説明

管内面塗装の乾燥方法、及び、それに用いられる管体保護用のキャップ

【課題】受口の管内面に溶剤系塗装を、直管部の管内面に粉体塗装を行う場合において、揮発した溶剤の管外への排出を円滑にする。
【解決手段】直管部4を挟んで一端に挿し口2を他端に受口3を備えた管体pに対し、前記受口3側の管端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分A,Bよりも奥部の管内面に粉体塗装を施した管内面塗装の乾燥方法において、前記溶剤系塗装を施した部分A,Bと前記粉体塗装を施した部分Cとの境界部に、前記受口3側から前記粉体塗装を施した部分Cへの光の侵入を防ぐ機能を有するキャップ10を取り付け、その状態で、前記溶剤系塗装の乾燥を行うこととした。溶剤系塗装を施した部分は、受口側の管端部を開放することができるので、揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、粉体塗装を施した部分は、キャップによって光や異物の侵入を排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管内面塗装の乾燥方法、及びその管内面塗装の乾燥に際し、管体の端部に嵌合される管体保護用のキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上水道や下水道等に用いられる各種管体の内周面には、その内面を保護するために、各種塗装が施される。特に、鋳鉄管等においては、その保護のために、モルタルライニングや粉体塗装(例えば、エポキシ樹脂粉体塗装)によって管内面塗装が施される場合が多い。
【0003】
これらの管体では、その輸送中や保管中等において、管内面塗装が汚損、劣化することを避けるために、その管体の両端部に、合成樹脂製の管体保護用のキャップを嵌合することが従来から行われている。
【0004】
特に、粉体塗装を施した管体においては、その管内面の塗装面は、管端から差し込む光によって劣化する恐れがあるので、管体の輸送中や保管中等において、その管体の管両端を管体保護用のキャップで塞ぐことは重要である。
【0005】
この種の管体pは、一般に、図5に示すように、管軸方向に一定の管径が続く直管部4を挟んで、管軸方向一端が挿し口2、他端が、隣り合う他の管体pの挿し口2をその内側に受け入れることができる受口3となっている。
【0006】
このため、前記キャップ1は、例えば、その図6に示すように、管体pの径の細い側の端部である挿し口2においては、その端部の管外面2bに嵌合され、径の太い側の端部である受口3においては、その端部の管内面3aに嵌合される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記の管体pにおいて、管内面の塗装範囲のうち、受口3に近い部分においては、管内面3aに凹凸が多い。この凹凸は、隣り合う管体pの挿し口2を受け入れた際に使用するパッキン、ロックリング等の形状や、あるいは、その挿し口2自体の外形に対応したものである。
【0008】
この受口3の内面には、一般に、溶剤系塗料を用いた塗装(以下、「溶剤系塗装」)が行われる。すなわち、直管部4の管内面4a(挿し口2の内面2aを含む)には一次塗装としての粉体塗装を行い、その後、凹凸の多い受口3付近の管内面3aには、二次塗装としての溶剤系塗装を行っている。
なお、エポキシ樹脂粉体塗装範囲は、JWWA G 112(日本水道協会規格)に規定されている。
【0009】
この溶剤系塗装を行った箇所は、管体の出荷時等において、その溶剤の臭気を除去しておく必要がある。揮発した溶剤が管内に残留していると、管内が揮発溶剤で飽和状態となり、それ以上の塗膜からの溶剤の揮発を妨げてしまうおそれがある。このようになれば、塗膜を充分に硬化させることができなくなる。
この点は、例えば、水道用鋳鉄管に関しては、日本水道協会規格 JWWA K 139では、出荷時に臭気について問題がないようにしなければならない、とされている。
【0010】
そこで、揮発した溶剤を管外へ排出することができるように、例えば、図6に示すように、キャップ1の底にドリルで穴6をあけている。キャップ1に穴6があれば、その穴6を通じて、揮発溶剤を管外へ逃がし、臭気の残留を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3099749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、揮発した溶剤を管外へ円滑に排出するためには、管体保護用のキャップ1に設けられる穴6は、その断面積ができる限り大きい方が好ましい。
【0013】
しかし、図6に示すキャップ1では、穴6の数を増やしたり、穴6の大きさ(穴6の断面積)を大きくすると、管内全体への異物の侵入につながるので好ましくない。また、穴6の数を増やしたり、穴6の大きさを大きくすることは、管内へ侵入する光量の増加に繋がるので、直管部4の管内面4aに施した粉体塗装への影響が懸念される。
【0014】
そこで、この発明は、受口の管内面に溶剤系塗装を、直管部の管内面に粉体塗装を行う場合において、揮発した溶剤の管外への排出を円滑にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、直管部を挟んで一端に挿し口を他端に受口を備えた管体に対し、前記受口側の管端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装を施した管内面塗装の乾燥方法において、前記溶剤系塗装を施した部分と前記粉体塗装を施した部分との境界部又はその境界部よりも奥部に、前記受口側から前記粉体塗装を施した部分への光の侵入を防ぐ機能を有するキャップを取り付け、その状態で、前記溶剤系塗装の乾燥を行うことを特徴とする管内面塗装の乾燥方法を採用した。
【0016】
この方法によれば、溶剤系塗装を施した部分は、受口側の管端部を開放することができるので、揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、粉体塗装を施した部分に対しては、キャップによって光や異物の侵入を排除することができる。
なお、受口内面は、従来から、出荷前塗装等に先立ってエアーブロー等により異物の除去を行っていたことから、キャップよりも受口側の管内に入り込んだ異物は、適宜、エアーブロー等により除去することができる。
【0017】
この構成からなる管内面塗装の乾燥方法は、前記管体が、前記直管部と前記受口との境に、他端側から一端側に向かうに連れて縮径する段部を有し、前記キャップは前記段部に取り付けられる構成とすることができる。
一般に、この種の管体には、同一内径の直管部を有していても、管体の種別によって、受口の内面形状が異なる仕様が存在する。このため、従来は、受口の内径に合わせたキャップをその都度用意しなければならなかった。しかし、上記のように、直管部と受口との境の段部にキャップを取り付ける構成とすれば、受口の内面形状に関わらず、直管部の内径が同一であれば、キャップを共通に利用できる。
また、段部とキャップとを接触させることで、キャップの管体に対する位置決めが容易であるという効果も期待できる。
【0018】
なお、段部が塗装の境界部となっている場合において、その段部の端面(他端側に向く面)内に境界部がある場合、あるいは、前記段部の端面と直管部の内面とが出会うコーナー部(段部の最も内径側に位置するコーナー部)に境界部がある場合等、が想定される。キャップは、少なくとも溶剤系塗装を施した部分を、できる限り覆わない形状、大きさであることが望ましい。
【0019】
また、前記キャップは、他端側から一端側に向かうにつれて縮径するテーパー面を有し、そのテーパー面が全周に亘り、前記段部の最も内径側に位置するコーナー部に接触している構成を採用することができる。
キャップのテーパー面が段部のコーナー部に当接することで、キャップと管体とが線接触状態となって、光の漏れをさらに効果的に防止し得る。また、キャップが管体に対してしっかりと嵌るので、キャップの脱落を防止することができる。
【0020】
前記キャップがテーパー面を有している構成において、キャップは、前記テーパー面から外径側へ伸びる突出部を有し、その突出部が前記段部のコーナー部、あるいはその段部の他端側へ向く面に当接することにより、前記キャップを前記管体に対して管軸方向に位置決めされている構成を採用することができる。
突出部が段部のコーナー部や他端側に向く面に当接すれば、キャップの管体に対する位置決めがさらに容易である。
【0021】
なお、前記突出部は、管軸周り全周に連続的に設けられたフランジ部である構成を採用することができる。
突出部がフランジ部であれば、そのフランジ部が前記段部の他端側へ向く面に対向することによって、直管部内への異物の侵入や光の侵入の防止に効果的である。
【0022】
さらに、これらの各構成において、前記キャップは、前記突出部よりも他端側に把持部を有し、その把持部を持つことによって、前記キャップの前記境界部又はその境界部よりも奥部への取り付け又は取り外しを行う構成を採用することができる。
把持部があれば、キャップの着脱に便利である。特に、この発明では、管体の受口側の端部から奥部へ入り込んだところにキャップを取り付けることから、従来のように管端にキャップを取り付ける場合と比較して、このような把持部を設ける効果が高い。
【0023】
また、前記キャップが、内部に中空部を有する本体部と、その中空部の一端側の端部を閉じる底部とを備えている場合において、前記把持部は、前記底部又は本体部から前記中空部を通って前記本体部よりも他端側に突出している構成を採用することができる。
把持部が底部又は本体部から他端側へ伸びて、さらにその本体部よりも他端側に突出していることで、管外からのキャップの着脱が容易である。
また、その把持部が底部の中央から伸びている構成とすれば、キャップを取り付ける際の押し込み力、及び取り外す際の引き抜き力が本体部全体に行き渡りやすい。
なお、前記把持部が、前記管体の他端側の端部から管外に突出していれば、さらにキャップの着脱が容易である。
【0024】
これらの各構成からなる管内面塗装の乾燥方法に使用するキャップとして、以下のものを採用することができる。
すなわち、その構成は、直管部を挟んで一端に挿し口を他端に受口を備えた管体に対し、前記受口側の管端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装を施されており、前記溶剤系塗装を施した部分と前記粉体塗装を施した部分との境界部又はその境界部よりも奥部に取り付けられ、前記受口側から前記粉体塗装を施した部分への光の侵入を防ぐ機能を有していることを特徴とする管体保護用のキャップである。
【発明の効果】
【0025】
この発明は、溶剤系塗装を施した部分と粉体塗装を施した部分との境界部又はその境界部よりも奥部に、キャップを取り付けるようにしたので、溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、粉体塗装を施した部分に対しては、キャップによって光や異物の侵入を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態を示し、(a)は断面図、(b)(c)は(a)の要部拡大図
【図2】同実施形態のキャップの斜視図
【図3】(a)(b)(c)(d)(e)は、それぞれ他の実施形態のキャップの斜視図
【図4】(a)(b)(c)は、異なる形状を有する管体での実施形態を示す断面図
【図5】管体に対する塗装の区分を示す断面図
【図6】従来例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、上水道等に用いられる管体(鋳鉄管)pに対して管内面塗装を行う場合における、その管内面塗装の乾燥方法、及びその管内面塗装の乾燥方法に使用する管体保護用のキャップ10に関するものである。
【0028】
管体pは、図5に示すように、管内外径一定の直管部4を挟んで、図中右側に示す一端に挿し口2を、左側に示す他端に受口3を備えている。
【0029】
この実施形態では、この管体pの外面に対して所定の塗装(外面塗装)を行った後、図5に符号B、符号Cで示す部分に粉体塗装(一次塗装)を行う。この粉体塗装としては、例えば、エポキシ樹脂粉体塗装を採用することができる。また、この実施形態では、一次塗装の塗装厚は、300μm以上としている。
【0030】
その後、符号Aで示す受口3側の管端部の管内面に溶剤系塗装(二次塗装)を施す。この溶剤系塗装としては、例えば、エポキシ樹脂塗料を採用することができる。また、この実施形態では、二次塗装の塗装厚は、60μmとしている。
なお、この実施形態では、図中に示すように、受口3の内面のうち、符号Aで示す溶剤系塗装を施した部分と、符号B示す粉体塗装を施した部分とは、一部重ね塗りが行われている。ただし、符号Aで示す部分に加えて符号Bで示す部分全域までを、溶剤系塗装で重ね塗り(上塗り)する場合もある。
【0031】
この後、管体pは乾燥工程へ移送され、管内面への一次塗装、二次塗装による塗装面の乾燥を行う。
【0032】
この一次塗装、二次塗装による塗装面の乾燥に際し、図1(a)に示すように、管体保護用のキャップ10を取り付ける。キャップ10は、管体pの直管部4と受口3との境の段部5に嵌めて固定される。
【0033】
段部5は、管体pの他端側(受口3側)から一端側(挿し口2側)に向かうに連れて縮径する形状である。また、キャップ10は、内部に中空部を有する本体部14と、その中空部の一端側の端部を閉じる底部15とを備えている。本体部14は、他端側から一端側に向かうにつれて縮径するテーパー面11を有しているから、全体としてキャップ10の外面は円錐台状を成している。
【0034】
このため、キャップ10が段部5に取り付けられると、本体部14のテーパー面11が、その全周に亘り、段部5の最も内径側に位置するコーナー部5aに接触している状態である。テーパー面11とコーナー部5aとが接触するから、いわゆる線接触状態となって、密着度合いが高められている。キャップ10の緩みも防止される。
【0035】
また、キャップ10は、前記テーパー面11から外径側へ伸びる突出部12を有している。この実施形態では、突出部12は、図2に示すように、その外面が管軸方向に沿って円弧状に突出するように形成されており、且つ、その形状で管軸周り全周に連続的に設けられている。
【0036】
その突出部12は、図1(a)に示すように、前記段部5のコーナー部5a、あるいはその段部5の他端側へ向く面5bに当接する。この当接により、前記キャップ10は前記管体pに対して管軸方向に位置決めされる。また、キャップ10が、他端側から一端側へ向かって強く押し込まれることによる、そのキャップ10の段部5への噛み込みも防止されている。
【0037】
すなわち、キャップ10は、二次塗装としての溶剤系塗装を符号Aで示す部分のみに施した場合は、その溶剤系塗装を施した部分と粉体塗装を施した部分との境界部よりも奥部に取り付けられたことになり、二次塗装としての溶剤系塗装を符号Aで示す部分に加え符号Bで示す部分全域にも施した場合は、その境界部に取り付けられたことになる。
【0038】
このようにキャップ10を取り付けた状態で、一次塗装、二次塗装による塗装面の乾燥を行う。
このとき、キャップ10が、受口3側から直管部4内、すなわち、粉体塗装を施した部分Cへの光の侵入を防ぐ機能を有していることから、溶剤系塗装を施した部分A(又は、A及びB)から揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができる。また、粉体塗装を施した部分Cへは、キャップ10によって光や異物の侵入を排除することができる。
【0039】
一次塗装、二次塗装による塗装面の乾燥が終了した後、キャップ10を取り外して受口3の内面に出荷前塗装を行う。具体的には、キャップ10を取り外す前、あるいは取り外した後、受口3の内面をエアブロー等により清掃し、その後、符号Dで示す部分(この実施形態では、符号A及び符号Bで示す部分と一致)に溶剤系塗料を上塗りすることで、出荷前塗装としている。この出荷前塗装における溶剤系塗装としては、例えば、アクリル樹脂塗料を採用することができる。また、この実施形態では、その塗装厚は、20μmとしている。
【0040】
図1(b)は、出荷前塗装を行う前の受口3の要部を示す断面である。図1(c)は、出荷前塗装を行った後の受口3の要部を示す断面である。
【0041】
出荷前塗装が終了すると、最後に、受口3の端部に出荷時用キャップを嵌めて、受口3の内面に施した出荷前塗装の乾燥を行う。出荷時用キャップは、受口3の内部への異物の侵入を防止する機能を発揮する。管体pは、この出荷時用キャップが取り付けられた状態のまま出荷、保管されることとなる。
なお、この出荷時用キャップとしては、例えば、図6に示す従来のキャップ1を採用することができる。
【0042】
この図6に示すキャップ1は、受口3の端部内面に嵌めるタイプのものであるが、受口3の端部外面に嵌めるタイプのものでもよい。いずれの場合にも、従来例と同様、その取り付け状態で、管の内外を連通する穴6が設けられているものとすることができる。この穴6を設けておくことによって、出荷前塗装を施した部分から揮発した溶剤を、その後の出荷、運搬、保管時の比較的長い時間を通して、管外へ排出することができる。また、挿し口2側のキャップ1に、管の内外を連通する穴6を設けても良い。
【0043】
図3(a)〜(e)は、キャップ10の変形例である。
【0044】
図3(a)に示すキャップ10は、突出部12よりも他端側に把持部13を備えたものである。このため、作業者は、その把持部13を持つことによって、前記キャップ10の取り付け又は取り外しを行うことができる。キャップ10が、受口3内の奥部に取り付けられることから、把持部13を設けておくと、そのキャップ10の着脱が容易である。
【0045】
なお、この例では、前記突出部12の外面を、管軸方向に沿って矩形に突出するように形成し、且つ、その形状で管軸周り全周に連続的に設けた構成としている。突出部12の少なくとも一端側(挿し口2側)の端面の面方向が、管軸方向に対して直交する形態である。これにより突出部12は、直管部4内面と受口3内面との境にある段部5に対し、その段部5の他端側(受口3側)に向く面5bに面接触し、直管部4内への光の侵入をより確実に抑制できる。
【0046】
つぎに、図3(b)に示すキャップ10は、中空部の一端側の端部を閉じる底部15の中央に、他端側に向かって凹む凹部16を備えたものである。凹部16によって、キャップ10の剛性が高められている。また、図3(c)に示すキャップ10は、突出部12を省略したものである。
【0047】
図3(d)に示すキャップ10は、底部15からその中空部を通って本体部14よりも他端側に突出する把持部13を備えたものである。把持部13が他端側に突出しているので、作業者は、受口3内に手を深くまで差し入れる必要がない。このため、キャップ10を受口3内の奥部へ着脱する際の作業が容易である。
【0048】
なお、把持部13は、底部15の中央から伸びているので、キャップ10を取り付ける際の押し込み力、及び取り外す際の引き抜き力が本体部14全体に行き渡りやすい。
また、把持部13は、前記境界部への取り付け状態において、前記管体pの他端側の端部から管外に突出している構成とすることもできる。この構成によれば、さらにキャップ10の着脱が容易である。
【0049】
さらに、この把持部13は、キャップ10に対して着脱可能とすることができる。例えば、把持部13を本体部14内に底部15へ向かって押し込むことで、その把持部13が本体部14の内周に圧入固定され、その把持部13を引っ張れば本体部14から外れる構成とすることができる。このように、把持部13を本体部14の内周に圧入固定とする場合、例えば、図3(e)に示すように、把持部13の奥端部13aが板状になっていれば、把持部13を着脱可能とすることに伴う重量増を最小限に抑え、且つ、その圧入固定がしっかりとしたものとなる。なお、図3(e)では、その板状の奥端部13aを円板状としているが、本体部14の内周に圧入可能な形状であれば、他の形状であってもよい。すなわち、奥端部13aは、本体部14の内周面の断面形状に合わせて種々の形状とできる。
【0050】
図4(a)(b)は、他の断面形状を有する管体pに対し、管体保護用のキャップ10を取り付けた状態を示す。このように、この発明による管内面塗装の乾燥方法、及びそれに用いられる管体保護用のキャップ10を採用し得る管体pは、実施形態に限定されない。
【0051】
また、上記の各実施形態では、一次塗装、二次塗装までを終了した状態において、溶剤系塗装を施した部分と、粉体塗装を施した部分との境界部が、管体pの直管部4と受口3との境の段部5又は、その段部5よりも他端側(受口3側)に位置しており、キャップ10は、その段部5に嵌めて固定される態様を中心に説明したが、他の実施形態として、キャップ10が、段部5以外の部分に取り付けられる形態も考えられる。
【0052】
例えば、図4(c)に示すように、溶剤系塗装を施した部分Aと、粉体塗装を施した部分(C及びBの一部)との境界部が、受口3内面と直管部4との境に設けられる段部5よりも他端側(受口3側)に位置している場合において、キャップ10が、その境界部に固定されている態様である。
この態様においても、粉体塗装を施した部分への光と異物の侵入防止に関する限り、所定の効果を発揮し得る。この場合、キャップ10の固定は、ロックリング等に対応した図中の凹部3cを利用して固定してもよいし、受口3のフラットな管内面3aに圧入して固定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1,10 キャップ
2 挿し口
3 受口
4 直管部
5 段部
5a コーナー部
5b 他端側に向く面(端面)
6 穴
11 テーパー面
12 突出部
13 把持部
14 本体部
15 底部
16 凹部
p 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部(4)を挟んで一端に挿し口(2)を他端に受口(3)を備えた管体(p)に対し、前記受口(3)側の管端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装を施した管内面塗装の乾燥方法において、
前記溶剤系塗装を施した部分と前記粉体塗装を施した部分との境界部又はその境界部よりも奥部に、前記受口(3)側から前記粉体塗装を施した部分への光の侵入を防ぐ機能を有するキャップ(10)を取り付け、その状態で、前記溶剤系塗装の乾燥を行うことを特徴とする管内面塗装の乾燥方法。
【請求項2】
前記管体(p)は、前記直管部(4)と前記受口(3)との境に、他端側から一端側に向かうに連れて縮径する段部(5)を有し、前記キャップ(10)は前記段部(5)に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項3】
前記キャップ(10)は、他端側から一端側に向かうにつれて縮径するテーパー面(11)を有し、そのテーパー面(11)が全周に亘り、前記段部(5)の最も内径側に位置するコーナー部(5a)に接触していることを特徴とする請求項2に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項4】
前記キャップ(10)は、前記テーパー面(11)から外径側へ伸びる突出部(12)を有し、その突出部(12)が前記段部(5)のコーナー部(5a)、あるいはその段部(5)の他端側へ向く面(5b)に当接することにより、前記キャップ(10)を前記管体(p)に対して管軸方向に位置決めされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項5】
前記突出部(12)は、管軸周り全周に連続的に設けられたフランジ部であることを特徴とする請求項4に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項6】
前記キャップ(10)は、前記突出部(12)よりも他端側に把持部(13)を有し、その把持部(13)を持つことによって、前記キャップ(10)の前記境界部又はその境界部よりも奥部への取り付け又は取り外しを行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項7】
前記キャップ(10)は、内部に中空部を有する本体部(14)と、その中空部の一端側の端部を閉じる底部(15)とを備え、前記把持部(13)は、前記底部(15)又は本体部(14)から前記中空部を通って前記本体部(14)よりも他端側に突出していることを特徴とする請求項6に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項8】
前記キャップ(10)は、内部に中空部を有する本体部(14)と、その中空部の一端側の端部を閉じる底部(15)とを備え、前記把持部(13)は、前記底部(15)の中央から前記中空部を通って前記本体部(14)よりも他端側に突出していることを特徴とする請求項6に記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項9】
前記把持部(13)は、前記管体(p)の他端側の端部から管外に突出していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一つに記載の管内面塗装の乾燥方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載の管内面塗装の乾燥方法に使用するキャップ(10)であって、直管部(4)を挟んで一端に挿し口(2)を他端に受口(3)を備えた管体(p)に対し、前記受口(3)側の管端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装を施されており、前記溶剤系塗装を施した部分と前記粉体塗装を施した部分との境界部又はその境界部よりも奥部に取り付けられ、前記受口(3)側から前記粉体塗装を施した部分への光の侵入を防ぐ機能を有していることを特徴とする管体保護用のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194394(P2010−194394A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39109(P2009−39109)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】