説明

管状治療具留置装置

【課題】カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができ、かつ、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要がなく、さらには装置外面の滑らかさを損なうことのない管状治療具留置装置を提供する。
【解決手段】径方向に拡張可能なステントグラフトSGを患部に留置するための管状治療具留置装置1。管状治療具留置装置1は、管状の第1シース10と、第1シース10の内側を第1シースの軸方向に沿って進退可能に構成された管状の第2シース20と、第2シース20の内側を第2シース20の軸方向に沿って進退可能に構成されたロッド部材30と、第2シース20に配設されたバルーン40とを備える。バルーン40は、第1シース10に対して第2シース20を進行させることにより、第1シース10の内から外へ露出可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向に拡張可能な管状治療具を患部に留置するための管状治療具留置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PTCA(経皮的冠動脈形成術)に用いられるステント留置装置として、従来、シースの先端部にバルーンが配置されたステント留置装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
自己拡張型ではないステントを留置する場合、バルーンを備えていないステント留置装置であると、ステントを留置した後、ステント留置装置を一旦抜き取ってバルーンカテーテルを挿入する必要があるため、カテーテルの交換作業が非常に面倒である。また、ステント留置装置とは別にバルーンカテーテルを準備しなければならない。
これに対し、上記した従来のステント留置装置によれば、バルーンを備えているため、ステント留置装置を挿入したままバルーンによる拡張を行うことができる。その結果、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことが可能となる。また、ステント留置装置とは別にバルーンカテーテルを準備する必要もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−530200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のステント留置装置においては、バルーンがステント留置装置の外面に露出しているため、バルーンを備えていないステント留置装置と比べると、装置外面(外表面)の滑らかさの点で劣るという問題がある。
【0006】
なお、この問題は、ステント留置装置に限った問題ではなく、ステント以外の管状治療具を患部に留置するための管状治療具留置装置にも起こり得る問題である。
例えば、径方向に拡張可能なステントグラフトを患部に留置するためのステントグラフト留置装置においては、ステントグラフトの折れ目やシワを伸ばしたり血管壁への密着を確実にしたりするために、バルーンカテーテルを挿入してステントグラフトを再拡張(追加拡張)することがある。このとき、上記した従来のステント留置装置をステントグラフト留置装置として用いると、装置を挿入したままバルーンで再拡張することができる結果、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができるし、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要もない。しかしながら、バルーンが装置外面に露出していることから、バルーンを備えていないステントグラフト留置装置と比べると、装置外面の滑らかさの点で劣ってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができ、かつ、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要がなく、さらには装置外面の滑らかさを損なうことのない管状治療具留置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の管状治療具留置装置(1)は、径方向に拡張可能な管状治療具(SG)を患部に留置するための管状治療具留置装置(1)であって、可撓性を有し、管状の第1シース(10)と、可撓性を有し、前記第1シースの内側を前記第1シースの軸方向に沿って進退可能に構成された管状の第2シース(20)と、前記第2シースの内側を前記第2シースの軸方向に沿って進退可能に構成されたロッド部材(30)と、前記第2シースに配設されたバルーン(40)とを備え、前記バルーン(40)は、前記第1シース(10)に対して前記第2シース(20)を進行させることにより、前記第1シース(10)の内から外へ露出可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
このため、本発明の管状治療具留置装置によれば、上記したバルーンを備えているため、装置を挿入したまま管状治療具の拡張(再拡張)を行うことが可能となる。その結果、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができるとともに、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要もない。
また、本発明の管状治療具留置装置によれば、バルーンが配設された第2シースは第1シース内に配置されているため、第1シース内にバルーンを収納した状態で装置を血管に挿入したり血管内を移動させたりすることができる結果、装置外面の滑らかさを損なうこともない。
【0010】
したがって、本発明の管状治療具留置装置は、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができ、かつ、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要がなく、さらには装置外面の滑らかさを損なうことのない管状治療具留置装置となる。
【0011】
[2]上記[1]に記載の管状治療具留置装置(1)においては、前記第2シース(20)は、前記第2シースの管壁のうち前記バルーンが配設された部分の管壁の厚み(t1)が、前記バルーンが配設されていない部分の管壁の厚み(t2)よりも薄くなるように構成されていることが好ましい。
【0012】
このように構成することにより、バルーンが配設された部分の管状治療具留置装置の管径(外径)が、バルーンが配設されていない部分の管状治療具留置装置の管径(外径)よりも過度に太くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0013】
[3]上記[1]又は[2]に記載の管状治療具留置装置(1)においては、前記第2シースの管壁のうち前記バルーンよりも基端側の管壁には、前記第2シースの先端側開口部(26)と通じる孔(28)が設けられていることが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、バルーンの膨張時において、バルーンよりも先端側(管状治療具留置装置の使用者からみて遠位側)と基端側(管状治療具留置装置の使用者からみて近位側)との間で血流を維持することができるため、バルーンの膨張に起因した虚血状態の発生を防ぐことが可能となる。
【0015】
[4]上記[3]に記載の管状治療具留置装置(1)においては、前記孔が設けられた部分から基端側の前記第2シースの内径(D2)は、当該部分から先端側の前記第2シースの内径(D1)よりも狭いことが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、第2シースの先端側開口部から流入した血液が孔に向かって(又は第2シースの孔から流入した血液が先端側開口部に向かって)、比較的スムーズに流れるようになる。
【0017】
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の管状治療具留置装置(1)においては、前記管状治療具がステントグラフト(SG)であることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、本発明の管状治療具留置装置は、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができ、かつ、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要がなく、さらには装置外面の滑らかさを損なうことのないステントグラフト留置装置となる。
【0019】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る管状治療具留置装置1を説明するために示す図。
【図2】第2シース20を説明するために示す図。
【図3】実施形態に係る管状治療具留置装置1の使用方法を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の管状治療具留置装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
[実施形態]
まず、実施形態に係る管状治療具留置装置1の構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、実施形態に係る管状治療具留置装置1を説明するために示す図である。図1(a)は管状治療具留置装置1を構成する各部材及びステントグラフトSGを示す図であり、図1(b)は各部材を組み立ててさらにステントグラフトSGを配置した様子を示す図である。
図2は、第2シース20を説明するために示す図である。図2(a)及び図2(b)は第2シース20におけるバルーン40が設けられた部分を拡大して示す側面図及び側面断面図であり、図2(c)は第2シース20内を流れる血液の流れを示す図である。
なお、図1及び図2においては、発明の理解を容易にするため、管状治療具留置装置1を構成する各部材及びステントグラフトSGの大きさ(長さ、径寸法など)や形状などについては、模式的に図示している。また、図2においては、発明の理解を容易にするため、第2シース20の径寸法に対するロッド部材30の径寸法をある程度誇張して図示している。
【0024】
なお、この明細書において「先端側」とは、管状治療具留置装置1の使用者からみて遠位側のことであって、図1(b)において先端チップ36側のことを指す。また、「基端側」とは、管状治療具留置装置1の使用者からみて近位側のことであって、図1(b)においてワイヤ導入口34側のことを指す。
【0025】
実施形態に係る管状治療具留置装置1は、径方向に拡張可能なステントグラフトSG(管状治療具)を患部に留置するためのステントグラフト留置装置であって、管状の第1シース10と、第1シース10の内側を第1シース10の軸方向(第1シース10の長手方向)に沿って進退可能に構成された管状の第2シース20と、第2シース20の内側を第2シース20の軸方向(第2シース20の長手方向)に沿って進退可能に構成されたロッド部材30と、第2シース20に配設されたバルーン40とを備える。
【0026】
第1及び第2シース10,20は、ともに可撓性を有する材料で形成されている。可撓性材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等から選択された生体適合性を有する合成樹脂(エラストマー)や、これら樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、またはこれらの合成樹脂が多層で構成された多層構造体、さらにはこれら合成樹脂と金属線との複合体などを好ましく用いることができる。
【0027】
各シース10,20の基端側には、図1(a)に示すように、第1シース基部12及び第2シース基部22が設けられている。第1シース基部12には、第1シース10内に液体を充填するための液体充填ポート14が設けられている。第2シース基部22には、バルーン40を膨張させるための膨張流体を供給するためのバルーン膨張ポート23と、第2シース20内に液体を充填するための液体充填ポート24とが設けられている。
【0028】
各シース基部12,22の基端側には、図示しない弁付きキャップが装着されており、各シース10,20内に第2シース20又はロッド部材30を挿入した際の血液等の漏れが無いように構成されている。
【0029】
第2シース20には、バルーン膨張ポート23から供給された膨張流体をバルーン40まで送るための流路となるバルーン膨張ルーメン(図示せず。)が、第2シース20の軸方向に沿って設けられている。
【0030】
第2シース20は、図2(b)に示すように、第2シース20の管壁のうちバルーン40が配設された部分の管壁の厚みt1が、バルーン40が配設されていない部分の管壁の厚みt2よりも薄くなるように構成されている。
【0031】
また、第2シース20の管壁のうちバルーン40よりも基端側の管壁には、2つの孔28が設けられている(図2(a)及び図2(b)参照。)。孔28は、図2(b)に示すように、第2シース20の管壁の外側から内側へ貫通しており、第2シース20の先端側開口部26と通じている。このため、図2(c)からも分かるように、バルーン40の膨張時において、先端側開口部26から流入した血液は、第2シース20内において、第2シース20と後述するロッド本体部32との間に生じるスペースを通り、孔28から流出することとなる。つまり、先端側開口部26と孔28とを繋ぐ流路が、バルーン40膨張時の血液流通路となる。
なお、ここでは血液が先端側開口部26から流入して孔28から流出する場合で説明したが、孔28から流入して先端側開口部26から流出する場合であっても同様のことが言える。
【0032】
図2(b)に示すように、孔28が設けられた部分から基端側の第2シース20の内径D2は、当該部分から先端側の第2シース20の内径D1よりも狭くなっている。具体的に説明すると、第2シース20の先端側開口部26から孔28の基端側の端縁までは、内径D1に設定されており、孔28の基端側の端縁から基端側の部分は、内径D2に設定されている。
【0033】
なお、図示による説明は省略するが、第1シース10の内径は、第2シース20の外径以上となるように構成されている。これにより、第1シース10の内部に第2シース20を配置することが可能となる。
また、孔28が設けられた部分から基端側の第2シース20の内径D2は、後述するロッド部材30のロッド本体部32の外径以上となるように構成されている。これにより、第2シース20の内部にロッド部材30を配置することが可能となる。
【0034】
ロッド部材30は、縮径された状態のステントグラフトSGを第1シース10の先端から露出させるための部材であって、図1に示すように、ロッド本体部32と、ロッド本体部32の基端側に配設されたワイヤ導入口34と、ロッド部材30の先端部に配設された先端チップ36とを有する。図1(a)に示すように、ロッド本体部32の先端部近傍に、縮径された状態のステントグラフトSGが保持されるように構成されている。
【0035】
ロッド本体部32を構成する材料としては、例えば、樹脂(プラスチック、エラストマー)又は金属など、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料を好ましく用いることができる。
【0036】
先端チップ36を構成する材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂等から構成された合成樹脂(エラストマー)などの、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料を好ましく用いることができる。
【0037】
なお、図示による説明は省略するが、ロッド本体部32及び先端チップ36には、例えばガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤ用ルーメンや、縮径状態のステントグラフトSGを患部で拡張させるためのトリガワイヤを挿通させるためのトリガワイヤ用ルーメンなどが、ロッド部材30の軸方向(ロッド部材30の長手方向)に沿って形成されている。
【0038】
また、詳細な説明は省略するが、先端チップ36には、上記トリガワイヤを係止するための係止溝(図示せず。)が設けられている。このようなトリガワイヤ及び先端チップを用いて縮径状態のステントグラフトを患部で拡張させる方法(仕組み)については、例えば、特開2000−350785号公報又は国際公開第2005/99806号パンフレットに記載の公知の方法を用いることができる。
【0039】
バルーン40は、第2シース20の先端部近傍に配設されており、バルーン膨張ポート23から供給された膨張流体により膨張可能に構成されている。また、詳細については後述するが、バルーン40は、第1シース10に対して第2シース20を進行させることにより、第1シース10の内から外へ露出可能に構成されている。
【0040】
バルーン40を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料(エラストマー)などの、公知である種々の材料を好ましく用いることができる。
【0041】
管状治療具留置装置1に装填される管状治療具としてのステントグラフトSGは、図示による説明を省略するが、金属細線がジグザグ状に折り返されるとともに略円筒状に成形された自己拡張型のステント部と、当該ステント部を外周から覆うように縫合固定されたグラフト部とを有する。ステント部を構成する金属細線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。グラフト部を構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などを好ましく用いることができる。これらの樹脂材料によって作成されたグラフト部は、生体適合性及び耐久性が比較的高く、かつ、化学的にも安定している。
【0042】
なお、実施形態に係る管状治療具留置装置1(本発明の管状治療具留置装置)に用いることのできるステントグラフトは、上記の構成・材料からなるステントグラフトに限定されるものではなく、上記したものとは異なる構成・材料からなる公知のステントグラフトを用いてもよい。
【0043】
次に、管状治療具留置装置1の使用方法の一例について、図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係る管状治療具留置装置1の使用方法を説明するために示す図である。図3(a)〜図3(j)はステントグラフトSGを患部Aに留置してさらにバルーン40で再拡張する様子を段階的に示す概念図である。なお、図3においては、血管内に配置されたガイドワイヤの図示を省略している。また、図3(f)〜図3(i)においては、発明の理解を容易にするため、ステントグラフトSGを破線で図示している。
【0044】
まず、血管に沿って患部Aの位置まで管状治療具留置装置1を進行させる(図3(a)及び図3(b)参照。)。このとき、装置外面は第1シース10で覆われている。
【0045】
次に、患部Aの適切な位置でロッド部材30の位置を固定した状態で、第1シース10のみを引いて(基端側に移動させて)第1シース10内からステントグラフトSGを露出させる(図3(c)及び図3(d)参照。)。その後、図示しないトリガワイヤを引いてステントグラフトSG先端部を拡張させる(図3(e)参照。)。これにより、患部AにステントグラフトSGを留置することができる。
【0046】
次に、第1シース10を動かさずに第2シース20を進行させて、第1シース10内からバルーン40を露出させる(図3(f)及び図3(g)参照。)。なお、ロッド部材30については、図3(f)及び図3(g)に示すように第1シース10に対して多少進行させてもよいし、全く進行させなくてもよい。
【0047】
そして、バルーン40が適切な位置に配置された状態で、バルーン40を膨張させる(図3(h)参照。)。これにより、ステントグラフトSGの折れ目やシワを伸ばしたり血管壁への密着を確実にしたりすることができる。
【0048】
ステントグラフトSGの再拡張が終了したら、バルーン40を収縮させ(図3(i)参照。)、管状治療具留置装置1を血管から抜き取る(図3(j)参照。)。
【0049】
以上のように構成された実施形態に係る管状治療具留置装置1によれば、上記したバルーン40を備えているため、装置を挿入したままステントグラフトSGの再拡張を行うことが可能となる。その結果、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができるとともに、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要もない。
また、実施形態に係る管状治療具留置装置1によれば、バルーン40が配設された第2シース20は第1シース10内に配置されているため、第1シース10内にバルーン40を収納した状態で装置を血管に挿入したり血管内を移動させたりすることができる結果、装置外面の滑らかさを損なうこともない。
【0050】
したがって、実施形態に係る管状治療具留置装置1は、カテーテルの交換作業にかかる手間を省くことができ、かつ、バルーンカテーテルを別に準備しておく必要がなく、さらには装置外面の滑らかさを損なうことのない管状治療具留置装置(ステントグラフト留置装置)となる。
【0051】
実施形態に係る管状治療具留置装置1においては、第2シース20は、第2シース20の管壁のうちバルーン40が配設された部分の管壁の厚みt1が、バルーン40が配設されていない部分の管壁の厚みt2よりも薄くなるように構成されている。これにより、バルーン40が配設された部分の管状治療具留置装置1の管径(外径)が、バルーン40が配設されていない部分の管状治療具留置装置1の管径(外径)よりも過度に太くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0052】
実施形態に係る管状治療具留置装置1においては、第2シース20の管壁のうちバルーン40よりも基端側の管壁には、第2シース20の先端側開口部26と通じる孔28が設けられている。これにより、バルーン40の膨張時において、バルーン40よりも先端側と基端側との間で血流を維持することができるため、バルーン40の膨張に起因した虚血状態の発生を防ぐことが可能となる。
【0053】
実施形態に係る管状治療具留置装置1においては、孔28が設けられた部分から基端側の第2シース20の内径D2は、当該部分から先端側の第2シース20の内径D1よりも狭い。これにより、第2シース20の先端側開口部26から流入した血液が孔28に向かって、比較的スムーズに流れるようになる。
【0054】
以上、本発明の管状治療具留置装置を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
(1)上記実施形態においては、第2シース20の管壁に設けられた孔28が2つである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上であってもよい。また、孔の位置・配列については、バルーン40よりも基端側であれば、どのような位置・配列であってもよい。
【0056】
(2)上記実施形態においては、孔28が第2シース20の管壁の外側から内側へ貫通している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2シースの管壁のうちバルーン40の基端側と先端側の管壁外面に、第2シース20の内側までは貫通しない孔がそれぞれ設けられており、バルーン40の基端側に設けられた孔とバルーン40の先端側に設けられた孔とを繋ぐルーメンが、第2シースの管壁内部に設けられていてもよい。この場合も、バルーン40の膨張時において、バルーン40よりも先端側と基端側との間で血流を維持することができるため、バルーン40の膨張に起因した虚血状態の発生を防ぐことが可能となる。
【0057】
(3)上記実施形態においては、ステントグラフトを患部に留置するためのステントグラフト留置装置を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ステントグラフト以外の管状治療具を患部に留置するための管状治療具留置装置(例えば、ステントを患部に留置するためのステント留置装置)にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 管状治療具留置装置
10 第1シース
12 第1シース基部
14,24 液体充填ポート
20 第2シース
22 第2シース基部
23 バルーン膨張ポート
26 (第2シースの)先端側開口部
28 孔
30 ロッド部材
32 ロッド本体部
34 ワイヤ導入口
36 先端チップ
40 バルーン
A 患部
BV 血管
D1 孔が設けられた部分から先端側の第2シースの内径
D2 孔が設けられた部分から基端側の第2シースの内径
t1 第2シースの管壁のうちバルーンが配設された部分の管壁の厚み
t2 第2シースの管壁のうちバルーンが配設されていない部分の管壁の厚み
SG ステントグラフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡張可能な管状治療具(SG)を患部に留置するための管状治療具留置装置(1)であって、
可撓性を有し、管状の第1シース(10)と、
可撓性を有し、前記第1シースの内側を前記第1シースの軸方向に沿って進退可能に構成された管状の第2シース(20)と、
前記第2シースの内側を前記第2シースの軸方向に沿って進退可能に構成されたロッド部材(30)と、
前記第2シースに配設されたバルーン(40)とを備え、
前記バルーン(40)は、前記第1シース(10)に対して前記第2シース(20)を進行させることにより、前記第1シース(10)の内から外へ露出可能に構成されていることを特徴とする管状治療具留置装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の管状治療具留置装置において、
前記第2シース(20)は、前記第2シースの管壁のうち前記バルーンが配設された部分の管壁の厚み(t1)が、前記バルーンが配設されていない部分の管壁の厚み(t2)よりも薄くなるように構成されていることを特徴とする管状治療具留置装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管状治療具留置装置において、
前記第2シースの管壁のうち前記バルーンよりも基端側の管壁には、前記第2シースの先端側開口部(26)と通じる孔(28)が設けられていることを特徴とする管状治療具留置装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の管状治療具留置装置において、
前記孔が設けられた部分から基端側の前記第2シースの内径(D2)は、当該部分から先端側の前記第2シースの内径(D1)よりも狭いことを特徴とする管状治療具留置装置(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の管状治療具留置装置において、
前記管状治療具がステントグラフト(SG)であることを特徴とする管状治療具留置装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−268950(P2010−268950A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123041(P2009−123041)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】