説明

筒型リニアモータ

【課題】筒型リニアモータ自体の移動量を検出することのできる筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】本発明に係る筒型リニアモータ1は、中空外筒11と、中空外筒11の内面の所定部分に配置される複数の中空コイル12と、中空コイル12内を移動可能に貫通する中空内筒13と、中空内筒13の内部の中空コイル12に対応する部分に設置される複数の磁石14と、中空外筒11の中空コイル12が設置されていない部分である非設置部111と中空内筒11の非設置部111に対応する穿孔部131とに移動量検出器15が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに係り、特に、筒型リニアモータ自体の移動量を検出する移動距離測定センサを内蔵した筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型コイルを選択的に励磁して、筒型コイル中空部に配置された軸を直線的に駆動することの可能な筒型リニアモータは、油圧シリンダあるいは空気シリンダと異なり別置の駆動力源が不要であるため、小型ステージ用アクチュエータとして広く使用されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
図4は従来の筒型リニアモータ30の断面図であって、中空外筒32の内壁に沿ってU相、V相、W相、U相・・・の円筒コイル31が配置される。
【0004】
筒型コイル31の中空部には中空内筒34が配置されるが、中空内筒34の内部には永久磁石33が複数枚積層されている。
【0005】
上記構成の筒型リニアモータ30は、筒型コイル31をU相、V相、W相、U相・・・の順に励磁すると中空外筒32は中空内筒34に対して一方の方向に移動し、円筒コイル31をW相、V相、U相、W相・・・の順に励磁すると中空外筒32は中空内筒34に対して反対方向に移動する。
【0006】
図5は従来の筒型リニアモータ30を適用したステージの構成図であって、中空内筒34の両端は基板39に対して固定された支持台35に固定されている。
【0007】
中空内筒34の両側には、中空内筒34と平行にガイド37が設置され、ガイド37の上部にはガイド37に対して移動可能にスライダ38が設置される。
【0008】
中空外筒32およびスライダ38の上面にはステージ36が固定されている。
【0009】
中空内筒34は基板39に固定されているので、中空外筒31が移動するとステージ36も移動することとなる。ステージ36の移動量は、ステージ36に取り付けられた図示しないリニアエンコーダ等の移動量測定器によって計測されていた。
【非特許文献1】http://www.tachibana.co.jp/it-galley/(例えば、シャフトモータカタログ)
【非特許文献2】http://www.ghc.co.jp/(例えば、シャフトモータカタログ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の筒型リニアモータは移動量検出器が取り付けられておらず筒型リニアモータ自体の移動量を測定することができなかったため、ステージの移動量を正確に制御することができないという課題があった。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、筒型リニアモータ自体の移動量を検出することのできる筒型リニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る筒型リニアモータは、中空外筒と、前記中空外筒の内面の所定部分に配置される複数の中空コイルと、前記中空コイル内を移動可能に貫通する中空内筒と、前記中空内筒の内部の前記中空コイルに対応する部分に設置される複数の磁石とを含む筒型リニアモータであって、前記中空外筒の前記中空コイルが設置されていない部分である非設置部と前記中空内筒の前記非設置部に対応する穿孔部とに移動量検出器が設置されることを特徴とする構成を有している。
【0013】
この構成により、筒型リニアモータ自体の移動量を測定することができることとなる。
【0014】
第2の発明に係る筒型リニアモータは、前記移動量検出器が、前記非設置部に前記中空内筒を挟んで取り付けられる発光部および受光部と、前記穿孔部に取り付けられる透明な目盛板とを含む構成を有している。
【0015】
この構成により、移動量を光透過式検出器により検出できることとなる。
【0016】
第3の発明に係る筒型リニアモータは、前記目盛板が、前記目盛板の全長にわたって所定の一定間隔で目盛が付された移動量測定用目盛と、前記目盛板の特定箇所に付された原点目盛とを含む構成を有している。
【0017】
この構成により、移動量だけでなく、筒型リニアモータの原点を検出できることとなる。
【0018】
第4の発明に係る筒型リニアモータは、前記中空内筒が、前記磁石を含む部分と前記穿孔部との境界位置に、前記中空外筒の内面で摺動する鍔を有する構成を有している。
【0019】
この構成により、潤滑油が移動量検出器に付着することを防止できることとなる。
【0020】
第5の発明に係る筒型リニアモータは、前記中空外筒に格納される前記移動量検出器用の信号処理部を含む構成を有している。
【0021】
この構成により、実移動量信号の雑音耐性を増加できることとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、移動量検出器を内蔵させることにより、筒型リニアモータ自体の移動量を正確に測定できるという効果を有する筒型リニアモータを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る筒型リニアモータの実施形態を、図面を用いて説明する。
【0024】
実施形態の筒型リニアモータの斜視断面図を図1に示す。
【0025】
即ち、本発明に係る筒型リニアモータ1は、中空外筒11と、中空外筒11の内面の所定部分に配置される複数の中空コイル12と、中空コイル12内を移動可能に貫通する中空内筒13と、中空内筒13の内部の中空コイル12に対応する部分に設置される複数の磁石14と、中空外筒11の中空コイル12が設置されていない部分である非設置部111と中空内筒11の非設置部111に対応する穿孔部131とに移動量検出器15が設置される。
【0026】
中空内筒13の穿孔部131は、中空内筒13の上部および下部が削除され、中央部が開口する平板状に形成されている。
【0027】
そして、移動量検出器15は、非設置部111に中空内筒13を挟んで取り付けられる発光部151および受光部152と、穿孔部131に取り付けられる透明な目盛板153とを含む。
【0028】
発光部151は、例えば発光ダイオードであり、発光部151が発光した光は目盛板153を透過して受光部152に到達する。受光部152は、例えばフォトダイオードである。
【0029】
目盛板153は、目盛板153の全長にわたって所定の一定間隔で目盛が付された移動量測定用目盛154と、目盛板153の特定箇所に付された原点目盛155とが目盛られている。そして、移動量測定用目盛154は目盛板153の中央部に、例えば0.5マイクロメートル間隔で形成され、原点目盛155は目盛板153の両側端部の特定箇所に形成される。
【0030】
従って、受光部152は、中央に移動量測定用目盛154を透過した光を受光する移動量測定用フォトダイオード156と、移動量測定用フォトダイオード156の両側に設置され、原点目盛155を透過した光を受光する第1の原点検出用フォトダイオード157および第2の原点検出用フォトダイオード158とを含む。
【0031】
図2は、本発明に係る筒型リニアモータ1および筒型リニアモータ1を駆動する駆動部の構成を示すブロック図であって、受光部152は信号処理部21に接続され、信号処理部21は原点検出信号およびアナログ信号である移動量を出力する。
【0032】
即ち、信号処理部21は、第1の原点検出用フォトダイオード157および第2の原点検出用フォトダイオード158から出力される信号に基づいて原点信号を生成する原点信号生成部211と、移動量測定用フォトダイオード156から出力される信号に基づいて実移動量および実移動方向を示す移動信号を生成する移動信号生成部212とを含む。
【0033】
移動信号生成部212は、二相パルスを出力するものであっても、実移動量をアナログ信号として出力するものであってもよいが、二相パルスを出力するものであるときは実移動量をアナログ信号に変換するパルスカウンタ等が必要となる。
【0034】
制御部22は、外部から与えられる目標移動量および信号処理部21から出力される実移動量を取り込むが、目標移動量と実移動量との偏差を算出する偏差算出部221と偏差に基づいて中空コイル12のU相、V相およびW相を所定の順序で励磁する駆動部222とを含む。
【0035】
中空コイル12が励磁されると、中空コイル12と中空内筒13に格納された磁石14との間に吸引力および反発力が作用し、中空外筒11と中空内筒13とが相対移動する。
【0036】
そして、目標移動量と実移動量とが一致すると、偏差は零となり、中空コイル12の励磁は停止する。
【0037】
本発明にかかる筒型リニアモータ1では中空コイル12の中空部を中空内筒13が移動するので、中空コイル12と中空内筒13との間の摩擦を低減するために潤滑油を充填しているが、移動量検出器15に潤滑油が付着すると検出精度が悪化するので、中空コイル12部の潤滑油が移動量検出器15に侵入することを防止することが必要である。
【0038】
そこで、本発明にかかる筒型リニアモータの中空内筒13には、磁石14を含む部分と穿孔部131との境界位置に中空外筒11の内面で摺動する鍔132を設けている。
【0039】
鍔132を設けることにより、移動量検出器15に潤滑油が侵入することが防止されるので、信号処理部21および発光部151用電源を中空外筒11の内部に組み込むことも可能となり、信号処理部21から出力される二相パルスあるいはアナログ信号の電流を増加して雑音耐性を増すことが可能となる。
【0040】
なお、上記の構成では、中空外筒11と中空内筒13との間の空隙は、例えばステージである被駆動体への筒型リニアモータ1の取り付けの際に調整することとなるため、取り付け精度を確保することが必要となる。
【0041】
そこで、本発明にかかる筒型リニアモータ1では、中空外筒11の両端に中空内筒13を支持する第1の軸受161および第2の軸受162を設け、筒型リニアモータ1の取り付けの簡略化を可能としている。
【0042】
図3は本発明にかかる筒型リニアモータ1の断面図であって、磁石14格納側の第1の軸受161をボールスプラインとしている。ここで、ボールスプラインは循環式のボールスプラインとすることが好ましい。
【0043】
なお、移動量検出器設置側の第2の軸受162は、中空内筒13の軸方向の移動を許容するものであればよい。
【0044】
さらに、本発明にかかる筒型リニアモータ1にあっては、中空内筒13に格納される磁石14の間に軟磁性板16を挿入することにより、磁力を強化している。
【0045】
上記の実施形態では移動量検出器が光学式であるものとしているが、移動量検出器として磁気スケール、差動トランス(LVDT)を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る筒型リニアモータは、筒型リニアモータ自体の移動量を検出することのできるという効果を有し、リニアアクチュエータ等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る筒型リニアモータの実施形態の斜視断面図
【図2】本発明に係る筒型リニアモータおよび筒型リニアモータを駆動する駆動部の構成を示すブロック図
【図3】本発明にかかる筒型リニアモータの断面図
【図4】従来の筒型リニアモータの断面図
【図5】従来の筒型リニアモータを適用したステージの構成図
【符号の説明】
【0048】
1…筒型リニアモータ
11…中空外筒
12…中空コイル
13…中空内筒
14…磁石
15…移動量検出器
132…鍔
151…発光部
152…受光部
153…目盛板
154…移動量測定用目盛
155…原点目盛
156…移動量測定用フォトダイオード
157…第1の原点検出用フォトダイオード
158…第2の原点検出用フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空外筒と、
前記中空外筒の内面の所定部分に配置される複数の中空コイルと、
前記中空コイル内を移動可能に貫通する中空内筒と、
前記中空内筒の内部の前記中空コイルに対応する部分に設置される複数の磁石とを含む筒型リニアモータであって、
前記中空外筒の前記中空コイルが設置されていない部分である非設置部と前記中空内筒の前記非設置部に対応する穿孔部とに移動量検出器が設置されることを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記移動量検出器が、前記非設置部に前記中空内筒を挟んで取り付けられる発光部および受光部と、前記穿孔部に取り付けられる透明な目盛板とを含む請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記目盛板が、
前記目盛板の全長にわたって所定の一定間隔で目盛が付された移動量測定用目盛と、
前記目盛板の特定箇所に付された原点目盛とを含む請求項2に記載の筒型リニアモータ。
【請求項4】
前記中空内筒が、
前記磁石を含む部分と前記穿孔部との境界位置に、前記中空外筒の内面で摺動する鍔を有する請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項5】
前記中空外筒に格納される前記移動量検出器用の信号処理部を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−141929(P2008−141929A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328336(P2006−328336)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】