説明

立体地図作成方法

【課題】 現実に存在する2次元地図を用いて、地図の中の施設の3次元の情報を作り出し、立体地図データを自動的に作成する。
【解決手段】 次の(a) から(c) のいずれか1つまたは複数の組合せに基づいて地図の中の施設の高さや色等を決定する。
(a)2次元地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
(b)輪郭に対応する施設の属性
(c) 航空写真地図の中の当該輪郭に対応する部分の航空写真の色

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データベース単独又は地図データベースと航空写真とに基づいて、広い範囲の、現実に存在する3次元の施設のデータを自動的に作る立体地図作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地形グラフィックスデータと標高や土地利用形態などのデータとをデータベースに収録した地図情報システムが、地域に関する情報の収集と分析のために活用されている。
例えば、このような地図情報システムは、電子地図として市販されたり、車載ナビゲーション装置の道路地図データベースとして利用されたりしている。
【0003】
ところが、前記のシステムにおける地図情報は、通常、緯度経度で表わされる2次元平面データであるか、それに標高のデータが加わった3次元データであるにすぎず、ひとつひとつの建物や、公園、道路など(以下総称して「施設」という)の高さ(以下、単に「高さ」というと地上高を意味する。)のデータは地図情報の中に入っていない。その理由は、そのようなデータを入れると記憶データ量が膨大になるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、利用者の立場からいえば、3次元CG(コンピュータグラフィックス)処理された奥行きのある地図画像を見るためには、実際の施設の立体形状ないし高さデータが必要である。
また、施設の色彩や模様のデータが入っていれば、画面に表示したときに、より現実感に富んだ画像となる。
【0005】
そこで、本発明は、最小限の記憶データ量で、2次元の地図に含まれる施設の3次元情報を自動的に作成することのできる立体地図作成方法を実現することを目的とする。
また、本発明は、最小限の記憶データ量で、2次元の地図に含まれる個々の施設の色情報や模様情報を含む地図データを自動的に作成することのできる立体地図作成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書で、(a) 〜(f) を次のように定義する。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積、
(b) 地図の中の施設の属性、
(c) 地図の中の輪郭に対応する部分の航空写真の色、
(c1)地図の中の輪郭に対応する部分の側面の航空写真の色、
(d) 地図の中の輪郭に対応する部分のステレオ航空写真の高さ、
(e) 決定された施設の上面の色、
(f) 決定された施設の側面の色。
【0007】
図1は、地図データベースから写した地図の一部を示す図である。地図の中には多くの閉曲線(これらの閉曲線のいずれか1つ1つを「輪郭」という)が存在しており、輪郭は、同図Aに示すような正方形若しくは正方形に近い長方形のものもあれば、同図Bに示すような長方形のものもあり、同図Cに示すようなコーナーを切り落とした形状のものもある。また、大きな輪郭もあれば小さな輪郭もある。さらに、それぞれの輪郭には、地図の中の属性データ(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)が対応していることもある。
【0008】
(1) 本発明の立体地図作成方法は、 (a)に基づいて地図の中の施設の高さを決定する方法である(請求項1)。例えば、輪郭の大きさや面積に比例させて施設の高さを決定する。ただし、上限と下限を設定することが望ましい。
(2) 本発明の立体地図作成方法は、(a),(b)に基づいて地図の中の施設の高さを決定する方法である(請求項2)。
【0009】
この場合は、輪郭の大きさや面積、施設の属性により、その高さを決定する。請求項1記載の発明を取り入れて、当該属性の施設の大きさや面積を考慮して、施設の高さを変動させる。例えば、面積が大きな場合は、高さを若干高くする。また、同じ種類の施設が常に同じ高さになるのを防ぐために、同じ種類の施設の高さを数とおり設定し、その中から乱数や順序などで選択してもよい。
【0010】
(3) 本発明の立体地図作成方法は、地図の中の輪郭と航空写真との対応付けをし、 (c)に基づいて地図の中の施設の高さを求める方法である(請求項3)。
この場合は、航空写真をとり、地図の中の輪郭と航空写真との対応付けを行う。
そして輪郭に対応する部分の航空写真の色に基づいて地図の中の施設の高さを決定する。たとえば、色が特別な色(大地の色や草木の色)であれば、高さを0にする。色だけでは、すべての施設の高さが決定できないこともあるので、この場合は請求項1又は請求項2の発明を組み合わせることが望ましい。
【0011】
(4)本発明の立体地図作成方法は、(a)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する方法である(請求項4)。例えば、地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積が一定以下であれば、民家とみなし屋根瓦の色を用いる。複数あれば、それらの中から乱数や順序などにより選択する。また、決定できなかったものは色を乱数や順序などによって決定することが望ましい。
(5)本発明の立体地図作成方法は、(b)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する方法である(請求項5)。
【0012】
これによれば、施設の属性によって決まった色又は色群を割り当てる。例えばオフィスビルには白、グレー、ベージュ、公園は緑、空き地は大地の色などを割り当てる。色が複数ある場合は、乱数や順序により、色を決定する。
(6) 本発明の立体地図作成方法は、地図の中の輪郭と航空写真との対応付けをし、その上で、(c)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する方法である(請求項6)。
【0013】
この場合は、地図の輪郭に対応する航空写真の領域を切り出し、その領域の色をそのまま採用する。領域の中で一定でない場合は領域の中の全画素の色の平均値、その領域の重心における画素の色等を採用する。
(7)本発明の立体地図作成方法は、(a)に基づいて地図の中の施設の側面の色を求める方法である(請求項7)。
【0014】
施設の大きさ又は面積が数m×数m程度であれば民家であるとみなし、白、グレー、ベージュなどから乱数や順序で割り当てる。
(8)本発明の立体地図作成方法は、(b)に基づいて地図の中の施設の側面の色を求める方法である(請求項8)。この場合は、施設の属性によって決まった色又は色群を割り当てる。例えばオフィスビルには白、グレー、ベージュなどを割り当てる。割り当てられた色が複数ある場合は、乱数や順序により、色を決定する。
(9)本発明の立体地図作成方法は、地図の中の輪郭とステレオ航空写真との対応付けをし、その上で(c1)に基づいて地図の中の施設の側面の色を求める方法である(請求項9)。
【0015】
この場合は、地図の輪郭に対応するステレオ航空写真の領域を切り出し、その領域から垂直に近い面を抽出し、その面の色をそのまま採用する。面の中で一定でない場合はその面の全画素の色の平均値、その面の重心における画素の色等を採用する。
(10)本発明の立体地図作成方法は、(e) に基づいて地図の中の施設の側面の色を求める方法である(請求項10)。
【0016】
この場合はすでに決定された施設の上面の色をそのまま採用する。多少RGB値を変えてもよい。
(11)本発明の立体地図作成方法は、(a)に基づいて地図の中の施設の上面の模様を求める方法である(請求項11)。例えば、施設の大きさ又は面積が数十m×数m十程度であればオフィスビルであるとみなし、コンクリートの模様を割り当てる。施設の大きさ又は面積が数m×数m程度であれば民家であるとみなし、屋根瓦の模様を割り当てる。
【0017】
(12) 本発明の立体地図作成方法は、(b) に基づいて地図の中の施設の上面の模様を求める方法である(請求項12)。例えば、施設がオフィスビルであれば、コンクリートの模様を割り当てる。民家であれば、屋根瓦の模様を割り当てる。
(13)本発明の立体地図作成方法は、(e) に基づいて地図の中の施設の上面の模様を求める方法である(請求項13)。
【0018】
この場合はすでに決定された施設の上面の色にふさわしい模様を予めテーブルにしておき、その中から採用する。複数あれば乱数や順序を用いて決定する。
(14)本発明の立体地図作成方法は、(a) に基づいて地図の中の施設の側面の模様を求める方法である(請求項14)。例えば、施設の大きさ又は面積が数十m×数m十程度であればオフィスビルであるとみなし、煉瓦、コンクリート、大理石などから乱数や順序で割り当てる。施設の大きさ又は面積が数m×数m程度であれば民家であるとみなし、土壁の模様を割り当てる。
(15)本発明の立体地図作成方法は、(b)に基づいて地図の中の施設の側面の模様を求める方法である(請求項15)。
【0019】
例えば、施設がオフィスビルであれば、煉瓦、コンクリート、大理石などから乱数や順序で割り当てる。民家であれば、土壁の模様を割り当てる。
(16)本発明の立体地図作成方法は、(f) に基づいて地図の中の施設の側面の模様を求める請求項7から請求項10までのいずれかに記載の方法である(請求項16)。
【0020】
この場合はすでに決定された施設の上面の色にふさわしい模様を予めテーブルにしておき、その中から採用する。複数あれば乱数や順序を用いて決定する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明の立体地図作成方法によれば、2次元平面データを用いて、最小限の記憶データ量で、施設の立体形状、色、又は模様の立体地図データを自動的に作成することができる。したがって、この立体地図データを用いて3次元コンピュータグラフィックス処理を行えば、現実感に富んだ画像を見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、パーソナルコンピュータを用いて、3次元の施設のデータが入った立体地図データを作る本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
1.地図データの前処理
地図データの各輪郭を、ポリゴン(多角形)として扱えるようにするために、次のような前処理を行う。
【0023】
(1) 地図データが2次元ビットマップとして記憶されているとき
例えば国土地理院の「国土地理院数値地図10000総合」という地図ファイルに入っている地図データは、建物の敷地形状(原画像という)をビットマップデータとして記憶している。
この前処理手順では、原画像を構成するエッジ線にできるだけ近い多角形(ポリゴン)を決定し、それとともに、地図をメッシュ単位に区画する。なお、市販の住宅地図データなどで、ポリゴン化又はメッシュ化が行われている場合には、この処理は不要である。
【0024】
この前処理手順をフローチャート(図2)によって説明する。まず、地図データを読み込む(ステップS1)。そして、閉曲線すなわち輪郭を識別し、1つ1つの輪郭に識別番号を付与(ラベリング)する(ステップS2)。このとき、それぞれの輪郭で囲まれる部分のピクセル数(ピクセルとは画素のこと。輪郭の面積に相当する)、ピクセル座標の平均値(輪郭の中心に相当する)を求めておく。次に、輪郭の頂点座標を1からN(Nは決まった自然数であり、以下N=4の場合を説明する)まで取り出す(ステップS3)。具体的には、図3に示すように、輪郭の中心を基準にして上下左右に線を入れ、4区画に分割し、各区画の中で、中心から最も遠いピクセルa〜dをチェックする。
【0025】
CPU(中央処理装置)は、実際には、輪郭が何角形なのか予め分からない。しかし、通常四角形以上の多角形であると考えられるので、とりあえず、4個の頂点座標を求めることとし、実際にそれを超える頂点座標については、ステップS4,S5において逐次求めていくこととするのである。
ステップS4では、頂点を結んだ線Bと、原画像を構成するエッジ線Aとのずれを求める。具体的に説明すると、図4に示すように、頂点a,bが求まっているとし、頂点a,bを結んだ線分をBとする。原画像のエッジ線A上の各ピクセルA1,A2,A3,‥‥と、線分Bとの垂直距離を測り、それぞれの垂直距離がしきい値よりも大きいか小さいかを判断する。すべてしきい値よりも小さければ、頂点を追加する必要なしと判断して、ステップS6の立体地図作成処理に入る。しきい値よりも大きければ、垂直距離の一番長いピクセルを新たに頂点として追加する(ステップS5)。この新たな頂点の順番の付け方は、次のとおりである。当該新たな頂点から原画像のエッジ線Aに沿って両サイドにたどっていき、既に検出されている頂点に到達した時点で、当該新たな頂点を既に検出されている2頂点の間に入れる。以上のようにして、原画像の輪郭を頂点数と頂点座標が既知のポリゴンにすることができる。
【0026】
地図データのポリゴン化が完了すれば、ユーザが画面を見ながらマウスやキーボードを用いてメッシュ(一定の緯度経度で区画された長方形又は正方形)単位にファイルを分割し、立体地図作成処理を行い(ステップS6)、記憶媒体に記憶する。メッシュの大きさは、例えば、50m四方、250m四方、1km四方等とする。なお、先にメッシュ単位に分割してから地図データのポリゴン化を行い、その後立体地図作成処理を行ってもよい(以下(2) においても同様)。
【0027】
(2) 地図データが紙などの上に表示されているとき
この場合は、地図をスキャナで読み取る。その後、「(1) 地図データが2次元ビットマップとして記憶されているとき」と同様にして、ポリゴン化された地図データを得る。そして、前記と同様、メッシュ分割を行い、記憶媒体に記憶する。
2.航空写真の前処理
(1) ステレオ画像を用いないとき
航空写真をスキャナで読み取る。その後、メッシュ単位にファイルを分割し、記憶媒体に記憶する。この処理は、「1.地図データの前処理」でのメッシュ分割処理と同じ基準で行う。これにより、同一メッシュ同士で、地図と航空写真とを位置的に対応付けることができるようになる。なお、航空写真データのポリゴン化は行わない。
【0028】
(2) ステレオ画像を用いるとき
右目画像、左目画像をそれぞれスキャナで読み取る。そして、周知の立体認識処理をして高さ情報を含む航空写真のデータを得る(安居院 猛、長尾智晴「画像の処理と認識」昭晃堂、第151 頁〜第154 頁、1992年11月25日初版発行)。その後、メッシュに分割し記憶媒体に記憶する。ポリゴン化は行わない。
3.立体地図作成処理
(1) 航空写真を用いないとき
この場合は1.(1) 又は(2) で得られたメッシュ単位のポリゴン化された地図データに基づいて、施設の高さ、色、模様を決定する。
【0029】
図5は、ポリゴン地図データに基づいて立体地図データを作成する処理の流れを示すブロック図である。
CPUは、ポリゴン化された地図データを読み込み、バッファメモリに一時的に記憶させる(B1)。そして、この記憶された地図データに基づいて、施設の高さ、色、模様を決定する(B2,B3,B4)。また、決定された色に基づいて側面の模様又は上面の模様を決定する。
【0030】
決定の要因となるものは、
(g) ポリゴン地図の中の輪郭の形状
(a) ポリゴン地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
(b) ポリゴン地図の中の施設の属性
である。(g) の「輪郭の形状」は、具体的には輪郭を構成するポリゴンが何角形か(頂点数)により特定する。(a) の「輪郭の大きさ若しくは面積」は輪郭の中のピクセル数により特定する。(b) の「施設の属性」はもともと地図データの中に入っていればそのデータにより決定し、地図データの中に入っていなければ、ユーザが画面を見ながらマウスやキーボードを用いて一軒一軒属性を入力したり、住宅密集地などではマウス等で領域を指定してまとめて入力したりする。ただし、入力の手間がかかるので、「施設の属性」を決定の要因として利用しないことも可能である。
【0031】
決定基準は以下のとおりである。
(1-1)施設の高さの決定
(1-1-1)建物の属性が決まっていない場合
例えば、輪郭の形状が正方形又は正方形に近い場合、その正方形の一辺の長さを建物の高さとする。これは、建物は立方体であることが多いとの認識に基づいている。輪郭の頂点数が一定数よりも多いとき(複雑な形状)は、高さを一定にすることもできる。
【0032】
また、輪郭の大きさ若しくは面積を測定し、建物の高さを大きさや面積に比例させてもよい。この場合、第1種住宅地域などの地域の種類ごとに、法令で定められた上限を設ける。下限を設けてもよい。
また、求められた高さを一定限度内で乱数や順序により変動させることもできる。ランダムに変動させれば、画面を見る者に、実際の景観に近い自然な感じを与えることができる。
【0033】
(1-1-2)建物の属性が決まっている場合
また、建物の属性が決まっている場合は、属性に応じて、建物の高さを決めることができる。例えば、民家なら二階建て程度の高さ、オフィスビルならば、5階建て程度の高さ、学校なら三階建て程度の高さ、公園なら高さ0mと決める。さらに、輪郭の大きさ若しくは面積によって、一定範囲内で建物の高さを変動させる。例えば学校でも、面積の非常に大きな学校であれば、ビル並の高さに上げる。
【0034】
また、求められた高さを一定限度内で乱数や順序により変動させることもできる。ランダムに変動させれば、画面を見る者に、実際の景観に近い自然な感じを与えることができる。
(1-2)施設の上面の色の決定
(1-2-1)建物の属性が決まっていない場合
施設の属性が設定されていない場合は、乱数や順序によって施設の上面の色を決定する。ただし、輪郭の大きさ又は面積が数m四方の小さなものである場合は、民家とみなし、屋根の色に近いグレー、赤、青などを採用する。
さらに、求められた色を一定範囲内で乱数や順序により変動させることもできる。
【0035】
(1-2-2)建物の属性が決まっている場合
施設の属性が設定されている場合は、施設の属性(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)に応じて色を決定する。例えば、民家ならば、屋根の色に近いグレー、赤、青などを採用する。公園は緑色や土色の混合、オフィスビルはコンクリートの冷たいグレーにする。
さらに、求められた色を一定範囲内で乱数や順序により変動させることもできる。
(1-3)施設の側面の色の決定
(1-3-1)建物の属性が決まっていない場合
例えば、輪郭の形状が正方形又は長方形の場合、オフィスビルであるとみなして、施設の側面の色をベージュ、グレーや白色などを採用する。また、輪郭が小さな場合は、民家であるとみなして、薄茶色などを採用する。
(1-3-2)建物の属性が決まっている場合
施設の属性が設定されている場合は、属性(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)に応じて色を決定することもできる。例えばオフィスビルであれば、施設の側面の色をベージュ、グレーや白色などを採用する。また、民家であれば、薄茶色などを採用する。(1-4)施設の上面又は側面の模様の決定
施設の上面又は側面に付ける模様の例として、レンガ、石壁、花崗岩、窓付レンガ壁、窓付石壁などを用意する。図6に、窓付レンガ壁の模様の例を示す。
(1-4-1)建物の属性が決まっていない場合
例えば、施設の輪郭の形状等に基づいて地図の中の施設の上面又は側面の模様を決定することができる。輪郭の形状が正方形又は正方形に近い場合又は輪郭が大きな場合、ビルディングとみなして窓付のレンガ壁、窓付石壁などを使用する。
【0036】
施設の大きさや面積によって施設の上面又は側面の模様を決定する場合は、乱数や順序によって施設の上面や側面の模様を決定する。ただし、輪郭の大きさ又は面積が数m四方の小さなものである場合は、民家とみなし、屋根瓦の模様や、トタン屋根の模様、モルタル壁、漆喰壁などを採用する。
(1-4-2)建物の属性が決まっている場合
また、建物の属性が設定されている場合は、民家なら、モルタル壁、漆喰壁などを、オフィスビルならレンガ壁、窓付石壁、大理石壁などを採用する。施設の上面の模様を決める場合は、民家なら、屋根瓦やトタン屋根の模様を採用する。
【0037】
(2) ステレオ画像でない航空写真を用いるとき
この場合は、1.(1) 又は(2) で得られたメッシュ単位のポリゴン化された地図データとともに、2.(1) の航空写真の前処理(ステレオ画像を用いないとき)で作成したメッシュ単位の航空写真データを用いる。
ブロック図(図7)に基づいて説明すると、ポリゴン化された地図データと航空写真データとを読み込み、それぞれバッファメモリに一時的に記憶させる(B5,B6)。そして、これらの記憶された地図データに基づいて、施設の高さ、色、模様を決定する(B7,B8,B9)。また、決定された色に基づいて側面の模様又は上面の模様を決定する。 決定の要因となるものは、
(g) ポリゴン地図の中の輪郭の形状、
(a) ポリゴン地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積、
(b) ポリゴン地図の中の施設の属性、
とともに、
(c) 航空写真地図の中の輪郭に対応する部分の航空写真の色
である。この(c) の「輪郭に対応する航空写真の部分の色」は、周知の測色方法を使ってポリゴン地図の中の輪郭に対応する部分の中の、航空写真の画素の色データの平均値などにより決めることができる。
(2-1)施設の高さの決定
(2-1-1)建物の属性が決まっていない場合
「施設の属性」が設定されていない場合は、輪郭の大きさ若しくは面積を測定し、建物の高さを大きさや面積に比例させる。ただし、上限と下限を設定する。そして、航空写真の部分の色が特別な場合、例えば緑や、彩度の低い赤色や黄色(すなわち茶色)であるときは、林や土であるとみなして高さを0にする。
(2-1-2)建物の属性が決まっている場合
「施設の属性」が設定されている場合は、属性によって大まかに施設の高さを決定し、施設の大きさや面積によって若干変動させる。さらに、当該部分の航空写真の色が特別な場合、例えば緑や、彩度の低い赤色や黄色(すなわち茶色)であるときは、林や土であるとみなして高さを0にする。
(2-2)施設の上面の色の決定
(2-2-1)建物の属性が決まっていない場合
航空写真の部分の色を測色して、その色に近い色を採用する。なお、測色した色の階調が決定する色の階調よりもきめ細かいときには、一定の範囲の測色データをまとめて、1つの色に変換するような変換テーブルを作成し、このテーブルを利用して色を採用する。 さらに、採用した色を一定限度内で乱数や順序により変動させることもできる。色にバラツキがあれば、画面を見る者は、実際の景観の色に近い感じを受けることになるからである。
【0038】
(2-2-2)建物の属性が決まっている場合
また、建物の属性が設定されている場合は、例えば、公園なら、茶色系統に決定する。航空写真の部分の色と建物の属性により決まる色が食い違う場合、いずれかの色を選択する。
さらに、採用した色を一定限度内で乱数や順序により変動させることもできる。色にバラツキがあれば、画面を見る者は、実際の景観の色に近い感じを受けることになるからである。
(2-3)施設の側面の色の決定
(2-3-1)建物の属性が決まっていない場合
地図の中の施設の側面の色は、地図の中の輪郭に対応する施設の上面の色に合わせる。ただし、輪郭の大きさ又は面積が小さな場合は、民家であるとみなして、薄茶色、白、グレーなどの中から選択する。
(2-3-2)建物の属性が決まっている場合
施設の属性が設定されている場合は、属性(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)に応じて側面の色を決定することもできる。例えばオフィスビルであれば、施設の側面の色をベージュ、グレーや白色などを採用する。また、民家であれば、薄茶色などを採用する。(2-3-1)で求められた側面の色と建物の属性により決まる色が食い違う場合、いずれかの色を選択する。
(2-4)施設の上面又は側面の模様の決定
(2-2)で述べた航空写真に基づく施設の上面の色などに基づいて、施設の上面又は側面の模様を決定する。その手法として、(1-4)で説明したのと同様の手法に加えて、次に説明する手法を採用することができる。
【0039】
例えば8とおりの側面の模様を用意する場合には、色相環を8つ(マゼンタ、赤、オレンジ、黄緑、緑、水色、青、紫)に角度分割して、それぞれの色から連想される模様を指定しておく。例えば、赤の区分に属する色であればレンガ模様、緑の区分に属する色であれば蔦模様といった具合である。そしてRGB値を分析して、どの区分に属する色であるかを決定すれば、模様が自動的に選定される。
(3) ステレオ画像の航空写真を用いるとき
この場合は、1.(1) 又は(2) で得られたメッシュ単位のポリゴン化された地図データとともに、2.(2) の航空写真の前処理(ステレオ画像を用いるとき)で作成したメッシュ単位の航空写真データを用いる。そして、これらの地図データに基づいて、施設の高さ、色、模様を決定する。
【0040】
決定の要因となるものは、
(g) ポリゴン地図の中の輪郭の形状、
(a) ポリゴン地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積、
(b) ポリゴン地図の中の施設の属性、
(c) 航空写真地図の中の輪郭に対応する部分の航空写真の色
の他に、
(d) ステレオ航空写真から求められた地図の中の輪郭に対応する部分の高さ、
(c1) 地図の中の輪郭に対応する部分の側面の航空写真の色
である。この(d) の「地図の中の輪郭に対応する部分の高さ」は、ポリゴン地図の中の輪郭に対応する部分の中の高さデータを取り出し、それらの平均値、中央値、最大値、最小値等のいずれかを算出して求めることができる。
【0041】
また(c1)の「地図の中の輪郭に対応する部分の側面の色」は、次のようにして決める。ポリゴン地図の中の輪郭に対応する部分の中の高さデータを取り出し、高さの変化率すなわち勾配を求める。そして、この勾配がしきい値よりも大きいものであるとき、その部分は側面であるとみなす。しきい値として、例えば水平面から80°とか、85°といった直角に近い値を採用する。
(3-1)施設の高さの決定
(3-1-1)建物の属性が決まっていない場合
「施設の属性」が設定されていない場合は、ステレオ航空写真から求められた地図の中の輪郭に対応する部分の高さをそのまま採用する。
【0042】
(3-1-2)建物の属性が決まっている場合
「施設の属性」が設定されている場合は、属性によって施設の高さを決定し、施設の大きさや面積によって若干変動させる。航空写真から求められる高さと建物の属性により決まる高さが食い違う場合、いずれかの高さを選択するか、両者の中間の高さを計算で求める。さらに、当該部分の航空写真の色が特別な場合、例えば緑や、彩度の低い赤色や黄色(すなわち茶色)であるときは、林や土であるとみなして高さを0にする。
(3-2)施設の上面の色の決定
(2-2)で説明したのと同様にして決定する。
(3-3)施設の側面の色の決定
(3-3-1)建物の属性が決まっていない場合
地図の中の施設の側面の色は、地図の中の輪郭に対応する部分の側面の航空写真の色をそのまま採用する。なお、測色した色の階調が決定する色の階調よりもきめ細かいときには、一定の範囲の測色データをまとめて、1つの色に変換するような変換テーブルを作成し、このテーブルを利用して色を採用する。側面の色が一定範囲に分布しているときは、平均値をとったり、側面の重心の色を採用したりする。
【0043】
(3-3-2)建物の属性が決まっている場合
施設の属性が設定されている場合は、属性(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)に応じて側面の色を決定することもできる。例えばオフィスビルであれば、施設の側面の色をベージュ、グレーや白色などを採用する。また、民家であれば、薄茶色などを採用する。(3-3-1)で求められた側面の色と建物の属性により決まる色が食い違う場合、いずれかの色を選択する。
(3-4)施設の上面又は側面の模様の決定
(2-4)で説明したのと同様にして決定する。
4.立体地図データフォーマット
表1に、本発明に基づいて作成した立体地図の記憶フォーマットを示す。
【0044】
【表1】

表1で、施設番号とは、2次元地図に存在する1つ1つの輪郭の識別番号をいう。属性番号とは、各施設の属性(例:民家、オフィスビル、公園、学校など)を特定する番号である。輪郭頂点数は、例えば五角形なら5などとなる。輪郭頂点の座標は、当該地図メッシュの中での頂点の相対座標のことである。
【0045】
なお、「相対座標」とは、当該メッシュの端から測った座標をいう。メッシュ自体は、前述したように一定の緯度経度で区画された長方形又は正方形であるので、この相対座標に基づいて、北緯何度、東経何度といった絶対位置が特定できる。
地上高は、施設の高さを表わす。上面色は、施設の上面の色、側面色は、施設の各側面の色をいう。いずれも、明度のみで表わしてもよく、RGB値で表わしてもよく、XYZ表色系、マンセル表色系で表わしてもよく、色見本の番号で表わしてもよい。側面模様番号は、施設の各側面の模様(レンガ、石壁、花崗岩、窓付レンガ壁、窓付石壁など)を特定する番号である。
【0046】
この他に、標高データを入れておいてもよい。この標高データと地上高データとを合わせると、施設の絶対高が分かる。
5.その他
前記のようにして施設の高さ、色が決定された後、光源(太陽)の位置を固定して施設に陰影を付けることができる。
【0047】
コンピュータグラフィックスでは、高速化のために設定された面の色をそのまま使って表示する。しかしこの方法では、隣接する面と同色であれば境界線がなくなってしまって立体感が失われる。これを防ぐには、通常光源を設定してその光線と物体の面とのなす角を計算し、陰影(トーン差)を付ける。
本発明の立体地図作成方法においても、この方法を適用して、陰影を付けることができる。具体的には、日本国内の平均的な緯度を想定して、所定の時刻、例えば正午における太陽光線の角度を設定する。東京であれば、天頂から55°の角度である。
【0048】
そして、処理の対象となる面の法線ベクトルと太陽光線ベクトルのなす角度θと、当該面のRGB値から、色相H、彩度S、輝度Iを求め、変換式により、陰影を付けた後の輝度I′を求める。「変換式」の一例として、次の式をあげることができる。
I′=I[(1-cosθ)(1-k)/2+k]
ただし、kは輝度減衰率調整パラメータで、その範囲は0から1である。
【0049】
このような陰影付けを行っておき、前記立体地図データフォーマットの中に記憶しておけば、表示するときにリアルタイムで陰影付けされた画像表示をすることができ、立体感のある画像を高速に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】地図データベースから写した地図の一部を表示した図である。
【図2】前処理手順を示すフローチャートである。
【図3】輪郭の頂点座標を取り出す方法を説明する図である。
【図4】頂点を結んだ線Bと、原画像を構成するエッジ線Aとのずれを求める処理を説明する図である。
【図5】ポリゴン地図データに基づいて立体地図データを作成する処理の流れを示すブロック図である。
【図6】施設の上面又は側面に付ける窓付レンガ壁の模様を示す図である。
【図7】ポリゴン地図データ及び航空写真に基づいて立体地図データを作成する処理の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
A,B,C 地図の中の輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データベースに基づいて、3次元の施設のデータが入った立体地図データを作る立体地図作成方法であって、
次の(a)に基づいて地図の中の施設の高さを決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
【請求項2】
地図データベースに基づいて、3次元の施設のデータが入った立体地図データを作る立体地図作成方法であって、
次の(a)及び(b)に基づいて地図の中の施設の高さを決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
(b) 地図の中の施設の属性
【請求項3】
地図データベースと航空写真とに基づいて、3次元の施設のデータが入った立体地図データを作る立体地図作成方法であって、
図の中の輪郭と航空写真との対応付けをし、その上で次の(c)に基づいて地図の中の施設の高さを決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(c) 地図の中の輪郭に対応する部分の航空写真の色
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(a)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(b)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(b) 地図の中の施設の属性
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
地図の中の輪郭と航空写真との対応付けをし、その上で、次の(c)に基づいて地図の中の施設の上面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(c) 地図の中の輪郭に対応する部分の航空写真の色
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(a)に基づいて地図の中の施設の側面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(b)に基づいて地図の中の施設の側面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(b) 地図の中の施設の属性
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
地図の中の輪郭とステレオ航空写真との対応付けをし、その上で次の(c1)に基づいて地図の中の施設の側面の色を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(c1) 地図の中の輪郭に対応する部分の側面の航空写真の色
【請求項10】
地図の中の輪郭と航空写真との対応付けをし、その上で次の(e)に基づいて地図の中の施設の側面の色を決定する手順を含むことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかに記載の立体地図作成方法。
(e) 決定された地図の中の施設の上面の色
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(a)に基づいて地図の中の施設の上面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
【請求項12】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(b)に基づいて地図の中の施設の上面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(b) 地図の中の施設の属性
【請求項13】
次の(e)に基づいて地図の中の施設の上面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかに記載の立体地図作成方法。
(e) 決定された地図の中の施設の上面の色
【請求項14】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(a)に基づいて地図の中の施設の側面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(a) 地図の中の輪郭の大きさ若しくは面積
【請求項15】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の立体地図作成方法であって、
次の(b)に基づいて地図の中の施設の側面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする立体地図作成方法。
(b) 地図の中の施設の属性
【請求項16】
次の(f)に基づいて地図の中の施設の側面の模様を決定する手順を含むことを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれかに記載の立体地図作成方法。
(f) 決定された地図の中の施設の側面の色


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−48070(P2006−48070A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249374(P2005−249374)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【分割の表示】特願平10−273947の分割
【原出願日】平成10年9月28日(1998.9.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】