説明

筐体構造

【課題】防水シートにて覆われた通気孔に水膜が張ることを防止する。
【解決手段】防水性と通気性を有する素材よりなる防水シート8にて通気孔15が覆われた機器において、通気孔15の周囲に複数個の板状の壁部16を設け、隣接する壁部16の間にスリット17を形成する。被水して通気孔15に溜まった水は、スリット17の毛細管現象により吸い出されて排出されるため、通気孔15に水膜は張らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される各種機器の筐体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室外に配置される車載機器の筐体には、筐体の内部空間と外部空間とを連通する通気孔が形成され、防水性と通気性を有する素材よりなる防水シートにて通気孔が覆われている。
【0003】
そして、通気孔が被水すると、表面張力により通気孔に水膜が張られてしまい、通気孔が機能しなくなる。そこで、通気孔に至る通気経路を迷路構造にして、通気孔が被水しないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−323351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の筐体構造では、迷路構造を形成する部位の容積が大きくなって機器が大型になってしまい、また、機器の取り付け姿勢の制約が大きく、さらに、通気孔まで水が浸入した場合にその水を排出することが困難であった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、防水シートにて覆われた通気孔に水膜が張ることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、内部空間(4)を形成するケース(1、2)に内部空間(4)と外部空間(5)とを連通させる通気孔(15)が形成され、防水性と通気性を有する素材よりなる防水シート(8)にて通気孔(15)が覆われた筐体構造において、ケース(1、2)における外部空間(5)側で且つ通気孔(15)の周囲に、通気孔(15)の貫通方向に沿って延びる複数個の板状の壁部(16)を備え、隣接する壁部(16)の間に形成されたスリット(17)が通気孔(15)に連通していることを特徴とする。
【0008】
これによると、通気孔(15)が被水して通気孔(15)に溜まった水は、スリット(17)の毛細管現象により吸い出されて外部空間(5)に排出されるため、通気孔(15)に水膜が張ることを防止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の筐体構造において、スリット(17)は、通気孔(15)の下方に位置していることを特徴とする。これによると、通気孔(15)に溜まった水を確実に外部空間(5)に排出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の筐体構造において、スリット(17)は、通気孔(15)の周方向に沿って複数個形成されていることを特徴とする。これによると、通気孔(15)の周方向に関する機器の取り付け姿勢の制約が緩和される。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る筐体構造を採用したスピーカーの斜視図である。
【図2】図1のスピーカーの正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のスピーカーにおけるカバーを外した状態の正面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図4のC部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図1〜6に基づいて説明する。なお、図2に示した天地方向は、スピーカーを車両に装着した状態での方向を示している。
【0014】
図1〜4に示すように、スピーカーは、樹脂製の第1ケース1、樹脂製の第2ケース2、および樹脂製のカバー3によって、筐体が構成されている。そして、このスピーカーは、車室外に配置され、より詳細には例えば車両のフロントバンパー内に配置される。
【0015】
第1ケース1は、略円筒状の筒部11と、筒部11内の空間を軸方向に2分割するようにして筒部11内に設けられた隔壁12とを備えている。筒部11の一端に、円板状の第2ケース2が溶着にて気密的に接合されている。筒部11の他端に、円板状のカバー3が嵌合されている。そして、第1ケース1と第2ケース2とによって内部空間としての第1空間4が形成され、第1ケース1とカバー3とによって外部空間としての第2空間5が形成されている。
【0016】
隔壁12には、第1空間4と第2空間5とを連通させる円形の貫通孔13が形成されている。そして、電気信号に基づいて音を発生させる発音体6が、貫通孔13を塞ぐようにして第1空間4内に配置されている。発音体6は、隔壁12に接着にて接合されている。第1ケース1には、発音体6と図示しない外部ハーネスとを接続する接続端子7が圧入されている。
【0017】
第2空間5は、筒部11にその周方向に沿って複数個設けられた放音孔14、およびカバー3に設けられた複数個の放音孔31を介して、外部に連通している。そして、発音体6が発した音が放音孔14、31を介して外部に放出されるようになっている。
【0018】
図4〜6に示すように、隔壁12には、第1空間4と第2空間5とを連通させる円形の通気孔15が形成されている。そして、防水性と通気性を有する素材よりなる薄膜状の防水シート8にて通気孔15が覆われている。防水シート8は、第1空間4内に配置されるとともに、隔壁12に溶着または接着にて接合されている。
【0019】
この防水シート8は通気性を有するため、温度変化により第1空間4の圧力が変化した際に第1空間4と第2空間5との間で空気が流通して、第1空間4と第2空間5との圧力差が減少ないしは解消される。これにより、第1空間4と第2空間5との圧力差により発音体6の振動が抑制されて音圧レベルが低下することが防止される。
【0020】
隔壁12には、第2空間5側で且つ通気孔15の周囲に、通気孔15の貫通方向(図5の紙面左右方向)に沿って延びる複数個の壁部16が形成されている。通気孔15の貫通方向に沿って見たときに、壁部16は円弧状であり、全ての壁部16全体としては円筒状になっている。
【0021】
隣接する壁部16の間には、通気孔15の貫通方向に沿って延びるスリット17が形成されている。これらのスリット17は、通気孔15の貫通方向一端側端部(すなわち、隔壁12側の端部)が、通気孔15に連通している。また、スリット17は、通気孔15の周方向に沿って複数個配置されている。そして、一部のスリット17は円形の通気孔15の中心よりも下方に位置しており、さらに、1つのスリット17は通気孔15の中心の真下に位置している。
【0022】
上記構成になるスピーカーは、通気孔15が被水して通気孔15に溜まった水が、スリット17の毛細管現象により吸い出されて第2空間5側に排出される。したがって、通気孔15に水膜が張ることを防止することができる。
【0023】
また、複数個のスリット17うち1つは通気孔15の中心の真下に位置しているため、通気孔15に溜まった水を確実に第2空間5側に排出することができる。
【0024】
さらに、スリット17は通気孔15の周方向に沿って複数個配置されているため、通気孔15の周方向に関するスピーカーの取り付け姿勢の制約が緩和される。
【0025】
なお、上記実施形態においては、壁部16は全体として円筒状になるように配置したが、壁部16は全体としてU字状になるように配置してもよい。また、壁部16は全体として円筒状になるように配置したが、壁部16は通気孔15の形状(例えば多角形、楕円など)に合わせて通気孔15の周囲に配置する必要がある。
【0026】
また、上記実施形態では、本発明を車載用のスピーカーに適用したが、本発明は、防水シートにて通気孔を覆った各種機器であって、被水の虞のあるものに適用することができる。具体的には、結露防止等のための通気孔を有する車載用の電磁継電器、ECU、ヘッドライト等の機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 第1ケース
2 第2ケース
4 第1空間
5 第2空間
8 防水シート
15 通気孔
16 壁部
17 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(4)を形成するケース(1、2)に内部空間(4)と外部空間(5)とを連通させる通気孔(15)が形成され、防水性と通気性を有する素材よりなる防水シート(8)にて前記通気孔(15)が覆われた筐体構造において、
前記ケース(1、2)における外部空間(5)側で且つ前記通気孔(15)の周囲に、前記通気孔(15)の貫通方向に沿って延びる複数個の板状の壁部(16)を備え、隣接する前記壁部(16)の間に形成されたスリット(17)が前記通気孔(15)に連通していることを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
前記スリット(17)は、前記通気孔(15)の下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の筐体構造。
【請求項3】
前記スリット(17)は、前記通気孔(15)の周方向に沿って複数個形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236520(P2012−236520A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107224(P2011−107224)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(390001812)アンデン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】