説明

立体視画像表示方法および装置

【課題】立体視画像上において立体カーソルを用いて所定の位置を指定する際、所望の範囲以外を立体カーソルによって指定したことを容易に把握する。
【解決手段】立体視画像内の所定の位置の指定を受け付けて立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示する際、立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定を受け付けた場合には、立体指標として立体視できない程度に右目用指標画像と左目用指標画像との視差量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる方向からの被写体へ放射線の照射によって放射線画像検出器により検出された放射線画像を用いて立体視画像を表示する立体視画像表示方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院の検査では病変周辺の組織片を採取することがあるが、近年、患者に大きな負担をかけずに組織片を採取する方法として、中が空洞の組織採取用の針(以下、生検針と称する)を患者に刺し、針の空洞に埋め込まれた組織を採取するバイオプシが注目されている。そして、このようなバイオプシを行うための装置としてステレオバイオプシ装置が提案されている。
【0003】
このステレオバイオプシ装置は、被験者に対して互いに異なる方向から放射線を照射して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像に基づいて立体視画像(ステレオ画像)を表示するものであり、この立体視画像を観察しながら病変の3次元的な位置を特定することができ、生検針の先端をその特定位置に到達するよう制御することによって所望の位置から組織片を採取することができるものである(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−279516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したようなステレオバイオプシ装置において病変の3次元的な位置を特定する方法として、立体視画像上に表示された立体カーソルを用いる方法が考えられる。この立体カーソルとは、右目用カーソル画像と左目用カーソル画像とを所定の視差量をもって表示することによって立体視可能に表示したものである。そして、右目用カーソル画像と左目用カーソル画像との視差量を変更することによって立体視画像上において奥行き方向について移動可能なものであり、立体視画像上における奥行き方向の位置も指定が可能である。
【0006】
しかしながら、立体視の能力は個人差があり、また、同じ立体視画像を観察したとしても人によってその奥行き方向の見え方が異なる場合もあると言われている。
【0007】
したがって、上述したように立体視画像を観察しながら病変の位置を指定する場合、立体カーソルによってターゲティングの位置を指定する際、被写体以外の範囲までターゲティングの位置として指定可能とすると、観察者が立体カーソルを無駄な範囲まで動かしてしまう可能性があり、操作性が悪く、ターゲティングにも時間がかかってしまう。
【0008】
また、観察者は立体視を行いながらターゲティングを行う必要があるが、上述したように立体視の能力には個人差があることから、立体カーソルが被写体内に存在するのか、もしくは被写体以外の範囲に存在するのかを即座に判断できない場合もあり、ターゲティングに時間がかかってしまう場合もある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、立体視画像上において立体カーソルを用いて所定の位置を指定する際、被写体の範囲などの所望の範囲以外を立体カーソルによって指定したことを容易に把握することでき、上述したようなターゲティングの操作性を向上することができる立体視画像表示方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の立体視画像表示装置は、互いに異なる撮影方向からの被写体への放射線の照射によって放射線画像検出器により検出された撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、放射線画像取得部によって取得された撮影方向毎の放射線画像を用いて立体視画像を表示する表示部とを備えた立体視画像表示装置において、表示部に表示されている立体視画像内の所定の位置の指定を受け付ける位置指定受付部と、所定の視差量を有する右目用指標画像と左目用指標画像とを表示させることによって、位置指定受付部によって受け付けられた立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示させる指標表示制御部とを備え、指標表示制御部が、立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定が位置指定受付部によって受け付けられた場合には、立体指標として立体視できない程度に右目用指標画像と左目用指標画像との視差量を大きくするものであることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の立体視画像表示装置においては、指標表示制御部を、立体視画像の奥行き方向についての制限範囲を設定するものとできる。
【0012】
また、被写体の厚さ情報を取得する厚さ情報取得部を設け、指標表示制御部を、厚さ情報取得部によって取得された厚さ情報に基づいて制限範囲を設定するものとできる。
【0013】
また、厚さ情報取得部を、被写体が乳房である場合に、その乳房を圧迫する圧迫板の位置の情報に基づいて厚さ情報を取得するものとできる。
【0014】
また、指標表示制御部を、表示部がステレオバイオプシに用いられる立体視画像を表示する場合に、ステレオバイオプシに用いられる生検針の形状の情報に基づいて制限範囲を設定するものとできる。
【0015】
また、指標表示制御部を、表示部がステレオバイオプシに用いられる立体視画像を表示する場合に、ステレオバイオプシに用いられる生検針の挿入方向の情報に基づいて制限範囲を設定するものとできる。
【0016】
本発明の立体視画像表示方法は、互いに異なる撮影方向からの被写体への放射線の照射によって放射線画像検出器により検出された撮影方向毎の放射線画像を取得し、その取得した撮影方向毎の放射線画像を用いて立体視画像を表示する立体視画像表示方法において、立体視画像内の所定の位置の指定を受け付け、所定の視差量を有する右目用指標画像と左目用指標画像とを表示することによって立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示する際、立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定を受け付けた場合には、立体指標として立体視できない程度に右目用指標画像と左目用指標画像との視差量を大きくするものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の立体視画像表示方法および装置によれば、立体視画像内の所定の位置の指定を受け付けて立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示する際、立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定を受け付けた場合には、立体指標として立体視できない程度に右目用指標画像と左目用指標画像との視差量を大きくするようにしたので、これにより右目用指標画像と左目用指標画像とを2重表示することができ、観察者が制限範囲以外の所定の位置を指定したことを容易に把握することができる。
【0018】
したがって、観察者が誤って被写体以外の位置をターゲティングしてしまうのを防止することができ、さらに観察者が立体指標を無駄な範囲まで動かしてしまうのを防止することによって操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の立体視画像表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示す乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図
【図3】図1に示す乳房画像撮影表示システムの撮影台を上方から見た図
【図4】図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図5】ホイールマウスの構成を示す外観図
【図6】本発明の立体視画像表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの作用を説明するためのフローチャート図
【図7】モニタ上に表示された乳房のステレオ画像MGおよび正常表示の立体カーソルCと、制限範囲Rの一例を示した模式図
【図8】モニタ上に表示された乳房のステレオ画像MGおよび2重表示されたカーソル画像C1,C2と、制限範囲Rの一例を示した模式図
【図9】本発明の立体視画像表示装置のその他の実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の立体視画像表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムについて説明する。本実施形態の乳房画像撮影表示システムは、着脱可能なバイオプシユニットを取り付けることにより乳房用のステレオバイオプシ装置としても動作するシステムである。まず、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成について説明する。図1は、バイオプシユニットが取り付けられた状態の乳房画像撮影表示システムの概略構成を示す図である。
【0021】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ3と、コンピュータ3に接続されたモニタ4および入力部5とを備えている。
【0022】
そして、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。図2は、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0023】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0024】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0025】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0026】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができる。また、間接型の放射線画像検出器としては、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いたものや、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)を用いたものを利用するようにしてもよい。
【0027】
放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0028】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。図3は、図1に示す圧迫板18を上方から見た図であるが、同図に示すように、圧迫板18には、撮影台14と圧迫板18により乳房を固定した状態でバイオプシを行えるよう所定の大きさの開口部6が設けられている。
【0029】
バイオプシユニット2は、その基体部分が圧迫板18の支持部20の開口部に差し込まれ、基体部分の下端がアーム部13に取り付けられることによって、乳房画像撮影表示システム1と機械的、電気的に接続されるものである。
【0030】
そして、バイオプシユニット2は、乳房に穿刺される生検針21を有し、着脱可能に構成された生検針ユニット22と、生検針ユニット22を支持する針支持部23と、針支持部23をレールに沿って移動させ、あるいは針支持部23を出し入れさせることにより、生検針ユニット22を図1から図3に示すX、YおよびZ方向に移動させる移動機構24とを備える。生検針ユニット22の生検針21の先端の位置は、移動機構24が備える針位置コントローラ35により、3次元空間における位置座標(x、y、z)として認識され、制御される。なお、図1における紙面垂直方向がX方向、図2における紙面垂直方向がY方向、図3における紙面垂直方向がZ方向である。
【0031】
コンピュータ3は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような放射線画像記憶部40、制御部41、カーソル表示制御部42および乳房厚情報取得部43が構成されている。
【0032】
放射線画像記憶部40は、放射線画像検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像信号を予め記憶するものである。
【0033】
制御部41は、各種のコントローラ31〜35に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものであるとともに、放射線画像記憶部40に記憶された2枚の放射線画像に基づいてモニタ4にステレオ画像を表示させるものである。具体的な制御方法については後で詳述する。
【0034】
乳房厚情報取得部43は、圧迫板コントローラ34から圧迫板18の位置情報を取得し、その圧迫板の位置情報と予め設定された撮影台14の位置情報とに基づいて、乳房厚の情報を取得するものである。なお、本実施形態においては、撮影台14の位置は固定としたが、撮影台14の位置を変更可能に構成するようにしてもよく、その場合には、撮影台14の位置情報も取得して乳房厚の情報を取得するようにすればよい。
【0035】
カーソル表示制御部42は、所定の視差量をもった左目用カーソル画像と右目用カーソル画像とをモニタ4に表示することによって立体カーソルを表示するものである。そして、カーソル表示制御部42は、入力部5において受け付けられた立体カーソルの移動情報に基づいて左目用カーソル画像と右目用カーソル画像との視差量を変更することによって立体カーソルを奥行き方向(Z方向)に移動させるものである。なお、立体カーソルのX方向およびY方向への移動は、左目用カーソル画像と右目用カーソル画像との視差量を一定に維持したままこれらの画像を移動させることにより行われる。
【0036】
そして、カーソル表示制御部42は、上述した乳房厚情報取得部43によって取得された乳房厚に基づいて、立体カーソルによって指定されるターゲティングの位置の制限範囲を設定するものである。なお。立体カーソルによって指定されるターゲティングの位置とは、たとえば、乳房における異常陰影などの組織を採取する位置のことをいう。このターゲティングの位置に生検針21のたとえば吸引孔などの組織採取部が配置されるように生検針ユニット22が移動制御される。
【0037】
本実施形態のカーソル表示制御部42は、モニタ4に表示されたステレオ画像の奥行き方向(Z方向)についてのターゲティングの位置の制限範囲を設定するものであり、具体的には、入力された乳房厚の情報に基づいて、奥行き方向について乳房画像の範囲のみを制限範囲として設定する。なお、本実施形態においては、奥行き方向についての制限範囲を設定するようにしたが、これに限らず、X−Y方向についても制限範囲を設定するようにしてもよく、その場合、たとえば、圧迫板18に設けられた開口部6の大きさの情報に基づいてX−Y方向についての制限範囲を設定するようにすればよい。
【0038】
そして、カーソル表示制御部42は、立体カーソルによって指定されたターゲティングの位置が上述した制限範囲内である場合には立体カーソルを正常表示し、ターゲティングの位置が制限範囲以外である場合には、立体カーソルとして立体視できない程度に左目用カーソル画像と右目用カーソル画像との視差量を大きくし、これによりカーソルを2重に表示するものである。
【0039】
カーソルを2重表示させるための左目用カーソル画像と右目用カーソル画像との視差量は、たとえば輻輳角が60°以上となるような視差量にすればよい。
【0040】
なお、単にカーソルを2重に表示するだけでなく、たとえば、立体カーソルとして正常に表示されているときの色と、カーソルが2重に表示されているときの色とを変えるようにしてもよい。また、立体カーソルとして正常に表示されているときの形と、カーソルが2重に表示されているときの形を変えるようにしてもよい。また、正常表示時は立体カーソルを点灯表示し、2重表示時はカーソルを点滅表示させるようにしてもよい。
【0041】
入力部5は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、モニタ4に表示された立体カーソルの位置の指定を受け付けるものである。特に、本実施形態においては、立体カーソルの奥行方向の位置を移動させるものとして、図5に示すようなホイールマウス51が用いられる。ホイールマウス51は、回転ホイール52を備えており、この回転ホイール52を観察者が回転させることによって立体カーソルの奥行方向(Z方向)の位置が変更される。また、このホイールマウス51をドラッグすることによって立体カーソルのX−Y方向の位置が変更される。そして、このホイールマウス51を用いて立体カーソルを移動させて異常陰影などを指定することによってターゲティングが行われる。また、入力部5は、撮影者による撮影条件などの入力や操作指示の入力などを受け付けるものである。
【0042】
モニタ4は、コンピュータ3から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示するとともに、そのステレオ画像内に立体カーソルを表示するように構成されたものである。
【0043】
ステレオ画像および立体カーソルを表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0044】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(S10)。
【0046】
次に、入力部5おいて、撮影者によって種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。なお、このとき生検針ユニット22は、上方に待避しており、まだ乳房には穿刺されていないものとする。
【0047】
そして、入力部5において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影が行われる(S12)。具体的には、まず、制御部41が、予め設定されたステレオ画像の撮影のための撮影角度を読み出し、その読み出した撮影角度の情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、このときの撮影角度の情報としてθ=±2°が予め記憶されているものとするが、これに限らず、たとえば、±2°以上±5°以下であれば如何なる角度を用いてもよい。さらに、−θ=0°と+θ=4°のように非対象な角度の組み合わせでも良い。
【0048】
そして、アームコントローラ31において、制御部41から出力された撮影角度の情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、この撮影角度の情報に基づいて、図2に示すように、アーム部13が撮影台14に垂直な方向に対して+θ°回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して+2°回転するよう制御信号を出力する。
【0049】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が+2°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を+2°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0050】
次に、アームコントローラ31は、図2に示すように、アーム部を初期位置に一旦戻した後、撮影台14に垂直な方向に対して−θ°回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して−2°回転するよう制御信号を出力する。
【0051】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が−2°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を−2°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0052】
そして、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶された2つの放射線画像信号は、放射線画像記憶部40から読み出された後、所定の信号処理が施されてモニタ4に出力される。そして、本実施形態のモニタ4においては、2つの放射線画像信号に基づいてステレオ画像が表示されるとともに、この表示と同時に、カーソル表示制御部42から出力された右目用カーソル画像と左目用カーソル画像とに基づいて立体カーソルが表示される(S14)。
【0053】
次に、上述したようにして乳房のステレオ画像および立体カーソルが表示された後、観察者によって乳房における石灰化や腫瘤などが発見され、引き続いてバイオプシユニット2によってそれらの組織を採取したい場合などには、まず、モニタ4に表示されたステレオ画像上において、観察者によって石灰化や腫瘤などのターゲットの位置が指定されるが、このターゲティングの前に、上述したターゲティングの制限範囲が設定される。
【0054】
具体的には、乳房厚情報取得部43が、圧迫板コントローラ34から圧迫板18の位置情報を取得し、その圧迫板の位置情報と予め設定された撮影台14の位置情報とに基づいて乳房厚の情報を取得し、その乳房厚の情報をカーソル表示制御部42に出力する(S16)。
【0055】
そして、カーソル表示制御部42は、入力された乳房厚の情報に基づいて、立体カーソルによって指定されるターゲティングの位置の奥行き方向についての制限範囲を設定する(S18)。
【0056】
上述したようにターゲティングの位置の制限範囲が設定された後、観察者によって立体カーソルを用いて石灰化や腫瘤などのターゲットの位置が指定される(S20)。
【0057】
そして、このとき、カーソル表示制御部42は、立体カーソルによって指定された奥行き方向の位置が制限範囲内である場合には(S22,YES)、立体カーソルを正常表示する(S24)。図7は、モニタ4の表示画面上に表示された乳房のステレオ画像MGおよび正常表示の立体カーソルCを示したものである。また、図7において矢印で示した範囲が制限範囲Rを表したものであり、立体カーソルCは奥行き方向についてこの制限範囲R内に存在するものとする。
【0058】
一方、ターゲティングの奥行き方向の位置が制限範囲以外である場合には(S22,NO)、カーソル表示制御部42は、上述したように右目用カーソル画像と左目用カーソル画像との視差量を大きくすることによって立体カーソルとして立体視不可能とし、これらのカーソル画像が2重に表示されるようにする(S28)。このように2重表示することによって観察者に対して現在指定されているターゲティングの位置が制限範囲以外であることを報知することができる。図8は、立体カーソルCによって制限範囲R外の位置が指定されたときに2重表示された右目用カーソル画像C1と左目用カーソル画像C2とを示したものである。なお、図8における点線矢印の立体カーソルCは実際には表示されないものである。
【0059】
次いで、観察者は、ターゲティングの位置が制限範囲R内となるように、再びターゲティングを行う(S30)。
【0060】
そして、上述したようにして制限範囲R内の位置にターゲティングが行われた後、その指定されたターゲティングの位置情報(x、y、z)が制御部41によって取得され、制御部41は、そのターゲティングの位置情報(x、y、z)をバイオプシユニット2の針位置コントローラ35に出力する。
【0061】
次いで、入力部5において所定の操作ボタンが押されると、制御部41から針位置コントローラ35に対し、生検針21を移動させる制御信号が出力される。針位置コントローラ35は、先に入力された位置情報(x、y、z)の値に基づき、生検針21の組織採取部が、座標(x、y、z+α)が示す位置に配置されるように、生検針21を移動する。ここでαは、生検針21が乳房に刺さらない程度に十分大きな値とする。これにより、生検針21がターゲットの上方にセットされる。
【0062】
その後、観察者により、生検針21の穿刺を指示する所定の操作が入力部5において行われると、制御部41と針位置コントローラ35の制御の下で、生検針21の組織採取部が座標(x、y、z)が示す位置に配置されるように生検針21が移動させられて、生検針21による乳房の穿刺が行われる(S26)。
【0063】
なお、上記実施形態においては、乳房厚の情報に基づいてターゲティングの指定位置の制限範囲を設定するようにしたが、これに限らず、たとえば、乳房厚の情報と生検針21の形状の情報とに基づいて奥行き方向の制限範囲を設定するようにしてもよい。生検針21の形状の情報とは、たとえば、生検針21の先端部分の大きさの情報や、生検針21の先端近傍に設けられた吸引孔から生検針21の先端までの距離の情報などがある。カーソル表示制御部42によって、このような生検針21の種々の形状の情報も含めて制限範囲を設定することにより、バイオプシを行った際に生検針21の先端が乳房を突き抜けないような制限範囲を設定することができる。
【0064】
また、生検針21の形状情報だけでなく、生検針21の挿入方向の情報も利用して制限範囲を設定するようにしてもよい。具体的には、上記実施形態においては生検針21を垂直方向から挿入するようにしたが、生検針21を垂直方向に対して所定の角度だけ傾けて挿入するように構成する場合には、その挿入方向も考慮して制限範囲を設定するようにしてもよい。たとえば、図9に示すように生検針形状情報取得部44と生検針挿入方向情報取得部45を設け、この生検針形状情報取得部44によって取得された生検針の形状情報と生検針挿入方向情報取得部45によって取得された生検針の挿入方向の情報に基づいて、垂直方向に対する生検針21の挿入方向の傾きが大きいほど奥行方向(Z方向)の制限範囲を広く設定するようにしてもよい。
【0065】
生検針21の挿入方向の情報については、使用者が入力部5を用いて入力した情報を生検針挿入方向情報取得部45が取得するようにしてもよいし、たとえば、生検針21の挿入方向と放射線画像の撮影方向とが一定の角度差の関係である場合には、生検針挿入方向情報取得部45が、放射線画像の撮影方向の情報に基づいて生検針21の挿入方向の情報を取得するようにしてもよい。
【0066】
なお、上記実施形態は、ステレオバイオプシを行うことができる乳房画像撮影表示システムであるが、本発明は、ステレオバイオプシを行うことができる装置に限定されるものではなく、ステレオ画像を表示する装置であればその他の装置にも適用可能である。
【0067】
また、上記実施形態は、本発明の立体視画像表示装置を乳房画像撮影表示システムに適用したものであるが、本発明の被写体としては乳房に限らず、たとえば、胸部や頭部などを撮影する放射線画像撮影表示システムにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 乳房画像撮影表示システム
2 バイオプシユニット
3 コンピュータ
4 モニタ
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
16 放射線照射部
17 放射線源
18 圧迫板
22 生検針ユニット
23 針支持部
42 カーソル表示制御部
43 乳房厚情報取得部
44 生検針形状情報取得部
45 生検針挿入方向情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる撮影方向からの被写体への放射線の照射によって放射線画像検出器により検出された前記撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、該放射線画像取得部によって取得された撮影方向毎の放射線画像を用いて立体視画像を表示する表示部とを備えた立体視画像表示装置において、
前記表示部に表示されている前記立体視画像内の所定の位置の指定を受け付ける位置指定受付部と、
所定の視差量を有する右目用指標画像と左目用指標画像とを表示させることによって、前記位置指定受付部によって受け付けられた立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示させる指標表示制御部とを備え、
該指標表示制御部が、前記立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定が前記位置指定受付部によって受け付けられた場合には、前記立体指標として立体視できない程度に前記右目用指標画像と前記左目用指標画像との視差量を大きくするものであることを特徴とする立体視画像表示装置。
【請求項2】
前記指標表示制御部が、前記立体視画像の奥行き方向についての前記制限範囲を設定するものであることを特徴とする請求項1記載の立体視画像表示装置。
【請求項3】
前記被写体の厚さ情報を取得する厚さ情報取得部を備え、
前記指標表示制御部が、前記厚さ情報取得部によって取得された厚さ情報に基づいて前記制限範囲を設定するものであることを特徴とする請求項2記載の立体視画像表示装置。
【請求項4】
前記厚さ情報取得部が、前記被写体が乳房である場合に、該乳房を圧迫する圧迫板の位置の情報に基づいて前記厚さ情報を取得するものであることを特徴とする請求項3記載の立体視画像表示装置。
【請求項5】
前記指標表示制御部が、前記表示部がステレオバイオプシに用いられる前記立体視画像を表示する場合に、前記ステレオバイオプシに用いられる生検針の形状の情報に基づいて前記制限範囲を設定するものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項6】
前記指標表示制御部が、前記表示部がステレオバイオプシに用いられる前記立体視画像を表示する場合に、前記ステレオバイオプシに用いられる生検針の挿入方向の情報に基づいて前記制限範囲を設定するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の立体視画像表示装置。
【請求項7】
互いに異なる撮影方向からの被写体への放射線の照射によって放射線画像検出器により検出された前記撮影方向毎の放射線画像を取得し、該取得した撮影方向毎の放射線画像を用いて立体視画像を表示する立体視画像表示方法において、
前記立体視画像内の所定の位置の指定を受け付け、所定の視差量を有する右目用指標画像と左目用指標画像とを表示することによって前記立体視画像内の所定の位置に立体視可能な立体指標を表示する際、
前記立体視画像内における予め設定された制限範囲以外の所定の位置の指定を受け付けた場合には、前記立体指標として立体視できない程度に前記右目用指標画像と前記左目用指標画像との視差量を大きくするものであることを特徴とする立体視画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−377(P2013−377A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134827(P2011−134827)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】