説明

管継手

【課題】ソケットとプラグの接続解除作業を容易に行うことができるとともに、使用中の不慮の接続解除を確実に防止することのできる管継手を提供する。
【解決手段】ソケット10内の流体の圧力によって係止ピン15を突出させることにより、ロックスリーブ14を係止ピン15に係止させて軸方向の移動を規制するようにしたので、ロックスリーブ14が外部との接触や振動等により軸方向に移動することがなく、使用中の不慮の接続解除を確実に防止することができる。また、流体の流通が停止し、ソケット10内の流体の圧力が低下すると、係止ピン15が没入してロックスリーブ14が軸方向に移動可能となるので、従来のようにロックスリーブを回動して係止ピンとロックスリーブの溝とを目視により位置合わせする作業を必要とせず、暗い場所や配管が複雑に配置された場所においても、ソケット10とプラグ20との接続解除作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧装置等に用いられる高圧配管を接続するための管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手としては、一方の配管に接続されるソケットと、他方の配管に接続されるプラグと、ソケット内に軸方向に移動自在に設けられ、スプリングによってソケット側の弁座に圧接することによりソケット側の流路を閉鎖するソケット側弁体と、プラグ内に軸方向に移動自在に設けられ、スプリングによってプラグ側の弁座に圧接することによりプラグ側の流路を閉鎖するプラグ側弁体と、ソケット側に径方向に移動自在に設けられ、プラグ側の係合部に係合することによりプラグの軸方向の移動を規制する複数のボールと、ソケット側に軸方向に移動自在に設けられ、軸方向一方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を規制し、軸方向他方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を許容するロックスリーブとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この管継手では、ロックスリーブを軸方向他方に移動してプラグをソケットに挿入すると、各弁体が先端同士を当接させながらそれぞれ弁座から後退し、各弁体が開放されてソケットとプラグの流路が互いに連通するようになっている。また、プラグをソケットに挿入すると、各ボールがプラグの係合部に係合し、ロックスリーブを軸方向一方に移動すると、各ボールの径方向外側(係合解除方向)への移動が規制され、ソケットとプラグとが互いに結合状態でロックされるようになっている。
【0004】
ところで、前記管継手においては、ロックスリーブを軸方向一方に移動することにより、各ボールがロックスリーブによって係合解除方向への移動を規制されるようになっているが、ロックスリーブが外部との接触や振動等により軸方向他方に移動し、ソケットとプラグとの接続が解除されるおそれがある。そこで、ソケットの外周面にロックスリーブに軸方向に係止可能なピンを設け、ピンとの係止によりロックスリーブの軸方向他方への移動を規制するとともに、ロックスリーブの周方向所定位置にピンを受容可能な溝を設け、ソケットとプラグとの接続を解除する場合は、ロックスリーブを回動してピンの位置に溝を合わせることにより、ロックスリーブの軸方向他方への移動を許容するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−202096号公報
【特許文献2】特開平8−178159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記管継手では、ソケットとプラグとの接続を解除する際、ロックスリーブの溝を目視によりピンに位置合わせする必要があるため、暗い場所や配管が複雑に配置された場所では、ロックスリーブの回動操作による位置合わせが困難になり、ソケットとプラグとの接続解除作業を容易に行うことができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ソケットとプラグの接続解除作業を容易に行うことができるとともに、使用中の不慮の接続解除を確実に防止することのできる管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、一方の配管に接続されるソケットと、他方の配管に接続されるプラグと、ソケット側に径方向に移動自在に設けられ、プラグ側の係合部に係合することによりプラグの軸方向の移動を規制する複数のボールと、ソケット側に軸方向に移動自在に設けられ、軸方向一方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を規制し、軸方向他方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を可能にするロックスリーブとを備えた管継手において、前記ソケットに所定方向に出没自在に設けられ、内部流体の圧力によって突出することにより、ロックスリーブに係止してロックスリーブの軸方向の移動を規制する係止部材を備えている。
【0008】
これにより、ソケット内の流体の圧力によって係止ピンが突出すると、ロックスリーブが係止部材に係止して軸方向の移動を規制されることから、使用中にロックスリーブが外部との接触や振動等により軸方向に移動することがない。また、流体の流通が停止し、ソケット内の流体の圧力が低下すると、係止ピンが没入してロックスリーブが軸方向に移動可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用中にロックスリーブが外部との接触や振動等により軸方向に移動することがないので、不慮の接続解除を確実に防止することができる。また、流体の流通が停止し、ソケット内の流体の圧力が低下すると、係止ピンが没入してロックスリーブが軸方向に移動可能になるので、従来のようにロックスリーブを回動して係止ピンとロックスリーブの溝とを目視により位置合わせする作業を必要とせず、暗い場所や配管が複雑に配置された場所においても、ソケットとプラグとの接続解除作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図5は本発明の一実施形態を示すもので、図1は管継手の一部断面側面図、図2はソケットの一部断面側面図、図3はプラグの一部断面側面図、図4はソケットの要部拡大側面断面図、図5は管継手の動作を示す部分側面断面図である。
【0011】
この管継手は、図示しない一方の配管に接続されるソケット10と、図示しない他方の配管に接続されるプラグ20とからなり、ソケット10とプラグ20を結合することにより、ソケット10側の流路10aとプラグ20側の流路20aとを連通するようになっている。
【0012】
ソケット10は、内部に流路10aを有するソケット本体11と、ソケット本体11の流路10aを開閉する弁体12と、ソケット本体11に径方向に移動自在に設けられた複数のボール13と、各ボール13の径方向の移動を規制するロックスリーブ14と、ロックスリーブ14の軸方向の移動を規制する係止部材としての係止ピン15とから構成されている。
【0013】
ソケット本体11は、軸方向一端側にプラグ20を挿入可能に形成され、その軸方向一端側の内周面には弁体12が軸方向に当接するテーパ状の弁座11aが設けられている。ソケット本体11の軸方向他端側には配管接続部11bが設けられ、配管接続部11bはソケット本体11の内周面に形成されるネジ部(図示省略)からなる。ソケット本体11の軸方向一端側には各ボール13を径方向に移動自在に保持する複数の保持孔11cが互いに周方向に間隔をおいて設けられ、各保持孔11cはソケット本体11を径方向に貫通するように形成されている。また、ソケット本体11の軸方向一端側の内周面には環状のゴムからなるシール材11dが設けられ、シール材11dによってソケット本体11とプラグ20との間が密閉されるようになっている。
【0014】
弁体12はソケット本体11内にガイド部材12aを介して軸方向に移動自在に保持され、その先端側をソケット本体11の弁座11aに当接させるようになっている。弁体12は、弁座11aとの当接面をテーパ状に形成され、その先端側には軸方向に突出する突部12bが設けられている。ガイド部材12aはソケット本体11の内周面に固定されるとともに、その周方向一部を軸方向に開口することにより流体を流通可能に形成されている。ガイド部材12aには弁体12を弁座11a側に押圧するスプリング12cが取付けられ、スプリング12cによって弁体12を弁座11aに圧接させることにより、ソケット側流路10aが閉鎖されるようになっている。
【0015】
各ボール13はそれぞれソケット本体11の各保持孔11cに径方向に移動自在に保持され、その一部を保持孔11cの外側または内側に突出させるようになっている。
【0016】
ロックスリーブ14はソケット本体11の外周面側に軸方向に移動自在に設けられた円筒状の部材からなり、その外周面には滑り止めのローレット加工が施されている。ロックスリーブ14の内周面には各ボール13に径方向に当接可能な環状の当接部14aが突設され、当接部14aの軸方向一端面はテーパ状に形成されている。ロックスリーブ14はスプリング14bによって軸方向一方に付勢されており、ロックスリーブ14が軸方向一方に移動すると、当接部14aが各ボール13に当接し、各ボール13の一部がソケット本体11の内周面から径方向内側に突出して各ボール13の径方向外側への移動が規制されるようになっている。また、ロックスリーブ14を軸方向他方に移動すると、当接部14aと各ボール13との当接が解除され、各ボール13が径方向外側に移動可能になる。
【0017】
係止ピン15は、ソケット本体11の外周面に出没自在に設けられ、ソケット本体11内の流体の圧力によってソケット本体11の外側に突出するようになっている。係止ピン15はソケット本体11に設けた孔11eにソケット本体11の径方向に移動自在に設けられ、図4(a) に示すようにスプリング16によって孔11eの底面側に付勢されている。ソケット本体11には孔11eの底面と流路10aとを連通する連通路11fが設けられ、流路10a内の流体の圧力が連通路11fを介して孔11e内に加わると、図4(b) に示すように係止ピン15がスプリング16に抗してソケット本体11の外側に突出するようになっている。この場合、スプリング16は使用時の内部流体の圧力よりも小さい付勢力で係止ピン15を付勢しており、内部流体の圧力が所定圧力(例えば0.5MPa)以下になると、係止ピン15がスプリング16によって孔11e内に没入するようになっている。孔11eの内周面には固定リング17が取付けられ、係止ピン15に設けた第1のフランジ15aに一端側を係止するスプリング16がスペーサリング18を介して固定リング17に他端側を係止している。また、係止ピン15に設けた第2のフランジ15bと第1のフランジ15aとの間には環状のゴムからなるシール材19及びバックアップリング19aが設けられ、シール材19によって孔11eの内周面と係止ピン15との間が密閉されるようになっている。
【0018】
プラグ20は、内部に流路20aを有するプラグ本体21と、プラグ本体21内の流路20aを開閉する弁体22とから構成されている。
【0019】
プラグ本体21は、軸方向一端側をソケット本体11の軸方向一端側に挿入可能に形成され、その軸方向一端側の内周面には弁体22が軸方向に当接するテーパ状の弁座21aが設けられている。プラグ本体21の軸方向他端側には配管接続部21bが設けられ、配管接続部21bはプラグ本体21の内周面に形成されるネジ部(図示省略)からなる。また、プラグ本体21の外周面には、各ボール13が係合する凹状の係合部21cが周方向に連続して設けられている。
【0020】
弁体22はプラグ本体21内にガイド部材22aを介して軸方向に移動自在に保持され、その先端側をプラグ本体21の弁座21aに当接させるようになっている。弁体22は、弁座21aとの当接面をテーパ状に形成され、その先端側には軸方向に突出する突部22bが設けられている。ガイド部材22aはプラグ本体21の内周面に固定されるとともに、ソケット10のガイド部材12aと同様、その周方向一部を軸方向に開口することにより流体を流通可能に形成されている。また、ガイド部材22aには弁体22を弁座21a側に押圧するスプリング22cが取付けられ、スプリング22cによって弁体22を弁座21aに圧接させることにより、プラグ側流路20aが閉鎖されるようになっている。
【0021】
以上のように構成された管継手においては、ロックスリーブ14を軸方向一方から他方に移動してプラグ20をソケット10に挿入すると、各弁体12,22が互いに先端の突部12b,22bを当接させながらそれぞれ弁座11a,21aから後退し、各弁体12,22が開放されてソケット10とプラグ20の流路10a,20aが互いに連通する。また、プラグ20をソケット10に挿入すると、各ボール13がプラグ20の係合部21cに係合し、ロックスリーブ14を軸方向他方から一方に移動することにより、ロックスリーブ14の当接部14aによって各ボール13の径方向外側(係合解除方向)への移動が規制され、ソケット10とプラグ20とが互いに結合状態でロックされる。ここで、使用時にソケット10内に内部流体の圧力が加わると、図5(a) に示すように係止ピン15がソケット本体11の外側に突出する。これにより、ロックスリーブ14が外部との接触や振動等により軸方向他方に移動しようとした場合でも、ロックスリーブ14が係止ピン15に係止して軸方向他方への移動を規制されることから、使用中にソケット10とプラグ20との接続が解除されることがない。また、流体の流通が停止し、ソケット10内の流体の圧力がスプリング16の付勢力よりも低下すると、図5(b) に示すように係止ピン15が孔11e内に没入し、ロックスリーブ14が軸方向他方に移動可能になる。これにより、図5(c) に示すようにロックスリーブ14を操作して軸方向他方に移動させることにより、ソケット10とプラグ20との接続が解除される。
【0022】
このように、本実施形態によれば、ソケット本体11の外周面にロックスリーブ14の軸方向の移動を規制可能な係止ピン15を出没自在に設け、ソケット10内の流体の圧力によって係止ピン15を突出させることにより、ロックスリーブ14を係止ピン15に係止させて軸方向の移動を規制するようにしたので、ロックスリーブ14が外部との接触や振動等により軸方向に移動することがなく、使用中の不慮の接続解除を確実に防止することができる。また、流体の流通が停止し、ソケット10内の流体の圧力が低下すると、係止ピン15が没入してロックスリーブ14が軸方向に移動可能となるので、従来のようにロックスリーブを回動して係止ピンとロックスリーブの溝とを目視により位置合わせする作業を必要とせず、暗い場所や配管が複雑に配置された場所においても、ソケット10とプラグ20との接続解除作業を容易に行うことができる。
【0023】
更に、係止ピン15を没入方向に付勢するスプリング16を備えているので、流体の流通が停止した後に微少な残圧(例えば0.2MPa程度)が生じていても、係止ピン15をスプリング16によって確実に没入させることができ、ソケット10とプラグ20との接続解除作業を常に良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す管継手の一部断面側面図
【図2】ソケットの一部断面側面図
【図3】プラグの一部断面側面図
【図4】ソケットの要部拡大側面断面図
【図5】管継手の動作を示す部分側面断面図
【符号の説明】
【0025】
10…ソケット、11…ソケット本体、13…ボール、14…ロックスリーブ、15…係止ピン、16…スプリング、20…プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の配管に接続されるソケットと、他方の配管に接続されるプラグと、ソケット側に径方向に移動自在に設けられ、プラグ側の係合部に係合することによりプラグの軸方向の移動を規制する複数のボールと、ソケット側に軸方向に移動自在に設けられ、軸方向一方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を規制し、軸方向他方に移動することにより各ボールの係合解除方向への移動を可能にするロックスリーブとを備えた管継手において、
前記ソケットに所定方向に出没自在に設けられ、内部流体の圧力によって突出することにより、ロックスリーブに係止してロックスリーブの軸方向の移動を規制する係止部材を備えた
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記係止部材を没入方向に付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−287612(P2009−287612A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138141(P2008−138141)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】