説明

立軸ポンプ

【課題】ポンプ効率を低下させることなく据付床からの高さを低く抑えつつ、動力伝達装置の振動および騒音を低減でき、かつ、組み立てやメンテナンスを容易とする。
【解決手段】据付床2に固定され、下端側に揚水管11が連結され、上端側に吐出エルボ15が連結され、外周部に挿通溝28を形成した直管状の吊下管26と、吊下管26内に配置される内ケース43と、内ケース43の上端開口を閉塞するケースカバー45と、内ケース43に一端が連結されるとともに他端が挿通溝28を通して外部に配置される中間ケース47と、中間ケース47の他端に連結される外ケース48とを有し、吊下管26に対して上方から着脱可能としたケーシング42と、主軸17に分離可能に連結される出力部材51と、原動機60に連結される入力軸57と、入力軸57に入力された回転を出力部材51に伝達する伝達機構を有する動力伝達装置(減速装置50)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立軸ポンプの高さを低減するために種々の試みが提案されている。例えば、特許文献1には、吐出エルボの上側外面に動力伝達装置として減速装置を一体的に配設した立軸ポンプが開示されている。また、特許文献2には、吐出エルボ内に減速装置の一部を内蔵した立軸ポンプが開示されている。さらに、特許文献3には、揚水管の下部に位置する中間ケーシング内に減速機構を内蔵した立軸ポンプが開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1,2に記載の立軸ポンプでは、いずれも減速装置が吐出エルボに配設されているので、立軸ポンプが固定された据付床から上方にある程度の離れた位置に減速装置が位置する。そのため、立軸ポンプの作動時に減速装置から発生する振動や騒音が大きくなる傾向がある。
【0004】
また、特許文献2に記載の立軸ポンプでは、水流が鉛直方向から水平方向に方向転換される吐出エルボ内に減速装置が存在するので、吐出エルボ内での流体抵抗が増す。その結果、吐出エルボ内における圧力損失が増してポンプ効率の低下を招く。
【0005】
さらに、特許文献3に記載の立軸ポンプでは、通常は水槽内の水中に位置している中間ケーシング内に減速装置が配設されているため、メンテナンスが不便である。具体的には、故障診断等のために立軸ポンプ全体を水槽から引き上げる必要がある。
【0006】
特許文献4には、これらの問題を解消するための立軸ポンプが開示されている。この立軸ポンプは、揚水管と吐出エルボとの間に、据付床に固定される直管状の吊下管を介設している。この吊下管内には、減速装置のケーシングを構成する内ケースが内蔵されている。この内ケースには、中間ケースの一端が連結され、この中間ケースの他端が吊下管を貫通して外側に配置されている。この中間ケースには、吊下管の外側に配置する外ケースが連結されている。このケーシング内に配設する減速装置は、主軸に連結される出力軸と、原動機に連結される入力軸と、この入力軸に入力された回転を出力軸に伝達する伝達機構とを有する。
【0007】
この特許文献4の立軸ポンプは、特許文献1乃至特許文献3の問題を解消でき、使用上の問題はない。しかし、組立時や定期的なメンテナンス時の作業性について、改良が望まれている。即ち、この立軸ポンプをメンテナンスする際には、排水機場で複数の歯車等からなる伝達機構を分解する必要がある。逆に、組み立てる際には、排水機場で伝達機構を組み立てる必要がある。そのため、組立時やメンテナンス時の作業性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3306749号明細書
【特許文献2】特許第3623135号明細書
【特許文献3】特開2001−73982号公報
【特許文献4】特開2009−024519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポンプ効率を低下させることなく据付床からの高さを低く抑えつつ、動力伝達装置の振動および騒音を低減でき、かつ、組み立てやメンテナンスが容易な立軸ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の立軸ポンプは、鉛直上向きに延び下端側に吸込口を有する揚水管と、この揚水管の上端側に連結された吐出エルボと、前記揚水管内で鉛直方向に延び下端側に羽根車が固定された主軸とを備えた立軸ポンプにおいて、据付床に固定され、下端側に前記揚水管の上端側が連結されるとともに上端側に前記吐出エルボが連結され、かつ、外周部に上端から軸方向に沿って下向きに延びる挿通溝を形成した直管状の吊下管と、前記吊下管内に配置される上端開口の内ケースと、この内ケースの上端開口を閉塞するケースカバーと、前記内ケースに一端が連結されるとともに他端が前記挿通溝を通して前記吊下管の外部に配置される中間ケースと、この中間ケースの他端に連結され前記吊下管の外側に配置される外ケースとを有し、前記吐出エルボを分離した状態の前記吊下管に対して上方から着脱可能としたケーシングと、前記内ケース内に配置され前記主軸に分離可能に連結される出力部材と、前記外ケース内に一端が配置され他端が前記ケーシングの外部に位置して原動機側に連結される入力軸と、前記ケーシング内に配置され前記入力軸に入力された回転を前記出力部材に伝達する伝達機構を有する動力伝達装置と、を備える構成としている。
【0011】
この立軸ポンプは、動力伝達装置を配設するケーシングの内ケースが吊下管内に内蔵され、中間ケースが吊下管の挿通溝を貫通し、外ケースが吊下管の外部に配置されている。そのため、据付床からの立軸ポンプの高さを低く抑えることができる。また、据付床に固定された吊下管に動力伝達装置のケーシングが配置されているため、動力伝達装置が据付床に近い位置にある。そのため、立軸ポンプの作動時に動力伝達装置から発生する振動や騒音を低減できる。さらに、動力伝達装置のケーシングの内ケースが直管状の吊下管内に内蔵されているため、作動時に動力伝達装置から発生する騒音を更に低減できる。しかも、吐出エルボ内には流体抵抗を増加させる障害物が存在しないため、吐出エルボ内での圧力損失を低減できる。よって、ポンプ効率を高めることができる。
【0012】
また、この立軸ポンプは、吊下管に中間ケースの挿通溝を設け、吐出エルボを分離した状態の吊下管に対してケーシングを上方から着脱可能としている。そのため、メンテナンス時には、吐出エルボを分離した状態で内ケースからケースカバーを分離し、主軸と出力部材の連結を解除することにより、ケーシングを吊下管から分離することができる。また、組立時には、工場等で動力伝達装置をケーシング内に組み付けた状態で、排水機場では内ケースが吊下管内に位置するように上方から配置し、出力部材と主軸とを連結するだけで良い。このように、排水機場では伝達機構を分解することなく、動力伝達装置を着脱可能としているため、組立時やメンテナンス時の作業性を大幅に向上できる。
【0013】
この立軸ポンプでは、前記吊下管の上端に、前記据付床に固定するための据付部を設け、この据付部に、前記挿通溝に連通して前記ケーシングを挿通配置する配置孔部を設けることが好ましい。このようにすれば、据付床に対してケーシングを上下に貫通させた状態で配置できるため、据付床からの立軸ポンプの高さを更に低く抑えることができる。
この場合、前記据付部は、前記吊下管とは別体のベースプレートからなることが好ましい。このようにすれば、部品点数は増加するが、吊下管の構造を簡素化できるため、コストダウンを図ることができる。
【0014】
また、前記入力軸と前記原動機の出力軸とをカップリングにより分離可能に連結することが好ましい。このようにすれば、動力伝達装置から原動機を分離できるため、動力伝達装置の着脱時の作業性を更に向上できる。
【0015】
さらに、前記吊下管の内部に、前記ケーシングの内ケースを上部に配設する内ケース配置部を設けることが好ましい。このようにすれば、ケーシングの内ケースの安定性を向上できるうえ、液密性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の立軸ポンプでは、動力伝達装置を配設するケーシングは、内ケースが据付床に固定された吊下管に内蔵され、中間ケースが吊下管の挿通溝を貫通し、外ケースが吊下管の外部に配置されている。そのため、据付床からの立軸ポンプの高さを低く抑えることができる。また、立軸ポンプの作動時に動力伝達装置から発生する振動や騒音を低減できる。さらに、吐出エルボ内での圧力損失を低減できるため、ポンプ効率を高めることができる。
【0017】
また、この立軸ポンプは、吊下管に中間ケースの挿通溝を設け、吐出エルボを分離した状態の吊下管に対してケーシングを上方から着脱可能としている。そのため、排水機場では、伝達機構を一体的に組み付けた状態で動力伝達装置を着脱できるため、組立時やメンテナンス時の作業性を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態の立軸ポンプを示す断面図である。
【図2】図1の要部分解断面図である。
【図3】ベースプレートおよび吊下管の平面図である。
【図4】ベースプレートに動力伝達装置を配設したケーシングを取り付けた状態を示す断面図である。
【図5A】立軸ポンプの第1分解状態を示す断面図である。
【図5B】立軸ポンプの第2分解状態を示す断面図である。
【図5C】立軸ポンプの第3分解状態を示す断面図である。
【図6】第2実施形態の立軸ポンプを示す断面図である。
【図7】図6の要部分解断面図である。
【図8】図6の要部断面図である。
【図9】第3実施形態の立軸ポンプを示す断面図である。
【図10】図9の要部分解断面図である。
【図11】図9の要部断面図である。
【図12】第4実施形態の立軸ポンプを示す断面図である。
【図13】図12の要部分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1乃至図5は、本発明に係る第1実施形態の立軸ポンプを示す。この立軸ポンプは、水槽1の上方に設けられた据付床2に固定され、水槽1に溜められた揚水を下流側の吐出水槽等へ排水するものである。本実施形態の立軸ポンプは、動力伝達装置である減速装置50を配設するケーシング42をポンプケーシング10に対して着脱可能とし、組立時やメンテナンス時の作業性を向上するものである。
【0021】
図1に示すように、ポンプケーシング10は、鉛直方向に延びる直管状の揚水管11を備えている。この揚水管11は、下端にベーンケーシング12が連結され、このベーンケーシング12の下端にベルマウス13が連結されている。このベルマウス13の下端は、揚水の吸込口14を構成する。ポンプケーシング10は、後述する吊下管26を介して揚水管11の上端側に連結される吐出エルボ15を更に備えている。この吐出エルボ15は、上端の吐出口16に向かって鉛直方向から水平方向に湾曲している。吐出口16は、吐出水槽側への配管(図示せず)に連結されている。
【0022】
ポンプケーシング10内には、鉛直方向に延びるように主軸17が配設されている。この主軸17は、カットレス軸受、セラミック軸受等のすべり軸受である第1軸受18A,18Bによって回転自在に支持されている。ベーンケーシング12内に位置する下端側の第1軸受18Aは、ベーンケーシング12に連結された上下両端開口のフレーム19内のホルダ20Aに取り付けられている。一方、主軸17の上端側の第1軸受18Bは、揚水管11に固定されたホルダ20Bに取り付けられている。
【0023】
主軸17の下端には、揚水を汲み上げるための羽根車21が固定されている。一方、主軸17の上端には、カップリング22を介して連結軸23が連結されている。この連結軸23は、カップリング22と後述する軸封装置31によって回転自在に支持されている。連結軸23の上端には、後述する減速装置50の出力部材51に連結する連結部25が設けられている。なお、主軸17と連結軸23とは、一体に設けてもよい。
【0024】
揚水管11と吐出エルボ15との間には、直管状をなす両端開口の吊下管26が介設されている。この吊下管26は、下端側に揚水管11を連結して据付床2に固定することにより、揚水管11を据付床2に対して水槽1の底部へ向けて鉛直方向に設置するものである。本実施形態の吊下管26には、据付床2に固定するための別体のベースプレート32が上端に連結されている。
【0025】
図1および図2に示すように、吊下管26は、上端にベースプレート32を連結するフランジ27aを備え、下端側に揚水管11を吊り下げて連結するためのフランジ27bを備えている。これらフランジ27a,27bには、ベースプレート32および揚水管11を連結するためのボルト孔(図示せず)が設けられている。また、吊下管26の外周部には、上端から軸方向に沿って下向きに延びる挿通溝28が設けられている。この挿通溝28は、外側から見て矩形状をなすように設けられている。
【0026】
吊下管26の内部下端には、上部に減速装置50のケーシング42の内ケース43が配置される内ケース配置部29が一体的に設けられている。この内ケース配置部29は略半球形状をなし、吊下管26の軸線に一致するようにガイドーベーンを介して一体的に設けられている。この形状および配置により、吊下管26内の流路抵抗の増加は最小限に抑制されている。また、内ケース配置部29は中空状をなし、その内部空間を潤滑油を循環させる循環室30としている。なお、内ケース配置部29には、上下に連結軸23を貫通させる開口部を有し、その上側開口部に軸封装置31が配設されている。
【0027】
ベースプレート32は、吊下管26の上端を据付床2に固定するための据付部である。このベースプレート32は、図3に示すように、据付床2に形成した鍵穴形状の貫通孔2aを塞ぐように、この貫通孔2aより大きい鍵穴形状に形成されている。ベースプレート32には、外周部に貫通孔2aの縁付近で据付床2に固定するためのボルト孔33が設けられている。また、ベースプレート32には、吐出エルボ15内および吊下管26内に連通して、排水流路の一部を構成する円形状の排水孔部34が設けられている。この排水孔部34の外周部には、吐出エルボ15および吊下管26を固定するためのボルト孔35が設けられている。さらに、ベースプレート32には、排水孔部34に連通するとともに組立状態で吊下管26の挿通溝28に連通する配置孔部36が設けられている。この配置孔部36は、ケーシング42を挿通配置するもので、矩形状をなす外ケース配置部37と中間ケース配置部38とを有する。
【0028】
本実施形態のベースプレート32には、外ケース配置部37と中間ケース配置部38との境界部分の角部に、段状をなすように窪ませた嵌合凹部39,39が設けられている。この嵌合凹部39は、補助プレート40を嵌合させて装着するものである。この補助プレート40は、一対の嵌合凹部39,39に嵌合する嵌合部41を突設した略T字形状ものである。図1および図2に示すように、補助プレート40は吐出エルボ15に連結され、組立状態で吐出エルボ15とケーシング42の中間ケース47との間の隙間を液密状態で封鎖する。
【0029】
ポンプケーシング10には減速装置50が着脱可能に配設され、組立状態では減速装置50の一部が内蔵される。減速装置50のケーシング42は、吊下管26内に配置される内ケース43と、内ケース43の上端開口を閉塞するケースカバー45と、挿通溝28を通して吊下管26の内外にかけて延びる中間ケース47と、吊下管26の外側に配置される外ケース48とを備えている。
【0030】
内ケース43は、鉛直方向に延びる円筒状のものである。この内ケース43は、吊下管26の内ケース配置部29上に配置されることにより、吊下管26の軸線と一致する。内ケース43の下端には、減速装置50の出力部材51を配設する出力部材配設部44が連結軸23の軸線に一致するように設けられている。なお、内ケース43は、出力部材配設部44に出力部材51を配設することにより、下端側が液密状態で仕切られる。また、内ケース43の外周部には、中間ケース47が連結される連通孔が設けられている。
【0031】
ケースカバー45は、ボルト止め等の周知の連結構造によって、内ケース43の上端開口に液密状態で連結されるものである。このケースカバー45には、自動調圧装置80を装着するための装着孔46が設けられている。なお、組立状態では吐出エルボ15の下端から僅かに突出しているが、この部分では吐出エルボ15は鉛直方向に延びる直管状である。
【0032】
中間ケース47は、内ケース43の連通孔の外周部に一端が液密状態に連結され、他端が挿通溝28を通して吊下管26の外部に配置される四角筒状のものである。この中間ケース47の上面は、組立状態で吊下管26のフランジ27aの上面と面一に一致する。そして、中間ケース47は、挿通溝28との間および補助プレート40との間が、周知のシール手段によって液密状態にシールされる。
【0033】
外ケース48は、水平断面形状がベースプレート32の外ケース配置部37より小形の直方体の中空箱体からなる。この外ケース48は中間ケース47の他端に連結され、その内部が中間ケース47および内ケース43と連通するとともに、大気およびポンプケーシング10内の流水に対して密封されている。外ケース48には、中間ケース47よりベースプレート32の肉厚分高い位置に、ベースプレート32上に載置して連結するための固定フランジ49が突設されている。この固定フランジ49は、図4に示すように、補助プレート40の上方に切欠部49aが設けられている。即ち、固定フランジ49は、補助プレート40の上方を除くように設けられている。これにより、補助プレート40を連結した吐出エルボ15を上向きに分離することができる。
【0034】
これらのケース43,47,48を一体的に連結したケーシング42は、ベースプレート32の上方から孔部34,36を通して配置することにより、吊下管26に対して上方から装着することができる。そして、補助プレート40を連結した吐出エルボ15を上方に配置してボルト止めすることにより、液密状態の排水流路を形成することができる。
【0035】
ケーシング42に配設される減速装置50は、内ケース43内に配置される出力部材51を備えている。この出力部材51は、連結軸23を介して主軸17に連結されるもので、中空シャフト52の上端にカサ歯車53が一体的に設けられている。中空シャフト52は、出力部材配設部44内に配置され、その外周部にはボール軸受54とメカニカルシール55が更に配設されている。この出力部材51には、中空シャフト52を通してカサ歯車53から連結軸23の連結部25が貫通され、ナット56の締め付けにより連結軸23に連結される。
【0036】
また、減速装置50は、一端が外ケース48の内部に配置され、他端が外ケース48の外部に配置される第1入力軸57を備えている。この第1入力軸57は、外ケース48の上端壁を貫通して主軸17と平行に延びるように、ボール軸受58によって回転自在に支持されている。外ケース48において、第1入力軸57が貫通する部分には軸封装置59が配設されている。
【0037】
第1入力軸57に回転駆動力を入力する原動機60は、外ケース48上に配設されている。この原動機60の出力軸61は、カップリング62によって第1入力軸57と分離可能に連結されている。
【0038】
さらに、減速装置50は、原動機60から第1入力軸57に入力された回転を減速して出力部材51に伝達する伝達機構を備えている。この伝達機構は、内ケース43内に位置し、出力部材51のカサ歯車53に噛み合うカサ歯車63を有する。このカサ歯車63には、出力部材51の軸線に対して直角方向に延びる中間軸64が連結されている。この中間軸64は、ボール軸受65によって回転自在に支持されている。中間軸64の他端は、外ケース48内に位置するように水平方向に延び、その他端側に大径カサ歯車66が配設されている。また、伝達機構は、大径カサ歯車66に噛み合う小径カサ歯車67を有する。この小径カサ歯車67には、中間軸64の軸線に対して直交方向に延びる第2入力軸68が連結されている。この第2入力軸68は、第1入力軸57と同一軸線となるように鉛直方向に延び、ボール軸受69によって回転自在に支持されている。本実施形態では、第1および第2入力軸57,68は、クラッチ機構70によって連結状態および非連結状態に切換可能となっている。この伝達機構では、第1入力軸57に入力された原動機60の回転は、第2入力軸68、小径カサ歯車67、大径カサ歯車66、中間軸64およびカサ歯車63を経て、カサ歯車53を有する出力部材51に伝達される。この間に回転速度が減速され、かつ回転軸の向きが垂直方向から水平方向に変換された後、更に垂直方向に変換される。
【0039】
なお、ケーシング42には、外ケース48の外壁から中間ケース47を経由して、先端が内ケース43内に至るアクセス管71が配管されている。このアクセス管71は、カサ歯車53,63の噛み合いの状態等を検査するために、内視鏡などの視認装置を挿通させるものである。
【0040】
本実施形態の立軸ポンプは、ポンプケーシング10内に揚水がない状態での空中での運転(ドライ運転)や、揚水が海水である場合でも運転を可能とする潤滑油循環機構を備えている。
【0041】
潤滑油循環機構は、主軸17および連結軸23を間隔をあけて取り囲む保護管72A,72Bを備えている。下側の保護管72Aは、下端側がベーンケーシング12のフレーム19の上端に液密状態で取り付けられ、上端がホルダ20Bの下端に液密状態で取り付けられている。また、上側の保護管72Bは、下端側がホルダ20Bの上端に液密状態で取り付けられ、上端が吊下管26の内ケース配置部29の下端に液密状態で取り付けられている。これにより、保護管72A,72Bの内部は、内ケース配置部29内の循環室30と連通している。一方、保護管72Aの下端側はホルダ20Aの下端に液密状態で取り付けられている。
【0042】
保護管72A,72Bの内部と吊下管26の循環室30とにより第1潤滑油室74が形成されている。また、減速装置50のケーシング42の内部空間により第2潤滑油室75が形成されている。第1潤滑油室74には生分解性の潤滑油(第1潤滑油)が充填されている。生分解性潤滑油としては、例えば合成エステル系生分解油、ポリエステル系植物系生分解油がある。第2潤滑油室75には生分解性でない通常の潤滑油(第2潤滑油)が充填されている。通常の潤滑油としては、例えばタービン油がある。なお、図中87は、外ケース48の内部を監視するための監視窓である。
【0043】
第1潤滑油室74は、上端の循環室30と下端のホルダ20Aにかけて潤滑油管76が接続されている。この潤滑油管76には、据付床2より上方に位置する部分に、開閉用のバルブ77とオイルフィルタ78が介設されている。潤滑油管76にも第1潤滑油と同じ生分解性潤滑油が充填されている。
【0044】
連結軸23には、吊下管26の接続部付近に位置するように羽根79が設けられている。なお、この羽根79は主軸17に設けてもよい。立軸ポンプの運転時には、主軸17および連結軸23の回転により羽根79が回転する。この羽根79の回転により、第1潤滑油室74内を第1潤滑油が循環する。具体的には、羽根79の回転により、潤滑油管76の第1潤滑油が上端側から下端側へ流れ、第1軸受18Aよりも下方で第1潤滑油室74内に流入し、さらに第1潤滑油室74を上昇して潤滑油管76の上端側に戻る潤滑油流れが発生する。
【0045】
また、本実施形態では、第2潤滑油室75内の圧力を自動調節するために、ケーシング42のケースカバー45の装着孔46に自動調圧装置80が配設されている。この自動調圧装置80は、両端開口の圧力導入管と一端が開口して他端が閉鎖したベローズ(可変部材)とを備える。ベローズは、閉鎖端に第2潤滑油室75内の潤滑油の圧力と流路の静圧の差圧が作用し、それに応じて伸縮することで、第2潤滑油室75内の潤滑油の圧力と流路の静圧が釣り合った状態で維持する。これにより第2潤滑油室75から揚水の流路への潤滑油の漏洩と、揚水の流路から第2潤滑油室75への水分の侵入を防止できる。なお、この自動調圧装置80は、内ケース配置部29の循環室30内にも配設されている。
【0046】
以上の構成を備える本実施形態の立軸ポンプには以下の特徴がある。
【0047】
減速装置50のケーシング42は、内ケース43が吊下管26内に内蔵され、中間ケース47が吊下管26を貫通し、外ケース48が吊下管26の外部に配置されている。そのため、減速装置50のケーシング42の最上部を吐出エルボ15の最上部以下の高さに設定でき、据付床2からの立軸ポンプの高さを低く抑えることができる。しかも、本実施形態では、吊下管26に配設するケーシング42は、据付床2を貫通させた状態で配置できるため、立軸ポンプの高さを更に低く抑えることができる。
【0048】
また、減速装置50のケーシング42は、据付床2に固定された吊下管26に配置されており、吐出エルボ15に配置する場合と比較すると、減速装置50が据付床2に近接して配置されている。そのため、立軸ポンプの作動時に減速装置50から発生する振動や騒音を低減できる。また、減速装置50のケーシング42の内ケース43は吊下管26内に内蔵され、揚水される水の流れの中に配置されているため、この点でも作動時に減速装置50から発生する騒音が低減される。
【0049】
さらに、減速装置50のケーシング42の内ケース43は、揚水される水の流れの向きが鉛直方向から水平方向に曲げられる吐出エルボ15内ではなく、直管状の吊下管26内に配置されている。そのため、吐出エルボ15内に流体抵抗を増加させる突起等の障害物が存在せず、吐出エルボ15内における圧力損失を低減しないので、その分ポンプ効率を高めることができる。
【0050】
さらにまた、軸受18A,18Bは、潤滑油管76と羽根79により第1潤滑油が循環される第1潤滑油室74内に配置されている。そのため、軸受18A,18Bの許容荷重が増大するとともに信頼性が高まり、ドライ運転や揚水が海水である場合にも適用できる。また、第1潤滑油室74と潤滑油管76には生分解性潤滑油を充填しているので、潤滑油管76や第1潤滑油室74から水槽1や流路への潤滑油の漏洩が発生した場合にも生分解性潤滑油は速やかに流路の揚水中に分解し、潤滑油の漏洩に起因する環境への影響を最小限に低減できる。
【0051】
そして、本実施形態の立軸ポンプは、吊下管26に中間ケース47の挿通溝28を設け、吐出エルボ15を吊下管26から分離した状態で、ケーシング42を吊下管26に対して上方から着脱可能としている。そのため、メンテナンス時には、図5Aに示すように、原動機60をケーシング42から分離するとともに、吐出エルボ15を分離する。ついで、図5Bに示すように、内ケース43からケースカバー45を分離して、主軸17と出力部材51の連結を解除する。これにより、図5Cに示すように、減速装置50を内蔵したケーシング42を吊下管26から分離することができる。逆に、組立時には、工場等で減速装置50をケーシング42内に組み付けた状態で、排水機場では内ケース43が吊下管26内に位置するように上方から配置し、出力部材51と主軸17とを連結するだけで良い。このように、排水機場では伝達機構を分解することなく、減速装置50を着脱可能としているため、組立時やメンテナンス時の作業性を大幅に向上できる。
【0052】
また、吊下管26は、別体のベースプレート32によって据付床2に固定されるため、部品点数は増加するが、吊下管26およびベースプレート32の構造は簡素化できる。よって、コストダウンを図ることができる。
【0053】
(第2実施形態)
図6乃至図8は第2実施形態の立軸ポンプを示す。この第2実施形態では、伝達機構の構成を変更するとともに、潤滑油循環機構を設けない構成とした点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第2実施形態の吊下管26は、内ケース配置部29の下端開口部に連結軸23との間を液密状態で封鎖する軸封装置81を配設している。また、この吊下管26の内ケース配置部29には、潤滑油管76を接続しない構成としている。
【0054】
また、第2実施形態の伝達機構は、クラッチ機構70を設けることなく1本の第1入力軸57で構成されている。さらに、中間軸64には、大径カサ歯車66の代わりにフェースギア82を配設し、第1入力軸57には、小径カサ歯車67の代わりにピニオン83を配設している。そして、原動機60から入力される回転を、第1入力軸57、ピニオン83、フェースギア82、中間軸64およびカサ歯車63を経て、カサ歯車53を有する出力部材51に伝達し、主軸17を回転させることができる。
【0055】
なお、ピニオン83およびフェースギア82の代わりにウォームギアとウォームホイールを用いることも可能である。即ち、本発明の立軸ポンプでは、伝達機構の構成は希望に応じて変更が可能であり、このようにしても、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
(第3実施形態)
図9乃至図11は第3実施形態の立軸ポンプを示す。この第3実施形態では、原動機60から入力される回転の方向を変更するとともに、伝達機構の構成を変更した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、中間軸64には大径平歯車84を配設している。また、第1入力軸57を主軸17に対して直交方向に延びるように配設し、この第1入力軸57に小径平歯車85を配設している。そして、原動機60から入力される回転を、第1入力軸57、小径平歯車85、大径平歯車84、中間軸64およびカサ歯車63を経て、カサ歯車53を有する出力部材51に伝達し、主軸17を回転させることができる。
【0057】
即ち、本発明の立軸ポンプでは、原動機60の配置位置は希望に応じて変更が可能であり、このようにしても、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、本実施形態のように、原動機60をケーシング42の横に配設する構成とすれば、据付床2からの立軸ポンプの高さを更に低く抑えることができる。
【0058】
(第4実施形態)
図12および図13は第4実施形態の立軸ポンプを示す。この第3実施形態では、吊下管26の下端に据付部を構成するベースプレート32を配設した点で、第1実施形態と相違する。
【0059】
具体的には、第4実施形態のベースプレート32は、吊下管26の下端を据付床2に固定するものであり、上端に吊下管26が連結され、下端に揚水管11が連結される。このベースプレート32には、揚水管11内および吊下管26内に連通して、排水流路の一部を構成する円形状の排水孔部34が設けられている。また、第1実施形態の配置孔部36の代わりに、潤滑油管76を挿通する挿通孔86が設けられている。さらに、嵌合凹部39および補助プレート40は設けられていない。吐出エルボ15は、吊下管26のフランジ27aに配設してボルト止めすることにより、面一に一致している中間ケース47の上面との間を液密状態で封鎖する。動力伝達機構のケーシング42は、外ケース48をベースプレート32上に載置するように寸法設定した点でのみ、相違する。
【0060】
このように構成した第4実施形態では、第1実施形態と比較すると据付床2からの立軸ポンプの高さが高くなるが、従来例と比べると十分に低く抑えることができる。また、吐出エルボ15を連結するための構成が簡素化されるため、液密性を高めることができるうえ、コストダウンを図ることができる。
【0061】
なお、本発明の立軸ポンプは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、第4実施形態のようにベースプレート32を吊下管26の下端に配設する構成であっても、第2および第3実施形態のように、その伝達機構は希望に応じて変更が可能であるうえ、原動機60の配設位置も希望に応じて変更が可能である。
【0063】
また、各実施形態では、吊下管26を据付床2に固定するための据付部を別体からなるベースプレート32により構成したが、吊下管26の上端のフランジ27aや下端のフランジ27bに一体的に設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…水槽 2…据付床
2a…貫通孔 10…ポンプケーシング
11…揚水管 14…吸込口
15…吐出エルボ 17…主軸
21…羽根車 23…連結軸
26…吊下管 28…挿通溝
29…内ケース配置部 32…ベースプレート(据付部)
34…排水孔部 36…配置孔部
40…補助プレート 42…ケーシング
43…内ケース 45…ケースカバー
47…中間ケース 48…外ケース
49…固定フランジ 50…減速装置(動力伝達装置)
51…出力部材 53…カサ歯車
57…第1入力軸 60…原動機
61…出力軸 62…カップリング
63…カサ歯車(伝達機構) 64…中間軸(伝達機構)
66…大径カサ歯車(伝達機構) 67…小径カサ歯車(伝達機構)
68…第2入力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直上向きに延び下端側に吸込口を有する揚水管と、この揚水管の上端側に連結された吐出エルボと、前記揚水管内で鉛直方向に延び下端側に羽根車が固定された主軸とを備えた立軸ポンプにおいて、
据付床に固定され、下端側に前記揚水管の上端側が連結されるとともに上端側に前記吐出エルボが連結され、かつ、外周部に上端から軸方向に沿って下向きに延びる挿通溝を形成した直管状の吊下管と、
前記吊下管内に配置される上端開口の内ケースと、この内ケースの上端開口を閉塞するケースカバーと、前記内ケースに一端が連結されるとともに他端が前記挿通溝を通して前記吊下管の外部に配置される中間ケースと、この中間ケースの他端に連結され前記吊下管の外側に配置される外ケースとを有し、前記吐出エルボを分離した状態の前記吊下管に対して上方から着脱可能としたケーシングと、前記内ケース内に配置され前記主軸に分離可能に連結される出力部材と、前記外ケース内に一端が配置され他端が前記ケーシングの外部に位置して原動機側に連結される入力軸と、前記ケーシング内に配置され前記入力軸に入力された回転を前記出力部材に伝達する伝達機構を有する動力伝達装置と、
を備えることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
前記吊下管の上端に、前記据付床に固定するための据付部を設け、この据付部に、前記挿通溝に連通して前記ケーシングを挿通配置する配置孔部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記据付部は、前記吊下管とは別体のベースプレートからなることを特徴とする請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記入力軸と前記原動機の出力軸とをカップリングにより分離可能に連結したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
前記吊下管の内部に、前記ケーシングの内ケースを上部に配設する内ケース配置部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の立軸ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−92701(P2012−92701A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239626(P2010−239626)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】