等価回路解析装置及び等価回路解析方法
【課題】測定対象物に対する等価回路の近似の度合いを、定量的に表すことができる等価回路解析装置及び等価回路解析方法を提供する。
【解決手段】等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップS1と、測定ステップS1で測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップS2と、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を演算する理論特性演算ステップS3と、測定ステップS1で測定した測定対象物の周波数特性と理論特性演算ステップS3で演算した等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を演算する残差2乗平均演算ステップS4及び残差演算ステップS5とを備える方法である。
【解決手段】等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップS1と、測定ステップS1で測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップS2と、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を演算する理論特性演算ステップS3と、測定ステップS1で測定した測定対象物の周波数特性と理論特性演算ステップS3で演算した等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を演算する残差2乗平均演算ステップS4及び残差演算ステップS5とを備える方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定し、この周波数特性から、電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード、トランジスタ、一次・二次電池、太陽電池、フィルタなどの電気的な部品を測定対象物(以下、DUTともいう)として、そこに周波数を掃引させつつ測定用信号電圧を印加して、その電圧及び流れた電流から、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性を表示パネルにグラフで表示するインピーダンス測定装置が知られている。このようなインピーダンス測定装置の中には、測定した複素インピーダンスの周波数特性から、測定対象物の電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析機能を有しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、モンテカルロ法により評価関数が最小になる等価回路の素子定数を演算し、この演算した素子定数を局所探索法の開始値として評価関数が極小値になる素子定数を演算して、さらにこれら演算を所定回数繰り返し行って素子定数を求める等価回路解析方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、どのような推定方法を用いたとしても、素子定数の推定結果に誤差が生じてしまう場合がある。そのため、推定結果に誤差があるか否かを測定者が判断可能なように、推定した素子定数で等価回路の理論的な周波数特性を演算し、得られた理論的な周波数特性のグラフを、DUTの測定結果のグラフと共に表示パネルに表示させることが考えられる。測定者は、両グラフを比較して、両グラフ間にほとんど差が無ければ推定された素子定数はDUTを正しく(よく近似して)表しており、一部でも大きな差があれば素子定数はDUTを正しく表していないと判断する。測定者は、両グラフ間に一部でも差がある場合、推定された素子定数の値を手動で適宜変更(調整)して、装置に等価回路の理論的な周波数特性のグラフを再度表示させ、測定結果のグラフと一致させるようにすることで、誤差の少ない素子定数を得ることができる。
【0005】
しかしながら、DUTの測定結果のグラフと等価回路のグラフとの間の差の有無を、測定者が目視で比較して判断しているので、判断基準が統一できず、等価回路の解析結果に差が生じてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、測定対象物に対する等価回路の近似の度合いを、定量的に表すことができる等価回路解析装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された等価回路解析装置は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算部の算出した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記評価値演算部が、下記の式(1)
【数1】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された等価回路解析装置は、請求項2に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して、該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された等価回路解析装置は、請求項3に記載されたもので、前記評価値演算部が、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数2】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された等価回路解析装置は、請求項2から4のいずれかに記載されたもので、前記評価値演算部が、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された等価回路解析装置は、請求項6に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載された等価回路解析装置は、請求項1から7のいずれかに記載されたもので、前記推定部が、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算部が、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算部が、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載された等価回路解析装置は、請求項1から8のいずれかに記載されたもので、表示部を備え、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を該表示部に表示させることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載された等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップと、該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算ステップと、測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算ステップで演算した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算ステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載された等価回路解析方法は、請求項10に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、下記の式(1)
【数3】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載された等価回路解析方法は、請求項11に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載された等価回路解析方法は、請求項12に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数4】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載された等価回路解析方法は、請求項11から13のいずれかに記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載された等価回路解析方法は、請求項10に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載された等価回路解析方法は、請求項15に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする。
【0024】
請求項17に記載された等価回路解析方法は、請求項10から16のいずれかに記載されたもので、前記推定ステップで、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする。
【0025】
請求項18に記載された等価回路解析方法は、請求項10から17のいずれかに記載されたもので、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を表示部に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の等価回路解析装置及び方法によれば、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性と、等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出することにより、測定者は、測定対象物に対する等価回路の近似の度合いを、定量的な評価値に基づいて判断することができる。そのため、判断基準を統一化することができる。
【0027】
残差2乗平均を評価値とする場合、測定対象物の周波数特性と等価回路の周波数特性との差が大きくなると評価値が大きくなり、差が小さくなると評価値が小さくなる。このため、両特性の差の大小を評価値の大小で表すことができ、測定者に素子定数の誤差の大きさを直感的に認識させることができる。
【0028】
測定対象物の周波数特性の中の極値から所定範囲内の測定ポイントを、演算対象から除外して残差2乗平均を算出する場合、素子定数の誤差に大きな影響が無い極値付近の両特性の差の影響を排除でき、素子定数の誤差の大きさを一層正しく表すことができる。
【0029】
全ての測定ポイントの残差2乗平均の平方根を予め算出し、極値の測定ポイントを中心として、[測定対象物の複素インピーダンスの値]±[残差2乗平均の平方根]内に等価回路の複素インピーダンスが入っていない範囲を、前記の所定範囲として残差2乗平均の演算対象から除外する場合、平均的な差よりも大きな差が生じている極値付近の測定ポイントを演算対象から除外できるので、素子定数の誤差の大きさをより一層正しく表すことができる。
【0030】
評価値として残差2乗平均を用いるのではなく、評価値として残差2乗平均の平方根である残差を用いる場合、評価値が測定対象物及び等価回路の両周波数特性の差に比例する値(線形な値)で表されるので、測定者は、両特性の差の大きさを容易に理解することができる。
【0031】
測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された複素インピーダンスに基づいて上限値及び下限値を設定し、その範囲内に等価回路の複素インピーダンスが入る測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を評価値とする場合、全体の内のどの程度の範囲で両特性がほぼ一致(近似)しているかが判るので、測定者は、素子定数の誤差の大きさを直感的に容易に理解することができる。
【0032】
各測定ポイントで測定された測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で上限値及び下限値を算出する場合、設定が容易であると共に、両特性の近似の度合いを的確に表すことができる。
【0033】
複数の等価回路の中から評価値が最もよい等価回路を測定対象物の等価回路として選定する場合、測定者が判断することなく等価回路を自動的に選定することができる。
【0034】
表示部に、測定対象物の周波数特性のグラフ、等価回路の周波数特性のグラフ、評価値を表示させる場合、測定者は、両特性の近似の度合いを容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用する等価回路解析装置のブロック図である。
【図2】本発明を適用する等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図4】測定対象物の等価回路の例である。
【図5】図4に示す各等価回路のインピーダンス周波数特性及び位相周波数特性の例である。
【図6】等価回路aにおける素子定数の推定方法を説明するための実効抵抗の周波数特性データ(グラフ)である。
【図7】等価回路dにおける素子定数の推定方法を説明するためのコンダクタンスの周波数特性データ(グラフ)である。
【図8】本発明を適用する別の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】測定対象物及び等価回路のインピーダンス周波数特性のグラフの極大値付近の拡大図である。
【図10】除外ポイント抽出ステップS12を説明するためのフローチャートである。
【図11】他の除外ポイント抽出ステップS12を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】測定対象物、等価回路、上限値、及び下限値のインピーダンス周波数特性のグラフの一部拡大図である。
【図14】本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0037】
本発明を適用する等価回路解析装置1は、図1に機能的ブロックで示すように、測定部2、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、評価値演算部6、及びタッチパネル10を備え、測定対象物(DUT)90の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、その周波数特性から等価回路の各素子定数を推定部3が推定することが可能になっている。なお、同図に示す推定部3、理論特性演算部5、素子定数変更部4、及び評価値演算部6等は、一例として、本装置1の動作を統括的に制御する1つ又は複数のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に予め記憶されたソフトウエアに従って動作して演算処理することで実現されている。また、等価回路解析装置1は、後述する図2、図8、図10、図11、図12、図14の各フローチャートに対応するプログラムがメモリに予め記憶されていて、各フローチャートに従って動作可能に構成されている。いずれのフローチャートに従って動作するかは、測定者のタッチパネル10の操作で選択が可能になっている。なお、測定部2として従来のインピーダンス測定装置を用い、その他の推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、評価値演算部6、及びタッチパネル10としてコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)を用い、両者を組み合わせて本発明の等価回路解析装置1としてもよい。
【0038】
タッチパネル10は、画像を表示可能な液晶パネルやCRTなどの表示装置と、タッチパッドなどの位置入力装置を組み合わせたもので、画像を表示可能であると共に、指や専用ペン等が画面に触れたときに、その触れた画面上の位置情報を出力するものである。タッチパネル10は、等価回路解析装置1の表示部及び操作部として用いられる。タッチパネル10に換えて、液晶パネル等の表示部と、キーボード等の操作部とを備えるようにしてもよい。
【0039】
等価回路解析装置1の具体的な動作について図1〜図3を参照して説明する。ここで、図2に示すフローチャートは、本発明を適用する等価回路解析方法を示し、これに沿って等価回路解析装置1の動作を説明する。
【0040】
測定ステップS1では、測定部2が、不図示の交流信号源からプローブ21a,21bを介して、周波数を開始周波数から終了周波数まで掃引させて測定用信号電圧を測定対象物(DUT)90に印加し、2端子法又は4端子法などの公知の測定方法で電圧と電流とを測定し、その電圧及び電流から、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性を測定する。ここで測定部2は、開始周波数から終了周波数まで、周波数分解能ごとに順番に、番号i=1、2・・・,n(nは整数)の測定ポイント(サンプリングポイント)の周波数で測定を行い、複素インピーダンスDi(i=1〜n)を得る。測定部2は、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性として、一例として複素インピーダンスの絶対値の周波数特性(以下、「インピーダンス周波数特性」ともいう)のグラフ31a、及び位相周波数特性のグラフ32aを、図3に例えば実線で示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。グラフ表示領域11に、インピーダンス周波数特性のグラフ31aを表示させるか、位相周波数特性のグラフ32aを表示させるか、又は両特性のグラフ31a,32aを表示させるかの切り替えは、測定者がタッチパネル10を操作することで、自由に切り換えることができる。同図では、グラフ31a,32aの両特性を表示させた例を表している。なお、タッチパネル10にグラフ表示させる複素インピーダンスの周波数特性の表現方法は、コンダクタンス(G)−サセプタンス(B)特性、実効抵抗(Rs)−リアクタンス(X)特性、動アドミタンス円、又は動インピーダンス円などのように、公知の種々の表現方法で表現させることができる。
【0041】
次に、推定ステップS2では、推定部3が、測定ステップS1で測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する。等価回路を構成する電気素子は、抵抗(素子定数R)、コンデンサ(素子定数C)、コイル(素子定数L)である。等価回路は、抵抗、コンデンサ、コイルのうちの少なくとも2つを接続して構成する。等価回路に用いる電気素子の数は、特に限定がなく、同種の電気素子が複数用いられていてもよい。推定部3は、推定した各素子定数を素子定数変更部4、及び理論特性演算部5に出力する。
【0042】
等価回路の例を、図4の等価回路a〜dに示す。主として、等価回路aはコイルや抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路bは損失が大きなコイルを測定する場合に用いられ、等価回路cは高抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路dはコンデンサを測定する場合に用いられる。図5に、等価回路a〜dのインピーダンス周波数特性Z及び位相周波数特性θの例を図示する。同図中には、後述する並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωmの位置を示している。
【0043】
このように複数の等価回路を予め設定しておき、測定者がタッチパネル10を操作して、1つの等価回路を選択できるようにすることが好ましい。推定部3は、等価回路a〜dの各素子定数の推定が可能になっている。測定者は、タッチパネル10を操作して、測定ステップS1又は推定ステップS2の前に、用いる等価回路を予め選択しておく。
【0044】
推定部3が各素子定数を推定する例として、等価回路aが選択されている場合について説明する。等価回路aのときには、推定部3は、測定部2の測定データから各測定ポイントにおける複素インピーダンスの実効抵抗(レジスタンス)Rsを算出し、その実効抵抗Rsから各素子定数を推定する。なお、複素インピーダンスを、実効抵抗Rs及びリアクタンスXで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図6のグラフ25に示す実効抵抗Rsの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ25(測定データ)の中の極大値Pを求める。この極大値Pのときの周波数が、並列共振周波数ωpである。次に、推定部3は、グラフ25が、極大値Pの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωp/(ω2−ω1)
【0045】
次に、推定部3は、等価回路aのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=Q/(ωp×P)
【0046】
次に、推定部3は、等価回路aのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=(2×Q2)/(ωp2×C×(2×Q2−1))
【0047】
次に、推定部3は、等価回路aの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=L/(C×P)
【0048】
以上で、等価回路aの各素子定数の推定が終了する。
【0049】
また、等価回路dのように直列共振回路の場合には、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素アドミタンス(複素インピーダンスの別の表現方法)のコンダクタンスGを算出し、そのコンダクタンスGから各素子定数を推定する。なお、複素アドミタンスを、コンダクタンスG及びサセプタンスBで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図7のグラフ26に示すコンダクタンスGの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ26(測定データ)の中の極大値Mを求める。この極大値Mのときの周波数が、直列共振周波数ωmである。次に、推定部3は、グラフ26が、極大値Mの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωm/(ω2−ω1)
【0050】
次に、推定部3は、等価回路dのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=Q/(ωm×M)
【0051】
次に、推定部3は、等価回路dのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=(2×Q2)/(ωm2×L×(2×Q2−1))
【0052】
次に、推定部3は、等価回路dの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=(L×M)/C
【0053】
以上で、等価回路dの各素子定数の推定が終了する。
【0054】
他の等価回路の場合であっても、並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωm、2つの象限周波数ω1,ω2、共振の鋭さQに基づいて、R,C,Lの各素子定数を推定することができる。なお、公知の他の推定方法で等価回路の各素子定数を推定してもよい。
【0055】
推定部3は、推定した各素子定数を素子定数変更部4、及び理論特性演算部5に出力する。素子定数変更部4は、各素子定数を個々に変更設定する操作を可能にするためのものであり、図3に示すように、等価回路に用いられている電気素子の数に対応させた各素子定数R,C,Lをタッチパネル10の素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させると共に、素子定数設定操作用の増減ボタン14a,14b,14cをタッチパネル10に表示させて、各素子定数R,C,Lを変更する操作を可能にする。なお、増減ボタン14a〜14cに換えて、回転により値を増減させるジョグダイヤルのような回転ダイヤルを表示させてもよい。このように、一回の操作で値を増加又は減少させて変更できる素子定数変更部4の他に、二回以上の操作で値を変更できる例えばテン(10)キーと確定キーとを有するキーボードを、素子定数を変更するために表示させたり備えたりしてもよい。なお、素子定数を変更する機能の必要が無い場合には、素子定数変更部4を設けずに、素子定数を表示させるだけでよい。
【0056】
次に、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、推定ステップS2で推定部3が推定した各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する。ここで、等価回路の理論的な複素インピーダンスとは、抵抗の複素インピーダンスがR、コンデンサの複素インピーダンスが1/(jωC)、コイルの複素インピーダンスがjωLであるので、これらを等価回路の接続に対応させて合成したものである。複素インピーダンスの合成については、周知な事項であるので説明は省略する。なお、計算にはアドミタンスを用いてもよいし、複素インピーダンスと位相から算出できる他のパラメータを用いてもよい。理論特性演算部5は、タッチパネル10に表示させるグラフに適した形式で演算を行う。
【0057】
理論特性演算部5が演算を行う周波数は、測定部2の測定した1〜nの測定ポイントに合わせた周波数で演算する。つまり、理論特性演算部5は、合成した等価回路の複素インピーダンスに、周波数を開始周波数から終了周波数まで番号1〜nの測定ポイントに合わせて可変させて演算して、等価回路の理論的な複素インピーダンスSi(i=1〜n)(例えばインピーダンス周波数特性、及び位相周波数特性)を算出する。
【0058】
また、理論特性演算部5は、図3に例えば破線で示すように、算出した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性のグラフである、インピーダンス周波数特性のグラフ31b、及び位相周波数特性のグラフ32bを、DUT90の測定結果のグラフ31a,32aと区別可能に線種や色を変えて、かつ縦軸及び横軸を合わせて重なり合うように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。
【0059】
次に、測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性と、理論特性演算部5の算出した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する。
【0060】
具体的には、残差2乗平均演算ステップS4では、評価値演算部6が、下記の式(1)で残差2乗平均Eを演算する。
【0061】
【数5】
式中のiはDUT90の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の測定ポイントのDUT90の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示す。このように、等価回路の複素インピーダンスとDUT90の複素インピーダンスとの差を2乗しているのは、その差が正負いずれの値であっても正の数値で評価値を表現するためである。残差2乗平均Eは、DUT90と等価回路との両特性が近似(一致)するほど、値が小さくなる。
【0062】
評価値演算部6は、タッチパネル10に表示させているグラフの種類のそれぞれに対応させて、式(1)の演算を行うことが好ましい。この例では、図3に示すように、タッチパネル10に、インピーダンス周波数特性のグラフ31a,31b、及び位相周波数特性のグラフ32a,32bの2種類のグラフを表示させているので、インピーダンス周波数特性、及び位相周波数特性の各々で、式(1)の演算を行う。従って、残差2乗平均演算ステップS4で、インピーダンス周波数特性の残差2乗平均EZ、及び位相周波数特性の残差2乗平均Eθを算出する。なお、いずれか一方の残差2乗平均だけを算出するようにしてもよい。タッチパネル10に一方の種類のグラフだけを表示させている場合には、そのグラフの残差2乗平均を算出する。
【0063】
残差2乗平均演算ステップS4で算出した残差2乗平均E(EZ、Eθ)を、評価値としてそのまま用いてもよいが、次の残差演算ステップS5で、評価値演算部6が残差2乗平均Eの平方根である残差Xを算出して、この残差Xを評価値としてもよい。評価値として、残差2乗平均Eよりも残差Xを用いたほうが、グラフの差に比例する値となるので、測定者にとって直感的に理解しやすい数値になり好ましい。
【0064】
この例では、残差演算ステップS5で、評価値演算部6が、インピーダンス周波数特性の残差2乗平均の平方根である残差XZ、及び位相周波数特性の残差2乗平均の平方根である残差Xθを各々評価値として算出する。
【0065】
なお、評価値として残差2乗平均Eを用いた場合、残差2乗平均演算ステップS4が本発明における評価値演算ステップに相当し、評価値として残差Xを用いた場合、残差2乗平均演算ステップS4及び残差演算ステップS5が、本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0066】
次に、評価値表示ステップS6では、評価値演算部6が、評価値をタッチパネル10に表示させる。この例では、ステップS5で算出した残差(評価値)XZ、Xθを、図3に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、評価値表示33のように数値で表示させる。なお、評価値表示33は、見やすい位置であれば、素子定数表示領域12aの上側や増減ボタン14cの下側等のように、いずれの場所に表示させてもよい。
【0067】
続いて、素子定数変更設定ステップS7では、タッチパネル10の増減ボタン14a〜14bが操作されたときに、素子定数変更部4が、変更された素子定数をタッチパネル10に表示させると共に、変更された素子定数を理論特性演算部5に出力して、理論特性演算ステップS3に戻る。これにより、理論特性演算ステップS3で、論理特性演算部5が、素子定数変更部4により変更された後の各素子定数で等価回路の周波数特性を演算して、グラフ31b,32bを再描画する。続いて、残差2乗平均演算ステップS4、残差演算ステップS5、評価値表示ステップS6の処理を行い、変更された素子定数における評価値XZ、Xθを再演算し、評価値表示33をタッチパネル10に表示する。タッチパネル10の増減ボタン14a〜14bが操作されるたびに、ステップS7,S3〜S6を繰り返し行う。
【0068】
このように、評価値表示33をタッチパネル10に表示することで、測定者は、等価回路とDUT90との近似度合を数値で判断することができる。また、増減ボタン14a〜14cが操作されるたびに、等価回路の周波数特性及び評価値が再演算されて再表示されるため、素子定数の調整を迅速に行うことができる。なお、タッチパネル10に評価値表示33を表示させた方が、周波数特性のグラフ31a〜32bと共に評価値表示33を測定者が同時に確認することができるため好ましいが、タッチパネル10に評価値表示33を表示させずに、又は表示と共に、等価回路解析装置1の外部インタフェース回路(図示せず)から装置外部に評価値を出力させてもよい。例えば、この外部インタフェースにコンピュータを接続し、このコンピュータで評価値が所定範囲に入っているか否かを判別させるようにしてもよい。また、ここまではインピーダンス周波数特性Zや位相周波数特性θから残差2乗平均や残差を評価値として求めたが、Zやθから求められる他のパラメータを評価値として用いてもよい。
【0069】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析方法について、図8のフローチャートに沿って説明する。なお、既に説明したステップ(工程)と同様のステップについては同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
図8のフローチャートで示す等価回路解析方法は、前述した図2のフローチャートで示した解析方法を改良したものである。例えば図9に拡大図で示すように、DUT90のインピーダンス周波数特性のグラフ31a、及び等価回路のインピーダンス周波数特性のグラフ31bは、極大値P(極値)付近以外では殆どグラフが一致していたとしても、極大値P付近で両特性の差が大きくなる場合がある。これは、等価回路の素子定数が充分にDUT90を近似できていて誤差の少ないものであったとしても、極大値P付近ではグラフの傾きが非常に大きくなるため、素子定数の無視できる程度の僅かな違いにより、極大値P付近で両特性に大きな差が生じることがあるためである。同様に、極小値(極値)付近においても両特性に差が生じてしまうことがある。そのため、図2のフローチャートで説明した解析方法では、素子定数の誤差が小さくても、極値付近の差の影響で、評価値が悪化する(大きくなる)ことがあるという課題がある。このような課題を解決するために、図8のフローチャートでは、極値付近の差の影響を排除するようにして評価値を演算している。
【0071】
同図のフローチャートでは、既に説明した測定ステップS1、推定ステップS2、理論特性演算ステップS3、残差2乗平均演算ステップS4と同様にこの順で処理を行い、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性と等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との残差2乗平均Eを算出する。
【0072】
続いて、極値選択ステップS11では、評価値演算部6が、DUT90の複素インピーダンスDi(i=1〜n)の中から極大値や極小値といった極値Dpeakを選択する。ここで、peakは、極値となる測定ポイントのiを示す。特性中に極大値があるか極小値があるかということを、等価回路モデルの種類a〜dに基づいて判別してもよい。また、例えば極値Dpeak1,極値Dpeak2・・・のように極値Dpeakが複数あってもよい。また、極値Dpeakとして、推定ステップS2で求めた極大値P,Mを用いてもよい。
【0073】
次に、除外ポイント抽出ステップS12では、評価値演算部6が、極値Dpeakの測定ポイントを中心として、下記の式(2)
【数6】
の関係が少なくとも成り立たない測定ポイントの範囲(所定範囲の一例)を判別する。ここで、式中のi,Di,Si,Eは式(1)のものと同様である。
【0074】
具体的には、例えば、評価値演算部6は、図10に示すフローチャートに従って動作して除外ポイント抽出ステップS12を実行する。先ず、評価値演算部6は、ステップS41で、極値の測定ポイント(i=peak)における式(2)を演算する。式(2)の関係を満たすときは、ステップS42に進み、除外する測定ポイントはないと判別して除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0075】
ステップS41で式(2)の関係を満たさないときは、ステップS43に進み、変数jnに初期値1に設定する。次に、評価値演算部6は、ステップS44、S45のループで、式(2)のiをpeak−jnとし、jnを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。これにより、peakより小さい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲peak−jn+1が求められる。ステップS44の関係を満たしたときに、ステップS46に進み、変数jpに初期値1に設定する。次に、評価値演算部6は、ステップS47、S48のループで、式(2)のiをpeak+jpとし、jnを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。これにより、peakより大きい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲peak+jp−1が求められる。評価値演算部6は、ステップS49で、peak−jn+1〜peak+jp−1を、除外する測定ポイントの範囲に設定して、除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0076】
極値Dpeakが複数ある場合には、上記の演算を各極値Dpeak1、Dpeak2・・・について行う。
【0077】
なお、評価値演算部6は、図11に示すフローチャートに従って動作して除外ポイント抽出ステップS12を実行してもよい。この例では、図10のフローチャートで得られる除外する測定ポイントの範囲よりも、得られる範囲が広くなる場合があるが、必要な変数の数が1つでよく、演算量も少なくて済むという特徴がある。具体的には、評価値演算部6は、ステップS51で変数jを初期値0に設定し、ステップS53で極値の測定ポイントであるi=peakのときの式(2)を演算する。式(2)の関係を満たすときは、評価値演算部6は、ステップS54に進み、除外する測定ポイントはないと判別して除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0078】
ステップS53で式(2)の関係を満たさないときは、評価値演算部6は、ステップS55、S52、S56のループで、式(2)のiをpeak−jとし、jを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。ステップS56の関係を満たしたときに、ステップS57に進む。評価値演算部6は、ステップS57で、先の演算に用いていた変数jを用いて式(2)のiをpeak+jとして演算し、式(2)の関係を満たすか否かを判別する。ステップS57の関係を満たさないときに、評価値演算部6は、S55、S52、S56、S57のループで、jを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。ステップS57の関係を満たしたときに、評価値演算部6は、ステップS58に進む。このように処理することで、peakよりも小さい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲と、peakよりも大きい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲とのうちで、広い方の範囲に対応するjの値が求められる。評価値演算部6は、ステップS58で、peak−j+1〜peak+j−1を、除外する測定ポイントの範囲に設定して、除外ポイント抽出ステップS12を終了する。このように求めることで、少なくとも式(2)の関係を満たさない範囲が抽出される。また、このように求めても、例えば図9に示すように、グラフの形状は極値の前後で概ね対称形になるので、図10のフローチャートで求める範囲と大きく異ならない。
【0079】
また、除外ポイント抽出ステップS12を行う方法については、図10、図11のフローチャートの以外の方法で行ってもよい。例えば、評価値演算部6が、極値が式(2)の関係を満たさないときに極値の前後各100個(所定個数)の測定ポイントの範囲を除外するというように、極値の前後の一定の範囲を所定範囲として、式(1)の演算から除外するようにしてもよい。また、極値が式(2)の関係を満たすか満たさないかに関係なく、例えば極値の前後各100個(所定個数)の測定ポイントの中で、式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲を所定範囲として除外するようにしてもよい。
【0080】
次に、図8のフローチャートに戻って説明すると、除外演算ステップS13では、評価値演算部6が、除外ポイント抽出ステップS12で抽出した測定ポイントを、演算対象から除外して式(1)を再演算して、再演算した残差2乗平均Eを評価値として算出する。例えば、iがpeak−A〜peak+Bの測定ポイントを演算対象から除外する場合、これら(A+B+1)個の測定ポイントが無いものとして、式(1)を演算する。演算対象の測定ポイントの数が減るので、式(1)中のnは、除外した測定ポイントの数を減算して、n−(B+A+1)となる。なお、残差2乗平均演算ステップS4、極値選択ステップS11、除外ポイント抽出ステップS12、及び除外演算ステップS13が本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0081】
次に、評価値表示ステップS6で、評価値演算部6が、除外演算ステップS13で再演算した残差2乗平均Eを評価値としてタッチパネル10に表示する。なお、図2のフローチャートの残差演算ステップS5で説明したように、評価値演算部6が残差2乗平均Eの平方根である残差Xを算出して、この残差Xを評価値として表示させてもよい。
【0082】
素子定数変更設定ステップS7で素子定数が変更されると、理論特性演算ステップS3に戻り、ステップS4〜S14を実行し、変更された素子定数で評価値を算出して、再表示する。
【0083】
このように、所定条件のときに極値付近の所定範囲の測定ポイントを除外して残差2乗平均を算出することで、評価値が、素子定数の誤差の大きさを一層的確に表した値となる。
【0084】
次に、本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法について、図12のフローチャートに沿って説明する。
【0085】
同図に示す解析方法は、評価値演算部6が、DUT90の周波数特性の各測定ポイントで測定された複素インピーダンスに基づき、各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、各測定ポイントにおける等価回路の複素インピーダンスが対応する上限値及び下限値の範囲内にあるか否かを判別し、その範囲内にある測定ポイントの数と全ての測定ポイントの数との比を評価値として演算する方法である。この場合、評価値演算部6が、各測定ポイントで測定されたDUT90の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で上限値及び下限値を演算することが好ましい。
【0086】
具体的に説明すると、同図のフローチャートでは、既に説明した測定ステップS1、推定ステップS2、理論特性演算ステップS3と同様にこの順で処理して、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性と等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を得る。
【0087】
次に、上下限値演算ステップS21では、評価値演算部6が、DUT90の周波数特性の測定ポイント1〜nで測定された各々の複素インピーダンスDiに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で、各測定ポイント1〜nにおける上限値及び下限値を算出する。許容上限割合及び許容下限割合は、予め不図示のメモリに記憶されている値であってもよいし、測定者によってタッチパネル10が操作されて任意の値に予め設定された値であってもよい。一例を示すと、許容上限割合が+Y%(例えば+2%)、許容下限割合が−Y%(例えば−2%)のように設定される。評価値演算部6は、各測定ポイントにおいて、上限値としてDUT90の複素インピーダンスDiに対する+Y%の値を算出し、下限値としてDUT90の複素インピーダンスDiに対する−Y%の値を算出する。上限割合と下限割合とが異なっていてもよい。
【0088】
なお、グラフをデシベル表示で表示しているような場合には、上限割合及び下限割合を+Y dB(例えば+3dB)、−Y dB(例えば−3dB)のようにデシベル値(比の対数)で設定するようにしてもよい。また、極大値に対する上限幅割合(例えばY%)の値(上限幅)を算出し、各測定ポイントの複素インピーダンスDiに上限幅を一律に加算して上限値とし、極値に対する下限幅割合(例えばY%)の値(下限幅)を算出し、各測定ポイントの複素インピーダンスDiから下限幅を一律に減算して下限値としてもよい。
【0089】
評価値演算部6は、算出した各測定ポイントにおける上限値及び下限値を、図13に拡大図で示すように、タッチパネル10にグラフで表示させてもよい。同図は、DUT90のインピーダンス周波数特性のグラフ31a、等価回路のグラフ31bと共に、上限値のグラフ35U、下限値のグラフ35Lを表示させた例である。グラフ31a,31b,35U,35Lは、例えばグラフ31aの一部を拡大して図の右上丸枠内に模式的に示すように、各々、測定ポイントにおける値を線で繋いで表示させている。
【0090】
次に、図12の比較ステップS22では、評価値演算部6が、各測定ポイントにおいて、下限値から上限値までの範囲内に等価回路の複素インピーダンスSiが入るか否かを比較して、その範囲内に入った測定ポイントの数hを算出する。図13では、等価回路の複素インピーダンスSiのグラフ31bが上限値35U及び下限値35Lの範囲内に入る領域を「範囲内」で示し、上限値及び下限値の範囲外となる領域を「範囲外」で示している。
【0091】
続いて、比率演算ステップS23では、評価値演算部6が、比較ステップS22で算出した測定ポイントの数hと、全ての測定ポイントの数nとの比(h/n)を評価値として算出する。その比は、分数で表してもよいし、小数で表してもよいし、百分率(パーセント)で表してもよい。この解析方法では、DUT90と等価回路との両特性が近似(一致)するほど、評価値が大きくなる。なお、上下限値演算ステップS21、比較ステップS22、及び比率演算ステップS23が本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0092】
次に、評価値表示ステップS6で、評価値演算部6が、比率演算ステップS23で算出した評価値を、タッチパネル10に表示させる。素子定数変更設定ステップS7で素子定数が変更されたときには、ステップS3に戻り、前述の説明と同様に、変更された素子定数で評価値を再度演算して表示する。
【0093】
この解析方法では、評価値が、全体の内のどの程度の範囲で両特性がほぼ一致しているか示しているので、測定者が両特性の一致の度合いを直感的に理解することができる。
【0094】
なお、図2、図8、図12のフローチャートにおいて、素子定数を変更設定する機能の必要性が無い場合には、素子定数変更設定ステップS7を設けずに、評価値表示ステップS6で各フローチャートを終了するようにしてもよい。
【0095】
次に、本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法について、図14のフローチャートに沿って説明する。この解析方法は、既に説明した評価値を用いて、複数の等価回路の中からDUT90を表すのに最も適した等価回路を選択する方法である。
【0096】
具体的に説明すると、同図の測定ステップS1でDUT90の複素インピーダンスの周波数特性を測定する。続いて、推定ステップS31で、推定部3が、測定ステップS1で測定された周波数特性に対して、例えば図4の等価回路a〜dに示すような予め設定されている複数の等価回路の各素子定数を各々推定する。
【0097】
次に、理論特性演算ステップS32では、理論特性演算部5が、推定ステップS31で推定した複数の等価回路の各素子定数を用いて、複数の等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を各々算出する。続いて、評価値演算ステップS33では、評価値演算部6が、複数の等価回路のそれぞれの評価値を算出する。評価値は、図2、図8、図12のフローチャートに示したいずれの方法で算出してもよい。
【0098】
最後に、等価回路選定ステップS34で、評価値演算部6が、最も評価値のよい等価回路を選定する。また、選定結果をタッチパネル10に表示する。
【0099】
図14のように処理することで、複数の等価回路の中から最もDUT90に適した等価回路を自動的に選定することができる。DUT90の周波数特性のグラフ、及び複数の等価回路の周波数特性のグラフをタッチパネル10に表示させるようにしてもよい。同図のように処理して等価回路を選定した後に、図2、図8、又は図12のフローチャートに示した解析方法をさらに実行して、素子定数をより誤差の無いものに測定者が調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1は等価回路解析装置、2は測定部、3は推定部、4は素子定数変更部、5は理論特性演算部、6は評価値演算部、10はタッチパネル、11はグラフ表示領域、12・12a・12b・12cは素子定数表示領域、14・14a・14b・14cは増減ボタン(設定操作用ボタン)、21a・21bはプローブ、25は実効抵抗Rsの周波数特性のグラフ(データ)、26はコンダクタンスGの周波数特性のグラフ(データ)、31aは測定部2の測定した複素インピーダンスの絶対値の周波数特性のグラフ、31bは理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの絶対値の周波数特性のグラフ、32aは測定部2の測定した複素インピーダンスの位相周波数特性のグラフ、32bは理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの位相周波数特性のグラフ、33は評価値表示、35Uは上限値のグラフ、35Lは下限値のグラフ、90は測定対象物、a・b・c・dは等価回路、Cはコンデンサの素子定数、Lはコイルの素子定数、Rは抵抗の素子定数、Rsは実効抵抗、Gはコンダクタンス、P・Mは極大値、Zはインピーダンス周波数特性、θは位相周波数特性、ω1,ω2は象限周波数、ωpは並列共振周波数、ωmは直列共振周波数である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定し、この周波数特性から、電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード、トランジスタ、一次・二次電池、太陽電池、フィルタなどの電気的な部品を測定対象物(以下、DUTともいう)として、そこに周波数を掃引させつつ測定用信号電圧を印加して、その電圧及び流れた電流から、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性を表示パネルにグラフで表示するインピーダンス測定装置が知られている。このようなインピーダンス測定装置の中には、測定した複素インピーダンスの周波数特性から、測定対象物の電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析機能を有しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、モンテカルロ法により評価関数が最小になる等価回路の素子定数を演算し、この演算した素子定数を局所探索法の開始値として評価関数が極小値になる素子定数を演算して、さらにこれら演算を所定回数繰り返し行って素子定数を求める等価回路解析方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、どのような推定方法を用いたとしても、素子定数の推定結果に誤差が生じてしまう場合がある。そのため、推定結果に誤差があるか否かを測定者が判断可能なように、推定した素子定数で等価回路の理論的な周波数特性を演算し、得られた理論的な周波数特性のグラフを、DUTの測定結果のグラフと共に表示パネルに表示させることが考えられる。測定者は、両グラフを比較して、両グラフ間にほとんど差が無ければ推定された素子定数はDUTを正しく(よく近似して)表しており、一部でも大きな差があれば素子定数はDUTを正しく表していないと判断する。測定者は、両グラフ間に一部でも差がある場合、推定された素子定数の値を手動で適宜変更(調整)して、装置に等価回路の理論的な周波数特性のグラフを再度表示させ、測定結果のグラフと一致させるようにすることで、誤差の少ない素子定数を得ることができる。
【0005】
しかしながら、DUTの測定結果のグラフと等価回路のグラフとの間の差の有無を、測定者が目視で比較して判断しているので、判断基準が統一できず、等価回路の解析結果に差が生じてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、測定対象物に対する等価回路の近似の度合いを、定量的に表すことができる等価回路解析装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された等価回路解析装置は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算部の算出した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記評価値演算部が、下記の式(1)
【数1】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された等価回路解析装置は、請求項2に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して、該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された等価回路解析装置は、請求項3に記載されたもので、前記評価値演算部が、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数2】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された等価回路解析装置は、請求項2から4のいずれかに記載されたもので、前記評価値演算部が、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された等価回路解析装置は、請求項6に記載されたもので、前記評価値演算部が、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載された等価回路解析装置は、請求項1から7のいずれかに記載されたもので、前記推定部が、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算部が、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算部が、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載された等価回路解析装置は、請求項1から8のいずれかに記載されたもので、表示部を備え、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を該表示部に表示させることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載された等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップと、該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算ステップと、測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算ステップで演算した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算ステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載された等価回路解析方法は、請求項10に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、下記の式(1)
【数3】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載された等価回路解析方法は、請求項11に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載された等価回路解析方法は、請求項12に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数4】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載された等価回路解析方法は、請求項11から13のいずれかに記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載された等価回路解析方法は、請求項10に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載された等価回路解析方法は、請求項15に記載されたもので、前記評価値演算ステップで、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする。
【0024】
請求項17に記載された等価回路解析方法は、請求項10から16のいずれかに記載されたもので、前記推定ステップで、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする。
【0025】
請求項18に記載された等価回路解析方法は、請求項10から17のいずれかに記載されたもので、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を表示部に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の等価回路解析装置及び方法によれば、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性と、等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出することにより、測定者は、測定対象物に対する等価回路の近似の度合いを、定量的な評価値に基づいて判断することができる。そのため、判断基準を統一化することができる。
【0027】
残差2乗平均を評価値とする場合、測定対象物の周波数特性と等価回路の周波数特性との差が大きくなると評価値が大きくなり、差が小さくなると評価値が小さくなる。このため、両特性の差の大小を評価値の大小で表すことができ、測定者に素子定数の誤差の大きさを直感的に認識させることができる。
【0028】
測定対象物の周波数特性の中の極値から所定範囲内の測定ポイントを、演算対象から除外して残差2乗平均を算出する場合、素子定数の誤差に大きな影響が無い極値付近の両特性の差の影響を排除でき、素子定数の誤差の大きさを一層正しく表すことができる。
【0029】
全ての測定ポイントの残差2乗平均の平方根を予め算出し、極値の測定ポイントを中心として、[測定対象物の複素インピーダンスの値]±[残差2乗平均の平方根]内に等価回路の複素インピーダンスが入っていない範囲を、前記の所定範囲として残差2乗平均の演算対象から除外する場合、平均的な差よりも大きな差が生じている極値付近の測定ポイントを演算対象から除外できるので、素子定数の誤差の大きさをより一層正しく表すことができる。
【0030】
評価値として残差2乗平均を用いるのではなく、評価値として残差2乗平均の平方根である残差を用いる場合、評価値が測定対象物及び等価回路の両周波数特性の差に比例する値(線形な値)で表されるので、測定者は、両特性の差の大きさを容易に理解することができる。
【0031】
測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された複素インピーダンスに基づいて上限値及び下限値を設定し、その範囲内に等価回路の複素インピーダンスが入る測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を評価値とする場合、全体の内のどの程度の範囲で両特性がほぼ一致(近似)しているかが判るので、測定者は、素子定数の誤差の大きさを直感的に容易に理解することができる。
【0032】
各測定ポイントで測定された測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で上限値及び下限値を算出する場合、設定が容易であると共に、両特性の近似の度合いを的確に表すことができる。
【0033】
複数の等価回路の中から評価値が最もよい等価回路を測定対象物の等価回路として選定する場合、測定者が判断することなく等価回路を自動的に選定することができる。
【0034】
表示部に、測定対象物の周波数特性のグラフ、等価回路の周波数特性のグラフ、評価値を表示させる場合、測定者は、両特性の近似の度合いを容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用する等価回路解析装置のブロック図である。
【図2】本発明を適用する等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図4】測定対象物の等価回路の例である。
【図5】図4に示す各等価回路のインピーダンス周波数特性及び位相周波数特性の例である。
【図6】等価回路aにおける素子定数の推定方法を説明するための実効抵抗の周波数特性データ(グラフ)である。
【図7】等価回路dにおける素子定数の推定方法を説明するためのコンダクタンスの周波数特性データ(グラフ)である。
【図8】本発明を適用する別の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】測定対象物及び等価回路のインピーダンス周波数特性のグラフの極大値付近の拡大図である。
【図10】除外ポイント抽出ステップS12を説明するためのフローチャートである。
【図11】他の除外ポイント抽出ステップS12を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】測定対象物、等価回路、上限値、及び下限値のインピーダンス周波数特性のグラフの一部拡大図である。
【図14】本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0037】
本発明を適用する等価回路解析装置1は、図1に機能的ブロックで示すように、測定部2、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、評価値演算部6、及びタッチパネル10を備え、測定対象物(DUT)90の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、その周波数特性から等価回路の各素子定数を推定部3が推定することが可能になっている。なお、同図に示す推定部3、理論特性演算部5、素子定数変更部4、及び評価値演算部6等は、一例として、本装置1の動作を統括的に制御する1つ又は複数のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に予め記憶されたソフトウエアに従って動作して演算処理することで実現されている。また、等価回路解析装置1は、後述する図2、図8、図10、図11、図12、図14の各フローチャートに対応するプログラムがメモリに予め記憶されていて、各フローチャートに従って動作可能に構成されている。いずれのフローチャートに従って動作するかは、測定者のタッチパネル10の操作で選択が可能になっている。なお、測定部2として従来のインピーダンス測定装置を用い、その他の推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、評価値演算部6、及びタッチパネル10としてコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)を用い、両者を組み合わせて本発明の等価回路解析装置1としてもよい。
【0038】
タッチパネル10は、画像を表示可能な液晶パネルやCRTなどの表示装置と、タッチパッドなどの位置入力装置を組み合わせたもので、画像を表示可能であると共に、指や専用ペン等が画面に触れたときに、その触れた画面上の位置情報を出力するものである。タッチパネル10は、等価回路解析装置1の表示部及び操作部として用いられる。タッチパネル10に換えて、液晶パネル等の表示部と、キーボード等の操作部とを備えるようにしてもよい。
【0039】
等価回路解析装置1の具体的な動作について図1〜図3を参照して説明する。ここで、図2に示すフローチャートは、本発明を適用する等価回路解析方法を示し、これに沿って等価回路解析装置1の動作を説明する。
【0040】
測定ステップS1では、測定部2が、不図示の交流信号源からプローブ21a,21bを介して、周波数を開始周波数から終了周波数まで掃引させて測定用信号電圧を測定対象物(DUT)90に印加し、2端子法又は4端子法などの公知の測定方法で電圧と電流とを測定し、その電圧及び電流から、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性を測定する。ここで測定部2は、開始周波数から終了周波数まで、周波数分解能ごとに順番に、番号i=1、2・・・,n(nは整数)の測定ポイント(サンプリングポイント)の周波数で測定を行い、複素インピーダンスDi(i=1〜n)を得る。測定部2は、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性として、一例として複素インピーダンスの絶対値の周波数特性(以下、「インピーダンス周波数特性」ともいう)のグラフ31a、及び位相周波数特性のグラフ32aを、図3に例えば実線で示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。グラフ表示領域11に、インピーダンス周波数特性のグラフ31aを表示させるか、位相周波数特性のグラフ32aを表示させるか、又は両特性のグラフ31a,32aを表示させるかの切り替えは、測定者がタッチパネル10を操作することで、自由に切り換えることができる。同図では、グラフ31a,32aの両特性を表示させた例を表している。なお、タッチパネル10にグラフ表示させる複素インピーダンスの周波数特性の表現方法は、コンダクタンス(G)−サセプタンス(B)特性、実効抵抗(Rs)−リアクタンス(X)特性、動アドミタンス円、又は動インピーダンス円などのように、公知の種々の表現方法で表現させることができる。
【0041】
次に、推定ステップS2では、推定部3が、測定ステップS1で測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する。等価回路を構成する電気素子は、抵抗(素子定数R)、コンデンサ(素子定数C)、コイル(素子定数L)である。等価回路は、抵抗、コンデンサ、コイルのうちの少なくとも2つを接続して構成する。等価回路に用いる電気素子の数は、特に限定がなく、同種の電気素子が複数用いられていてもよい。推定部3は、推定した各素子定数を素子定数変更部4、及び理論特性演算部5に出力する。
【0042】
等価回路の例を、図4の等価回路a〜dに示す。主として、等価回路aはコイルや抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路bは損失が大きなコイルを測定する場合に用いられ、等価回路cは高抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路dはコンデンサを測定する場合に用いられる。図5に、等価回路a〜dのインピーダンス周波数特性Z及び位相周波数特性θの例を図示する。同図中には、後述する並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωmの位置を示している。
【0043】
このように複数の等価回路を予め設定しておき、測定者がタッチパネル10を操作して、1つの等価回路を選択できるようにすることが好ましい。推定部3は、等価回路a〜dの各素子定数の推定が可能になっている。測定者は、タッチパネル10を操作して、測定ステップS1又は推定ステップS2の前に、用いる等価回路を予め選択しておく。
【0044】
推定部3が各素子定数を推定する例として、等価回路aが選択されている場合について説明する。等価回路aのときには、推定部3は、測定部2の測定データから各測定ポイントにおける複素インピーダンスの実効抵抗(レジスタンス)Rsを算出し、その実効抵抗Rsから各素子定数を推定する。なお、複素インピーダンスを、実効抵抗Rs及びリアクタンスXで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図6のグラフ25に示す実効抵抗Rsの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ25(測定データ)の中の極大値Pを求める。この極大値Pのときの周波数が、並列共振周波数ωpである。次に、推定部3は、グラフ25が、極大値Pの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωp/(ω2−ω1)
【0045】
次に、推定部3は、等価回路aのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=Q/(ωp×P)
【0046】
次に、推定部3は、等価回路aのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=(2×Q2)/(ωp2×C×(2×Q2−1))
【0047】
次に、推定部3は、等価回路aの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=L/(C×P)
【0048】
以上で、等価回路aの各素子定数の推定が終了する。
【0049】
また、等価回路dのように直列共振回路の場合には、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素アドミタンス(複素インピーダンスの別の表現方法)のコンダクタンスGを算出し、そのコンダクタンスGから各素子定数を推定する。なお、複素アドミタンスを、コンダクタンスG及びサセプタンスBで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図7のグラフ26に示すコンダクタンスGの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ26(測定データ)の中の極大値Mを求める。この極大値Mのときの周波数が、直列共振周波数ωmである。次に、推定部3は、グラフ26が、極大値Mの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωm/(ω2−ω1)
【0050】
次に、推定部3は、等価回路dのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=Q/(ωm×M)
【0051】
次に、推定部3は、等価回路dのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=(2×Q2)/(ωm2×L×(2×Q2−1))
【0052】
次に、推定部3は、等価回路dの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=(L×M)/C
【0053】
以上で、等価回路dの各素子定数の推定が終了する。
【0054】
他の等価回路の場合であっても、並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωm、2つの象限周波数ω1,ω2、共振の鋭さQに基づいて、R,C,Lの各素子定数を推定することができる。なお、公知の他の推定方法で等価回路の各素子定数を推定してもよい。
【0055】
推定部3は、推定した各素子定数を素子定数変更部4、及び理論特性演算部5に出力する。素子定数変更部4は、各素子定数を個々に変更設定する操作を可能にするためのものであり、図3に示すように、等価回路に用いられている電気素子の数に対応させた各素子定数R,C,Lをタッチパネル10の素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させると共に、素子定数設定操作用の増減ボタン14a,14b,14cをタッチパネル10に表示させて、各素子定数R,C,Lを変更する操作を可能にする。なお、増減ボタン14a〜14cに換えて、回転により値を増減させるジョグダイヤルのような回転ダイヤルを表示させてもよい。このように、一回の操作で値を増加又は減少させて変更できる素子定数変更部4の他に、二回以上の操作で値を変更できる例えばテン(10)キーと確定キーとを有するキーボードを、素子定数を変更するために表示させたり備えたりしてもよい。なお、素子定数を変更する機能の必要が無い場合には、素子定数変更部4を設けずに、素子定数を表示させるだけでよい。
【0056】
次に、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、推定ステップS2で推定部3が推定した各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する。ここで、等価回路の理論的な複素インピーダンスとは、抵抗の複素インピーダンスがR、コンデンサの複素インピーダンスが1/(jωC)、コイルの複素インピーダンスがjωLであるので、これらを等価回路の接続に対応させて合成したものである。複素インピーダンスの合成については、周知な事項であるので説明は省略する。なお、計算にはアドミタンスを用いてもよいし、複素インピーダンスと位相から算出できる他のパラメータを用いてもよい。理論特性演算部5は、タッチパネル10に表示させるグラフに適した形式で演算を行う。
【0057】
理論特性演算部5が演算を行う周波数は、測定部2の測定した1〜nの測定ポイントに合わせた周波数で演算する。つまり、理論特性演算部5は、合成した等価回路の複素インピーダンスに、周波数を開始周波数から終了周波数まで番号1〜nの測定ポイントに合わせて可変させて演算して、等価回路の理論的な複素インピーダンスSi(i=1〜n)(例えばインピーダンス周波数特性、及び位相周波数特性)を算出する。
【0058】
また、理論特性演算部5は、図3に例えば破線で示すように、算出した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性のグラフである、インピーダンス周波数特性のグラフ31b、及び位相周波数特性のグラフ32bを、DUT90の測定結果のグラフ31a,32aと区別可能に線種や色を変えて、かつ縦軸及び横軸を合わせて重なり合うように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。
【0059】
次に、測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性と、理論特性演算部5の算出した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する。
【0060】
具体的には、残差2乗平均演算ステップS4では、評価値演算部6が、下記の式(1)で残差2乗平均Eを演算する。
【0061】
【数5】
式中のiはDUT90の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の測定ポイントのDUT90の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示す。このように、等価回路の複素インピーダンスとDUT90の複素インピーダンスとの差を2乗しているのは、その差が正負いずれの値であっても正の数値で評価値を表現するためである。残差2乗平均Eは、DUT90と等価回路との両特性が近似(一致)するほど、値が小さくなる。
【0062】
評価値演算部6は、タッチパネル10に表示させているグラフの種類のそれぞれに対応させて、式(1)の演算を行うことが好ましい。この例では、図3に示すように、タッチパネル10に、インピーダンス周波数特性のグラフ31a,31b、及び位相周波数特性のグラフ32a,32bの2種類のグラフを表示させているので、インピーダンス周波数特性、及び位相周波数特性の各々で、式(1)の演算を行う。従って、残差2乗平均演算ステップS4で、インピーダンス周波数特性の残差2乗平均EZ、及び位相周波数特性の残差2乗平均Eθを算出する。なお、いずれか一方の残差2乗平均だけを算出するようにしてもよい。タッチパネル10に一方の種類のグラフだけを表示させている場合には、そのグラフの残差2乗平均を算出する。
【0063】
残差2乗平均演算ステップS4で算出した残差2乗平均E(EZ、Eθ)を、評価値としてそのまま用いてもよいが、次の残差演算ステップS5で、評価値演算部6が残差2乗平均Eの平方根である残差Xを算出して、この残差Xを評価値としてもよい。評価値として、残差2乗平均Eよりも残差Xを用いたほうが、グラフの差に比例する値となるので、測定者にとって直感的に理解しやすい数値になり好ましい。
【0064】
この例では、残差演算ステップS5で、評価値演算部6が、インピーダンス周波数特性の残差2乗平均の平方根である残差XZ、及び位相周波数特性の残差2乗平均の平方根である残差Xθを各々評価値として算出する。
【0065】
なお、評価値として残差2乗平均Eを用いた場合、残差2乗平均演算ステップS4が本発明における評価値演算ステップに相当し、評価値として残差Xを用いた場合、残差2乗平均演算ステップS4及び残差演算ステップS5が、本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0066】
次に、評価値表示ステップS6では、評価値演算部6が、評価値をタッチパネル10に表示させる。この例では、ステップS5で算出した残差(評価値)XZ、Xθを、図3に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、評価値表示33のように数値で表示させる。なお、評価値表示33は、見やすい位置であれば、素子定数表示領域12aの上側や増減ボタン14cの下側等のように、いずれの場所に表示させてもよい。
【0067】
続いて、素子定数変更設定ステップS7では、タッチパネル10の増減ボタン14a〜14bが操作されたときに、素子定数変更部4が、変更された素子定数をタッチパネル10に表示させると共に、変更された素子定数を理論特性演算部5に出力して、理論特性演算ステップS3に戻る。これにより、理論特性演算ステップS3で、論理特性演算部5が、素子定数変更部4により変更された後の各素子定数で等価回路の周波数特性を演算して、グラフ31b,32bを再描画する。続いて、残差2乗平均演算ステップS4、残差演算ステップS5、評価値表示ステップS6の処理を行い、変更された素子定数における評価値XZ、Xθを再演算し、評価値表示33をタッチパネル10に表示する。タッチパネル10の増減ボタン14a〜14bが操作されるたびに、ステップS7,S3〜S6を繰り返し行う。
【0068】
このように、評価値表示33をタッチパネル10に表示することで、測定者は、等価回路とDUT90との近似度合を数値で判断することができる。また、増減ボタン14a〜14cが操作されるたびに、等価回路の周波数特性及び評価値が再演算されて再表示されるため、素子定数の調整を迅速に行うことができる。なお、タッチパネル10に評価値表示33を表示させた方が、周波数特性のグラフ31a〜32bと共に評価値表示33を測定者が同時に確認することができるため好ましいが、タッチパネル10に評価値表示33を表示させずに、又は表示と共に、等価回路解析装置1の外部インタフェース回路(図示せず)から装置外部に評価値を出力させてもよい。例えば、この外部インタフェースにコンピュータを接続し、このコンピュータで評価値が所定範囲に入っているか否かを判別させるようにしてもよい。また、ここまではインピーダンス周波数特性Zや位相周波数特性θから残差2乗平均や残差を評価値として求めたが、Zやθから求められる他のパラメータを評価値として用いてもよい。
【0069】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析方法について、図8のフローチャートに沿って説明する。なお、既に説明したステップ(工程)と同様のステップについては同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
図8のフローチャートで示す等価回路解析方法は、前述した図2のフローチャートで示した解析方法を改良したものである。例えば図9に拡大図で示すように、DUT90のインピーダンス周波数特性のグラフ31a、及び等価回路のインピーダンス周波数特性のグラフ31bは、極大値P(極値)付近以外では殆どグラフが一致していたとしても、極大値P付近で両特性の差が大きくなる場合がある。これは、等価回路の素子定数が充分にDUT90を近似できていて誤差の少ないものであったとしても、極大値P付近ではグラフの傾きが非常に大きくなるため、素子定数の無視できる程度の僅かな違いにより、極大値P付近で両特性に大きな差が生じることがあるためである。同様に、極小値(極値)付近においても両特性に差が生じてしまうことがある。そのため、図2のフローチャートで説明した解析方法では、素子定数の誤差が小さくても、極値付近の差の影響で、評価値が悪化する(大きくなる)ことがあるという課題がある。このような課題を解決するために、図8のフローチャートでは、極値付近の差の影響を排除するようにして評価値を演算している。
【0071】
同図のフローチャートでは、既に説明した測定ステップS1、推定ステップS2、理論特性演算ステップS3、残差2乗平均演算ステップS4と同様にこの順で処理を行い、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性と等価回路の複素インピーダンスの周波数特性との残差2乗平均Eを算出する。
【0072】
続いて、極値選択ステップS11では、評価値演算部6が、DUT90の複素インピーダンスDi(i=1〜n)の中から極大値や極小値といった極値Dpeakを選択する。ここで、peakは、極値となる測定ポイントのiを示す。特性中に極大値があるか極小値があるかということを、等価回路モデルの種類a〜dに基づいて判別してもよい。また、例えば極値Dpeak1,極値Dpeak2・・・のように極値Dpeakが複数あってもよい。また、極値Dpeakとして、推定ステップS2で求めた極大値P,Mを用いてもよい。
【0073】
次に、除外ポイント抽出ステップS12では、評価値演算部6が、極値Dpeakの測定ポイントを中心として、下記の式(2)
【数6】
の関係が少なくとも成り立たない測定ポイントの範囲(所定範囲の一例)を判別する。ここで、式中のi,Di,Si,Eは式(1)のものと同様である。
【0074】
具体的には、例えば、評価値演算部6は、図10に示すフローチャートに従って動作して除外ポイント抽出ステップS12を実行する。先ず、評価値演算部6は、ステップS41で、極値の測定ポイント(i=peak)における式(2)を演算する。式(2)の関係を満たすときは、ステップS42に進み、除外する測定ポイントはないと判別して除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0075】
ステップS41で式(2)の関係を満たさないときは、ステップS43に進み、変数jnに初期値1に設定する。次に、評価値演算部6は、ステップS44、S45のループで、式(2)のiをpeak−jnとし、jnを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。これにより、peakより小さい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲peak−jn+1が求められる。ステップS44の関係を満たしたときに、ステップS46に進み、変数jpに初期値1に設定する。次に、評価値演算部6は、ステップS47、S48のループで、式(2)のiをpeak+jpとし、jnを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。これにより、peakより大きい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲peak+jp−1が求められる。評価値演算部6は、ステップS49で、peak−jn+1〜peak+jp−1を、除外する測定ポイントの範囲に設定して、除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0076】
極値Dpeakが複数ある場合には、上記の演算を各極値Dpeak1、Dpeak2・・・について行う。
【0077】
なお、評価値演算部6は、図11に示すフローチャートに従って動作して除外ポイント抽出ステップS12を実行してもよい。この例では、図10のフローチャートで得られる除外する測定ポイントの範囲よりも、得られる範囲が広くなる場合があるが、必要な変数の数が1つでよく、演算量も少なくて済むという特徴がある。具体的には、評価値演算部6は、ステップS51で変数jを初期値0に設定し、ステップS53で極値の測定ポイントであるi=peakのときの式(2)を演算する。式(2)の関係を満たすときは、評価値演算部6は、ステップS54に進み、除外する測定ポイントはないと判別して除外ポイント抽出ステップS12を終了する。
【0078】
ステップS53で式(2)の関係を満たさないときは、評価値演算部6は、ステップS55、S52、S56のループで、式(2)のiをpeak−jとし、jを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。ステップS56の関係を満たしたときに、ステップS57に進む。評価値演算部6は、ステップS57で、先の演算に用いていた変数jを用いて式(2)のiをpeak+jとして演算し、式(2)の関係を満たすか否かを判別する。ステップS57の関係を満たさないときに、評価値演算部6は、S55、S52、S56、S57のループで、jを1ずつ増加させ、式(2)の関係が満たされるまで演算する。ステップS57の関係を満たしたときに、評価値演算部6は、ステップS58に進む。このように処理することで、peakよりも小さい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲と、peakよりも大きい側で式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲とのうちで、広い方の範囲に対応するjの値が求められる。評価値演算部6は、ステップS58で、peak−j+1〜peak+j−1を、除外する測定ポイントの範囲に設定して、除外ポイント抽出ステップS12を終了する。このように求めることで、少なくとも式(2)の関係を満たさない範囲が抽出される。また、このように求めても、例えば図9に示すように、グラフの形状は極値の前後で概ね対称形になるので、図10のフローチャートで求める範囲と大きく異ならない。
【0079】
また、除外ポイント抽出ステップS12を行う方法については、図10、図11のフローチャートの以外の方法で行ってもよい。例えば、評価値演算部6が、極値が式(2)の関係を満たさないときに極値の前後各100個(所定個数)の測定ポイントの範囲を除外するというように、極値の前後の一定の範囲を所定範囲として、式(1)の演算から除外するようにしてもよい。また、極値が式(2)の関係を満たすか満たさないかに関係なく、例えば極値の前後各100個(所定個数)の測定ポイントの中で、式(2)の関係を満たさない測定ポイントの範囲を所定範囲として除外するようにしてもよい。
【0080】
次に、図8のフローチャートに戻って説明すると、除外演算ステップS13では、評価値演算部6が、除外ポイント抽出ステップS12で抽出した測定ポイントを、演算対象から除外して式(1)を再演算して、再演算した残差2乗平均Eを評価値として算出する。例えば、iがpeak−A〜peak+Bの測定ポイントを演算対象から除外する場合、これら(A+B+1)個の測定ポイントが無いものとして、式(1)を演算する。演算対象の測定ポイントの数が減るので、式(1)中のnは、除外した測定ポイントの数を減算して、n−(B+A+1)となる。なお、残差2乗平均演算ステップS4、極値選択ステップS11、除外ポイント抽出ステップS12、及び除外演算ステップS13が本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0081】
次に、評価値表示ステップS6で、評価値演算部6が、除外演算ステップS13で再演算した残差2乗平均Eを評価値としてタッチパネル10に表示する。なお、図2のフローチャートの残差演算ステップS5で説明したように、評価値演算部6が残差2乗平均Eの平方根である残差Xを算出して、この残差Xを評価値として表示させてもよい。
【0082】
素子定数変更設定ステップS7で素子定数が変更されると、理論特性演算ステップS3に戻り、ステップS4〜S14を実行し、変更された素子定数で評価値を算出して、再表示する。
【0083】
このように、所定条件のときに極値付近の所定範囲の測定ポイントを除外して残差2乗平均を算出することで、評価値が、素子定数の誤差の大きさを一層的確に表した値となる。
【0084】
次に、本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法について、図12のフローチャートに沿って説明する。
【0085】
同図に示す解析方法は、評価値演算部6が、DUT90の周波数特性の各測定ポイントで測定された複素インピーダンスに基づき、各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、各測定ポイントにおける等価回路の複素インピーダンスが対応する上限値及び下限値の範囲内にあるか否かを判別し、その範囲内にある測定ポイントの数と全ての測定ポイントの数との比を評価値として演算する方法である。この場合、評価値演算部6が、各測定ポイントで測定されたDUT90の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で上限値及び下限値を演算することが好ましい。
【0086】
具体的に説明すると、同図のフローチャートでは、既に説明した測定ステップS1、推定ステップS2、理論特性演算ステップS3と同様にこの順で処理して、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性と等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を得る。
【0087】
次に、上下限値演算ステップS21では、評価値演算部6が、DUT90の周波数特性の測定ポイント1〜nで測定された各々の複素インピーダンスDiに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で、各測定ポイント1〜nにおける上限値及び下限値を算出する。許容上限割合及び許容下限割合は、予め不図示のメモリに記憶されている値であってもよいし、測定者によってタッチパネル10が操作されて任意の値に予め設定された値であってもよい。一例を示すと、許容上限割合が+Y%(例えば+2%)、許容下限割合が−Y%(例えば−2%)のように設定される。評価値演算部6は、各測定ポイントにおいて、上限値としてDUT90の複素インピーダンスDiに対する+Y%の値を算出し、下限値としてDUT90の複素インピーダンスDiに対する−Y%の値を算出する。上限割合と下限割合とが異なっていてもよい。
【0088】
なお、グラフをデシベル表示で表示しているような場合には、上限割合及び下限割合を+Y dB(例えば+3dB)、−Y dB(例えば−3dB)のようにデシベル値(比の対数)で設定するようにしてもよい。また、極大値に対する上限幅割合(例えばY%)の値(上限幅)を算出し、各測定ポイントの複素インピーダンスDiに上限幅を一律に加算して上限値とし、極値に対する下限幅割合(例えばY%)の値(下限幅)を算出し、各測定ポイントの複素インピーダンスDiから下限幅を一律に減算して下限値としてもよい。
【0089】
評価値演算部6は、算出した各測定ポイントにおける上限値及び下限値を、図13に拡大図で示すように、タッチパネル10にグラフで表示させてもよい。同図は、DUT90のインピーダンス周波数特性のグラフ31a、等価回路のグラフ31bと共に、上限値のグラフ35U、下限値のグラフ35Lを表示させた例である。グラフ31a,31b,35U,35Lは、例えばグラフ31aの一部を拡大して図の右上丸枠内に模式的に示すように、各々、測定ポイントにおける値を線で繋いで表示させている。
【0090】
次に、図12の比較ステップS22では、評価値演算部6が、各測定ポイントにおいて、下限値から上限値までの範囲内に等価回路の複素インピーダンスSiが入るか否かを比較して、その範囲内に入った測定ポイントの数hを算出する。図13では、等価回路の複素インピーダンスSiのグラフ31bが上限値35U及び下限値35Lの範囲内に入る領域を「範囲内」で示し、上限値及び下限値の範囲外となる領域を「範囲外」で示している。
【0091】
続いて、比率演算ステップS23では、評価値演算部6が、比較ステップS22で算出した測定ポイントの数hと、全ての測定ポイントの数nとの比(h/n)を評価値として算出する。その比は、分数で表してもよいし、小数で表してもよいし、百分率(パーセント)で表してもよい。この解析方法では、DUT90と等価回路との両特性が近似(一致)するほど、評価値が大きくなる。なお、上下限値演算ステップS21、比較ステップS22、及び比率演算ステップS23が本発明における評価値演算ステップに相当する。
【0092】
次に、評価値表示ステップS6で、評価値演算部6が、比率演算ステップS23で算出した評価値を、タッチパネル10に表示させる。素子定数変更設定ステップS7で素子定数が変更されたときには、ステップS3に戻り、前述の説明と同様に、変更された素子定数で評価値を再度演算して表示する。
【0093】
この解析方法では、評価値が、全体の内のどの程度の範囲で両特性がほぼ一致しているか示しているので、測定者が両特性の一致の度合いを直感的に理解することができる。
【0094】
なお、図2、図8、図12のフローチャートにおいて、素子定数を変更設定する機能の必要性が無い場合には、素子定数変更設定ステップS7を設けずに、評価値表示ステップS6で各フローチャートを終了するようにしてもよい。
【0095】
次に、本発明を適用するさらに他の等価回路解析方法について、図14のフローチャートに沿って説明する。この解析方法は、既に説明した評価値を用いて、複数の等価回路の中からDUT90を表すのに最も適した等価回路を選択する方法である。
【0096】
具体的に説明すると、同図の測定ステップS1でDUT90の複素インピーダンスの周波数特性を測定する。続いて、推定ステップS31で、推定部3が、測定ステップS1で測定された周波数特性に対して、例えば図4の等価回路a〜dに示すような予め設定されている複数の等価回路の各素子定数を各々推定する。
【0097】
次に、理論特性演算ステップS32では、理論特性演算部5が、推定ステップS31で推定した複数の等価回路の各素子定数を用いて、複数の等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を各々算出する。続いて、評価値演算ステップS33では、評価値演算部6が、複数の等価回路のそれぞれの評価値を算出する。評価値は、図2、図8、図12のフローチャートに示したいずれの方法で算出してもよい。
【0098】
最後に、等価回路選定ステップS34で、評価値演算部6が、最も評価値のよい等価回路を選定する。また、選定結果をタッチパネル10に表示する。
【0099】
図14のように処理することで、複数の等価回路の中から最もDUT90に適した等価回路を自動的に選定することができる。DUT90の周波数特性のグラフ、及び複数の等価回路の周波数特性のグラフをタッチパネル10に表示させるようにしてもよい。同図のように処理して等価回路を選定した後に、図2、図8、又は図12のフローチャートに示した解析方法をさらに実行して、素子定数をより誤差の無いものに測定者が調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1は等価回路解析装置、2は測定部、3は推定部、4は素子定数変更部、5は理論特性演算部、6は評価値演算部、10はタッチパネル、11はグラフ表示領域、12・12a・12b・12cは素子定数表示領域、14・14a・14b・14cは増減ボタン(設定操作用ボタン)、21a・21bはプローブ、25は実効抵抗Rsの周波数特性のグラフ(データ)、26はコンダクタンスGの周波数特性のグラフ(データ)、31aは測定部2の測定した複素インピーダンスの絶対値の周波数特性のグラフ、31bは理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの絶対値の周波数特性のグラフ、32aは測定部2の測定した複素インピーダンスの位相周波数特性のグラフ、32bは理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの位相周波数特性のグラフ、33は評価値表示、35Uは上限値のグラフ、35Lは下限値のグラフ、90は測定対象物、a・b・c・dは等価回路、Cはコンデンサの素子定数、Lはコイルの素子定数、Rは抵抗の素子定数、Rsは実効抵抗、Gはコンダクタンス、P・Mは極大値、Zはインピーダンス周波数特性、θは位相周波数特性、ω1,ω2は象限周波数、ωpは並列共振周波数、ωmは直列共振周波数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算部の算出した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算部とを備えることを特徴とする等価回路解析装置。
【請求項2】
前記評価値演算部が、下記の式(1)
【数1】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項3】
前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して、該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする請求項2に記載の等価回路解析装置。
【請求項4】
前記評価値演算部が、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数2】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする請求項3に記載の等価回路解析装置。
【請求項5】
前記評価値演算部が、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項6】
前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項7】
前記評価値演算部が、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする請求項6に記載の等価回路解析装置。
【請求項8】
前記推定部が、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算部が、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算部が、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項9】
表示部を備え、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を該表示部に表示させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項10】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップと、
該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算ステップと、
測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算ステップで演算した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算ステップとを含むことを特徴とする等価回路解析方法。
【請求項11】
前記評価値演算ステップで、下記の式(1)
【数3】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする請求項10に記載の等価回路解析方法。
【請求項12】
前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする請求項11に記載の等価回路解析方法。
【請求項13】
前記評価値演算ステップで、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数4】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする請求項12に記載の等価回路解析方法。
【請求項14】
前記評価値演算ステップで、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項15】
前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする請求項10に記載の等価回路解析方法。
【請求項16】
前記評価値演算ステップで、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする請求項15に記載の等価回路解析方法。
【請求項17】
前記推定ステップで、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項18】
前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を表示部に表示させることを特徴とする請求項10から17のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項1】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算部の算出した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算部とを備えることを特徴とする等価回路解析装置。
【請求項2】
前記評価値演算部が、下記の式(1)
【数1】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項3】
前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して、該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする請求項2に記載の等価回路解析装置。
【請求項4】
前記評価値演算部が、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数2】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする請求項3に記載の等価回路解析装置。
【請求項5】
前記評価値演算部が、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項6】
前記評価値演算部が、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項7】
前記評価値演算部が、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする請求項6に記載の等価回路解析装置。
【請求項8】
前記推定部が、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算部が、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算部が、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項9】
表示部を備え、前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を該表示部に表示させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項10】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定する測定ステップと、
該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する理論特性演算ステップと、
測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性と該理論特性演算ステップで演算した該等価回路の周波数特性との近似の度合いを示す評価値を算出する評価値演算ステップとを含むことを特徴とする等価回路解析方法。
【請求項11】
前記評価値演算ステップで、下記の式(1)
【数3】
(式中、iは前記測定対象物の周波数特性の測定ポイントの番号1,2・・・,nを示し、Diはi番目の該測定ポイントの測定対象物の複素インピーダンスを示し、Siはi番目の該測定ポイントの等価回路の複素インピーダンスを示し、Eは残差2乗平均を示す)
によって残差2乗平均を算出し、該残差2乗平均を前記評価値とすることを特徴とする請求項10に記載の等価回路解析方法。
【請求項12】
前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の中の極値を判別し、該極値の前記測定ポイントから所定範囲内の前記測定ポイントを、演算対象から除外して該式(1)の演算を行って、前記残差2乗平均を算出することを特徴とする請求項11に記載の等価回路解析方法。
【請求項13】
前記評価値演算ステップで、全ての前記測定ポイントで前記(1)式を演算し、前記極値の前記測定ポイントを中心として下記の式(2)
【数4】
の関係が少なくとも成り立たない範囲を判別し、その範囲を前記所定範囲とすることを特徴とする請求項12に記載の等価回路解析方法。
【請求項14】
前記評価値演算ステップで、前記残差2乗平均の平方根である残差を算出して、その残差を前記評価値とすることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項15】
前記評価値演算ステップで、前記測定対象物の周波数特性の各測定ポイントで測定された該複素インピーダンスに基づき、該各測定ポイントに対応させて上限値及び下限値を設定し、該上限値及び下限値の範囲内に前記等価回路の複素インピーダンスが入る該測定ポイントの数を算出し、その数と全ての測定ポイントの数との比を前記評価値として算出することを特徴とする請求項10に記載の等価回路解析方法。
【請求項16】
前記評価値演算ステップで、前記各測定ポイントで測定された前記測定対象物の複素インピーダンスに対し、予め設定された許容上限割合及び許容下限割合で前記上限値及び下限値を算出することを特徴とする請求項15に記載の等価回路解析方法。
【請求項17】
前記推定ステップで、複数の前記等価回路の各々の前記素子定数を推定し、理論特性演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の周波数特性を算出し、前記評価値演算ステップで、該複数の該等価回路の各々の前記評価値を算出して、該複数の等価回路の中から最も該評価値のよい該等価回路を選定することを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項18】
前記測定対象物の周波数特性のグラフ、前記等価回路の周波数特性のグラフ、及び前記評価値を表示部に表示させることを特徴とする請求項10から17のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−24793(P2013−24793A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161833(P2011−161833)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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