な特性を備えている。
【0004】
微細構造研究では、窓開き構造は、平均直径〜60nmの細胞間循環孔(肝臓類洞内皮内では〜125nmという大きなものであり得るが。)として説明される。窓開き構造は、内皮の最も薄い領域にあり、ここで、細胞プロファイルは40nmという小さなものであり、細胞膜の連続性を妨げることなく、細胞の全層に広がる。この孔を横切る物質は、細胞質の内容物と遭遇せず、迅速かつ、おそらくエネルギー効率のよい様式で輸送される。殆どの血管床において、窓開き構造は、中央の小塊において収束するおよそ8本の放射状の原繊維から構成される隔壁を含有し、それが孔を5−6nmの開口部へとさらに切り離す。
【0005】
窓開き構造は、「多孔板」(微小管が豊富な境界により取り囲まれている。)と呼ばれるおよそ50−100のクラスターで生じることが知られている。多孔板内で、窓開き構造は、通常、各孔間が正確な間隔で、ほぼ直線的に配置されていることが分かっている。
【0006】
Palada及びSimionescusは、窓開き構造の隔壁の内腔で見られるグリコカリックス内でカチオン化フェリチン(CF)が選択的に蓄積することを示すことにより、1960年代、70年代、80年代に窓開き構造組成の研究を開拓した。最近の研究により、窓開き構造隔壁の最初の既知成分として、内皮細胞特異的タンパク質、原形質小胞1タンパク質(PV−I)が同定された。PV−Iは、隔壁の一次構造成分を構成するホモ二量体を形成すると考えられている、60kDaタイプII膜貫通型糖タンパク質である。PV−I及び隔壁は、窓開き構造に特徴的なものではない。PV−I及び隔壁はまた内皮細胞カベオラ及び経内皮チャネル内にも存在する。カベオラが豊富な細胞における相互研究では、PV−Iと結合する新しいタンパク質を同定することができなかった(Stan,R.V.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol,2004.286(4):p.H1347−53)。
【0007】
窓開き構造の多孔板は特殊な膜構造であり、その分子組成について非常に興味がもたれてきたが、適切な研究ツールが存在せず、捕らえにくいままであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一部、窓開き構造の多孔板の新規成分及び窓開き構造形成及び機能に関する新規成分の発見に基づく。特に、本発明は、窓開き構造多孔板に対するマーカーの発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様において、本発明は、窓開き構造多孔板に対するマーカーを同定する方法に関する。ある実施形態において、本方法は、プロテオミクスを含む。別の実施形態において、本方法は、進化的ゲノミクスを含む。ある実施形態において、本発明は、窓開き構造多孔板の成分としてのモエシンの特徴を調べる方法に関する。別の実施形態において、本発明は、窓開き構造多孔板の成分として、又は窓開き構造を形成するプロセスの成分としての、パラレミンの特徴を調べる方法に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、窓開き構造を同定することにおける使用のためのマーカーに関する。ある実施形態において、このマーカーは、窓開き構造を同定するための原形質膜マーカーである。ある実施形態において、本発明は、窓開き構造を同定することにおける使用のための原形質膜マーカーとしてのモエシンに関する。ある実施形態において、本発明は、窓開き構造を同定することにおける使用のためのマーカーとしてのパラレミンに関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、窓開き構造を同定するためにマーカーを使用する方法に関する。ある実施形態において、本発明は、窓開き構造を同定するためにマーカーとしてモエシンを使用する方法に関する。別の実施形態において、本発明は、窓開き構造を同定するマーカーとしてパラレミンを使用する方法に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、マーカー及び光学顕微鏡を用いて窓開き構造を視覚化する方法に関する。ある実施形態において、本発明は、マーカーとしてモエシン及び光学顕微鏡を用いて窓開き構造を視覚化する方法に関する。別の実施形態において、本発明は、窓開き構造に対するマーカーの組み合わせ及び光学顕微鏡を用いて窓開き構造を視覚化する方法に関する。ある特定の実施形態において、マーカーの組み合わせは、モエシン及びPV−Iを含む。
【0013】
モエシンは、PV−Iを欠くがモエシンを含有する非隔壁化毛細血管床を探ることにおいて、その免疫反応性ゆえに有用であり得る。モエシンはまた、PV−I(抗モエシン標識と組み合わせてカベオラ及び窓開き構造に対する二重特異性を有するマーカーである。)に対する免疫反応性に基づき、より明瞭な窓開き構造の分類を行うために、窓開き構造に対するその特異性ゆえに有用であり得る。モエシンはまた、血管内皮増殖因子(VEGF)依存性の指標として、及び、内皮細胞における窓開き構造又は透過性の指標としても有用であり得る。モエシンはまた、病気の治療標的としても有用であり得る。
【0014】
膜−細胞骨格アダプター、モエシンと窓開き構造との間の連結は、重要な機能的関連性を有し、窓開き構造の生物発生の研究において新しい道を拓く。窓開き構造の新規成分としてのモエシンの発見は、光学顕微鏡による窓開き構造の視覚化のための重要な段階である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、窓開き構造の成分の同一性を決定する方法に関する。本発明はまた、窓開き構造の形成及び機能に関与する成分の同一性を決定する方法にも関する。特に、本発明は、孔の周縁又は窓開き構造多孔板を構成する分子を同定する方法に関する。窓開き構造誘導は、原形質膜への新規成分の補充に関与すると考えられている。
【0016】
ある態様において、本発明は、インビトロ窓開き構造誘導及び細胞内プロテオーム分析を含む、内皮細胞系における窓開き構造に対するマーカーを同定する方法を提供する。特に、本発明は、減法プロテオーム分析を用いて、内皮細胞系において窓開き構造に対するマーカーを同定する方法を提供する。
【0017】
ある実施形態において、本発明は、内皮細胞系において窓開き構造に対するマーカーを同定する方法を提供し、この方法は、
a)一群の窓開き構造誘導内皮細胞及び一群の窓開き構造非誘導内皮細胞から原形質膜を単離する段階;
b)一群の窓開き構造誘導内皮細胞から単離された物質において2次元ゲル電気泳動を行う段階;
c)一群の窓開き構造非誘導内皮細胞から単離された物質において2次元ゲル電気泳動を行う段階;
d)一群の窓開き構造誘導内皮細胞の二次元ゲルにおけるスポットの染色強度と一群の窓開き構造非誘導内皮細胞の二次元ゲルにおけるスポットの染色強度との間の倍数差を調べる段階;
e)スポットを切り出す段階;および
f)スポットに対して特定のタンパク質識別を割り当てるために、タンパク質の理論的トリプシン消化から、フィンガープリントのデータベースに対してスポットを解析する段階を含む。
【0018】
別の実施形態において、原形質膜を単離する段階は、シリカ単離法を含む。
【0019】
別の実施形態において、本方法は、質量分析を利用して、切り出されたスポットに対して特徴的な質量フィンガープリントを生成させる段階をさらに含む。
【0020】
別の実施形態において、本方法は、スポットの割り当てられたタンパク質識別を確認する段階をさらに含む。ある特定の実施形態において、、スポットの割り当てられたタンパク質識別を確認する段階は、候補タンパク質の関連する分画におけるイムノブロッティング抗体を含む。別の特定の実施形態において、スポットの検出を確認する段階は、誘導細胞におけるPV−1の特徴的なパターンに対する免疫蛍光法を基準物として含む。別の特定の実施形態において、スポットの検出を確認する段階は、光学顕微鏡を含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、進化ゲノミクス(比較ゲノミクス)を含む、内皮細胞において窓開き構造に対するマーカーを同定するための方法を提供する。複数の種に対して利用可能な完全なゲノム配列を用いて、比較ゲノミクスアプローチを用いて、有窓の生物に特に存在する遺伝子を同定する。プロテオミクスから同定されたタンパク質と、比較ゲノミクスから同定された遺伝子を比較する。共通のものは、窓開き構造の組成又は形成プロセスに関与する可能性が高い遺伝子標的を示す。
【0022】
ある実施形態において、内皮細胞系は脳内皮細胞腫株である。別の実施形態において、内皮細胞系は、bEND5内皮細胞系及びPy4.1内皮細胞系からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、内皮細胞系はbEND5内皮細胞系である。
【0023】
本発明の別の態様は、光学顕微鏡用いた窓開き構造を視覚化する方法に関する。
【0024】
本発明はまた内皮細胞系において窓開き構造を視覚化するための方法にも関し、この方法は、
a)抗モエシン抗体で抗内皮細胞系を染色する段階;
b)光学顕微鏡を用いて内皮細胞系を画像化する段階;
c)内皮細胞系において、モエシンに結合する蛍光標識された抗モエシンのレベルに基づき窓開き構造を視覚化する段階を含む。
【0025】
ある実施形態において、抗モエシン抗体は蛍光標識されている。
【0026】
本発明はまた、窓開き構造を検出するための原形質膜マーカーにも関する。ある態様において、本発明は、内皮細胞系において窓開き構造を検出するためのマーカーに関する。別の態様において、本発明は、インビボで窓開き構造を検出するためのマーカーに関する。
【0027】
ある実施形態において、窓開き構造を検出するためのマーカーは、モエシン、パラレミン、ラジキシン、コフィリン、トゥウィンフィリン、α−エノラーゼ、アネキシンII及びhnRNP K、ムスクリン、推定RNA結合タンパク質3ならびにヌクレオシドジホスフェートキナーゼBからなる群から選択されるタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、窓開き構造を検出するための原形質膜マーカーはモエシンを含む。ある特定の実施形態において、窓開き構造を検出するためのマーカーはパラレミンを含む。
【0028】
本発明はまた、窓開き構造を検出するための原形質膜マーカーの組み合わせにも関し、この原形質膜マーカーの組み合わせはPV−I及びモエシンを含む。
【0029】
本発明はまた、窓開き構造を同定するために、原形質膜マーカーとしてモエシンを用いる方法にも関する。ある実施形態において、本発明は、内皮細胞系において窓開き構造を同定するために、原形質膜マーカーとしてモエシンを用いる方法に関する。別の実施形態において、本発明は、インビボで窓開き構造を同定するために、原形質膜マーカーとしてモエシンを用いる方法に関する。
【0030】
本発明のある実施形態は、内皮細胞系における窓開き構造の指標としてモエシンを使用する方法を提供する。本発明の別の実施形態は、内皮細胞系での透過性に対するマーカーとしてモエシンを使用する方法を提供する。本発明の別の実施形態は、内皮細胞系における疾患の治療標的としてモエシンを使用する方法を提供する。本発明の別の実施形態は、インビボの疾患の治療標的としてモエシンを使用する方法を提供する。
【0031】
ある実施形態において、細胞内プロテオーム分析の第一段階は、原形質膜を細胞の他の部分から単離することを含む。原形質膜の単離により、誘導の非特異的影響が除かれ、分析すべき混合物のタンパク質の複雑性を最小限にし、関連のある変化が起こる細胞分画に集中させる。
【0032】
ある実施形態において、原形質膜の単離の段階は、全体として原形質膜の物理化学的特性に基づくアフィニティー精製法を使用する。本方法は、負に荷電した原形質膜に対する陽イオン性コロイドシリカの高親和性を利用する。シリカの結合において、原形質膜は、細胞の残りの部分からそれらを分離するために使用できるユニークな密度を獲得する(Jacobson,B.S.及びD.Branton,Science,1977、195(4275):p.302−4.Chaney,L.K.及びB.S.Jacobson,J Biol Chem、1983.258(16):p.10062−72;Stolz,D.B.及びB.S.Jacobson,J Cell Sci,1992.103(Pt1):p.39−51;Mason,P.W.及びB.S.Jacobson,Biochim Biophys Acta.,1985.821(2):p.264−76)。シリカは、負の電荷が特に高濃度であることから、膜の有窓の領域に誘引され得る。シリカはまた、負の電荷を適所に堅く保持することにより、膜の下部構造を安定化させ得る(Simionescu,N.M.Simionescu及びG.E.Palade,J Cell Biol.,1981.90(3):p.605−13)。シリカ被覆は、分画化した原形質膜の小胞形成を防ぎ、シリカが化学的に不活性であるため、何れの成分も変化させることなく時空間的なタンパク質及び脂質関係を維持することが報告されている(Schnitzer,J.E.ら、Science、1995.269(5229):p.1435−9;Schnitzer,J.E.ら、Proc Natl Acad Sci USA、1995.92(5):p.1759-63)。陽イオン性コロイドシリカ単離法を行うことにより、全細胞ホモジェネートよりも原形質膜が顕著に濃縮される。
【0033】
陽イオン性コロイドシリカ原形質膜単離の例を、ラトルンクリ−誘導及びビヒクル誘導END5及びPy4.1細胞培養物に適用したが、これを図1で図式化して示す。
【0034】
単離手段の過程の後、この手段において様々な段階から試料を得て、SDS−PAGE電気泳動及びウェスタンブロッティング後に、特定の細胞小器官マーカーの存在について生化学的に追跡する(図2)。全細胞、細胞内膜、原形質膜及び核及び原形質膜分画に対するタンパク質の等量の比較から、VE−カドヘリン及びPV−Iなどの原形質膜マーカーが漸進的に濃縮されることが示される。全細胞に対する原形質膜分画におけるVE−カドヘリン及びPV−Iの濃縮は約5倍から40倍であり、一方、GM130などのゴルジマーカーは約2倍から20倍の減少を示した。さらに、細胞内膜分画において原形質膜マーカーに対するシグナルは検出されず、このことから、そのユニークな新しい密度ゆえに、予測したように、第一の低速遠心段階の上清における原形質膜の損失及び核との原形質膜の共沈降がないか又は僅かであることが示された。
【0035】
TEMを用いて固定原形質膜ペレットからの薄片を調べることにより、微小構造的にシリカ単離法を確認した。非誘導及び誘導bEND5細胞の原形質膜ペレットからの低倍率画像から、「糸上のビーズ」のように見えるシリカ被覆原形質膜シートが両分画の主要な要素であることが示された(図3)。生化学データ及び光学顕微鏡観察と一致して、ペレットにおいて全細胞が見られることもあった(図4A)。非誘導細胞からの原形質膜の高倍率画像により、単離された膜シートの細胞質側に付着するカベオラの存在が分かった(図4B)。全細胞中のカベオラ及び細胞内細胞小器官の両方が形態的に無傷であると思われ、シリカは細胞の外側に限定された。シリカ粒子のサイズは平均直径20から50nmであり、したがって、窓開き構造を含む膜そのものの、存在するあらゆる微小構造をマスクした(図4C及び4D)。
【0036】
プロテオーム比較のために処理される物質の質を確認するために、光学顕微鏡により各誘導を確認し、各精製を生化学的に追跡した。単離プロトコールの開始時に培養ディッシュ中に含まれるカバースリップを固定し、隔壁マーカー、PV−I及び微小管に対して免疫染色を行った。細胞骨格、カベオラ又は細胞内細胞小器官を欠く細胞の細い領域におけるPV−I染色から、窓開き構造「多孔板」が示された。誘導bEND5及びPy4.1細胞において、チューブリン「スペーサー」により分けられた、密接に並んだ「島」のように特徴的な窓開き構造パッチが見られた(図5A)。
【0037】
各細胞タイプに対して、比較のためにラトルンクリン誘導物質及びビヒクル誘導物質を得た。bEND5細胞の場合、ビヒクルによる何らかの相違を正確に特定することができるように、完全に非処理の細胞(C1と呼ぶ。)及び誘導開始時(時間0)に原形質膜単離のために処理した細胞のさらなる対照を使用した。精製プロトコール進行の全過程にわたり様々な細胞内分画を一部採取し、PV−Iの濃縮及びゴルジマーカーGS28などの細胞内成分の減少について調べた(図5B)。
【0038】
ある実施形態において、窓開き構造の成分を同定する方法は、減法2D−ゲル電気泳動分析の段階を含む。十分な物質をプールし、ビヒクル誘導及び非誘導Py4.1細胞用の一群の3連ゲル及び、非処理、ビヒクル誘導及び誘導bEND5細胞に対する3連ゲル 3セットを作製した(図6及び図13)。ProGenesis(R)ソフトウェア(Prolific,Inc.Newark,CA)を用いて細胞タイプごとに全てのゲルを集合的に分析し、誘導及び非誘導試料におけるスポットの染色強度間の倍数差を得て、Studentのt検定を用いてそれらの差に対するp−値を得た(図7)。分析の第一回目において、1以上の次の基準を満たすスポットを選択した:a)染色強度の倍数増加が誘導試料において2を超える、b)何らかの倍数増加に対して、p−値が0.05未満である、c)スポットが誘導試料においてユニークである。質量分析のために選択した全スポットのまとめ倍数差及びp−値を付随する。)を図15で示す。
【0039】
ある実施形態において、窓開き構造の成分を同定する方法は、質量分析を用いて識別を割り当てる段階を含む。切り出したスポットをトリプシンで消化し、質量分析により分析して、各スポットに対して特徴的なペプチド質量フィンガープリントを生成させる(ただし、十分なタンパク質量が存在するならば)。次に、各スポットに対して特定のタンパク質識別を割り当てるために、タンパク質の理論的トリプシン消化からのフィンガープリントのデータベースに対して、各質量フィンガープリントをマッチングさせる。得られたトリプシン断片による理論的タンパク質識別の%範囲、その識別にマッチするトリプシン断片の分画、MOWSEスコア及び切り出したスポットのpI及び分子量と理論的識別のそれとの間の関係などの情報を全て考慮した後、特定の識別を割り当てる。複数の識別が割り当てられた場合、その識別は、可能性のある識別間のトリプシン断片パターンの類似性、又はゲルにおける1つのスポット中に複数のタンパク質が存在することの何れかにより説明できる。さらに、特に、あるタンパク質の翻訳後状態の集合物を示すクラスターにおいて見られる場合、個々のスポットがしばしば同じタンパク質に相当した。各試料におけるスポットに対する割り当てタンパク質識別の詳細を図14に示し、その機能に従い図16でまとめる。図16は、その機能に従い分類された候補タンパク質をまとめた表である。複数の機能を有するタンパク質の場合、最もよく知られたもののみを示す。行った全てのタイプの分析に対して、倍数変化及び付随するp−値を示す。総変化とは、試料における全てのゲルにわたる、対照細胞に対する誘導細胞のスポット強度の倍数変化を指す。カラムL対C2(1)、L対C2(2)及びL対C2(3)は、bEND5細胞実験1、2及び3に対してそれぞれ行われた個々のバッチ分析におけるスポット強度の倍数変化を指す。複数のタンパク質識別を1つのスポットに割り当てることができ(例えばbEND5 400)、同じタンパク質識別を複数のスポットに合わせることができる(例えばbEND5 526及び527)ことに留意されたい。ハイライトを付したものは、切り出し及びそれに続くタンパク質含量同定に対する特定スポットの選択を決定した倍数変化である。その細胞内局在又は機能について候補を分類するカテゴリーを図8においてパイチャートで説明する。
【0040】
ある実施形態において、窓開き構造の成分を同定する方法は、標的確認の段階を含む。ある特定の実施形態において、標的確認は、候補タンパク質に対するイムノブロッティングを含んだ。別の特定の実施形態において、標的確認は免疫蛍光法を含んだ。
【0041】
減法プロテオーム分析の所見を確認するために、候補タンパク質に対する抗体を用いて、関連する分画におけるイムノブロッティングを行った。2種類の条件におけるタンパク質の等量を比較することにより、コフィリン、α−エノラーゼ、ラジキシン、モエシン、アネキシンII及びhnRNP Kのタンパク質レベルの変化を評価した(図9A、9B)。
【0042】
調べた全ての誘導膜分画においてコフィリンが上方制御された。アネキシンIIは可変的に上方制御された。α−エノラーゼ及びhnRNP Kは両者とも、上方制御されたと思われた。モエシンのリン酸化型を主に認識する抗体を用いて調べることにより、モエシンのリン酸化型の増加が示される。モエシンに対する2d−ゲルスポットパターンは、「一連のスポット」の一部として現れ(図7)、複数のリン酸化状態において存在するタンパク質の特徴を示す。
【0043】
原形質膜濃縮が試料間の関連性のある差を明らかにするために必要であるという仮説と一致して、コフィリン濃縮は、非誘導細胞の原形質膜分画に対する誘導細胞の原形質膜分画の比較においてのみ明らかであり、一方で、全細胞ホモジェネートでの比較では存在しない(図9C)。主に細胞質性のタンパク質、α−エノラーゼに対して同様のパターンが見られるが、非誘導細胞に対し、誘導細胞においてこのタンパク質のより多くの部分が原形質膜分画とともに同時精製される(図9C)。α−エノラーゼの48kDaバンドに加えて、35KDaバンドは、bEND5及びPy4.1試料の両方において、対照及び誘導細胞の原形質膜分画でのみ常に現れる。
【0044】
次に、bEND5細胞における免疫蛍光法により、窓開き構造に関して、細胞内局在について、ウェスタンブロッティングにより確認された標的を調べた。誘導細胞におけるPV−Iに対する特徴的なパターンを、窓開き構造の存在及び出現に対する基準として使用した。
【0045】
アクチン結合タンパク質、コフィリン及びアネキシンIIは、窓開き構造パッチ間の隔壁として働く細胞の厚い領域と関連すると思われる(図10A−F)。対照及び誘導細胞の両方の核周辺領域においてα−エノラーゼが主に濃縮されていた。膜−細胞骨格アダプターであるモエシン及びラジキシンは、誘導細胞においてPV−Iによりマークされる同じ窓開き構造パッチに再分布される(図10C、10D)。モエシン及びラジキシンに対するヤギポリクローナル抗体を用いて得られる染色パターンは、ほぼ完全にPV−Iに対するものと重複し、モエシンに対するマウスモノクローナル抗体を用いてモエシンについてこれを確認した。
【0046】
減法プロテオーム分析は、高分解能の全プロテオーム分析よりも、より少なく、より操作しやすい一連の候補タンパク質が得られるため、有利である。このような差次的発現アプローチにおいて、候補セットのサイズは、比較下の試料間の差の程度及び研究者が設定するストリンジェンシー基準により変化し得る。アクチン破壊剤での処理が異なる同一の細胞タイプでのこの比較において、ユニークであり処理試料において2倍を超えて上方制御されるか、又は処理試料において、p<0.05の信頼区間で上昇するかの何れかのスポットのみを考慮し、一連の26個のユニークなタンパク質識別を得た。しばしば、同じスポットが複数の識別を有したが、これは、タンパク質データベースに対するアミノ酸配列ではなく、むしろ、質量フィンガープリントのマッチングに基づく、使用される識別割り当ての方法が絶対的ではないことに原因があり得る。2以上の識別の間のあいまいさが解決できなかった場合、識別割り当て法における限界及び2D−ゲルそのものの分解能を配慮し、それらは全て可能性ありとみなした。
【0047】
全体としては、26種類のタンパク質識別から、23種類が特徴的な遺伝子産物であり、2種類が機能的スクリーニングで既に同定されており(Ras抑制タンパク質1、インターフェロン活性化タンパク質205)、1つが既知のタンパク質(推定RNA結合タンパク質3)との構造類似性に基づき部分的に特徴が分かった。これらの報告された、又は場合によって推定の細胞内局在に基づくタンパク質の分類から、全部で54%が原形質膜及び同時精製細胞骨格と関連し、他の33%が様々な他の細胞質構造と関連していることが示された。一連の原形質膜関連タンパク質の中で、膜貫通領域を持つタンパク質はなく、代わりに、周辺に連結されているか、又は二重層に脂質を介して結合されていた。機能に関するタンパク質の分類から、候補の殆どが、膜のリモデリング又はエンドサイトーシスプロセスに関与し、一方、アクチン結合タンパク質、細胞骨格モーター及び転写又は翻訳に関与するタンパク質が殆どの割合を占めることが示された。
【0048】
窓開き構造に関して見た場合、候補タンパク質を2つのカテゴリーに分けることができる。即ち、構造成分及び窓開き構造発生のある段階に関与するもの、である。窓開き構造形成における細胞骨格リモデリングの役割が報告されている。[24−28]コフィリンは、単量体及び繊維状アクチンの両方に結合し、それらの尖端からフィラメントを脱重合することにより、及び、単量体GDP結合アクチンにおける自然なヌクレオシド交換を阻害することにより、アクチンフィラメント分解を増加させることが報告されている。[29、30]。トゥウィンフィリン(又はタンパク質チロシンキナーゼ9)は、アクチン単量体を隔離し、ヌクレオチド交換を妨げる能力を有し、これは、単量体アセンブリーを阻害すると考えられている[30、31]。トランスゲリンは、あまり特徴が分からないアクチン結合タンパク質候補であるが、報告によると、一見したところコフィリン及びトゥウィンフィリンの役割とは逆に、架橋アクチンフィラメントを凝集させるのに関与する[32、33]。これらの内在性アクチン結合タンパク質は、おそらくこのプロセスを駆動する、外部から添加されるラトルンクリンAを補助するものとして、窓開き構造形成に必要なアクチンフィラメントの分解に関与し得る。
【0049】
ミオシン及びキネシンは、細胞内で働く、それぞれアクチンフィラメント又は微小管上を動く分子モータータンパク質である。両者とも、重鎖及び軽鎖のオリゴマーとして見られ、重鎖はモータードメインとして働き、軽鎖は、ミオシンの場合制御の役割を有し、又は、キネシンにおいては、細胞内局在及び輸送物の選択を決定する[34−36]。軽鎖のみがこのスクリーニングにおいて同定されたが、全タンパク質機能ユニットを考慮する。ミオシン及びキネシンは、有窓になろうとしている領域へ、又は領域から、小胞及び細胞小器官を運ぶことにより、このプロセスを触媒し得る。ラトルンクリンAは、カベオラの内在化及び微小管に沿ったそれらの動きを誘導することが報告されている[37]。
【0050】
細胞骨格分解及び細胞小器官の動きはさておき、窓開き構造発生の一部として、連続構造から、多数の孔により中断される非連続構造への、膜そのもののリモデリングが含まれる。原形質膜からある内部細胞小器官への膜サイクリングの手段として、エンドサイトーシスは、このような膜リモデリングに対する有望なメカニズムであり、これに関連して、腫瘍プロモーター Nm23は、接着結合のダイナミン介在エンドサイトーシスに必要であることが分かっている[39]。パラレミンは、原形質膜活性及びその細胞増殖及びプロセス形成誘導能の部位での膜の細胞質面との結合を介した、原形質膜ダイナミクスに関わる別のタンパク質である[40]。ERM(エズリン−ラジキシン−モエシン)タンパク質ファミリーを代表するラジキシン及びモエシンは、膜−細胞骨格アダプターとしての役割を介して、アクチン分解及び原形質膜リモデリングの基本プロセスを結び付けることができる[41]。ウェスタンブロッティングを用いて、上方制御されているものとして、及び免疫蛍光法により、窓開き構造多孔板の一部であるものとしての両方で、候補タンパク質を確認した。
【0051】
接着斑成分の質量分析に基づく試験において、hnRNPなどのRNA結合タンパク質の同定は驚くべきものとなった。同じ試験において、免疫蛍光法によるこれらの候補タンパク質の確認から、接着斑アセンブリーの最初の段階における拡散開始部位の成分としての新規機能が浮き彫りとなった[44]。窓開き構造発生の過程において、基質への接着でもまたリモデリングが起こる。有窓の細胞からの接着斑の特徴である典型的なビンクリン染色がないことから、接着斑が分解される必要があることが示唆される。候補タンパク質hnRNP Kは、その新しく報告された機能の基本的に逆である、このようなプロセスに関与し得る。
【0052】
エクソソームと呼ばれるいくつかの小型のエキソサイトーシス小胞のプロテオームに関する報告から、この試験において同定された候補タンパク質の多くについて、独立して確認を行った[45]。38種類の同定タンパク質のリスト中のミオシン、ERMタンパク質、キネシン、α−エノラーゼ、翻訳開始因子及びアネキシンIIとともに隔壁タンパク質PV−Iが存在することから、窓開き構造の構造への同様の構造的状況におけるそれらの間の関係が示唆される。
【0053】
この試験は、このような細胞小器官のタンパク質補体を定義するために、同じ細胞の細胞小器官欠乏状態と、細胞小器官が豊富である状態との減法プロテオミクス比較を最初に使用するものであった。この試験はまた、窓開き構造多孔板のタンパク質を発見し、確認することに最初に成功した試みであった。しかし、PV−Iと同様に、モエシン及びラジキシンは、窓開き構造に対してユニークではなく、様々な他の細胞構造の一部を形成する。同定された、ERMタンパク質と窓開き構造との間の関係は、我々の知識を広げるためのベースとなり得る。
【0054】
本明細書中に記載の窓開き構造多孔板の新たに同定された成分のうちの2つであるモエシン及びラジキシンは、ERM(エズリン−ラジキシン−モエシン)タンパク質ファミリーのメンバーであり、これらは、表層細胞骨格と原形質膜との間のアダプターとして働くことが知られている[66]。3種類の密接に関連があるタンパク質である、エズリン[67]、ラジキシン[68]及びモエシン[69]は、関連タンパク質メルリン[70、71]とともにERMファミリーを形成し、より大きな、4.1タンパク質スーパーファミリーに属し、このメンバーは、そのアミノ末端のFERM(4.1、エズリン、ラジキシン、モエシン)ドメインを特徴とする[70、72−74]。ERMタンパク質のN末端ドメインは、およそ85%の相同性を有していて、保存性が高く、内在性膜タンパク質と直接又は間接的に相互作用することに関与してる[75、76]。〜300残基N末端ドメインに続き、伸長したα−へリカルドメイン、その後、〜80残基のC末端繊維状アクチン(F−アクチン)結合ドメインが続き、これらは、ERMタンパク質の中で保存があまり高くない領域を表す[75、76]。神経線維腫症2腫瘍抑制遺伝子の産物であるメルリン[70、71]は、N末端FERMドメインを含有し、原形質膜においてERM相互作用因子(interactor)の一部を共有するが、F−アクチン結合ドメインをそのC末端において欠く[75]。それにもかかわらず、やはりFERMドメイン中のアクチン結合領域を介してF−アクチンと相互作用することが報告されている[77、78]。
【0055】
報告された機能的冗長性は、ERMタンパク質間の構造類似性が高いことと一致する。ERMタンパク質は、培養細胞において同時発現される[66、76、79、83]。構成的に活性のある[84−86]又はドミナントネガティブ[87−89]なタンパク質型の使用から、細胞極性及び形態形成におけるそれらの重要な役割が説明される。ERMタンパク質は、細胞の形の決定、接着、運動性、細胞質分裂、食作用から、シグナリングカスケードとの膜輸送の統合にわたる領域の機能に関わる[75]。関連タンパク質メルリンは、先述の機能の多くを共有している[90]。
【0056】
ERMタンパク質機能の制御は、これらの構造のレベルで起こると考えられ、次いで、特定の細胞内局在へと移る。FERMドメインとC末端ドメインとの間の阻害相互作用により、ERMタンパク質を単量体として維持し、これらを細胞質に閉じ込める[91、92]。FERMドメインを介したホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート(PIP2)との相互作用が起こり、その後、C末端ドメインの保存的スレオニン残基でリン酸化が起こることにより、膜及びアクチン結合部位の両方がマスクされると考えられる[93−95]。分子間ならびに分子内で阻害相互作用が起こり得るが、オリゴマー状態の重要性は現在のところ不明である[85、91、96]。リン酸化及びリン脂質結合は、Rhoシグナルカスケードの下流にあると考えられている[93、97-99]が、一方、Racの下流のERM機能もまた報告されている[100]。ERMタンパク質もまた、正[101]又は負[102]の制御因子の何れかとして、Rho上流で機能することが分かっており、このことから、フィードバックメカニズムの存在が示唆される。
【0057】
出願者らは、窓開き構造多孔板の新規成分の特徴を述べる。インビトロ及びインビボにおいて、窓開き構造内のERMタンパク質モエシンの存在を支持する証拠が蓄積された。bEND5細胞系において、細胞内分布、リン酸化状態及びタンパク質の界面活性剤溶解性を評価した。さらに、窓開き構造形成のタイムコース及び免疫沈澱実験により、窓開き構造発生におけるモエシンの潜在的役割を検討した。
【0058】
殆どの培養細胞において全ERMファミリーメンバーが存在すること、及び窓開き構造の形成を起こしやすい細胞系における特異的なERMファミリーメンバーの共存から、各膜の細胞内分布における研究が促進された(図11)。エズリン、ラジキシン、モエシン又は関連タンパク質メルリンに対して、ラトルンクリン誘導bEND5細胞を免疫染色した。窓開き構造局在を解明するために、多孔板をマークする対比染色として抗PV−1(MECA−32)を使用した。報告されている機能的冗長性にもかかわらず、多孔板に局在したERMメンバーは、モエシン(図11、A−C)及びラジキシン(図11、J−L)のわずか2種類であった。対照的に、エズリン(図11、D−F)及びメルリン(図11、G−I)は、多孔板から排除されていると思われ、代わりに、これらの間の細胞質アームに限定されていた。
【0059】
培養内皮細胞において窓開き構造に対してERMファミリーメンバー及びメルリンにより示される特異性が、インビボでの有窓の毛細血管床の分析において反映された。眼の脈絡毛細管枝は、隔壁タンパク質PV−Iに対する免疫染色により視覚化できる隔壁のある窓開き構造[103、104]を有するので、これを分析の適切な組織として選択した。眼切片の3重染色において(図12)、2種類の異なる組織がすぐに見えた:即ち、既に報告されているような[105、106]エズリンに対する免疫反応のある網膜色素上皮(図12B、F)及び、PV−I及びモエシンの両方に対する免疫反応のある有窓の脈絡毛細管枝(図12A、C、E、G)である。低倍率(図12D)及び高倍率(図12H)両方における3種類全てのチャネルの重ねあわせから、同じ細胞タイプ内でモエシン及びPV−Iが共局在すること、及びエズリンが排除されていることが示された。
【0060】
その二重結合特性を考慮すると、モエシンは、窓開き構造発生内のコーディネーターとして作用し得、細胞骨格の調節を、原形質膜のリモデリングへと進ませる。あるいは、窓開き構造多孔板におけるモエシンの構造上の寄与は、T細胞シナプス[107]及び有足細胞足突起[115]において生じるように、特定のタンパク質を特別な膜微小ドメインに限定することに関与し得る。モエシンはまた、そのオリゴマー化特性を介して、有窓領域の細胞骨格の支持を与えること、又は、頂端と基底原形質膜との間の密接な連立を維持することにおいて、足場の役割も行い得る。興味深いことに、ERMタンパク質に関連する特別な細胞表面構造の圧倒的多数が、負の膜湾曲の共通特性を有する。腸の微絨毛、不動毛、有足細胞足突起及び膜を裏打ちする窓開き構造の全てが、鋭い負曲率を有する。
【0061】
別の態様において、本発明は、進化的ゲノミクス(比較ゲノミクス)を含む、内皮細胞系において窓開き構造に対する原形質膜マーカーを同定する方法を提供する。利用可能な複数の完全なゲノミクス配列を用いて、比較ゲノミクスアプローチを使用して、有窓の生物において特異的に存在する遺伝子を同定する。比較ゲノミクスから同定された遺伝子を、プロテオミクスから同定されたタンパク質と比較する。共通するものは、窓開き構造の組成又は形成プロセスに関与する可能性が高い遺伝子標的を示す。
【0062】
大量の局所的液体又は巨大分子の交換が必要である生物において窓開き構造が見られ始めた。ヒルの他に、何れの無脊椎動物でも窓開き構造は見られていなかった(Casley−Smith,J.R.The phylogeny of the fine structure of blood vessels and lymphatics:similarities and differences.Lymphology,1987.20:p.182−188)。窓開き構造が見られているか否かに従い、2種類のクラスに生物を分けた:即ち、有窓生物及び非有窓生物である。有窓生物には、ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ及びヒルが含まれる。非有窓生物には、酵母、シロイヌナズナ、C.エレガンス(センチュウ)及びDrosophila(ショウジョウバエ)が含まれる。図17は、窓開き構造特異的遺伝子を濃縮するための、比較アプローチのVenn Diagramを示す。10−10のカットオフE値でマッチするもの全てを見出すために、NCBI−BLASTPにより、ヒトのゲノムとゼブラフィッシュのゲノムを比較した。次に、NCBI−BLASTPにより、このマッチをシロイヌナズナゲノムと比較し、10−10のカットオフE値でマッチするもの全てを排除した。残りの遺伝子を窓開き構造関連遺伝子である可能性のあるものとして標識する。次いで、残りの遺伝子をショウジョウバエ、酵母及びC.エレガンスのゲノムと比較し、10−10のカットオフE値でマッチするものを排除して、窓開き構造に関与する遺伝子のリストを狭めた。図18は、有窓及び非有窓生物の比較を示す表である。比較ゲノム法及びプロテオミクス法の両方で、ムスクリン、推定RNA結合タンパク質3、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼB及びパラレミンが同定された(図19)。
【0063】
別の態様において、本発明は、多孔板成分を変化させるための方法に関する。ある実施形態において、多孔板成分を変化させるための方法は、モエシンのドミナントネガティブ型を投与することを含む。ある特定の実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型は、融合タンパク質である。別の特定の実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型は、緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合したモエシンの短縮N末端ドメインを含有する融合タンパク質(N−モエシン/GFP)である、別の特定の実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型をNIH3T3細胞に投与する。別の特定の実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型をbEND5細胞に投与する。
【0064】
ある実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型をbEND5細胞に投与することにより、細胞表面から生じる不規則で分枝した突起の形成を起こす。別の実施形態において、モエシンのドミナントネガティブ型をbEND5細胞に投与することにより、内在性モエシン又は内在性アクチンを欠失させる。
【0065】
図20は、多孔板組成とモエシンのドミナントネガティブ型(N−モエシン/GFP)を関連付ける実験を説明する。最初に、N−モエシン/GFPを誘導NIH3T3又は非誘導bEND5細胞に導入した。原形質膜全体でN−モエシン/GFPが発現され、それにより、細胞表面から生じる不規則で分枝した突起の形成が起こった。N−モエシン/GFPにより、また、細胞が内在性モエシン又はアクチンを欠くようになった。ラトルンクリンAで誘導したbEND5細胞に第二のN−モエシン/GFPを導入し、窓開き構造を形成させたところ、融合タンパク質の発現レベルに依存して、光学顕微鏡により一連の表現型が観察された。
【0066】
低発現細胞では規則的な多孔板が形成され、これは、微小管が豊富な境界に囲まれ、PV−I、モエシン及びアクチンフィラメントの不連続ネットワークを含有した。細胞表面全体でN−モエシン/GFPが発現され、これは、PECAMの存在と一致した。
【0067】
高発現細胞では、内在性モエシン(図20、A−C)、PV−I(図20、D−F)又はアクチンフィラメントの不連続ネットワークを欠く多孔板が形成された。N−モエシン/GFPは、多孔板と形態的に類似した細胞膜の領域に限定された(図20A、20D、20G、20J)。細胞周辺の細い領域で多孔板が生じ、それらを取り囲む、微小管及び細胞小器官が豊富な境界とははっきりと分かれた(図20J−L)。細胞表面全体でのPECAMの発現(図20、G−I)は変化しなかった。
【0068】
図20M−Oは、光学顕微鏡により見られる影響がGFPのみの存在によるものでないことに対して判断を下す実験を説明する。GFP含有プラスミド骨格をbEND5細胞で発現させ、窓開き構造を誘導した。高発現誘導細胞において、GFPは、細胞質全体に分布し、多孔板間に存在する微小管及び細胞小器官が豊富な領域に選択的であった(図20、M)。さらに、多孔板は、PV−I(図20、M−O)、モエシン及び繊維状アクチンの不連続ネットワークを含有する、定まった組成を与えた。
【0069】
不必要な血管形成及びその他の心血管系疾患と関連して、本来は非有窓である血管床において、窓開き構造が観察される。腫瘍の血管新生、糖尿病性網膜症の網膜血管及び炎症を起こした組織の毛細血管(関節リウマチなど)での窓開き構造の出現は、血管漏出及び浮腫に対する臨床的及び実験的所見と一致し、これにより、窓開き構造が血管透過性の脱制御に関与することが示唆される。窓開き構造直径もまた、肝硬変などの肝機能障害と併せて、及び、子癇前症などの腎臓疾患において変化することがわかった。
【0070】
本明細書中で上述したように、窓開き構造の理解に対する最初の細胞生物学的アプローチにおいて、窓開き構造多孔板の新規成分の特徴を調べた。膜−細胞骨格アダプター−モエシンと窓開き構造との間の関係は重要な機能的意味を有し、この細胞小器官の発生の研究において新しい道筋を開く。光学顕微鏡による窓開き構造の視覚化に対する重要な段階を遂行した。後で具体的に述べる抗モエシン標識と組み合わせて、PV−1(カベオラ及び窓開き構造に対して二重特異性を有するマーカー)に対する免疫反応性に基づく窓開き構造の分類がより明確となり得る。さらに、モエシン免疫反応性は、PV−1を欠くがモエシンを含有する、隔壁がない毛細血管床を調べるのに有用であり得る。
【0071】
実施例
次の実施例は、本発明のある有用な実施形態及び態様を説明するものであり、その範囲を限定するものとして解釈すべきものではない。同様の結果を得るために、代替物及び代替法を利用することができる。
【0072】
試薬
化学物質は全て、別段の断りがない限り、Sigma−Aldrich及びFlukaから購入した。カルシウム又はマグネシウム不含のリン酸緩衝食塩水(PBS)、LB培地、LB−寒天、EDTA、トリプシン/ヴェルセン、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、LeibovitzL−15培地は、CRUK又はEyetech Research Center central servicesより提供された。
【0073】
哺乳動物組織培養
【実施例1】
【0074】
哺乳動物細胞系の維持
別段の断りがない限り、培地及び関連製品は全て、Invitrogenより得た。細胞系及び培養条件を表3で示す。
【0075】
【表1】

【0076】
トリプシン/ヴェルセン溶液を用いて細胞系を全てトリプシン処理した。あるいは、DMEMで1:1希釈した10xトリプシンEDTA溶液(Invitrogen)が必要なbEND5及びPy4.1細胞以外は、1xトリプシンEDTA溶液(Invitrogen)を用いて細胞系をトリプシン処理した。
【0077】
9体積の液中でアンプルの内容物を希釈することにより細胞を凍結融解し、300gで細胞を沈殿させ、適切な体積の完全培地でペレットを再懸濁した。10%FBS、20%ウシ胎仔血清(FBS)及び完全培地70%中で細胞を凍結し、液体窒素中で保存した。
【実施例2】
【0078】
内皮細胞における窓開き構造誘導
内皮細胞において窓開き構造形成を誘導するための方法は、米国暫定特許第60/627,981号(その全体を参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。PBS中の1%ゼラチン(Sigma)溶液で室温にて30分間、カバースリップ及びディッシュを被覆した。100mmディッシュあたり1.5x10個細胞に相当する密度で、内皮細胞を一晩播種した。10μMのサイトカラシンB(Sigma)を用いて2時間、2.5μMのラトルンクリンA(Molecular Probes)で3時間、又は組み換えマウス75ng/mL VEGF(R&D Systems)で6から72時間及び10μMサイトカラシンBで2時間を組み合わせて、培養物に対する誘導を行った。誘導後すぐに、生化学又は形態学試験のために細胞を処理した。
【0079】
窓開き構造形成中のタンパク質合成を阻害するために、10μg/mLシクロヘキシミド(Sigma)とともに30分間、細胞をインキュベートし、次いで、VEGF(75ng/mL)で6時間、及びサイトカラシンB(10μM)で最後の2時間、誘導を行った。
【0080】
タンパク質技術
【実施例3】
【0081】
タンパク質濃度決定
マイクロタイタープレートにおいて、Bio−Radタンパク質アッセイを用いてタンパク質濃度を求めた。水中で希釈した試料及び水中で希釈したウシ血清アルブミン(BSA)標準物及び試料希釈液をBio−Radタンパク質アッセイ試薬とともに室温にて5分間インキュベートし、分光光度計においてOD595で吸収を測定した。BSA標準物質の吸収に基づき標準曲線を作成し、これを使用して、試料に対してタンパク質濃度を決定した。高濃度の界面活性剤を含有する緩衝液中のタンパク質に対して、界面活性剤適合Bio−Radタンパク質アッセイを用い、試料又は標準物を用いて同様に行い、OD795で吸収を測定した。
【実施例4】
【0082】
タンパク質沈殿
−80℃にて80%アセトン(v/v)中でタンパク質を一晩沈殿させ、続いて、4℃にて30分間、21000gで遠心分離した。所望の体積の緩衝液中でペレットを再懸濁した。
【実施例5】
【0083】
陽イオン性コロイドシリカを用いた原形質膜単離
本方法中の全段階を氷上又は予め4℃に冷却した遠心機中で行った。カルシウム及びマグネシウムを含有するPBS(Invitrogen)で2回、及びコーティング緩衝液(20mM MES、135mM NaCl、0.5mM CaCl、1mM MgCl、pH5.5)で1回、150mmディッシュ上で増殖させた細胞を洗浄した。次いで、コーティング緩衝液中の1%陽イオン性コロイドシリカ溶液(Donna Stolz教授(University of Pittsburg)より供与)8mLで2分間、細胞をコーティングした。コーティング緩衝液で1回洗浄した後、pH6.0から6.5に調整したコーティング緩衝液中の1mg/mLポリアクリル酸(Aldrich)溶液8mLで1分間、細胞をオーバーコーティングした。コーティング緩衝液で1回及び細胞溶解緩衝液(完全EDTA不含プロテアーゼ阻害剤錠剤、Rocheを添加した、2.5mMイミダゾール、pH7.0)で1回、細胞を洗浄した後、細胞溶解緩衝液中で15分間インキュベートした。誘導細胞の細胞溶解緩衝液に、2.5μMラトルンクリンAを添加し、インキュベーション中、有窓の表現型を維持した。総量2mLの細胞溶解緩衝液中で細胞を剥離し、きついペストル付きの7mLダウンス型組織グラインダー(Wheaton)中で20回出し入れすることにより細胞溶解を行った。位相差顕微鏡によって細胞を調べることにより、細胞溶解物を確認した。シリカ被覆原形質膜及び核を900gで10分間沈殿させた。細胞内膜を得るために、Optima TLX Ultracentrifuge(Beckman Coulter)のTLA 100.3ローター中で100,000gで30分間上清を遠心分離した。BenzonaseグレードII(Merck BDH)20μLを添加した細胞溶解緩衝液1mL中で原形質膜及び核ペレットを再懸濁し、ダウンス型組織グラインダーにおいて細胞溶解緩衝液中の100%Nycodenz 1mLとともにホモジェナイズした。細胞溶解緩衝液中の70%Nycodenzの0.5mLクッション上にホモジェネートを重ね、さらに2mL細胞溶解緩衝液の層を加え、その後、Optima L−80 Ultracentrifuge(Beckman Coulter)のSW55 Tiローター中で60,000gで30分間、沈殿させた。シリカ被覆原形質膜を含有するペレットを細胞溶解緩衝液で3回洗浄し、シリカ細胞溶解緩衝液(3.4%SDS、120mM Tris pH6.8)中で15分間シリカ被覆膜を沸騰させることにより、膜タンパク質を可溶化した。残ったシリカを21000gで沈殿させ、可溶化原形質膜を含有する上清をスナップ凍結し、−80℃にて保存した。品質管理の目的で、精製の途中で様々な分画から試料を採取し、シリカ細胞溶解緩衝液中で可溶化し、シリカ被覆原形質膜ペレットとして処理した。150mmディッシュをPBSで2回洗浄し、剥離し、細胞を200gで沈殿させ、上述のような300μLシリカ細胞溶解緩衝液中でペレットを細胞溶解することにより、全細胞溶解物を調製した。可溶化細胞分画の等量に、それぞれ0.1M及び5%の最終濃度までDTT及びグリセロール(EM Science)を添加し、SDS−PAGEゲル電気泳動で分離した。
【実施例6】
【0084】
細胞の段階的抽出(differential extraction)
60mmディッシュで増殖させた細胞をPBSで素早く洗浄し、次いで、抽出緩衝液(10mM Tris pH8.0、150mM NaCl、2mM EDTA、完全EDTA−不含プロテアーゼ阻害剤錠剤、Roche及び0.1%、0.2%、0.5%又は1%Triton X100、EM Science)0.5mLを用いて氷上で30分間抽出した。細胞を剥離し、4℃にて30分間21000gで遠心分離することにより、不溶性物質を沈殿させた。界面活性剤可溶物質をアセトン沈殿させ、沈殿可溶性物質又は不溶性物質の何れかから回収したペレットを同体積の1xSDS試料緩衝液中で再懸濁し、SDS−PAGEゲル電気泳動で分離した。
【実施例7】
【0085】
免疫沈降
100mmディッシュで増殖させた細胞をPBSで素早く洗浄し、次いで免疫沈降緩衝液1mLとともに氷上で30分間インキュベートした。次の免疫沈降緩衝液を用いた:
IP緩衝液1:20mM Tris HCl pH7.5、0.1%Triton X100(EM Science)、10%グリセロール(EM Science)、完全EDTA−不含プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche);
IP緩衝液2:10mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、0.1%NP−40、1mM DTT、完全EDTA−不含プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche);
RIPA緩衝液:10mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1%Triton X100(EM Science)、0.5%SDS、5%デオキシコール酸ナトリウム、完全EDTA−不含プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche);
段階的抽出緩衝液:10mM Tris pH8.0、150mM NaCl、2mM EDTA、完全EDTA−不含プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche)、0.1%Triton X100(EM Science)。
【0086】
細胞を剥離し、4℃にて30分間21000gで遠心分離することにより、不溶性物質を沈殿させた。上清のタンパク質濃度を測定し、細胞溶解物500μgを抗体5μgとともに4℃にて一晩インキュベートした。免疫沈降緩衝液でタンパク質GセファロースTM4 Fast Flow(Amersham Biosciences)ビーズを3回洗浄し、1:20(v/v)希釈で、細胞溶解物を4℃にて1時間インキュベートした。4℃にて16000gで5分間遠心分離することにより、免疫複合体及びビーズを分離した。このビーズを免疫沈降緩衝液で3回洗浄し、2xSDS試料緩衝液40μLとともに10分間沸騰させることにより、免疫複合体を溶出させ、SDS−PAGEゲル電気泳動により分離した。
【実施例8】
【0087】
V1.6.1次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
Bio−Radミニゲルアセンブリーキット及びNational Diagnosticsからのアクリルアミド溶液を用いて、1から1.5mmの厚さでゲルを注いだ。分離ゲルを次のように調製した(表4参照):
【0088】
【表2】

【0089】
ゲル溶液10mLにつき、10%APS(Sigma)100μL及び10μL TEMED(Sigma)を添加して、重合化を促進した。
【0090】
1.3mL ProtoGel、2.5mL ProtoGelスタッキング緩衝液、6.1mL 脱イオン化HO及び同量のAPS及びTEMEDを上述のように混合することにより、スタッキングゲルを調製した。
【0091】
0.35M Tris HCl、pH6.8、10%SDS、0.6M DTT、30%グリセロール及び0.012%ブロモフェノールブルーを含有する6x保存溶液として、SDS試料緩衝液を調製した。1x又は2x試料緩衝液中で95℃にて5分間試料を煮沸した後、ゲルに載せた。
【0092】
Tris−グリシン緩衝液(25mM Tris、250mMグリシン、pH.3、0.1%SDS)中で、70−180Vでゲルの泳動を行った。
【実施例9】
【0093】
ウェスタンブロッティング
電気泳動による分離後、セミドライブロッター(Bio−Rad)を用いて、タンパク質をHybondTM(Amersham Biosciences)ニトロセルロース膜上にブロットした。トランスファー緩衝液(400mLの総体積中、80mL MeOH、32mL Tris−グリシン緩衝液、10%SDS溶液0.4mL)中に20分間、膜及びWhatmanペーパー片を予め浸漬しておいた。トランスファー緩衝液中でゲルを短時間インキュベートした後、6枚のWhatmanペーパーの間に、膜を電気ブロッティング装置の陽極に向けて、ゲル及び膜をサンドイッチ状に挟んだ。ゲルあたり120mAで1時間(1mmの厚さのゲル)又は1.5時間(1.5mmの厚さのゲル)、トランスファーを行った。ブロッキング緩衝液(PBS中5%非脂肪ドライミルク)とともに、室温にて2時間、又は4℃にて一晩、ブロットをインキュベートした。ブロッキング緩衝液中で一次抗体を希釈し、室温にて1−2時間、又は4℃にて一晩、一次抗体を適用した。次の一次抗体を用いた:マウス抗GS28(1:100;BD Biosciences)、ウサギ抗PV1(1:1000;CRUK)、ラット抗MECA−32(1:500;Developmental Studies Hybridoma Bank)、マウス抗チューブリン(1:5000;Sigma)、マウス抗アクチン(1:2000;クローンAC−74;Sigma)、マウス抗カベオリン1(1:1000;BD Biosciences)、ヤギ抗モエシン(1:1000;Santa−Cruz)、マウス抗モエシン(1:1000;BD Biosciences)、ヤギ抗ラジキシン(1:1000;Santa−Cruz)、マウス抗エズリン(1:1000;Sigma)、ウサギ抗p−モエシン(1:1000;Santa−Cruz)、ウサギ抗コフィリン(1:1000;Cytoskelton)、マウス抗アネキシンII(1:1000;BD Biosciences)、ヤギ抗エノラーゼα(1:100;Santa−Cruz)、ヤギ抗hnRNP K(1:100;Santa−Cruz)、ウサギ抗メルリン(1:1000;Dr.Wallace Ip(University of Cincinnatiより供与)、マウス抗GM130(1:250、BD Biosciences)、ラット抗VE−カドヘリン(1:1000;BD Biosciences)。ブロッキング緩衝液中で5分間の洗浄を3回行った後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体を同様に希釈し、室温にて1時間適用した:ヒツジ抗マウスIgG(1:1000;Amersham Biosciences)、ロバ抗ウサギIg(1:1000;Amersham Biosciences)、ヤギ抗ラット(1:1000;Amersham Biosciences)、ウサギ抗ヤギ(1:2000;Jackson Immunoresearch)。ブロッキング緩衝液中でブロットを2回洗浄し、最後にPBSで1回洗浄した。強化化学発光(Amersham Biosciences)によりHRP反応産物を検出した。WINDOWS用のScion Image(Scion Corporation)を用いて、バンドの密度定量を行った。
【実施例10】
【0094】
等電点電気泳動及び二次元SDS−PAGE電気泳動
シリカ被覆原形質膜から溶出させたタンパク質をアセトン沈殿させ、40mM Tris、7M尿素、2Mチオ尿素及び1%一般用界面活性剤、pH10.4(細胞膜及び細胞小器官膜溶解試薬;Sigma)中で可溶化し、トリブチルホスフィンで還元し、10mMアクルアミド(acrlamide)で室温にて90分間アルカリ化した。2回目のアセトン沈殿後、7M尿素、2Mチオ尿素及び2%CHAPSでペレットを可溶化し、11cm pH3−10 固定化pH勾配(IPG)ストリップ(Proteome Systems、Sydney,NSW,Australia)において、タンパク質40μgをIEFにかけた。IEF後、6M尿素、2%SDS、50mM Tris−アセトン緩衝液(pH7)、0.01%ブロモフェノールブルー中でIPGストリップを平衡化し、6−15%Gel ChipsTM(Proteome Systems)におけるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ゲルは全て、Sypro(R)Ruby(Molecular Probes)中で染色し、蛍光撮像装置(Alpha Innotech)においてCCDカメラにより撮像した。
【実施例11】
【0095】
タンパク質消化、MALDI分析及びバイオインフォマティクスデータベース検索
タンパク質スポットを自動的に検出し、Xcise装置(Shimadzu Biotech)を用いて切り出した。150μL 25mM重炭酸アンモニウム、pH8.2、50%v/vアセトニトリルでゲル片を2回洗浄し、次いで、100%アセトニトリルを添加することにより脱水し、風乾した。20μg/mol重炭酸アンモニウムの2mM中のトリプシン(Promega)を各ゲル片に添加し、30℃にて16時間インキュベートした。超音波破砕によりペプチドを抽出した。溶液を自動的に脱塩し、Xcise装置上でZip Tips(Millipore)を用いて濃縮し、Axima(Kratos)MALDI標的プレート上にスポッティングした。AximaCFR(Kratos)を用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)により、トリプシン処理ペプチドのペプチド質量フィンガープリントを作製した。
【0096】
バイオインフォマティクスツールのBioinformatIQ統合スイート(Proteome Systems)により、スペクトルを自動的に分析した。NCBIの理論的トリプシン消化物を含有するデータベース及びSwiss Prot配列データベースとピークリストを比較することにより、タンパク質識別を割り当てた。%範囲、MOWSEスコア、ペプチドマッチの数、ピーク強度及び、2Dゲル上のタンパク質の位置とのpI及び分子量の一致を基にして、タンパク質の同一性を評価した。
【0097】
免疫標識
【実施例12】
【0098】
固定又は非固定マウス切片における免疫組織化学
−20℃のメタノール中でスライドを10分間透過処理し、湿度室でブロッキング溶液(10%ロバ又はヤギ血清(Sigma)、0.5%Triton X100、1%ウシ血清アルブミン(Sigma)、PBS)中で30分間ブロッキングした。次の一次抗体を使用した:ヤギ抗モエシン(1:25;Santa−Cruz)、ウサギ抗エズリン(1:100;Upstate)、ラット抗MECA−32(1:100;Developmental Studies Hybridoma Bank)、ラット抗マウスCD31(1:300;クローンMEC13.3;BD Biosciences)。一次抗体溶液80μLを各スライドに湿度室にて1時間適用した。各5分ずつ3回、血清不含のブロッキング溶液中でスライドを洗浄した。二次抗体Alexa488−標識ヤギ抗ウサギ又は抗ラットIgG(1:1000;Molecular Probes)、Alexa633標識ヤギ抗ラットIgG(1:500;Molecular Probes)及びCy3−標識ロバ抗ヤギIgG(1μg/mL、Jackson Immunoresearch)に対して、同じように行った。ネガティブ対照として、一次抗体を省き、通常の方法で二次抗体インキュベーションを行った。3回洗浄した後、DAPI入りのベクタシールド(Vector Laboratories Inc.)を用いてスライドを載せた。
【実施例13】
【0099】
カバースリップでの免疫蛍光法
−20℃メタノール中で8分間、又は室温にて4%パラホルムアルデヒドで15分間の何れかで、カバースリップ上の細胞を固定した。パラホルムアルデヒド固定した細胞の場合、固定後、PBS中で5回洗浄し、PBT(0.1%Triton X100、PBS)中で3分間透過処理した。ブロッキング溶液(10%ヤギ又はロバ血清(Sigma)、0.2%魚皮ゼラチン(Sigma)、PBS)中でカバースリップを15分間ブロッキングした。次のように、ブロッキング溶液中で一次抗体を希釈した:ラット抗MECA−32(1:100;Developmental Studies Hybridoma Bank)、マウス抗チューブリン(1:500;Sigma)、マウス抗アクチン(1:200;クローンAC−74;Sigma)、マウス抗カベオリン1(1:100;BD Biosciences)、ウサギ抗カベオリン(1:100;BD Biosciences)、ヤギ抗モエシン(1:50;Santa−Cruz)、マウス抗モエシン(1:100;BD Biosciences)、ヤギ抗ラジキシン(1:25;Santa−Cruz)、ウサギ抗エズリン(1:100;Upstate)、マウス抗エズリン(1:100;Sigma)、ウサギ抗p−モエシン(1:100;Santa−Cruz)、ウサギ抗コフィリン(1:100;Cytoskelton)、マウス抗アネキシンII(1:100;BD Biosciences)、ヤギ抗エノラーゼα(1:100;Santa−Cruz)、ヤギ抗hnRNP K(1:100;Santa−Cruz)、ヤギ抗nm23H2(1:100;Santa−Cruz)、ウサギ抗メルリン(1:100;Dr.Wallace Ip(University of Cincinnatiより供与)、マウス抗GM130(1:100;BD Biosciences)。パラフィルム片上の一次抗体溶液50μLにカバースリップを裏返しにして載せ、室温にて30分間インキュベートし、最後に各5分間ずつ3回、血清不含のブロッキング溶液中で洗浄した。次の二次抗体に対して同様の手段を行った:Alexa488標識ヤギ抗ラット、抗マウス、又は抗ウサギIgG(1:1000;Molecular Probes)、Alexa633標識ヤギ抗ラット又は抗マウスIgG(1:500;Molecular Probes)、Alexa546標識ヤギ抗ウサギIgG(1:500;Molecular Probes)、Cy3標識ロバ抗ヤギIgG(1μg/mL;Jackson Immunoresearch)、Cy3標識ロバ抗ラットIgG(0.5μg/mL;Jackson Immunoresearch)。F−アクチンを視覚化するために、Alexa546−、Alexa488−又はAlexa633標識ファロイジン(1:50;Molecular Probes)を二次抗体調製物に添加した。Alexa488標識DNaseI(1:500;Molecular Probes)を用いてG−アクチンを検出した。ネガティブ対照として、一次抗体を省き、二次抗体インキュベーションを通常通り行った。血清不含のブロッキング溶液中で各5分間ずつ3回洗浄した後、DABCO(Sigma)入りのMOWIOL(Calbiochem)を用いてスライドにカバースリップを載せた。
【実施例14】
【0100】
走査電子顕微鏡のための生細胞標識
カバースリップ上の細胞を素早く氷上に移し、ブロッキング溶液(Leibovitz L−15培地、0.2%グリシン、1.5%FBS)とともに30分間インキュベートし、その後、抗体希釈液(L15培地、1%BSA、0.25%魚皮ゼラチン)中の一次抗体を用いて30、免疫標識した。次の一次抗体を用いた:ウサギ抗PV1(1:400;CRUK)、ラット抗マウスPECAM(1:100;クローンMEC13.3;BD Biosciences)。L15培地中で細胞を3回洗浄し、次のように、抗体希釈液中で希釈した二次抗体とともに45分間インキュベートした:EMヤギ抗ウサギIgG10nm Gold(1:40;BBInternational)、EMヤギ抗ラットIgG5nm Gold(1:40;BBInternational)。L15培地中で3回洗浄した後、0.08Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の3%グルタルアルデヒド及び1%パラホルムアルデヒド中で細胞を2時間固定した。
【実施例15】
【0101】
ペプチド競合
抗体に対するペプチドの10000:1モル比で、抗体を作製したペプチド(モエシンペプチド;BD Biosciences)又は無関係のペプチド(SNAP−25;BD Biosciences)を用いて抗体をインキュベートすることにより、マウス抗モエシン抗体のペプチド競合を行った。室温にて4−5時間、穏やかに回転させながら複合体をインキュベートし、Optima TLX 超遠心機(Beckman Coulter)のTLA 100.3ローターにおいて、16℃にて1時間、100000gで遠心分離した。上述のように免疫蛍光法に対して上清を使用した。
【実施例16】
【0102】
光学顕微鏡
次の機器及びソフトウェアパッケージを用いて画像を捉えた:
1)LSM510レーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss);63x1.40NA Plan−Achromat油浸対物
2)TCS SP2スペクトル共焦点顕微鏡(Leica);40x1.25NA Plan−Achromat油浸対物;63x1.4NA Plan−Achromat油浸対物;100x;Leica共焦点ソフトウェアバージョン2.5
3)Widefield DMRA4顕微鏡(Leica);orca ER2カメラ(浜松フォトニクス);Metamorphソフトウェア(Universal Imaging Corporation)
4)MZFL III蛍光実体顕微鏡(Leica);Retiga Camera(Q−Imaging);OpenLab3.1.7(Improvision,Inc.)
Adobe Photoshop 7.0(Adobe Systems Inc.)を用いてデジタル画像を処理した。
【0103】
電子顕微鏡
【実施例17】
【0104】
走査電子顕微鏡
2%パラホルムアルデヒド(EMグレード;Electron Microscopy Sciences)、2.5%グルタルアルデヒド(Sigma)、0.1M カコジル酸ナトリウム中で室温にて1時間、カバースリップ上の細胞を固定し、その後、2%パラホルムアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム中で維持した。処理の準備ができたら、0.1Mカコジル酸ナトリウム中でそれらを2回洗浄し、カコジル酸緩衝液中の1%四酸化オスミウム(Agar Scientific Ltd.)中で後固定した。蒸留水中で2回洗浄した後、一連のエタノール溶液(50%、60%、70%、80%、90%、100%、100%、それぞれ5分ずつ)で脱水した。ヘキサメチルジサラザン(HMDS;Sigma)中に5分間、2回浸漬し、フィルターペーパー上に置いて、乾燥させた。
【0105】
1%四酸化オスミウム水溶液を用いて、生細胞標識後に固定した細胞を1時間、後固定し、水中で1回洗浄し、濃度が上昇していく一連のエタノール(50%、70%、90%、100%、100%、100%、それぞれ5分ずつ)により脱水した。上述のようにHMDSを用いて乾燥させた。
【0106】
カーボン接着マウント(Agar Scientific Ltd)を用いて、10mmスタブ(Agar Scientific Ltd)にカバースリップを載せた。シルバーダグ(Silver dag)(Agar Scientific Ltd)を片方の端に添加した。Polaron SC7640 High Resolution Sputter Coatter中の金又は、Gattan681 Ion Beam Coater中のカーボンで標本を被覆し、JEOL JSM−6700電界放出走査EM下で調べた。
【0107】
透過型電子顕微鏡
【実施例18】
【0108】
ホールマウントTEM
二塩化エチレン(Gilder;Electron Microscopy Sciences)中の0.5%Formvar(Ted Pella,Inc.)溶液中で400メッシュニッケルグリッド(Gilder;Electron Microscopy Sciences)を被覆することによりホールマウントTEMに対するFormvarグリッドを用意した。カバースリップ上にグリッドを置き、BAF400D High Vacuum Freeze−Etching System(Balzers)においてカーボン被覆し、細胞培養において使用する前にUV殺菌した。
【0109】
0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中の1.25%グルタルアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)及び2.5%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)中で細胞を室温にて1時間、又は4℃にて一晩固定した。0.2Mカコジル酸ナトリウム中で5分間の洗浄を
3回行った後、カコジル酸緩衝液中の1%四酸化オスミウム(Electron Microscopy Sciences)中で30分間細胞を後固定した。0.2Mカコジル酸ナトリウム中でさらに2回洗浄し、蒸留水中で2回洗浄した後、濃度が上昇していく一連のエタノールで細胞を脱水した。この脱水は、50%、70%及び85%エタノール中で5分間のインキュベーションを1回、及び95%及び100%エタノール中で5分のインキュベーションを2回行うことにより行った。HMDS中に3分間カバースリップを浸漬し、風乾させた。AMTデジタル捕捉システムを備えたJEOL1010TEM下でグリッドを調べた。
【実施例19】
【0110】
薄片のTEM
予め65℃に温めた寒天(Electron Microscopy Sciences)に5μLガラスピペットを浸し、氷上で冷却することにより寒天チューブを調製した。細胞溶解緩衝液及び2xEM固定液(5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、0.2Mカコジル酸ナトリウム)の等量中で4℃にて20分間、900gで遠心分離することにより、シリカ被覆原形質膜を固定した。膜ペレットを再懸濁し、処理の準備ができるまで、2%パラホルムアルデヒド、0.2Mカコジル酸ナトリウム中で保存した。900gで30分間遠心することにより、保存した膜を0.2Mカコジル酸ナトリウム中で2回洗浄した。寒天チューブ中に膜を置き、温かい寒天で密封した。膜の入ったチューブを0.2Mカコジル酸ナトリウムで10分間洗浄し、0.1Mカコジル酸ナトリウム中の1%四酸化オスミウムで1時間、後固定した。0.2Mカコジル酸ナトリウムで10分間、2回洗浄し、蒸留水で1回洗浄した後、濃度が上昇していく一連のアセトン(50%、70%、85%、95%及び100%)で標本を脱水した。インキュベーションを7分間続け、一方で、95%及び100%アセトン段階を2回行った。2部のアセトン及び1部の凍結spurs樹脂の混合物を用いて45分間、次いで、1部のアセトン及び2部の凍結spurs樹脂の混合物を用いて60分間、標本の浸透を行った。最後に、100%の新鮮なspurs樹脂を用いて室温にて一晩浸透を行った。モールドにチューブを置き、60℃にて一晩インキュベートを行った。Ultracut UCT(Leica)を用いて切った70−100nm厚の切片を200又は300メッシュの銅グリッド(Gilder;Electron Microscopy Sciences)上に置いた。酢酸ウラニル(Ted Pella,Inc.)で20分間及びReynolds染色(硝酸鉛(Ted Pella,Inc.)及びクエン酸ナトリウム(Sigma)から調製。)で2分間、グリッドを染色し、その後、TEM下で調べた。
【実施例20】
【0111】
電子顕微鏡に対する立体学
10000の倍率で20から30のSEM画像を捉えた。カバースリップの中央から開始して、一方向にそって系統的に無作為にサンプリングし、200μmごとに画像を捉えた。細胞構造の占有が50%未満である画像を消去した。グリッド(2cm x 2cm四方)を各画像に重ね、多孔板上にあるグリッドの点の数(1群中10個を超える窓開き構造)に対して、何らかの細胞構造上にあるグリッドの点の数を数えた。次の式を用いて、窓開き構造の存在量を概算した:窓開き構造でカバーされる原形質膜の割合=多孔板上にあるグリッドの点の数/何らかの細胞構造上にあるグリッドの点の数。
【0112】
窓開き構造の密度を測定するために、10個の無作為多孔板中のμmあたりの窓開き構造の数を計算した;窓開き構造によりカバーされる原形質膜の割合をこれに乗じ、μm原形質膜あたりの窓開き構造の密度を概算した。
【0113】
ホールマウントTEMを用いた窓開き構造定量に対して、25000の倍率で画像を捉えた。ニッケルグリッドあたり12の画像を得て、試験あたり3つのニッケルグリッドを調べた。Adobe Photoshop 7.0で画像を開き、169個の点がある15mmグリッドを各画像に重ねた。SEMに対する立体的アプローチにおけるものとして、窓開き構造の存在量を計算した。
【実施例21】
【0114】
比較ゲノミクス
E≦10−10のコンピュータプログラムNCBI−BLASTP(Altschul,S.F.ら、Gapped BLAST及び及びPSI−BLAST:a new generation of protein database search programs.Nucleic Acids Res 1997.25(17):p3389−3402)を使用してアラインメントを行い、blosum62アミノ酸置換行列(Henikoff,S.及びJ.G.Henikoff.Amino acid substitution matrices from peptide blocks.Proc Natl Acad Sci USA、1992.89:p10915−10919)を用いた。ホモサピエンス、ゼブラフィッシュ、C.エレガンス、ショウジョウバエ(Drosophila melanganster)のタンパク質配列データベースをEnsembl(Hubbard,Tら、Ensembl 2005。Nucleic Acids Res.2005.33:pD447−D453)からダウンロードした。窓開き構造形成の有無により、これらの生物をグループ分けした。10−10のカットオフE値でBLASTPを用いて、ヒトにおけるタンパク質全てをゼブラフィッシュのタンパク質と比較した。この比較から、26476遺伝子のデータセットが得られた。次に、これらのタンパク質をシロイヌナズナ、酵母、C.エレガンス及びショウジョウバエのタンパク質全てと比較した。非有窓生物においてマッチがある遺伝子を候補から除外し、有窓生物に存在し、かつ、非有窓生物に存在しない遺伝子のみを残した。有窓生物に特異的な代表的遺伝子として、6661個の遺伝子が同定された。次に、遺伝子データセットをプロテオミクス研究により同定されたタンパク質と比較した。10−10のE値カットオフでBLASTPプログラムを用いた。比較ゲノミクスとプロテオミクス法との間で、次の4種類のタンパク質が共通であるとして同定された:ムスクリン、推定RNA結合タンパク質3、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼB及びパラレミン。
【0115】
【表3】








【0116】
参照による組み込み
本明細書中で参照する特許及び科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を確立する。本明細書中で引用する、全ての交付済み特許、特許出願、公開外国出願及び参考文献は、それぞれが、その全体において参照により組み込まれることが具体的かつ個別に指示されるように同じ程度まで、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0117】
均等物
当業者は、常套的な実験以外のものを使用せずに、本明細書中で具体的に述べられる具体的な実施形態に対する数多くの均等物を認識するか、又は確認するであろう。かかる同等物は、次の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0118】
この特許の書類は、カラーで作成された少なくとも1個の図面を含有する。カラー図面を伴うこの特許の複写は、リクエスト及び必要料金の支払いによりPatent and Trademark Officeより提供される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、陽イオン性コロイドシリカ単離プロトコールの概略図である。ディッシュ上で陽イオン性コロイドシリカの溶液により細胞を被覆し、続いてポリアクリレートによる被覆によってこれを中和する。次に、ダウンス型ホモジェナイザーを用いて低張緩衝液中で細胞を溶解し、様々な細胞成分を遠心分離する。次いで、ナイコデンツ勾配を介した超遠心分離段階により、核及びシリカ被覆原形質膜を含有する低速ペレットを分画化し、シリカ被覆原形質膜のペレットを得る。
【図2】図2は、bEND5(A)及びPy4.1(B)細胞からの陽イオン性コロイドシリカ原形質膜単離の生化学的分析を示す。各分画からのタンパク質10μgをSDS−PAGE電気泳動及び、指示されたタンパク質に対する抗体を用いたウェスタンブロッティングにかける。bEND5及びPy4.1細胞両方の原形質膜分画において、原形質膜マーカー、PV−I及びVE−カドヘリンが豊富であり、ゴルジマーカー、GM130が乏しいことが分かる。
【図3】図3は、非処理(A)及びラトルンクリン処理(B)内皮細胞からの、原形質膜ペレットのTEM試験を示す。シリカ被覆原形質膜シートは、両ペレットにおいて主要な構造である。バー=2μm。
【図4】図4は、高倍率でのシリカ単離原形質膜ペレットのTEM試験を示す。(A)原形質膜ペレットの全細胞混入物質を横切る横断面。(B)カベオラは、対照内皮細胞の原形質膜とともに損なわれずに単離される。(C)及び(D)ラトルンクリン処理内皮細胞からの原形質膜の高倍率画像から、シリカマスクが全て膜の微小構造下にあることが示される。
【図5】図5は、免疫蛍光法(A)及びウェスタンブロッティング(B)によるプロテオーム分析前の単離原形質膜の品質管理を示す。bEND5細胞に対する(A)で示される微小管を除く領域での窓開き構造パッチに対するPV−Iの特徴的な染色により、窓開き構造誘導が成功したことを観察した。抗PV−1標識(i)、抗チューブリン標識(ii)及び重ねあわせ(iii)を示す。(B.)対照(C)及びラトルンクリン誘導(L)Py4.1(a)及びbEND5(b)細胞の全細胞ホモジェネートに対して、原形質膜及び核(PM+nu)ならびに原形質膜(PM)分画において、PV−Iが濃くなり、GS−28が薄くなることにより、単離プロトコールの成功を観察した。bEND5細胞において、時間0(C1)で採取したさらなる対照をビヒクル誘導試料(C2)と区別することができる。
【図6】図6は、bEND5(A及びB)ならびにPy4.1(C及びD)細胞由来の、ビヒクル誘導対照(A及びC)及びトルンクリン誘導(B及びD)試料からの代表的な2Dゲルを示す。
【図7】図7は、Progenesisソフトウェアを用いたスポット強度計算を示す。(A)は、Py4.1細胞分析からのスポット659を示し、対照試料(480a、396a、560a、508a)と比較して、ラトルンクリン誘導試料(520b、550b、561b)において1.772倍高いものとして認識される。(B)は、Py4.1細胞分析からのスポット401を示し、これは、ラトルンクリン誘導試料において3.8倍高いことが認められるが、実際は、同じタンパク質の異なるリン酸化状態の特徴となる一連のスポットの一部である。
【図8】図8は、細胞内局在(A)及び機能(B)に関する、候補タンパク質の分類を示す。複数のカテゴリーに分類されるタンパク質については、これらの間で値を分けた。同じタンパク質について複数のアイソフォーム又はポリペプチド鎖が同定された場合、タンパク質は一度だけカウントした。
【図9】図9は、ウェスタンブロッティングによる候補タンパク質の妥当性を示す画像を示す。CPM(対照細胞の原形質膜)及びLPM(ラトルンクリン誘導細胞の原形質膜)からのタンパク質の等量をSDS−PAGE電気泳動で分離し、指示されるタンパク質をウェスタンブロッティングにより確認した。bEND5細胞分析からの標的を(A)で示し、Py4.1細胞分析からのものを(B)で示す。リン酸化モエシン、hnRNP K、コフィリン及びα−エノラーゼについて、誘導細胞での濃縮を確認する。α−エノラーゼ及びコフィリンについての、対照全細胞−ホモジェネートと誘導細胞の全細胞−ホモジェネートとの間の濃縮(CW、LW)に対する、対照膜分画と誘導細胞膜分画との間の濃縮(CPM、LPM)の比較を(C)で示す。細胞内膜(CIM、LIM)及び原形質膜及び核(CPM+N、LPM+N)についてのバンドもまた、コフィリンに対して示される。
【図10】図10は、免疫蛍光法による候補タンパク質の妥当性を示す画像を示す。PV−I(A、D、G、J)及び次の候補タンパク質:コフィリン(B)、アネキシン(E)、ラジキシン(H)及びモエシン(K)に対して、誘導bEND5細胞を染色した。対応する重ね合わせ(C)、(F)、(I)、(L)から、ラジキシン及びモエシンが、PV−Iで標識される同じパッチに局在し、一方、コフィリン及びアネキシンがこれらの領域には存在しないことが示される。
【図11】図11は、窓開き構造パッチ内のERMファミリーの分布を示す。モエシン(A)、エズリン(D)、メルリン(G)及びラジキシン(J)について誘導bEND5細胞を免疫染色し、窓開き構造の位置をマークするために抗PV−1(B、E、H、K)で対比染色を行った。抗体の組み合わせの重ね合わせをC、F、I、Lで示す。モエシン(A)及びラジキシン(J)は、PV−1染色とともに、窓開き構造(B、C)及び(K、L)にそれぞれ共局在すると思われ、一方、エズリン(D)及びメルリン(G)は、それぞれ細胞(E、F)及び(H、I)のPV−I陽性領域にはないと思われる(バー=20μm)。
【図12】図12は、インビボでのERMファミリーメンバーの分布を示す。モエシン(A、E)、エズリン(B、F)及びPV−I(C、G)に対する抗体を用いて、マウスの眼の切片における免疫組織化学を行った。低倍率(D)及び高倍率(H)の重ね合わせで見られるように、脈絡毛細管枝でモエシンがPV−Iと共局在する一方で、エズリンは、網膜色素上皮層に限定される。脈絡毛細管枝下の強膜において、モエシンとエズリンはある程度一致すると思われる。
【図13】図13は、プロテオーム分析に使用した試料をまとめた表である。
【図14A】図14は、減法プロテオーム分析からの、各試料におけるスポットについてタンパク質識別の割り当ての表である。
【図14B】図14は、減法プロテオーム分析からの、各試料におけるスポットについてタンパク質識別の割り当ての表である。
【図15】図15は、質量分析のために選択し、切り出したスポットの強度を、付随の倍数差及びp値とともにまとめた表である。
【図16】図16は、機能により分類した候補タンパク質をまとめた表である。カラムL対C2(1)、L対C2(2)及びL対C2(3)は、bEND5細胞実験1、2及び3についてそれぞれ行われた個々のバッチ分析におけるスポット強度の倍数変化を指す。ハイライトを付したものは、切り出し及びそれに続くタンパク質含量同定に対する特定スポットの選択を決定する倍数変化である。
【図17】図17は、窓開き構造特異的遺伝子に対する比較ゲノムアプローチを説明するVenn Diagramである。Venn Diagramは、ヒト、ゼブラフィッシュ及びシロイヌナズナゲノムを比較する。
【図18】図18は、有窓及び非有窓生物の遺伝的比較を示す表である。この表は、ヒト遺伝子の数について、遺伝子の数及び%を比較する。
【図19】図19は、比較ゲノミクス及びプロテオミクスの両方により同定されたタンパク質を示す表である。
【図20】図20は、多孔板組成に対する、モエシンのドミナントネガティブ型(N−モエシン/GFP)の実験を説明する。図20A−Cは、多孔板を形成し内在性モエシンを欠く高発現細胞を示す。図20D−Fは、多孔板を形成し、内在性を欠く高発現細胞を示す。図20A、20D、20G及び20Jは、N−モエシン/GFPが、多孔板と形態的に同様の細胞膜の領域に限定されたことを示す。図20J−Lは、多孔板が細胞周囲の細い領域に生じ、それらを取り囲む、微小管及び細胞小器官が豊富な境界とは異なったことを示す。図20G−Iは、細胞表面全体のPECAMの発現が変化しなかったことを示す。図20Mは、高発現誘導細胞において、GFPが細胞質全体に分布し、多孔板の間に存在する微小管及び細胞小器官が豊富な領域に選択的であったことを示す。図20M−Oは、多孔板がPV−I、モエシン及び繊維状アクチンの不連続ネットワークを含有する定まった組成を与えたことを示す。
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図25】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一群の窓開き構造誘導内皮細胞及び一群の窓開き構造非誘導内皮細胞から原形質膜を単離する段階;
b)一群の窓開き構造誘導内皮細胞から単離された物質において2次元ゲル電気泳動を行う段階;
c)一群の窓開き構造非誘導内皮細胞から単離された物質において2次元ゲル電気泳動を行う段階;
d)一群の窓開き構造誘導内皮細胞の二次元ゲルにおけるスポットの染色強度と一群の窓開き構造非誘導内皮細胞の二次元ゲルにおけるスポットの染色強度との間の倍数差を調べる段階;
e)スポットを切り出す段階;および
f)スポットに対して特定のタンパク質識別を割り当てるために、タンパク質の理論的トリプシン消化から、フィンガープリントのデータベースに対してスポットを解析する段階
を含む、内皮細胞系において窓開き構造に対するマーカーを同定する方法。
【請求項2】
質量分析を利用して、切り出されたスポットに対して特徴的な質量フィンガープリントを生成させる段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スポットの割り当てられたタンパク質識別を確認する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スポットのタンパク質識別を確認する段階が、候補タンパク質の関連する分画におけるイムノブロッティング抗体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
スポットの検出を確認する段階が、基準物としての誘導細胞におけるPV−1の特徴的なパターンに対する免疫蛍光法を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
内皮細胞系が、bEND5内皮細胞系及びPy4.1内皮細胞系からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
内皮細胞系が脳内皮細胞腫株である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
原形質膜を単離する段階がシリカ単離法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
a)抗モエシン抗体で内皮細胞系を染色する段階;
b)光学顕微鏡を用いて内皮細胞系を画像化する段階;
c)内皮細胞系において、モエシンに結合する蛍光標識された抗モエシンのレベルに基づき窓開き構造を視覚化する段階
を含む、内皮細胞系において窓開き構造を視覚化するための方法。
【請求項10】
抗モエシン抗体が蛍光標識されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
内皮細胞系が、bEND5内皮細胞系及びPy4.1内皮細胞系からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
内皮細胞系が脳内皮細胞腫株である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
モエシン、パラレミン、ラジキシン、コフィリン、トゥウィンフィリン、α−エノラーゼ、アネキシンII、ムスクリン、推定RNA結合タンパク質3、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼB及びhnRNP Kからなる群から選択されるタンパク質を含む、内皮細胞系において窓開き構造を検出するためのマーカー。
【請求項14】
マーカーが、窓開き構造に対する原形質膜マーカーである、請求項13に記載マーカー。
【請求項15】
マーカーが、モエシン及びラジキシンからなる群から選択されるタンパク質を含む、請求項13に記載のマーカー。
【請求項16】
モエシン及びPV−Iを含む、窓開き構造を検出するためのマーカーの組み合わせ。
【請求項17】
モエシン及びPV−Iを含むマーカーの組み合わせを視覚化する段階を含む、内皮細胞系において窓開き構造を同定するための方法。
【請求項18】
モエシン及びPV−Iを含むマーカーの組み合わせを視覚化する段階が光学顕微鏡を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
内皮細胞系が、bEND5内皮細胞系及びPy4.1内皮細胞系からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
内皮細胞系が脳内皮細胞腫株である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
PV−I及びパラレミンを検出する段階を含む、内皮細胞系において窓開き構造を同定する方法。
【請求項22】
減法プロテオーム分析を行う段階を含む、内皮細胞系において窓開き構造に対するマーカーを同定する方法。
【請求項23】
進化ゲノミクスを行う段階をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
進化ゲノミクスを行う段階を含む、内皮細胞系において窓開き構造に対するマーカーを同定する方法。
【請求項25】
有窓の細胞系に対してモエシンのドミナントネガティブ型を投与する段階を含む、有窓細胞系において多孔板組成を変化させる方法。
【請求項26】
有窓の細胞系が、NIH3T3細胞系及びbEND5細胞系からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項27】
モエシンのドミナントネガティブ型が融合タンパク質である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
モエシンのドミナントネガティブ型が、緑色蛍光タンパク質に融合させられたモエシンのN−末端ドメインを含む融合タンパク質である、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25】
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【公表番号】特表2008−520572(P2008−520572A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541403(P2007−541403)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/041187
【国際公開番号】WO2006/055488
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(506064913)(オーエスアイ)アイテツク・インコーポレーテツド (10)
【Fターム(参考)】