説明

竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法

【課題】熱処理によりタールを除去して得られた炭材内装塊成鉱の強度を確保しつつ、熱処理の効率をさらに向上しうる竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】軟化溶融性を有する粉状炭材Aと粉状鉄含有原料Bとの混合物Cを双ロール型成形機4にて250〜500℃で熱間成形して作製した体積6〜12cmの成形物Dを、さらに熱処理設備5にて雰囲気温度T(単位:℃)が800℃超1300℃以下で、処理時間t(単位:min)が1200/T〜2400/Tの条件で熱処理を行って前記成形物中のタール分を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉、キューポラなどの竪型炉用装入原料として用いることができる、ハンドリング強度に優れた竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、高炉、キューポラなどの竪型炉用装入原料として用いることを目的として、粉鉱石と軟化溶融性を有する炭材の混合物を熱間成形することにより、従来の炭材内装コールドペレット等のようにセメントなどのバインダを添加せずとも高強度が得られる炭材内装塊成鉱を開発した(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
この炭材内装塊成鉱は、内装炭材由来のタール分を含有している。竪型炉の一例である高炉に、装入物の一部としてこの炭材内装塊成鉱を使用した場合のタールの挙動を図5を用いて説明する。炉頂から装入された炭材内装塊成鉱が炉内を降下していくにつれて、その温度が上昇し、成形時における熱履歴より高い温度になった時点で内装炭材の熱分解反応が再開し、その生成物として気化したタールが炭材内装塊成鉱から放出される。このタールはタール蒸気として炉頂ガスとともに炉外に排出される。一般に高炉は湿式集塵設備を有しているため、タール蒸気は該湿式集塵設備の集塵処理水中に凝縮し、捕集される。したがって、この凝縮したタールは水処理装置での回収が必要となるが、炉内でのタール発生を想定していない高炉では、水処理装置において処理水中からのタール回収機能を有しないため、事前のタール除去が必要となる。
【0004】
そこで、本出願人は、炭材内装塊成鉱中の残留タール分について種々検討の結果、粉状鉄含有原料と軟化溶融性を有する粉状炭材との混合物を250〜550℃で熱間成形して作製した成形物を、さらに不活性ガス(非酸化性ガス)雰囲気下にて500〜800℃、5〜60minの範囲で処理温度および/または処理時間を調節して熱処理を行うことで、炭材に含有されるタール分がほとんど除去され、高炉などの竪型炉の装入原料により適した、さらに高強度でかつよりタール分の少ない炭材内装塊成鉱が得られることを見出し、既に特許出願を行った(特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、上記熱処理によりタールを除去して得られた炭材内装塊成鉱の強度確保の観点から、上記のように処理温度や処理時間に制約があり、熱処理の効率を向上させるのに限度があったため、熱処理設備のコンパクト化が十分に図れない状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−241577号公報
【特許文献2】特開2007−211271号公報
【特許文献3】特開2008−95124号公報
【特許文献4】特開2007−211296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、熱処理によりタールを除去して得られた炭材内装塊成鉱の強度を確保しつつ、熱処理の効率をさらに向上しうる竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、粉状鉄含有原料と軟化溶融性を有する粉状炭材との混合物を熱間成形温度:250〜500℃で熱間成形して作製した体積6〜12cmの成形物を、さらに雰囲気温度T(単位:℃)が800℃超1300℃以下で、処理時間t(単位:min)が1200/T〜2400/Tの条件で熱処理を行って前記成形物中のタール分を除去することにより炭材内装塊成鉱を得ることを特徴とする竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記熱処理を非酸化性ガス雰囲気下で行う請求項1に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記熱処理を酸化性ガス雰囲気下で行うにあたり、前記成形物に対し、10〜20質量%の外装炭材を添加する請求項1に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記熱間成形後から前記熱処理前までにおける成形物の最低温度が、前記熱間成形温度−100℃以上で、かつ、250℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記熱処理の際における成形物の前記最低温度〜550℃の間の平均昇温速度が5〜200℃/minである請求項4に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法である。
【0013】
なお、「軟化溶融性を有する粉状炭材」とは、logMF(ここに、MFはギーセラ最高流動度である。)が1.0以上の石炭、SRC、タイヤチップ、プラスチック、アスファルト、タール、ASP、ハイパーコールなど軟化溶融性を有する炭素質物質を少なくとも1種含むものであって、粉状のものの総称である。なお、この「軟化溶融性を有する粉状炭材」は、上記軟化溶融性を有する炭素質物質に加えて、さらにコークス、一般炭、無煙炭、オイルコークスなど軟化溶融性を実質的に有しない炭素質物質を1種以上混合したものであってもよい。また、「粉状鉄含有原料」とは、鉄鉱石、製鉄ダスト(高炉ダスト、転炉ダスト、電気炉ダスト、ミルスケールなど)、雑鉱、ペレット篩下など主として酸化鉄を含有する原料、またはこれらの原料の2種以上の混合物であって、粉状のものの総称である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定サイズの成形物を、従来より高い雰囲気温度(処理温度)にて、該雰囲気温度に応じた、従来より短い処理時間で熱処理することで、該熱処理により得られた炭材内装塊成鉱のタール除去率および強度を確保しつつ、熱処理の効率をさらに向上できるようになった。この結果、熱処理設備のさらなるコンパクト化が実現できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施に係る竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造フローの概念図である。
【図2】熱処理時における、成形物の表面温度および中心温度の時間変化を示すグラフ図である。
【図3】熱処理時の各雰囲気温度における、処理時間と脱タール率との関係を示すグラフ図である。
【図4】外装炭材の添加率と熱処理後の成形物中の炭素含有量との関係を示すグラフ図である。
【図5】炭材内装塊成鉱を高炉の装入物として使用した場合における、タールの挙動を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
図1に本発明の一実施形態に係る竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造フローの概念図を示す。以下、粉状鉄含有原料として粉状鉄鉱石を代表例として説明する。炭材のうち軟化溶融性を有する炭材(例えば、粘結炭、SRC等)は、粉状鉄鉱石および軟化溶融性を実質的に有しない炭材との混合状態を良好に保つために1mm以下程度に粉砕するのが望ましい。また、上記軟化溶融性を有する炭材との充填性を上げるため、鉄鉱石と、炭材のうち軟化溶融性を実質的に有しない炭材(例えば、コークス粉、一般炭、無煙炭、オイルコークス等)は、必要な場合には粉砕して使用する。粉砕粒度は、その上限は成形が可能な粒度であるが、下限は特に限定されないものの、軟化溶融性を有する炭材と同程度が望ましい。
【0017】
〔炭材乾燥加熱工程〕
このようにして粒度調整された粉状炭材Aは、炭材乾燥加熱設備(例えば、ロータリドライヤ)1で、炭材Aが実質的に軟化溶融しない例えば350℃以下の温度で乾燥・加熱し、付着水分を除去する。
【0018】
〔原料加熱工程〕
一方、粉状鉄鉱石Bは、粉状炭材Aと混合したときに目標温度(熱間成形温度)の250〜500℃となるように、原料加熱設備(例えば、ロータリキルン)2で400〜800℃の範囲の適当な温度に予熱する。ロータリキルン2のバーナから吹き込む燃料としては固体燃料である微粉炭、液体燃料である重油、気体燃料である天然ガス、COG等いずれも使用できる。
【0019】
〔混合工程〕
乾燥した粉状炭材Aと予熱した粉状鉄鉱石Bとの混合には、混合設備として、粉状炭材Aの無機化および/または炭材軟化による不要な造粒を抑制するために短時間で混合できるこの業種で常用されている、例えば竪形混合槽3を用いる。また、この竪形混合槽3は成形温度を確保するために断熱および/または保温する。
【0020】
〔熱間成形工程〕
粉状炭材Aと粉状鉄鉱石Bからなる混合物Cは、成形設備として例えば熱間成形用の双ロール型成形機4を用いて加圧成形し、体積6〜12cm(球相当径23〜29mm)の成形物Dとなす。成形物Dの体積を6〜12cmとしたのは、成形物Dのサイズを小さくしすぎると、成形機4による成形物Dの製造速度が低下するとともに、成形物D1個当りのバリの質量割合が増加して成形物D、ひいては炭材内装塊成鉱Eの製造歩留を低下させる一方、成形物Dのサイズを大きくしすぎると、次工程の熱処理工程でのタール除去に時間がかかり、処理効率が低下するためである。
【0021】
加圧成形は、成形物Dを熱処理して得られた炭材内装塊成鉱Eが成形機4から竪型炉(例えば、高炉)への装入までのハンドリングに耐え得るに十分な強度である0.5kN/個以上が得られるよう、成形加圧力を10kN/cm以上とする。
【0022】
このようにして成形された成形物Dは、粉状鉄鉱石Bの空隙に、溶融した軟化溶融性を有する炭材Aが浸入し、この炭材Aが潤滑剤として作用して、成形物Dの表面に加えられた成形加圧力が成形物Dの内部にまでほぼ均一に及ぶため、表面近傍のみが圧密されることが防止され、成形物D内の気孔率分布が平均化され、加熱時に爆裂が起こらない炭材内装塊成鉱Eが得られる。
【0023】
また、固化後の炭材Aは、粉状鉄鉱石Bの粒子同士を強固に連結するとともに、粉状鉄鉱石Bとの接触面積も大きくなっており、このようにして得られた炭材内装塊成鉱Eは、高強度で、かつ被還元性に優れたものとなる。
【0024】
〔熱処理工程〕
この成形物Dを熱処理設備(例えば、シャフト炉)5内に装入し、雰囲気温度T(単位:℃)が800℃超1300℃以下で、処理時間t(単位:min)が1200/T〜2400/Tの条件で熱処理を行う。これにより、成形物D中のタール分が十分に除去され、竪型炉に装入しても排ガス系統へのタールの固着等のトラブル発生のおそれのない炭材内装塊成鉱Eが得られる。
【0025】
このように、雰囲気温度T(単位:℃)を800℃超1300℃以下としたのは、従来と同様の800℃以下では、処理時間を十分に短縮できないことから熱処理設備5のコンパクト化が不十分となるためであり、一方、1300℃超になると、成形物D中で炭材Aによる粉状鉄鉱石Bの還元が過度に進行して鉄鉱石が海綿状金属鉄となり、成形物Dが多孔質化するとともに軟化し、得られた炭材内装塊成鉱Eの強度が低下するためである。雰囲気温度Tの好ましい範囲は900〜1200℃、さらに好ましい範囲は1000〜1100℃である。
【0026】
また、処理時間t(単位:min)を1200/T〜2400/Tとしたのは、以下の理由による。すなわち、処理時間tを短くすると、成形物Dからのタール除去が不十分となり竪型炉の排ガス系統にタールが固着する等のトラブル発生の原因になりやすい。一方、処理時間tを長くすると、成形物Dからのタール除去の面からは好ましいが、処理効率が低下することに加え、成形物D中で炭材による粉状鉄鉱石の還元反応が過度に進行して(下記参照)鉄鉱石が海綿状金属鉄となり、成形物Dが多孔質化し、得られた炭材内装塊成鉱Eの強度が低下する。
【0027】
ここで、図2に示すように、600℃の雰囲気温度下で成形物(体積:6〜8cm)を加熱した場合は、成形物の中心温度は昇温完了後表面温度にほぼ一致するのに対し、800℃の雰囲気温度下で成形物を加熱した場合は、成形物の中心温度は昇温完了後も表面温度より一定温度(30℃程度)低い温度で推移している。このことは、800℃以上になると、成形物中で、先ず、還元ガスの供給を必要としない直接還元反応:FexOy+yC→xFe+yCO…式(1)が起こり、次いで上記式(1)で生成したCOによるガス還元反応:FexOy+yCO→Fe+yCO…式(2)が進行し、さらに上記式(2)で生成したCOが、炭材によるガス化反応:CO+C→2CO…式(2)によりCOに再生され、上記式(2)と式(3)の反応サイクルが繰り返されることで、総括反応として吸熱を伴う還元が進行することを示している。したがって、上述したように、800℃を超える雰囲気温度下にて処理時間tを長くしすぎると過度に還元が進行することがわかる。
【0028】
そこで、これらのことを考慮して、図3を用い、各雰囲気温度において、竪型炉に装入しても問題のない程度にタールが除去されたとみなせる脱タール率50〜90%が得られる処理時間tの範囲を求めた。ここで、図3は、鉄鉱石80質量部にタール発生量4質量%の石炭を20質量部配合して熱間成形した成形物(体積:6〜8cm)を、小型加熱炉を用いて窒素ガス雰囲気下で雰囲気温度を種々変更して熱処理実験を行い、成形物からのタール除去の挙動を調査した結果を示すものである。ここに、脱タール率とは、熱処理前における成形物中のタール含有量のうち、どれだけのタール分が除去されたかを示す指標である。
【0029】
上記熱処理実験の結果、雰囲気温度T=800℃の場合、脱タール率50〜90%が得られる処理時間tの範囲は1.5〜3.0minであり、雰囲気温度T=1000℃の場合、脱タール率50〜90%が得られる処理時間tの範囲は1.2〜2.4minであった。この結果から、雰囲気温度Tが800℃超1300℃の範囲では、雰囲気温度T(単位:℃)と、脱タール率50〜90%が得られる処理時間t(単位:min)とは、逆比例の関係にあると考え、雰囲気温度T(単位:℃)に対して、脱タール率50〜90%が得られる処理時間t(単位:min)は1200/T〜2400/Tの関係にあるとした。脱タール率をより確実に高くするために、処理時間tの下限は、1600/T、さらに2000/Tとするのが好ましい。
【0030】
このように、熱間成形後に、さらに熱処理を施すことによりタール分が十分に除去された炭材内装塊成鉱Eは、竪型炉に装入されて加熱された際において、タール分の発生が非常に少なくなり竪型炉の排ガス系統にタールが固着する等のトラブルの発生をより確実に防止できる。
【0031】
また、熱処理時に成形物Dの表面近傍に存在する内装炭材Bが空気や燃焼ガスなどの酸化性ガス(O、CO、HO等を含有するガス)により消費されるとバインダとしての効果が失われて炭材内装塊成鉱Eの強度が低下してしまうため、上記熱処理は、従来と同様、窒素ガス等を用いて非酸化性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0032】
しかしながら、成形物Dを非酸化性ガス雰囲気下で熱処理するためには、例えば、非酸化性ガスを燃焼ガスの顕熱を用いて熱交換器で昇温してから熱処理装置に導入することや、熱処理装置を外熱式にすること等が考えられるが、装置が複雑化し設備コストが高くなることが想定される。
【0033】
そこで、本発明者は、熱処理装置の設備コストをさらに低減しうる方法として、燃焼ガスなど高温の酸化性ガス雰囲気中で直接、成形物を加熱する方法について種々検討を行った結果、成形物Dに所定量の外装炭材Fを添加することで、酸化性ガス雰囲気下で加熱しても、非酸化性ガス雰囲気下で加熱した場合と同等の効果が得られることを見出した。
【0034】
図4は、小型加熱炉内の雰囲気温度を800℃とし、雰囲気ガスとして酸化性ガス(O:5容量%、CO:20容量%、N:75容量%)を流通させつつ、成形物(体積: 6〜8cm)に外装炭材の添加率を順次変化させて処理時間3minで熱処理し、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)中の炭素含有量を測定した結果を示すものである。同図には、雰囲気温度と処理時間は上記と同じにして、雰囲気ガスとして非酸化性ガスである窒素ガスを用い、成形物のみ(炭材外装なし)を熱処理した場合における、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)中の炭素含有量も併記した。ここに、外装炭材の添加率は、成形物の質量に対する外装炭材の質量の比率で定義される。
【0035】
同図より、酸化性ガス雰囲気下で加熱すると、外装炭材を全く添加しない場合は、非活性ガス雰囲気下で加熱する場合に比べて、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)中の炭素含有量が3質量%も低下することがわかる。そして、外装炭材の添加率を上昇させて行くにつれて、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)中の炭素含有量は、非活性ガス雰囲気下で加熱する場合に近づいていき、外装炭材の添加率が10質量%以上で、非活性ガス雰囲気下での加熱とほぼ同等の炭素含有量が得られることがわかる。なお、外装炭材の添加率20質量%超で、非活性ガス雰囲気下での加熱より炭素含有量が少し高くなる傾向を示すのは、外装炭材からの揮発分の除去が優先され、内装炭材からの揮発分の除去が遅れ、その分炭素残留量が多くなったためと考えられる。
【0036】
この結果から、雰囲気温度800℃において酸化性雰囲気下で熱処理する場合は、成形物に10質量%以上の炭材を外装するのが好ましいことがわかった。
【0037】
ここで、成形物(見掛け密度2.6g/cm)を球と仮定し、この球と同じ直径の円筒状の空間に成形物を充填した状態を想定したとき、成形物の周りの空隙は上記円筒状の空間の1/3となる。この空隙を外装炭材(かさ密度0.6g/cm)で埋めるためには約11質量%([0.6×1/3]÷[2.6×2/3])≒0.11)の外装炭材が必要となる。したがって、上記外装炭材添加率10質量%以上は、成形物表面が外装炭材によりほぼ完全に覆われた状態に相当する。
【0038】
したがって、雰囲気温度800℃超(1300℃以下)の場合においても、成形物に10質量%以上の炭材を外装することで、上記雰囲気温度800℃の場合と同様の効果が得られると想定できる。
【0039】
ただし、外装炭材を過度に添加すると、成形物への伝熱が遅れ、タール除去が不十分になるので、20質量%以下の添加に留めるのが好ましい。外装炭材の種類は、特に限定されないが、熱処理後、成形物(炭材内装塊成鉱)と容易に分離し、再利用できるように、流動性の低い非粘結炭やコークスなどを用いるのが推奨される。また、外装炭材の粒度は、内装炭材より優先的に酸化性ガスと反応することに加え、雰囲気ガス流で飛散せず、さらに成形物(炭材内装塊成鉱)と容易に分級できるように、平均粒径で0.2〜6mm程度、さらには0.5〜3mm程度の粒度とするのが望ましい。
【0040】
ここで、上記熱間成形工程にて成形機4で加圧成形された成形物Dは、次工程である上記熱処理工程の熱処理設備5に装入されるが、その間の搬送過程において成形物Dの温度は所定温度まで低下する。そして、成形物Dが熱処理設備5に装入され、前記所定温度から熱処理設備5内の雰囲気温度Tまで加熱される。前記所定温度が低くなりすぎると、上記温度低下過程および/または雰囲気温度Tまでの昇温過程で成形物D内部に過大な熱応力が生じて成形物Dに亀裂が発生しやすくなり、熱処理後の炭材内装塊成鉱Eの強度が低下する。
【0041】
したがって、上記熱間成形後から前記熱処理前までにおける成形物の温度は、前記熱間成形温度−100℃以上で、かつ、250℃以上とするのが好ましい。
【0042】
これを実現するため、例えば、成形機4から熱処理設備5までの搬送配管を、できるだけ短くする、および/または、保温するとよい。あるいは、成形機4と熱処理設備5の間に保温機能を備えたサージホッパを設け、これに成形物Dを一時的に保持して、上記最低温度を下回らないようにしてもよい。
【0043】
上記に加えて、熱処理設備5内における(すなわち、前記熱処理の際における)成形物Dの前記最低温度〜550℃の間の平均昇温速度を5〜200℃/minとするのが好ましい。ここで、成形物Dの平均昇温速度として前記最低温度〜550℃の間の平均昇温速度を規定したのは、前記最低温度までの温度低下により炭材の粘結性が減少し、その後550℃までの加熱過程における熱応力により最も亀裂が発生しやすい温度範囲と推定されるためである。また、平均昇温速度を5〜200℃/minとしたのは、5℃/min未満では、熱処理に要する時間が長くなりすぎて生産性が低下するためであり、一方、200℃/min超では、成形物Dの表面と内部との温度差が拡大して熱応力が過大となり、成形物Dに亀裂が発生しやすくなるためである。
【0044】
これを実現するため、例えば、熱処理設備5内の雰囲気温度を一気にTにするのでなく、徐々にTまで高めるようにするとよい。
【0045】
(変形例)
上記実施形態では、熱処理工程にシャフト炉を用いる例を示したが、ロータリキルン、回転炉床炉、外熱式多筒型キルン、バッチ炉などを用いてもよく、これらを複数組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を確証するため、下記実施例1、2に示すような成形物の熱処理実験を行った。
【0047】
[実施例1]
原料として、表1に示す粉状石炭および表2に示す粉状鉄鉱石を用いた。なお、粉状石炭の粒度は74μm以下、60〜80質量%程度、粉状鉄鉱石の粒度は−3mm、100質量%とした。
【表1】

【表2】

【0048】
そして、粉状石炭と粉状鉄鉱石を20:80の質量割合で混合し、この混合物を400〜450℃の温度で双ロール型成形機に供給し、ロール回転速度4〜8rpm、成形圧力10〜50kN/cmの条件で30mm×25mm×17〜20mmのアーモンド形のブリケット(成形物)に成形した。ブリケット1個の体積は6〜8cmであり、そのタール含有量は0.8質量%である。
【0049】
なお、成形物中のタール含有量は、粉状石炭からのタール発生量と、成形物中の粉状石炭の配合割合から算出した。ここで、粉状石炭からのタール発生量は、5℃/minで1000℃まで昇温し、120min乾留させた時の発生ガスを約30℃まで冷却して回収した凝集物をベンゼン抽出して求めた。
【0050】
熱処理炉は加熱室と燃焼室が隔壁で分離された構造であり、加熱炉に装入された成形物に対して隔壁からの伝導および輻射によって熱供給がなされる。
【0051】
〔ケース1:非酸化性ガス、600℃、外装炭材なし〕
加熱室内に非酸化性ガスである窒素ガスを流通した状態で、加熱室内の雰囲気温度600℃の条件にて、外装炭材を添加することなく、加熱室内における成形物の滞留時間(処理時間)5、10、15minで熱処理した場合、それぞれ、62、82、90%の脱タール率が得られた。また、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)の圧潰強度は、熱処理前の150〜200kgf/個(平均170kgf/個)に対して160〜210kgf/個(平均180kgf/個)と同等ないし若干上昇した。ここに、1kgf=9.80665Nである。
【0052】
〔ケース2:非酸化性ガス、800℃、外装炭材なし〕
同じく加熱室内に非酸化性ガスである窒素ガスを流通した状態で、加熱室内の雰囲気温度800℃の条件にて、外装炭材を添加することなく、加熱室内における成形物の滞留時間(処理時間)1、3、5minで熱処理した場合、それぞれ、28、90、94%の脱タール率が得られた。また、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)の圧潰強度は、処理時間1、3minでは、上記ケース1の雰囲気温度600℃の場合と同様に熱処理前と同等であったが、処理時間5minでは120〜180kgf/個(平均140kgf/個)となり、熱処理前より低下する傾向が認められた。
【0053】
〔ケース3:酸化性ガス、800℃、外装炭材なし〕
加熱室内に酸化性ガス(O:5容量%、CO:20容量%、N:75容量%)を流通した状態で、加熱室内の雰囲気温度800℃の条件において、外装炭材を添加することなく、加熱室内における成形物の滞留時間(処理時間)1、3、5minで熱処理した場合、脱タール率は、それぞれ、28、90、94%となり、上記ケース2の非酸化性ガス雰囲気の場合と同等であったが、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)の圧潰強度は、処理時間1minでは熱処理前と同等、処理時間3minでは120〜180kgf/個(平均140kgf/個)、処理時間5minでは100〜140kgf/個(平均120kgf/個)となり、処理時間が長くなるほど熱処理前からの低下幅が大きくなる傾向が認められた。
【0054】
〔ケース4:酸化性ガス、800℃、外装炭材使用〕
上記ケース3において、成形物に外装炭材を15質量%添加して、その他の条件はケース3と同様の条件で熱処理した場合、脱タール率は上記ケース2の非酸化性ガス雰囲気の場合と同等に維持されつつ、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)の圧潰強度は、150〜200kgf/個(平均170kg/個)と熱処理前と同等の強度が得られ、強度低下が抑制できた。なお、外装に用いた炭材は、質量%で揮発分0.0%、灰分12.0%、固定炭素88.0%のコークス粉である。
【0055】
[実施例2]
本実施例では、熱処理装置として回転炉床炉を用い、上記実施例1と同じ成形物の熱処理を行った。この回転炉床炉は、炉内にバーナを有し、その燃焼熱で被処理物を輻射加熱するものであり、炉内は酸化性ガス雰囲気である。成形物に外装炭材15質量%を添加して、雰囲気温度800〜900℃の炉内に装入し、滞留時間(処理時間)2minで熱処理したところ、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)は、熱処理前と同等の圧潰強度を確保しつつ、脱タール率90%が得られた。
【0056】
[実施例3]
本実施例では、熱間成形後、熱処理までの置き時間を種々変化させて、熱間成形後から熱処理前までにおける成形物の最低温度、および、前記熱処理の際における成形物の前記最低温度〜550℃の間の平均昇温速度を変化させて、熱処理前の成形物と、熱処理後の成形物(炭材内装塊成鉱)の圧潰強度を測定し、熱処理による成形物の圧潰強度の変化を調査した。
【0057】
調査結果を下記表3および表4に示す。なお、表3において、最低温度はいずれも250℃以上であった。
【0058】
表3に示す調査結果から、熱間成形後から熱処理前までにおける成形物の最低温度は、熱間成形温度−100℃以上で、かつ、250℃以上とすることが推奨されることがわかる。
【0059】
また、表4に示す調査結果から、さらに、熱処理の際における成形物の最低温度〜550℃の間の平均昇温速度は、5〜200℃/minとすることが推奨されることがわかる。
【表3】

【表4】

【符号の説明】
【0060】
1:炭材乾燥加熱設備(ロータリドライヤ)
2:原料加熱設備(ロータリキルン)
3:混合設備(竪形混合槽)
4:成形設備(双ロール型成形機)
5:熱処理設備(シャフト炉)
A:粉状炭材(粉状石炭)
B:粉状鉄含有原料(粉状鉄鉱石)
C:混合物
D:成形物(熱処理前のブリケット)
E:炭材内装塊成鉱(熱処理後のブリケット)
F:外装炭材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状鉄含有原料と軟化溶融性を有する粉状炭材との混合物を熱間成形温度:250〜500℃で熱間成形して作製した体積6〜12cmの成形物を、さらに雰囲気温度T(単位:℃)が800℃超1300℃以下で、処理時間t(単位:min)が1200/T〜2400/Tの条件で熱処理を行って前記成形物中のタール分を除去することにより炭材内装塊成鉱を得ることを特徴とする竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理を非酸化性ガス雰囲気下で行う請求項1に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理を酸化性ガス雰囲気下で行うにあたり、前記成形物に対し、10〜20質量%の外装炭材を添加する請求項1に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法。
【請求項4】
前記熱間成形後から前記熱処理前までにおける成形物の最低温度が、前記熱間成形温度−100℃以上で、かつ、250℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理の際における成形物の前記最低温度〜550℃の間の平均昇温速度が5〜200℃/minである請求項4に記載の竪型炉用炭材内装塊成鉱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285684(P2010−285684A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179560(P2009−179560)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】