説明

立坑接合部の免震及び止水構造

【課題】シールドトンネルの発進及び到達立坑の坑口で、シールド機械通過後のセグメントと坑口の接合部において、地震など地盤変状によるトンネルと立坑接合部の免震及び止水構造を提供する。
【解決手段】シールドトンネルの発進及び到達時の立坑Aの坑口Bに設置されるエントランス装置において、坑口Bの内壁面Cに取り付けられるエントランスパッキン1は坑口Bの少なくとも2箇所に適宜間隔を有して取り付けられており、エントランスパッキン1間に組み立てられるセグメントDのシールドトンネル周方向の外面には連通するシール溝(1)3を有し、エントランスパッキン1間の立坑Aの坑口Bの内壁面Cにはシールドトンネル周方向に連通するシール溝(2)4を有し、エントランスパッキン1間とシール溝(1)3、シール溝(2)4とが形成する空隙部5には弾性シール材51を充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は推進工法やシールド工法の推進管やセグメントと立坑接合部との免震及び止水構造に関するものであり、主にシールドトンネルの発進及び到達時の立坑の坑口に設置されるエントランス装置において用いられる立坑接合部の免震及び止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの発進及び到達の立坑とセグメントの接合部の免震と止水とが実施されている。
【0003】
〔発明の背景〕
シールドトンネルと立坑の坑口の空隙にはコンクリートが打設されて保持されているが、地震等による地盤変動によって、坑口とトンネルとの接合部の破損やその空隙が開き、立坑内に土砂や地下水が流入するという問題がある。
【0004】
〔従来の技術〕
これを改良する目的で、従来この種の立坑の坑口にはエントランスパッキンで遮断した坑口と管路との空隙に弾性注入材を充填して管路周縁部と坑口の空隙とを密封することにより、地震等によって発生する地盤変動などに対応でき、坑口及び管路とコンクリート壁面との空隙から土砂や地下水が流入するのを防ぐことが可能であるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−167738号公報(例えば、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水門坑口周辺部免震止水工法及びその構造では、エントランスパッキンは坑口に単列であり、弾性充填材が坑口の地山側に逸脱などによる充填不足となること、管路と弾性充填材との接触面が平滑であることにより、免震と止水の信頼性に乏しいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みて為されたものであり、その解決しようとする課題は、シールドトンネルの発進及び到達立坑の坑口で、シールド機械通過後のセグメントと坑口の空隙部の免震と止水とを信頼性の更なる効果が可能な立坑接合部の免震及び止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)シールドトンネルの発進及び到達時の立坑の坑口に設置されるエントランス装置において、前記坑口の内壁面に環状に取り付けられるエントランスパッキンは前記坑口の少なくとも2箇所に適宜間隔を有して取り付けられており、前記エントランスパッキン間に組み立てられるセグメントのシールドトンネル周方向の外面には連通するシール溝を有し、前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には弾性シール材を充填したことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る立坑接合部の免震及び止水構造によれば、シールド機械とセグメントとの外径差による段差及びシールド機械の中折れくびれの段差などをシールド機械が通過する場合でも、坑口の内壁面の前後に環状に少なくとも2箇所にエントランスパッキンが配設されているので止水が可能であるとともに、シールド機械が立坑から発進及び到達して通過した後、エントランスパッキン間とセグメント外周面のシール溝とが形成する外部と遮蔽された限定した空隙部に、坑口に配設された注入管乃至セグメントグラウト注入管から弾性シール材を充填することにより、弾性シール材の地山への逸脱を防止できると共に充足する充填ができ、地震時の立坑とトンネルの伸縮やセン断などの相対変位に対して、互いの構造物の端部が接触破壊しないように間隔を保つことができる。
【0010】
弾性シール材は、アスファルト乳剤、ウレタン、シリコンゴム、ゴム系材料など注入後に弾性固化するものがよい。
【0011】
したがって、これによれば、シールド機械通過時には段差があっても泥水や地下水の坑口からの漏水が防止できる共に、シールド機械通過後は坑口の免震と止水ができるので、地震に対する構造物の安全性と耐久性が向上する。
【0012】
(2)シールドトンネルの発進及び到達時の立坑の坑口に設置されるエントランス装置において、前記坑口の内壁面に取り付けられるエントランスパッキンは前記坑口の少なくとも2箇所に適宜間隔を有して取り付けられており、前記エントランスパッキン間に組み立てられるセグメントのシールドトンネル周方向の外面には連通するシール溝を有し、前記エントランスパッキン間の前記立坑の坑口の内壁面にはシールドトンネル周方向に連通するシール溝を有し、前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には弾性シール材を充填したことが好ましい。
【0013】
本発明に係る立坑接合部の免震及び止水構造によれば、坑口の内壁面には少なくとも2箇所のエントランスパッキン間のセグメントの外面にはシール溝があり、且つ坑口の内壁面にもシール溝があるので、弾性シール材が地山に逸脱しないことに加えて両シール溝の存在により弾性シール材の設置距離や高さなどボリュームが増すことによって、より多くの変形にも追従でき、免震と止水が可能となる。
【0014】
したがって、これによれば、坑口の免震と止水がより確実にできるので、地震に対する構造物の安全性と耐久性が向上する。
【0015】
(3)前記シール溝は、シールドトンネル軸方向断面が台形状であり、相対する斜辺がテーパー部を形成していることが好ましい。
【0016】
エントランスパッキン間とシール溝とが形成する空隙部に充填された弾性シール材は、テーパー部の存在により断面が楔形状に形成されるので、外水圧が加われば、自分で楔形の方に押されてシール溝と弾性シール材との接触圧力が増すという、所謂セルフシール作用が働くこととなる。
【0017】
また、エントランスパッキンをシール溝の両脇のテーパー部に配置することによりエントランパッキンはシール溝のテーパー部分にもたれかかって密接する。
【0018】
したがって、これによれば、免震に加えて更なる止水性の向上がある。
【0019】
(4)前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には、流体注入により膨張可能な環状のチューブを添設することが考えられる。
【0020】
エントランスパッキン間とシール溝との空隙部に弾性シール材を充填後、必要に応じて流体注入してチューブを膨らませ、弾性シール材に内圧を加え、弾性シール材が膨張して、シール溝面に密着するように作用する。
【0021】
流体注入としては、アスファルト、ウレタン、シリコン、ゴム系材料など注入後に弾性固化するものがよい。
【0022】
したがって、これによれば、地震などによる相対変位により弾性シール材の内部圧力が不足して漏水が発生しても、容易に止水をすることができるのでメンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の立坑接合部の免震及び止水構造によれば、シールドトンネルの発進及び到達立坑の坑口とセグメントの確実な免震と止水が可能となるので構造物の安全性と耐久性が増し維持管理費用の低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る立坑接合部の免震及び止水構造について詳細に説明する。
【0025】
図1及び図2は本発明の実施の形態に係る立坑接合部の免震及び止水構造の断面図である。
【0026】
本実施の形態に係る立坑接合部の免震及び止水構造は、シールドトンネルの発進及び到達時の立坑の坑口に設置されるエントランス装置において、シールド機械の発進と到達に係る坑口とシールド機械及びセグメントとの周知の止水構造に加えて、シールド機械通過後の坑口とセグメントとの接合部とにおける免震及び止水構造を備えるものとして構成されている。
【0027】
具体的には、図1、図2に示すように、立坑Aの坑口Bの内壁面Cに環状に取り付けられるエントランスパッキン1は、内壁面Cにパッキンゴム11と固定金具12及びフラップ13がボルト14によって固定されており、パッキンゴム11に当接して注入管2に接続されたチューブ(1)16が内壁面Cに貼着されており、該フラップ13はヒンジ15を介して坑口Bの内側方向に傾斜してパッキンゴム11を支え、先端部はセグメントDに当接されている。
【0028】
坑口Bの内壁面C内のセグメントDの外面D1には円周方向に連通した断面台形のシール溝(1)3を有しており、前記エントランスパッキン1はシール溝(1)3のテーパー部(1)31に当接して2箇所に取り付けられている。
【0029】
また、坑口Bの内壁面Cには、シールドトンネル周方向に連通する断面台形のテーパー部(2)41を有するシール溝(2)4が、前記エントランスパッキン1のチューブ(1)16の縁端部間に設けられている。
【0030】
前記エントランスパッキン1間とシール溝(1)3とシール溝(2)4とが形成する空隙部5には注入管2またはセグメントグラウト孔(図示せず)が?がっている。
【0031】
さらに、前記空隙部5のシール溝(2)4の溝面には、注入管2に接続された流体注入により膨張可能な環状のチューブ(2)6が貼着されている。
【0032】
次にこのような構成の立坑接合部の免震及び止水構造の作用効果を説明する。
【0033】
シールド機械が立坑Aから発進する時或いは立坑Aに到達する時には、フラップ13はヒンジ15を介して坑口Bの内側方向に傾斜してパッキンゴム11を支え、先端部はセグメントDに当接されているのでパッキンゴム11に付勢される内圧にたいして完全なシール効果が得られる。
【0034】
シールド機械が立坑Aから発進後或いは立坑Aに到達後には、セグメントDを坑口B内に組み立て、空隙部5内のチューブ(1)16に注入管2からシリコンなどの弾性固化の充填材(1)17を圧入し、チューブ(1)16を膨張させる。
このことにより、フラップ13はヒンジ15を介して坑口Bの内側方向に傾斜してパッキンゴム11を支え、先端部はセグメントDに当接されているのでパッキンゴム11に付勢されるチューブ(1)16の内圧にたいして完全なシール効果が得られる。
【0035】
また、前記空隙部5内に注入管2からシリコンなど流体で注入して弾性固化するの弾性シール材51を充填、封入することにより、エントランスパッキン1とシール溝(1)3とシール溝(2)4とが形成する空隙部5に充填、封入された弾性シール材51は、
前記チューブ(1)16を膨張させてパッキンゴム11をシール溝(1)3に圧着させているので、弾性シール材51を注入、充填するのに充分なる圧力を加えてもエントランスパッキン1から弾性シール材51が漏洩することがなく充分に充填、封入ができるので所期のボリュームが確実に確保できるので、地震などの相対変位の応答性が増すので免震に有効に働くと共に、加えて、テーパー部(1)31、テーパー部(2)41の存在により断面が楔形状に形成されるので、外水圧が加われば、楔形の方向に押されて弾性シール材51との接触圧力が増すことによりセルフシール作用が働くという効果が得られる。
【0036】
さらに、エントランスパッキン1をセグメントDのシール溝(1)3のテーパー部(1)31に配置することにより、パッキンゴム11はシール溝(1)3のテーパー部(1)31にもたれかかって密接することにより、猶一層の相対変位への応答と止水性の向上に繋がるものとなる。
【0037】
さらに、また、エントランスパッキン1間とシール溝(1)3、シール溝(2)4との空隙部5に弾性シール材51を充填後、立坑Aの坑口Bとそれに挿着されたセグメントDとが地震などにより相対変位が生じて漏水が発生した場合には、注入管2からチューブ(2)6にシリコンなどの充填材(2)61を注入してチューブ(2)6を膨らませて、弾性シール材51に内圧を加え、弾性シール材51が膨張してシール溝面やエントランスパッキン面に密着するように作用するので、容易に止水することが可能となりメンテナンス性が向上することにより耐久性が増大する。
【0038】
この場合、チューブ(2)6に注入する材料は弾性固化材であるが、注入後に固化しない、例えばオイルなど注入することにより、随時、必要な圧力を調整することが可能となり、地震などにより漏水が発生してもその都度注入圧による弾性シール材51に内圧を加えて膨張させることにより漏水遮断をすることが可能となる。
【0039】
尚、本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、例えば、エントランスパッキンがセグメントのシール溝に接触配置していない場合などにも適用可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の立坑接合部の免震及び止水構造にあっては、シールドトンネル施工時、所謂シールド機械が立坑から発進或いは到達する場合のシールド機械及びセグメントと坑口との止水構造を充分に満たすと共に、シールドトンネル貫通後に、地震などによる立坑と管路との相対変位を管路周りに機能性に過不足ない充分なボリュームと形状にて充填した弾性シール材とエントランスパッキンにて吸収し、且つ、該弾性シール材とエントランスパッキンとで地下水流入を遮断して、シールド施工時の止水構造をそのままに工夫を加えて完成時の免震と止水との構造を具現化したものであり、地震など地盤変状の発生しやすい日本のシールドトンネルには極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る立坑接合部の免震及び止水構造の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る立坑接合部の免震及び止水構造の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
A…立坑
B…坑口
C…内壁面
D…セグメント
D1…外面
1…エントランスパッキン
11…パッキンゴム
12…固定金具
13…フラップ
14…ボルト
15…ヒンジ
16…チューブ(1)
17…充填材(1)
2…注入管
3…シール溝(1)
31…テーパー部(1)
4…シール溝(2)
41…テーパー部(2)
5…空隙部
51…弾性シール材
6…チューブ(2)
61…充填材(2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルの発進及び到達時の立坑の坑口に設置されるエントランス装置において、
前記坑口の内壁面に環状に取り付けられるエントランスパッキンは前記坑口の少なくとも2箇所に適宜間隔を有して取り付けられており、
前記エントランスパッキン間に組み立てられるセグメントのシールドトンネル周方向の外面には連通するシール溝を有し、
前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には弾性シール材を充填したことを特徴とする立坑接合部の免震及び止水構造。
【請求項2】
前記エントランスパッキン間の前記立坑の坑口の内壁面にはシールドトンネル周方向に連通するシール溝を有し、
前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には弾性シール材を充填したことを特徴とする請求項1に記載の立坑接合部の免震及び止水構造。
【請求項3】
前記シール溝は、シールドトンネル軸方向断面が台形状であり、相対する斜辺がテーパー部を形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立坑接合部の免震及び止水構造。
【請求項4】
前記エントランスパッキン間と前記シール溝とが形成する空隙部には、
流体注入により膨張可能な環状のチューブを添設したことを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいづれか1項に記載の立坑接合部の免震及び止水構造。

【図1】
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【図2】
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