説明

端子かしめ方法及び端子かしめ装置

【課題】外部端子の長手方向の変形を軽減すること。
【解決手段】端子かしめ装置1は、モジュール端子保持ユニット3と、かしめ電極ユニット4とを備える。モジュール端子保持ユニット3は、上下一対をなす端子保持部材5,6と、下側側の固定ブロック9と、上側の可動ブロック10とを含む。固定ブロック9の上端には、固定側のかしめ電極11が設けられ、可動ブロック12の下端には、可動側のかしめ電極12が設けられる。挿入環23を挟んで通電かしめするときのかしめ電極12の動きに同期してモジュール端子保持ユニット3を動かすために、可動ブロック10とモジュール端子保持ユニット3とが連結部材13により連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線と外部端子とをかしめにより結合するための端子かしめ方法及び端子かしめ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、下記の特許文献1には、外部端子をリード線と共にかしめる際に、外部端子の座面のうち外部電源の端子面と接続する部分の変形を防止する技術が開示されている。すなわち、座面を備えた外部端子の挿入孔(挿入環)にリード線を挿入するリード線挿入工程と、その挿入環を押圧して外部端子をリード線に圧着する端子圧着工程とを有する端子かしめ方法において、端子圧着工程又はリード線挿入工程の前工程として、外部端子の座面の取り付け面を備える軸形状の端子クランプ台座と、端子クランプ台座に対してスライドする端子クランプカバーとの間で座面を挟持する端子保持工程を備えることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−166713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の技術では、外部端子の座面幅方向の変形は防止できるものの、かしめ部分がつぶれると、座面の中心軸の位置がずれることから、座面の長手方向に荷重がかかり、その長手方向に変形が生じるおそれがあった。ここで、外部端子がモータのリード線に接続されるものである場合は、長手方向の変形によって挿入環とステータコア等との距離が短くなり、絶縁性が損なわれるおそれがある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、外部端子の長手方向の変形を軽減することを可能とした端子かしめ方法及び端子かしめ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、茎部と、茎部の一端に形成された挿入環と備えた外部端子を茎部にて端子保持部材により保持する端子保持工程と、挿入環にリード線を挿入するリード線挿入工程と、かしめ電極を動かして挿入環をかしめ電極により挟み、かしめ電極により通電かしめすることにより外部端子をリード線に圧着する通電かしめ工程とを備えた端子かしめ方法において、通電かしめ工程において、挿入環の中心軸の移動による応力が緩和するように、かしめ電極の動きに同期させて端子保持部材を動かすことを趣旨とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、端子保持工程では、茎部及び挿入環を備えた外部端子が茎部にて端子保持部材により保持される。リード線挿入工程では、端子保持部材により保持された外部端子の挿入環にリード線が挿入される。そして、通電かしめ工程では、かしめ電極を動かして挿入環をかしめ電極により挟み、かしめ電極により通電かしめすることにより外部端子がリード線に圧着する。「圧着」は、圧力を加えた状態で着けることを意味する。ここで、通電かしめ工程では、かしめ電極による通電かしめにより挿入環の中心軸が移動するが、その移動による応力が緩和するように、かしめ電極の動きに同期させて端子保持部材が動かされる。従って、かしめ電極による通電かしめにより挿入環が押圧され変形しても、茎部の長手方向にかかる荷重は低減する。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、茎部と、茎部の一端に形成された挿入環とを備えた外部端子を茎部にて保持する端子保持部材と、端子保持部材により茎部が保持され、挿入環にリード線が挿入された状態で、外部端子をリード線に圧着するために挿入環を挟んで通電かしめするかしめ電極とを備えた端子かしめ装置において、挿入環を挟んで通電かしめするときのかしめ電極の動きに同期して端子保持部材を動かすための同期手段とを備えたことを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、端子保持部材により外部端子が茎部にて保持され、外部端子の挿入環にリード線が挿入された状態で、かしめ電極により挿入環を挟んで通電かしめすることにより、外部端子がリード線に圧着する。ここで、かしめ電極による通電かしめにより挿入環が押圧されるときのかしめ電極の動きに同期して、同期手段により端子保持部材が動かされる。従って、かしめ電極による通電かしめにより挿入環が押圧され変形しても、茎部の長手方向にかかる荷重は低減する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、かしめ電極は、固定側のかしめ電極と可動側のかしめ電極とを含み、同期手段は、可動側のかしめ電極の動きに同期して端子保持部材を可動側のかしめ電極と同方向に動かすことを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、端子保持部材により外部端子が茎部にて保持され、外部端子の挿入環にリード線が挿入された状態で、固定側のかしめ電極と可動側のかしめ電極との間で挿入環を挟んで通電かしめすることにより、外部端子がリード線に圧着する。ここで、かしめ電極による通電かしめにより挿入環が押圧されるときの可動側のかしめ電極の動きに同期して、同期手段により端子保持部材が可動側のかしめ電極と同方向に動かされる。従って、かしめ電極による通電かしめにより挿入環が押圧され変形しても、茎部の長手方向にかかる荷重は低減する。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、外部端子は、樹脂で覆われた樹脂部を含み、端子保持部材が挿入環と樹脂部との間に位置する茎部を保持するように構成され、端子保持部が外部端子の熱を放散する放熱機能を有することを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、外部端子は、樹脂で覆われた樹脂部を含むが、挿入環と樹脂部との間に位置する茎部が端子保持部材により保持されるので、端子保持部が茎部の熱を放散する放熱機能を発揮し、かしめ電極から挿入環及び茎部に伝わる熱が端子保持部材から外部へ放散され、樹脂部に熱が伝わり難くなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、外部端子をリード線に圧着するときに外部端子の長手方向の変形を軽減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、外部端子をリード線に圧着するときに外部端子の長手方向の変形を軽減することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、外部端子をリード線に圧着するときに外部端子の長手方向の変形を軽減することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、外部端子に設けられる樹脂部の溶損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の端子かしめ方法及び端子かしめ装置を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に、この実施形態の端子かしめ装置1を概略図により示す。図2に、端子かしめ装置1により、リード線とかしめられるモジュール端子2の側面を概略図により示す。図1に示すように、端子かしめ装置1は、モジュール端子保持ユニット3と、かしめ電極ユニット4とを備える。モジュール端子保持ユニット3は、上下一対をなす端子保持部材5,6を含む。両端子保持部材5,6の対向部分、すなわちモジュール端子2を挟む部分は、金属部材7,8より構成される。両端子保持部材5,6は、所定の駆動機構(図示略)により、モジュール端子2を受け入れるための図1に示す開き位置と、モジュール端子2を挟むための閉じ位置との間で切り替え配置可能である。かしめ電極ユニット4は、下側の固定ブロック9と、上側の可動ブロック10とを含む。固定ブロック9は、定位置にて固定される。可動ブロック10は、所定の駆動機構(図示略)により、固定ブロック9へ向けて往復動可能に設けられる。固定ブロック9の上端には、固定側のかしめ電極11が設けられる。可動ブロック10の下端には、可動側のかしめ電極12が設けられる。これらかしめ電極11,12には、所定の電源装置(図示略)から電圧が印加されるようになっている。二つのかしめ電極11,12の間で、モジュール端子2を挟んで加圧しながら高電圧を印加するようになっている。可動ブロック10には、モジュール端子保持ユニット3と機械的に連結するための連結部材13が設けられる。この連結部材13があることで、可動ブロック10の上下動に同期してモジュール端子保持ユニット3の全体が上下動するようになっている。この連結部材13は、可動側のかしめ電極12がモジュール端子2に当接する位置で端子保持部材5に当接するように配設されており、可動側のかしめ電極12の動きに同期してモジュール端子保持ユニット3を動かすための本発明の同期手段に相当する。
【0020】
図2に示すように、モジュール端子2は、金属製の端子本体21と、端子本体21の一部を樹脂で覆う樹脂部22とを含む。端子本体21は、側面がL字状に折り曲げ形成され、その一端には孔23aを有する挿入環23が形成され、その他端には他の端子に接続される接続部24が形成される。挿入環23の孔23aには、リード線の一端部が挿入される。樹脂部22と挿入環23との間が茎状に伸びる茎部25となっている。挿入環23は、この茎部25の一端に形成される。このモジュール端子2は、モータのステータを構成するコイルのリード線に接続されるようになっている。
【0021】
次に、上記した端子かしめ装置1を使用して、モジュール端子2にリード線をかしめて圧着するための端子かしめ方法について説明する。図3に、この端子かしめ方法をフローチャートにより示す。図4〜図7には、この端子かしめ方法の各工程を概略図により示す。
【0022】
図3の(1)に示す最初の「端子保持工程」では、図1に示す状態から、図4に示すように、モジュール端子保持ユニット3の端子保持部材5,6により、モジュール端子2の茎部25を挟んで保持する。このとき、モジュール端子2の挿入環23が、かしめ電極ユニット4の二つのかしめ電極11,12の間に配置される。
【0023】
次に、図3の(2)に示す「リード線挿入工程」では、図5及び図6に示すように、モジュール端子2の挿入環23の孔23aに、リード線14の一端部を挿入する。図6に示すように、挿入環23の孔23aにリード線14が挿入された状態では、孔23aに多少の隙間が残る。
【0024】
その後、図3の(3)に示す「通電かしめ工程」では、図7に示すように、かしめ電極ユニット4の可動側のかしめ電極12を可動ブロック10により下方へ動かして挿入環23を二つのかしめ電極11,12により挟み、両かしめ電極11,12により通電かしめする。これにより、挿入環23を押圧により変形させてリード線14と圧着させ、これによりモジュール端子2をリード線14に圧着する。ここで、この通電かしめ工程では、変形により挿入環23の中心軸が下方へ移動するが、その中心軸の移動による応力が緩和するように、可動側のかしめ電極12の動きに同期させて端子保持部材5,6を含むモジュール端子保持ユニット3を動かす。このモジュール端子保持ユニット3の同期的な動きは、可動ブロック10が連結部材13によりモジュール端子保持ユニット3に連結されることで得られる。
【0025】
以上説明したこの実施形態の端子かしめ方法及び端子かしめ装置によれば、端子保持工程では、モジュール端子2がその茎部25にて端子保持部材5,6により保持される。次に、リード線挿入工程では、端子保持部材5,6により保持されたモジュール端子2の挿入環23にリード線14が挿入される。その後、通電かしめ工程では、可動側のかしめ電極12を下方へ動かして挿入環23を二つのかしめ電極11,12により挟み、両かしめ電極11,12により通電かしめすることにより、モジュール端子2がリード線14に圧着する。
【0026】
ここで、通電かしめ工程では、二つのかしめ電極11,12による通電かしめにより、挿入環23の中心軸が下方へ移動するが、その移動による応力が緩和するように、可動側のかしめ電極12の下方への動きに同期させて端子保持部材5,6を含むモジュール端子保持ユニット3の全体が下方へ動かされる。具体的には、可動側のかしめ電極12が下方へ移動すると、可動側のかしめ電極12がモジュール端子2に当接する位置で連結部材13が端子保持部材5に当接するため、その時点から端子保持ユニット3の全体が可動側のかしめ電極12の移動に同期して下方へ動かされる。従って、両かしめ電極11,12による通電かしめにより挿入環23が押圧されて変形しても、茎部25の長手方向にかかる荷重は低減する。このため、モジュール端子2の長手方向、すなわち茎部25の長手方向の変形を軽減することができる。つまり、この実施形態の端子かしめ方法によれば、図8に示すように、リード線14とのかしめ後に、モジュール端子2の茎部25がその長手方向にほとんど変形することがない。これに対し、端子保持部材5,6を、可動側のかしめ電極12の動きに同期させない場合は、図9に鎖線円S1で示すように、モジュール端子2の茎部25が長手方向に変形して湾曲部分ができてしまう。図8に示すようなかしめ後のモジュール端子2によれば、その端子モジュール端子2をモータのステータを構成するコイルのリード線14に接続しても、茎部25に長手方向の変形がないことから、挿入環23とステータコア等との距離を確保することができ、それらの部材の間の絶縁性を確保することができる。
【0027】
また、この実施形態の端子かしめ装置によれば、モジュール端子2は、樹脂で覆われた樹脂部22を含むので、上記した通電かしめ工程では、両かしめ電極11,12から挿入環23に伝わる高熱による樹脂部22の溶融が問題となる。しかし、この実施形態では、挿入環23と樹脂部22との間に位置する茎部25が端子保持部材5,6により保持されるので、端子保持部5,6の金属部材7,8が、茎部25に伝わる熱を放散する放熱機能を発揮することとなる。従って、かしめ電極11,12から挿入環23及び茎部25に伝わる熱が金属部材7,8から外部へ放散され、樹脂部22に熱が伝わり難くなる。このため、モジュール端子2の樹脂部22の溶損を防止することができる。あるいは、樹脂部22に使用される樹脂の耐熱グレードを下げることができ、その意味でモジュール端子2の製造コストを低減することができる。
【0028】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0029】
例えば、前記実施形態では、樹脂部22を備えたモジュール端子をリード線14に圧着する場合に本発明を具体化したが、樹脂部を持たない外部端子をリード線に接続する場合にも本発明を具体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】端子かしめ装置を示す概略図。
【図2】モジュール端子の側面を示す概略図。
【図3】端子かしめ方法を示すフローチャート。
【図4】端子保持工程を示す概略図。
【図5】リード線挿入工程を示す概略図。
【図6】リード線挿入工程を示す概略図。
【図7】通電かしめ工程を示す概略図。
【図8】かしめ後のモジュール端子の側面を示す概略図。
【図9】従来のかしめ後のモジュール端子の側面を示す概略図。
【符号の説明】
【0031】
1 端子かしめ装置
2 モジュール端子(外部端子)
3 モジュール端子保持ユニット
4 かしめ電極ユニット
5 端子保持部材
6 端子保持部材
7 金属部材
8 金属部材
11 かしめ電極
12 かしめ電極
13 連結部材(同期手段)
14 リード線
22 樹脂部
23 挿入環
25 茎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎部と、前記茎部の一端に形成された挿入環と備えた外部端子を前記茎部にて端子保持部材により保持する端子保持工程と、
前記挿入環にリード線を挿入するリード線挿入工程と、
かしめ電極を動かして前記挿入環を前記かしめ電極により挟み、前記かしめ電極により通電かしめすることにより前記外部端子を前記リード線に圧着する通電かしめ工程と
を備えた端子かしめ方法において、
前記通電かしめ工程において、前記挿入環の中心軸の移動による応力が緩和するように、前記かしめ電極の動きに同期させて前記端子保持部材を動かすことを特徴とする端子かしめ方法。
【請求項2】
茎部と、前記茎部の一端に形成された挿入環とを備えた外部端子を前記茎部にて保持する端子保持部材と、
前記端子保持部材により前記茎部が保持され、前記挿入環にリード線が挿入された状態で、前記外部端子を前記リード線に圧着するために前記挿入環を挟んで通電かしめするかしめ電極と
を備えた端子かしめ装置において、
前記挿入環を挟んで通電かしめするときの前記かしめ電極の動きに同期して前記端子保持部材を動かすための同期手段と
を備えたことを特徴とする端子かしめ装置。
【請求項3】
前記かしめ電極は、固定側のかしめ電極と可動側のかしめ電極とを含み、前記同期手段は、前記可動側のかしめ電極の動きに同期して前記端子保持部材を前記可動側のかしめ電極と同方向に動かすことを特徴とする請求項2に記載の端子かしめ装置。
【請求項4】
前記外部端子は、樹脂で覆われた樹脂部を含み、前記端子保持部材が前記挿入環と前記樹脂部との間に位置する前記茎部を保持するように構成され、前記端子保持部が前記外部端子の熱を放散する放熱機能を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の端子かしめ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−181708(P2009−181708A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17399(P2008−17399)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592082778)株式会社TEMCO (8)
【Fターム(参考)】