説明

端子付電線及び端子

【課題】電線の端部の露出芯線部に端子を圧着する際に、電線の位置決めを良好に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】電線12bの端部の露出芯線部15bに端子20の圧着部22が圧着されている端子付電線10である。端子20は、電線12が載置されるとともに、スリット23Sが設けられた底部23を備えており、スリット23Sの縁部に、電線12bの芯線部14bを覆う被覆部16bの端面18bが当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線端部の露出芯線部に端子を圧着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子付電線として特許文献1に開示のものがある。特許文献1では、端子に芯線圧着用バレルが設けられ、この芯線圧着用バレルが電線端末から露出する芯線にかしめ圧着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−4499114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の端子付電線の場合、電線の位置決めは作業者の目視または経験に基づいて行われている。例えば複数の電線に端子を圧着する場合は、それぞれの電線を横に並べて取り付けることで、電線の位置を規定の位置に合わせることが容易である。しかしながら、上下に電線を重ねるような場合、上側の電線に下側の電線が隠れてしまい、下側の電線の位置を正確に把握することが難しくなる。このため、下側の電線の位置が規定位置に配置されない結果、露出芯線部に対して端子を適切に圧着することができない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、電線の端部の露出芯線部に端子を圧着する際に、電線の位置決めを良好に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、電線の端部の露出芯線部に端子の圧着部が圧着されている端子付電線において、前記端子は、前記電線が載置されるとともに、前記電線の芯線部を覆う被覆部の端面に当接される当接部が設けられた底部を備える。
【0007】
また、第2の態様は、第1の態様に係る端子付電線において、前記当接部が、前記底部に設けられたスリットの内側面である。
【0008】
また、第3の態様は、第2の態様に係る端子付電線において、前記スリットを介して、前記電線の少なくとも一部が外部に露出する。
【0009】
また、第4の態様は、第1から第3の態様までのいずれか1態様に係る端子付電線において、前記底部は、前記露出芯線部が載置される第1底板部と、前記第1底板部よりも上側に設けられ、前記電線の被覆部が載置される第2底板部と、前記第1底板部と前記第2底板部との間を接続するとともに、前記第1底板部に対して傾斜する部分を有する傾斜板部とを備え、前記当接部が、前記傾斜板部に形成されている。
【0010】
また、第5の態様は、電線の端部の露出芯線部に圧着される圧着部を備える端子において、前記電線が載置されるとともに、前記電線の芯線部を覆う被覆部の端面に当接される当接部が設けられた底部を備える。
【発明の効果】
【0011】
第1から第4の態様に係る端子付電線によると、底部に形成された当接部に被覆部の端面を当接することによって、電線の位置決めを行うことができる。したがって、電線の露出芯線部に端子を良好に圧着することができる。
【0012】
第2の態様に係る端子付電線によると、スリットによって形成される内側面に、被覆部の端面を当接させることで、電線を位置決めすることができる。
【0013】
第3の態様に係る端子付電線によると、電線の端部の位置をスリットを介して確認することができるため、電線を規定位置に配置することが容易になる。
【0014】
第4の態様に係る端子付電線によると、電線を底部に這わしたときに、傾斜板部に設けられたスリットの縁部に、被覆部の端部を良好に当接させることができる。
【0015】
第5の態様に係る端子によると、底部に形成された当接部に被覆部の端面を当接することによって、電線の位置決めを行うことができる。したがって、電線の露出芯線部に端子を良好に圧着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る圧着前の端子及び電線の概略側面図である。
【図2】端子付電線の概略側面図である。
【図3】圧着部を端子の長手方向に沿って切断したときの概略縦断面図である。
【図4】端子付電線を下側から見た平面図である。
【図5】複数の電線が他の電線の下側に配置された端子付電線を下側から見た平面図である。
【図6】変形例に係る底部を示す概略断面図である。
【図7】その他の変形例に係る底部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
{1. 実施形態}
図1は、実施形態に係る圧着前の端子20及び電線12a,12bの概略側面図である。図2は端子付電線10の概略側面図である。なお、以下の説明では、端子20において、底板部23a,23b及び傾斜板部23cが設けられている側を下側として説明する。ただし、この方向は、端子20の使用時の設置姿勢を限定する趣旨のものではない。
【0019】
電線12a,12bは、芯線部14a,14bの外周に被覆部16a,16bが押出被覆等によって被覆されたものである。芯線部14a,14bは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属線の撚り合せ線又は単線によって構成されている。また、電線12a,12bの被覆部16a,16bの端部が皮剥ぎされ、電線12a,12bの端部に芯線部14a,14bが露出している。以下、電線12a,12bの端部に露出する芯線部14a,14bを露出芯線部15a,15bとそれぞれ表記する場合がある。
【0020】
端子20は、ボルト取付孔11が設けられた電気接触部21と、圧着部22とを備えている。
【0021】
圧着部22は、電線12a,12bの端部に露出する露出芯線部15a,15bに圧着接続可能に構成されている。圧着部22は、底板部23a,23b及び傾斜板部23cで形成される底部23と、一対の被覆圧着片24と、一対の芯線圧着片25とを有している。底板部23aは、電気接触部21の基端部側より延出する長尺板状に形成されている。底板部23bは、端子20の電気接触部21とは反対側の端部に設けられており、長尺板状に形成されている。底板部23aと底板部23bとの間には、段差が形成されている。より詳細には、底板部23aの上面の高さは、底板部23bの上面の高さよりも高くなっている。さらに底板部23a,23bの間は、底板部23a,23bに対して傾斜する部分を有する傾斜板部23cによって接続されている。
【0022】
一対の被覆圧着片24は、底板部23bの両端側部より上方に延出する長尺片状に形成されている。圧着部22のうちこの一対の被覆圧着片24が形成された部分は、断面略U字状に形成されている。
【0023】
一対の芯線圧着片25は、一対の被覆圧着片24と電気接触部21との間で、底板部23aの両端側部より上方に延出する長尺片状に形成されている。この一対の芯線圧着片25と一対の被覆圧着片24との間、及び、一対の被覆圧着片24と電気接触部21との間には隙間が形成されている。また、圧着部22のうち一対の芯線圧着片25が形成された部分は、断面略U字状に形成されている。
【0024】
上記一対の芯線圧着片25は、露出芯線部15a,15bを抱持するように当該露出芯線部15a,15bに圧着される。また、一対の被覆圧着片24は、被覆部16a,16bの端部を抱持するように当該被覆部16a,16bに圧着される。これにより、電線12a,12bの端部と端子20とが圧着接続される。
【0025】
なお、電線12a,12bの被覆部16a,16bに圧着される一対の被覆圧着片24は、省略することも可能である。また、電気接触部21は、図1に示したような形態に限定されるものではなく、適宜他の形態(例えば他の端子と電気的に接続できるような接続部)に変更してもよい。
【0026】
図3は、圧着部22を端子20の長手方向に沿って切断したときの概略縦断面図である。なお、図3では、電線12a,12bを二点鎖線で示している。また、図4は、端子付電線10を下側から見た平面図である。
【0027】
傾斜板部23cには、端子20の幅方向に沿って切り欠かれたスリット23Sが設けられている。スリット23Sは、下側に配置された電線12bの被覆部16bの端部(端面18b)が当接する縁部(内側面)を形成している。したがって、本実施形態では、このスリット23Sの縁部が、当接部を形成している。
【0028】
なお、図2に示したように芯線圧着片25によって端子20を露出芯線部15a,15bに圧着したとき、圧縮力によって上側の露出芯線部15aが大きく下側へ曲げられてしまう。このとき、細い方の露出芯線部15bが上側にあった場合には、圧縮力によって断線してしまう虞がある。したがって、太い電線12aと細い電線12bとを上下に配置して端子20を圧着させる場合、太い電線12aを細い電線12bの上側に配置することが望ましい。
【0029】
しかしながら、図1,2に示したように、電線12a,12bを上下に重ねて配置した場合、電線12aが電線12bよりも太く形成されているため、電線12b位置が電線12aに隠れてしまう。このため、被覆部16bの端部(すなわち、露出芯線部15bの露出開始位置)を把握することが難しいため、電線12bの位置決めが困難になる。
【0030】
これに対して、本実施形態に係る端子20では、傾斜板部23cにスリット23Sが設けられている。このため、電線12bを被覆圧着片24側から芯線圧着片25側に向けて、底板部23aに這わしながら端子20に挿入したときに、被覆部16の端部(端面18b)をスリット23Sの縁部に当接させることができる。無論、端子20の上側から電線12bを挿入して、被覆部16の端部をスリット23Sの縁部に当接させるようにしてもよい。スリット23Sを傾斜板部23cの所要位置に形成しておくことによって、電線12bを規定の位置に位置決めすることができる。
【0031】
以上のように、太い電線12aの下側に細い電線12bが配置されるような場合においても、下側の電線12bを適切な位置に配置することができる。これにより、芯線圧着片25において、電線12a,12bの芯線部14a,14bを端子20に対して適切に圧着することができる。
【0032】
また本実施形態に係る端子20においては、スリット23Sを介して電線12a,12bの一部が外部に露出するように、スリット23Sの開口の大きさが設定されている。これにより、スリット23Sを介して、端子20内における電線12a,12bの位置(特に、被覆部16a,16bの端部の位置)を容易に把握することができる。したがって、電線12a,12bを規定の位置に配置することが容易になる。ただし、スリット23Sの大きさはこのようなものに限定されるものではなく、内部を確認することが困難な程度の細隙に形成されていてもよい。すなわち、スリット23Sの縁部に被覆部16bの端面18bが当接できる限りにおいては、スリット23Sはどのような大きさを有していてもよい。
【0033】
また、底板部23aと底板部23bとの間に形成される段差の高さは、任意に設定することができる。ただし、段差が高すぎるような場合には、被覆圧着片24と芯線圧着片25とで電線12a,12bをそれぞれ圧着したときに、芯線部14a,14bが段差部分において断線してしまう虞がある。そのような事態を避けるため、底板部23aと底板部23bの段差の高さは、被覆部16bの径方向の厚みに合わせて設定されることが望ましい。これにより、被覆部16bを底板部23aに這わせたときに、露出芯線部15bを底板部23bに適切に這わせることができる。これにより、被覆部16bの端部をスリット23Sの縁部に良好に当接させることができる。
【0034】
なお、図1〜図4に示した端子付電線10では、1本の電線12bが電線12aの下側に配置されているが、複数の電線が電線12aの下側に配置されるような場合にも、本願発明は有効である。
【0035】
図5は、複数の電線12b,12cが他の電線12aの下側に配置された端子付電線10を下側から見た平面図である。比較的細い複数の電線12b,12cが比較的太い電線12aの下側に配置された場合であっても、例えば図5に示したように、電線12b,12cを横に並べることで、それぞれの被覆部16b,16cの端面18b,18cを、スリット23Sの縁部に当接させることができる。したがって、複数の電線12b,12cの位置決めを適切に行うことができる。
【0036】
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、1つの端子20に対して、複数の電線(電線12a,12b(図1等参照)、または、電線12a〜12c(図5参照))に端子20を圧着させている。しかしながら、本願発明は、1つの電線に端子20を圧着させる場合にも有効である。
【0038】
また、上記実施形態では、スリット23Sは、外部に連通するように開口しているが、溝状に形成されていてもよい。この場合においても、被覆部16b,16cの端面18b,18cを溝状のスリットの内側面に当接させることで、電線12b,12cの位置決めを行うことができる。
【0039】
また、上記実施形態では、底板部23a,23bの間にスリット23Sが設けられた傾斜板部23cを配置しているが、この傾斜板部23cは省略することも可能である。つまり、底板部23a,23bを面一に形成して、この底部に被覆部16bの端面が当接するスリットが形成されていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、傾斜板部23cの上面(内側面)と底板部23bの上面(内側面)との成す角度θ(図3参照)が、鈍角となるように傾斜板部23cを設けている。しかしながら、これらの成す角度を直角(図6参照)または鋭角(図7参照)となるようにすることも可能である。
【0041】
例えば、図6に示した例では、底板部23aと底板部23bとが、底板部23bの上面に対して90度を成す上面を形成する底板部23dで接続されている。この場合、底板部23dの上面に被覆部16bの端面18bを当接させることができる。そして、底板部23dの上面が当接面を形成する。
【0042】
また、図7に示した例では、底板部23aと底板部23bとが、底板部23bの上面に対して鋭角を成す上面を形成する底板部23eで接続されている。この場合、底板部23eと底板部23eとが連続する部分(角部分)において、被覆部16bの端面18bを当接させることができる。
【0043】
さらに、上記実施形態および変形例にて説明した各構成は、互いに矛盾の生じない限り、適宜組み合わせたり、または省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 端子付電線
11 ボルト取付孔
12a,12b,12c 電線
14a,14b 芯線部
15a,15b 露出芯線部
16a,16b,16c 被覆部
18b,18c 端面
20 端子
21 電気接触部
22 圧着部
23 底部
23S スリット
23a,23b,23d,23e 底板部
23c 傾斜板部
24 被覆圧着片
25 芯線圧着片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部の露出芯線部に端子の圧着部が圧着されている端子付電線において、
前記端子は、
前記電線が載置されるとともに、前記電線の芯線部を覆う被覆部の端面に当接される当接部が設けられた底部を備える端子付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付電線において、
前記当接部が、前記底部に設けられたスリットの内側面である端子付電線。
【請求項3】
請求項2に記載の端子付電線において、
前記スリットを介して、前記電線の少なくとも一部が外部に露出する端子付電線。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の端子付電線において、
前記底部は、前記露出芯線部が載置される第1底板部と、
前記第1底板部よりも上側に設けられ、前記電線の被覆部が載置される第2底板部と、
前記第1底板部と前記第2底板部との間を接続するとともに、前記第1底板部に対して傾斜する部分を有する傾斜板部とを備え、
前記当接部が、前記傾斜板部に形成されている端子付電線。
【請求項5】
電線の端部の露出芯線部に圧着される圧着部を備える端子において、
前記電線が載置されるとともに、前記電線の芯線部を覆う被覆部の端面に当接される当接部が設けられた底部を備える端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248458(P2012−248458A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120200(P2011−120200)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】