説明

端子箱付電動機

【課題】電動機用端子箱において、端子を収容する空間の断面形状が、円筒形状又は略円筒形状であっても、より多くの端子を収容可能にする。
【解決手段】本発明は、電動機の内部から導出される内部線23と、電動機の外部から導入される外部線40を接続するための端子接続部30を有する端子箱12を前記電動機11に並設した端子箱付電動機10に係るものである。この端子箱付電動機10は、前記端子箱12に、少なくとも内周面の一部が円弧状に形成された端子箱本体28を用いると共に、該端子箱本体28の円弧状の内周面に、円周方向に沿って複数の端子接続部30を放射状に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に端子箱付電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機用端子箱において、端子を収容する空間の断面形状は四角形であることが多い。このような端子箱の一例は、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された端子箱は、端子を収容する空間の断面形状が四角形であり、端子箱自体は、電動機の駆動軸に対して水平方向に構成される側面に外付けされている。端子箱内には、内部リード線と外部リード線とを接続する端子板が設けられている。
【特許文献1】特開昭57−25133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、前述のように、端子箱が、電動機の駆動軸に対して水平方向に構成される側面に外付けされている。しかしながら、設計上、駆動軸の軸線方向に配置される端面(電動機の前後面)に端子箱を設ける方が好ましい場合がある。電動機の前後面に端子箱を設けるときには、スペース及び美観を考慮して、端子箱の幅寸法を電動機の幅寸法とそろえることが望ましい。電動機は、多くの場合、円筒状又は略円筒状を有する外形を備えており、端子箱を、電動機の外形に沿って、円筒状又は略円筒状に構成することが想定される。このような外形の端子箱においては、通常、端子を収容する空間の断面形状も、円筒形状又は略円筒形状に構成されることになる。しかしながら、端子の収容に際して、特許文献1に開示されるように、内部線と外部線とが、端子台(特許文献1における端子板)上でそれぞれ直線状に配置される構成を採用すると、端子を収容する空間の断面形状が四角形である場合と比較して、収容できる端子の数が減少するという問題がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、端子箱において、端子を収容する空間の断面形状が、円筒形状又は略円筒形状であっても、より多くの端子を収容できる端子箱付電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電動機の内部から導出される内部線と、電動機の外部から導入される外部線を接続するための端子接続部を有する端子箱を前記電動機に並設した端子箱付電動機に係るものである。この端子箱付電動機は、前記端子箱に、少なくとも内周面の一部が円弧状に形成された端子箱本体を用いると共に、該端子箱本体の円弧状の内周面に、円周方向に沿って複数の端子接続部を放射状に配置したことを特徴としている。
【0006】
また、前記端子箱付電動機は、前記端子接続部を支持する支持台を前記端子箱本体の内周面に沿って一定間隔で放射状に設けることができる。
【0007】
また、前記端子箱付電動機は、前記端子箱本体の内周面形状に対応する周面部を有し、該周面部に円周方向に沿って一定間隔で放射状に突出する前記支持台を設けた端子ホルダを前記端子箱本体に収容することができる。
【0008】
前記端子接続部は、前記支持台に組付けられる互いに対向する一対の対向部と該対向部と逆方向に突出する突出部を有する接続金具で構成され、該接続金具の突出部に前記電動機の内部線を接続するように構成することができる。
【0009】
前記接続金具は、金属プレートをU字形状に折り曲げて一対の対向部を形成し、該U字状に折り曲げた折り曲げ部の一部を切り起こして前記対向部と逆方向に突出する前記突出部を形成することができる。
【0010】
前記接続金具の突出部に前記内部線を接続する挿通孔を形成し、該挿通孔に内部線を挿通して半田付けしても良い。
【0011】
前記接続金具の一対の対向部と、前記支持台の互いに対応する位置に取付孔を形成するとともに、これら一対の対向部と該支持台を締結する締結具を介して前記外部線を共締めするように構成しても良い。
【0012】
前記端子箱の外壁を円筒状又は略円筒状に形成するとともに、前記電動機の出力軸が設けられた壁面と反対側の壁面に前記端子箱を並設し、該端子箱によって、前記電動機の内部線の導出孔を覆うように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、端子箱の中で、複数の端子接続部が、放射状に配置されていることにより、端子を収容する空間の断面形状が、円筒形状又は略円筒形状であっても、より多くの端子を収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図により説明する。図1は、本発明の実施形態に係る端子箱付電動機を示すものである。説明のため、各部材は適宜省略して示している。端子箱付電動機10は、電動機本体部11と、この電動機本体部11に外部電力を供給あるいは制御信号を送るために電動機本体部11内部から導出される内部線と電動機本体部11外部から導入される外部線とを接続する端子箱12とを備えている。
【0015】
電動機本体部11は、ハウジング13内に、固定子14と回転子15が同心状に配置され、回転子15の軸線状に挿通された回転軸(出力軸)16を介して前記回転子15が一体に組付けられている。前記固定子14はハウジング13の内周面に配設され、外部から供給される電力によって励磁されるものである。前記ハウジング13は、一方を閉塞した略円筒状のハウジング本体17とハウジング本体17の他方開口端を閉塞するブラケット18で構成され、このブラケット18と前記ハウジング本体17の閉塞された一方の壁部17aに、軸受19,20を介して前記回転軸16を回転自在に支持している。すなわち、前記回転軸16は、ブラケット18からハウジング13の外方に突出して回転動力を取り出せるようにしている。
【0016】
前記ハウジング本体17の壁部17aには、その厚さ方向に貫通する貫通孔21が形成され、前記固定子14の温度あるいは回転子15の回転数等を検出するための検出部22が設けられている。前記壁部17aの下部側には前記固定子14の固定子巻線に電力を供給するためのリード線(内部線)23aを導出する貫通孔24が形成されている。前記壁部17aには、前記検出部22及び貫通孔24を塞ぐカバー25がネジ26を介して取付けられている。
【0017】
さらに、前記カバー25の壁面25aには、その厚さ方向に貫通する貫通孔27が形成され前記リード線23aおよび前記検出部22からのリード線(内部線)23bが貫通孔27を通して前記端子箱12内に導入されている。前記検出部22は、例えば、ジェネレーター等で電動機の回転速度を検出するものである。
【0018】
図1及び図2に示すように、フランジ部28aを設けた筒状の端子箱本体28と端子箱本体28の開口端を塞ぐ蓋部29と、端子箱本体28内に収容され、内部線と外部線を接続するための端子接続部30を保持する端子ホルダ31とで構成されている。図2は、蓋部29を外して、図1の左方向から端子箱12の内部を見た図である。蓋部29は、図示しないネジ等を介して端子箱本体28のフランジ部28aに組付けられている。説明のため、各部材は適宜省略して示している。
【0019】
端子箱本体28の外壁は、外側に突出するフランジ部28aを有し、略円筒形状の外形を有する電動機本体部11に合わせて、略円筒形状に構成されている。この円筒形状部を電動機本体部11のカバー25に組付けて図示しないネジ等を介して端子箱本体28が電動機本体部11に組付けられている。端子箱本体28は、内部線の導出孔27が端子箱本体28の内側に位置するように、前記カバー25の外周に沿って設置されているため、内部線の導出孔27が、蓋部29と端子箱本体28とによって覆われる構成となっている。
【0020】
端子箱本体28の内周面は略円筒形状に構成され、この内周面に沿って、端子ホルダ31が収容されている。図3に端子ホルダ31の斜視図を示す。実施形態の端子ホルダ31は、端子箱本体28内に組付けられた内蔵部品を避けるため、一部を切欠いた形状に形成されている。端子ホルダ31は、端子箱本体28の内周面形状に対応する円弧状の周面部32と、この円弧状の周面部32の一端に構成された底部33とを有している。底部33は、段差部33aを介して、周縁側の上部面33bと内側の下部面33cとから成り、上部面33bは内部線の導出孔34を有している。端子ホルダ31は、上部面33bに設けられた内部線の導出孔34が、前記カバー25の壁面25aに設けられた導出孔27の位置に対応するように、端子箱本体28内に収容され、底部33に設けられたネジ孔33dを介して、前記カバー25の壁面25aにネジ止めされている。
【0021】
周面部32には、円周方向に沿って一定間隔で中心方向に向けて放射状に突出する複数の支持台35が設けられている。各支持台35相互間には、周面部32から放射状に突出する略台形状の横断面形状を有する支持壁36が設けられており、この支持壁36は、両側外側面を介して支持台35の両側面を支持している。なお、複数の支持台35の内、両端部に位置する支持台35については、片側を円弧状の周面部32の内面側に設けられた側壁によって支持されている。この側壁は切り欠かれた円弧状の周面部32の両端部32aを端子ホルダ31の内側に折り曲げることによって形成されている。支持台35には、板面に取付孔35aが設けられ、該取付孔35を介して、端子接続部を構成する接続金具30が支持台35に組付けられる。図4に接続金具30を組付けた端子ホルダ31の斜視図を示す。接続金具30は、図2に示すように、中心Oから半径rの距離に設置されており、ここで、中心Oは、端子ホルダ31の円弧形状の中心点であり、この中心点は、電動機本体部11の軸線方向に対する垂直面において、略円筒状に構成された電動機本体部11の中心点と一致している。
【0022】
図5に接続金具30の斜視図を示す。接続金具30は、互いに対向する一対の対向部30aと、この対向部30aと逆方向に突出する突出部30bとを有する。金属プレートがU字形状に折り曲げられて一対の対向部30aが形成され、折り曲げられた折り曲げ部の一部が切り起こされて突出部30bが形成される。対向部30aには、接続金具30を支持台32に取付けるための取付孔30cが設けられ、突出部30bには、内部線23を接続するための挿通孔30dが設けられている。
【0023】
接続金具30は、取付孔30cと前記支持台35の取付孔35aとを介して、ネジ37によって支持台35に組付けられ、この際、外部線40もネジ37によって共締めされる。外部線40は、端子箱本体28に外付けされた外部線導入部42の第1の外部線導入口43から、端子箱本体28に設けられた第2の外部線導入口44を介して端子箱12内に導かれる。端子箱12内に導かれた外部線40の先端には、圧着端子41が圧着されており、この圧着端子41が、ネジ37を介して、接続金具30に取付けられることにより、外部線40が共締めされる。
【0024】
一方、導出孔27及び導出孔34を介して端子ホルダ31内に導かれた内部線23は、挿通孔30dに挿通されて半田付けされることにより、接続金具30に固定される。これにより、内部線23と外部線40が接続金具30を介して接続される。
【0025】
上記実施形態において、複数の端子接続部30が、端子ホルダ31を介して、端子箱12の略円筒形状の内周面に沿って放射状に配置されているため、内部線23と外部線40とを接続するための接続部が直線状に設置される場合よりも、より多くの端子を収容できる。例えば、フランジの取付角が70mmである電動機の場合、M3.5のネジ37を有する端子接続部30を7個搭載することが可能になる。
【0026】
また、接続金具30の突出部30bに挿通孔30dが設けられているため、内部線23を挿通孔30dに挿通して、半田付けすることによって、内部線23が容易に接続できる。また、このような構成を用いることにより、従来必要であったプリント基板は不要となって、部品コストが低減される。
【0027】
さらに、端子箱12が電動機本体部11に設けられた内部線23の導出孔27を覆うように設置されているため、内部線23が電動機本体部11及び端子箱12から外部に出ることがなく、シール性に優れている。
【0028】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、検出部22が設けられていない場合には、カバー25を省略することができ、端子箱本体28を直接、ハウジング本体17に組付けることができる。また、端子ホルダ31は端子箱本体28内の内蔵部品がない場合には、完全な円筒形状に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る端子箱付電動機の一部を切欠いた縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る端子箱の蓋部を外して示す内部構造図である。
【図3】図1の端子箱に設けられている端子ホルダの斜視図である。
【図4】図3の端子ホルダと端子接続部の斜視図である。
【図5】図4に示された端子接続部の接続金具の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 端子箱付電動機
11 電動機本体部
12 端子箱
23 内部線
27 導出孔
28 端子箱本体
30 端子接続部
30a 対向部
30b 突出部
30c 取付孔
30d 挿通孔
31 端子ホルダ
35 支持台
35a 取付孔
40 外部線
41 圧着端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の内部から導出される内部線と、電動機の外部から導入される外部線を接続するための端子接続部を有する端子箱を前記電動機に並設した端子箱付電動機において、前記端子箱に、少なくとも内周面の一部が円弧状に形成された端子箱本体を用いると共に、該端子箱本体の円弧状の内周面に、円周方向に沿って複数の端子接続部を放射状に配置したことを特徴とする端子箱付電動機。
【請求項2】
前記端子接続部を支持する支持台を前記端子箱本体の内周面に沿って一定間隔で放射状に設けたことを特徴とする請求項1に記載の端子箱付電動機。
【請求項3】
前記端子箱本体の内周面形状に対応する周面部を有し、該周面部に円周方向に沿って一定間隔で放射状に突出する前記支持台を設けた端子ホルダを前記端子箱本体に収容したことを特徴とする請求項2に記載の端子箱付電動機。
【請求項4】
前記端子接続部は、前記支持台に組付けられる互いに対向する一対の対向部と該対向部と逆方向に突出する突出部を有する接続金具で構成され、該接続金具の突出部に前記電動機の内部線を接続したことを特徴とする請求項2または3に記載の端子箱付電動機。
【請求項5】
前記接続金具は、金属プレートをU字形状に折り曲げて一対の対向部を形成し、該U字状に折り曲げた折り曲げ部の一部を切り起こして前記対向部と逆方向に突出する前記突出部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の端子箱付電動機。
【請求項6】
前記接続金具の突出部に前記内部線を接続する挿通孔を形成し、該挿通孔に内部線を挿通して半田付けされていることを特徴とする請求項4または5に記載の端子箱付電動機。
【請求項7】
前記接続金具の一対の対向部と、前記支持台の互いに対応する位置に取付孔を形成するとともに、これら一対の対向部と該支持台を締結する締結具を介して前記外部線を共締めしたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の端子箱付電動機。
【請求項8】
前記端子箱の外壁を円筒状又は略円筒状に形成するとともに、前記電動機の出力軸が設けられた壁面と反対側の壁面に前記端子箱を並設し、該端子箱によって、前記電動機の内部線の導出孔を覆うようにしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の端子箱付電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−252996(P2008−252996A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88398(P2007−88398)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】