説明

立体画像取得装置

【課題】立体画像の表示に必要な要素画像を簡単な構成で効率よく取得することが可能な立体画像取得装置を提供する。
【解決手段】立体画像取得装置100は、被写体Wから近い順に結像光学系1、拡散板2、レンズ3、レンズアレイ4およびカメラ5を備える。結像光学系1は、結像レンズ11、アパーチャ板12および結像レンズ13を含む。アパーチャ板12は、x方向に延びる長尺状のスリット12aを有する。レンズアレイ4は、xy平面上に規則的に2次元状に配列された複数の要素レンズ4aを含む。被写体W上の各物点からの光線が各要素レンズ4aの焦平面上で結像されることにより、各要素レンズ4aの焦平面上に被写体Wの要素画像EMが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像は将来の映像メディアとして注目されており、立体画像用の映像機器の開発および実用化が急速に進展している。特に、立体画像観察用の特殊な眼鏡が不要な裸眼立体画像システムは、家庭用の立体テレビ放送への応用が期待されている。多くの裸眼立体画像システムでは、被写体を撮影して水平方向のみの視差画像を取得し、取得された視差画像を水平視差のみによる2眼または多眼立体ディスプレイに表示する。従来、水平視差画像を取得する技術として、複数台のカメラを水平方向に一列に配置し、それらのカメラにより被写体の視差画像を取得する方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される立体画像表示装置では、複数のカメラにより互いに異なる方向から被写体が撮影され、これらの複数のカメラにより得られた画像が、対応する光源の点滅と同期するように空間光変調素子(例えば液晶ディスプレイ)に順次表示される。特許文献2に記載される撮像システムでは、複数のカメラにより互いに異なる方向から被写体が撮影され、カメラキャリブレーション、画像補正および画像のマッチング処理等が行われる。
【0004】
また、1台のカメラで複数の視差画像を取得する方法が提案されている。例えば、特許文献3に記載される立体画像撮影システムでは、一般的なカメラのレンズの前面にアダプタレンズが装着され、アダプタレンズによって被写体からの光束が複数に分割されることにより、視差画像が取得される。特許文献4に記載される立体画像撮像装置では、複数の円形シャッタが順次開閉され、開かれた円形シャッタを通過した光が撮像板に結像されることにより、視差画像が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−329762号公報
【特許文献2】特開2005−142957号公報
【特許文献3】特開2003−5314号公報
【特許文献4】特開平10−271534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に示されるような複数のカメラを用いた方式では、高精度なカメラキャリブレーションが必要となる。そのため、各カメラの種々の調整が困難である。また、撮影画角の変更またはパン等のカメラワークも困難である。さらに、異なるカメラにより取得された画像間には、輝度および色等のばらつきがあるため、これらの画像の特性を揃えるための補正処理等の煩雑で長時間を要する作業が必要となる。
【0007】
また、特許文献3,4に示されるような単一のカメラを用いた方式では、結像光学系中のシャッタまたはアパーチャの数に相当する2視差から数視差程度の少ない視差画像を時分割で得ることしか一般的にできない。そのため、広い撮影画角において高密度な多くの視差画像を実時間で得ることが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、立体画像の表示に必要な要素画像を簡単な構成で効率よく取得することが可能な立体画像取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る立体画像取得装置は、複数の視差画像を取得する立体画像取得装置であって、被写体からの光線を複数の要素画像としてそれぞれ結像する複数の要素レンズと、被写体からの光線を複数の要素レンズに導く導光光学系と、複数の要素レンズによりそれぞれ結像された複数の要素画像を取得する第1の撮影装置とを備え、導光光学系は、第1の方向に沿った光軸を有するとともに、第1の方向と略直交する第2の方向に長尺状に延びる光通過領域を形成し、光通過領域を通過する光線を複数の要素レンズに導き、光通過領域を通過しない光線を複数の要素レンズに導かないように構成されたものである。
【0010】
その立体画像取得装置においては、被写体からの光線が導光光学系により複数の要素レンズに導かれ、複数の要素レンズにより複数の要素画像として結像される。結像された複数の要素画像が第1の撮影装置により取得される。
【0011】
この場合、共通の第1の撮影装置により複数の要素画像を同時に取得することができるので、複数の撮影装置を用いる場合とは異なり、複数の要素画像間で特性のばらつきが生じない。そのため、複数の要素画像間の特性を揃えるための煩雑な作業が不要となる。また、画角の変更およびパン等のカメラワークも可能になる。さらに、広い画角において高密度な複数の要素画像を取得することが可能になる。
【0012】
また、導光光学系においては、第2の方向に長尺状に延びるように光通過領域が形成される。光通過領域を通過する光線が複数の要素レンズに導かれ、光通過領域を通過しない光線が複数の要素レンズに導かれない。このように、複数の要素レンズに導かれる光線が制限されることにより、複数の要素画像間において視差が生じる方向が第2の方向に制限される。通常、複数の要素画像間において一方向に視差があれば、左右の目で立体画像を観察することができる。したがって、多方向に視差がある複数の要素画像を取得する場合に比べて、立体画像の表示に必要な要素画像を簡単な構成で効率よく取得することができる。
【0013】
(2)複数の要素レンズは第2の方向と第1および第2の方向に略直交する第3の方向とに平行な平面上に2次元状に配置され、導光光学系は、光通過領域を通過する光線が第1および第3の方向を含む面内で拡がるように光線を拡散または屈折させる発散光学素子を含んでもよい。
【0014】
この場合、光通過領域を通過する光線をより多くの要素レンズに導くことができる。それにより、第2の方向に視差がある要素画像をより多く取得することができる。したがって、複数の要素画像間における視差の密度を高くすることができ、高品質な立体画像を表示することが可能になる。
【0015】
(3)複数の要素レンズは、第3の方向に対して傾斜しかつ互いに平行な複数の線上に並ぶように配置されてもよい。
【0016】
この場合、第2の方向において複数の要素レンズが密に配置される。したがって、複数の要素画像間における視差の密度をより高くすることができる。
【0017】
(4)導光光学系は、第1の偏光が透過可能でありかつ第1の偏光と異なる第2の偏光が透過不可能である第1の領域、および第1の偏光が透過不可能でありかつ第2の偏光が透過可能である第2の領域を有する第1の偏光素子と、第1の偏光が透過可能でありかつ第2の偏光が透過不可能である第2の偏光素子とを含み、被写体からの光が第1および第2の偏光素子を順に通して複数の要素レンズに導かれ、第1の偏光素子の第1の領域により光通過領域が形成されてもよい。
【0018】
この場合、第1の偏光素子の第1の領域を透過した光線は第2の偏光素子を透過し、第1の偏光素子の第2の領域を透過した光線は第2の偏光素子を透過しない。それにより、簡単な構成で複数の要素レンズに導かれる光線を制限することができる。
【0019】
(5)立体画像取得装置は、被写体の距離情報を含む距離画像を取得する距離画像取得部をさらに備えてもよい。
【0020】
この場合、距離画像取得部により取得された距離画像を用いて、複数の要素画像間の補間画像および被写体の3次元モデル等を容易に生成することができる。
【0021】
(6)複数の要素レンズの各々は、焦点距離を調整可能な焦点可変レンズであってもよい。
【0022】
この場合、複数の要素画像の画角調整が可能になる。また、複数の要素レンズを光線が収束および発散しない非レンズ状態とすることができる。それにより、視差がある複数の要素画像と視差がない通常の画像とを選択的に取得することが可能になる。
【0023】
(7)立体画像取得装置は、第2の撮影装置と、導光光学系により複数の要素レンズに導かれる光線の一部を第2の撮影装置に導く分割光学素子とをさらに備えてもよい。
【0024】
この場合、第1の撮影装置により複数の要素画像を取得するとともに、第2の撮影装置により被写体の高精細な画像を取得することが可能になる。そのため、第2の撮影装置により取得された画像を用いて、複数の要素画像を補正することが可能になるとともに、複数の要素画像間の補間画像を生成することが可能になる。
【0025】
(8)導光光学系は、光通過領域としての開口が形成された遮光部材を含んでもよい。この場合、簡単な構成で複数の要素レンズに導かれる光線を制限することができる。
【0026】
(9)導光光学系は、開口を絞りとして有するテレセントリック光学系であってもよい。この場合、光通過領域を通過した光線を精度よく複数の要素レンズに導くことができるとともに、複数の要素レンズにより複数の要素画像を所望の位置に容易に結像させることができる。
【0027】
(10)第1の偏光素子は、偏光特性を調整可能な空間変調素子であってもよい。この場合、光通過領域の形状および配置を容易に調整することができる。それにより、複数の要素画像間において視差が生じる方向を容易に調整することができる。
【0028】
(11)導光光学系は、第2の方向に延びる長尺状光学素子を含み、長尺状光学素子により光通過領域が形成されてもよい。この場合、簡単な構成で複数の要素レンズに導かれる光線を制限することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、立体画像の表示に必要な要素画像を簡単な構成で効率よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。
【図2】レンズアレイの複数の要素レンズの配列を示す図である。
【図3】レンズアレイの複数の要素レンズの他の配列例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態に係る立体画像取得装置の基本原理について説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態に係る立体画像取得装置の基本原理について説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。
【図7】第1の偏光子の正面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。
【図10】第4の実施の形態で用いられるレンズの斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。
【図12】立体画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図13】制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態に係る立体画像取得装置について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る立体画像取得装置は、複数の異なる位置から観察された被写体の画像(視差画像)を取得する。以下の説明において、互いに直交する3軸をそれぞれx軸、y軸およびz軸と定義し、x軸に平行な方向、y軸に平行な方向およびz軸に平行な方向をそれぞれx方向、y方向およびz方向と呼ぶ。x方向およびz方向は例えば水平方向に相当し、y方向は例えば鉛直方向に相当する。
【0032】
(1)第1の実施の形態
(1−1)基本構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立体画像取得装置の構成を示す図である。図1に示すように、立体画像取得装置100は、被写体Wから近い順に結像光学系1、拡散板2、レンズ3、レンズアレイ4およびカメラ5を備える。
【0033】
結像光学系1は、結像レンズ11、アパーチャ板12および結像レンズ13を含む。結像レンズ11,13の光軸はそれぞれz方向に沿いかつ互いに一致する。アパーチャ板12は、xy平面に平行に配置される。アパーチャ板12は、x方向に延びる長尺状のスリット12aを有する。
【0034】
拡散板2は、xy平面に平行に配置され、結像光学系1からの光線をy方向には拡散し、x方向には拡散しないかまたは僅かに拡散する。拡散板2として、光の回折または屈折により光の拡散の方向を制御可能なホログラフィックな光学素子を用いることができる。例えば、アクリルまたはガラス等からなる透明な材質の板に凹凸が形成された光学素子、またはx方向とy方向とで屈折率が異なる光学素子等を用いることができる。また、微小な構造を有するレンチキュラスクリーンを拡散板2として用いてもよい。この場合も、選択的に特定の方向にのみ光を拡散することができる。
【0035】
レンズ3の光軸は結像光学系1の結像レンズ11,13の光軸に一致する。レンズ3は、レンズアレイ4により形成される画像の大きさ、画角、および光線の進行方向を制御するフィールドレンズである。レンズ3の代わりにレンズアレイ4とカメラ5との間に他のフィールドレンズが設けられてもよく、またはレンズ3に加えてレンズアレイ4とカメラ5との間に他のフィールドレンズが設けられてもよい。
【0036】
レンズアレイ4は、xy平面上に規則的に2次元状に配列された複数の要素レンズ4aを含む。各要素レンズ4aの光軸はそれぞれz軸に沿う。カメラ5は、撮像レンズ5a、ならびにCMOS(相補型金属酸化膜半導体)またはCCD(電荷結合素子)等からなる撮像素子5bを有する。本実施の形態では、レンズアレイ4の複数の要素レンズ4aにより複数の要素画像が形成され、その複数の要素画像がカメラ5により撮影される。詳細は後述する。
【0037】
(1−2)レンズアレイ
図2は、レンズアレイ4の複数の要素レンズ4aの配列を示す図である。図2に示すように、複数の要素レンズ4aは、x方向およびy’方向に沿って並ぶように配置される。y’方向は、y方向に対して角度θa傾斜する。以下、x方向に沿った要素レンズ4aの並びを要素レンズ4aの行と呼び、y’方向に沿った要素レンズ4aの並びを要素レンズ4aの列と呼ぶ。図2の例では、H個の要素レンズ4aが各行をなし、V個の要素レンズ4aが各列をなす。各行および各列における要素レンズ4aの個数は、カメラ5(図1)の撮像素子5bの形状および画素数に応じて設定される。各行において隣り合う要素レンズ4aの中心点間の距離はpxであり、各列において隣り合う要素レンズ4aのy方向における中心点間の距離はpyである。
【0038】
各列において、隣り合う要素レンズ4aのx方向における中心点間の距離はphである。本例では、ph=px/Vである。この場合、隣り合う各2列において、一方の列の下端に位置する要素レンズ4aと他方の列の上端に位置する要素レンズ4aとのx方向における中心点間の距離がphとなる。これにより、x方向において全ての要素レンズ4aが均等に配置される。このようにして、複数の要素レンズ4aがx方向に密に配置される。
【0039】
図3は、レンズアレイ4の複数の要素レンズ4aの他の配列例を示す図である。図3の例では、複数の要素レンズ4aが、x’方向およびy’方向に沿って並ぶように配置される。x’方向はx方向に対して角度θa傾斜し、y’方向はy方向に対して角度θa傾斜する。この場合も、複数の要素レンズ4aがx方向に密に配置される。
【0040】
図3の例では、複数の要素レンズ4aがマトリクス状に配置されたレンズアレイ4を使用することができる。このようなレンズアレイ4は、製造が容易であり、安価である。したがって、図3の例では、図2の例に比べて、容易にかつ低コストで複数の要素レンズ4aをx方向に密に配置することができる。なお、複数の要素レンズ4aがマトリクス状に配置されたレンズアレイ4の代わりに、複数の要素レンズ4aがデルタ配列されたレンズアレイ4を用いてもよい。
【0041】
図2および図3の例において、各要素レンズ4aの形状は円形に限らず、四角形または六角形等の他の形状であってもよい。また、複数の要素レンズ4の中心位置が互いに一方向(本例ではx方向)に異なっていれば、複数の要素レンズ4の大きさ、形状および焦点距離等のレンズ特性が互いに同一であってもよく、または異なってもよい。
【0042】
レンズアレイ4の各要素レンズ4aとして、外部からの電気的または物理的な制御により焦点距離が変化する焦点可変レンズを用いてもよい。例えば液晶材料を用いた液晶焦点可変レンズ、印加電圧により液体の接触角度が変化するElectrowettingの原理に基づく液体レンズ、または圧力により曲率が変化する液体レンズ等の各種焦点可変レンズを使用することができる。
【0043】
この場合、要素レンズ4aの焦点距離を変化させることにより、要素画像の画角調整が可能となる。また、このような焦点可変機能を利用して、光を収束させる状態(以下、レンズ状態と呼ぶ)と光を収束および発散させずにそのまま透過させる状態(以下、非レンズ状態と呼ぶ)とに各要素レンズ4aを切り替えることができる。それにより、共通の立体画像取得装置100において、視差画像の撮影および通常の2次元画像の撮影を選択的に行うことが可能となる。この場合、レンズ状態と非レンズ状態との切替を高速で行うことにより、視差画像の撮影と通常画像の撮影とを例えばフレーム単位で交互に行うことができる。したがって、視差画像と高精細画像とを並行して取得することができる。
【0044】
(1−3)基本原理
図4および図5は、本実施の形態に係る立体画像取得装置100の基本原理について説明するための図である。図4は、yz平面内における被写体Wからの光線の伝播を示す図であり、図5は、xz平面内における被写体Wからの光線の伝播を示す図である。図4および図5においては、結像レンズ11,13およびレンズ3の各々の中心点がz軸上に配置される。また、以下の説明では、被写体Wに向かう方向を前方と呼び、その反対の方向を後方と呼ぶ。
【0045】
図4および図5に示すように、結像レンズ11の焦点距離はfであり、結像レンズ13の焦点距離はfであり、レンズ3の焦点距離はfであり、各要素レンズ4aの焦点距離はfである。結像レンズ11とアパーチャ板12との間の距離はfであり、アパーチャ板12と結像レンズ13の中心面との間の距離はfである。アパーチャ板12のスリット12aは結像レンズ11,13の共通の光軸上に配置される。yz平面内において、結像光学系1は両側テレセントリック光学系となる。
【0046】
結像レンズ13の中心面と拡散板2との間の距離はfである。拡散板2とレンズ3の中心面との間の距離はfである。本例では、図2のレンズアレイ4が用いられる。レンズアレイ4の略中心に位置する要素レンズ4aの中心点はz軸上に配置される。以下、z軸上に中心点を有する要素レンズ4aを基準の要素レンズ4aと呼ぶ。レンズ3の中心面と基準の要素レンズ4aの中心面との間の距離は(f+f)である。
【0047】
図4を参照しながらyz平面内における光線の伝播について説明する。ここでは、被写体W(図1)上の物点Pからの光線Vの伝播について説明する。図4において、物点Pからの主光線が破線で示される。
【0048】
物点Pのy座標をyとし、物点Pにおいて光線Vがz軸となす角度(以下、光線角と呼ぶ)をθとし、物点Pと結像レンズ11の中心面との間の距離をzとする。この場合、結像光学系1を透過した光線Vは、次式(1)で表される。
【0049】
【数1】

【0050】
式(1)において、yは、結像光学系1を透過した光線Vが通る地点Pのy座標であり、θは、地点Pでの光線角であり、zは、地点Pと結像レンズ13の中心面との間の距離である。
【0051】
物点Pからの光線Vが地点Pで結像される場合、光線角θがいずれの値であってもyは一定であるので、次式(2)が満たされる。
【0052】
【数2】

【0053】
式(2)より、次式(3)が得られる。
【0054】
【数3】

【0055】
一方、結像光学系1においては、アパーチャ板12により結像光学系1を透過する光線Vの光線角θが制限される。アパーチャ板12のスリット12aのy方向における幅をaとすると、スリット12aを通過する光線Vの光線角θの範囲は、次式(4)で表される。
【0056】
【数4】

【0057】
式(1)および式(4)より、次式(5)が得られる。
【0058】
【数5】

【0059】
スリット12aを通過した光線Vは、地点Pを通って拡散板2上の地点Pに入射する。地点Pにおける光線Vの広がりΔyは、式(1)および式(5)により、次式(6)で表される。
【0060】
【数6】

【0061】
結像光学系1は両側テレセントリック光学系であるので、拡散板2の位置が結像光学系1による結像位置からz方向にずれていても、拡散板2上に形成される像の大きさは結像光学系1による結像位置に形成される像の大きさとほぼ等しい。しかしながら、光線の広がりΔyにより、拡散板2上の像がぼやける。
【0062】
式(6)からわかるように、アパーチャ12のスリット12aの幅aが小さいほど、光線の広がりΔyが小さくなる。そのため、拡散板2上の像のぼけが抑制される。一方、幅aが小さいほど、スリット12aの面積が小さくなり、被写体Wからの光線のうちスリット12aを通過する光線の割合が減少する。したがって、周囲の明るさ等に応じて、良好に被写体Wの像が得られるように、スリット12aの幅aが調整されることが好ましい。ここでは、スリット12aの幅aが十分に小さく、光線の広がりΔyが0であるとする。この場合、地点Pのy座標と拡散板2上の地点Pのy座標とは互いに等しく、yである。
【0063】
拡散板2上の地点Pに入射した光線Vは、拡散板2によりy方向に拡散される。これにより、光線Vが地点Pから後方に向かってyz平面内で扇状に拡がる。この場合、拡散板2とレンズ3との間の距離がレンズ3の焦点距離fと等しいので、地点Pからの拡散光がレンズ3を通して一定の光線角の平行光となる。レンズ3からの平行光は、レンズアレイ4の各要素レンズ4aに入射する。入射した平行光が各要素レンズ4aの焦平面上の像点Piで結像される。
【0064】
被写体W上の各物点からの光線が各要素レンズ4aの焦平面上で結像されることにより、各要素レンズ4aの焦平面上に被写体Wの画像EMが形成される。以下、各要素レンズ4aの焦平面上に形成される画像EMを要素画像EMと呼ぶ。
【0065】
図2に示したように、y方向における要素レンズ4aの中心点間の距離はpyである。また、基準の要素レンズ4aの中心点のy座標は0である。そのため、任意の要素レンズ4aの中心点のy座標は、npy(nは整数)で表される。
【0066】
また、各要素レンズ4aの中心点から各像点Piに向かう光線の光線角θは、レンズ3からレンズアレイ4に向かう平行光の光線角θと等しく、光線角θは、地点Pからレンズ3の中心点に向かう光線の光線角θと等しい。これにより、任意の要素レンズ4aによる像点Piのy座標yLnは、次式(7)で表される。
【0067】
【数7】

【0068】
式(7)からわかるように、像点Piのy座標yLnは物点Pと結像光学系1との間の距離zに依存しない。したがって、複数の要素画像EM間でy方向における視差は生じない。
【0069】
次に、図5を参照しながらxz平面内における光線の伝播について説明する。ここでは、被写体W上の物点Qからの光線Vの伝播について説明する。
【0070】
被写体W上の物点Qからの光線Vは、結像光学系1の結像レンズ11,13およびレンズ3を介してレンズアレイ4に入射する。xz平面内においては、光線Vがアパーチャ板12および拡散板2の影響を受けない。物点Qのx座標をxとし、物点Qにおいて光線Vがz軸となす角度(光線角)をφとし、物点Qと結像レンズ11の中心面との間の距離をzとする。この場合、レンズアレイ4に入射する光線Vは、次式(8)で表される。式(8)において、F=(f)/(f)である。
【0071】
【数8】

【0072】
図2に示したように、x方向における要素レンズ4aの中心点間の距離はPhである。また、基準の要素レンズ4aの中心点のx座標は0である。したがって、任意の要素レンズ4aのx座標はmPh(mは整数)で表される。任意の要素レンズ4aを透過した光線Vは、次式(9)で表される。
【0073】
【数9】

【0074】
式(9)において、xLmは、任意の要素レンズ4aを透過した光線Vが結像される像点Qiのx座標であり、φLmは、像点Qiでの光線角であり、zは、像点Qiと要素レンズ4aの中心面との間の距離である。
【0075】
像点Qiにおいては、光線角φがいずれの値であってもxLmは一定であるので、次式(10)が満たされる。
【0076】
【数10】

【0077】
式(10)より、次式(11)が得られる。
【0078】
【数11】

【0079】
式(9)および式(11)より、次式(12)が得られる。
【0080】
【数12】

【0081】
式(12)からわかるように、像点Qiのx座標は物点Qのz座標に依存する。したがって、複数の要素画像EM間でx方向における視差が生じる。このようにして、y方向には視差がなくx方向には視差がある複数の要素画像EMが形成される。
【0082】
カメラ5(図1)の撮像素子5bは、複数の要素画像EMにそれぞれ対応する複数の撮像領域を有し、各撮像領域に複数の画素が割り当てられる。複数の要素画像EMからの光が、撮像レンズ5aを介して撮像素子5bの対応する撮像領域において受光される。これにより、1台のカメラ5により複数の要素画像EMが同時に取得される。
【0083】
1つの要素画像EMを構成する画素数は、撮像素子5bの全画素数を要素画像EMの数(要素レンズ4aの数)で除した値以下になる。そのため、より画素数が多い撮像素子5bを用いることが好ましい。例えば、スーパーハイビジョンクラスの8000×4000個の画素を有する撮像素子5bを用いた場合、16個のハイビジョンクラスの要素画像EM、または100個のVGA(ビデオグラフィックスアレイ)クラスの要素画像EMを同時に取得することができる。
【0084】
また、カメラ5により取得された複数の要素画像EMを用いて、これら複数の要素画像EM間を補間する補間画像を生成することができる。この場合、より高品質な立体画像を表示することができる。さらに、超解像度技術と呼ばれる方法により、複数の要素画像EM間における情報(例えば差分)を用いて各要素画像EMの解像度を向上させることも可能である。
【0085】
本実施の形態では、結像光学系1がy方向において両側テレセントリック光学系となるように構成されるが、これに限らず、結像光学系1がy方向において片側テレセントリック光学系となるように構成されてもよい。また、拡散板2上における像の大きさの変化量を許容範囲内に調整することができるのであれば、結像光学系1がテレセントリック光学系以外の構成を有してもよい。さらに、結像光学系1が倍率可変のズームレンズ光学系であってもよい。この場合、各要素画像EMの撮影倍率を変更することができる。
【0086】
結像レンズ13と拡散板2との距離、拡散板2とレンズ3との距離およびレンズ3とレンズアレイ4との距離は、上記の例に限定されず、複数の要素画像EMが適正に得られる許容範囲内で適宜変更してもよい。
【0087】
上記実施の形態では、x方向に視差がありy方向に視差がない複数の要素画像が取得されるが、アパーチャ板12およびレンズアレイ4をz軸周りに90度回転させることにより、y方向に視差がありx方向に視差がない複数の要素画像を取得することができる。これにより、全方向に視差がある複数の要素画像を取得することができる。したがって、全方向から観察可能な立体画像を表示することが可能になる。
【0088】
(1−4)効果
本実施の形態では、1台のカメラ5により複数の要素画像EMを同時に取得することができるので、複数のカメラを用いる場合とは異なり、複数の要素画像EM間で輝度および色等の特性のばらつきが生じない。そのため、複数の要素画像EM間の特性を揃えるための煩雑な作業が不要となる。また、画角の変更およびパン等のカメラワークも可能になる。また、広い画角において高密度な複数の要素画像EMを取得することが可能になる。
【0089】
また、本実施の形態では、結像光学系1のアパーチャ板12により、複数の要素レンズ4aに導かれる光線が制限されるので、複数の要素画像EM間において視差が生じる方向がx方向に制限される。通常、複数の要素画像EM間において一方向に視差があれば、左右の目で立体画像を観察することができる。したがって、多方向に視差がある複数の要素画像EMを取得する場合に比べて、立体画像の表示に必要な要素画像EMを簡単な構成で効率よく取得することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、複数の要素レンズ4aがx方向(図3の例ではx’方向)およびy’方向に沿って並ぶように2次元状に配置され、その複数の要素レンズ4aの各々に、被写体Wからの光線が拡散板2を介して導かれる。この場合、複数の要素レンズ4aがx方向において密に配置されるとともに、被写体Wからの光線が拡散板2によって拡散されることにより、複数の要素レンズ4aの各々に確実に導かれる。それにより、複数の要素画像EM間において、x方向における視差の密度をより高くすることができる。その結果、より高品質な立体画像を表示することが可能となる。
【0091】
(2)第2の実施の形態
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る立体画像取得装置100の構成を示す図である。図6の立体画像取得装置100について、第1の実施の形態に係る立体画像取得装置100と異なる点を説明する。
【0092】
図6の立体画像取得装置100では、結像光学系1のアパーチャ板12の代わりに第1の偏光子21が設けられる。また、結像光学系1と拡散板2との間にハーフミラー22および第2の偏光子23が設けられ、ハーフミラー22による光線の反射方向にカメラ24が設けられる。カメラ24は、撮像レンズ24aおよび撮像素子24bを含む。
【0093】
第1の偏光子21は、xy平面に平行に配置される。図7は、第1の偏光子21の正面図である。図7に示すように、第1の偏光子21は、第1の偏光領域21aおよび第2の偏光領域21bを含む。第1の偏光領域21aは、第1の実施の形態におけるアパーチャ板12のスリット12aと同様の形状を有し、x方向に長尺状に延びるように設けられる。第2の偏光領域21bは、y方向において第1の偏光領域21aの両側に延びるように設けられる。第1の偏光領域21aおよび第2の偏光領域21bは、互いに異なる偏光特性を有する。本例では、第1の偏光領域21aはx方向の偏光のみを透過させ、第2の偏光領域21bはy方向の偏光のみを透過させる。
【0094】
図6に示すように、結像光学系1の後方において、z方向に対して傾斜するようにハーフミラー22が配置される。図6の例では、x方向に平行でかつy方向およびz方向に対して45度の角度をなすようにハーフミラー22が配置される。
【0095】
ハーフミラー22の後方において、xy平面に平行に第2の偏光子23が配置される。ハーフミラー22を透過した光線が第2の偏光子23に入射する。第2の偏光子23は、第1の偏光子21の第1の偏光領域21aと同じ偏光特性を有し、x方向の偏光のみを透過させる。
【0096】
図6の立体画像取得装置100においては、結像光学系1を透過した光線の一部がハーフミラー22を透過し、他の一部がハーフミラー22により反射される。
【0097】
ハーフミラー22を透過した光線は、第2の偏光子23に入射する。この場合、第1の偏光子21の第1の偏光領域21aを透過した光線は第2の偏光子23を透過し、第1の偏光子21の第2の偏光領域21bを透過した光線は第2の偏光子21を透過しない。したがって、被写体Wからの光線のうち第1の偏光子21の第1の偏光領域21aを透過した光線のみが第2の偏光子23の後方に伝播し、カメラ5に入射する。その結果、第1の実施の形態と同様に、y方向には視差がなくx方向には視差がある複数の要素画像が取得される。
【0098】
一方、ハーフミラー22により反射された光線は、カメラ24に入射する。カメラ24に入射する光線は、第1の偏光子21の第1の偏光領域21aを透過した光線および第2の偏光領域21bを透過した光線を含む。そのため、第1の偏光子21の影響をほとんど受けることなく、結像レンズ11,13により結像された被写体Wの像が得られる。カメラ24により取得される画像は撮像素子24aの全画素により構成されるので、高精細である。また、S/N比が高く、y方向における画角が大きい。それにより、カメラ24により得られた画像を用いて、カメラ5により得られた複数の要素画像を補正することができるとともに、複数の要素画像間の補間画像を生成することができる。
【0099】
ハーフミラー22および第2の偏光素子23の代わりに偏光ビームスプリッタを用いてもよい。この場合、第1の偏光子21の第1の偏光領域21aを透過した光線が偏光ビームスプリッタを透過し、第2の偏光領域21bを透過した光線が偏光ビームスプリッタによって反射されるように、偏光ビームスプリッタが配置される。第1の偏光領域21のy方向における幅が十分に小さい場合には、第2の偏光領域21bを透過した光線のみで被写体Wの像が形成される。したがって、カメラ24により被写体Wの画像を取得することができる。
【0100】
第1の偏光子21として、光線の方向を任意に変更可能な空間光変調素子を用いてもよい。空間光変調素子としては、例えば偏光板および液晶を有する空間変調器を用いることができる。第1の偏光子21として空間光変調素子を用いることにより、第1および第2の偏光領域21a,21bの大きさおよび形状等を任意に変更することができる。それにより、機械的な駆動機構等を用いることなく、複数の要素画像における視差方向および輝度等を制御することができる。また、第1の偏光子21に入射する光線を偏光とせずにそのまま透過させることも可能となる。
【0101】
さらに、x方向に視差がある複数の要素画像とy方向に視差がある複数の要素画像とを交互に高速で取得することが可能になる。これにより、全方向に視差がある複数の要素画像を取得することができる。この場合、取得された複数の要素画像を用いて、3次元のモデリングが容易になるとともに、インテグラルフォトグラフィ方式またはホログラム方式の立体画像の生成が容易になる。
【0102】
(3)第3の実施の形態
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る立体画像取得装置100の構成を示す図である。図8の立体画像取得装置100について、第1の実施の形態に係る立体画像取得装置100と異なる点を説明する。
【0103】
図8の例では、結像光学系1において結像レンズ13の代わりに焦点距離が短い単焦点レンズ31が設けられ、結像光学系1の後方に拡散板2が設けられていない。この場合、アパーチャ板12のスリット12aを通過した光線が、単焦点レンズ31により結像され、その結像位置から後方に大きく拡がる。そのため、スリット12aを通過した光線をy方向に配列された複数の要素レンズ4aに導くことができる。
【0104】
このように、拡散板2の代わりに、y方向に光を拡げる他の光学素子を用いてもよい。図8の単焦点レンズ31の代わりに、焦点距離が短く曲率が大きいシリコンドリカルレンズを用いてもよく、またはx方向に光線を分割して屈折させるプリズム光学素子を用いてもよい。
【0105】
(4)第4の実施の形態
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る立体画像取得装置100の構成を示す図である。図9の立体画像取得装置100について、第1の実施の形態に係る立体画像取得装置100と異なる点を説明する。
【0106】
図9の例では、結像光学系1において、結像レンズ11およびアパーチャ板12の代わりに、レンズ51および遮光部材51aが設けられる。図10は、本実施の形態で用いられるレンズ51の斜視図である。図10に示すように、レンズ51は、x方向に延びるように長尺状に設けられる。レンズ51として、アクリルまたはプラスティックからなるフレネルレンズ等を用いることができる。y方向においてレンズ51を挟むように図9の遮光部材51aが配置される。
【0107】
図9の立体画像取得装置100においては、レンズ51のy方向における寸法がx方向における寸法よりも大幅に小さい。そのため、アパーチャ板12を設けた場合と同様に、結像光学系1を透過する光線がy方向において制限される。それにより、第1の実施の形態と同様に、y方向には視差がなくx方向には視差がある複数の要素画像が取得される。
【0108】
x方向においてより広い範囲の視差を得るためには、結像光学系1の最も前方に位置するレンズのx方向における寸法を大きくする必要がある。図1の結像レンズ11のような円形のレンズを用いる場合には、レンズの直径を大きくする必要があり、高度なレンズ作製技術および多大なコストが必要になる。それに対して、図10のレンズ51を用いた場合には、比較的容易にかつ安価で、x方向においてより広い範囲の視差を得ることが可能となる。
【0109】
(5)第5の実施の形態
図11は、本発明の第5の実施の形態に係る立体画像取得装置100の構成を示す図である。図11の立体画像取得装置100について、第1の実施の形態に係る立体画像取得装置100と異なる点を説明する。
【0110】
図11の例では、周期的に強度変調した近赤外光を被写体Wに照射する光照射部61がさらに設けられる。また、カメラ5がダイクロイックミラー62および距離検出撮像部63をさらに有する。
【0111】
図11の立体画像取得装置100においては、被写体Wからカメラ5に入射した光線がダイクロイックミラー62により可視光線と近赤外線とに分離される。可視光線は、ダイクロイックミラー61を透過して受光素子5bに入射する。それにより、第1の実施の形態と同様に、複数の要素画像が取得される。
【0112】
一方、近赤外線は、ダイクロイックミラー61により反射されて距離検出撮像部63に入射する。距離検出撮像部63は、高速で開閉可能なシャッタ機構を有し、近赤外線の強度変調に応じた高速ゲート撮影を行う。距離検出撮像部63により取得された画像から、一般的な光飛行時間計測法に基づいて、カメラ5と被写体W上の各物点との距離を示す距離情報を検出することができる。以下、距離検出撮像部63により取得された画像を距離画像と呼ぶ。
【0113】
このようにして、一台のカメラ5により、y方向には視差がなくx方向には視差がある複数の要素画像を取得することができるとともに、被写体Wの距離情報を有する距離画像を取得することができる。この場合、距離画像から検出される距離情報に基づいて、上記補間画像を容易に生成することができるとともに、被写体Wの3次元モデルを容易に生成することができる。
【0114】
また、図6の例において、図11のカメラ5を用いてもよい。この場合、複数の要素画像、距離画像および高精細画像を同時に取得することができる。それにより、複数の要素画像の補正、補間画像の生成、および3次元モデルの生成をより容易に行うことができる。
【0115】
本例では、カメラ5内にダイクロイックミラー61および距離検出撮像部62が設けられるが、これに限らない。例えば、レンズアレイ4とカメラ5との間にダイクロイックミラー61が配置され、その反射方向に距離検出撮像部62が配置されてもよい。
【0116】
(6)立体画像生成装置
以下、立体画像取得装置100により取得された複数の要素画像を用いて立体画像を表示する立体画像表示装置について説明する。図12は、立体画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【0117】
図12に示すように、立体画像表示装置200は、制御部201および表示部202を含む。制御部201は、CPU(中央演算処理装置)、メモリおよびハードディスク等を備える。立体画像取得装置100から制御部201に複数の要素画像に対応する画像データが与えられる。表示部202は、3次元ディスプレイを含み、インテグラルフォトグラフィ方式またはホログラム方式等のいずれかの方式で立体画像を表示する。
【0118】
図13は、立体画像表示装置200の制御部201の動作を示すフローチャートである。図13に示すように、制御部201は、立体画像取得装置100から与えられた画像データから複数の要素画像にそれぞれ対応する複数の要素画像データを抽出する(ステップS1)。次に、制御部201は、抽出された各要素画像データに対して、レンズによる歪み等を除去するための幾何学歪み補正処理を行う(ステップS2)。
【0119】
次に、制御部201は、各要素画像データに対して、解像度を向上させるための解像度補正処理を行う(ステップS3)。上記のように、各要素画像の画素数は、カメラ5の撮像素子5bの全画素数を要素レンズ4aの数で除した値以下になる。そこで、複数の要素画像データ間における情報を用いて各要素画像の解像度を向上させることができる。また、図6の例では、カメラ24により被写体Wの高精細な画像が得られる。そのため、カメラ24により得られた画像データを用いて、各要素画像の解像度を向上させることができる。
【0120】
次に、制御部201は、複数の要素画像データから被写体Wの奥行き情報を取得する(ステップS4)。奥行き情報は、被写体Wの複数の物点のz方向における位置を示す。図11の例では、距離検出撮像部63により取得された距離画像から容易に奥行き情報が得られる。
【0121】
次に、制御部201は、取得した奥行き情報に基づいて、ステレオマッチング法等により、被写体Wの3次元モデルを生成する(ステップS5)。次に、制御部201は、生成された3次元モデルに基づいて、表示すべき立体画像の方式に応じたフォーマットの画像データを生成する(ステップS6)。例えばインテグラルフォトグラフィ方式で立体画像を表示する場合、制御部201は、生成された3次元モデルに基づいて、視差を有する複数の画像に対応する画像データを再生成する。この場合、制御部201は、生成された3次元モデルに基づいて、表示される立体画像の奥行き(飛び出し量)を表示部201の性能等に応じて調整することができる。また、制御部201は、生成された3次元モデルに基づいて、表示される立体画像の非線形な変換処理を行うことも可能である。その後、制御部201は、生成された画像データを用いて表示部202により立体画像を表示する(ステップS7)。
【0122】
なお、インテグラルフォトグラフィ方式で立体画像を表示する場合、制御部201は、ステップ3において解像度補正処理が行われた複数の要素画像データを用いて、ステップS7で表示部202により立体画像を表示してもよい。この場合、ステップS5,S6の処理を行う必要がないので、迅速に立体画像を表示することができる。また、この場合には、ステップS5で生成された3次元モデルに基づいて、複数の要素画像間の補間画像に対応する補間画像データを生成することもできる。
【0123】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0124】
上記実施の形態では、要素レンズ4aが要素レンズの例であり、結像光学系1、拡散板2およびレンズ3が導光光学系の例であり、カメラ5が第1の撮影装置の例であり、スリット12a、第1の偏光領域21aおよびレンズ51が光通過領域の例であり、第1の方向がz方向の例であり、第2の方向がx方向の例であり、第3の方向がy方向の例である。
【0125】
また、拡散板2または単焦点レンズ31が発散光学素子の例であり、アパーチャ板12が遮光部材の例であり、スリット12aが開口の例であり、第1の偏光子21が第1の偏光素子の例であり、第1の偏光領域21aが第1の領域の例であり、第2の偏光領域21bが第2の領域の例であり、第2の偏光子22が第2の偏光素子の例であり、レンズ51が長尺状光学素子の例であり、距離検出撮像部63が距離画像取得部の例であり、カメラ24が第2の撮影装置の例であり、ハーフミラー22が分割光学素子の例である。
【0126】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、種々の立体画像の取得に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 結像光学系
2 拡散板
3,31 レンズ
4 レンズアレイ
4a 要素レンズ
5,24 カメラ
5a,24a 撮像レンズ
5b,24b 撮像素子
11 結像レンズ
12 アパーチャ板
13 結像レンズ
21 第1の偏光子
22 ハーフミラー
23 第2の偏光子
51 単焦点レンズ
51a 遮光部材
61 光照射部
62 ダイクロイックミラー
63 距離検出撮像部
100 立体画像取得装置
200 立体画像表示装置
201 制御部
202 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の視差画像を取得する立体画像取得装置であって、
被写体からの光線を複数の要素画像としてそれぞれ結像する複数の要素レンズと、
前記被写体からの光線を前記複数の要素レンズに導く導光光学系と、
前記複数の要素レンズによりそれぞれ結像された前記複数の要素画像を取得する第1の撮影装置とを備え、
前記導光光学系は、第1の方向に沿った光軸を有するとともに、前記第1の方向と略直交する第2の方向に長尺状に延びる光通過領域を形成し、前記光通過領域を通過する光線を前記複数の要素レンズに導き、前記光通過領域を通過しない光線を前記複数の要素レンズに導かないように構成されたことを特徴とする立体画像取得装置。
【請求項2】
前記複数の要素レンズは前記第2の方向と前記第1および第2の方向に略直交する第3の方向とに平行な平面上に2次元状に配置され、
前記導光光学系は、前記光通過領域を通過する光線が前記第1および第3の方向を含む面内で拡がるように光線を拡散または屈折させる発散光学素子を含むことを特徴とする請求項1記載の立体画像取得装置。
【請求項3】
前記複数の要素レンズは、前記第3の方向に対して傾斜しかつ互いに平行な複数の線上に並ぶように配置されることを特徴とする請求項2記載の立体画像取得装置。
【請求項4】
前記導光光学系は、
第1の偏光が透過可能でありかつ前記第1の偏光と異なる第2の偏光が透過不可能である第1の領域、および前記第1の偏光が透過不可能でありかつ前記第2の偏光が透過可能である第2の領域を有する第1の偏光素子と、
前記第1の偏光が透過可能でありかつ前記第2の偏光が透過不可能である第2の偏光素子とを含み、
前記被写体からの光が前記第1および第2の偏光素子を順に通して前記複数の要素レンズに導かれ、
前記第1の偏光素子の前記第1の領域により前記光通過領域が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の立体画像取得装置。
【請求項5】
前記被写体の距離情報を含む距離画像を取得する距離画像取得部をさらに備える特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の立体画像取得装置。
【請求項6】
前記複数の要素レンズの各々は、焦点距離を調整可能な焦点可変レンズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の立体画像取得装置。
【請求項7】
第2の撮影装置と
前記導光光学系により前記複数の要素レンズに導かれる光線の一部を前記第2の撮影装置に導く分割光学素子とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の立体画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177756(P2012−177756A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39733(P2011−39733)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】