説明

管内検査カメラ装置

【課題】ハードケーブルの先端に取り付けて使用されるカメラヘッド装置に於いて、検査対象管内の上下方向を常に一定にした管内撮影を可能にし、かつ管内を斑なく均一に照明して、管内を精確に検査できるようにした管内検査カメラ装置を提供する。
【解決手段】スリップリング16の回転部16aには、カメラユニット13および照明ユニット14を、検査対象管内の周方向に対して一定の位置に指向させる位置規制手段となる錘体17が一体形成される。この錘体17の重心方向に向かう作用で、常に、検査対象管内の上下方向を一定にした管内撮影を可能にし、かつ照明ユニット14に設けられた拡散照明用の発光素子142,142,…を、常に、カメラレンズ13Aの中心位置より上方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管、下水管、ガス管などの検査に用いられるハードケーブルカラーカメラシステムに適用して好適な管内検査カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管、下水管、ガス管などを検査対象とする管内検査カメラ装置として、ハードケーブルの先端にカメラヘッドを取り付けて、ハードケーブルにより、検査対象管内へカメラヘッドを挿入し、カメラヘッドにより管内を撮影する、ハードケーブルカメラと称される管内検査カメラ装置が存在する。
【0003】
この種、管内検査カメラ装置として、従来では、カメラヘッドのケース内にカメラを固定して設けたカメラヘッド装置が存在する。
【特許文献1】実開平5−57972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種、ハードケーブルの先端に取り付けて使用されるカメラヘッド装置に於いては、カメラヘッドを管内に挿入して使用しているとき、カメラヘッドの姿勢が一定ではなく、撮影した画像からは、検査対象管内の上下関係を把握することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、検査対象管内の上下方向を常に一定にした管内撮影を可能にし、かつ管内を斑なく均一に照明して、管内を精確に検査できるようにした管内検査カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検査対象管内に対して進退自在なカメラ本体と、前記カメラ本体の前部に設けられ、検査対象管内を撮影する撮像素子と、前記撮像素子の光軸に対して偏倚した位置に複数の発光素子を設け、前記各発光素子により前記検査対象管内を拡散照明する照明ユニットと、前記撮像素子および照明ユニットを前記カメラ本体の軸心に対して回転自在に支持する支持機構と、前記カメラ本体に設けられ、前記支持機構に回転自在に支持された前記撮像素子および照明ユニットを、前記検査対象管内の周方向に対して一定の位置に指向させる位置規制手段とを具備した管内検査カメラ装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
ハードケーブルの先端に取り付けて使用されるカメラヘッド装置に於いて、検査対象管内の上下方向を常に一定にした管内撮影を可能にし、かつ管内を斑なく均一に照明して、管内を精確に検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態に係る管内検査カメラ装置(以下、カメラヘッドと称す)の構成を図1および図2に示す。図1はカメラヘッドの正面図、図2は同カメラヘッドの側断面図である。本発明の実施形態に係るカメラヘッド10は、ハードケーブル12の先端に取着され、ハードケーブル12の操作で検査対象管内に押し込まれ、検査後、検査対象管内から引き抜かれる。
【0009】
この本発明の実施形態に係るカメラヘッド10は、図1に示すように、カメラ本体11と、カメラ本体11に収納された、カメラユニット13、照明ユニット14、スリップリング16、およびケーブル接続コネクタ18とを有して構成される。
【0010】
カメラ本体11には、前面中央部に、レンズカバーを含むカメラレンズ13Aが取着され、その周囲に、照明用の透明カバー11Aがカメラ本体11と一体に設けられている。カメラ本体11は、カメラレンズ13A、透明カバー11A、およびケーブル接続コネクタ18とともに密閉構造の防水形カメラヘッドケースを構成している。
【0011】
ケーブル接続コネクタ18に接続されるハードケーブル12は、剛性および屈曲弾性を有し、複数の芯線を内包している。このハードケーブル12は、図3に示すように、ケーブルドラム2に巻装され、管内検査の必要量に応じてケーブルドラム2から繰り出して使用される。
【0012】
カメラユニット13には、カメラレンズ13Aにより結像された検査対象管内を撮影する、例えばカラーCCDを用いた撮像素子13aが実装されている。
【0013】
照明ユニット14には、検査対象管内の前方を照明する、例えば白色LEDを用いた前方照明用の複数(例えば4個)の発光素子141,141,…が設けられている。
【0014】
さらに、照明ユニット14には、撮像素子15の光軸に対して偏倚した位置に、例えば白色LEDを用いた拡散照明用の複数(例えば8個)の発光素子142,142,…が設けられている。この拡散照明用の複数の発光素子142,142,…は、検査対象管内の側方乃至前方に照射光を均等に拡散させるように光軸が設定され、図2に示すように所定の間隔で配置される。
【0015】
カメラユニット13、および照明ユニット14は、後述するスリップリング16の回転部に固定され、カメラ本体11に対し、カメラ本体11の光軸を軸心として周方向に回転自在に設けられる。
【0016】
スリップリング16は、カメラユニット13および照明ユニット14を回転自在にケーブル接続コネクタ18に回路接続するための回転部(ローター)16a、および固定部(ステーター)16bを有して構成される。
【0017】
スリップリング16の固定部16bは、ケーブル接続コネクタ18とともに、カメラ本体11に固定される。
【0018】
スリップリング16の回転部16aには、カメラユニット13、および照明ユニット14が、スリップリング16の軸心とカメラユニット13の光軸とを一致させた軸上に固定して設けられる。
【0019】
すなわち、スリップリング16の回転部16aは、カメラユニット13、および照明ユニット14を、カメラ本体11の軸心に対して周方向に回転自在に支持する支持機構となる。
【0020】
さらに、このスリップリング16の回転部16aには、カメラユニット13および照明ユニット14を、検査対象管内の周方向に対して一定の位置に指向させる位置規制手段となる錘体17が一体形成される。この錘体17は、例えばタングステン等の金属材料を用いて構成される。
【0021】
この錘体17は、図2に示すように、照明ユニット14に設けられた発光素子142,142,…が上方に位置する方向に指向させるように、スリップリング16の回転部16aに一体形成して設けられる。
【0022】
このスリップリング16の回転部16aに一体に設けた錘体17と、照明ユニット14に設けた発光素子142,142,…との配置位置関係を図2に示している。
【0023】
これにより、カメラ本体11が検査対象管内で側壁に沿って回動(周方向に回動)しても、照明ユニット14に設けられた発光素子142,142,…が常にカメラレンズ13Aの中心位置より上方に位置するように姿勢制御される。
【0024】
ケーブル接続コネクタ18は、カメラ本体11に固定して設けられ、カメラ本体11の後端部にハードケーブル12の接続部を有して、カメラユニット13および照明ユニット14の駆動電源を含む各種回路をスリップリング16を介してハードケーブル12の各芯線に回路接続する。
【0025】
上記構成のカメラヘッド10を用いた管内検査カメラシステムの構成を図3に示す。
【0026】
この図3に示す管内検査カメラシステムは、先端にカメラヘッド10を取り付けたハードケーブル12を巻装するケーブルドラム2と、カメラヘッド10で撮影した管内の画像処理を行う制御ユニット3と、制御ユニット3で処理した管内画像5を表示するモニタ4とを有して構成される。
【0027】
カメラヘッド10は、上述したように、ハードケーブル12の先端に取着され、ハードケーブル12の操作で、検査対象管(PA若しくはPB)内に押し込まれ、検査後、検査対象管内から引き抜かれる。
【0028】
この図3に示す管内検査カメラシステムに於いて、カメラユニット13、および照明ユニット14は、錘体17を一体に設けたスリップリング16の回転部16aに固定して設けられていることから、錘体17の重心方向に向かう作用で、常に、検査対象管内の上下方向を一定にした管内撮影を可能にしている。
【0029】
この際、検査対象配管は、当然のことながらカメラヘッド10よりも大きな径であり、上記照明ユニット14に設けられた拡散照明用の発光素子142,142,…は、常に、カメラレンズ13Aの中心位置より上方に位置して、当該位置から照射光を照射し、管内を拡散照明する。
【0030】
上記したカメラヘッド10が検査対象とする配管の一例を図4に示している。上記構成のカメラヘッド10は、当該カメラヘッドの径(例えば50φ)に対して、1.5乃至3倍の径(75φ乃至150φ)をもつ検査対象配管(PA/PB)に適用したとき、光源となる拡散照明用の発光素子142,142,…の照射位置が、常に、カメラ本体11の光軸より高い位置にあることから、とくに管内の上下方向に対して斑のない適正な照明を行うことができる。
【0031】
上記したように、検査対象管内の上下方向を常に一定にした管内撮影を可能にしたカメラヘッドに於いて、カメラレンズの周囲に複数の拡散照明用の発光素子を均等に配置して検査対象管内を照明した場合と、上記実施形態によるカメラヘッド10の照明ユニット14で検査対象管内を照明した場合とに於ける管内画像5の違いを図5(a)、図5(b)に示している。
【0032】
検査対象管内の上下方向を常に一定にした管内撮影を可能にしたカメラヘッドに於いて、カメラレンズの周囲に複数の拡散照明用の発光素子を均等に配置して検査対象管内を照明した場合は、常に、検査対象管内の底面に近い照射位置から照射光が照射されることから、図5(a)に示すように、常に、管底面部が照明過剰、天井面部が照明不足のモニタ画像となる。
【0033】
これに対して、上記した実施形態の構造によるカメラヘッド10は、光源の照射位置が、常に、カメラ本体11の光軸より高い位置にあることから、図5(b)に示すように、常に、管内の上下方向にバランスのとれた、斑のない照明が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る管内検査カメラ装置の構成を示す側断面図。
【図2】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置の構成を示す正面図。
【図3】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置を用いた管内検査カメラシステムの構成を示す図。
【図4】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置が検査対象とする配管の一例をを示す図。
【図5】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置で撮影した表示画像と他の管内検査カメラ装置で撮影した表示画像とを比較して示す図。
【符号の説明】
【0035】
10…カメラヘッド、11…カメラ本体、12…ハードケーブル、13…カメラユニット、13a…撮像素子、14…照明ユニット、16…スリップリング、16a…回転部(ローター)、16b…固定部(ステーター)、17…錘体、18…ケーブル接続コネクタ、141…前方照明用の発光素子、142…拡散照明用の発光素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象管内に対して進退自在なカメラ本体と、
前記カメラ本体の前部に設けられ、検査対象管内を撮影する撮像素子と、
前記撮像素子の光軸に対して偏倚した位置に複数の発光素子を設け、前記各発光素子により前記検査対象管内を拡散照明する照明ユニットと、
前記撮像素子および照明ユニットを前記カメラ本体の軸心に対して回転自在に支持する支持機構と、
前記カメラ本体に設けられ、前記支持機構に回転自在に支持された前記撮像素子および照明ユニットを、前記検査対象管内の周方向に対して一定の位置に指向させる位置規制手段と
を具備したことを特徴とする管内検査カメラ装置。
【請求項2】
前記位置規制手段は、前記支持機構に回転自在に支持された前記撮像素子および照明ユニットを、前記照明ユニットに設けられた前記複数の発光素子が上方に位置する方向に指向させる錘体であることを特徴とする請求項1記載の管内検査カメラ装置。
【請求項3】
前記カメラ本体は、前面に、前記照明ユニットの照射光を透過させる保護カバーと、前記撮像素子の撮像面に前記検査対象管内の画像を結像させるレンズ機構とを具備したことを特徴とする請求項1記載の管内検査カメラ装置。
【請求項4】
前記カメラ本体は、その後端に、前記撮像素子および照明ユニットに回路接続される芯線を内包したハードケーブルを接続するためのコネクタをさらに具備したことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項5】
前記支持機構は、前記撮像素子および照明ユニットを回転自在に前記コネクタに回路接続するスリップリングであることを特徴とする請求項1に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項6】
前記錘体は、前記スリップリングと一体に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項7】
前記照明ユニットは、前記検査対象管内に対して前記撮像素子の光軸上に照射光を照射して前記検査対象管内の前方を照明する複数の発光素子をさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項8】
前記照明ユニットに設けた、前記検査対象管内を拡散照明する前記複数の発光素子、および前記検査対象管内の前方を照明する複数の発光素子は、照明用の白色LEDであり、前記検査対象管内を拡散照明する前記複数の発光素子には、前記検査対象管内の側方乃至前方に照射光を拡散させるように光軸が設定されることを特徴とする請求項7記載の管内検査カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−28722(P2008−28722A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199505(P2006−199505)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】