説明

第四級アンモニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池

【課題】新規な第四級アンモニウムヨウ化物塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池を提供する。
【解決手段】電解質に用いる第四級アンモニウム塩は一般式(1)で表せる。


(式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を有するポリエーテル基を表し、メトキシエトキシメチル基等である。Rは、Rと同一又は異なるポリエーテル基、メチル基又はエチル基を表す。Xは、ハロゲン化物イオン等のアニオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規第四級アンモニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への関心の高まりから、自然エネルギーを利用したいわゆるグリーンエネルギーへの関心が高まりつつある。その中で、無尽蔵の太陽エネルギーを利用した太陽電池の開発も盛んに行われている。
【0003】
太陽電池は、大きく分けて、シリコン等を用いた無機系太陽電池と、有機物を用いた太陽電池に分類される。現在、結晶又は非結晶のシリコンを用いた太陽電池が主流となっているが、製造において多くのエネルギーと高度な技術が必要でありそのため高価なものとなっている。一方、有機系の太陽電池、中でも、増感色素を用いた、色素増感型太陽電池は、シリコン系と比較できるくらいに高変換効率を期待できるうえ素子構造上、安価な製造が可能となるメリットがあるため盛んに研究がなされている(非特許文献1)。
【0004】
従来から電池、センサー、表示素子、記録素子等の電気化学的素子の電解質として、電解質塩を溶媒に溶解した電解液が用いられてきた。しかし、このような電解液を用いた電気化学的素子においては、長期間の使用又は保存の間に液漏れが発生することがあり、信頼性に欠けるという問題点があった。
【0005】
特許文献1は、色素により増感された微粒子半導体を用いた光電変換素子及びそれを用いた光化学電池を開示している。しかしながら、これらにおいても電荷輸送層に液状電解質を用いているため、長期間の使用又は保存の間に電解液が漏洩又は枯渇し、光電変換効率が著しく低下したり、素子として機能しなくなったりすることが懸念される。
【0006】
一方、近年、室温付近で液体状態を示す塩(室温溶融塩)いわゆるイオン液体が見いだされ盛んに研究が行われている。その応用研究の1つに電気化学デバイスの電解液として、イオン液体の使用が検討されている。イオン液体は、特定の溶媒と任意の割合で混ざり合うという性質を有する。それゆえ、イオン液体を用いると、上記の様に従来からある固体電解質を有機溶媒に溶解させた場合と比べて、はるかに高濃度の溶液(電解液)が得られ、しかも、低温下でも析出などによる電解液の性能が低下する問題が生ずるということも少ない。さらに、イオン液体は、それ自身、液体であるため、塩単体を電解液として使用することもまた可能である。そこで電解液の漏洩及び枯渇を防止し光電変換素子の耐久性を向上させるために、イオン液体として、ピリジニウム塩(特許文献6)、イミダゾリウム塩(特許文献2〜6)、トリアゾリウム塩(特許文献2及び4)、オキサゾリウムヨウ化物塩(特許文献7)、ポリシロキサン塩(特許文献9)、グアニジウムヨウ化物塩(特許文献8)、フェロセニウム塩(特許文献10)等、また、エチレンオキシ基の繰り返しを含む置換基を特定の位置に有するピロリジニウムヨウ化物塩(特許文献11)を電解質とする方法が開示されている。
【0007】
これらの方法では、水又は有機溶媒等の電解質を溶解させる溶媒が不要又は少量で済むため、電池の耐久性の向上が期待できる。しかしながら、これらの室温溶融塩を用いた光電変換素子では、光電変換効率は必ずしも高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,927,721号明細書
【特許文献2】国際公開第95/18456号公報
【特許文献3】特開平8−259543号公報
【特許文献4】特表平09−507334号公報
【特許文献5】特開2003−31270号公報
【特許文献6】特開2001−256828号公報
【特許文献7】特開2000−053662号公報
【特許文献8】特開2001−035552号公報
【特許文献9】特開2002−298913号公報
【特許文献10】特開2004−043334号公報
【特許文献11】特開2005−145927号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】荒川裕則 編、色素増感太陽電池の最新技術II、シーエムシー出版(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、光電変換素子に用いた場合に高い光電変換効率を与える新規な第四級アンモニウムヨウ化物塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決できる新規化学物質を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム塩が電荷輸送能に優れるため電解質として好適であり、これを光電変換素子に用いることにより高い光電変換効率が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
項1. 下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、m1は、1又は2であり、n1は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基を表す。Rは、下記一般式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、m2は、1又は2であり、n2は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基、メチル基又はエチル基を表す。ただし、上記一般式(2)においてm1が2の場合には、Rは、上記一般式(3)で表わされるポリエーテル基である。Xは、アニオンを示す。)で表わされることを特徴とする第四級アンモニウム塩。
項2. 第四級アンモニウム塩が、一般式(2)においてm1=1である下記一般式(4)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R、R、n1及びXは、上記に同じ。)で表わされる化合物である項1に記載の第四級アンモニウム塩。
項3. 第四級アンモニウム塩が、下記一般式(5)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R3a及びR4aは、同一又は異なって、メチル基又はエチル基を表す。m1、n1、m2、n2及びXは、上記に同じ。)で表わされる化合物である項1又は2に記載の第四級アンモニウム塩。
項4. Xが、ヨウ化物イオンである項1〜3のいずれか一項に記載の第四級アンモニウム塩。
項5. 項1〜4のいずれか一項に記載の第四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする電解質組成物。
項6. 光化学電池に用いられるものである項5に記載の電解質組成物。
項7. 導電層と感光層とを有する光電極、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が項5又は6に記載の電解質組成物を含有することを特徴とする光電変換素子。
項8. 前記感光層が、色素によって増感された微粒子半導体を含有する項7に記載の光電変換素子。
項9. 項7又は8に記載の光電変換素子を用いた光化学電池。
項10. 色素増感太陽電池である項9に記載の光化学電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光電変換素子に用いた場合に高い光電変換効率を与える新規な第四級アンモニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池を提供することができる。従って本発明によれば、光電変換特性に優れた光電変換素子、光化学電池等が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の光電変換素子及び光化学電池の構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.第四級アンモニウム塩
本発明の第四級アンモニウム塩は、前記一般式(1)で表わされる化合物である。
前記一般式(1)において、Rは、下記一般式(2)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、m1は、1又は2であり、n1は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基を表す。
本発明におけるポリエーテル基とは、エーテル結合を2つ以上含む基である。
【0028】
一般式(2)で表わされるポリエーテル基において、m1は、1であることが好ましい。
n1は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。
【0029】
一般式(2)においてRで示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。Rは、好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基又はエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0030】
前記一般式(2)表わされるポリエーテル基としては、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエトキシエチル基等が挙げられる。中でも、メトキシエトキシメチル等が好ましい。
【0031】
一般式(1)中、Rは、Rと同一又は異なるポリエーテル基、メチル基又はエチル基を表す。具体的には、Rは、下記一般式(3)
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、m2は、1又は2であり、n2は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基、メチル基又はエチル基を表す。ただし、前記一般式(2)においてm1が2の場合には、Rは、前記一般式(3)で表わされるポリエーテル基である。
前記一般式(2)においてm1が1の場合には、Rは、前記一般式(3)で表わされるポリエーテル基、メチル基又はエチル基である。
【0034】
前記一般式(3)において、m2は、好ましくは2である。n2は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。
一般式(3)においてRで示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基は、上記一般式(2)におけるRで示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基と同様である。Rは、好ましくは炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0035】
上記一般式(3)表わされるポリエーテル基としては、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエトキシエチル基等が挙げられる。中でも、メトキシエトキシエチル等が好ましい。
【0036】
で表されるアニオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、N(CFSO、N(CFCFSO、C(CFSO、BF、BPh、PF、ClO、R−COO、R−SO、SCN、N(CN)等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン化物イオンであり、より好ましくはI(ヨウ化物イオン)である。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖のアルキル基を表す。
【0037】
本発明の第四級アンモニウム塩は、好ましくは、一般式(2)においてm1=1である下記一般式(4)
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、R、R、n1及びXは、前記に同じ。)で表わされる化合物である。中でも、Rがメチル基であり、且つn1が1である化合物が好ましい。中でも、R及びRがメチル基であり、且つn1が1である化合物が特に好ましい。
【0040】
本発明の第四級アンモニウム塩においては、Rが一般式(2)で表わされるポリエーテル基であり、かつRが一般式(3)で表わされるポリエーテル基であることも好ましい。このような第四級アンモニウム塩として、下記一般式(5)
【0041】
【化9】

【0042】
(式中、R3a及びR4aは、同一又は異なって、メチル基又はエチル基を表す。m1、n1、m2、n2及びXは、前記に同じ。)で表わされる化合物が挙げられる。R3a及びR4aは、より好ましくはメチル基である。
【0043】
本発明の一般式(1)で表わされる好ましい第四級アンモニウム塩は、具体的には、N−メトキシエトキシメチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N−メトキシエトキシエトキシメチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N−メトキシエトキシエトキシエトキシメチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N−エチル−N−メトキシエトキシメチルピロリジニウムヨージド、N−エチル−N−メトキシエトキシエトキシメチルピロリジニウムヨージド、N−エチル−N−メトキシエトキシエトキシエトキシメチルピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシメチル)ピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエトキシメチル)ピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシメチル)ピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド、N−ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド等を挙げることができる。中でも、好ましくは、N−メトキシエトキシメチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシメチル)ピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド等であり、より好ましくは、N−メトキシエトキシメチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N,N−ビス(メトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージドである。
【0044】
本発明の前記一般式(1)で示される第四級アンモニウム塩は、種々の方法で製造される。例えば、その代表的な合成法を下記反応式に示す。
【0045】
【化10】

【0046】
(式中、R、R、m1及びn1は、前記と同じ。Yは、Cl、Br、Iなどのハロゲンを示す。)
なお、上述したように、m1が2の場合には、Rは、前記一般式(3)で表わされるポリエーテル基である。Yは、好ましくはI(ヨウ素)である
すなわち、一般式(6)で表わされる三級アミンと一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物(以下、化合物(7a)ともいう)とを反応させることにより、一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩(以下、化合物(1a)ともいう)が製造される。
【0047】
また、一般式(1)で表わされる化合物のうちR及びRが共にポリエーテル基である下記一般式(1b)で表わされる化合物(以下、化合物(1b)ともいう)の代表的な合成法として、例えば、下記反応式で示される反応を行う方法が挙げられる。すなわち、まず、式(8)で表わされるピロリジンと一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物とを反応させることにより、一般式(9)で表わされる三級アミンを製造する。
【0048】
【化11】

【0049】
(式中、R、m1、n1及びYは、前記と同じ。)
さらに下記反応式に示すように、一般式(9)で表わされる三級アミンと一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物(以下、化合物(7b)ともいう)を反応させることにより、一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩(化合物(1b))が製造される。
【0050】
【化12】

【0051】
(式中、R、m1、n1、R、m2、n2及びYは、前記と同じ。)
前記反応式に示される反応において、式(8)で表わされるピロリジンと一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物とを反応させて、一般式(9)で表わされる三級アミンを得た後、一旦、一般式(9)で表わされる三級アミンを取り出し、その後、改めて一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物と反応させることもできるし、一般式(9)で表わされる三級アミンを取り出すことなくそのまま一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物を添加して反応させて一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩(化合物(1b))とすることもできる。
【0052】
さらに、具体的に説明すると、以下のようにして製造することができる。
化合物(1a)の出発原料として用いられる一般式(6)で表わされる第三級アミンは、公知化合物である。一般式(6)で表わされる第三級アミンとしては、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン等のN−置換ピロリジンを挙げることができる。好ましくはN−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン等のN−置換ピロリジンであり、より好ましくはN−メチルピロリジンである。
【0053】
化合物(1b)の出発原料として用いられる式(8)で表わされるピロリジンは、公知化合物である。
【0054】
一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物及び一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物には、公知の市販の物を用いることができる。また、一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物及び一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物は、それぞれ該化合物に相当する公知で市販の一般式(10)で表わされるα−ヒドロキシ−ω−アルコキシポリエーテルを出発原料として用いて、例えば下記反応式に示される反応等の公知の方法で製造することができ、このように製造された化合物を用いることもできる。なお、下記反応式では、例として一般式(7a)で表わされるポリエーテル化合物の製造方法の一例を示しているが、一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物についても同様の方法で製造することができる。
【0055】
【化13】

【0056】
(式中、R、m1、n1及びYは、前記に同じ。Yは、好ましくはI(ヨウ素)である。)
【0057】
一般式(7a)で表わされる化合物及び一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物としては、メトキシエトキシメチルクロリド、メトキシエトキシメチルブロミド、メトキシエトキシメチルヨージド、メトキシエトキシエチルクロリド、メトキシエトキシエチルブロミド、メトキシエトキシエチルヨージド、メトキシエトキシエトキシエチルクロリド、メトキシエトキシエトキシエチルブロミド、メトキシエトキシエトキシエチルヨージド等を挙げることができる。
【0058】
前記反応式における一般式(6)で表わされる第三級アミンと一般式(7a)で表わされる化合物との反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、一般式(6)で表わされる第三級アミン及び一般式(7a)で表わされる化合物を溶解し反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば公知の物を広く用いて構わない。このような溶媒として、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素等を挙げることができる。好ましくは、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン等のケトン類である。かかる溶媒は、1種もしくは2種以上混合して使用できる。
【0059】
一般式(7a)で表わされる化合物は、一般式(6)で表わされる第三級アミン1モルに対して通常約0.5〜5モル、好ましくは約0.9モル〜2モル使用される。
該反応は、通常約−30℃〜150℃にて行われ、好ましくは約0℃〜100℃にて行われる。一般に数時間から48時間程度反応させる。
【0060】
また、一般式(1)で表わされる化合物のうちR及びRが共にポリエーテル基である化合物(1b)は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0061】
前記反応式における式(8)で表わされるピロリジンと一般式(7a)で表わされる化合物の反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、式(8)で表わされるピロリジン及び一般式(7a)で表わされる化合物を溶解し反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば公知の物を広く用いて構わない。このような溶媒として、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素等を挙げることができる。好ましくは、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン等のケトン類である。かかる溶媒は、1種もしくは2種以上混合して使用できる。
【0062】
一般式(7a)で表わされる化合物は、式(8)で表わされるピロリジン1モルに対して通常約0.5〜5モル、好ましくは約0.9モル〜2モル使用される。
該反応は、通常約−30℃〜150℃にて行われ、好ましくは約0℃〜100℃にて行われる。一般に数時間から48時間程度反応させる。
【0063】
また、反応の触媒として塩基を用いることができる。用いられる塩基としては、式(8)で表わされるピロリジン及び一般式(7a)で表わされる化合物との反応に悪影響を及ぼさない塩基であれば公知の物を広く用いて構わない。このような塩基として、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;トリエチルアミン等の三級アミン;ピリジン等の芳香族アミン;アニオン交換樹脂等使用ができる。好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩である。かかる触媒は、1種もしくは2種以上混合して使用できる。
【0064】
次に、上述のような方法で得た一般式(9)で表わされる第三級アミンと一般式(7b)で表わされる化合物との反応による化合物(1b)の合成は、一般式(6)で表わされる第三級アミンと一般式(7a)で表わされる化合物との反応と同様な方法及び反応条件で行うことができる。
【0065】
すなわち、用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素等を挙げることができ、好ましくは、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトン等のケトン類である。かかる溶媒は、1種もしくは2種以上混合して使用できる。
【0066】
一般式(7b)で表わされる化合物は、一般式(9)で表わされる第二級アミン1モルに対して通常約0.5〜5モル、好ましくは約0.9モル〜2モル使用される。
該反応は、通常約−30℃〜150℃にて行われ、好ましくは約0℃〜100℃にて行われる。一般に数時間から48時間程度反応させる。
【0067】
上述のように、一旦、一般式(9)で表わされる三級アミンを取り出して改めて一般式(7b)で表わされるポリエーテル化合物(化合物(7b))と反応させることもできる。しかし、例えば化合物(7a)と化合物(7b)とが同一の場合には、式(8)で表わされるピロリジン及び化合物(7a)から生成する一般式(9)で表わされる三級アミンを取り出すことなく、そのままさらに化合物(7a)と反応させて第四級アンモニウム塩とすることもできる。
【0068】
この場合、一般式(7a)で表わされる化合物は、式(8)で表わされるピロリジン1モルに対して通常約1〜10モル、好ましくは約1.5モル〜4モル使用すればよく、溶媒及び反応温度、反応時間は、上述した、一般式(9)で表わされる三級アミンを一旦取り出す場合と同じにすればよい。
【0069】
前記反応で得られる一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩(化合物(1a))及び一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩(化合物(1b))において、Yがヨウ素以外のアニオン、すなわち、塩素イオン又は臭素イオンである場合は、例えば、一般式(1a)又は一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩(但し、式中、Yは塩素又は臭素)と下記一般式(12)で表わされる化合物とのアニオン交換反応により化合物(1a)又は化合物(1b)としてヨウ化物塩(一般式(1)で表わされる第四級アンモニウム塩においてXがヨウ素である化合物)が得られる。
【0070】
(12)
(式中、Mは金属原子を表し、Xはヨウ素イオンを表す)
Mで表わされる金属原子は、通常、Na、K、Li等のアルカリ金属原子、又はCa、Mg、Ba等のアルカリ土類金属原子である。好ましくはNa又はKである。
【0071】
原料として用いられる一般式(12)で表わされる化合物は、公知化合物である。一般式(12)で表わされる化合物として、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化バリウム等を挙げることができる。好ましくはヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムである。
【0072】
この塩交換反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、化合物(1a)、化合物(1b)及び一般式(12)で表わされる化合物を溶解し反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば公知の物を広く用いて構わない。このような溶媒として、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。
中でも、溶媒として好ましくは、水、アセトン等である。これらの溶媒は、1種単独又は2種以上混合して使用できる。
【0073】
一般式(12)で表わされる化合物は、化合物(1a)(又は化合物(1b))1モルに対して通常約0.5〜5モル、好ましくは約0.9モル〜2モル使用される。
該反応は、通常約−10℃〜100℃にて行われ、好ましくは約0℃〜50℃にて行われる。一般に数時間から24時間程度反応させる。
【0074】
一般式(1)で表わされる第四級アンモニウム塩において、Xがハロゲン化物イオン以外のアニオンである化合物の製造方法の一例として、下記の方法等が挙げられる。
一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩から、例えばXがBFを示す一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩を製造する場合の反応条件の例を具体的に示すと、一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩を上記低級アルコールに溶解し、この溶液に所定量のフッ化硼素酸、フッ化硼素酸銀等のフッ化硼素塩を添加し、室温付近で30分程度放置する。反応により生成するハロゲン化水素を留去し、またハロゲン化銀等のハロゲン化物を濾別し、ろ液を減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。尚、ハロゲン化水素の留去には、公知の方法、例えば、Nバブリングによる留去、減圧による留去等を適用できる。
【0075】
一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩から、Xが例えばN(CFSOを示す一般式(1b)で表わされる第四級アンモニウム塩を製造する場合の反応条件の例を具体的に示すと、一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩を水に溶解し、この溶液に所定量のビストリフルオロメタンスルホンイミドのアルカリ金属塩(ビストリフルオロメタンスルホンイミドのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)を添加し、約0〜25℃で30分程度放置する。生成する目的化合物を適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等)で抽出し、抽出液を水で洗浄した後、減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。
【0076】
一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩から、Xが例えばCFCOを示す一般式(1b)の四級塩を製造する場合の反応条件の例を具体的に示すと、一般式(1a)で表わされる第四級アンモニウム塩を冷水に溶解し、酸化銀を加え30分から24時間程度攪拌したのち、不溶物をろ過し、得られた溶液に、所定量のトリフルオロ酢酸を添加し、約5℃で30分程度放置する。生成する目的化合物を減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。
【0077】
前記各反応で得られる目的物は、通常の精製手段、例えば、遠心分離、濃縮、洗浄、抽出、クロマトグラフィー、活性炭、再結晶、真空乾燥等の慣用の単離、精製手段により反応混合物から容易に単離、精製される。
【0078】
前記一般式(1)で表わされる第四級アンモニウム塩は、電荷輸送能に優れるため電解質として好適なものである。
前記第四級アンモニウム塩を含有する電解質組成物も、本発明の1つである。
【0079】
2.電解質組成物
本発明の電解質組成物は、種々の光電変換素子、電池等に好適に用いることができるものである。中でも、リチウム二次電池用電解質組成物、光化学電池用電解質組成物として好適である。中でも特に、光化学電池(好ましくは半導体を用いる光化学電池)用の電解質組成物として好適なものである。
以下に、本発明の電解質組成物の各構成成分について詳しく述べる。
【0080】
(A)塩
本発明の電解質組成物は、塩として前記一般式(1)で表わされる第四級アンモニウム塩を含有する。
前記一般式(1)で表わされる化合物は、溶媒をほとんど用いずに電解質として使用できることが多く、単独で電解質として使用できる場合も多い。常温で固体であっても少量の溶媒や添加剤等を加えることで液状とし、電解質として使用できる。また何も添加しなくても、加熱溶解して電極上に浸透させる方法、低沸点溶媒(メタノール、アセトニトリル、塩化メチレン等)等を用いて電極上に浸透させ、その後溶媒を加熱により除去する方法等により光電変換素子に組み込むことが可能である。
【0081】
本発明の電解質組成物を光電変換素子に用いる場合、電解質組成物は前記一般式(1)で示される化合物以外の塩1種又は2種以上を含んでいてもよい。一般式(1)で示される化合物以外の塩としては、ヨウ素塩が好ましい。一般式(1)で示される化合物以外のヨウ素塩として、例えば第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩又はホスホニウム塩等のヨウ素塩等が挙げられる。
【0082】
前記一般式(1)で表わされる化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
前記一般式(1)で表わされる化合物は、ヨウ素塩であることが好ましい。例えば、一般式(1)で表わされる化合物がヨウ素塩である場合、電解質組成物は更にヨウ素塩以外の塩を含有していてもよい。また、ヨウ化物イオンを含む前記一般式(1)で示される化合物と、他のアニオンを含む前記一般式(1)で表わされる化合物又は前記一般式(1)で表わされる化合物以外で他のアニオン、例えばハロゲン(Cl、Br等)、N(CFSO、N(CFCFSO、N(FSO、C(CFSO、BF、BPh、PF、ClO、R−COO、R−SO、SCN等を含む第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩又はホスホニウム塩等を併用してもよい。R及びRは、前記と同じである。
【0083】
(B)酸化還元対
本発明の電解質組成物を光化学電池に用いる場合、電解質組成物は通常、可逆的な酸化還元対を含有する。このような酸化還元対としてはI/I系、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系、金属錯体などが挙げられる。このような酸化還元対は従来公知の方法によって得ることができる。例えばI/I系の酸化還元対は、Xがヨウ化物イオンの場合、前記一般式(1)で示されるヨウ化物にヨウ素を溶解することによって得ることができる。Xがヨウ化物イオン以外の場合、前記一般式(1)で示される化合物に、ヨウ化物(金属ヨウ化物、4級アンモニウム塩のヨウ素塩など)とヨウ素を溶解することによって、I/I系の酸化還元対を含む電解質組成物を得ることができる。いずれの場合においても、ヨウ化物とヨウ素とのモル比は、好ましくは約100:1〜2:1、更に好ましくは約50:1〜5:1である。
【0084】
(C)溶媒
本発明の電解質組成物は、溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物の溶媒含有量は、通常、組成物全体の約50質量%以下、好ましくは約30質量%以下、更に好ましくは約10質量%以下である。
【0085】
溶媒としては、低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、又はその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等)、水等が挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
(D)その他
本発明の電解質組成物は、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類の重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用してもよい。このため本発明の電解質組成物は、ポリマー、オイルゲル化剤、多官能モノマー等を含んでいてもよい。
ポリマー添加によりゲル化させる場合、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を添加してゲル化させることができる。
【0087】
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化してゲル電解質とする場合、ゲル電解質の製造方法は、電解質組成物に多官能モノマー類、重合開始剤、及び溶媒を加えた溶液を調製し、該溶液を用いてキャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により電極上に電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。多官能モノマー類はエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
ゲル電解質は前記多官能モノマー類の他に単官能モノマーを含む混合物の重合によって形成してもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸若しくはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)又はそれらのエステル若しくはアミド(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、セチルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボニルメチルメタクリレート、アクリルアミド、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸若しくはフマル酸又はそれらから誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等が使用可能である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
モノマー総量に占める多官能モノマーの質量組成は、好ましくは約0.5〜70質量%、より好ましくは約1〜50質量%である。
【0090】
前述のモノマーは、通常、一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル電解質用モノマーは、通常、加熱、光又は電子線によって、又は電気化学的にラジカル重合させることができるものであるが、特に色素の分解が起こり難いことや、均一な重合が可能であることから加熱によってラジカル重合させるのが好ましい。この場合、好ましく使用できる重合開始剤は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤;ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量は、好ましくはモノマー総量に対し約0.01〜20質量%であり、より好ましくは約0.1〜10質量%である。
【0091】
ゲル電解質に占めるモノマーの質量組成範囲は、好ましくは約0.5〜70質量%、より好ましくは約1〜50質量%である。
【0092】
ポリマーの架橋反応により電解質組成物をゲル化させる場合は、通常、電解質組成物に架橋可能な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を添加して架橋反応を行う。好ましい反応性基は、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環である。好ましい架橋剤は、窒素原子が求核攻撃できる官能基を2つ以上有する化合物(求電子剤)であり、例えば2官能以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等である。
【0093】
本発明では、電解質組成物にt−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。
【0094】
3.光電変換素子
導電層と感光層とからなる光電極、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が上記電解質組成物を含有する光電変換素子も、本発明の1つである。
【0095】
本発明の光電変換素子(6)は、導電層(1)及び感光層(2)を有する光電極、電荷輸送層(3)及び対極(4)を有し、電荷輸送層(3)に前記本発明の電解質組成物を含有する。好ましくは図1に示すように、導電層(1)と感光層(2)とを有する光電極、電荷輸送層(3)、及び対極導電層(4)がこの順に積層され、感光層(2)が色素によって増感された半導体微粒子と当該半導体微粒子の間の空隙に充填された電解質とから構成されている光電変換素子である。電解質は、電荷輸送層(3)に用いる材料と同じ成分からなることが好ましい。また光電変換素子に強度を付与するために、導電層(1)側及び/又は対極導電層(4)側に基板を設けてもよい。以下、本明細書では、導電層(1)及び任意に設ける基板からなる層を「導電性支持体」、対極導電層(4)及び任意に設ける基板からなる層を「対極」と呼ぶ。スペーサー(5)を介して、光電極と対極とを積層することにより形成した隙間に電荷輸送層(3)を形成してもよい。スペーサーとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを使用することができる。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光化学電池である。なお、導電層(1)、対極導電層(4)、及び基板は、それぞれ透明導電層、透明対極導電層、及び透明基板であってもよい。
【0096】
図1に示す本発明の一態様の光電変換素子(6)において、色素により増感された半導体微粒子を含む感光層(2)に入射した光は色素等を励起し、励起された色素等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子の伝導帯に渡され、更に拡散により導電層(1)に到達する。このとき色素等の分子は酸化体となっている。光化学電池においては、導電層(1)中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層(4)及び電荷輸送層(3)を経て色素等の酸化体に戻り、色素が再生する。感光層(2)は負極として働く。以下各層について詳細に説明する。
【0097】
(A)導電性支持体
導電性支持体は、通常、(i)導電層の単層又は(ii)導電層及び基板の2層からなる。強度や密封性が十分に保たれるような導電層を使用すれば、基板は必ずしも必要でない。
【0098】
(i)の場合、導電層として金属のように十分な強度が得られ、且つ導電性があるものを導電性支持体として用いることが好ましい。
(ii)の場合、通常、導電剤を含有する導電層を感光層側に有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、二酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が挙げられる。導電層の厚さは、0.02〜10μm程度が好ましい。
【0099】
導電性支持体は、表面抵抗が低い程よい。表面抵抗は、好ましくは約100Ω/□以下であり、より好ましくは約40Ω/□以下である。表面抵抗の下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0100】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは、通常、光透過率が約10%以上であることを意味する。光透過率は、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上である。
【0101】
透明導電性支持体としては、ガラス又はプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布又は蒸着等により形成したものが好ましい。中でもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラス等が好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子又は太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いることが好ましい。透明ポリマーフィルムの材料としては、例えば、テトラアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエステルスルホン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン等が使用可能である。
【0102】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で、透明基板上にアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属材料又はカーボンからなるリードを設け、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明導電層を設けることができる。金属リードを透明基板上に設ける方法としては蒸着、スパッタリング、スクリーン印刷、電解メッキ、無電解メッキ等が挙げられる。
【0103】
(B)感光層
本発明の光電変換素子において、感光層は、色素によって増感された微粒子半導体を含有することが好ましい。半導体はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体微粒子においては、光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素で起こり、半導体微粒子はこの電子を受け取り伝達する役割を担う。
【0104】
(B−1)半導体微粒子
半導体微粒子としてはシリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III−V系化合物半導体、金属カルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等が使用できる。本発明で使用する半導体微粒子は、金属カルコゲニド微粒子からなるもの等が好ましい。
【0105】
金属カルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物;カドミウム又は鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物;銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
【0106】
本発明に用いる半導体は、好ましくはSi、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeである。より好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeであり、さらに好ましくはTiO又はNbであり、最も好ましくはTiOである。
本発明で用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよい。
【0107】
半導体微粒子の粒径は、一般にnm〜μmのオーダーである。本発明において、微粒子の投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子平均粒径は、約5〜200nmであることが好ましく、約8〜100nmであることがより好ましい。
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよい。
【0108】
(B−2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布する際には、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法に加え、ゾル−ゲル法等を使用することができる。
半導体微粒子層の形成方法は特に限定されないが、光電変換素子の量産化、半導体微粒子分散液又はコロイド溶液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮すると、湿式製膜方法が好ましい。湿式製膜方法としては塗布法及び印刷法が代表的である。
【0109】
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、ゾル−ゲル法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
【0110】
分散媒としては、水又は各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が使用可能である。分散する際には、分散助剤としてポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤(アセチルアセトン)等を必要に応じて用いてもよい。
【0111】
塗布方法としては、ローラ法、ディップ法、キャスト法、エアーナイフ法、ブレード法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーンなどの印刷等が利用できる。以上の方法の中から、分散液の粘度や塗付厚さなどに応じて好ましい塗付方法を選択すればよい。
【0112】
半導体微粒子層は単層であってもよく、多層であってもよい。例えば、粒径の異なる半導体微粒子分散液を多層塗布したり、異なる種類の半導体微粒子(又は異なるバインダー、添加剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布では膜厚が不足する場合にも、多層塗布は有効である。また、多層塗布する場合は、同時に多数の層を塗布してもよく、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。順次重ね塗りする場合には、スクリーン印刷法、スプレー法等が好ましく使用できる。
【0113】
一般に、半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの色素担持量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体微粒子層の好ましい厚さは約0.1〜100μmである。特に、光化学電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは約1〜30μmであることが好ましく、約2〜25μmであることがより好ましい。支持体1m当たりの半導体微粒子塗布量は、約0.5〜400gとすることが好ましく、約5〜100gとすることがより好ましい。半導体微粒子を導電性支持体に塗布した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させると共に塗膜強度や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理(焼成)を施すのが好ましい。加熱温度は約40℃以上700℃未満とすることが好ましく、約100℃以上600℃以下とするのがより好ましい。また、加熱時間は10分〜10時間程度とすればよい。
【0114】
加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大させるため、又は半導体微粒子近傍の純度を高め色素から半導体微粒子への電子注入効率を高めるために、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理、三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理等を施してもよい。
【0115】
半導体微粒子は、多くの色素を吸着することができるように大きな表面積を有することが好ましい。半導体微粒子を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して約10倍以上であるのが好ましく、約100倍以上であるのがより好ましい。上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0116】
(B−3)色素
感光層に使用する色素には、種々の金属錯体色素、有機色素等を用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよい。また、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択すればよい。
【0117】
本発明で用いる色素は、半導体微粒子表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有するものが好ましい。好ましい結合基としては−COOH基、−SOH基、シアノ基、−P(O)(OH)基、−OP(O)(OH)基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート、α−ケトエノレートのようなキレート化基が挙げられる。中でも−COOH基、−P(O)(OH)基、−OP(O)(OH)基等が特に好ましい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、分子内塩を形成していてもよい。
【0118】
本発明で使用する色素としては、増感の効果や耐久性の点から金属錯体色素を用いることが好ましい。該金属錯体の金属原子は、ルテニウム(Ru)が好ましい。
本発明で用いるルテニウム錯体色素は、下記一般式(13)
(A)pRu(B−a)(B−b)(B−c) (13)
(式中、Aは、Cl、SCN、HO、Br、I、CN、NCO及びSeCNからなる群から選ばれる配位子を表す。pは0〜2の整数であり、好ましくは2である。B−a、B−b及びB−cは、それぞれ独立して含窒素複素環を含有する有機配位子、例えば2,2´−ビピリジル−4,4´−ジカルボキシラト等を表す。)で示されるものが好ましい。B−a、B−b及びB−cは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0119】
(B−4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させるためには、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬する方法、又は色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の方法では、浸漬法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお、浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また、後者の方法では、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
【0120】
色素の溶液に用いる溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択でき、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。
【0121】
色素の吸着方法は、色素の溶液の粘度、塗布量、導電性支持体の材質、塗布速度等に応じて適宜選択すればよい。量産化の観点からは、塗布後の色素吸着に要する時間をなるべく短くすることが好ましい。
【0122】
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去することが好ましい。洗浄は、アセトニトリル等の極性溶剤やアルコール系溶剤等の有機溶媒を用いて行うことが好ましい。また、色素の吸着量を増大させるために吸着前に加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の後に半導体微粒子表面に水が吸着するのを抑制するために、常温に戻さず約40〜80℃で素早く色素を吸着させることが好ましい。
【0123】
色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m)当たり約0.01〜100mmolとすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は、十分な増感効果を得るためには半導体微粒子1g当たり約0.01〜1mmolであることが好ましい。色素の吸着量が前記範囲であると、十分な増感効果が得られる。また、色素が半導体微粒子から浮遊しにくいため、増感効果の低減を抑制できる。
【0124】
光電変換の波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるために、2種類以上の色素を混合して使用してもよい。この場合、光源の波長域と強度分布に応じて、適宜混合する色素及びその混合割合を選択することが好ましい。
【0125】
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の疎水性化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としては、カルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を併用してもよい。
【0126】
余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。アミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよく、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0127】
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電荷輸送層に前記本発明の電解質組成物を用いるが、更に固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を併用することもできる。
【0128】
本発明の電解質組成物からなる電荷輸送層を形成する方法は特に限定されず、例えば、キャスト法、塗布法、浸漬法等により感光層上に電解質組成物の溶液を塗布する方法、光電極と対極を有するセルを作製しその隙間に電解質組成物を注入する方法などが挙げられる。
【0129】
塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、通常、溶融塩等を含む電解質組成物の溶液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により感光層上に塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は、色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常約10〜150℃であるのが好ましく、約10〜100℃であるのがより好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、通常、5分〜72時間程度である。
【0130】
好ましい態様によれば、感光層(2)中の空隙を完全に埋める量より多い電解質組成物の溶液を塗布するので、図1に示すように得られる電解質の層は、実質的に導電性支持体の導電層(1)との境界から対極導電層(4)との境界までの間に存在する。ここで、色素増感半導体を含む感光層(2)との境界から対極(4)との境界までの間に存在する電解質の層を電荷輸送層(3)とすると、その厚さは約0.001〜200μmであることが好ましい。電荷輸送層(3)の厚さが上記範囲であると、感光層中の半導体微粒子が対極導電層(4)に接触することがなく、また電荷の移動距離が長くなりすぎないため、素子の抵抗を小さくすることができる。電荷輸送層(3)の厚さは、約0.1〜100μmであることがより好ましく、約0.1〜50μmであることが特に好ましい。
【0131】
また、感光層(2)+電荷輸送層(3)の厚さ(実質的に電解質組成物からなる層の厚さに等しい)は約0.1〜300μmであることが好ましく、約1〜130μmであることがより好ましく、約2〜75μmであることが特に好ましい。
【0132】
酸化還元対を生成させるために、電解質組成物に例えばヨウ素等を導入する場合、前述の電解質組成物にヨウ素等を添加する方法や、電荷輸送層を形成した支持体をヨウ素等と共に密閉容器内に置き、電荷輸送層を構成する電解質組成物中に拡散させる手法等が使用できる。また、対極にヨウ素等を塗布又は蒸着し、光電変換素子を組み立てたときに電荷輸送層中に導入することも可能である。
電荷輸送層中の水分は、約10,000ppm以下であるのが好ましく、より好ましくは約2,000ppm以下であり、特に好ましくは約100ppm以下である。
【0133】
(D)対極
対極は、光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対極は前記導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層のみから構成されていてもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電性材料としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が使用できる。対極に用いる支持基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、通常、これに前記導電性材料を塗布又は蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが約3nm〜10μmであることが好ましい。特に、対極導電層が金属である場合は、その厚さは約5μm以下であることが好ましく、約5nm〜3μmであることがより好ましい。
【0134】
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極のうち少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率向上の観点からは、導電性支持体を透明にし、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有することが好ましい。このような対極の材料としては、例えば、金属や導電性の酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、金属薄膜等が使用できる。
【0135】
対極を設ける手順としては、(イ)電荷輸送層を形成した後でその上に設ける方法と、(ロ)半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を配置し、その空隙に電解質溶液(液状の電解質組成物)を充填する方法の2通りある。(イ)の場合、通常、電荷輸送層上に直接導電材を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、電荷輸送層上に導電層を設けた基板の導電層側を貼り付ける。また(ロ)の場合、通常、半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を組み立てて固定し、得られた組立体の開放端を電解質溶液として用いられる電解質組成物に浸漬し、毛細管現象又は減圧を利用して半導体微粒子層と対極との空隙に電解質組成物を浸透させる。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が実質的に透明な場合には、抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質及び設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は前記導電性支持体の場合と同じである。
【0136】
(E)その他の層
電極として作用する導電性支持体及び対極の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法、逐次塗布法等が利用できる。生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性及び塗膜の均一性の観点からスライドホッパー法やエクストルージョン法が好ましい。機能性層の形成には、導電性支持体又は対極の材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
【0137】
また、対極と光電極の短絡を防止するため、予め導電性支持体と感光層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として塗設してもよい。下塗り層の材料は好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO及び/又はNbであり、更に好ましくはTiOである。下塗り層は、例えば、スプレーパイロリシス法により塗設することができる。下塗り層の膜厚は約5〜1000nmであることが好ましく、約10〜500nmであることがより好ましい。
【0138】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と片面からのみ可能な構造が可能である。本発明の光電変換素子の内部構造は、導電層に前記第四級アンモニウム塩を含有する電解質組成物を使用するものであればよく、光電変換素子を用いる用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0139】
4.光化学電池
上記光電変換素子を用いた光化学電池も、本発明の1つである。
本発明の光化学電池は、前記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものである。光化学電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のものでよい。
【0140】
本発明の光電変換素子を光化学電池、いわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に前述した光電変換素子の構造と同じである。
本発明の光化学電池は、色素増感太陽電池であることが好ましい。前記光電変換素子を用いた色素増感太陽電池は、本発明における好ましい実施態様の1つである。
【0141】
5.色素増感太陽電池
本発明の色素増感太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板上にセルを形成し、それを充填樹脂や保護ガラス等で覆って構成される、支持基板の反対側から光を取り込む構造を有する。支持基板の材料として強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを形成してその透明支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ又はポッティングタイプのモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が挙げられる。本発明の光電変換素子を用いた色素増感太陽電池においても、使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。
【0142】
以上詳述したように、前記光電変換素子を用いて、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
【実施例】
【0143】
以下に、発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明が、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0144】
参考例1 ヨウ化メトキシエトキシエチルの合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテル240.3g(2.0mol)(Aldrich製)を、塩化メチレン500mLで希釈し、これにトリエチルアミン276mLを加え−50℃に冷却した。冷却後、メタンスルホニルクロリド250g(2.18mol)を−10℃以下で滴下した。得られた溶液を3時間攪拌した後、ろ過し、ろ液の有機相を5%塩酸及び水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をろ過し、ろ液を濃縮してやや薄黄色い無色の液体として(メタンスルホニルオキシ)エトキシエチル メチル エーテルを得た。収量280.7g(70.8%)。
【0145】
次に3000mL反応器にアセトン1800mLを入れ、NaI 380.5g(2.54mol)を加え溶解させた。これに、(メタンスルホニルオキシ)エトキシエチル メチル エーテル280.7g(1.42mol)を滴下した。55℃で40時間攪拌した。スラリーをろ過し、結晶をアセトンで洗浄して合わせたろ液を濃縮した。赤黒い濃縮残渣に塩化メチレン500mLを加え希釈し、これを10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。洗浄後の溶液を硫酸マグネシウムで乾燥後、得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮して黄色い液体としてヨウ化メトキシエトキシエトキシエチルを得た。収量236.9g(収率73%)。
【0146】
実施例1 N−メチル−N−メトキシエトキシメチルピロリジニウムヨージド(化合物A)
【0147】
【化14】

【0148】
N-methylpyrrolidine35mL(28g、0.328moL)を秤取りトルエン100mLで希釈した。得られた溶液を5℃に冷却し、攪拌しながらメトキシエトキシメチルクロリド(試薬、東京化成製)41mL(45.1g)を滴下した。得られた溶液を室温で20時間攪拌したのちデカンテーションし、水を加え希釈し、エーテルで洗浄した。水抽出液を濃縮し、N-methoxyethoxymethyl-N-methylpyrrolidinium chlorideを、黄色い粘状物として10.5g得た。
【0149】
次に、反応器にヨウ化ナトリウム7.49g(0.05mol)を秤取りアセトン50mLを加え溶解した。これに、上記で得たN-methoxyethoxymethyl-N-methylpyrrolidinium chloride10.49g(0.05mol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応後、不溶の結晶をろ過し、ろ液を濃縮した。得られた粘調なオイルを塩化メチレンで希釈し、アルミナカラムを通した。溶出液を濃縮し、蒸留水150mLで希釈し活性炭0.1gを加えて12時間攪拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、真空乾燥すると無色の液体として目的物(化合物A)が12g(収率80%)得られた。
化合物Aの1H、化学シフトを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, methanol-d4): δ 2.11(m, 4H), 3.00(s, 3H), 3.28(s, 3H), 3.32(q, J=5Hz,5Hz, 2H), 3.50(q, J=5Hz, 2H), 3.52(q, J=5Hz,5Hz, 2H), 3.87(q, J=5Hz, 2H), 4.61(s, 2H)
【0150】
実施例2 N,N−ビス(メトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド(化合物B)
【0151】
【化15】

【0152】
300mL反応器にメトキシエトキシエチルトシレート439.6g(1.6mol)を秤取りアセトニトリル1000mLで希釈した。これに炭酸カリウム221.1g(1.6mol)及びピロリジン104g(1.45mol)を加え、24時間加熱還流した。得られた溶液を冷却し、不溶物をろ過し、ろ液を濃縮した。濃縮したろ液を塩化メチレンで希釈し、次いで5%塩酸で抽出し、塩酸抽出液を5℃以下に冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液を液のpHが8以上になるまでゆっくりと加えた。得られた溶液に塩化メチレンを加え抽出し、この塩化メチレ抽出液を濃縮した。残渣を減圧蒸留し(約20Pa)、無色の液体としてN−メトキシエトキシエチルピロリジンを得た。得られたN−メトキシエトキシエチルピロリジンは71.1g(収率28.3%)であった。得られたN−メトキシエトキシエチルピロリジン71.1g及びヨウ化メトキシエトキシエチル126gをトルエン100mLに希釈し60℃に加熱し攪拌した。12時間攪拌後濃縮し、これに蒸留水500mL及び塩化メチレン200mLを加え、抽出した。この水抽出液を減圧で濃縮すると橙色の液体が得られた(128.8g)。得られた粘調なオイルを塩化メチレンに希釈し、アルミナカラムを通した。溶出液を濃縮し、蒸留水150mLで希釈し活性炭0.1gを加えて12時間攪拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、真空乾燥すると薄黄色から無色の液体として目的物(化合物B)が110g(収率66.7%)得られた。
【0153】
実施例3 N,N−ビス(メトキシエトキシエチル)ピロリジニウムヨージド(1ポット法)
1000mL反応器にピロリジン35.6g(0.5mol)と炭酸カリウム70.0g(0.5mol)と2−プロパノール500mLとを秤取り攪拌した。得られた溶液に、ヨウ化メトキシエトキシエチル245g(1.1mol)を滴下した。得られた溶液を加熱し、24時間還流した。得られた溶液をろ過し、ろ液を濃縮した。
【0154】
上記で濃縮したろ液に蒸留水500mL及び塩化メチレン500mLを加え抽出した。この水抽出液を減圧で濃縮すると橙色の液体が得られた(182.9g、収率90.7%)。得られた粘調なオイル20.8gを活性炭0.1gで精製すると、目的物(化合物B)が無色〜黄色い液体として17.8g(精製収率85.6%)得られた。
化合物Bの1H、化学シフトを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.28(m, 4H), 3.36(s, 6H), 3.53 (q, J=5Hz,5Hz, 4H), 3.68 (q, J=5Hz,5Hz, 4H), 3.87(q, J=5Hz,5Hz, 4H), 3.97(q, J=5Hz,5Hz, 4H), 3.99(m, 4H)
【0155】
実施例4 色素増感太陽電池セルの作製
(1)二酸化チタン分散液の調製
半導体微粒子として二酸化チタン(TiO)粒子(日本アエロジル製、DegussaP-25、一次粒子平均粒径21nm)12g、水3.6mL、及びアセチルアセトン(関東化学製)0.4mLを混合し、乳鉢を用いて強く分散した。次いで、撹拌を続けながら水16mLを徐々に加え、更にノニオン系界面活性剤(TritonX-100、Aldrich社製)0.2mLを加えて分散液とした。
【0156】
(2)光電極の作製
導電層としてフッ素をドープした二酸化スズを塗付した透明導電性ガラス(日本板硝子社製、表面抵抗10Ω/□)(1)の導電層表面に前記(1)で調製した分散液をガラス棒を用いてキャスト法により塗布した。その際、透明導電性ガラス(1)の大きさは20mm×20mmとし、塗布面積が1cmとなるように導電性ガラスの両端に厚み45μmの粘着テープを貼り付け、この粘着テープの厚みをギャップとして塗布を行った。該分散液を塗布後に粘着テープを剥離し、室温で8時間乾燥した後、該分散液を塗布した導電性ガラスについて、電気炉(ヤマト科学社製マッフル炉)を用いて450℃で30分間加熱処理(焼成)を行った。焼成により半導体微粒子層が形成された導電性ガラス(電極)を電気炉から取り出し、約80℃まで冷却した後、ルテニウム錯体色素(Solaronix製、Ruthenium535)のエタノール溶液(3×10−4mol/L)に24時間室温で浸漬することによって、二酸化チタン粒子の表面に色素を吸着させた。この電極を色素溶液から取り出し、エタノールで洗浄し乾燥して感光層(色素で増感された二酸化チタン層)(2)を形成し光電極とした。この電極の二酸化チタン層(2)の厚みを測定したところ約10μmであった。
【0157】
(3)対極
前記と同じ透明導電性ガラスの導電面にスパッタリングにより白金膜を形成させたものを対極(4)として用いた。
【0158】
(4)セルの組み立て
前記の光電極(感光層(色素で増感された酸化チタン層)(2)及び導電性支持体(1)である透明導電性ガラスからなる)と対極(4)を厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサー(5)として重ね合わせ、その隙間に調製した電解質組成物(実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物A)にヨウ素をモル比10:1の割合で溶解した溶液、又は実施例2で得たピロリジニウム塩(化合物B)にヨウ素をモル比10:1の割合で溶解した溶液)を注入して電荷輸送層(3)とし、色素増感太陽電池セル(光化学電池(6))とした(図1参照)。
【0159】
比較例1
【0160】
【化16】

【0161】
化合物Cの合成方法
実施例1において、メトキシエトキシメチルクロリドの代わりにメトキシエトキシエトキシエチルヨージドを用いた以外は同様の手順で化合物Cを合成した。
実施例4において、実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物A)の代わりにこの4級アンモニウム塩(化合物C)を用いて、比較例1の太陽電池セルを作製した。
【0162】
(5)光電変換効率(太陽電池セル変換効率)の測定
実施例4及び比較例1それぞれで製造した色素増感太陽電池セルについて、AM1.5Gスペクトルのソーラーシミュレーター(100W/m)を用いて光電変換効率(太陽電池セル変換効率)を測定した。結果を表1に示す。なお、実施例4で製造した色素増感太陽電池セルは、実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物A)又は実施例2で得たピロリジニウム塩(化合物B)を電荷輸送層に用いた色素増感太陽電池セルである。
【0163】
【表1】

【0164】
表1から、本発明の電解質組成物を太陽電池の電荷輸送層に用いると、高い光電変換効率(太陽電池セル変換効率)が得られることが分る。
【符号の説明】
【0165】
1 導電層(導電性支持体)
2 感光層(色素で増感された半導体微粒子層)
3 電荷輸送層(電解質組成物)
4 対極導電層(対極)
5 スペーサー
6 光電変換素子(光化学電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、下記一般式(2)
【化2】

(式中、m1は、1又は2であり、n1は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基を表す。Rは、下記一般式(3)
【化3】

(式中、m2は、1又は2であり、n2は、1以上の整数である。Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)で表わされるポリエーテル基、メチル基又はエチル基を表す。ただし、上記一般式(2)においてm1が2の場合には、Rは、上記一般式(3)で表わされるポリエーテル基である。Xは、アニオンを示す。)で表わされることを特徴とする第四級アンモニウム塩。
【請求項2】
第四級アンモニウム塩が、一般式(2)においてm1=1である下記一般式(4)
【化4】

(式中、R、R、n1及びXは、上記に同じ。)で表わされる化合物である請求項1に記載の第四級アンモニウム塩。
【請求項3】
第四級アンモニウム塩が、下記一般式(5)
【化5】

(式中、R3a及びR4aは、同一又は異なって、メチル基又はエチル基を表す。m1、n1、m2、n2及びXは、上記に同じ。)で表わされる化合物である請求項1又は2に記載の第四級アンモニウム塩。
【請求項4】
が、ヨウ化物イオンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の第四級アンモニウム塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の第四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする電解質組成物。
【請求項6】
光化学電池に用いられるものである請求項5に記載の電解質組成物。
【請求項7】
導電層と感光層とを有する光電極、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が請求項5又は6に記載の電解質組成物を含有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
前記感光層が、色素によって増感された微粒子半導体を含有する請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光電変換素子を用いた光化学電池。
【請求項10】
色素増感太陽電池である請求項9に記載の光化学電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−17310(P2012−17310A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157312(P2010−157312)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】