管ライニング材及び管路ライニング工法
【課題】屈曲した箇所が多数ある管路でも容易にスムーズに挿入できる管ライニング材、及びこれを用いた管路ライニング工法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状の管ライニング材1は、挟持スチールベルト6、6’により挟持され、管ライニング材の全体に弾力性と剛性が付与される。管ライニング材1の先端には、管ライニング材を先導するための先導スチールベルト10が固定され、この先導スチールベルト10に連結された引き込みスチールベルト25により管ライニング材1が管路30内に引き込まれる。また、引き込みを補助する補助スチールベルト26が管ライニング材1に取り付けられる。管ライニング材1は、スチールベルト6、6’、25、26により引き込まれるので、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも、管ライニング材の挿入を容易にスムーズに行うことができる。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状の管ライニング材1は、挟持スチールベルト6、6’により挟持され、管ライニング材の全体に弾力性と剛性が付与される。管ライニング材1の先端には、管ライニング材を先導するための先導スチールベルト10が固定され、この先導スチールベルト10に連結された引き込みスチールベルト25により管ライニング材1が管路30内に引き込まれる。また、引き込みを補助する補助スチールベルト26が管ライニング材1に取り付けられる。管ライニング材1は、スチールベルト6、6’、25、26により引き込まれるので、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも、管ライニング材の挿入を容易にスムーズに行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した管路を補修するために管路をライニングするために用いられる管ライニング材、及びこれを用いた管路ライニング工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された通信管、ガス管、下水道管、水道管、電気管、農業用水路などの管路が老朽化した場合に、管路の管を掘り出すことなく補修するための管路ライニング工法が実施されている。この工法では、熱硬化性樹脂を含浸させた管状のライニング材が管路に反転或いは引き込みにより挿入され、空気圧などで膨張させて管路の管内周面に圧接させた状態に保持される。この状態で管ライニング材が加熱されて管ライニング材の熱硬化性樹脂が硬化され管路がライニングされる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
管ライニング材を管路に挿入する方法には、空気圧により管ライニング材の表裏を反転させながら挿入する反転方法と、管ライニング材を前もって高気密チューブの中に反転挿入したあと、管路に引き込んで挿入する引込方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−123547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の管ライニング材を管路に挿入する場合、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所がある管路に挿入するのは非常に困難であった。つまり、反転しながら押し込む方法では直角ないしそれに近い屈曲部分で反転しなくなってしまう。また、引き込む方法では屈曲部の箇所が増えると管ライニング材の接触抵抗が増加し、重くなり引き込めなくなる。また無理をして引き込みを続けると、管ライニング材が伸びたり損傷したりして、管ライニング材の品質を著しく劣化させることになる。
【0006】
そこで本発明の課題は、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも容易にスムーズに挿入することができる管ライニング材、及びこれを用いた管路ライニング工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
管路に引き込まれて管路の内壁を補修するための硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材であって、
弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、
前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材と、
前記先導用帯状部材に取り外し可能に連結される引き込み用帯状部材と、を
取り付けてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、
硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材を管路に引き込んで管路の内壁をライニングする管路ライニング工法であって、
管ライニング材に、弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材とを取り付けたベルト付き管ライニング材を、管路の挿入端に用意し、
管路の引き込み端から引き込み用帯状部材を管路の挿入端に導いて、引き込み用帯状部材を先導用帯状部材に連結し、
引き込み用帯状部材を管路の引き込み端から引き込んでベルト付き管ライニング材を管路内に挿入し、
管路内に管ライニング材を残して挟持用帯状部材、先導用帯状部材、引き込み用帯状部材を取り除き、
管ライニング材を内側から加圧して膨張させ、管路の内壁に圧接させた状態で管ライニング材の硬化性樹脂を硬化させて管路をライニングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管ライニング材によれば、弾力性と剛性のある帯状部材により管ライニング材が先導されて、管路に引き込まれるので、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも、管ライニング材の挿入を容易にスムーズに行うことができ、無理な挿入による管ライニング材の伸びや損傷を防止することができると共に、ライニング工事にかかる時間を顕著に短縮することができる。
【0010】
また、管ライニング材の側面に弾力性と剛性のある帯状部材を取り付けたことにより、管ライニング材挿入時に帯状部材によって管ライニング材を保護できることからもライニングの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】管路に挿入されて管路を補修するための管ライニング材を、端部を断面にして示した斜視図である。
【図2】図1の管ライニング材を高気密チューブに反転挿入してなる引込用管ライニング材の斜視図である。
【図3】図2の管ライニング材をH字形に折り畳み、テープで縛った状態を示す断面図である。
【図4】さらにスチールベルトを管ライニング材に取り付けてなるベルト付き管ライニング材を示す断面図である。
【図5】ベルト付き管ライニング材のスチールベルトを取り付けた側の側面図である。
【図6】(a)はベルト付き管ライニング材の全体を示す側面図、(b)はその上面図である。
【図7】(a)は図6のB−B線に沿った断面図、(b)は図6のC−C線に沿った断面図である。
【図8】ベルト付き管ライニング材を管路に引き込むために引き込みベルトを送り込む状態を示す説明図である。
【図9】引き込みベルトによりベルト付き管ライニング材を管路に引き込む状態を示す説明図である。
【図10】ベルト付き管ライニング材に引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトを取り付けた管ライニング材の上面図である。
【図11】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトを管路に送り込む状態を示した説明図である。
【図12】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトをベルト付き管ライニング材に取り付ける状態を示した説明図である。
【図13】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトによりベルト付き管ライニング材を管路に引き込む状態を示した説明図である。
【図14】ベルト付き管ライニング材の引き込みが完了した状態を示す説明図である。
【図15】他端が開放している管ライニング材を膨張させて管路をライニングする状態を示す説明図である。
【図16】他端が閉じている管ライニング材を膨張させて管路をライニングする状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の実施例を説明する。ここでは、下水道、通信管、ガス管、電気管、農業用水路などで屈曲した箇所が多い管路をライニングする場合について説明する。
【実施例】
【0013】
図1は管路補修用の管ライニング材を示している。管ライニング材1’は、可撓性の管状樹脂吸収材3の外周面をポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルム3aでコーティング(熱溶着)した柔軟な管状ライニング材である。
【0014】
管状樹脂吸収材3は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなり、管状樹脂吸収材3には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状の未硬化の熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂が含浸される。
【0015】
図2は引込用管ライニング材1を示し、図1の管ライニング材1’を、プラスチックフィルム3aと同様な材質の高気密チューブ2内に反転挿入することにより作製される。
【0016】
本実施例では、図3〜図7に示したように、管ライニング材1を幅が小さくなるように折り畳んでテープ4などで縛り、それに管ライニング材1を挟持する挟持スチールベルト6、6’を取り外し可能に取り付けてなるスチールベルト付き管ライニング材(以下、ベルト付き管ライニング材と略す)9を作製し、これを管路に挿入して管路を補修する。
【0017】
挟持スチールベルト6、6’は、弾力性及び剛性を有する金属性の帯状部材で、管ライニング材1に弾力性及び剛性を付与して管ライニング材1の腰を強くするとともに、管ライニング材1を部分的にカバーして保護するためのものであり、スチールの薄板から構成される。弾力性及び剛性を有する帯状部材は、スチールのワイヤーを帯状に束ねてゴムなどで被覆して構成してもよい。
【0018】
ベルト付き管ライニング材9は、以下のようにして作製される。まず、図2で矢印で示したように管ライニング材1を両側から押し込み、図3に示すように、管ライニング材1を断面がH字形になるように折り畳む。続いて、図3〜図6に示すように、セロハンテープなどのテープ4を管ライニング材1の長さ方向に例えば数十センチ程度の適当な間隔毎に管ライニング材1に巻き付ける。テープ4の代わりに紐などの部材で縛っても良い。
【0019】
なお、管ライニング材1を折り畳む形はH字形に限らず、管ライニング材1の幅が小さくなり、後で管ライニング材1を管路に挿入した後に加圧して円筒形に膨張させるときに拡がり易い形であればよい。
【0020】
次に、図4〜図6に示すように、ベルト通し5、5’を折り畳まれた管ライニング材1の両側面に熱溶着又は接着剤で所定の間隔で取り付ける。ベルト通し5、5’は、管路への管ライニング材挿入時に挟持スチールベルト6、6’が管ライニング材1から大きくずれないように多少の余裕を持ってガイドするものであり、ポリエチレンなどのフィルムから帯状に形成される。
【0021】
なお、このベルト通し5、5’は、最初に高気密チューブ2に取り付けておき、その後に図1の管ライニング材1’を反転挿入するようにしてもよい。
【0022】
管ライニング材1は、図6で示す一端1aは開放され、他端1bは開放又は気密に密閉される。
【0023】
次に、管ライニング材1とほぼ同じ長さ、あるいは若干長い、挟持スチールベルト6、6’をベルト通し5、5’に挿通して管ライニング材1を挟持するように取り付ける。なお、最初にベルト通し5、5’を高気密チューブ2に取り付ける場合には、ベルト通し5、5’を高気密チューブ2に取り付けた後、ベルト通し5、5’に挟持スチールベルト6、6’を挿通し、その後に図1の管ライニング材1’を反転挿入するようにしてもよい。
【0024】
挟持スチールベルト6、6’は、図6に示したように、管ライニング材1の先端1aよりLだけ長くなっており、挟持スチールベルト6、6’の開放した先端部6a、6a’の間に、スチールベルト6、6’と同様な弾力性及び剛性で同様な幅を有する、管ライニング材1を先導するための先導スチールベルト10が挿入される。
【0025】
なお、図6(a)において、A−A、B−B、C−C線に沿った断面が図4、図7(a)、図7(b)に示されている。
【0026】
先導スチールベルト10は、その先端に連結穴10aが形成されており、他端10bは、挟持スチールベルト6、6’間を通過して管ライニング材1の先端部内に挿入され、リベット14などの連結具を介して管ライニング材1に固定される(図7(a))。
【0027】
挟持スチールベルト6、6’は、先導スチールベルト10のほぼ中央部まで伸延しており、先導スチールベルト10の中央部でリベット12、13などの連結具を介して先導スチールベルト10に固定される(図7(b))。管ライニング材1が管路に挿入されたとき、リベット12、13が管路の内壁に当たって滑らかに引き込まれなくなるのを防止するために、表面が滑らかなプラスチックからなるテープ11を用いてリベット12、13が被覆される。先導スチールベルト10と、挟持スチールベルト6、6’がリベットなどで結合されるため、溶接などによる結合と比較して、この結合部分で弾力性が弱くなるのを防止することができる。
【0028】
挟持スチールベルト6、6’は、管ライニング材1の先端部分で頑丈な糸8で縛られ、管ライニング材1と挟持スチールベルト6、6’が互いに分離しないように固定される。
【0029】
なお、ベルト通し5、5’の管ライニング材1への取り付けは、挟持スチールベルト6、6’が先導スチールベルト10並びに管ライニング材1に固定された後に、挟持スチールベルト6、6’の上から行うようにしてもよい。
【0030】
以下では、ベルト付き管ライニング材は、先導スチールベルトも含めてベルト付き管ライニング材とする。
【0031】
次に、上述したような構成のベルト付き管ライニング材を用いて老朽化した管路を補修し更生する方法を説明する。
【0032】
図8に示したように、ベルト付き管ライニング材9を、管路30の挿入端30a側に用意する。そして、引き込みベルト20の先端20aに取り付けられた風船などの空気球21を、管路30の挿入端30aと反対側の引き込み端30bから圧縮空気により管路30の挿入端30aに導く。空気球21が管路30の挿入端30aに露出したら、空気球21を引き込みベルト20からはずし、引き込みベルト20の先端20aを、ベルト付き管ライニング材9の先導スチールベルト10の連結穴10aに結びつける。
【0033】
引き込みベルト20を管路30の引き込み端30bからウインチ等(不図示)で牽引すると、引き込みベルト20に結合されたベルト付き管ライニング材9は、図9に図示したように、先導スチールベルト10に先導されて引き込み端30b側に引き込まれる。
【0034】
なお、図8、図9並びに以下の図面において、ベルト付き管ライニング材9は、図示を簡略化するために、テープ4、ベルト通し5、5’などは図示が省略されており、結合部なども単に黒丸として図示されている。
【0035】
ベルト付き管ライニング材9は、管ライニング材単体の場合に比べて挟持スチールベルト6、6’により弾力性と剛性が与えられており、腰が強くなっている。また、ベルト付き管ライニング材9は、挟持スチールベルト6、6’と同様な弾力性と剛性を有する先導スチールベルト10に導かれて管路30内を通過する。
【0036】
したがって、管路30に直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数あっても、ベルト付き管ライニング材9の接触抵抗が小さく、ベルト付き管ライニング材9を容易にスムーズに管路に挿入することができ、ライニング工事にかかる時間を短縮することができる。また、接触抵抗が小さくなることと、挟持スチールベルト6、6’が管ライニング材1を保護することにより、管ライニング材1の伸びや損傷を防止することができる。
【0037】
ベルト付き管ライニング材9の引き込みを、更に確実にする実施例が図10に図示されている。この実施例では、引き込みベルト20に代えて、引き込みスチールベルト25がフック式の連結具24を介して先導スチールベルト10に取り外し可能に連結される。更に、引き込みを補助する補助スチールベルト26がロープ(又はホースバンド)27と連結具27’を介してベルト付き管ライニング材9に取り付けられる。ロープ(又はホースバンド)27は、ベルト付き管ライニング材9に移動しないように巻き付けられており、その一端が連結具27’に取り付けられる。
【0038】
引き込みスチールベルト25、補助スチールベルト26は、挟持スチールベルト6、6’と同等もしくはそれ以上の幅と弾力性と剛性が与えられている。引き込みスチールベルト25は補修する管路の長さより長く、また、補助スチールベルト26は、引き込みスチールベルト25より連結具24とロープ27間の距離だけ長くなっている。引き込みスチールベルト25の一端には、連結具24と連結するための連結穴25aが形成される。補助スチールベルト26の一端にも連結穴26aが形成され、その連結穴26aを介して補助スチールベルト26と連結具27’が連結される。
【0039】
このようなベルト付き管ライニング材9で管路をライニングする場合には、引き込みベルト20の一端20aに空気球21を取り付け、他端20bには、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を取り付ける。そして、図11に示したように、空気球21を、管路30の引き込み端30bから圧縮空気により管路30の挿入端30aに導く。空気球21並びに引き込みベルト20の先端20aが管路30の外部に露出したら、引き込みベルト20を引き、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を管路30の引き込み端30bから挿入端30aに導く。引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26が管路30の外部に露出したら、引き込みベルト20を取り除き、図12に示したように、引き込みスチールベルト25を連結具24を介してベルト付き管ライニング材9の先導スチールベルト10に連結すると共に、補助スチールベルト26をロープ(又はホースバンド)27と連結具27’を介してベルト付き管ライニング材9に結合する。
【0040】
引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26の他端をウインチ等で牽引すると、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26、並びにこれらに結合されたベルト付き管ライニング材9は、図13に図示したように、管路30の挿入端30aから引き込み端30bに向けて引き込まれる。
【0041】
ベルト付き管ライニング材9は、挟持スチールベルト6、6’と同等又はそれ以上の弾力性と剛性を有する引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26に案内されて管路30内を通過していく。引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26は、図9に示した引き込みベルト20よりも、弾力性と剛性を有するので、管路30に直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数あっても、ベルト付き管ライニング材9の先導が確実になる。
【0042】
また、管路30に、図13に示したような屈曲部30cがあると、ここでベルト付き管ライニング材9の接触抵抗が大きくなり引き込みが困難になる。このようなときには、補助スチールベルト26を強く引くことにより、該接触抵抗に打ち勝ってベルト付き管ライニング材9を円滑に管路内に引き込むことが可能になる。管路30の屈曲部30cは、予め知ることができるので、これに合わせてロープ27のベルト付き管ライニング材9における取り付け位置を変えるようにすれば、管路の屈曲部における円滑な引き込みをより確実にすることができる。
【0043】
なお、管路の屈曲状態によっては、補助スチールベルト26の使用を省くこともできる。
【0044】
図14に示すように、ベルト付き管ライニング材9の管路30への挿入(引き込み)が完了したら、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を除去し、ベルト付き管ライニング材9の先端部の糸8を切って、挟持スチールベルト6、6’と管ライニング材1の先端部の固定を外す。また、管ライニング材1を、例えば1cで示した箇所で切断して、管ライニング材1と先導スチールベルト10の結合を外して、先導スチールベルト10を引っ張れば、これと結合された挟持スチールベルト6、6’を各ベルト通し5、5’から引きぬいて管ライニング材1から取り外すことができる。
【0045】
図15に示すように、管ライニング材1の他端1bが開放している場合は、この他端1bと切断箇所1cを気密に密閉し、エアホース40から圧縮空気を供給する。また、図16に示すように、管ライニング材1の他端1bが閉じている場合は、切断箇所1cを気密に密閉し、エアホース40から圧縮空気を供給する。
【0046】
管ライニング材1は、圧縮空気により内側から加圧され膨張し、管ライニング材1を縛っていたテープ4が切断され、円筒形に膨張し、管路30の管内周面に圧接する。こうした状態で、温水/蒸気ホース41を介して管ライニング材1内に温水や蒸気などを供給する。管ライニング材1の樹脂吸収材3に含浸された熱硬化性樹脂は加熱硬化し、管路30が管ライニング材1によりライニングされる。管路30からはみ出した管ライニング材は、適当な方法で切断して除去するようにする。
【0047】
以上説明した各実施例において、挟持スチールベルト6、6’は管ライニング材1の全長に渡って取り付けているが、管ライニング材1の全長の一部の長さに渡って取り付けてもよい。
【0048】
また、各実施例では、スチールベルト6、6’は管ライニング材1を挟持するように2本取り付けるものとしたが、管ライニング材1の片側に1本だけ取り付けるようにしてもよい。また管ライニング材1を囲むように3本以上取り付けるようにしてもよい。
【0049】
また、スチールベルト6、6’の代りに、スチール以外の金属やプラスチックなどの他の材料からなり、弾力性及び剛性を有する他の帯状部材を管ライニング材1に取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。
【0050】
また、本発明の管ライニング材は、地中に埋設された通信管、ガス管、下水管、水道管、電気管などの管路のライニングだけでなく、マンションやビル内あるいは一般家庭内の通信管、ガス管、下水管、水道管、電気管などの管路のライニングにも用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 管ライニング材(引込用)
3 管状樹脂吸収材
4 テープ
5、5’ ベルト通し
6、6’ 挟持スチールベルト
8 糸
9 ベルト付き管ライニング材
10 先導スチールベルト
20 引き込みベルト
21 空気球
25 引き込みスチールベルト
26 補助スチールベルト
27 ロープ(ホースバンド)
30 管路
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した管路を補修するために管路をライニングするために用いられる管ライニング材、及びこれを用いた管路ライニング工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された通信管、ガス管、下水道管、水道管、電気管、農業用水路などの管路が老朽化した場合に、管路の管を掘り出すことなく補修するための管路ライニング工法が実施されている。この工法では、熱硬化性樹脂を含浸させた管状のライニング材が管路に反転或いは引き込みにより挿入され、空気圧などで膨張させて管路の管内周面に圧接させた状態に保持される。この状態で管ライニング材が加熱されて管ライニング材の熱硬化性樹脂が硬化され管路がライニングされる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
管ライニング材を管路に挿入する方法には、空気圧により管ライニング材の表裏を反転させながら挿入する反転方法と、管ライニング材を前もって高気密チューブの中に反転挿入したあと、管路に引き込んで挿入する引込方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−123547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の管ライニング材を管路に挿入する場合、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所がある管路に挿入するのは非常に困難であった。つまり、反転しながら押し込む方法では直角ないしそれに近い屈曲部分で反転しなくなってしまう。また、引き込む方法では屈曲部の箇所が増えると管ライニング材の接触抵抗が増加し、重くなり引き込めなくなる。また無理をして引き込みを続けると、管ライニング材が伸びたり損傷したりして、管ライニング材の品質を著しく劣化させることになる。
【0006】
そこで本発明の課題は、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも容易にスムーズに挿入することができる管ライニング材、及びこれを用いた管路ライニング工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
管路に引き込まれて管路の内壁を補修するための硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材であって、
弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、
前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材と、
前記先導用帯状部材に取り外し可能に連結される引き込み用帯状部材と、を
取り付けてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、
硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材を管路に引き込んで管路の内壁をライニングする管路ライニング工法であって、
管ライニング材に、弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材とを取り付けたベルト付き管ライニング材を、管路の挿入端に用意し、
管路の引き込み端から引き込み用帯状部材を管路の挿入端に導いて、引き込み用帯状部材を先導用帯状部材に連結し、
引き込み用帯状部材を管路の引き込み端から引き込んでベルト付き管ライニング材を管路内に挿入し、
管路内に管ライニング材を残して挟持用帯状部材、先導用帯状部材、引き込み用帯状部材を取り除き、
管ライニング材を内側から加圧して膨張させ、管路の内壁に圧接させた状態で管ライニング材の硬化性樹脂を硬化させて管路をライニングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管ライニング材によれば、弾力性と剛性のある帯状部材により管ライニング材が先導されて、管路に引き込まれるので、直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数ある管路でも、管ライニング材の挿入を容易にスムーズに行うことができ、無理な挿入による管ライニング材の伸びや損傷を防止することができると共に、ライニング工事にかかる時間を顕著に短縮することができる。
【0010】
また、管ライニング材の側面に弾力性と剛性のある帯状部材を取り付けたことにより、管ライニング材挿入時に帯状部材によって管ライニング材を保護できることからもライニングの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】管路に挿入されて管路を補修するための管ライニング材を、端部を断面にして示した斜視図である。
【図2】図1の管ライニング材を高気密チューブに反転挿入してなる引込用管ライニング材の斜視図である。
【図3】図2の管ライニング材をH字形に折り畳み、テープで縛った状態を示す断面図である。
【図4】さらにスチールベルトを管ライニング材に取り付けてなるベルト付き管ライニング材を示す断面図である。
【図5】ベルト付き管ライニング材のスチールベルトを取り付けた側の側面図である。
【図6】(a)はベルト付き管ライニング材の全体を示す側面図、(b)はその上面図である。
【図7】(a)は図6のB−B線に沿った断面図、(b)は図6のC−C線に沿った断面図である。
【図8】ベルト付き管ライニング材を管路に引き込むために引き込みベルトを送り込む状態を示す説明図である。
【図9】引き込みベルトによりベルト付き管ライニング材を管路に引き込む状態を示す説明図である。
【図10】ベルト付き管ライニング材に引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトを取り付けた管ライニング材の上面図である。
【図11】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトを管路に送り込む状態を示した説明図である。
【図12】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトをベルト付き管ライニング材に取り付ける状態を示した説明図である。
【図13】引き込み用スチールベルトと補助スチールベルトによりベルト付き管ライニング材を管路に引き込む状態を示した説明図である。
【図14】ベルト付き管ライニング材の引き込みが完了した状態を示す説明図である。
【図15】他端が開放している管ライニング材を膨張させて管路をライニングする状態を示す説明図である。
【図16】他端が閉じている管ライニング材を膨張させて管路をライニングする状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の実施例を説明する。ここでは、下水道、通信管、ガス管、電気管、農業用水路などで屈曲した箇所が多い管路をライニングする場合について説明する。
【実施例】
【0013】
図1は管路補修用の管ライニング材を示している。管ライニング材1’は、可撓性の管状樹脂吸収材3の外周面をポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルム3aでコーティング(熱溶着)した柔軟な管状ライニング材である。
【0014】
管状樹脂吸収材3は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなり、管状樹脂吸収材3には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状の未硬化の熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂が含浸される。
【0015】
図2は引込用管ライニング材1を示し、図1の管ライニング材1’を、プラスチックフィルム3aと同様な材質の高気密チューブ2内に反転挿入することにより作製される。
【0016】
本実施例では、図3〜図7に示したように、管ライニング材1を幅が小さくなるように折り畳んでテープ4などで縛り、それに管ライニング材1を挟持する挟持スチールベルト6、6’を取り外し可能に取り付けてなるスチールベルト付き管ライニング材(以下、ベルト付き管ライニング材と略す)9を作製し、これを管路に挿入して管路を補修する。
【0017】
挟持スチールベルト6、6’は、弾力性及び剛性を有する金属性の帯状部材で、管ライニング材1に弾力性及び剛性を付与して管ライニング材1の腰を強くするとともに、管ライニング材1を部分的にカバーして保護するためのものであり、スチールの薄板から構成される。弾力性及び剛性を有する帯状部材は、スチールのワイヤーを帯状に束ねてゴムなどで被覆して構成してもよい。
【0018】
ベルト付き管ライニング材9は、以下のようにして作製される。まず、図2で矢印で示したように管ライニング材1を両側から押し込み、図3に示すように、管ライニング材1を断面がH字形になるように折り畳む。続いて、図3〜図6に示すように、セロハンテープなどのテープ4を管ライニング材1の長さ方向に例えば数十センチ程度の適当な間隔毎に管ライニング材1に巻き付ける。テープ4の代わりに紐などの部材で縛っても良い。
【0019】
なお、管ライニング材1を折り畳む形はH字形に限らず、管ライニング材1の幅が小さくなり、後で管ライニング材1を管路に挿入した後に加圧して円筒形に膨張させるときに拡がり易い形であればよい。
【0020】
次に、図4〜図6に示すように、ベルト通し5、5’を折り畳まれた管ライニング材1の両側面に熱溶着又は接着剤で所定の間隔で取り付ける。ベルト通し5、5’は、管路への管ライニング材挿入時に挟持スチールベルト6、6’が管ライニング材1から大きくずれないように多少の余裕を持ってガイドするものであり、ポリエチレンなどのフィルムから帯状に形成される。
【0021】
なお、このベルト通し5、5’は、最初に高気密チューブ2に取り付けておき、その後に図1の管ライニング材1’を反転挿入するようにしてもよい。
【0022】
管ライニング材1は、図6で示す一端1aは開放され、他端1bは開放又は気密に密閉される。
【0023】
次に、管ライニング材1とほぼ同じ長さ、あるいは若干長い、挟持スチールベルト6、6’をベルト通し5、5’に挿通して管ライニング材1を挟持するように取り付ける。なお、最初にベルト通し5、5’を高気密チューブ2に取り付ける場合には、ベルト通し5、5’を高気密チューブ2に取り付けた後、ベルト通し5、5’に挟持スチールベルト6、6’を挿通し、その後に図1の管ライニング材1’を反転挿入するようにしてもよい。
【0024】
挟持スチールベルト6、6’は、図6に示したように、管ライニング材1の先端1aよりLだけ長くなっており、挟持スチールベルト6、6’の開放した先端部6a、6a’の間に、スチールベルト6、6’と同様な弾力性及び剛性で同様な幅を有する、管ライニング材1を先導するための先導スチールベルト10が挿入される。
【0025】
なお、図6(a)において、A−A、B−B、C−C線に沿った断面が図4、図7(a)、図7(b)に示されている。
【0026】
先導スチールベルト10は、その先端に連結穴10aが形成されており、他端10bは、挟持スチールベルト6、6’間を通過して管ライニング材1の先端部内に挿入され、リベット14などの連結具を介して管ライニング材1に固定される(図7(a))。
【0027】
挟持スチールベルト6、6’は、先導スチールベルト10のほぼ中央部まで伸延しており、先導スチールベルト10の中央部でリベット12、13などの連結具を介して先導スチールベルト10に固定される(図7(b))。管ライニング材1が管路に挿入されたとき、リベット12、13が管路の内壁に当たって滑らかに引き込まれなくなるのを防止するために、表面が滑らかなプラスチックからなるテープ11を用いてリベット12、13が被覆される。先導スチールベルト10と、挟持スチールベルト6、6’がリベットなどで結合されるため、溶接などによる結合と比較して、この結合部分で弾力性が弱くなるのを防止することができる。
【0028】
挟持スチールベルト6、6’は、管ライニング材1の先端部分で頑丈な糸8で縛られ、管ライニング材1と挟持スチールベルト6、6’が互いに分離しないように固定される。
【0029】
なお、ベルト通し5、5’の管ライニング材1への取り付けは、挟持スチールベルト6、6’が先導スチールベルト10並びに管ライニング材1に固定された後に、挟持スチールベルト6、6’の上から行うようにしてもよい。
【0030】
以下では、ベルト付き管ライニング材は、先導スチールベルトも含めてベルト付き管ライニング材とする。
【0031】
次に、上述したような構成のベルト付き管ライニング材を用いて老朽化した管路を補修し更生する方法を説明する。
【0032】
図8に示したように、ベルト付き管ライニング材9を、管路30の挿入端30a側に用意する。そして、引き込みベルト20の先端20aに取り付けられた風船などの空気球21を、管路30の挿入端30aと反対側の引き込み端30bから圧縮空気により管路30の挿入端30aに導く。空気球21が管路30の挿入端30aに露出したら、空気球21を引き込みベルト20からはずし、引き込みベルト20の先端20aを、ベルト付き管ライニング材9の先導スチールベルト10の連結穴10aに結びつける。
【0033】
引き込みベルト20を管路30の引き込み端30bからウインチ等(不図示)で牽引すると、引き込みベルト20に結合されたベルト付き管ライニング材9は、図9に図示したように、先導スチールベルト10に先導されて引き込み端30b側に引き込まれる。
【0034】
なお、図8、図9並びに以下の図面において、ベルト付き管ライニング材9は、図示を簡略化するために、テープ4、ベルト通し5、5’などは図示が省略されており、結合部なども単に黒丸として図示されている。
【0035】
ベルト付き管ライニング材9は、管ライニング材単体の場合に比べて挟持スチールベルト6、6’により弾力性と剛性が与えられており、腰が強くなっている。また、ベルト付き管ライニング材9は、挟持スチールベルト6、6’と同様な弾力性と剛性を有する先導スチールベルト10に導かれて管路30内を通過する。
【0036】
したがって、管路30に直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数あっても、ベルト付き管ライニング材9の接触抵抗が小さく、ベルト付き管ライニング材9を容易にスムーズに管路に挿入することができ、ライニング工事にかかる時間を短縮することができる。また、接触抵抗が小さくなることと、挟持スチールベルト6、6’が管ライニング材1を保護することにより、管ライニング材1の伸びや損傷を防止することができる。
【0037】
ベルト付き管ライニング材9の引き込みを、更に確実にする実施例が図10に図示されている。この実施例では、引き込みベルト20に代えて、引き込みスチールベルト25がフック式の連結具24を介して先導スチールベルト10に取り外し可能に連結される。更に、引き込みを補助する補助スチールベルト26がロープ(又はホースバンド)27と連結具27’を介してベルト付き管ライニング材9に取り付けられる。ロープ(又はホースバンド)27は、ベルト付き管ライニング材9に移動しないように巻き付けられており、その一端が連結具27’に取り付けられる。
【0038】
引き込みスチールベルト25、補助スチールベルト26は、挟持スチールベルト6、6’と同等もしくはそれ以上の幅と弾力性と剛性が与えられている。引き込みスチールベルト25は補修する管路の長さより長く、また、補助スチールベルト26は、引き込みスチールベルト25より連結具24とロープ27間の距離だけ長くなっている。引き込みスチールベルト25の一端には、連結具24と連結するための連結穴25aが形成される。補助スチールベルト26の一端にも連結穴26aが形成され、その連結穴26aを介して補助スチールベルト26と連結具27’が連結される。
【0039】
このようなベルト付き管ライニング材9で管路をライニングする場合には、引き込みベルト20の一端20aに空気球21を取り付け、他端20bには、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を取り付ける。そして、図11に示したように、空気球21を、管路30の引き込み端30bから圧縮空気により管路30の挿入端30aに導く。空気球21並びに引き込みベルト20の先端20aが管路30の外部に露出したら、引き込みベルト20を引き、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を管路30の引き込み端30bから挿入端30aに導く。引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26が管路30の外部に露出したら、引き込みベルト20を取り除き、図12に示したように、引き込みスチールベルト25を連結具24を介してベルト付き管ライニング材9の先導スチールベルト10に連結すると共に、補助スチールベルト26をロープ(又はホースバンド)27と連結具27’を介してベルト付き管ライニング材9に結合する。
【0040】
引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26の他端をウインチ等で牽引すると、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26、並びにこれらに結合されたベルト付き管ライニング材9は、図13に図示したように、管路30の挿入端30aから引き込み端30bに向けて引き込まれる。
【0041】
ベルト付き管ライニング材9は、挟持スチールベルト6、6’と同等又はそれ以上の弾力性と剛性を有する引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26に案内されて管路30内を通過していく。引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26は、図9に示した引き込みベルト20よりも、弾力性と剛性を有するので、管路30に直角ないしそれに近い角度で屈曲した箇所が多数あっても、ベルト付き管ライニング材9の先導が確実になる。
【0042】
また、管路30に、図13に示したような屈曲部30cがあると、ここでベルト付き管ライニング材9の接触抵抗が大きくなり引き込みが困難になる。このようなときには、補助スチールベルト26を強く引くことにより、該接触抵抗に打ち勝ってベルト付き管ライニング材9を円滑に管路内に引き込むことが可能になる。管路30の屈曲部30cは、予め知ることができるので、これに合わせてロープ27のベルト付き管ライニング材9における取り付け位置を変えるようにすれば、管路の屈曲部における円滑な引き込みをより確実にすることができる。
【0043】
なお、管路の屈曲状態によっては、補助スチールベルト26の使用を省くこともできる。
【0044】
図14に示すように、ベルト付き管ライニング材9の管路30への挿入(引き込み)が完了したら、引き込みスチールベルト25と補助スチールベルト26を除去し、ベルト付き管ライニング材9の先端部の糸8を切って、挟持スチールベルト6、6’と管ライニング材1の先端部の固定を外す。また、管ライニング材1を、例えば1cで示した箇所で切断して、管ライニング材1と先導スチールベルト10の結合を外して、先導スチールベルト10を引っ張れば、これと結合された挟持スチールベルト6、6’を各ベルト通し5、5’から引きぬいて管ライニング材1から取り外すことができる。
【0045】
図15に示すように、管ライニング材1の他端1bが開放している場合は、この他端1bと切断箇所1cを気密に密閉し、エアホース40から圧縮空気を供給する。また、図16に示すように、管ライニング材1の他端1bが閉じている場合は、切断箇所1cを気密に密閉し、エアホース40から圧縮空気を供給する。
【0046】
管ライニング材1は、圧縮空気により内側から加圧され膨張し、管ライニング材1を縛っていたテープ4が切断され、円筒形に膨張し、管路30の管内周面に圧接する。こうした状態で、温水/蒸気ホース41を介して管ライニング材1内に温水や蒸気などを供給する。管ライニング材1の樹脂吸収材3に含浸された熱硬化性樹脂は加熱硬化し、管路30が管ライニング材1によりライニングされる。管路30からはみ出した管ライニング材は、適当な方法で切断して除去するようにする。
【0047】
以上説明した各実施例において、挟持スチールベルト6、6’は管ライニング材1の全長に渡って取り付けているが、管ライニング材1の全長の一部の長さに渡って取り付けてもよい。
【0048】
また、各実施例では、スチールベルト6、6’は管ライニング材1を挟持するように2本取り付けるものとしたが、管ライニング材1の片側に1本だけ取り付けるようにしてもよい。また管ライニング材1を囲むように3本以上取り付けるようにしてもよい。
【0049】
また、スチールベルト6、6’の代りに、スチール以外の金属やプラスチックなどの他の材料からなり、弾力性及び剛性を有する他の帯状部材を管ライニング材1に取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。
【0050】
また、本発明の管ライニング材は、地中に埋設された通信管、ガス管、下水管、水道管、電気管などの管路のライニングだけでなく、マンションやビル内あるいは一般家庭内の通信管、ガス管、下水管、水道管、電気管などの管路のライニングにも用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 管ライニング材(引込用)
3 管状樹脂吸収材
4 テープ
5、5’ ベルト通し
6、6’ 挟持スチールベルト
8 糸
9 ベルト付き管ライニング材
10 先導スチールベルト
20 引き込みベルト
21 空気球
25 引き込みスチールベルト
26 補助スチールベルト
27 ロープ(ホースバンド)
30 管路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路に引き込まれて管路の内壁を補修するための硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材であって、
弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、
前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材と、
前記先導用帯状部材に取り外し可能に連結される引き込み用帯状部材と、を
取り付けてなることを特徴とする管ライニング材。
【請求項2】
前記先導用帯状部材及び/又は引き込み用帯状部材が挟持用帯状部材と同様な弾力性と剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の管ライニング材。
【請求項3】
挟持用帯状部材で挟持された管ライニング材に、引き込みを補助するための補助用帯状部材が取り外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の管ライニング材。
【請求項4】
管ライニング材が折り畳まれて挟持用帯状部材により挟持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項5】
前記挟持用帯状部材と引き込み帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項6】
前記補助用帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項3に記載の管ライニング材。
【請求項7】
硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材を管路に引き込んで管路の内壁をライニングする管路ライニング工法であって、
管ライニング材に、弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材とを取り付けたベルト付き管ライニング材を、管路の挿入端に用意し、
管路の引き込み端から引き込み用帯状部材を管路の挿入端に導いて、引き込み用帯状部材を先導用帯状部材に連結し、
引き込み用帯状部材を管路の引き込み端から引き込んでベルト付き管ライニング材を管路内に挿入し、
管路内に管ライニング材を残して挟持用帯状部材、先導用帯状部材、引き込み用帯状部材を取り除き、
管ライニング材を内側から加圧して膨張させ、管路の内壁に圧接させた状態で管ライニング材の硬化性樹脂を硬化させて管路をライニングすることを特徴とする管路ライニング工法。
【請求項8】
前記ベルト付き管ライニング材に引き込みを補助するための補助用帯状部材を取り付けたことを特徴とする請求項7に記載の管路ライニング工法。
【請求項9】
前記挟持用帯状部材と引き込み帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項7又は8に記載の管路ライニング工法。
【請求項10】
前記補助用帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項8に記載の管路ライニング工法。
【請求項1】
管路に引き込まれて管路の内壁を補修するための硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材であって、
弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、
前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材と、
前記先導用帯状部材に取り外し可能に連結される引き込み用帯状部材と、を
取り付けてなることを特徴とする管ライニング材。
【請求項2】
前記先導用帯状部材及び/又は引き込み用帯状部材が挟持用帯状部材と同様な弾力性と剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の管ライニング材。
【請求項3】
挟持用帯状部材で挟持された管ライニング材に、引き込みを補助するための補助用帯状部材が取り外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の管ライニング材。
【請求項4】
管ライニング材が折り畳まれて挟持用帯状部材により挟持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項5】
前記挟持用帯状部材と引き込み帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項6】
前記補助用帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項3に記載の管ライニング材。
【請求項7】
硬化性樹脂を含浸させた可撓性の管状管ライニング材を管路に引き込んで管路の内壁をライニングする管路ライニング工法であって、
管ライニング材に、弾力性及び剛性を有し管ライニング材を挟持する挟持用帯状部材と、前記挟持用帯状部材と管ライニング材に固定される先導用帯状部材とを取り付けたベルト付き管ライニング材を、管路の挿入端に用意し、
管路の引き込み端から引き込み用帯状部材を管路の挿入端に導いて、引き込み用帯状部材を先導用帯状部材に連結し、
引き込み用帯状部材を管路の引き込み端から引き込んでベルト付き管ライニング材を管路内に挿入し、
管路内に管ライニング材を残して挟持用帯状部材、先導用帯状部材、引き込み用帯状部材を取り除き、
管ライニング材を内側から加圧して膨張させ、管路の内壁に圧接させた状態で管ライニング材の硬化性樹脂を硬化させて管路をライニングすることを特徴とする管路ライニング工法。
【請求項8】
前記ベルト付き管ライニング材に引き込みを補助するための補助用帯状部材を取り付けたことを特徴とする請求項7に記載の管路ライニング工法。
【請求項9】
前記挟持用帯状部材と引き込み帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項7又は8に記載の管路ライニング工法。
【請求項10】
前記補助用帯状部材がスチールで構成されたスチールベルトであることを特徴とする請求項8に記載の管路ライニング工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−260274(P2010−260274A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113125(P2009−113125)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】
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