説明

筋肉の健康増進用オリーブ果汁抽出物

ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物は、運動により筋肉の損傷、筋肉の痛み、および筋肉痛を生ずる動物およびヒトの筋肉の健康増進に有効である。オリーブ抽出物は、運動後の乳酸の蓄積を減少させることができ、また、グルタチオン濃度を維持することによって作用し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の説明]
本発明は、筋肉の健康を増進させるためのオリーブ抽出物の使用に関し、特に、運動中の筋肉を保護し、運動中の損傷からの回復を促進し、かつ運動による筋肉痛を軽減するためのオリーブ抽出物の使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
運動中に被った損傷に起因する筋肉の健康状態を保持または回復するための組成物にヒドロキシチロソール(HT)を使用する記載がある。国際公開第2006/053872号パンフレット(2006年5月26日公開)を参照されたい。しかしながら、HTのソースが明記されておらず、記載されている作用は、一般に、HTの抗酸化能によるものである。その一方、HTの有益な特性のうちの少なくともいくつかは、その抗酸化能力によるものでないことがわかっている。
【0003】
ヒトおよび動物用の栄養製品の処方においては、天然材料を使用することが望ましい場合が多い。本発明によれば、抗酸化活性を直接には伴わないメカニズムにより、筋肉の健康を増進し、かつ運動により誘発された損傷から筋肉を保護することができる栄養製品の製造において、純天然オリーブ抽出物が代替HT源として使用可能であることがわかった。
【0004】
[発明の簡単な説明]
したがって、本発明は、筋肉の健康を増進するニュートラシューティカルを製造するためのオリーブ抽出物の使用に関し、特に、運動中の筋肉を保護し、運動中の損傷からの回復を促進し、かつ運動による筋肉痛を軽減するためのオリーブ抽出物の使用に関する。本発明の好ましい態様では、オリーブ抽出物はヒト用の食品として使用されるが、本発明は、また、動物、特に、レース用動物(犬、ラクダ、馬)や重い荷を引く動物(農耕馬、ソリ用犬など)などの激しい運動または仕事を行っている動物にも適用される。
【0005】
本発明によれば、オリーブ抽出物が、その抗酸化特性とは直接関係しない少なくとも2つの方法で、筋肉を保護し得ることがわかった。
【0006】
第1に、オリーブ抽出物は、運動中に血漿、身体および筋肉細胞に蓄積し得る乳酸の量を減少させる。これにより、当事者はより長時間の運動またはトレーニングを行うことが可能になり、また、運動後の痛みを最小限に抑えながら、より激しく運動することが可能になる。
【0007】
第2に、オリーブ抽出物は、運動と関係する筋肉中のグルタチオン濃度を増大させる。これは、オリーブ抽出物が、それ自体抗酸化剤として作用することに加えて、身体自体の抗酸化メカニズムを活性化させることを意味する。したがって、本発明の別の態様は、筋肉の健康を維持する身体自体の抗酸化能力を増進させるためのオリーブ抽出物の使用に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、筋肉の健康を維持し、かつ運動中の筋肉の損傷を防止するために、運動の前、途中または直後に、オリーブ抽出物を動物(ヒトを含む)に投与することによって、筋肉の健康を増進させようとするオリーブ抽出物の使用に関する。本発明は、また、運動後の筋肉痛、筋肉の痛みおよび筋肉の損傷を生ずるヒトを含む動物の筋肉の健康増進に有効なオリーブ抽出物を含むニュートラシューティカル組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例1の研究におけるタイムスケジュールである。
【図2】図2は血漿乳酸塩濃度(ベースラインからの変化(%))と時間の関係を示し、P<0.05(ヒドロキシチロソール対プラセボ)は8名の被験者からなる群に対するものである。
【図3】図3は、被験者8名からなる群の2つの群について、GSH(還元グルタチオン)濃度、GSSG(酸化グルタチオン(2量体))濃度およびGR(グルタチオンリダクターゼ)活性を比較(運動後の値を運動前の値と比較)したものである。
【図4A】図4は、運動後のGSH、GSSHおよびGRのベースラインに対する増加を示す(被験者8名からなる群の平均値±標準誤差)。
【図4B】図4は、運動後のGSH、GSSHおよびGRのベースラインに対する増加を示す(被験者8名からなる群の平均値±標準誤差)。
【図4C】図4は、運動後のGSH、GSSHおよびGRのベースラインに対する増加を示す(被験者8名からなる群の平均値±標準誤差)。
【0010】
[オリーブ抽出物は乳酸の蓄積を減少させる]
本発明によれば、オリーブ抽出物が運動中および運動直後の血漿、肉体および筋肉中の乳酸/乳酸塩濃度の蓄積を減少させることがわかった。休息状態から激しい運動に入ると、骨格筋細胞のエネルギー消費は100倍にも増加し得る。この大量のエネルギー要求は、筋肉細胞の有酸素容量を超えることがあり、その場合、必要な大部分のATPは嫌気的代謝によらざるを得なくなる。また、激しい運動によって、骨格筋疲労として知られる収縮機能の低下も引き起こされる。このように、嫌気的代謝からもたらされるものの1つは、収縮機能の低下である。
【0011】
グリコーゲンの嫌気的分解により、無機酸の細胞内蓄積が起きるが、中でも乳酸が量的に最も重要である。強酸である乳酸は、乳酸塩と水素イオンに解離し、乳酸塩自体が筋肉細胞のエネルギー源になる。したがって、筋肉の酸性化は、筋力の発生を低下させ、疲労および筋肉の痛みをもたらす。乳酸塩の生成の増加は、細胞アシドーシスと同時に起こるため、代謝性アシドーシスを誘発する細胞代謝条件の良い間接的マーカーとなる。
【0012】
乳酸塩および水素イオンが長時間の運動あるいは肉体労働の間に細胞内に蓄積すると、「共輸送体」系が筋肉細胞から水素イオンを排除する。それ故、筋肉中に水素イオンが蓄積するのが防止され、比較的好ましいpH条件が維持される。耐久力トレーニングは、この共輸送系能力を高める。
【0013】
水素輸送系が、運動中の筋肉細胞における酸の蓄積を防止する唯一の方法ではない。Na+/H+交換系もあり、これは基本的に水素イオンを筋肉細胞から排出させ、ナトリウムイオンを取り込んでそれらに置き換えるものである(乳酸塩はこのプロセスに関与しない)。水素輸送系と同様に、この交換もエネルギーを消費し、そして、このNa+/H+交換も、運動時は、極めて重要であると考えられる。
【0014】
激しい筋活動を行っている間、細胞内pHは約0.5pH単位低下し得る。このpHの低下を疲労状態における収縮機能不全に結びつけるために使用されてきた2つの主要な証拠の流れがある。第1は、ヒトの筋肉疲労に関する研究で、筋肉のpHの低下と力またはパワー生成の減退との間に良好な時間的相関関係があることが数多く報告されている。第2は、除膜骨格筋線維の研究で、酸性化によって等尺性張力および短縮速度がともに低下し得ることが報告されている(ハーカン・ウェスターブラッド(Hakan Westerblad)ら 2002 News Physiol Sci 17:17−21)。
【0015】
筋肉中に存在する水素イオンがどのようにしてプラスの方向の影響を受けるかについては、運動を除けば、今日まであまりわかっていない。メカニズムは殆どわかっていないが、乳酸が蓄積するにつれて骨格筋の細胞内pHが低下することはわかっている。pHの低下、または乳酸の存在は、筋肉の疲労として知覚される。この現象については、低pHまたは乳酸が存在すると、筋肉のエネルギー供給の維持に関与しているホスホフラクトキナーゼなどの酵素の働きが阻害されるからという説明が可能である。いくつかの論文では、低pHまたは乳酸の存在と、力を発現するなどの筋肉の能力の減退との間に関連があるとしている。
【0016】
驚いたことに、本発明によれば、オリーブ抽出物の形態でヒドロキシチロソールを摂取すると、血漿、身体および筋肉細胞中の乳酸含有量が低下することがわかった。
【0017】
オリーブ抽出物は、筋肉中の乳酸塩の高い含有率と関係する、筋肉疲労、筋肉の痛み、および運動後の筋肉痛を軽減する。したがって、本発明の一態様は、筋肉疲労を予防または軽減し、運動に伴う筋肉の痛みを予防または軽減し、かつ、筋肉疲労、筋肉の痛み、または運動後の筋肉痛を迅速に回復させるための、ヒドロキシチロソールを含有するオリーブ抽出物の使用である。
【0018】
乳酸の蓄積による運動後の筋肉疲労、筋肉の痛みおよび筋肉痛は、身体運動の後で発現する。ヒドロキシチロソールを含有するオリーブ抽出物を使用すれば、筋肉細胞中でのpH低下の影響が抑制されることによって、筋肉疲労が軽減されて筋肉の健康が向上し、その結果、筋肉の能力が高まる。後者の効果は、長時間の、身体的な、またはスポーツの運動時、好ましくは、その運動が0.5〜8時間、好ましくは0.5〜2時間行われる状況で特に顕著である。
【0019】
ヒドロキシチロソールを含有するオリーブ抽出物は、運動の前または途中で摂取することが好ましいことに留意されたい。ヒドロキシチロソールは経口で摂取することが好ましいが、チューインガムではない。
【0020】
1つの試行で、運動の10分〜1時間前にヒドロキシチロソールを服用したところ、運動中および運動後の血漿中の乳酸塩濃度が、プラセボを使用した対照実験と比較して、低下することがわかった。
【0021】
本発明の別の態様においては、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物が、筋痙攣の低減および予防、並びに筋痙攣からの迅速な回復のために使用される。この痙攣は、身体的ストレス(例えば運動)、精神的ストレス(例えば、仕事または試験時のストレス)、あるいは反復性過労障害(RSI)のようなストレス性の病気から生じ得る。
【0022】
RSIは、手根管症候群、滑液包炎、腱炎などの様々な筋骨格障害を指す。これは、また、職業性上肢障害、職業性オーバーユース障害、または蓄積外傷疾患を含む。これらの傷害は、例えば、コンピュータのキーボードを長時間使用する仕事に従事している従業員に起こり得る。これらのタイプの傷害に対して時々使用される別の用語には、反復性動作障害(RMI)、反復動作または持続性静的負荷による上下肢の機能不全を伴うオーバーユース症候群がある。
【0023】
有利なことに、本発明は、血漿、筋肉もしくは身体内の乳酸塩濃度の低下、および/あるいは、筋肉疲労、筋肉の痛み、筋肉痛もしくは筋痙攣の予防もしくは軽減、または運動後の筋肉疲労、筋肉の痛み、筋肉痛もしくは筋痙攣からの速やかな回復のためのニュートラシューティカル、好ましくは薬剤を製造するための、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物の使用を提供する。本発明のオリーブ抽出物は、エリートスポーツ選手のパフォーマンスの場合だけでなく、あまりトレーニングを受けていない人の運動またはパフォーマンス後にも有用である。
【0024】
[グルタチオン濃度]
本発明は、また、運動中および運動後に、血漿、身体および筋肉中に存在するグルタチオン濃度を増加させるための、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物の使用に関する。
【0025】
グルタチオンは、肝臓で主にシステインから生成されるトリペプチドアミノ酸である。これはフリーラジカルの増加を抑制することによって細胞の抗酸化剤として作用する。抗酸化剤は様々な方法で作用して、筋肉細胞中のフリーラジカルの影響を低減する。それらは、フリーラジカルによって引き起こされる損傷を低減することにより、そもそもそれらの生成を停止させることにより、または、それらと結合してそれらを酸化し、かつ、安定化させてそれらの有害な影響を中和することによって、作用する。抗酸化剤を摂取すれば、筋肉内のフリーラジカルに直接影響を及ぼすことができる。グルタチオンは、筋肉内のフリーラジカルと反応することがわかっている細胞の抗酸化剤であり、それは既に体内に存在している。それは、殆ど還元型のグルタチオン(GSH)として存在している。グルタチオンサイクルは、GSHパーオキシダーゼを触媒とする反応でH2O2(過酸化水素)を除去する。
2GSH+H2O2→GSSG(酸化型)+2H2O
この防御系が存在しないか、またはその機能が低下していると、筋肉細胞は酸化ストレスに対して脆弱になる。
【0026】
「普通の運動」、すなわち、エリートまたは職業スポーツ選手に見られるもの程に激しくない運動は、フリーラジカルによる損傷に抗する細胞防御機能の代償的増加を伴い得る。これらの防御機能には、抗酸化酵素活性の強化や防御的免疫反応の変化といったいくつかの機構が含まれる。これらの抗酸化酵素は体内で合成され、ある種のチオール、グルタチオンおよびユビキノンが含まれる。体内で合成することができない重要な抗酸化剤は、食事から摂らなければならない。これらには、ビタミンC、Eおよびベータカロテンが含まれる。横断的研究によれば、あまり運動しない個人に較べて、スポーツ選手は高い抗酸化酵素濃度を有していることが明らかとなっている。これが事実であれば、肉体的に活発な個人は実際にフリーラジカルによる損傷に対してより強い抵抗力を有していると言えよう。トレーニングの研究によっても、1週間のトレーニング距離と抗酸化容量との間にある種の関係があるらしいことが確認されている。個人がトレーニングを積めば積むほど、運動によって発生するフリーラジカルの増加に抗しやすくなる。ほんの時々激しく運動する「週末戦士」は、細胞の酸化損傷に対し、非常に高いリスクを持ち得る。栄養士が理解すべきキーメッセージは、激しい運度は蓄積している抗酸化ビタミンを消耗するおそれがあるので、十分な量のこれらのビタミンを提供するよう、食事の栄養素密度および質に配慮しなければならないというものである。通常のバランスのとれた食事が、十分な抗酸化剤濃度を提供するのに常に適していると見なすことはできない。
【0027】
本発明によれば、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物の摂取が、血漿、身体および筋肉組織のグルタチオン系に影響を及ぼすことがわかった。さらに驚いたことに、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物は、運動中および運動後、血漿、身体および筋肉組織のグルタチオン系を上方に制御し、グルタチオン濃度を増加させる。グルタチオン濃度の増加は、血漿および筋肉中の全抗酸化剤濃度の増加に繋がる。その可能な結果として、筋肉組織中に存在する過酸化物の量が減少し、このことによって筋肉の能力が増大する。
【0028】
本発明は、また、血漿、筋肉または身体中のグルタチオン濃度、および/または筋肉の能力を、ヒドロキシチロソールを使用しない場合のレベルと較べて増加させるニュートラシューティカル、好ましくは薬剤を製造するための、ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物の使用に関する。
【0029】
[処方]
本発明のヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物は、食品または飲料などの適切な形態で、「特殊栄養用途食品」として、栄養補助食品として、ニュートラシューティカルとして、あるいは飼料またはペットフードに加えて使用することもできる。
【0030】
ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物は、これら製品の通常の製造工程のいかなる段階で添加してもよい。適切な食品としては、例えば、シリアルバー、ケーキやクッキーなどのベーカリー品目、そしてまた、スープまたはスープ粉末などの液体食品が挙げられる。適切な飲料としては、非アルコール飲料およびアルコール飲料のほか、飲料水および液体食品に加える液体調製物も挙げられる。非アルコール飲料としては、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、ニアウォータードリンク、フルーツジュース、レモネード、茶、およびショットなどの濃縮飲料が好ましい。スポーツドリンクには、ハイポトニック、ハイパートニックまたはアイソトニックがある。スポーツドリンクは、液剤として、濃縮物として、または粉末(例えば水などの液体に溶解する)として使用することができる。「特殊栄養用途食品」の例としては、スポーツ食品、ダイエット食品、特殊調製粉乳および臨床食品(clinical foods)のカテゴリーが挙げられる。
【0031】
用語「栄養補助食品」は、ここでは、食事を補うことを意図した化合物または化合物の混合物を含有し、経口によって摂取する製品を意味する。これらの製品に含まれる化合物または化合物の混合物としては、ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、およびアミノ酸が挙げられる。栄養補助食品は、また、抽出物または濃縮物であってもよく、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、ジェルキャップ、液体、または粉末などの多くの形態が見られる。
【0032】
ニュートラシューティカルという用語は、ここでは、栄養分野および薬剤分野の両用途に有用であることを意味する。本発明のニュートラシューティカル組成物は、ヒトの体を含む動物の体に投与するのに適する形態であればいかなる形態であってもよいが、特に、経口投与のための従来の形態、例えば、食品または飼料(用の添加物/サプリメント)、食品または飼料プレミックス、錠剤、ピル、顆粒、糖衣錠、カプセル、並びに、粉末および錠剤などの発泡製剤などの固体形態、あるいは、例えば、飲料、ペーストおよび油性懸濁液のような溶液、エマルジョンまたは懸濁液などの液体形態を採ることができる。本発明のヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物を含む放出制御(遅延)製剤もまた本発明の一部を形成する。さらに、ある種の食習慣で不足する必須栄養素を十分に得るために、各種ビタミンおよびミネラルを含むサプリメントを、本発明のニュートラシューティカル組成物に加えることもできる。各種ビタミンおよびミネラルを含むサプリメントは、また、病気の予防や、生活様式からくる栄養の損失および欠乏の防御にも有用である。ニュートラシューティカルは、さらに、通常の添加剤、例えば、甘味料、香味料、砂糖、脂肪、エマルゲータ(emulgator)、保存料を含むことができる。栄養物には、また、例えば国際公開第02/45524号パンフレットに記載されている(加水分解)タンパク質などの他の活性成分を含むことができる。また、栄養物には、他の抗酸化剤、例えば、フラボノイド、カロテノイド、ユビキノン、ルチン、リポ酸、カタラーゼ、グルタチオン(GSH)、並びに、例えばビタミンCおよびEなどのビタミンまたはそれらの前駆体を含有させることができる。
【0033】
ヒドロキシチロソールは、オリーブ抽出物中に有効量、含有させることが有利である。効果を得るためには、一般に、1回の摂取で、オリーブ抽出物中に1mg〜約500mgのヒドロキシチロソールが含まれていることが有効である。オリーブ抽出物中に1mg〜250mgのヒドロキシチロソールが含まれていることが好ましく、オリーブ抽出物中に1mg〜100mgが使用されることがより一層好ましい。
【0034】
ヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物を含むニュートラシューティカルは、運動前、運動中、または運動後に摂取することができる。運動前に摂取する場合は、約20分前に摂取することが好ましい。運動後に摂取する場合には、運動後1時間以内に摂取することが好ましく、運動直後に摂取することがより好ましい。
【0035】
ヒトが摂取するのに適したニュートラシューティカル製品に加えて、ペットフードなどの動物用飼料にヒドロキシチロソールを使用することも可能である。その場合、それは、筋力のために使用される(レース用)馬または犬(すなわち、レース用犬またはソリ用犬)などの動物に特に適している。
【0036】
本発明をさらに詳しく説明するために、以下に実施例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
[被験者]
普通の運動プログラムに参加した経験を持たない8人の健康な男性ボランティアを本研究のために募集した。被験者の特性を下の表1に示す。全ての被験者には、書面によるインフォームドコンセントの提出の前に、予め、実験手順の性格と起こり得るリスクを説明した。この研究は、オランダのマーストリヒト・アカデミック病院の医療倫理委員会(Medical Ethical Review Board of the Academic Hospital Maastricht、the Netherlands)から承認を得ている。
【0038】
[試験前の食事と活動の標準化]
被験者に、試験前3日間と試験当日に、オリーブ、オリーブ油、オリーブ製品、フルーツジュース、野菜ジュース、ワイン、3杯以上の茶、2切れ以上の果物、給仕用スプーン3杯以上の野菜、チョコレート、および抗酸化剤を含有するサプリメントを摂らないよう指示した。ボランティアは、試験日の前の晩には、標準食(抗酸化剤が少ない)を摂った。被験者に、全試験期間を通して、食事の摂取量を記録するよう依頼した。抵抗運動の期間以外は、全期間を通して、どのような種類の激しい身体運動も控えるよう、全被験者に指示した。
【0039】
[試験]
全ての被験者は、2つの異なる場合について試験された。ランダム化クロスオーバーデザインにより、被験者はオリーブ抽出物かプラセボのいずれかを摂取した。飲み物は2回、試験の前の晩(午後8時)と運動の開始前30分に摂った(図1)。オリーブ抽出物(DMS Food Specialties、Delft、オランダ)は200mgのヒドロキシチロソールを含んだ。プラセボは、味と色が似たものとした。
【0040】
[抵抗運動]
本研究では、クープマン(Koopman)ら 2005 Eur J Appl Physiol 94:180−187に記載されているのと同じ運動手順を使用した。被験者は、一夜、絶食した状態で午前8時に研究所に到着した。被験者は、Stairmaster(Jimsa Benelux BV、ロッテルダム(Rotterdam)、オランダ)を使用して、5分間の一般的なウォームアップを実施した。その後、抵抗運動期間は脚を対象とし、水平レッグプレスマシン(Technogym BV、ロッテルダム、オランダ)で10回反復を8セット、レッグエクステンションマシン(Technogym)上で10回反復を8セット行った。両運動とも、被験者個人の1RMの75%で行い、セットの間に2分の休憩をとり、完了には全体で約40分を要した。全手順を完了できるよう試験中、全被験者に声をかけて励ました。運動期間中のエネルギー消費量は測定しなかった。類似の抵抗運動手順における間接的なカロリー測定で、他者は14〜27kJ・min−1のエネルギー消費率を報告している(バロー(Ballor)ら Am J Clin Nutr(1988)47:19−25、および、バ−ルソン(Burleson)ら Med Sci Sports Excerc(1998)30:518−522)。
【0041】
[血液採取]
運動開始前、運動中、および運動後2時間半までに血液を採取した(図1)。血液試料は、ヘパリンを含有するチューブに採取し冷蔵した。1000gおよび4℃で5分間、遠心分離を行った後、分析にかけるまで血漿のアリコートを−80℃で保管した。
【0042】
血液の分析は、損傷および炎症のマーカーと、抗酸化剤値を対象に行った。マロンジアルデヒドとタンパク質のカルボニルを損傷のマーカーとし、NF−κβ、IL−6、IL−10およびTNFα(LPSで血液を刺激した後の)を炎症のマーカーとした。次の数種類の抗酸化剤値を測定した:トロロックス当量抗酸化能(TEAC)、尿酸、ビタミンE、ビタミンC、グルタチオン(GSHおよびGSSG)、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンパーオキシダーゼおよびヒドロキシチロソール。さらに、血漿中の乳酸塩濃度を測定した。
【0043】
[筋生検]
運動開始の30分前および運動の30分後に筋生検用試料を採取した。第2の筋生検材料は対側の脚から採取した。筋生検材料は外側広筋の中央部分(膝蓋骨の15cm上)から、経皮的針生検法により、筋膜を貫通した深さ約3cmの所で採取した(ベルグストローム(Bergstrom)1975 Scand J Clin Lab Invest 35:518−522)。筋試料を注意深く調べ、目で見える筋以外のものを取り除き、液体窒素中で急速冷凍した。筋生検材料の一部をTissue−Tek(Sakura Finetek、Zoeterwoude、オランダ)に埋め込み、液体窒素で冷却したイソペンタン中で急速に冷凍した。分析にかけるまで筋生検材料を−80℃で保管した。
【0044】
筋生検では次のパラメータを測定した:グルタチオン(GSHおよびGSS)、尿酸、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンリダクターゼおよびグルタチオンSトランスフェラーゼ(ゴスカー(Gosker)ら 2005 Respir Med 99(1):118−125)。
【0045】
[尿採取]
試験日および試験日の翌日に朝の尿を採取した。8−イソプロスタンおよびクレアチニンを分析するまで、尿のアリコートを−80℃で冷凍した。
【0046】
[統計]
データは全て、平均値±標準誤差で示す。対応のあるt−検定により、予め摂取したオリーブ抽出物とプラセボの違いを比較した。統計的有意性はP<0.05に設定した。
【0047】
【表1】

【0048】
[実施例2]
[乳酸塩の蓄積]
乳酸塩は、筋肉中の嫌気性エネルギー生産により作られる。乳酸塩は、激しい運動中に、筋肉および血液中に蓄積し、運動のパフォーマンスを低下させる。我々の研究で、血漿中の乳酸塩濃度が運動中に相当に増加することがわかった(図2)。血漿中の乳酸塩濃度は、運動開始後それぞれ30分および60分に測定されているように、運動中に14.8倍に増加した。ヒドロキシチロソール摂取後は、血漿中の乳酸塩濃度は、運動中に12.8倍に増加したにすぎなかった(図2)。ヒドロキシチロソールは、運動中における乳酸塩の血漿中ピーク濃度を低下させた(図2)。
【0049】
[実施例3]
[筋肉中のグルタチオン系]
グルタチオンは、抗酸化ネットワークにおける重要な要素である。グルタチオンは、多くの場合、還元型(GSH)で存在する。グルタチオンリダクターゼ酵素は、酸化グルタチオン(GSSG)をGSHに変換することができる。
【0050】
ヒドロキシチロソールは、筋肉中のグルタチオン抗酸化系を亢進する。すなわちヒドロキシチロソールは、GSH濃度を増加させ、その結果GSH/GSSG比が高くなることによって、最適な筋肉機能を維持するのを助け、また、消耗する運動による損傷から筋肉を保護するのを助ける。
【0051】
運動後の筋肉中のGSH濃度は、プラセボを投与された被験者に較べて、ヒドロキシチロソールを投与された被験者で上昇した(図3および4)。筋肉中のGSSG濃度の上昇の程度は、ヒドロキシチロソールの群がプラセボの群と較べて小さかった(図3)。ヒドロキシチロソールは、運動後のグルタチオンリダクターゼ酵素の活性を増大させた(図3および4)。プラセボを摂取した後では、グルタチオンリダクターゼ活性はあまり増加しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸の蓄積により運動後の筋肉痛、筋肉の痛み、または筋肉の損傷を生ずるヒトを含む動物の筋肉の健康増進に有効なオリーブ抽出物を含むニュートラシューティカル組成物。
【請求項2】
ヒトが摂取するのに適したものである請求項1に記載のニュートラシューティカル組成物。
【請求項3】
動物が摂取するのに適したものである請求項1に記載のニュートラシューティカル組成物。
【請求項4】
オリーブ抽出物を含有するニュートラシューティカル組成物を投与することを含む、運動による筋肉中の乳酸の蓄積を減少させる方法。
【請求項5】
乳酸の蓄積により運動後の筋肉痛、筋肉の痛み、または筋肉の損傷を生ずるヒトを含む動物の筋肉の健康増進に有効なニュートラシューティカルの製造におけるオリーブ抽出物の使用。
【請求項6】
運動時に筋肉中のグルタチオン濃度が減少するヒトを含む動物の筋肉の健康増進に有効なオリーブ抽出物を含むニュートラシューティカル組成物。
【請求項7】
ヒトが摂取するのに適したものである請求項6に記載のニュートラシューティカル組成物。
【請求項8】
動物が摂取するのに適したものである請求項6に記載のニュートラシューティカル組成物。
【請求項9】
オリーブ抽出物を含有するニュートラシューティカル組成物を投与することを含む、運動による筋肉中のグルタチオンの蓄積を減少させる方法。
【請求項10】
運動により筋肉中のグルタチオン濃度が減少するヒトを含む動物の筋肉の健康増進に有効なニュートラシューティカルの製造におけるオリーブ抽出物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−505784(P2010−505784A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530807(P2009−530807)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008636
【国際公開番号】WO2008/040550
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】