説明

管型流通式反応装置

【課題】合流直後の反応基質間の接触面積を増やし、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制された管型流通式反応装置を提供する。
【解決手段】反応に使用する2種以上の流体をそれぞれに流入させるための複数の流入路;該流体を合流させ且つ合流した流体を流通させながら反応させることができる内腔を有する反応管;反応生成物を反応管から流出させるための流出路;および前記反応管内腔内の合流部に設置された棒状超音波放射体;を有し、前記の流入路および流出路は各内腔と前記反応管内腔とが連通するように反応管にそれぞれ接続されていて、且つ前記棒状超音波放射体から、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を照射することができる管型流通式反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管型流通式反応装置に関する。より詳細には、本発明は合流直後の反応基質間の接触面積を増やし、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制された管型流通式反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、試薬などの流体を化学反応させるための流通式反応装置として、マイクロサイズやミリサイズの反応装置の開発が進められている。
マイクロ反応装置の最も単純な形のものとして、T字型またはY字型の反応器が挙げられる。該反応器は、深さ40μm、幅100μmほどのT字型またはY字型の溝が板に刻まれており、平板で蓋をして管と接続されている。蓋となる板にはT字またはY字の末端に1つずつ、計3つの穴があけられている。上部左右から2種の反応基質それぞれが同時に投入され、中央で合流し、下部に向かって流れながら反応し、生成物となって下部から排出される。反応基質の流量が等しい場合、T字またはY字のちょうど根元の部分で反応が開始することになる。
【0003】
マイクロ反応装置の流路の内径は小さいので、レイノルズ数が小さくなり、流体の流れは層流になる。層流領域においては、管径方向の対流が少なくなるので、投入された両基質は、合流直後は下降管の略中央を境にして左右に分かれて別々に流れており、両流体の接触面はその境界面のみとなる。この境界面における拡散によって両基質は接触する。ただ、このような状態では両基質の接触頻度が低く、また基質の濃度が不均一となりやすい。混合が不十分となると、反応により生成された物質がさらに反応基質と反応するなどして副生成物が生じ、収率が低下してしまうことがある。また、2種反応基質の流量が大きく異なる場合、例えば、A液:B液の体積比が1:10のような場合には、2液の境界面がA液側に偏ることになる。B液がA液と接触する確率が非常に小さくなり、B液がA液と接触しないままで反応器の出口に達してしまうことがある。特に反応基質の粘度が大きい場合には、このような現象が顕著となる。
【0004】
流体の合流直後の混合を改善することを試みた反応装置として、例えば、特許文献1には、複数の流路とこれら複数の流路が合流する合流路とを有し、前記複数の流路を流れる流体を前記合流路で合流させて反応させるマイクロリアクタにおいて、前記合流路に超音波を照射するための超音波振動子を合流路の外側面に配置してなるマイクロリアクタが開示されている。
特許文献2には、nm〜μm単位の寸法で形成された毛細流路を有し前記毛細流路に供給された原料又は試料等の流体を混合又は反応させる微小反応デバイスにおいて、前記流路に超音波振動を伝導する超音波振動子を更に備え、前記超音波振動子は前記超音波振動により前記流路を通過する流体を撹拌することを特徴とする微小反応デバイスが開示されている。
【0005】
特許文献3には、円筒又は方形容器に超音波放射面が半円弧又は平板状の超音波振動子を装着し、前記円筒又は方形容器内の被処理溶液に前記超音波振動子から超音波を照射することにより、前記円筒又は方形容器内部に超音波を集束させることを特徴とする円筒型ソノリアクターが開示されている。
特許文献4には、音響放射体とする円管の外表面に超音波振動子を固定し、振動子からの振動を均衡的に伝達するリングを設け、円管の中部に冷却或いは加熱流体用金属管を装着し、円管の両端にフランジで固定した管式超音波化学反応器が開示されている。
これら特許文献1〜4に記載の反応装置では超音波振動子を反応容器の外壁に設置し、該外壁を超音波放射体として利用し、流路内の流体に物理的振動を与え、流体の混合効率の向上を試みている。
【0006】
特許文献5には、球状または筒状反応槽と、超音波エネルギーを放射する円柱状または円筒状の放射体とを備え、上記放射体の一端に少なくとも1つの周波数の超音波振動を発生する振動子が設けられ、上記放射体を上記反応槽の中に配置するように、上記放射体の上記振動子が設置された端を上記反応槽に固定し、上記放射体の側面、又は他端および側面が放射面として上記反応槽内へ超音波を放射することを特徴とする反応装置が記載されている。この特許文献5に記載の反応装置では、超音波放射体の基部は固定されているが、先端部は自由端となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−51410号公報
【特許文献2】特開2005−224746号公報
【特許文献3】特開2000−84404号公報
【特許文献4】特開平10−216507号公報
【特許文献5】特開2003−200042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、合流直後の反応基質間の接触面積を増やし、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制された新しい管型流通式反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、反応に使用する2種以上の流体をそれぞれに流入させるための複数の流入路;該流体を合流させ且つ合流した流体を流通させながら反応させることができる内腔を有する反応管;反応生成物を反応管から流出させるための流出路;および前記反応管内腔内の合流部に設置された棒状超音波放射体;を有し、前記の流入路および流出路は各内腔と前記反応管内腔とが連通するように反応管にそれぞれ接続されていて、且つ前記棒状超音波放射体から、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を照射することができる管型流通式反応装置を用いたところ、合流直後の反応基質間の接触面積が増え、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制されることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
〈1〉反応に使用する2種以上の流体をそれぞれに流入させるための複数の流入路;該流体を合流させ且つ合流した流体を流通させながら反応させることができる内腔を有する反応管;反応生成物を反応管から流出させるための流出路;および前記反応管内腔内の合流部に設置された棒状超音波放射体;を有し、
前記の流入路および流出路は各内腔と前記反応管内腔とが連通するように反応管にそれぞれ接続されていて、且つ
前記棒状超音波放射体から、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を照射することができる管型流通式反応装置。
〈2〉反応管の外周に流体を冷熱するためのジャケットをさらに有する前記〈1〉に記載の管型流通式反応装置。
〈3〉反応管の内面および/または棒状超音波放射体の外面に凹凸が在る、前記〈1〉または〈2〉に記載の管型流通式反応装置。
〈4〉2種以上の流体を反応管内腔内に流入させ、 反応管内腔内の該流体が合流する部分に設置された棒状超音波放射体によって、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を内側から外側に向けて照射して該流体を撹拌することを含む、 管型流通式反応装置に供給された2種以上の流体を混合する方法。
〈5〉2種以上の流体を反応管内腔内に交互に流入させる、前記〈4〉に記載の混合方法。
〈6〉2種以上の流体を反応管の内腔内で旋回流を生じるように反応管の内周接線方向から流入させる、前記〈4〉または〈5〉に記載の混合方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の管型流通式反応装置および混合方法によれば、合流直後の反応基質間の接触面積が増え、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制される。
本発明の管型流通式反応装置において2種以上の流体を流入させる際に該流体の流量が大きく異なる場合でも、合流直後の反応基質間の接触面積を十分に確保することができ、その結果、濃度不均一を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の管型流通式反応装置の一実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明の管型流通式反応装置の他の実施形態を示す概念図である。
【図3】流体を交互流入させるときの流量制御の例を示す図である。
【図4】本発明の管型流通式反応装置の流入路と反応管との位置関係の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の管型流通式反応装置を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、該実施形態によって限定されるものではなく、本発明の趣旨および目的に適う範囲で、変形、追加、または修正したものも包含する。
【0014】
図1は、本発明の管型流通式反応装置の一実施形態を示す概念図である。本発明の反応装置は、流体を流通させながら反応させることができる内腔を有する反応管2と、棒状超音波放射体4とを有する。棒状超音波放射体4は反応管2に流入路1a,1bが接続された部分付近(すなわち合流部)の反応管内腔内に長手方向に沿って設置されている。図1においては棒状超音波放射体は流入路側の一端が反応管の端に固定され、他端は自由端になっている。この実施形態では、反応管と棒状超音波放射体とによって合流部(図1中の左側部分)の内腔は断面円環形状を成し、棒状超音波放射体の無い部分(図1中の右側部分)の内腔は断面円形状を成している。なお、図面では反応管と棒状超音波放射体がほぼ同軸に配置されているように示されているが、本発明の反応装置はそれに限らない。図1に示した実施形態では、反応管および棒状超音波放射体は真直ぐであるが、これに限定されず、曲がっていてもよい。また、反応管の内腔内には通常一本の棒状超音波放射体が配置されるが、これに限定されない。複数本の棒状超音波放射体が反応管の内腔内に配置されていても良い。反応管および棒状超音波放射体は断面円形のものに限定されない。
【0015】
反応管および棒状超音波放射体のサイズは特に制限されない。マイクロサイズまたはミリサイズの反応装置とする場合には、反応管内面と棒状超音波放射体外面との隙間が、50μm〜2.5mmであることが好ましく、50μm〜1mmが特に好ましい。また、市販のチューブやコネクタ等を用いて反応装置を製造できるという観点から、反応管の内径は2mm〜10mmが好ましく、棒状超音波放射体の外径は1mm〜5mmが好ましい。
反応管の厚さや材質は、強度、熱伝導性、耐食性、耐熱性などの観点から適宜選択できる。また、棒状超音波放射体の外面は、耐食性や耐熱性の観点から、チタン金属、チタン基合金、ニッケル基合金(例えば、ハステロイ(登録商標);インコネル(登録商標))、コバルト基合金(例えば、ステライト(登録商標))などの合金から成るものが好ましい。
【0016】
反応管の一端には、反応に使用する2種以上の流体をそれぞれに流入させる流入路1a,1bが接続されている。各流入路は流入路の内腔と反応管の内腔とが連通するように接続されている。なお、流入路の数は図面に示したものに限らない。また流入路は反応管に接続される位置よりも上流で複数の流路が合流したものであってもよい。流入路から流れ込んだ2種以上の流体は反応管の内腔内で合流させられる。各流入路と反応管との接続は、棒状超音波放射体に対してどのような角度をなしていてもよいが、略直交するようになっていることが好ましい。なお、本発明において、略直交または略直角とは90度±45度のことである。
また、図1に示した反応装置では、流入路は上下対称になったものが描かれているが、、流入路が接続する位置が反応管の長手方向で相互にずれていてもよい。例えば、流入路1bが反応管の端に斜めに接続されていて、流入路1aが流入路1bよりも下流側に少しシフトした位置に斜めに接続されていてもよい。
【0017】
さらに、流入路の中心軸は反応管の中心軸と交わっている必要はない。図4は本発明の反応装置の反応管の長手方向から観察した図である。
図4(a)は、流入路の中心軸が反応管の中心軸と交わっている態様(反応管2の中心軸から放射する方向に流入路1aおよび1b(並びに流出路3)が接続されている。)のものである。流入路から入った流体は棒状超音波放射体に正面から衝突する。
図4(b)は、流入路の中心軸が反応管の中心軸と交わっていない態様(反応管2’の内周接線方向に流入路1a’および1b’が接続され、流出路3’が反応管2’の中心軸から放射する方向に接続されている。)のものである。
図4(c)は、流入路の中心軸が反応管の中心軸と交わっていない態様(反応管2”の内周接線方向に流入路1a”および1b”(並びに流出路3”)が接続されている。)のものである。図4(b)や(c)のように流入路を反応管の内周接線方向に接続すると、棒状超音波放射体と反応管との間の円環空間で旋回する流れ(例えば、図4中の時計回りの矢印の流れ)が生じる。
【0018】
また、2種以上の流体は合流空間に交互に流入するようにすることができる。2種以上の流体を合流空間に交互に流入させるとそれぞれが栓流(プラグフロー)状態となって下流に向かって流れていくと考えられる。該流体の栓流は、流下とともに、拡散によって相互に混ざりあい均一化する。例えば、図3に示すような流量制御を行って、A液とB液とをそれぞれ間欠的に流入路1a,1bを通して送り込むことができる。総流量が変動しないように、A液とB液との切り替え時におけるA液の流量(図3中の破線)とB液の流量(図3中の実線)との和が一定になるように流量制御することが好ましい。また、例えば、A液、B液およびC液の3種を用いる場合には、A液,B液およびC液を順に繰り返して流入させることもできるし、A液とB液の組合せ、B液とC液の組合せ、C液とA液の組合せを、順に繰り返して流入させることもできる。流量パターンはこれらに限定されない。このような流量制御を行うことができる装置としては、プランジャーポンプ、シリンジポンプなどが挙げられる。反応管を流れる流体の総流量は、化学反応速度、滞留時間、管の径、管の長さなどを考慮して適宜決められる。
【0019】
2種以上の流体の交互流入の切り替え間隔は、反応管の容積等に応じて、適宜に選択できる。例えば、数ミリ秒間〜数秒間ごとに2種以上の流体の交互流入の切り替えを行うことができる。このように流体の交互流入を行うと流体間の界面積が大幅に増え、流体の均一混合が促進される。
【0020】
各流体の流量は、特に制限されない。例えば、各流体の流入量は等しくすることができる。流入量を等しくした場合には、A液およびB液のそれぞれに含まれる反応基質が等モルで反応するものである場合は、A液およびB液に含まれるそれぞれの反応基質濃度を等しくすることができる。また、反応基質が2:1のモル割合で反応するものである場合は、A液およびB液に含まれるそれぞれの反応基質濃度を2:1にすることができる。なお、反応基質の反応性、逆反応などを考慮して、上記濃度比は、修正してもよい。
また、本発明の反応装置は各流体の流入量が大きく異なる場合、例えば、A液:B液の体積比が1:10のような場合にも適用できる。本発明の反応装置においては、各流体の流入量が大きく異なる場合でも、合流直後の反応基質間の接触面積を十分に確保することでき、その結果、濃度不均一を最小限に抑えることができる。
合流した流体は反応管の内腔を長手方向に流通させられる。その間に反応基質が化学反応して生成物が得られる。
【0021】
本実施形態の反応装置では、反応管の合流部内腔は棒状超音波放射体によって断面が円環形状に区切られている。通常の円管(断面が円形の管)においては流体が層流状態で流れるので、管の軸中心の流速と管壁近傍における流速とに大きな差ができる。例えば、A液とB液との交互流入で形成されると考えられる栓流が管の長手方向に凸状の濃度分布となる。一方、本実施形態の反応装置では、合流部内腔の断面が円環形状となっている。該円環空間の中央部の流速と管壁近傍との流速との差は小さく、理論的な栓流状態に近い流れが保たれ、その状態で拡散による均一化が起きると考えられる。この流速分布の相違によって、本発明の反応装置では合流直後の反応基質間の接触面積が増え、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制されると推察できる。
【0022】
本発明の管型流通式反応装置では、棒状超音波放射体から、反応管内腔内を通過する流体に超音波を照射することができる。この超音波によるキャビテーション効果・振動加速度の効果・直進流の効果などによって流体を撹拌し、混合効率を向上させることができる。棒状超音波放射体は内腔内に設置されているので、放射体表面から360度方向に超音波エネルギーを外側に向けて放射することができ、より均一な撹拌を実現できる。棒状超音波放射体の先端位置は特に限定されない。反応管内で合流した流体が均一に混合されるまでの範囲に棒状超音波放射体が在る様にすることが好ましい。具体的には、棒状超音波放射体の直径をdとしたとき、流体と接触する部分の長手方向の長さLがd〜10dであることが好ましい。
【0023】
棒状超音波放射体は、超音波を発生させる素子と、素子で発生させた超音波を伝播させ外部に放射するための振動面とを有するものである。超音波発生素子として圧電素子または磁歪素子が通常利用される。圧電素子は、電圧を印加すると歪みを生じるセラミクスで構成されている。圧電素子に交流電圧を印加すると、その周波数でセラミクスが歪み、超音波振動が励起される。磁歪素子は、磁界を印加すると歪みを生じるセラミクスで構成されている。磁歪素子に交流磁界を印加すると、その周波数でセラミクスが歪み、超音波振動が励起される。本発明に使用される棒状超音波放射体は振動面が反応管の中に存する棒の表面全体であることが好ましい。なお、棒状超音波放射体として、市販のものを利用してもよい。
発生させる超音波は、正常な聴力を持つ人に聴感覚を生じないほどに高い周波数(振動数)の音波(弾性波)であり、具体的には、周波数が通常20kHz以上の音波である。低い周波数ほど撹拌エネルギーが大きくなるので、周波数の上限は好ましくは100kHzである。
【0024】
図面に示した反応装置では、反応管の内面および棒状超音波放射体の外面は凹凸の無い滑らかな面になっているが、反応管の内面または/および棒状超音波放射体の外面に、凹凸を設けたものが好ましい。該凹凸としては、螺旋状の溝(または螺旋状の畝)であってもよいし、流体の流れを妨げる方向に沿った溝(または畝)であってもよいし、点状の突起や窪みであってもよい。
【0025】
本発明の反応装置における反応管の長さは、化学反応速度や流量等に応じて適宜選択できる。遅い反応速度の化学反応を行う場合は管の長さを長くすることができ、逆に速い反応速度の化学反応を行う場合は管の長さを短くすることができる。反応温度は、反応管の内部と外部との熱交換によって、制御することができる。例えば、図2に示すように反応管を囲むように外側にジャケットを設置することができる。流路5aからジャケット5に冷媒または熱媒を流し入れて反応管内の流体との熱交換を行うことができる。流路5bは冷媒または熱媒の排出口である。反応管の外側には熱交換効率を高めるためにフィンを設けることもできる。
【0026】
得られた反応生成物は反応管の他端に接続された流出路3を経由して流出させる。流出路3の先には、別の反応装置(本発明の管型流通式反応装置を含む。)等を接続することができるし、また精製のための装置を接続することができる。図1では、流出路3は棒状超音波放射体4に対して略直角に接続されているが、これに限られない。流出路3は棒状超音波放射体に対して斜めに接続されていてもよい。また、図4に示したように、流出路は反応管の中心軸から放射する方向に接続されていてもよいし(図4(a)や(b))、反応管の接線方向に接続されていてもよい(図4(c))。なお、流出管の数は1本に限られない。2本以上であってもよいし、また、分岐をしていてもよい。
【0027】
以上のように、本発明の管型流通式反応装置は、流路の断面形状等による作用と、超音波振動による作用とが相乗して、従来の超音波反応装置に比べて、合流直後の反応基質間の接触面積が増え、且つ濃度不均一による反応生成物の収率低下が抑制されるという、優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0028】
1a、1b:流入路
2:反応管(合流部と反応部)
3:流出路
4:棒状超音波放射体
5:熱交換用ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応に使用する2種以上の流体をそれぞれに流入させるための複数の流入路;該流体を合流させ且つ合流した流体を流通させながら反応させることができる内腔を有する反応管;反応生成物を反応管から流出させるための流出路;および前記反応管内腔内の合流部に設置された棒状超音波放射体;を有し、
前記の流入路および流出路は各内腔と前記反応管内腔とが連通するように反応管にそれぞれ接続されていて、且つ
前記棒状超音波放射体から、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を照射することができる管型流通式反応装置。
【請求項2】
反応管の外周に流体を冷熱するためのジャケットをさらに有する請求項1に記載の管型流通式反応装置。
【請求項3】
反応管の内面および/または棒状超音波放射体の外面に凹凸が在る、請求項1または2に記載の管型流通式反応装置。
【請求項4】
2種以上の流体を反応管内腔内に流入させ、
反応管内腔内の前記流体が合流する部分に設置された棒状超音波放射体によって、反応管内腔内を通過する流体に、超音波を内側から外側に向けて照射して該流体を撹拌することを含む、
管型流通式反応装置に供給された2種以上の流体を混合する方法。
【請求項5】
2種以上の流体を反応管内腔内に交互に流入させる、請求項4に記載の混合方法。
【請求項6】
2種以上の流体を反応管の内腔内で旋回流を生じるように反応管の内周接線方向から流入させる、請求項4または5に記載の混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−50937(P2011−50937A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205202(P2009−205202)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000227087)日曹エンジニアリング株式会社 (33)
【Fターム(参考)】