説明

端子金具及び取付方法

【課題】圧着部での接触抵抗を抑え、電線のアルミニウム(Al)又はAl合金から成る芯線を確実に取り付けることができる端子金具及び当該取付方法を提供するを提供する。
【解決手段】Al端子32が、第1の底壁321と、該第1の底壁321から立設した、芯線41が上側に配置された電線接続部312を第1の底壁321が下側から覆った状態でかしめられる一対のかしめ片322とを有する。これにより、銅又は銅合金から成る端子金具本体31の外側からAl又はAl合金から成るAl端子32を圧着して、Al端子31によって銅又は銅合金から成る端子金具本体31のスプリングバックを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び取付方法に係り、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線に取り付けられる端子金具及び当該取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、種々の電子機器が搭載される。前記自動車は、前記電子機器にバッテリなどの電線から電力や制御装置からの制御信号などを伝えるためにワイヤハーネスを配索している。前述したワイヤーハーネスは、電線と、コネクタなどを備えている。コネクタは、絶縁性の合成樹脂で形成されたハウジングと、該ハウジング内に収容されるとともに前記電線の端末に取り付けられた端子金具を備えている。
【0003】
上述した端子金具の一例を図10に示す。図11は、図10に示す端子金具を電線に取り付けた状態での斜示図である。図12は、図11のIII−III線断面図である。電線10は、図11に示すように、複数本の芯線11と、該芯線11を被覆する被覆部12とを備えている。端子金具20は、導電性の板金を折り曲げるなどして得られ、図10に示すように、相手側の端子金具と接続する電気接触部21と、電線10と接続される電線接続部22と、を一体に備えている。
【0004】
電気接触部21は、角筒状の筒部23と、該筒部23内に収容された図示しないばね片とを備えている。筒部23は、図示例では、四角筒に形成されている。ばね片は、筒部23内に侵入した相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子を、筒部23の内面に向かって付勢して該内面との間に挟む。電気接触部21は、筒部23内に相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子が挿入され、ばね片が筒部23の内面との間に前述した挿入子を挟むことで、相手側の端子金具と電気的及び機械的に接続する。
【0005】
電線接続部22は、断面円弧状の底壁24と、一対の芯線かしめ片25と、一対の被覆部かしめ片26とを備えている。底壁24は、筒部23の外壁に連なっている。一対の芯線かしめ片25と一対の被覆部かしめ片26とは、底壁24から立設されている。
【0006】
上述した一対の芯線かしめ片25間の底壁24上に電線10の芯線11を位置付けた状態で一対の芯線かしめ片25をかしめると、図11に示すように、一対の芯線かしめ片25に電線10の芯線11が圧着される。また、一対の被覆部かしめ片26間の底壁24に電線10の被覆部12を位置付けた状態で一対の被覆部かしめ片26をかしめると、図11に示すように、一対の被覆部かしめ片26に電線10の被覆部12が取り付けられる。
【0007】
上述したようにばね片を有する端子金具20には、ばね性及び導電性に優れる銅又は銅合金が一般に使用されている。一方、電線10の芯線11材料には、導線性の優れた銅線が一般的に使用されている。
【0008】
ところで、移動体としての自動車は、ユーザなどからより多機能であることが求められている。このため、前述した自動車は、搭載される電子機器が増加する傾向である。このため、勿論、前述したワイヤハーネスの電線10が増加して、該ワイヤハーネスの質量や体積が増加する傾向である。
【0009】
このため、ワイヤーハーネスは、小型軽量化を図るために、前述した電線10の芯線11材料として、導線性に優れ、銅の比重のおよそ1/3であるアルミニウムが使用され始めている。一方、端子金具20は、上述したようにばね片を有するため、ばね性の優れる銅又は銅合金材料をそのまま使用したいという要望があった。
【0010】
しかしながら、銅又は銅合金は、アルミニウム又はアルミニウム合金に比べてスプリングバック特性が大きい。このため、銅又は銅合金から成る端子金具20をかしめてアルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線11を圧着させると、ルーズな圧着状態となり、圧着部での接触抵抗の値が大きくなり、接触不良が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開平4−209471号公報
【特許文献2】特開昭56−48079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、圧着部での接触抵抗を抑え、電線のアルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線を確実に取り付けることができる端子金具及び当該取付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される芯線が接続される電線接続部、及び、相手側の端子金具が接続される電気接触部を有する銅又は銅合金から成る端子金具本体を備えた端子金具において、
前記電線接続部及び前記芯線をかしめるアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されたアルミニウム端子を備え、前記アルミニウム端子が、第1の底壁と、該第1の底壁から立設した、前記芯線が上側に配置された電線接続部を前記第1の底壁が下側から覆った状態でかしめられる第1の一対のかしめ片とを有することを特徴とする端子金具に存する。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、アルミニウム端子が、第1の底壁と、該第1の底壁から立設した、芯線が上側に配置された電線接続部を第1の底壁が下側から覆った状態でかしめられる第1の一対のかしめ片とを有する。これにより、銅又は銅合金から成る端子金具本体の外側からアルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム端子を圧着することができ、アルミニウム端子によって銅又は銅合金から成る端子金具本体のスプリングバックを抑制することができ、アルミニウム端子、端子金具本体、芯線間の接触圧力の向上を図ることができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線とアルミニウム端子とはほぼ同じスプリングバック特性であるため、アルミニウム端子と芯線とが直接圧着される部分では高い接触圧力を得ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記端子金具本体の電線接続部が、前記芯線が上側に配置された第2の底壁と、該第2の底壁から立設した、前記第1の一対のかしめ片間に挟まれた状態でかしめられる、前記第1の一対のかしめ片の高さよりも低い第2の一対のかしめ片とを有していることを特徴とする請求項1記載の端子金具に存する。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、第2の一対のかしめ片が、第1の一対のかしめ片間に挟まれた状態でかしめられる。第2の一対のかしめ片が、第1の一対のかしめ片の高さよりも低い。これにより、アルミニウム端子が有する第1のかしめ片の第1の底壁から離れた側の端部がアルミニウム芯線に食い込み、締まり嵌め構造を形成できる。
【0016】
請求項3記載の発明は、第1の底壁及び該第1の底壁から立設した第1の一対のかしめ片を有するアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されたアルミニウム端子を用いて、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される芯線が接続される電線接続部、及び、相手側の端子金具と接続される電気接触部を有する銅又は銅合金からなる端子金具本体に前記芯線を取り付ける取付方法であって、前記電線接続部の上側に前記芯線を配置する工程と、前記アルミニウム端子の第1の底壁で前記電線接続部の背面を覆う工程と、芯線が上側に配置された電線接続部を前記第1の底壁が下側から覆った状態で前記一対のかしめ片をかしめる工程とを備えたことを特徴とする取付方法に存する。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、電線接続部の上側に芯線を配置し、アルミニウム端子の第1の底壁で電線接続部の背面を覆い、芯線が上側に配置された電線接続部を第1の底壁が下側から覆った状態で一対のかしめ片をかしめる。これにより、銅又は銅合金から成る端子金具本体の外側からアルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム端子を圧着することができ、アルミニウム端子によって銅又は銅合金から成る端子金具本体のスプリングバックを抑制することができ、アルミニウム端子、端子金具本体、芯線間の接触圧力の向上を図ることができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線とアルミニウム端子とはほぼ同じスプリングバック特性であるため、アルミニウム端子と芯線とが直接圧着される部分での接触圧力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように請求項1及び3記載の発明によれば、銅又は銅合金から成る端子金具本体の外側からアルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム端子を圧着することができ、アルミニウム端子によって銅又は銅合金から成る端子金具本体のスプリングバックを抑制することができ、アルミニウム端子、端子金具本体、芯線間の接触圧力の向上を図ることができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線とアルミニウム端子とはほぼ同じスプリングバック特性であるため、アルミニウム端子と芯線とが直接圧着される部分では高い接触圧力を得ることができるので、圧着部での接触抵抗を抑え、電線のアルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線を確実に取り付けることができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、アルミニウム端子が有する第1のかしめ片の第1の底壁から離れた側の端部がアルミニウム芯線に食い込み、締まり嵌め構造を形成できるので、圧着部での接触抵抗を抑え、電線のアルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線をより確実に取り付けることができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、銅又は銅合金から成る端子金具本体のスプリングバックを確実に抑制して、アルミニウム端子と端子金具本体との間、端子金具本体と芯線との間の接触面積も大きくすることができるので、圧着部での接触抵抗を抑え、電線のアルミニウム又はアルミニウム合金から成る芯線をより確実に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の端子金具3とこの端子金具3に取り付けられる電線4を示す斜示図である。図2は、図1中のアルミニウム(以下Alと略記)端子32に端子金具本体31を位置付けた状態を示す斜示図である。図3は、図2に示す端子金具3と電線4とのI−I線断面図である。図4は、図2に示されたAl端子32のかしめ片322をかしめた状態を示す斜示図である。図5は、図4に示す端子金具3と電線4とのII−II線断面図である。
【0022】
図6は、図1に示す端子金具3とAl芯線41とを圧着する圧着装置1の一例である。図7は、図6に示されたアンビル19とクリンパ27とが互いに近づいた状態を示す説明図である。
【0023】
電線4は、図1に示すように、複数本のAl芯線41と、該Al芯線41を被覆する被覆部42と、を備えている。Al芯線41(=芯線)は、Al又はAl合金から構成される。Al芯線41は、断面形が円状に形成されている。
【0024】
被覆部42は、絶縁性の合成樹脂からなる。被覆部42は、複数本のAl芯線41を被覆している。電線4は、その端末において、被覆部42が除去されてAl芯線41が露出している。
【0025】
端子金具3は、端子金具本体31と、Al端子32とを別体に備えている。端子金具本体31は、銅又は銅合金から構成されている。端子金具本体31は、上記銅又は銅合金から構成された板金を折り曲げるなどして得られ、図1に示すように、相手側の端子金具と接続する電気接触部311と、電線4のAl芯線41と接続される電線接続部312と、を一体に備えている。
【0026】
電気接触部311は、角筒状の筒部313と、該筒部313内に収容された図示しないばね片とを備えている。筒部313は、図示例では、四角筒に形成されている。ばね片は、筒部313内に侵入した相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子を、筒部313の内面に向かって付勢して該内面との間に挟む。電気接触部311は、筒部313内に相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子が挿入され、ばね片が筒部313の内面との間に前述した挿入子を挟むことで、相手側の端子金具と電気的及び機械的に接続する。
【0027】
電線接続部312は、図3に示すように、断面円弧状の底壁314と、一対の芯線かしめ片315と、一対の被覆部かしめ片316(図1)とを備えている。底壁314は、筒部313の外壁に連なっている。底壁314は、その上側にAl芯線41が配置される。
【0028】
一対の芯線かしめ片315は、特許請求の範囲に記載された第2の一対のかしめ片をなしている。底壁314は、特許請求の範囲に記載された第2の底壁をなしている。芯線かしめ片315は、底壁314の長手方向Y1の中央に設けられている。芯線かしめ片315は、底壁314の幅方向Y2の両端部から立設している。
【0029】
被覆部かしめ片316は、底壁314の電気接触部311から離れた側の端部に設けられている。被覆部かしめ片316は、底壁314の幅方向Y2の両端部から立設している。被覆部かしめ片316は、図4に示すように、底壁314から離れた側の縁が底壁314に近づく方向に曲げられて、底壁314との間に電線4の被覆部42を挟む。こうして、被覆部かしめ片316は、電線4の被覆部42をかしめる。
【0030】
Al端子32は、図3に示すように、断面円弧状の底壁321と、一対のかしめ片322とを備えている。一対のかしめ片322は、底壁321の幅方向Y2の両端部から立設している。底壁321は、一対の芯線かしめ片315間の底壁314の下側を覆う。即ち、底壁321は、電線接続部312の下側を覆う。
【0031】
図3に示すように、上記芯線かしめ片315は、その高さH1がかしめ片322の高さH2よりも低くなるように設けられている。一対のかしめ片322は、特許請求の範囲に記載された第1の一対のかしめ片をなしている。底壁321は、特許請求の範囲に記載された第1の底壁をなしている。
【0032】
また、一対のかしめ片322は、Al芯線41が上側に配置された端子金具本体31の底壁314をAl端子32の底壁321が下側から覆うと共にその一対のかしめ片322間に一対のかしめ片315を挟んだ状態でかしめられる。一対のかしめ片322は、底壁321から離れた側の縁が底壁321に近づく方向に折り曲げられ、底壁321との間に電線4のAl芯線41と端子金具本体31の芯線かしめ片315、その間の底壁314とを挟む。こうして、かしめ片322は、電線4のAl芯線41と端子金具本体31の芯線かしめ片315、その間の底壁314をかしめる。
【0033】
前述した構成の端子金具3は、例えば図6に示す圧着装置1によって、Al端子32のかしめ片322の底壁321から離れた側の縁が底壁321に近づく方向に曲げられ、端子金具本体31の被覆部かしめ片316の底壁314から離れた側の縁が底壁314に近づく方向に曲げられる。そして、端子金具3は、図4に示すように、圧着装置1によって、かしめ片322、316で電線4のAl芯線41と被覆部42とをかしめて、電線4の端末に取り付けられる。
【0034】
圧着装置1は、図6に示すように、図示しない装置本体と、かしめ手段としてのかしめ部15と、駆動源としてのエアシリンダ17とを備えている。装置本体は、工場のフロア上などに設置される。なお、駆動源としては、モータや油圧式のものであっても良い。
【0035】
かしめ部15は、型としてのアンビル19と、型としてのクリンパ27とを備えている。アンビル19は、装置本体に固定されている。アンビル19は、表面上に端子金具3が重ねられる(位置付けられる)。
【0036】
クリンパ27は、アンビル19と間隔をあけて相対し、かつ該アンビル19に接離自在に装置本体に支持されている。即ち、アンビル19とクリンパ27とは、互いに接離自在に設けられている。なお、接離とは、互いに近づいたり互いに離れることをいう。クリンパ27には、アンビル19に近づいた側の縁部から接離方向に沿って設けられた溝27aが設けられている。この溝27aはアンビル19から離れる方向に向かう従って幅が狭くなる。
【0037】
アンビル19とクリンパ27とは、互いに離れた状態で、アンビル19上に端子金具3と電線4のAl芯線41とが位置付けられる。アンビル19とクリンパ27とは、互いに近づいて、互いの間に端子金具3と電線4のAl芯線41とを挟んで、かしめ片322、315、316をかしめる。
【0038】
駆動源としてのエアシリンダ17は、シリンダ本体28と、該シリンダ本体28から突没自在に設けられたロッド29とを備えている。シリンダ本体28は、装置本体に取り付けられている。ロッド29は、クリンパ27に取り付けられている。エアシリンダ17は、ロッド29がシリンダ本体28から伸長すると、クリンパ27がアンビル19に近づき、ロッド29がシリンダ本体28に縮小すると、クリンパ27がアンビル19から離れる状態に配置されている。
【0039】
次に、上述した構成の端子金具3のAl芯線41に対する取付方法を以下説明する。まず、図7に示すように、アンビル19とクリンパ27とが離れた状態で、アンビル19上にAl端子32を搭載する。そして、Al端子32の一対のかしめ片322間の底壁321上に端子金具本体31の一対の芯線かしめ片315間の底壁314を位置付ける。これにより、Al端子32の底壁321が、端子金具本体31の電線接続部312の一部である底壁314を下側から覆った状態となる。また、端子金具本体31の一対のかしめ片315が、Al端子32の一対のかしめ片322に挟まれた状態となる。
【0040】
さらに、端子金具本体31の一対の芯線かしめ片315間の底壁314に電線4のAl芯線41を位置付ける。これにより、端子金具本体31の電線接続部312の一部である底壁314の上側にAl芯線41が配置される。
【0041】
その後、エアシリンダ17のロッド29が伸長する。すると、図7に示すように、アンビル19にクリンパ27が近づいて、一対のかしめ片322がクリンパ27に設けた溝27aの内側面に沿って変形する。同時に、一対の芯線かしめ片315が一対のかしめ片322の変形に応じて変形する。そして、アンビル19とクリンパ27との間に端子金具3と電線4のAl芯線41とを挟んで、かしめ片322、316をかしめて、電線4に端子金具3を取り付ける。最終的に、Al芯線41は図5に示すように底壁314、かしめ片315、322と密に接した状態で端子金具3に圧着される。
【0042】
そして、エアシリンダ17のロッド29が縮小して、アンビル19とクリンパ27とが互いに離れて、アンビル19上の端子金具3を取り除く。前述した工程と同様に、アンビル19上にAl端子32を重ね、該Al端子32の底壁321上に端子金具本体31の一対の芯線かしめ片315間の底壁314を位置付けると共に一対の芯線かしめ片315間の底壁314上にAl芯線41を位置付けて、端子金具3を電線4に取り付ける。
【0043】
上述した実施形態によれば、Al端子31が、底壁321と、底壁321から立設した、Al芯線41が上側に配置された電線接続部312の底壁314を底壁321が下側から覆った状態でかしめられる一対のかしめ片322とを有する。
【0044】
これにより、銅又は銅合金から成る端子金具本体31の外側からAl又はAl合金から成るAl端子32を圧着することができ、Al端子32によって銅又は銅合金から成る端子金具本体31のスプリングバックを抑制することができる。Al端子32の材料であるAl又はAl合金は、端子金具本体31の材料である銅又は銅合金よりもスプリングバック率が小さい。
【0045】
このため、圧着装置1による圧着力の印加を停止すると端子金具本体31は大きく元の形状に戻ろうとする。しかしながら、Al端子32はほとんど元の形状に戻らないため、Al端子32によって端子金具本体31のスプリングバックを抑えることができる。これにより、圧着部での接触抵抗を抑え、電線4のAl又はAl合金から成るAl芯線41を確実に取り付けることができる。
【0046】
また、Al又はAl合金から成るAl芯線41とAl端子32とはほぼ同じスプリングバック特性であるため、Al端子32とAl芯線41とが直接圧着される部分では高い接触圧力を得ることができる。
【0047】
また、上述した実施形態によれば、端子金具本体31の電線接続部312が、底壁314及び該底壁314から立設して一対のかしめ片322の高さH2よりも低い一対の芯線かしめ片315を有している。これにより、Al端子32が有する一対のかしめ片322の底壁321から離れた側の端部がAl芯線41に食い込み、締まり嵌め構造を形成できるので、圧着部での接触抵抗を抑え、電線4のアルミニウム又はアルミニウム合金から成るAl芯線41を確実に取り付けることができる。
【0048】
また、上述した端子金具本体31の一対の芯線かしめ片315の一方の縁から他方の縁までの長さL1が、Al端子32の一対のかしめ片322の一方の縁から他方の縁までの長さL2の1/3〜2/3となるように端子金具本体31が設けられている。これにより、銅又は銅合金から成る端子金具本体31のスプリングバックを確実に抑制して、Al端子32と端子金具本体31との間、端子金具本体31とAl芯線41との間の接触面積も大きくすることができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、端子金具本体31の電線接続部312が底壁314及び底壁314から立設した一対の芯線かしめ片315を有していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図8に示すように、電線接続部312に一対の芯線かしめ片315を設けなくても良い。しかしながら、上述した実施形態のように一対の芯線かしめ片315を設けた方が、Al端子32と端子金具本体31との間、端子金具本体31とAl芯線41との間の接触面積を大きくすることができる。しかも、図8に示すように芯線かしめ片315がない平坦な底壁314のみの形状に比べて、構造的に、断面二次モーメントや断面係数が大きい値となり、圧着部での剛性や強度の向上を図ることができるため、上述した実施形態が最適である。
【0050】
また、図9に示すように、Al端子32と端子金具本体31との長手方向Y1における位置ズレを防止するために、端子金具本体31にガイド片317を設けることが考えられる。ガイド片317は、一対の芯線かしめ片315のそれぞれに一対設けられている。一対のガイド片317は、芯線かしめ片315の長手方向両端にそれぞれ設けられている。ガイド片317は、芯線かしめ片315の外側面から外側に突起して設けられている。そして、同図(B)に示すように、一対のガイド片317間にAl端子32のかしめ片322を挟むように、Al端子32上に端子金具本体31を位置付ける。
【0051】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の端子金具とこの端子金具に取り付けられる電線を示す斜示図である。
【図2】図1中のアルミニウム端子に端子金具本体を位置付けた状態を示す斜示図である。
【図3】図2に示す端子金具と電線とのI−I線断面図である。
【図4】図2に示されたAl端子のかしめ片をかしめた状態を示す斜示図である。
【図5】図4に示す端子金具と電線とのII−II線断面図である。
【図6】図1に示す端子金具とAl芯線とを圧着する圧着装置の一例である。
【図7】図6に示されたアンビルとクリンパとが互いに近づいた状態を示す説明図である。
【図8】他の実施形態における断面図である。
【図9】(a)は他の実施形態における端子金具本体の斜示図であり、(b)は(a)の端子金具本体をAl端子上に位置付けた状態での部分側面図である。
【図10】従来の端子金具の一例を示す斜示図である。
【図11】図10に示す端子金具を電線に取り付けた状態での斜示図である。
【図12】図11のIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0053】
4 電線
31 端子金具本体
32 アルミニウム端子
41 アルミニウム芯線(芯線)
311 電気接触部
312 電線接続部
314 底壁(第2の底壁)
315 一対の芯線かしめ片(第2の一対のかしめ片)
321 底壁(第1の底壁)
322 一対のかしめ片(第1の一対のかしめ片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される芯線が接続される電線接続部、及び、相手側の端子金具が接続される電気接触部を有する銅又は銅合金から成る端子金具本体を備えた端子金具において、
前記電線接続部及び前記芯線をかしめるアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されたアルミニウム端子を備え、
前記アルミニウム端子が、第1の底壁と、該第1の底壁から立設した、前記芯線が上側に配置された電線接続部を前記第1の底壁が下側から覆った状態でかしめられる第1の一対のかしめ片とを有することを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記端子金具本体の電線接続部が、前記芯線が上側に配置された第2の底壁と、該第2の底壁から立設した、前記第1の一対のかしめ片間に挟まれた状態でかしめられる、前記第1の一対のかしめ片の高さよりも低い第2の一対のかしめ片とを有していることを特徴とする請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
第1の底壁及び該第1の底壁から立設した第1の一対のかしめ片を有するアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されたアルミニウム端子を用いて、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される芯線が接続される電線接続部、及び、相手側の端子金具と接続される電気接触部を有する銅又は銅合金からなる端子金具本体に前記芯線を取り付ける取付方法であって、
前記電線接続部の上側に前記芯線を配置する工程と、
前記アルミニウム端子の第1の底壁で前記電線接続部の背面を覆う工程と、
芯線が上側に配置された電線接続部を前記第1の底壁が下側から覆った状態で前記一対のかしめ片をかしめる工程とを備えたことを特徴とする取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−305356(P2007−305356A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130986(P2006−130986)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】