説明

等速ジョイント

【課題】締め付け前のブーツクランパをブーツの装着溝に配置することが容易で、かつ、ブーツの装着溝に配置した後には脱落を防止できるブーツクランパおよびブーツを備える等速ジョイントを提供する。
【解決手段】ブーツクランパ80は、環状に形成され、締め付けにより内接円直径Dcm1,Dcm2が小さくなるように変形するクランパ本体部81と、基端側がクランパ本体部81に結合し、締め付け前において自由端側がクランパ本体部81の径方向内側に位置し、かつ、自由端側がクランパ本体部81の内周面に向かって移動するように弾性変形可能な延伸部86とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ジョイントに関し、特に、等速ジョイントを構成する二部材間を被覆するブーツと当該ブーツを相手部材に締め付けるために用いるブーツクランパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブーツクランパの締め付け前の内径を、ブーツの装着溝底の外径より大きく、かつ、ブーツの端部の突起の外径より小さくすることが記載されている。これにより、ブーツクランパの締め付け前に、ブーツクランパをブーツの装着溝から脱落することを抑制するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−1979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブーツクランパをブーツの装着溝に配置するためには、ブーツの端部の突起を乗り越えなければならない。特に、樹脂製ブーツは変形しにくいため、ブーツクランパをブーツの装着溝に組み付けることが容易ではない。一方、ブーツクランパの内径をブーツの端部の突起の外径より大きくすると、ブーツクランパを締め付ける前に、ブーツクランパがブーツから脱落してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、締め付け前のブーツクランパをブーツの装着溝に配置することが容易で、かつ、ブーツの装着溝に配置した後には脱落を防止できるブーツクランパおよびブーツを備える等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)本発明の等速ジョイントは、二つの軸部材を連結するジョイント部と、前記二つの軸部材の間を被覆し、軸方向端部の外周面に周方向に延びる装着溝が形成され、前記装着溝の軸方向外側に端突起が形成されたブーツと、前記装着溝に配置され、締め付けることにより前記ブーツの軸方向端部を前記軸部材に押し付けるブーツクランパと、を備える等速ジョイントであって、前記ブーツクランパは、環状に形成され、締め付けにより内接円直径が小さくなるように変形するクランパ本体部と、基端側が前記クランパ本体部に結合し、締め付け前において自由端側が前記クランパ本体部の径方向内側に位置し、かつ、前記自由端側が前記クランパ本体部の内周面に向かって移動するように弾性変形可能な延伸部と、を備え、締め付け前の前記クランパ本体部の内接円直径をDcm1とし、締め付け後の前記クランパ本体部の内接円直径をDcm2とし、締め付け前の前記クランパ本体部および前記延伸部の両者により形成される内接円直径をDceとし、前記ブーツの装着溝の外径をDbgとし、前記ブーツの端突起の外接円直径をDbpとした場合に、式(1)(2)(3)の関係を満たす。
【0007】
【数1】

【0008】
【数2】

【0009】
【数3】

【0010】
(請求項2)また、前記延伸部の幅は、前記クランパ本体部の幅より狭く形成され、前記クランパ本体部の内周面には、前記ブーツクランパの締め付け後に前記延伸部を収容可能な収容溝が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)本発明によれば、式(3)の関係より、クランパ本体部と延伸部の内接円直径Dceをブーツの端突起の外接円直径Dbpより小さくしている。従って、延伸部がブーツの端突起に引っ掛かるように構成されている。そのため、ブーツクランパをブーツの装着溝に配置することができれば、その後は、締め付け前においてブーツクランパがブーツの装着溝から脱落することを防止できる。
【0012】
さらに、延伸部は、延伸部の自由端側を前記クランパ本体部の内周面に向かって移動させるように弾性変形可能である。そこで、ブーツクランパをブーツの装着溝に配置する前の段階において、延伸部を弾性変形させて、延伸部とクランパ本体部との両者により形成される内接円直径を拡大させる。ここで、延伸部は、締め付け前において自由端側がクランパ本体部の径方向内側に位置する。そのため、延伸部を上記のように弾性変形させた場合に、延伸部とクランパ本体部との両者により形成される内接円直径は、締め付け前におけるクランパ本体部の内接円直径Dcm1以下となる。そして、式(1)の関係より、締め付け前におけるクランパ本体部の内接円直径Dcm1は、ブーツの端突起の外接円直径Dbp以上である。従って、延伸部を上記のように弾性変形させることで、ブーツクランパはブーツの端突起を乗り越えることが可能となる。このとき、ブーツを変形させる必要はない。従って、樹脂製ブーツであっても、延伸部を弾性変形させることで、ブーツクランパはブーツの端突起を乗り越えることができる。このように、ブーツクランパを容易にブーツの装着溝に配置することができる。そして、ブーツクランパを締め付けた後においては、式(2)の関係より、ブーツクランパがブーツの装着溝に当接または押し付けることで、ブーツを相手部材に締め付けることができる。
【0013】
ここで、締め付け前に延伸部を径方向外側へ弾性変形させていない状態において、延伸部とクランパ本体部との両者により形成される内接円直径Dceと、ブーツの装着溝の外径Dbgとの関係は、式(4)のようにするとよい。つまり、延伸部とクランパ本体部との両者により形成される内接円直径Dceがブーツの装着溝の外径Dbgより小さくする。
【0014】
【数4】

【0015】
そうすると、ブーツクランパをブーツの装着溝に配置した状態において、延伸部はブーツの装着溝に対して径方向内側へ押し付ける力を発生する。この力により、ブーツクランパがブーツの装着溝から脱落することを確実に防止できる。
【0016】
(請求項2)本発明のように、ブーツクランパの締め付け後において、延伸部をクランパ本体部の収容溝に収容させることで、延伸部の内周面とクランパ本体部の内周面とを同一面上に配置することができる。つまり、延伸部とクランパ本体部との間に段差をなくすことができる。仮に、延伸部がクランパ本体部の内周面から径方向内側に突出していると、特に延伸部の角部がブーツの装着溝に対して集中応力を付与することになってしまう。しかし、上記の構成により、ブーツの装着溝が延伸部から集中応力を付与されることを防止できる。さらに、延伸部がクランパ本体部の収容溝に収容されることで、締め付け後において延伸部の動作を規制できる。このことからも、延伸部がブーツの装着溝に集中応力を付与することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】等速ジョイントの軸方向断面図である。
【図2】ブーツの軸方向断面図である。
【図3】大径クランパの軸方向から見た図である。
【図4】大径クランパを展開した状態の平面図である。
【図5】大径クランパを展開した状態の正面図である。
【図6】大径クランパの締め付け前において、大径クランパをブーツの大径クランプ部に配置した状態の軸方向から見た図である。ただし、ブーツのみ断面図として示す。
【図7】大径クランパの締め付け後における大径クランパとブーツの大径クランプ部とを示す軸方向から見た図である。ただし、ブーツのみ断面図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(等速ジョイントの構成)
本実施形態の等速ジョイントの全体構成について図1を参照して説明する。この等速ジョイントとして、ボール型等速ジョイントを例にあげて説明する。ただし、本発明の特徴部分は、ブーツとブーツクランパとの固定構造に係るため、固定式または摺動式のボール型等速ジョイントの他に、例えば摺動式トリポード型等速ジョイントにも適用可能である。
【0019】
ボール型等速ジョイント1(以下、単に「等速ジョイント」と称す)の構成について、図1を参照して説明する。この等速ジョイント1は、ジョイント部10と、ブーツ70と、大径クランパ80(本発明の「ブーツクランパ」)と、小径クランパ90とを備えて構成されている。ジョイント部10は、二つの軸部材としての外輪20とシャフト60とを連結する。具体的には、ジョイント部10は、複数の外輪ボール溝21を有する外輪20と、複数の内輪ボール溝31を有する内輪30と、外輪ボール溝21および内輪ボール溝31に転動可能に配置され外輪20と内輪30との間でトルクを伝達する複数のボール40と、外輪20と内輪30との間に配置され複数のボール40をそれぞれ収容する窓部51が形成される保持器50と、内輪30に連結されるシャフト60とを備える。
【0020】
また、外輪20の外周面のうち開口側には、ブーツ70の大径クランプ部72の内突起が嵌合する環状溝22が形成されている。また、シャフト60の外周面には、ブーツ70の小径クランプ部73の内突起が嵌合する環状溝61が形成されている。
【0021】
ブーツ70は、筒状に形成されており、外輪20の開口側とシャフト60の外周面との間を被覆する。このブーツ70は、樹脂製またはゴム製からなる。ブーツ70は、蛇腹部71と、大径クランプ部72と、小径クランプ部73とから構成される。蛇腹部71は、軸方向に伸縮自在であるとともに、ジョイント角の変化に追従するように変形する。
【0022】
大径クランプ部72は、外周面を後述する大径クランパ80により径方向内側へ押し付けられることにより、相手部材である外輪20の外周面との間でシールする。この大径クランプ部72の内周面には、内突起72aが全周に亘って形成されている。この内突起72aは、外輪20の環状溝22に嵌合する。また、大径クランプ部72の外周面には、大径クランパ80を配置する装着溝72bが周方向に延びて形成されている。そして、大径クランプ部72には、装着溝72bの軸方向外側に端突起72cが形成され、装着溝72bの軸方向の蛇腹部71側に蛇腹部側突起72dが形成されている。なお、端突起72cは、周方向全周に亘って径方向外側に突出するようにしてもよいし、周方向に断続的に径方向外側へ突出する部位を有するようにしてもよい。
【0023】
また、小径クランプ部73は、外周面を後述する小径クランパ90により径方向内側へ押し付けられることにより、相手部材であるシャフト60の外周面との間でシールする。この小径クランプ部73の内周面には、内突起73aが全周に亘って形成されている。この内突起73aは、シャフト60の環状溝61に嵌合する。また、小径クランプ部73の外周面には、小径クランパ90を配置する装着溝73bが周方向に延びて形成されている。そして、小径クランプ部73には、装着溝73bの軸方向外側に端突起73cが形成され、装着溝73bの軸方向の蛇腹部71側に蛇腹部側突起73dが形成されている。
【0024】
大径,小径クランパ80,90は、例えば、Ω形ブーツバンド、折返し式(ワンタッチ式)ブーツバンドなどが適用される。そして、大径クランパ80は、大径クランプ部72の装着溝72bに配置され、かしめなどにより縮径されることで、大径クランプ部72を締め付ける。それに伴って、大径クランプ部72を外輪20の外周面に押し付ける。このようにして、大径クランプ部72と外輪20との間でシール性能を発揮する。また、小径クランパ90は、小径クランプ部73の装着溝73bに配置され、かしめなどにより縮径されることで、小径クランプ部73を締め付ける。それに伴って、小径クランプ部73をシャフト60の外周面に押し付ける。このようにして、小径クランプ部73とシャフト60との間でシール性能を発揮する。
【0025】
(大径クランプ部の寸法)
次に、大径クランプ部72の詳細な寸法について図2を参照して説明する。大径クランプ部72の装着溝72bの外径は、Dbgであり、大径クランプ部72の端突起72cの外接円直径は、Dbpである。当然ではあるが、これらは、式(5)の関係からなる。
【0026】
【数5】

【0027】
(締め付け前における大径クランパの詳細構成)
次に、締め付け前における大径クランパ80の詳細構成について図3〜図5を参照して説明する。図3に示すように、大径クランパ80は、Ω形ブーツバンドを適用した場合を例にあげる。図3に示すように、クランパ本体部81と、延伸部86とから構成される。ここで、クランパ本体部81は、図4において太い均一幅の部分であり、延伸部86は、図4において細い均一幅の部分である。
【0028】
クランパ本体部81は、図4および図5に示すような同一幅の細長板材を巻回することで、図3に示すような円環状に形成されている。ここで、クランパ本体部81の長手方向中央付近に設けられている3個の係止突起81aが、クランパ本体部81の一端側に形成されている3個の係止穴81bに係止される。これらにより、クランパ本体部81は、円環状状態に維持される。また、クランパ本体部81は、係止突起81aと係止穴81bとの間に、かしめにより変形可能なΩ状突部81cを備える。このΩ状突部81cがかしめられることで、クランパ本体部81が縮径する。さらに、クランパ本体部81のうち係止突起81aとΩ状突起81cとの間に、円環状状態において内周側に凹状をなす収容溝81dが形成されている。この収容溝81dは、クランパ本体部81の幅方向中央に形成されている。つまり、収容溝81dの溝幅Wgは、クランパ本体部81の幅よりも狭くされている。ここで、図3に示すように、締め付け前において、クランパ本体部81の内接円直径は、Dcm1である。
【0029】
延伸部86は、クランパ本体部81の他端側に一体的に結合している。つまり、延伸部86の基端側は、クランパ本体部81の他端側(図4および図5の上段の左側)に結合されている。ここで、延伸部86は、クランパ本体部81と共に、同一板材を打抜きプレスにより成形されている。
【0030】
また、延伸部86の幅Weは、クランパ本体部81の収容溝81dの溝幅Wgより狭く形成されている。さらに、延伸部86の長手方向長さは、クランパ本体部81の収容溝81dの溝長さより短く形成されている。これは、大径クランパ80によりブーツ70の大径クランプ部72を締め付けた状態において、延伸部86が収容溝81dに完全に収容されるようにするためである。
【0031】
そして、大径クランパ80を円環状に巻回した状態で締め付け前において、図3に示すように、延伸部86の自由端側がクランパ本体部81の径方向内側に離れて位置するように成形されている。例えば、延伸部86の曲率半径をクランパ本体部81の曲率半径より小さくなるように巻回する。その他に、延伸部86の基端側を屈曲することで、延伸部86を直線的に維持しておくこともできる。また、延伸部86は、複数箇所にて屈曲するようにしてもよい。ここで、延伸部86の基端側は、クランパ本体部81に結合されているが、延伸部86の自由端側は、何ら規制されていない。そのため、延伸部86の自由端側は、クランパ本体部81の内周面に向かって移動するように弾性変形可能となる。
【0032】
このようにして成形された締め付け前において、クランパ本体部81と延伸部86の両者により形成される内接円(図3の二点鎖線にて示す)の直径は、Dceとなる。ここで、締め付け前におけるクランパ本体部81の内接円直径Dcm1と、上記内接円直径Dceとの関係は、式(6)のようになる。
【0033】
【数6】

【0034】
(大径クランパのブーツの大径クランプ部への組み付け)
次に、上述した大径クランパ80をブーツ70の大径クランプ部72へ組み付ける工程について、図6および図7を参照して説明する。組み付け工程を説明するに当たって、まず、組み付け前の状態におけるブーツの大径クランプ部と大径クランパの寸法関係について説明する。
【0035】
ブーツ70の大径クランプ部72の装着溝72bの外径Dbg、端突起72cの外接円直径Dbp、大径クランパ80のクランパ本体部81の内接円直径Dcm1、および、大径クランパ80の延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円の直径Dceとの関係は、式(7)の関係からなる。
【0036】
【数7】

【0037】
なお、内接円直径Dceは、少なくとも端突起72cの外接円直径Dbpより小さければよく、装着溝72bの外径Dbgより小さくする必要はない。ただし、式(7)のような関係とする方が良い。
【0038】
大径クランパ80をブーツ70の大径クランプ部72の装着溝72bに配置する。このとき、大径クランパ80は、ブーツ70の大径クランプ部72の端突起72cを乗り越える必要がある。そこで、大径クランパ80をブーツ70の大径クランプ部72の装着溝72bに配置する前の段階において、延伸部86を弾性変形させて、延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円直径Dceを拡大させる。
【0039】
ここで、延伸部86は、締め付け前において自由端側がクランパ本体部81の径方向内側に位置する。そのため、延伸部86を上記のように弾性変形させた場合に、延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円直径Dceは、締め付け前におけるクランパ本体部81の内接円直径Dcm1以下となる。そして、式(7)の関係より、締め付け前におけるクランパ本体部81の内接円直径Dcm1は、ブーツ70の大径クランプ部72の端突起72cの外接円直径Dbp以上である。従って、延伸部86を上記のように弾性変形させることで、延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円直径Dceは、端突起72cの外接円直径Dbp以上にすることができる。つまり、大径クランパ80はブーツ70の大径クランプ部72の端突起72cを乗り越えることが可能となる。このとき、ブーツ70を変形させる必要はない。
【0040】
そうすると、大径クランパ80が装着溝72bに配置される。このときの状態を図6に示す。ここで、式(7)に示すように、延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円の直径Dceは、端突起72cの外接円直径Dbpより小さい。そのため、延伸部86が端突起72cに対して軸方向に引っ掛かる。従って、大径クランパ80は、装着溝72bから脱落しない。
【0041】
さらに、式(7)に示すように、延伸部86を弾性変形させていない状態において、延伸部86とクランパ本体部81との両者により形成される内接円の直径Dceは、装着溝72bの外径Dbgより小さくしている。そのため、装着溝72bに大径クランパ80を配置した状態において、延伸部86が径方向外側に弾性変形した状態で、延伸部86は、装着溝72bの溝底に対して径方向内側へ押し付ける力が発生している。従って、大径クランパ80は、より確実に、装着溝72bから脱落しないようにできる。
【0042】
続いて、図7に示すように、クランパ本体部81のΩ状突起81cをかしめる。そうすると、クランパ本体部81が縮径し、クランパ本体部81の内接円直径がDcm2となる。かしめ後のクランパ本体部81の内接円直径Dcm2、ブーツ70の大径クランプ部72の装着溝72bの外径Dbg、および、端突起72cの外接円直径Dbpとの関係は、式(8)に示す関係となる。
【0043】
【数8】

【0044】
従って、締め付け後(かしめ後)におけるクランパ本体部81の内周面は、装着溝72bの溝底を径方向内側に締め付けている。このようにして、大径クランパ80により大径クランプ部72を外輪20に押し付けることができ、外輪20とブーツ70の大径クランプ部72との間をシールすることができる。
【0045】
ここで、図7に示すようにΩ状突起81cをかしめた後の状態において、延伸部86は、クランパ本体部81の収容溝81dに収容される。これにより、延伸部86の内周面とクランパ本体部81の内周面とを同一面上に配置することができる。つまり、延伸部86とクランパ本体部81との間に段差をなくすことができる。仮に、延伸部86がクランパ本体部81の内周面から径方向内側に突出していると、特に延伸部86の角部がブーツ70の装着溝72bに対して集中応力を付与することになってしまう。しかし、上記の構成により、ブーツ70の装着溝72bが延伸部86から集中応力を付与されることを防止できる。さらに、延伸部86がクランパ本体部81の収容溝81dに収容されることで、締め付け後において延伸部86の動作を規制できる。このことからも、延伸部86がブーツ70の装着溝72bに集中応力を付与することを防止できる。
【0046】
なお、上記実施形態において、延伸部86の幅Weをクランパ本体部81の幅より狭くした。これに限られず、延伸部86の幅Weをクランパ本体部81の幅と同一としてもよい。ただし、この場合には、延伸部86の幅Weをクランパ本体部81の幅より狭くすることによる効果は奏しない。また、上記においては、大径クランプ部72と大径クランパ80との関係について説明したが、小径クランプ部73と小径クランパ90についても同様の関係とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1:等速ジョイント、 10:ジョイント部、 20:外輪、 22:環状溝
30:内輪、 40:ボール、 50:保持器、 60:シャフト、 61:環状溝
70:ブーツ、 71:蛇腹部、 72:大径クランプ部、 72a:内突起
72b:装着溝、 72c:端突起、 72d:蛇腹部側突起
73:小径クランプ部、 73a:内突起、 73b:装着溝、 73c:端突起
73d:蛇腹部側突起
80,90:クランパ(ブーツクランパ)、 81:クランパ本体部
81a:係止突起、 81b:係止穴、 81c:Ω状突部、 81d:収容溝
86:延伸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの軸部材を連結するジョイント部と、
前記二つの軸部材の間を被覆し、軸方向端部の外周面に周方向に延びる装着溝が形成され、前記装着溝の軸方向外側に端突起が形成されたブーツと、
前記装着溝に配置され、締め付けることにより前記ブーツの軸方向端部を前記軸部材に押し付けるブーツクランパと、
を備える等速ジョイントであって、
前記ブーツクランパは、
環状に形成され、締め付けにより内接円直径が小さくなるように変形するクランパ本体部と、
基端側が前記クランパ本体部に結合し、締め付け前において自由端側が前記クランパ本体部の径方向内側に位置し、かつ、前記自由端側が前記クランパ本体部の内周面に向かって移動するように弾性変形可能な延伸部と、
を備え、
締め付け前の前記クランパ本体部の内接円直径をDcm1とし、締め付け後の前記クランパ本体部の内接円直径をDcm2とし、締め付け前の前記クランパ本体部および前記延伸部の両者により形成される内接円直径をDceとし、
前記ブーツの装着溝の外径をDbgとし、前記ブーツの端突起の外接円直径をDbpとした場合に、
式(1)(2)(3)の関係を満たす等速ジョイント。
【数1】

【数2】

【数3】

【請求項2】
請求項1において、
前記延伸部の幅は、前記クランパ本体部の幅より狭く形成され、
前記クランパ本体部の内周面には、前記ブーツクランパの締め付け後に前記延伸部を収容可能な収容溝が形成される等速ジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225360(P2012−225360A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91177(P2011−91177)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】