説明

立体視眼鏡

【課題】特殊な訓練の必要なく誰でも無理なく立体画像が観察でき、観察中に目が疲れたり気分が悪くなったりしにくく、顔や眼鏡の傾きの影響も少なく、左右の目の間隔を超える広視野で自然なカラーの立体画像の観察が可能であり、映写、表示装置、印刷物等のいずれにも適用でき、しかも簡単な構成で安価に製作可能且つ簡便に使用可能な立体視眼鏡を提供する。
【解決手段】有効面内にレンズの光軸を含まない2枚の凸フレネルレンズを、それぞれのレンズの光軸側を外側にして左右に並べて配置したことを特徴とする立体視眼鏡である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一平面上に左右に離間して配置された左目用画像及び右目用画像をそれぞれ左目及び右目で観察することによって立体画像を観察するために使用する立体視眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の様に、人間の目が立体形状の観察対象物を立体的に観察できるのは、人間の左目と右目とが左右に一定距離だけ離れているために、同じ観察対象物を左目で見たときの像と右目で見たときの像とが異なっているからである。
【0003】
この原理を逆に利用して、観察対象物をちょうど人間の左目と右目との間隔だけ離れた位置から撮影して左目用画像と右目用画像とを得、これらを何らかの方法によって左目では左目用画像、右目では右目用画像を同時に見るようにすれば、現実に見ているのは2枚の平面画像であるにもかかわらず、あたかもその観察対象物が立体形状を持ってそこに存在しているかの様に、立体感のある画像(立体画像)を観察することができる。
【0004】
この原理による立体画像の観察の最も簡便な方法は、上記の様にして得た左目用画像を左目の正面に、右目用画像を右目の正面にそれぞれ置いて、目を馴らすことによって左目では左目用画像、右目では右目用画像を同時に見る方法である。
【0005】
しかしこの方法は、人間の目の生理作用に逆らった観察方法であるので、この方法で良好な立体画像を観察できるようになるためには一定の特殊な訓練が必要であり、人によっては、訓練によっても立体画像の観察が不可能な場合もある。
【0006】
また、訓練によって立体画像が観察可能になっても、長時間観察し続けると、目が疲れたり、気分が悪くなったりする場合がある。
【0007】
さらに、左目用画像と右目用画像とは、ちょうど左目と右目との間隔だけ離れた位置に並べて置く必要があることから、観察可能な画像の左右方向の寸法は、必然的に左目と右目との間隔の範囲内に限られるので、広視野の立体画像を観察することは不可能である。
【0008】
このような問題点を克服して、特殊な訓練を行わなくても誰でも無理なく立体画像を観察できるようにするために、観察者が特別な工夫なく普通に観察していれば左目では左目用画像、右目では右目用画像だけが観察できるようにするための、特殊な光学特性を持った眼鏡が何種類か提案されている。
【0009】
それらのうち最も簡単な原理のものは、左右に赤色と青色(又は緑色)の色フィルタをそれぞれ嵌め込んだ眼鏡である。
【0010】
これは、左目と右目との間隔だけ離れた位置からそれぞれ赤色と青色(又は緑色)の光で撮影して左目用画像と右目用画像を得、これらを重ねて印刷、映写又は表示した画像を上記眼鏡を掛けて観察すると画像が立体的に観察できるもので、アナグリフと呼ばれて古くからよく使われている(特許文献1参照)。
【0011】
しかし、この方式は、基本的にはモノクロ画像に限られ、各々の色フィルタの分光透過特性を工夫することによって若干のカラー表現は可能であるが、そのカラーバランスは大きく崩れ、自然なカラー表現は不可能である。
【0012】
また、単純な赤色と青色(又は緑色)との2色の色フィルタに代えて、赤色、緑色及び青色の各波長域をさらに2つずつに分けて左右に振り分けた色フィルタを用いることによって、自然なカラー表現を可能にしたものもある。しかしこれは、真空蒸着やスパッタリング等の精密薄膜形成工程を多数回繰り返して製造される特殊な多層干渉フィルタが必要なため、眼鏡が極めて高価なものとなる。
【0013】
より安価な眼鏡を使用して自然なカラーの立体画像の観察が可能なものとして、偏光フィルタを利用したものがある。
【0014】
これは、左目と右目との間隔だけ離れた位置から撮影した左目用画像と右目用画像とを互いに偏光面が直交する偏光(直線偏光)によって同一の映写スクリーン上に映写し、これを互いに偏光面が直交する偏光板を左右に配置した眼鏡を掛けて観察するものである(特許文献2参照)。
【0015】
しかし、この方式は、左目用画像及び右目用画像の映写に使用する偏光と眼鏡の左右の偏光板との偏光面をそれぞれ正確に一致させた状態で観察する必要があり、顔や眼鏡が傾くと正常な立体画像が観察できない難点がある。
【0016】
直線偏光の代わりに、左旋及び右旋の円偏光を使用したものもあり、これによれば、顔や眼鏡が傾いても正常な立体画像が観察できるが、円偏光フィルタの遮光特性には波長依存性があるため、自然なカラー表現の面ではやや劣る。
【0017】
また、直線偏光にしても円偏光にしても、偏光を利用する方式は本質的に映写方式に限られ、2台の映写機を完全に同期させ且つ完全に位置を合わせて映写する必要があるので設備面及び映写技術面で難点があるほか、映写方式以外の一般的な表示装置(例えば陰極線管、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置等)や印刷物には適用することができないといった制約もある。
【0018】
左目及び右目に左目用画像及び右目用画像を同時に見せる代わりに、人間の目の残像効果を利用して、左目用画像及び右目用画像を一定の時間間隔(数十ミリ秒程度)で交互に映写又は表示し、これと同期して左右が交互に遮光されるように液晶シャッターが駆動される液晶シャッター眼鏡を使用して立体画像を観察する方式もある(特許文献3参照)。
【0019】
この方式によれば、映写のみならず一般的な表示装置にも適用可能であり、自然なカラー表現の面でも問題はなく、顔や眼鏡の傾きも問題にならないといった利点はあるが、液晶シャッターを組み込んだ眼鏡や、その画像との同期のための特殊な装置が必要なため、全体的に非常に高価なシステムとなるほか、光の利用効率が低いため画像が暗くなり勝ちであり、明るい画像を得ようとするとエネルギーの無駄が多くなるといった難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】実用新案登録第3133771号公報
【特許文献2】実願昭60−111116号(実開昭62−19620号)のマイクロフィルム
【特許文献3】特開平11−95186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、従来の立体視眼鏡における上記の様な課題を解決し、特殊な訓練の必要なく誰でも無理なく立体画像が観察でき、観察中に目が疲れたり気分が悪くなったりしにくく、顔や眼鏡の傾きの影響も少なく、左右の目の間隔を超える広視野で自然なカラーの立体画像の観察が可能であり、映写、表示装置、印刷物等のいずれにも適用でき、しかも簡単な構成で安価に製作可能且つ簡便に使用可能な立体視眼鏡を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するための手段として、本発明は、有効面内にレンズの光軸を含まない2枚の凸フレネルレンズを、それぞれのレンズの光軸側を外側にして左右に並べて配置したことを特徴とする立体視眼鏡である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の立体視眼鏡は、有効面内にレンズの光軸を含まない2枚の凸フレネルレンズを、それぞれのレンズの光軸側を外側に、すなわち、左目用凸フレネルレンズはその光軸がその有効視野の左端よりもさらに左側に、右目用凸フレネルレンズはその光軸がその有効視野の右端よりもさらに右側に、それぞれ来るような向きにして、両者を左右に並べて配置して構成されている。
【0024】
従って、観察者がこの立体視眼鏡を掛けて前方遠方を普通に見ると、左目から前方へ向かう左目の視線は、左目の前方に配置され、光軸が左目の有効視野の左端よりもさらに左側にある左目用凸フレネルレンズによって屈折されて前方左側に向かい、一方、右目から前方へ向かう右目の視線は、右目の前方に配置され、光軸が右目の有効視野の右端よりもさらに右側にある右目用凸フレネルレンズによって屈折されて前方右側に向かうことになる。
【0025】
そこで、左右それぞれの目の視線の先の位置に、同じ観察対象物を左目の位置から撮影して得た左目用画像と、右目の位置から撮影して得た右目用画像とをそれぞれ配置すれば、同一平面上に左右に離間して配置した左目用画像及び右目用画像のうち、左目では左目用画像のみを、右目では右目用画像のみを、恰もそれぞれの画像がいずれも左右の中心の位置に配置されているかの様に、無理なく自然に観察することができる。
【0026】
その結果、観察者には、左目では左右の中心に設置した観察対象物を左目の位置から観察した場合に見えるのと同じ画像が、右目では同じ観察対象物を右目の位置から観察した場合に見えるのと同じ画像が観察され、従って、現実に左右の中心に観察対象物を設置して立体視眼鏡なしで観察した場合と事実上同じ視覚状態が実現されるので、現実には存在しない立体形状の観察対象物が恰もそこに実在するかの様に知覚され、これによって立体画像の観察が可能になるのである。
【0027】
この立体視眼鏡によれば、観察者は左右の目の視線を無理に左右に離して観察する必要がなく、立体視眼鏡を掛けること以外は普通に物を見るときと同じ要領で観察すれば良いので、観察のために特殊な訓練を行う必要なく、誰でも無理なく立体画像を観察することができ、左右の目の視線を観察者本人の努力によって無理に左右に離す観察方法と比較すれば、無理な目の使い方による著しい目の疲れや頭痛、吐き気なども大幅に軽減することができる。
【0028】
また、左右の目から前方に向かう視線を人工的に左右方向へそれぞれ屈折させた先の位置に左右の画像を配置するので、観察可能な画像の横幅が左右の目の間隔の範囲内に制限されることなく、さらに大きな寸法の画像が観察可能であり、しかも、それらの画像は実際には、左右の目の前方に配置された凸フレネルレンズによって拡大されて観察されるため、実際の画像の寸法以上の広視野の立体画像の観察が可能である。
【0029】
さらに、光の波長域(色)を左右の目に振り分けるものではないので、通常の平面画像の場合と同様の自然なカラー表現が当然に可能であるとともに、偏光等の特殊な光を利用するものでもないので、顔や眼鏡の傾きの影響も少なく、また、画像の提示手段も、左目用画像及び右目用画像を適切な位置に配置することさえ可能であれば、例えば映写(映写機、液晶投影装置等)、表示装置(陰極線管、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置等)、印刷物、写真印画物、ポジフィルム等、いかなるものにも適用可能である。
【0030】
しかも、本発明の立体視眼鏡それ自体は、通常の眼鏡のフレーム(或いはその代用品)に、通常のレンズの代わりに凸フレネルレンズを嵌め込んだだけという、極めて単純な構造のものであり、電源や制御装置等の付属品も一切不要であるので、容易且つ安価に大量生産が可能であり、流通及び販売・頒布上も何ら支障はなく、持ち運びにも便利であるから、観察者は、立体画像を観察したい時には、いつでもどこでも容易にこれを使用して、画質及び立体効果の高い立体画像の鑑賞を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の立体視眼鏡の模式見取図。
【図2】本発明の立体視眼鏡による立体視の原理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
本発明の立体視眼鏡10は、例えば図1に示した様に、通常の眼鏡のそれと同様のフレーム11の、左右一対のレンズ(近視矯正用眼鏡の場合は凹レンズ、遠視矯正用眼鏡の場合は凸レンズ)を嵌め込むべき箇所に、左右一対の凸フレネルレンズ、すなわち左目用凸フレネルレンズ13及び右目用凸フレネルレンズ14を嵌め込んで構成されている。
【0034】
ここで、上記左目用凸フレネルレンズ13及び右目用凸フレネルレンズ14は、その有効面内、すなわち周囲をフレーム11で囲まれた範囲内にレンズの光軸を含んでおらず、レンズの光軸を中心として同心円状に凹凸が形成された通常のフレネルレンズにおける、光軸からいずれかの方向に偏倚した周辺部の一部分を切り取ったものに相当する形状のものが使用されている。
【0035】
そして、上記左目用凸フレネルレンズ13及び右目用凸フレネルレンズ14は、それぞれのレンズの光軸側を外側にして、すなわち、左目用凸フレネルレンズ13は、その光軸側の端部(図1の紙面に向かって右側の端部)を右目とは反対側(図1の紙面に向かって右側)に向け、右目用凸フレネルレンズ14は、その光軸側の端部(図1の紙面に向かって左側の端部)を左目とは反対側(図1の紙面に向かって左側)に向けるようにして、左右に並べて配置してフレーム11に嵌め込まれている。
【0036】
本発明において、左目用凸フレネルレンズ13及び右目用凸フレネルレンズ14の輪郭の形状は任意に選択することができ、図1に示した矩形の他、例えば角丸矩形、逆台形等任意の多角形やその角丸形、円形、楕円形、茄子形、卵形や、その他通常の眼鏡やサングラスに使用されている任意の形状を採用することができる。
【0037】
フレーム11及びテンプル(つる)12の形状や構造も全く任意であり、フレーム11は各レンズの輪郭全体を囲繞している必要は必ずしもなく、各レンズの輪郭の一部のみを囲繞する形状であってもよいし、フレーム11が存在せずに各レンズ同士を連結金具等で直接連結固定した構造としたり、左右のフレネルレンズを一体に繋げてゴーグル状の構造としたりしてもよく、また、テンプル12も設けずに例えば鼻眼鏡や柄付眼鏡のようにしてもよい。
【0038】
フレーム11やテンプル12の材質も全く任意であり、通常の眼鏡と同様に金属や合成樹脂等であってもよいし、簡易なものでは厚紙や合成紙でも十分に実用に堪えるものが製作可能である。
【0039】
左目用凸フレネルレンズ13及び右目用凸フレネルレンズ14に使用するフレネルレンズは、光学ガラス製であっても勿論差し支えないが、通常は軽量で成形が容易で安価なプラスチック製のシート状(厚さ0.3mm〜5mm程度)のものがよく使用されている。
【0040】
プラスチックの種類は、透明度の高いアクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等がよく使用されており、成形方法としては、精密なものは注型成形法や紫外線硬化型樹脂法が用いられることもあるが、通常は熱プレス法が最も一般的であり、さらに安価な射出成形法や押出成形法によるものも、精度は若干劣るが要求画質があまり高くない用途には使用可能である。
【0041】
この様なプラスチック製のフレネルレンズシートは、例えば携帯用の簡易拡大鏡や、写真機ファインダ用レンズ、安全ミラー用レンズ、スポットライト用レンズ、LED照明用レンズ、光センサ用レンズ、オーバーヘッドプロジェクタ用レンズ、背面投射スクリーン用レンズ、太陽光発電用集光レンズ等、極めて幅広い用途に使用されている。
【0042】
本発明の立体視眼鏡においては、フレネルレンズは片面フレネルレンズであっても両面フレネルレンズであってもよく、片面フレネルレンズの場合は凹凸面を外側に向けても内側に向けてもどちらでも構わないが、片面フレネルレンズの凹凸面を外側に向けて使用した方が、思いなしか装用感が若干良いようである。
【0043】
次に、本発明の立体視眼鏡を使用した立体視の原理について説明する。
【0044】
本発明の立体視眼鏡を使用して立体画像を観察する際には、図2に示した様に、まず、左目21の前方には左目用凸フレネルレンズ22が、右目31の前方には右目用フレネルレンズ32が来る様に、本発明の立体視眼鏡を、通常の眼鏡を装着する場合と同様にして正常に装着する。
【0045】
そして、左目用凸フレネルレンズ22の更に前方左側には、観察対象物を左目の位置から撮影して得た左目用画像23を、右目用フレネルレンズ32の更に前方右側には、観察対象物を右目の位置から撮影して得た右目用画像33を、それぞれ配置する。
【0046】
すると、左目21から前方のある1点(図2中では合成立体画像41の位置)に向かう視線は、左目用凸フレネルレンズ22の屈折作用によって、左目用凸フレネルレンズ22から前方では左側へ向かい、一方、右目31からその同じ前方の1点に向かう視線は、右目用凸フレネルレンズ32の屈折作用によって、右目用凸フレネルレンズ32から前方では右側へ向かう。
【0047】
従って、このようにして屈折された左右のそれぞれの視線の先に、上記した左目用画像23及び右目用画像33がそれぞれ来る様にすれば、観察者の目は、左目21と右目31の視線を無理に離すための特別な努力をしなくても、普通に前方の1点を見ているときと全く同じ状態で、左目21ではその前方の1点よりも左側に配置されている左目用画像23を、右目31ではその同じ前方の1点よりも右側に配置されている右目用画像33を、無理なく自然に観察することができる。
【0048】
このとき、観察者には、左目21で見ている左目用画像23も、右目31で見ている右目用画像33も、共に上記した前方の1点に存在するかのように知覚され、しかも、その左目用画像23と右目用画像33とは、観察対象物の撮影角度の違いにより若干異なっているため、恰もそこに立体形状の観察対象物が現実に置かれているかのように知覚されるのである。
【0049】
つまり、観察者は、左目用画像23からの光が左目用凸フレネルレンズ22によって屈折されて生じた虚像と、右目用画像33からの光が右目用凸フレネルレンズ32によって屈折されて生じた虚像とが合成されて視線前方に生じた虚像である合成立体画像41を観察することになる。
【0050】
この合成立体画像41は、平面画像である左目用画像23と右目用画像33とが合成されて立体画像となっているのみならず、左目用凸フレネルレンズ22及び右目用凸フレネルレンズ32の凸レンズとしての拡大作用により、左目用画像23及び右目用画像33よりも拡大されたものとなっている。
【0051】
さらに、この図2は模式図であるため、左目用画像23及び右目用画像33の横幅は、左右の目の間隔よりは若干広い程度に記載されているが、実際には、左右の凸フレネルレンズ22、32と左右の画像23、33との間の距離(通常、数十cm程度)と、左右の目21、31と左右の凸フレネルレンズ22、32との間の距離(通常、数cm程度)との比率は、この図2の紙面上での比率(3倍弱)よりもずっと大きく(例えば10倍程度以上)取ることが可能であるから、左目用画像23及び右目用画像33の横幅は、左右の目の間隔の数倍程度とすることも可能である。
【0052】
しかも、これらの左目用画像23及び右目用画像33は、上述した通り、左右の凸フレネルレンズ22、32の作用により拡大されて合成されるから、左右に並べた画像を立体視眼鏡を掛けずに目を馴らして同時に観察する場合と比較すれば、遥かに広い視野の立体画像を観察することができる。
【0053】
本発明の立体視眼鏡を使用して観察する左目用画像23及び右目用画像33は、印刷物や写真印画物、ポジフィルム等の様に有体物に固定された画像であってもよいし、映写機や液晶投影装置等によって映写幕上に投影された画像であってもよいし、或いは、例えばテレビ、ビデオやパーソナルコンピュータ、携帯情報端末等の表示画面用として多用されている陰極線管、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置等の表示装置の画面上に表示された画像であってもよい。
【0054】
また、左目用画像23及び右目用画像33は、上述した様に現実に立体形状の観察対象物を撮影して得た画像に限られるものではなく、例えば製図技術、コンピュータグラフィックス技術、バーチャルリアリティ技術等を利用して人工的に作成した画像であってもよいし、本発明の目的を達成し得る十分な精度をもって視差画像を作成し得る限り、手描きや通常の写真の手修整等によって作成した画像であっても勿論差し支えない。
【0055】
さらに、左目用画像23及び右目用画像33は、静止画であってもよいが動画であっても勿論よく、動画の場合には、多数枚の静止画を機械的に順次入れ替えることによって動画を表現する技法(所謂パラパラ漫画の技法)や、映画又はテレビ(ビデオ)の技法、或いはコンピュータグラフィックスによる動画表現技法等を応用することによって、立体画像の動画を鑑賞できるようにすることができる。
【0056】
本発明の立体視眼鏡は、既に各種の用途に広く普及しており安価に市販されているフレネルレンズシートを使用して簡便且つ安価に製造可能であり、しかも、簡易な構造のものでは、畳んだ状態での厚さを例えば数mm程度以内に抑えるように薄型化することも十分に可能であるので、所有者はどこへでも自由に持ち運んで好みの場所で立体画像の鑑賞を楽しむことができる。
【0057】
また、この立体視眼鏡を供給者の立場から見れば、上述した通り嵩張らないので、他の任意の商品に添付して流通させることが十分に可能であるから、例えば、立体視用の画像を集めた画集等の書籍・雑誌類や、立体視用の画像(静止画又は動画)を記録したビデオテープ、ビデオディスク、CD、DVD、ブルーレイディスク、メモリカード、メモリスティック等の記録媒体に添付して、通常の流通ルートで大量に流通、販売することができる。
【0058】
また、この立体視眼鏡自体は単体で安価に販売するか又は無償で配布して、立体視用の画像(静止画又は動画)を電気通信回線(電話回線、インターネット等)を通じて有償で配信するサービスの利用者に使用させたり、或いは、立体視用の画像(静止画又は動画)を含む広告物や販促物、景品等(印刷物又は記録媒体等)にこの立体視眼鏡を添付して、広告宣伝や販売促進、顧客サービス等の目的で無償で配布する、といった応用も可能である。
【0059】
この様に、本発明の立体視眼鏡は、軽量で嵩張らず、安価に製造でき、しかも、立体画像の観察のために特別な設備も必要とせず、誰でもどこでも容易に利用可能なものであるので、極めて多くの態様で広範囲に用途展開が可能な、実用性の頗る高いものである。
【符号の説明】
【0060】
10・・・立体視眼鏡
11・・・フレーム
12・・・テンプル
13・・・左目用凸フレネルレンズ
14・・・右目用凸フレネルレンズ
21・・・左目
22・・・左目用凸フレネルレンズ
23・・・左目用画像
31・・・右目
32・・・右目用凸フレネルレンズ
33・・・右目用画像
41・・・合成立体画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効面内にレンズの光軸を含まない2枚の凸フレネルレンズを、それぞれのレンズの光軸側を外側にして左右に並べて配置したことを特徴とする立体視眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−247930(P2011−247930A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118080(P2010−118080)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】