説明

立体視装置

【課題】従来の立体視装置は装置が大きくなり可搬性を損なう他、価格的にも難が有る。他の従来の立体視装置は液晶シャッター眼鏡を要しさらにこれを駆動する為の電子回路及び本体の表示画像と無線もしくは有線でフレーム同期を取る為の手段も具備する必要があり高価格なものであった。
【解決手段】フラットパッド型コンピューターの液晶表示部の面と平行に配置した全反射鏡、該液晶表示部の面と45度をなす様配置した全反射鏡、さらに該液晶表示部の面と135度をなす様配置した半反射鏡を用いることにより操作者に偏光板対を介して立体映像を提示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレイを用いたフラットパッド型コンピューター等に装着する立体視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
民生機器として適切な価格と形態を持つ立体視装置として、
a. 米国特許US-4281341に代表される、左右の画像をフレーム毎に交互に切換えて表示し、その表示に同期してメガネにとりつけたシャッターを駆動して、右眼視像と左眼視像を分離する方法、
b. また古くから知られた方法として、右眼視像と、左眼視像とを画素単位で交互に表示する表示体の上にレンティキュラーレンズ又はパララックスバリヤー層を配置し、両眼からの視差を利用して立体画像を見せるものがあるが、
a. の場合、液晶シャッター眼鏡を必要とし、さらにこれを駆動する為の電子回路及び本体の表示画像と無線もしくは有線でフレーム同期を取る為の手段も具備する必要があり高価格になるという問題を有する。b. の場合、左右両眼に入射べき像を確保する為に観察位置が変わらないよう常に観察者自身による調節を要し観察者の視聴位置の自由度を損なう。
またこれら2方式は空間解像度と時間解像度のいずれかが半減する。

これらの問題を回避する方式として、光の偏光特性を用いて立体視する方式があり特許2586490を初め複数提案されている。一般的には直角に配置した2個の表示体にそれぞれ左眼視像、右眼視像を表示し、これらと45度をなし配置されたハーフミラーを介して1つの像に重畳された左右両眼視像を、メガネに取り付けた偏光膜で検光し左右両眼に提示するものである。図7にこの方式におけるの左右画像を合成する方法の平面図を例示する。図7において、41は右眼視像42を表示する液晶表示体、43は左眼視像44を表示する液晶表示体であってそれぞれ直線偏光軸が共に鉛直線と45度をなすものである。45はハーフミラーであり右眼視像42の鏡像46を、左眼視像44とほぼ同位置に現出させる。これらの像を、偏光軸が鉛直線と45度をなす偏光板47と偏光軸が鉛直線と135度をなす偏光板48を保持するメガネ49を介して観察者50が観察するものである。2個の偏光板48、49は偏光特性が互いに直交する対をなす。これにより左眼視像を観察者の左眼、右眼視像を観察者の右眼に排他的に提示し立体視を実現するものである。この方式による場合、空間解像度と時間解像度のいずれもが左右眼視像の現解像度を保持することができるものである。

偏光板48、49の偏光特性としては直線偏光もしくは円偏光が用いられる。互いに直交する偏光特性の対とは、直線偏光の場合偏光軸が互いに直交する対を指し、円偏光の場合は右旋回と左旋回からなる対を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公報 第2586490号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「3Dの原理」中原機械設計事務所ホームページ内文献 (URL http://www2.aimnet.ne.jp/nakahara/3dart/3genri.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の半反射鏡と2系統の表示装置を用いた技術によれば、図7に示した様に液晶表示装置およびそれらの信号処理機能が2系統必要であるため高価であり、しかも装置全体の寸法および重量が過大となり可搬性を損なう等の課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、第一発明は、液晶ディスプレイを2分割し、その一方に右眼視像を、他方に左眼視像を表示すること。また該ディスプレイの面と45度をなす様配置した全反射鏡を介して右眼視像の鏡像を操作者に提示すること。また該ディスプレイの表面から該ディスプレイの面の長辺の1/2離れた場所に該ディスプレイの面と平行に配置した全反射鏡を配置し左眼視像の鏡像を具現し、さらに該ディスプレイの面と135度をなす様配置した半反射鏡により該左眼視像の鏡像を反射し操作者に偏光板対を介して提示することを特徴とする立体視装置である。
また、第二発明は、YouTube等の配信動画や記憶装置内に保持する立体動画ファイルを入力とし、右眼視像は上下反転後90度回転し該ディスプレイの右半分に縮小配置し、左眼視像は270度回転し該ディスプレイの左半分に縮小配置された動画信号を出力とする画像信号変換機能を具備することを特徴とする立体視装置である。
【発明の効果】
【0007】
第一発明、および第二発明によれば、折り畳み可能で軽量なアタッチメントと受動型の偏光メガネにより、iPad等の液晶ディスプレイを用いたフラットパッド型コンピューターに装着する事により立体視をが可能な扁平且つ軽量な可搬型の低価格立体視装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明による立体視装置の斜視図である。
【図2】この発明による立体視装置における各要素、表示像、その鏡像を示す側面図である。
【図3】この発明による立体視装置における信号処理フロー表すを示す信号ブロックダイアグラムである。
【図4】図3に示す信号ブロックダイアグラムの各ブロックから出力される映像を示す。
【図5】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】この発明の他の実施形態の斜視図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態の斜視図である。
【図8】従来技術を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明による立体視装置の斜視図を、図1に、その側面図を図2に示す。
フラットパッド型コンピューター11の液晶表示部12を2分割し、その一方に右眼視像13を、他方に左眼視像14を表示する。また該表示部の面と45度をなす様配置した全反射鏡15を介して右眼視像13の鏡像16を現出する。また該表示部12の表面からその長辺の1/2離れた場所に該表示部12の面と平行に全反射鏡17を配置し左眼視像14の鏡像18を現出し、さらに該表示部12の面と135度をなす様配置した半反射鏡19により左眼視像14の鏡像16を反射することにより左眼視像の第二の鏡像20を現出する。液晶表示部12に表示された映像は均等な偏光特性を有するが仮に液晶表示部12がこの長辺方向に対し時計方向45度に偏光軸を持つ直線偏光の場合は上記の鏡像16は時計方向135度に偏光軸をもち、2度鏡像反転をする第二の鏡像20は45度に偏光軸を持つことになる。鏡像16と第二の鏡像20とが観察者21からほぼ等距離に重畳された複合鏡像となり、観察者21は偏光軸がそれぞれ時計方向45度、時計方向135度と、互いに偏光特性が直行する偏光板22、23を保持したメガネ24を介して、この複合鏡像16、20を観察することにより立体像が得られる。また液晶表示部12の偏光軸がこの長辺方向に対し時計方向0度もしくは90度をなすものである場合、液晶表示部の上に旋光性を持つ膜を敷くことで偏光軸を時計方向45度になるよう偏光軸を回転させることが知られている。ここまで液晶表示部12の偏光特性が直線偏光として説明したが、円偏光を偏光特性とする液晶表示部であってもよい。この場合偏光板22、23は右旋回、左旋回の円偏光偏光板となり、偏光特性が直行する偏光板とは、それぞれが左旋回と右旋回であるような偏光板ということである。

次にこの発明による立体視装置の信号処理のブロックダイアグラムを図3に示す。
図3において入力となる立体映像ファイル31は左眼視像ストリームと右眼視像ストリームがマルチプレックスされたものとなっており、フラットパッド型コンピューターに内蔵する記憶装置に保持される場合とインターネットを介したインターネット上のサーバーに保持される場合がある。立体映像ファイル31はデマルチプレクサー32により左眼視像ストリームと右眼視像ストリームに分かれてスケーラー33,34に入力され約半分のサイズに縮小される。一方のストリームは左右反転ブロック35に入力され反転され、さらに回転機36にて時計方向90度に映像を回転させ、他方のストリームは回転機37にて反時計方向90度に映像を回転させる。各ストリームの輝度を調整するゲイン調整ブロック38、39により、左眼視像と右眼視像の輝度を最適化した後液晶表示ブロック40に入力し上記液晶表示体12に提示すべく合成された映像信号を出力するものである。右眼視像が液晶表示部から発して観察者に到達するまでには全反射鏡で1回反射し半反射鏡を1回通過するのに対し、左眼視像が液晶表示部から発して観察者に到達するまでには半反射鏡を1回通過し全反射鏡で1回反射し半反射鏡で1回反射するため、輝度に差を生じる。このため左眼視像と右眼視像の輝度を最適化するゲイン調整ブロック38、39が用いられる。減衰を多く受ける左眼視像の輝度を飽和のない範囲で最大化し、右眼視像の輝度を減衰させることにより輝度差を緩和するものである。また液晶表示ブロック40は入力された2系統の映像信号を前記液晶表示部12の左右に併置するものである。

信号処理のブロックダイアグラムにおける各ブロックの出力に現れる映像を図4に示す。図4において32aはデマルチプレックスされた左眼視像と右眼視像、33a、34aはそれぞれスケーラー33,34の出力映像、35aは左右反転された映像、36a、37aはそれぞれ90度および135度映像を回転した映像、は40aは入力された2系統の映像信号を前記液晶表示部12の左右に併置する液晶表示ブロック40からの出力映像を示す。

以上において右眼視像と左眼視像の配置は交換してもよい。
【実施例】
【0010】
図5は本発明によるフラットパッド型コンピューターに装着するための立体視装置の実施例を示す。
24は全反射鏡15を保持するプラスチック枠。25は全反射鏡17を保持するプラスチック枠。26は半反射鏡19を保持するプラスチック枠。各プラスチック枠24、25、26は共通の回転軸27を持ち回転自由であるが、図2に示した各鏡間の相対位置で準安定となるものである。28は図1におけるフラットパッド型コンピューター11を保持するために構成された溝である。
図6は図5の実施例を扁平な形状に折り畳み、携帯性を容易にした実施例を示す。
図7は図6に示した実施例をさらに携帯性を容易ならしめる為にプラスチック枠25をも折り畳み小型化ならしめた実施例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0011】
この発明によれば、市販のフラットパッド型コンピューターをそのまま使用するのみで立体映像を視聴する事が可能となる。また全反射鏡によって得られた鏡像と全反射鏡と半反射鏡によって得られた鏡像が観察者から見て同位置に現出する為左眼視像と右眼視像が等距離となり目に負担をかける事なく視聴できる。
さらに2枚の全反射鏡と半反射鏡を折り畳むことにより扁平にでき、フラットパッド型コンピューターと重ねて持ち歩くことが可能である。
さらにインターネット上では左眼視像ストリームと右眼視像ストリームをマルチプレックスした立体動画がYouTube等すでに流通しており、これらのストリームを縮小、回転、反転といった簡易なソフトによる画像操作のみで立体視聴が可能である。
【符号の説明】
【0012】
11 フラットパッド型コンピューター、12 液晶表示部、13 右眼視像、14 左眼視像、15 全反射鏡、16 右眼視像13の鏡像、17 全反射鏡、18 左眼視像14の鏡像、19 半反射鏡、20 左眼視像の第二の鏡像、21 観察者、22 偏光板、23 偏光板22と直交する偏光特性を持つ偏光板、24 全反射鏡15を保持するプラスチック枠、25は全反射鏡17を保持するプラスチック枠、26は半反射鏡19を保持するプラスチック枠、27 プラスチック枠の回転軸27、28 フラットパッド型コンピューター11を保持するための溝、
31 立体映像ファイル、32 デマルチプレクサー、33 スケーラー、 34スケーラー、35 左右反転ブロック、36 回転機、37 回転機、38 ゲイン調整ブロック、39 ゲイン調整ブロック、40 液晶表示ブロック、41 液晶表示体、42 右眼視像、 43 液晶表示体、44 左眼視像、45 ハーフミラー、46 右眼視像42の鏡像、47 偏光板、48 偏光板47と偏光特性が直交する偏光板、49 偏光板を保持するメガネ、50 観察者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイを2分割し、その一方に右眼視像を、他方に左眼視像を表示すること。また該ディスプレイの面と45度をなす様配置した全反射鏡を介して右眼視像の鏡像を操作者に提示すること。また該ディスプレイの表面から該ディスプレイの面の長辺の1/2離れた場所に該ディスプレイの面と平行に配置した全反射鏡を配置して左眼視像の鏡像を現出し、さらに該ディスプレイの面と135度をなす様配置した半反射鏡により該左眼視像の鏡像をさらに反射して第二の鏡像を現出し、これらを操作者に偏光板対を介して提示することを特徴とする立体視装置。
【請求項2】
請求項1の立体視装置において、2個の全反射鏡と1個の半反射鏡は折り畳むことが可能な構造であって、折り畳んだ時の厚さが液晶ディスプレイの短辺の1/4以下であることを特徴とする立体視装置。
【請求項3】
右眼視像と左眼視像から構成される立体動画ファイルを入力とし、右眼視像は上下反転後90度回転し該ディスプレイの右半分に縮小配置し、左眼視像は270度回転し該ディスプレイの左半分に縮小配置された動画信号を出力とする画像信号変換機能を具備することを特徴とする立体視装置。
【請求項4】
請求項1の立体視装置において、液晶ディスプレイに表示された右眼視像の輝度と左眼視像の輝度に差を持たせることを特徴とする立体視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234074(P2012−234074A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103337(P2011−103337)
【出願日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(711004975)
【Fターム(参考)】