説明

筒状フィルム成形体の製造装置、及び筒状包装体の自動充填包装機、並びに熱風印加ノズル

【課題】シール強度に優れるとともに重ね合わせ部及びその周辺の外観が良好な筒状フィルム成形体及び筒状包装体を簡易に製造し得る装置等を提供すること。
【解決手段】帯状の合成樹脂フィルムを筒状に湾曲させて該合成樹脂フィルムのフィルム両側縁が重ね合わせられた筒状体を形成する製筒手段と、前記筒状体の重ね合わせ部に熱風を吹き付け該重ね合わせ部を熱融着させて筒状フィルム成形体を成形する熱風シール手段と、を有する筒状フィルム成形体の製造装置において、凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である熱風印加ノズルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状フィルム成形体の製造装置、及び筒状包装体の自動充填包装機、並びに熱風印加ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒟蒻、漬物、ハム・ソーセージといった液状食品或いは練り状食品等の流動性を有する物品(被包装物)の包装方法として、長尺の合成樹脂フィルムの両側縁同士を重ね合わせて融着した筒状フィルム成形体内に、上記物品或いはその原料を充填し、該筒状フィルム成形体の両端部を封止する方法が広く用いられている。
【0003】
この種の筒状包装体の包装作業は、通常、筒状フィルム成形体の成形から封止まで連続工程で行われている。具体的には、帯状の合成樹脂フィルムを繰り出しながら両側縁同士を重ね合わせて融着させることにより筒状フィルム成形体を成形し、この筒状フィルム成形体中に被包装物を充填した後、所定の間隔で該筒状フィルム成形体を外部から押圧して内部の被包装物を押しのけ、その押しのけた部分を金属ワイヤーや熱シールによって封止し、筒状包装体毎にフィルムを切断する。
【0004】
上記の筒状フィルム成形体を成形するために用いられるシール(融着)方法としては、高周波シールや熱板シール等が広く利用されているが、近年、環境面への配慮及び生産性の向上の観点から、非接触でシール可能な、熱風シール方式を採用する種々の試みが為されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂帯状フィルムをフォルダで筒状となし、その両側縁の重ね合わされた部分にノズルから熱風を吹き付けて筒状フィルム成形体を成形する、自動充填包装機が開示されている。
【0006】
また、この種の自動充填包装機械としては、KAP500型(呉羽化学(株)製)やADP(登録商標)F型(旭化成ケミカルズ(株)製)等が上市されており、例えば、特許文献2及び3では、そのような自動充填包装機械が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭55−14171号公報
【特許文献2】特開2001−9993公報
【特許文献3】特開2000−37828公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の熱風シール方式の自動充填包装機においては、筒状体の重ね合わせ部(シール部)周辺の広い範囲にわたって熱風が印加されるので、重ね合わせ部周辺のフィルムに熱変形や熱収縮を生じさせ易かった。かかるフィルムの熱変形や熱収縮は、フィルム搬送時の脈動やシール部のばたつき等と相まって、シール幅の過度のばらつき、シール部の過度の荒れ(皺)、シール部周辺のピンホール等の外観不良を引き起こす。この外観不良の問題は、高収縮性の合成樹脂フィルムを適用する場合において、特に顕在化する。
【0009】
また、フィルムの熱変形や熱収縮は、熱風シール時の不均一な熱融着プロセスの進行を招き、非熱融着部分がシール部に多量に残存した状態での熱風シールが実行され得るで、シール強度の低下及びシール易剥離の問題をも生じさせる。このような機械強度の低下は、例えば、得られる筒状包装体をレトルト殺菌等の高温或いは高圧プロセスを施した場合に、レトルト殺菌時のパンクや雑菌の混入等の問題をも引き起こし得るので、歩留まりを低下させる要因となる。
【0010】
そのため、上記従来の自動充填包装機は、各種の素材選定や製造条件の幅(プロセス裕度)が乏しく、汎用性、生産性及び経済性に劣るものであり、早急な改善が求められていた。
【0011】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、シール強度に優れるとともに重ね合わせ部(シール部)及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体及び筒状包装体を製造可能であり、且つ、汎用性、生産性及び経済性に優れる、筒状フィルム成形体の製造装置及び筒状包装体の自動充填包装機、並びにこれらに使用可能な熱風印加ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、噴射する熱風の流れが制御された熱風印加ノズルを採用することにより、上記従来の種々の課題が解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下<1>〜<8>を提供する。
<1> 帯状の合成樹脂フィルムを筒状に湾曲させて該合成樹脂フィルムのフィルム両側縁が重ね合わせられた筒状体を形成する製筒手段と、前記筒状体の重ね合わせ部に熱風を吹き付け該重ね合わせ部を熱融着させて筒状フィルム成形体を成形する熱風シール手段と、を有する筒状フィルム成形体の製造装置であって、
前記熱風シール手段は、熱風印加ノズルを備え、
前記熱風印加ノズルは、凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
筒状フィルム成形体の製造装置。
【0014】
このように構成すると、ノズル開口から噴射される熱風は、スリットを構成するノズル本体によって集束され、換言すれば、シール部周辺への熱風の吹き付けがノズル本体によって遮蔽(規制)されるため、筒状体の重ね合わせ部(シール部)に局所的に吹き付けられる。また、熱風シール時においては、熱風の印加にともないノズル本体の温度が数百℃程度に上昇し得るが、シール部に近接する凸端面における肉厚△tが各々1mm以下に設定され、従来に比して、シール部に近接する凸端面の面積が小さく設定されているので、このノズル本体の昇温によるシール部及びシール部周辺への影響が抑制される。しかも、ノズル本体は、シール部に近接する凸状構造、すなわち凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上に設定され、謂わば、凸端面がシール部に向かって突出した凸状構造に形成され、ノズル本体とシール部周辺との間の空間が十分に確保された構成となっている。そのため、熱風シール時の随伴流の発生が促進され、シール部周辺の温度上昇が抑制されるとともに、シール部に吹き付けられた熱風がノズル本体とシール部周辺との間の空間から外方へと効率的に排出される。これらの作用が相まった結果、シール部へ所望の熱印加が行われるとともに、シール部周辺への過度の熱印加が緩和され、これにより、シール強度に優れるとともにシール部及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体が得られる。したがって、本構成の製造装置は、高収縮性の合成樹脂フィルムを簡便に適用可能であり、汎用性が向上され、生産性及び経済性が高められたものとなる。但し、作用は上記内容に限定されない。
【0015】
<2> 前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
上記<1>に記載の筒状フィルム成形体の製造装置。
【0016】
このように構成すると、熱風シール時の随伴流の発生が促進される。また、ノズル本体とシール部周辺との間の空間がより一層広げられるので、シール部に吹き付けられた熱風が外方へ効率的に排出され易くなる。したがって、シール部周辺における外観不良の発生が抑制される。
【0017】
<3> さらに、前記重ね合わせ部の裏面側から熱を印加する加熱手段を有する、
上記<1>又は<2>に記載の筒状フィルム成形体の製造装置。
【0018】
このように構成すると、従来に比して、熱風シール時における重ね合わせ部(シール部)の表面側及び裏面側の温度差が低減されるので、重ね合わせ部の厚み方向に対する温度勾配が緩和されて、重ね合わせ部が短時間で十分に加温される。本発明者らの知見によれば、従来においては、かかる温度差(温度勾配)に起因して不均一な熱融着プロセスが進行し、非熱融着部分がシール部に多量に残存した状態で熱風シールが実行されていたものと推定される。よって、本構成によれば、重ね合わせ部が十分に加温されて非熱融着部分の存在割合が減少されるので、均一な熱融着が促進される。また、従来においては、かかる熱風シール時の温度差(温度勾配)を考慮して熱風の温度を合成樹脂フィルムの融点よりも十分に高い温度に設定する必要があったが、本構成においては、内部ヒータの熱アシストにより、熱風印加ノズルから吹き付ける熱風の温度を低く設定することが可能となる。その結果、プロセス裕度が格別に高められ、処理速度の向上が図られるとともに、フィルムの熱変形や熱収縮を抑制することも可能となり、シール部及びシール部周辺の外観不良の発生が抑制される。特に、筒状フィルム成形体内に冷蔵食品や冷凍食品等の低温の物品を充填する場合、シール部の裏面側が冷却されることにより表面側と裏面側との温度差が大きくなり易いので、本構成は殊に有用である。
【0019】
<4> 帯状の合成樹脂フィルムを供給するフィルム供給手段と、
前記合成樹脂フィルムを筒状に湾曲させて該合成樹脂フィルムのフィルム両側縁が重ね合わせられた筒状体を形成する製筒手段と、
前記筒状体の重ね合わせ部に熱風を吹き付け該重ね合わせ部を熱融着させて筒状フィルム成形体を成形する熱風シール手段と、
前記筒状フィルム成形体中に被包装物を充填する充填手段と、
前記被包装物が充填された前記筒状フィルム成形体を所定の間隔で外部から押圧し、該前記押圧された領域のフィルムを封止切断して、両端部が封止された筒状包装体を複数作製する封止手段と、
を有する自動充填包装機であって、
前記熱風シール手段は、熱風印加ノズルを備え、
前記熱風印加ノズルは、凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
自動充填包装機。
<5> 前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
上記<4>に記載の自動充填包装機。
<6> さらに、前記重ね合わせ部の裏面側から熱を印加する加熱手段を有する、
上記<4>又は<5>に記載の自動充填包装機。
【0020】
これらの自動充填包装機は、上記<1>から<3>のいずか1項に記載の筒状フィルム成形体の製造装置を有効に適用可能なものであり、上記と同様に、シール強度に優れるとともにシール部及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体及び筒状包装体を簡便に製造可能であり、汎用性、生産性及び経済性に優れる。
【0021】
<7> 凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
熱風印加ノズル。
<8> 前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
上記<7>に記載の熱風印加ノズル。
【0022】
これらの熱風印加ノズルは、上記<1>から<3>のいずか1項に記載の筒状フィルム成形体の製造装置又は上記<4>から<6>のいずか1項に記載の自動充填包装機に有効に適用可能なものであり、シール部への所望の熱印加とシール部周辺への過度の熱印加の緩和とを、両立し得るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シール強度に優れるとともにシール部及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体及び筒状包装体を簡便に製造可能であり、歩留まりの向上、汎用性、生産性及び経済性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の自動充填包装機を模式的に示す断面図である。
【図2】第1実施形態の自動充填包装機の要部を模式的に示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の熱風印加ノズルを示す斜視図である。
【図4】図3の横断面図である。
【図5】第1実施形態における熱風シールの原理を示す断面図である。
【図6】他の実施形態の熱風印加ノズルを示す断面図である。
【図7】他の実施形態の熱風印加ノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
【0026】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態による自動充填包装機100の要部構造を模式的に示す縦断面図及び斜視図である。
自動充填包装機100は、フィルム供給手段11、充填手段21、製筒手段31、熱風シール手段41、封止手段51を備える。本実施形態においては、フィルム供給手段11、製筒手段31及び熱風シール手段41により、帯状の合成樹脂フィルム1から筒状体2が形成され、その重ね合わせ部を熱融着させることで筒状フィルム成形体3が成形される。
【0027】
フィルム供給手段11は、複数のローラ対11a,11b、送りローラ12a,12b及び駆動機構(図示せず)を有し、図示しない駆動機構及び送りローラ12a,12bの駆動に応じて、原反ロールから帯状の合成樹脂フィルム1を連続的に供給する。合成樹脂フィルム1の供給速度は、通常、10〜60m/min程度であり、使用する合成樹脂フィルム1の種類、厚さ、剛性、融点や、充填される被包装物の素材や粘度等に応じて適宜設定される。
【0028】
充填手段21は、中空円筒状の充填ノズル22を有し、その上端に、被包装物を充填ノズル22内に供給するフィードポンプ23が接続されている。充填手段21は、フィードポンプ23の駆動に応じて、被包装物を充填ノズル22内へ供給する。ここで適用される被包装物は、例えば、魚肉、畜肉、液卵、ゼリー、蒟蒻、漬物といった液状或いは練り状の食品や物品が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0029】
製筒手段31は、所定形状の金属片を略螺線状に巻いて形成された製筒フォルダ32を有する。製筒フォルダ32は、その内周径が充填ノズル22の外周径よりも大きく形成され、充填ノズル22と略同心円上に配置されている。そのため、充填ノズル22の外周壁と製筒フォルダ32の内周壁とは、所定距離、離間して配置された状態となっている。そして、原反ロールから供給される帯状の合成樹脂フィルム1は、製筒フォルダ32の上面開口から下面開口へと導かれ、製筒フォルダ32内を通過する際に、その螺線構造に追従して筒状に湾曲され、その両端縁1a,1bが重ね合わされた筒状体2となって、製筒フォルダ32の下面開口から図示下方へと移送される。
【0030】
熱風シール手段41は、熱風印加ノズル42及び内部ヒータ47を有する。熱風印加ノズル42及び内部ヒータ47は、製筒フォルダ32の下方において、筒状体2の重ね合わせ部2a(合成樹脂フィルム1の両端縁1a,1bが重ね合わされた部分)を介して対向配置され、図示しない冶具により固定されている。より具体的には、熱風印加ノズル42は、筒状体2の重ね合わせ部2aの表面から所定距離、離間した位置に配置され、内部ヒータ47は、筒状体2の重ね合わせ部2aの裏面と接する位置に配置されている。なお、熱風印加ノズル42は加圧調整機構及び温度調整機構を有し、内部ヒータ47は温度調整機構を有するが、ここでは図示を省略する。
【0031】
図3及び図4は、熱風印加ノズル42を示す斜視図及び横断面図である。
熱風印加ノズル42は、略柱状のステンレスを断面凸状に成形加工したノズル本体43を有し、その凸端面43aにはスリットSが形成され、このスリットS内にノズル開口43bが長手方向に沿って複数形成されている。ノズル開口43bは、ノズル本体43内に形成された内部空間Tを通じて加圧調整機構及び温度調整機構と接続され、所定の温度及び圧力の温風がノズル開口43bから噴射されるように構成されている。
【0032】
ノズル本体43は、その横断面において、凸端面43aが筒状体2の重ね合わせ部2aに向かって突出した凸状構造に形成され、これにより、ノズル本体43と筒状体2の重ね合わせ部2a周辺との間の空間Wが広げられた構成となっている(図5参照)。より具体的には、ノズル本体43は、その横断面において、凸端面43aに向かって肉薄となるように、凸端面43aの両側部が略一定の曲率Rで切り欠かれた絞込構造を有する(図4及び図5参照)。
【0033】
そして、ノズル本体43は、凸端面43aにおける肉厚△tが各々1mm以下の薄肉に形成されている。このように構成することで、ノズル本体43自身の昇温による筒状体2の重ね合わせ部2a及びその周辺への熱影響が抑制される。凸端面43aにおける肉厚△tは、各々0.7mm以下が好ましく、各々0.5mm以下がより好ましく、各々0.3mm以下がさらに好ましい。
【0034】
また、ノズル本体43は、凸端面43aの側部の切り欠き角度θが、30度以上の凸状構造を有する(図4及び図5参照)。このように構成することで、熱風シール時に随伴流の発生が促進され、これにより筒状体2の重ね合わせ部2a周辺の温度上昇が抑制されるとともに、筒状体2の重ね合わせ部2aに吹き付けられた熱風がノズル本体43と筒状体2の重ね合わせ部2a周辺との間の空間Wから外方へと効率的に排出される。かかる角度θは、40度以上が好ましく、より好ましくは50度以上である。なお、本明細書において、凸端面43aの側部の切り欠き角度θとは、凸端面43aを基準線X(水平線)とし、この基準線Xから深度2mmに位置する平行線Yとノズル本体43の最外方との接点Zとした際の、凸端面43aから見た接点Zの俯角を意味する(図4参照)。
【0035】
スリットSの幅Δwは、所望するシール線幅の熱風シールが実行されるように適宜設定されるが、0.3〜2mm程度が好ましく、0.5〜1.5mm程度がより好ましい。得られるシール部の外形寸法を小さくし美観を向上させる観点から、スリットSの幅Δwは小さいことが好ましい。スリットSの深さ△dは、所望する圧力印加が実行され且つ筒状体2の重ね合わせ部2a周辺への熱風の吹き付けが遮蔽(規制)されるように適宜設定されるが、0.5〜5mm程度が好ましく、1〜3mm程度がより好ましい。スリットSの長さΔlは、特に限定されず、所望するシール長さや所望する処理性能に応じて適宜設定することができる。
【0036】
ノズル開口43bの寸法及び個数は、特に制限されないが、通常、0.3〜1mmφ程度で5〜50個程度が好ましい。
【0037】
上記の筒状体2と熱風印加ノズル42との位置関係は、筒状体2の重ね合わせ部2a周辺への過度の熱印加を緩和して所望のシール性能を得るべく、熱風の圧力及び温度等に応じて適宜調整されるが、通常、筒状体2と熱風印加ノズル42の凸端面43aとの距離を0.5〜4mm程度にすることが好ましい。
【0038】
内部ヒータ47は、支持部材としての中空円筒状のステンレス製の支持リング48と発熱部材49とを有する(図2参照)。支持リング48の外周壁には、貫通孔48aが形成され、この貫通孔48a内に発熱部材49が配設されている。支持リング48の内径は、充填手段21の充填ノズル22の外径よりも大きく設定されており、図示しない冶具により、充填ノズル22の外周に、支持リング48が着脱自在に固定されている。
【0039】
発熱部材49は、略円柱状の発熱体49aと、金属切片49bと、封止剤49cとを有する(図5参照)。この発熱部材49は、金属切片49bの裏面側に発熱体49aを当接した状態で、封止剤49cにより接着固定したものである。そして、この発熱部材49は、発熱体49aの長手方向の両端に接続された非発熱体(図示せず)によって、支持リング48の貫通孔48aの長手方向において着脱自在に懸架されており、これにより、充填ノズル22の外周とは接触せず、且つ、筒状体2の内周面側から重ね合わせ部2a(の裏面)に接触する位置に、発熱部材49が配置されている(図5参照)。
【0040】
図5は、本実施形態における熱風シールの原理を示す断面図である。本実施形態では、重ね合わせ部2aの裏面側から内部ヒータ47による接触加熱を行いつつ、熱風印加ノズル42から重ね合わせ部2aの表面側へ熱風を吹き付けることにより、重ね合わせ部2aを熱融着する。上述した構成の熱風印加ノズル42を採用しているので、ノズル開口43bから噴射される熱風は、スリットSに規制されて重ね合わせ部2aに局所的に吹き付けられる(図中、実線矢印を参照)。このとき、随伴流(図中、破線矢印を参照)が発生し、重ね合わせ部2a周辺の温度上昇が抑制される。また、重ね合わせ部2aに吹き付けられた熱風は、ノズル本体43と重ね合わせ部2a周辺との間の空間Wから外方へと効率的に排出されるので、重ね合わせ部2a周辺の温度上昇が抑制される。さらに、凸端面43aにおける肉厚△tが各々1mm以下の薄肉に形成されているので、ノズル本体43の昇温による筒状体2の重ね合わせ部2a及びその周辺への熱影響も抑制される。そのため、重ね合わせ部2aへ所望の熱印加が行われるとともに、重ね合わせ部2aへの過度の熱印加が緩和される。その上さらに、筒状体2の重ね合わせ部2aの裏面側から内部ヒータ47で接触加熱しているので、重ね合わせ部2aが十分に加温され、非熱融着部分の存在割合が少ない状態で熱融着が実行される。そのため、均一な熱融着が促進される。これにともない、吹き付ける熱風の温度を低く設定することが可能となるので、プロセス裕度が格別に高められるとともに、重ね合わせ部2a周辺の外観不良の発生がより一層抑制される。しかも、内部ヒータ47の発熱部材49は、充填ノズル22と接触しない構成となっているので、筒状フィルム成形体3内に冷蔵食品や冷凍食品等の低温の物品を充填する場合においても、それらの物品への熱の印加が抑制される。したがって、熱の印加による内容物の風味変化や変色が抑制される。
【0041】
熱風の吹き付け圧力は、所望の熱風シールが実行されるべく、熱風印加ノズル42と重ね合わせ部2aとの距離、使用する合成樹脂フィルム1の種類や厚さ、剛性、融点等に応じて適宜設定され、特に限定されるものではないが、0.15〜0.5MPa程度であることが好ましく、0.2〜0.4MPaであることがより好ましい。なお、熱風の吹き付け圧力は、上述した図示しない加圧調整機構に設置された圧力センサにて計測され、また、その加圧調整機構により増減調整される。
【0042】
熱風の温度は、所望の熱風シールが実行されるべく、内部ヒータ47の使用有無及び設定温度、熱風印加ノズル42と重ね合わせ部2aとの距離、使用する合成樹脂フィルム1の種類や厚さ、剛性、融点、処理速度等に応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
以下、ASTM D−2732に準拠して測定される120℃の熱収縮率が縦方向(MD)/横方向(TD)=15〜30%/10〜20%程度の高い熱収縮性を有する合成樹脂フィルム1を用いる場合について例示する。内部ヒータ47を使用しない場合、熱風の温度は300〜420℃程度が必要とされる。これに対し、設定温度100〜150℃程度で内部ヒータ47を使用することで、比較的に低温でも良好な熱風シールを実現でき、230〜290℃程度の熱風の温度で、良好な熱風シールを実行することができる。熱風の温度が低いと、重ね合わせ部2a及びその周辺の外観不良の発生が格段に抑制されるとともに、フィルムの収縮緩和と多層フィルムの層破壊が抑制されて安定した熱風シールを実現できる点でメリットがある。また、内部ヒータ47を使用することで、重ね合わせ部2aの表面側及び裏面側の温度差が緩和されて重ね合わせ部が短時間で十分に加温されるので、熱風シールの処理時間の短縮が可能となる。なお、熱風の温度及び内部ヒータ47の温度は、上述した図示しない温度調整機構により増減調整され、該温度調整機構に設置された温度センサにて計測される。
【0043】
上記の通り、重ね合わせ部2aが熱風シールされることにより、略円筒状の筒状フィルム成形体3が成形される(図1参照)。この筒状フィルム成形体3内には、上述した充填ノズル22から被包装物が充填され、かくして被包装物が充填された筒状フィルム成形体3は、送りローラ12a,12bに挟持されて図示下方へと移送される。
【0044】
封止手段51は、絞りローラ52a,52b及び封止機構53を有する。封止手段51は、被包装物が充填された筒状フィルム成形体3を絞りローラ52a,52bにて所定の間隔で外部から押圧し、その押圧部分の被包装物を押しのけた後、封止機構53にてその押圧された領域の合成樹脂フィルム1を集束して封止する。封止機構53における封止処理は、合成樹脂フィルム1の集束部に超音波、高周波又は熱を印加して融着させる手法、合成樹脂フィルム1の集束部に合成樹脂製又は金属製の線材等をかしめる手法、及びこれらを併用する手法等、公知の手法が採用される。
【0045】
上記の封止処理により、両端部が封止された筒状包装体4が製造される。なお、両端部が封止された筒状包装体4を、封止処理と同時に又は後続する切断工程において、個々の筒状包装体4へと分割してもよい。
【0046】
なお、合成樹脂フィルム1の素材は、熱風の印加による熱融着が可能なものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、高密度又は低密度ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)及びこれらの共重合体等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等に代表されるポリアミド系樹脂、ブタジエンを加えたハイインパクトポリスチレン(HIPS)に代表されるポリスチレン系樹脂が挙げられる。これらのなかでも、熱風シール特性、環境への配慮及び耐熱性の観点から、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。なお、上記において共重合体とは、他の共重合体成分を含むものを包含し、他の共重合体成分には、所謂α−オレフィンが含まれる。
【0047】
合成樹脂フィルム1は、単層のフィルムであっても、複数のフィルムが積層された積層フィルムであってもよく、種々の機能性を付与可能である観点から、例えば、ベースフィルムの片面及び/又は両面にシーラントフィルムを積層させた積層フィルムが好適に用いられる。なお、上記の積層フィルムには、必須とされる各々の層の間に、接着層やガスバリア層等を介在したものが包含される。この種の積層フィルムは、例えば、2枚以上のフィルムを貼り合わせるドライラミネート法や、一方のフィルム上に他方の樹脂組成物を溶融押出して積層させる押出しラミネート法の他、樹脂組成物を共押出した後に冷却して積層を成形する共押出法等の公知の手法により製造可能である。
【0048】
レトルト用途に用いる場合には、合成樹脂フィルム1は、レトルト殺菌処理に耐え得るフィルム強度及び耐熱性を有することが要求されるので、例えば、ベースフィルムとしてのポリアミド系樹脂フィルム層の片面及び/又は両面に、シーラント層としてのポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂層を設けた積層フィルムが好適に用いられる。
【0049】
上述した自動充填包装機100においては、熱風の吹き付けが重ね合わせ部2aに局所的に収束されるとともに、重ね合わせ部2a周辺における熱が外部へ効果的に拡散されるので、重ね合わせ部2a周辺への過度の熱印加が緩和される。したがって、この自動充填包装機100は、シーラント層が高い熱収縮性を有する合成樹脂フィルム1(延伸処理されたシーラント層を有する積層フィルム、共押出共延伸積層フィルム)や、ASTM D−2732に準拠して測定される120℃の熱収縮率が縦方向(MD)/横方向(TD)=15〜30%/10〜20%程度の高い熱収縮性を有する合成樹脂フィルム1を用いても、シール強度に優れるとともに重ね合わせ部(シール部)及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体3及び筒状包装体4が簡易に作製可能であり、プロセス裕度が格別に高められる点において、従来に比して優位性を有する。これらの高い熱収縮性を有する合成樹脂フィルム1としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を高延伸した単層フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム層の片面及び/又は両面に高延伸したポリオレフィン系樹脂フィルム層をラミネートした積層フィルム、共押出法により成形されインフレーション法で共延伸された共押出共延伸積層フィルム(例えば、ポリアミド系樹脂フィルム層の片面及び/又は両面にポリオレフィン系樹脂フィルム層が設けられた積層フィルム)が挙げられる。
【0050】
一方、自動充填包装機100に熱収縮性のない又は熱収縮性に乏しい合成樹脂フィルム1を適用した場合にも、シール強度に優れるとともに重ね合わせ部(シール部)及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体3及び筒状包装体4が格別簡易に作製可能であり、プロセス裕度が格別に高められる点において、従来に比して優位性を有するものとなる。
【0051】
以上、上述した自動充填包装機100及び筒状フィルム成形体3の製造装置によれば、シール強度に優れるとともに重ね合わせ部2a及びその周辺の外観良好な筒状フィルム成形体3及び筒状包装体4が得られる。しかも、プロセス裕度の向上が図られ、汎用性、生産性及び経済性の向上が図られる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【0053】
例えば、図6及び図7に示すように、ノズル本体43の凸状構造を変更してもよい。これらの構成であっても、上述した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
まず、以下の方法により、高収縮性フィルムを作製した。まず、最終フィルムの層構成がポリプロピレン「融点:135℃、MFR:5、厚み:15μm」/ポリプロピレン系接着性樹脂[融点:140℃、MFR:8、厚み:5μm]/MXDナイロン[融点:240℃、厚み:5μm]/ポリプロピレン系接着性樹脂[融点:140℃、MFR:8、厚み:5μm]/ポリプロピレン[融点:135℃、MFR:5、厚み:15μm]の5層フィルム(45μm)を、口径200mmの環状5層ダイを用いて管状に溶融共押出しした。この管状体を過冷却後、インフレーション二軸延伸法を用いて縦方向(MD方向)に約4倍、横方向(TD方向)に約5倍に同時二軸延伸し、熱処理後、最終厚み約45μm、フィルム幅約1mの共押出共延伸積層(5層)フィルムを得た。得られた幅約1mの積層フィルムを巻き取り、そのフィルムを捲きほどきながら幅96mmに裁断し、再度巻き取ることで、帯状の合成樹脂フィルム1として使用する高収縮性フィルムの原反ロールを作製した。
【0056】
上記の高収縮性フィルムの120℃の熱収縮率を、ASTM D−2732−03に準拠し、長手方向に約20cmの長さで切断して得た試験片を用いて、以下の手順で測定したところ、縦方向(MD)/横方向(TD)=20%/17%であった。
[測定方法]
試験片を温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置保管した後、縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)の寸法を測定(MD方向で約20cm間隔、2ケ所を測定。MD方向を測定した位置でTD方向も2ケ所を測定。)し、それぞれの長さの平均値をL1MD及びL1TDとする。次に、試験片を温度120℃の熱水中で20分間熱処理した後、試験片の表面に付着した水分をろ紙で除去し、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置保管した後、縦方向(MD方向)と横方向(TD方向)の寸法(熱処理前に測定したそれぞれの部分)を測定し、それぞれの長さの平均値をL2MD及びL2TDとする。
そして、次式を用いて、MD方向及びTD方向の熱収縮率を算出する。
MD方向の熱収縮率(%) = 100×(L1MD−L2MD)/L1MD
TD方向の熱収縮率(%) = 100×(L1TD−L2TD)/L1TD
【0057】
次に、自動充填包装機100として、熱風シール方式の旭化成ケミカルズ(株)社製「ADP(登録商標)F型」)を用い、表1に記載の凸状構造を有する熱風印加ノズル42(図4参照)及び内部ヒータ47(図5参照)を設置して、以下の手順で、筒状包装体4の自動充填包装を実施した。
[自動充填包装]
上記の高収縮性フィルム(原反ロール)を、この自動充填包装機100に懸架し、図1に示すように、製筒フォルダ32によりフィルムの両側縁を重ね合わせて筒状体2を成形し、図5に示すように、重ね合わせ部2aの裏面側を設定温度120度の内部ヒータ47で接触加温するとともに、重ね合わせ部2aの表面側へ熱風印加ノズル42から熱風を吹き付けることで、封筒貼りに熱風シールして折幅40mmの筒状フィルム成形体3を成形した。引き続き、この筒状フィルム成形体3内に充填ノズル22から魚肉ソーセージ原料すり身を充填し、封止手段51にて両端を200mm間隔でアルミワイヤーにて結紮密封することにより、筒状包装体4(魚肉ソーセージ包装体)を得た。
以下に、自動充填包装機100の各種設定を示す。
フィルム速度 : 35m/min
ノズル全長 : 100mm
スリットSの幅Δw : 0.5mm
ノズル開口43b : 穴径0.5mm×30個
熱風温度 : 250℃ (ノズル内部)
熱風圧力 : 0.3MPa(ノズル内部)
凸端面43aにおける肉厚△t : 表1に記載
凸端面43aの側部の切り欠き角度θ : 表1に記載
【0058】
(実施例2〜5、比較例1〜2)
熱風印加ノズル42の凸状構造を表1に記載の条件に変更すること以外は、実施例1と同様に筒状包装体4を製造し、実施例1と同様の評価を行った。表1に、評価結果を示す。なお、比較例1で用いた熱風印加ノズル42は、従来品である。
【0059】
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜2の筒状包装体4を用い、以下に示す評価方法に基づいて、シール強度、シール部の平均表面粗さ、シール幅のばらつき、レトルトパンク率、ピンホール率、並びに総合評価を評価した。表1に、評価結果を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
各測定方法及び評価基準を、以下に記す。
(1)レトルトパンク率(加圧加熱殺菌後のシール部分の破袋率)
得られた5,000本の筒状包装体4を、加熱缶内ゲージ圧が0.25MPa、温度が120℃で、20分間の条件にて加圧加熱殺菌を行い、次に、加熱缶内圧力を維持したまま温度30℃まで加圧冷却し、その後、圧力を開放し加熱缶から筒状包装体4を取り出して最終包装体とした。得られた最終包装体において、シール部分が破袋した数を調査し、次式によりレトルトパンク率(破袋率)を算出した。評価基準を以下に示す。
レトルトパンク率(%)=(破袋本数/5,000本)×100
レトルトパンク率(%) 評価記号
0.04未満 ◎
0.04以上0.1未満 ○
0.1 以上0.2未満 △
0.2 以上 ×
【0062】
(2)シール強度(加圧加熱殺菌後のシール強度)
シール強度の測定は、ASTM F−88 FIG.1 LAP SEALに準拠し、以下の手順で行った。
まず、上記のレトルトパンクの評価において、破袋(レトルトパンク)が発生しなかったレトルト処理後の最終包装体から、各々、無作為に10本採取し、最終包装体のシール線の真向かい側にシール線と平行に切り込みを入れて開封し、被包装物である魚肉すり身を除去し、表面に付着した魚肉すり身等を水洗し、水分をろ紙で除去した後、温度20℃、相対湿度60%の条件下にて24時間放置保管した。その後、上記のようにして得られた開封済フィルム(包装フィルム)を、シール部と直交する方向に切断し、シール部が長手方向の略中央部に存在する、幅15mm、長さ60mmの短冊状の試験片(短冊の長手方向の略中央部に、その長手方向に直交してシール線が存在するもの)を作製した。
そして、テンシロン万能試験機(商品名:RTC−1210、株式会社 オリエンテック社製)を用い、フィルムチャック部に短冊状の試験片の長手方向の両端部を固定し、チャック間距離10mm、引張速度300mm/minの条件で、シール部のせん断シール強度(シール部の破断応力)を測定し(測定1回/1本)、10本の最終包装体のシール強度の平均値を算出した。評価基準を以下に示す。
シール強度(N/15mm幅) 評価記号
35以上 ◎
25以上35未満 ○
5以上25未満 △
5未満 ×
【0063】
(3)ピンホール率(シール部分のピンホール率)
上記のレトルトパンクの評価において、破袋(レトルトパンク)が発生しなかったレトルト処理後の最終包装体から、各々、無作為に1,000本採取し、メチレンブルー水溶液(100重量ppm)の中に1日間浸した。その後、メチレンブルー水溶液から最終包装体を取り出し、最終包装体のシール部の内容物の染色の有無を目視にて観察した(シール部にピンホール部分が存在すれば、その箇所からメチレンブルー水溶液が最終包装体の中に浸透するため内容物が青く染まる)。そして、シール部の内容物の染色が認められた本数を計測し、次式にしたがい、ピンホール率を算出した。評価基準を以下に示す。
シール部のピンホール率(%)=(染色した本数/1,000本)×100
シール部のピンホール率(%) 評価記号
0.1以下 ◎
0.1以上0.5未満 ○
0.5以上1.0未満 △
1.0以上 ×
【0064】
(4)シール幅のばらつき(シール線の幅ばらつき)
上記のレトルトパンクの評価において、破袋(レトルトパンク)が発生しなかったレトルト処理後の最終包装体から、各々、無作為に10本採取し、最終包装体の長手方向中央部のシール線(溶融部分)の幅を、ノギスで測定(mm:小数点2桁目を四捨五入)した。測定した最終包装体10本(測定1回/1本)の最大幅と最小幅との差をシール線の幅のばらつき(mm)とし、下記の評価基準にしたがって評価した。
シール線の幅ばらつき(mm) 評価記号
0.5未満 ◎
0.5以上1.0未満 ○
1.0以上2.0未満 △
2.0以上 ×
【0065】
(5)シール部の平均表面粗さ(中心面平均値=Sa)
上記のレトルトパンクの評価において、破袋(レトルトパンク)が発生しなかったレトルト処理後の最終包装体から、各々、無作為に10本採取し、最終包装体の両端結紮部から略中央部分のシール部(溶融部分)について、フィルムの流れ方向に、シール線の幅方向中央部の平均表面粗さ(中心面平均値=Sa)を測定した。この測定においては、ミツトヨ(株)製、表面粗さ測定機サーフテストSV3000S4・3D<商品名>を使用し、触針(ダイヤモンド製)先端半径=2μm、測定速度(触針の移動速度)=1mm/s、圧力=0.75mN、サンプリングピッチ(X方向)=10μm、プロファイルピッチ(Y方向)=10μm、測定面積(X方向×Y方向)=10mm×0.1mmの条件下、画像解析(評価曲面の設定は「粗さ曲線群」、フィルタの種類は「GAUSSIAN」、X方向低域カットオフ値は「4,000μm」とした。)により、最終包装体10本(測定1回/1本)のシール部の平均表面粗さ(μm:中心面平均値=Sa)を求め、下記の評価基準にしたがって評価した。
シール線の平均表面粗さ(μm) 評価記号
10未満 ◎
10以上50未満 ○
50以上100未満 △
100以上 ×
【0066】
(6)総合評価
以下の基準に基づき、総合評価を行った。
◎ ・・・ 各評価項目において、◎が合計3つ以上、 且つ、△及び×なし
○ ・・・ 各評価項目において、◎と○が合計3つ以上、且つ、×なし
△ ・・・ 各評価項目において、◎と○が合計2つ以下、且つ、×なし
× ・・・ 各評価項目において、×が1つ以上
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、シール強度に優れるとともに重ね合わせ部(シール部)及びシール部周辺の外観良好な筒状フィルム成形体及び筒状包装体を簡便に製造可能であり、しかも、汎用性、生産性及び経済性が高められるので、食品その他の各種包装用途において、広く且つ有効に利用可能である。また、本発明の熱風印加ノズルは、シール部への所望の熱印加とシール部周辺への過度の熱印加の緩和とを両立し得るものであるから、熱風シール用途のノズルとして、広く且つ有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…合成樹脂フィルム、1a,1b…両端縁、2…筒状体、2a…重ね合わせ部、3…筒状フィルム成形体、4…筒状包装体、11…フィルム供給手段、11a,11b…ローラ、12a,12b…送りローラ、21…充填手段、22…充填ノズル、23…フィードポンプ、31…製筒手段、32…製筒フォルダ、41…熱風シール手段、42…熱風印加ノズル、43…ノズル本体、43a…凸端面、43b…ノズル開口、S…スリット、T…内部空間、W…空間、θ…凸端面43aの側部の切り欠き角度、X…基準線、Y…基準線、Z…接点、47…内部ヒータ、48…支持リング、48a…貫通孔、49…発熱部材、49a…発熱体、49b…金属切片、49c…封止剤、51…封止手段、52a,52b…絞りローラ、53…封止機構、100…自動充填包装機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の合成樹脂フィルムを筒状に湾曲させて該合成樹脂フィルムのフィルム両側縁が重ね合わせられた筒状体を形成する製筒手段と、前記筒状体の重ね合わせ部に熱風を吹き付け該重ね合わせ部を熱融着させて筒状フィルム成形体を成形する熱風シール手段と、を有する筒状フィルム成形体の製造装置であって、
前記熱風シール手段は、熱風印加ノズルを備え、
前記熱風印加ノズルは、凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
筒状フィルム成形体の製造装置。
【請求項2】
前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
請求項1に記載の筒状フィルム成形体の製造装置。
【請求項3】
さらに、前記重ね合わせ部の裏面側から熱を印加する加熱手段を有する、
請求項1又は2に記載の筒状フィルム成形体の製造装置。
【請求項4】
帯状の合成樹脂フィルムを供給するフィルム供給手段と、
前記合成樹脂フィルムを筒状に湾曲させて該合成樹脂フィルムのフィルム両側縁が重ね合わせられた筒状体を形成する製筒手段と、
前記筒状体の重ね合わせ部に熱風を吹き付け該重ね合わせ部を熱融着させて筒状フィルム成形体を成形する熱風シール手段と、
前記筒状フィルム成形体中に被包装物を充填する充填手段と、
前記被包装物が充填された前記筒状フィルム成形体を所定の間隔で外部から押圧し、該前記押圧された領域のフィルムを封止切断して、両端部が封止された筒状包装体を複数作製する封止手段と、
を有する自動充填包装機であって、
前記熱風シール手段は、熱風印加ノズルを備え、
前記熱風印加ノズルは、凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
自動充填包装機。
【請求項5】
前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
請求項4に記載の自動充填包装機。
【請求項6】
さらに、前記重ね合わせ部の裏面側から熱を印加する加熱手段を有する、
請求項4又は5に記載の自動充填包装機。
【請求項7】
凸状に形成されたノズル本体と、該ノズル本体の凸端面に形成されたスリットと、該スリット内に形成されたノズル開口とを有し、
前記ノズル本体は、前記凸端面における肉厚△tが各々1mm以下、且つ、前記凸端面の側部の切り欠き角度θが30度以上、である凸状構造を有する、
熱風印加ノズル。
【請求項8】
前記ノズル本体は、前記凸端面に向かって肉薄となるように切り欠かれた絞込構造を有する、
請求項7に記載の熱風印加ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−202200(P2010−202200A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46492(P2009−46492)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】