説明

管路の内張り材及びこれを用いた管路の内張り方法

【課題】内張り材にガラス繊維の織物を使用して強度向上を図るとともに、織物を構成するガラス繊維の目ずれを防止して、均一な強度を発現できる内張り材を提供することである。
【解決手段】管路に設置される内張り材は、有機繊維の不織布4とガラスロービングクロス5とが重ね合わされた積層部材2を有する。ガラスロービングクロス5の両面には不織布4がそれぞれ重ね合わされ、ガラスロービングクロス5が2層の不織布4により挟まれた状態で、不織布4とガラスロービングクロス5とがニードルパンチで接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の補修や補強等に用いられる内張り材、及び、これを用いた管路の内張り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、老朽化した上下水道管や農業用水管、あるいは、ガス管などの既設管路の内面に、硬化性樹脂液と補強繊維を含む筒状の内張り材を設置し、前記硬化性樹脂液を硬化させることによって、管路内に繊維強化樹脂からなる強固な内張り構造を構築して、管路の補修や補強を行う工法が知られている。その中でも、硬化性樹脂液が含浸されたシート状の内張り材を筒状に丸めて両端部を重ねた状態で管路内に引き込んだ後、内圧を作用させることにより前記両端部をスライドさせて、内張り材を管路内面に密着させる工法が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
上記工法で使用する内張り材として、特許文献1では、硬化性樹脂液に短繊維の高強度繊維を分散させたシート材(シートモールディングコンパウンド:SMC)が使用されている。また、特許文献2においては、ガラス繊維等のストランドが結合剤で一体に固められたチョップドストランドマットと、ガラス繊維等のロービング又はクロスからなる強化繊維層が積層されたシート材が使用され、このシート材に熱硬化性の樹脂液が含浸されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−278177号公報
【特許文献2】特開平6−221492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の内張り材は、硬化性樹脂液に短繊維の高強度繊維を分散させたSMCであり、強固な内張り構造を構築するには、内張り材を厚くする必要がある。しかし、内張り材の厚みが大きいと重量も大きくなり、現場へ運搬するトラック等にあまり多くの内張り材を積むことができなくなるため、長距離にわたる管路補修(又は補強)が困難となる。また、内張り材の厚みが大きいほど、補修(補強)後の管路の内径が小さくなるという問題もある。このような観点から、厚みを小さくするために、より強度の高い内張り材を使用することが望ましい。
【0006】
この点、特許文献2の内張り材は、ガラス繊維等のロービングあるいはクロスからなる強化繊維層を有し、上記特許文献1の内張り材と比べると強度が高い。しかしながら、内張り材を管路へ引き込む際や、その後の内圧作用によって両端部がスライドして拡径する際などに、内張り材に大きな外力が作用したときに、ガラスクロス等の強化繊維層において、繊維のずれ(目ずれ)が生じる虞があり、その場合、目ずれが生じた位置において、内張り材の強度が局所的に低下することになる。
【0007】
本発明の目的は、内張り材にガラス繊維からなる織物を使用して強度向上を図るとともに、織物を構成するガラス繊維の目ずれを防止して均一な強度を発現できる内張り材を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
第1の発明の管路の内張り材は、有機繊維の不織布とガラス繊維からなる織物とが重ね合わされてニードルパンチで接合された、積層部材を含むことを特徴とするものである。
【0009】
不織布は長い繊維が絡み合った構造を有するため、ガラス繊維からなる織物に外力が作用したときに、この織物に重ね合わされた状態で接合された不織布によって、織物を構成するガラス繊維に抵抗が付与されることから、繊維のずれ、即ち、ガラス繊維からなる織物の目ずれが抑制される。また、不織布により、織物の端部においてガラス繊維のほつれが生じることも防止される。これにより、管路の内側に均一で強度の高い内張り層を形成することができる。
【0010】
第2の発明の管路の内張り材は、前記第1の発明において、前記積層部材は、前記ガラス繊維からなる織物の両面に、前記不織布がそれぞれ重ね合わされた構造を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、2層の不織布によってガラス繊維からなる織物が挟まれた構造となることから、織物の目ずれやほつれが一層抑制される。
【0012】
尚、上述したガラス繊維からなる織物は、ガラスロービングクロスであってもよい(第3の発明)。この場合には、内張り材が強度の非常に高いものとなる。
【0013】
第4の発明の管路の内張り材は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記積層部材が筒状に丸められ、その周方向両端部が重ね合わされた状態でホットメルト接着剤によって接合されていることを特徴とするものである。
【0014】
内張り材は、積層部材が筒状に丸められ、且つ、液状の熱硬化性樹脂が含浸された状態で管路内に引き込まれる。その後、内張り材が加熱されるとともに内圧が作用されることにより、積層部材の周方向両端部がスライド移動して内張り材が拡径し、管路の内面に密着した状態で、熱硬化性樹脂が硬化する。ここで、本発明では、積層部材の両端部がホットメルト接着剤で仮接合されているため、内張り材を管路内に引き込む際に両端部がずれて積層部材が広がることが防止される。また、管路内への設置後に内張り材が加熱加圧されたときには、ホットメルト接着剤が軟化するため、積層部材の両端部の仮接合が解除されてスライド可能となり、内圧によって内張り材が拡径できるようになる。
【0015】
第5の発明の管路の内張り材は、前記第4の発明において、前記積層部材の周長は、管路周長の1.06倍以上であることを特徴とするものである。
【0016】
管路の内面に密着したときの状態において、積層部材の両端部の周方向重なり量が少ないと、その重なり部分において内張り材の強度が局所的に低くなる。また、管路の内径にばらつきが存在する場合に、重なり量が少ないと前記ばらつきを吸収できない。そこで、積層部材の周長を一定以上(管路周長の1.06倍以上)にして、積層部材の両端部の重なり量を確保することが好ましい。
【0017】
第6の発明の管路の内張り方法は、前記第1の発明の管路の内張り材を用いた管路の内張り方法であって、前記内張り材は、前記積層部材が筒状に丸められてその周方向両端部が重ねられた状態で、硬化性樹脂液が含浸されており、
前記内張り材を管路内に設置する設置工程と、前記内張り材を加熱するとともに内側から加圧して、前記積層部材の周方向両端部を互いにスライドさせながら前記内張り材を管路内面に密着させつつ前記硬化性樹脂液を硬化させる、加熱加圧工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、設置工程において内張り材を管路に引き込む際や、加熱加圧工程において積層部材の周方向両端部がスライドする際に、ガラス繊維からなる織物に大きな外力が作用した場合でも、この織物に不織布が重ね合わされて接合されているため、織物の目ずれが抑制される。また、内張り作業中に織物の端部においてほつれが生じることも防止される。
【0019】
第7の発明の管路の内張り方法は、前記第6の発明において、筒状に丸められた前記積層部材の周方向両端部は、重ね合わされた状態でホットメルト接着剤によって接合されており、前記加熱加圧工程において、前記内張り材を加熱するとともに内側から加圧することで、前記ホットメルト接着剤による前記積層部材の周方向両端部の接合を解除することを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、積層部材の両端部がホットメルト接着剤で仮接合されているため、設置工程において内張り材を管路内に引き込む際に積層部材が広がることが防止される。さらに、内張り材を管路内に設置した後の加熱加圧工程において、内張り材が加熱されたときにホットメルト接着剤の接合力が低下し、その状態で内側から内張り材が加圧されることで、ホットメルト接着剤による積層部材の両端部の仮接合が解除されてスライド可能となり、内圧の作用によって内張り材が拡径して管路の内面に密着する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る内張り材の斜視図である。
【図2】積層部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】図1の積層部材の両端部の接合部分を拡大した図である。
【図4】反転途中の内張り材をその長さ方向から見た図である。
【図5】反転後(管路内への設置後)の内張り材を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の楕円部分Aの拡大図である。
【図6】加熱加圧工程後の内張り材を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の楕円部分Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る内張り材1の斜視図である。本実施形態の内張り材は、農業用水等の既設管路の補修に用いられるものであって、内外面が反転されつつ既設管路内に引き込まれた後、内圧が作用されて拡径することで管路の内面に密着し、管路内面を被覆する。
【0023】
まず、内張り材1の構造について説明する。図1に示すように、内張り材1は、シート状に形成され、筒状に丸められる積層部材2と、筒状の積層部材2の外面を覆う筒状織物3とを有する。
【0024】
図2(a)は積層部材2の斜視図、(b)は積層部材2の断面図である。図2(b)に示すように、シート状の積層部材2は、有機繊維のスパンボンド不織布4と、高強度のガラスロービングで製織されたガラスロービングクロス5とが交互に重ね合わされおり、これら複数の層がニードルパンチによって接合されている。また、ガラスロービングクロス5の両面に不織布4が重ね合わされて、ガラスロービングクロス5が不織布4によって挟まれた構成となっている。
【0025】
また、図1に示すように、積層部材2は筒状に丸められており、さらに、その周方向両端部が重ね合わされた状態でホットメルト接着剤6によって接合されている。図3は、図1の積層部材2の両端部の接合部分を拡大した図である。図3に示すように、ホットメルト接着剤6は、積層部材2の端部の表面全域に塗布されるのではなく、筒長方向に平行な、複数(図では2本)の細長い領域に分けて部分的に塗布されている。そして、この積層部材2の一方の端部の接着剤6の塗布面に他方の端部が重ね合わされて、積層部材2の両端部が接合されている。ホットメルト接着剤6としては、例えば、株式会社MORESCO社製ホットメルト接着剤EP−65を好適に用いることができる。
【0026】
尚、積層部材2の両端部の接合は、内張り材1を管路P内に反転させて引き込む際に両端部がずれないように仮止めする程度の接合強度で十分である。そして、後で説明するが、管路P内に内張り材1を設置した後の加熱加圧工程によってホットメルト接着剤6が軟化し、両端部の接合が解除される。
【0027】
図1に示す筒状織物3は、例えば、ポリエステル繊維で織製されている。この筒状織物3の外面は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の被膜4で覆われており、筒状織物3は気密性を有するものとなっている。この筒状織物3の内側には、筒状に丸められた積層部材2が挿入され、積層部材2の外表面が筒状織物3によってカバーされる。
【0028】
以上説明した内張り材1は、例えば、次のようにして製造される。まず、ガラスロービングを平織機にて織り、ガラスロービングクロス5とする。次に、このガラスロービングクロス5とスパンボンド不織布4とを交互に積層してニードルパンチで接合し、所定幅に切断して積層部材2を作製する。次に、積層部材2を筒状に丸め、周方向一端部の表面にホットメルト接着剤6を塗布した後に他端部を重ね合わせ、両端部を接合する。そして、筒状の積層部材2を筒状織物3内に引き込んだ後、全体を熱硬化性樹脂液に含浸させる。
【0029】
尚、樹脂液の含浸方法としては、樹脂液が注入された内張り材をニップローラで絞るという、一般的な方法でもよいが、積層部材2により均一に樹脂を含浸させるという観点から、以下の方法を採用することが好ましい。即ち、一般的に使用されているものよりも粘度が低い(常温で垂れ落ちるような粘度の)樹脂液を使用し、樹脂液を注入した後の内張り材1を高い位置まで搬送することで、内張り材1に付着した余分な樹脂液を重力で落としつつ、積層部材2に均一に樹脂液を含浸させることができる。また、ニップローラで内張り材1を絞る場合と比べて、樹脂含浸工程が簡単になる。尚、この樹脂含浸後に内張り材1を搬送する場合には、粘度の低い樹脂液が垂れ落ちる可能性があるので、樹脂液の種類に応じた増粘処理(例えば、加熱あるいは冷却等)を行い、樹脂の粘度を高めた状態で搬送することが好ましい。
【0030】
次に、上述した内張り材1を用いて既設管路Pを補修する方法について述べる。
まず、熱硬化性樹脂液が含浸された内張り材1に流体圧力を作用させて内外面を反転させつつ、管路P内に設置する(設置工程)。図4は、反転途中の内張り材1をその長さ方向から見た図である。図5は、反転後(管路内への設置後)の内張り材1を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の楕円部分Aの拡大図である。
【0031】
この設置工程において、上述したように、積層部材2の両端部がホットメルト接着剤6によって接合(仮接合)されているため、内張り材1の内外面反転時に、積層部材2の両端部がずれて広がることが防止される。また、内張り材1の内外面が反転されて管路P内に引き込まれた状態では、図5(a)に示すように、積層部材2と筒状織物3の内外位置が逆転し、積層部材2の内面が筒状織物3によって覆われた状態となる。
【0032】
次に、内張り材1を熱硬化性樹脂液の硬化温度(例えば、80〜100℃)以上に加熱しつつ、内張り材1に流体圧力等によって内圧を作用させて加圧し、内張り材1を拡径させて管路Pの内面に密着させるとともに熱硬化性樹脂液を硬化させる(加熱加圧工程)。図6は、加熱加圧工程後の内張り材1を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の楕円部分Bの拡大図である。尚、加熱加圧工程は、例えば、内張り材1の内側にチューブを設置し、このチューブ内に加熱空気や蒸気等の流体を供給して膨張させることにより行うことができる。
【0033】
この加熱加圧工程において、内張り材1(積層部材2)が熱硬化性樹脂の硬化温度(例えば80〜100℃)に加熱されることで、積層部材2の両端部を仮接合しているホットメルト接着剤6の接合力が低下して積層部材2の周方向両端部がスライド可能となる。尚、ホットメルト接着剤6は熱硬化性樹脂液の硬化温度に合わせて適宜選べばよい。同時に内張り材1に内圧を作用させることで、内張り材1を拡径させて管路Pの内面に密着させ、その状態で硬化性樹脂液を熱硬化させる。これにより、管路Pの内面に、熱硬化性樹脂が高強度のガラスロービングクロス5によって強化された、強固な内張り構造が構築される。
【0034】
本実施形態では、上述した設置工程において、内張り材1の内外面反転時に積層部材2に大きな引っ張り力が作用しやすい。また、加熱加圧工程において、積層部材2の周方向両端部がスライドして積層部材2が拡径する際にも、前記両端部に大きな摩擦力が作用しやすい。このように、積層部材2に大きな外力が作用したときにガラスロービングクロス5に目ずれが生じやすい。しかしながら、本実施形態の内張り材1においては、ガラスロービングクロス5に不織布4が重ねられてニードルパンチによって接合されている。そして、不織布4は長い繊維が絡み合った構造を有するため、ガラスロービングクロス5に外力が作用したときに、このガラスロービングクロス5と接合された不織布4によって、ガラスロービングクロス5を構成するガラス繊維に抵抗が付与され、ガラス繊維のずれ、即ち、ガラスロービングクロス5の目ずれが抑制される。
【0035】
また、上述したように、内張り材1の製造時に、1枚の大きなガラスロービングクロスから複数枚のガラスロービングクロス5を切り出す場合、各々のガラスロービングクロス5の切断された端部において繊維のほつれが生じやすいが、ガラスロービングクロス5に不織布4が重ね合わされることにより、ガラスロービングクロス5の端部のほつれも防止される。
【0036】
さらに、本実施形態では、ガラスロービングクロス5の両面に不織布4が重ねられて、ガラスロービングクロス5が2層の不織布4により挟まれた状態で、ニードルパンチで接合されているため、ガラスロービングクロス5の目ずれや端部のほつれが一層抑制される。
【0037】
尚、内張り材1が管路Pの内面に密着した状態で、重なり合った積層部材2の両端部において強度が局所的に低くなることがないように、両端部の重なり量は一定以上確保することが好ましい。具体的には、図6(b)に示す積層部材2の重なり量a(重なり部分の周方向長さ)は、管路Pの内面周長の6%以上であることが好ましい(下記実施例参照)。そのためには、筒状に丸められた積層部材2の周長(図2(a)におけるシート状の積層部材2の幅)を、管路Pの内面周長の1.06倍以上にすればよい。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。ここでは、特に、積層部材の両端部の、適切な重なり量について検討した。本実施例の試験片作製に使用した積層部材、筒状織物、ホットメルト接着剤、及び、熱硬化性樹脂の仕様を以下に示す。
【0039】
[積層部材]
a)スパンボンド不織布:70g/m目付 ポリエステルスパンボンド
b)ガラスロービングクロス:耐酸(NCR)ガラスロービングクロス
(目付)1600g/m
(経糸)4800tex、密度4.5本/25mm
(緯糸)4800tex、密度4.3本/25mm
(織り組織)平織
c)積層形態:スパンボンド不織布3層、ガラスロービングクロス2層を交互に積層
d)ペネ数(1cm当たりに打ち込む、ニードルパンチの針数):30
【0040】
[筒状織物]
(経糸)TBY1000T/2×800
(緯糸)TBY1000T/2
(樹脂被覆)ポリエステルエラストマー
[ホットメルト接着剤]
株式会社MORESCO社製ホットメルト接着剤EP−65
[熱硬化性樹脂]
芦森工業株式会社製パルテムボンドP−SK−414P
【0041】
そして、上記の積層部材を丸めて両端部を重ね合わせてホットメルト接着剤で両端部を仮接合した上で、筒状織物内に挿入し、さらに、熱硬化性樹脂液を含浸させて樹脂液を硬化させることにより、筒状の試験片を作製した。尚、ここでは、口径250mmの管路内に内張り材を設置することを念頭において、この管路周長(π×250(mm)=785(mm))以上の幅を有する積層部材を使用した。さらに、積層部材の端部重なり量が異なる、4種類の試験片(実施例1〜実施例4)についてそれぞれ引張試験、及び、圧壊試験を行うことで、重なり量の適切な範囲について検証した。
【0042】
引張試験は、JISK7037(プラスチック配管系−ガラス強化熱硬化性プラスチック(GRP)管−見掛けの初期周方向引張強さの求め方)に従って行った。また、圧壊試験については、社団法人日本下水道協会JSWAS K−2破壊外圧試験に従って行った。尚、引張試験と圧壊試験において、積層部材の重なり部を側方(3時位置)、又は、上(12時位置)に配置して試験を行った。引張試験、及び、圧縮試験の結果を表1、表2にそれぞれ示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
(考察)
表1、表2に示すように、引張試験、及び、圧壊試験において、重なり量の管路周長比が6%以上である実施例2〜4では、管路周長比が3%の実施例1と比べて、強度(引張強さ、曲げ強さ、圧縮強さ)がかなり大きくなっている。また、補修対象の管路の内径は管路長さ方向に一定ではなく、実際にはばらつきが存在することから、その管路内径のばらつきを吸収する点からも、重なり量を一定以上にしておくことが好ましい。
以上から、筒状に丸められたときの積層部材の周長は、管路周長の1.06倍以上とすることが好ましいと言える。
【0046】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0047】
1]前記実施形態の積層部材2は、ガラスロービングクロス5の両面に不織布4が重ね合わされて、ガラスロービングクロス5が2層の不織布4によって挟まれた構成となっているが、ガラスロービングクロス5の一方の面にのみ不織布4が重ね合わされた構成であっても、ガラスロービングクロス5の目ずれ防止、あるいは、端部のほつれ防止という効果は得られる。
【0048】
2]前記実施形態は、本発明の内張り材を、内外面を反転させながら管路P内に設置する、いわゆる、反転工法に適用した例であるが、本発明の内張り材は、内外面を反転させずにそのまま管路P内に引き込んで設置する工法にも適用できる。この工法に適用する場合には、以下のようにして内張り材を作製する。まず、シート状の外層用フィルムの中央に本発明の積層部材を置き、さらに、その積層部材の略中央に拡張用チューブを位置させた後に、積層部材の周方向両端部を重ね合わせながらホットメルト接着剤で止める。次に、外層用フィルムを折り畳み、幅方向両端部を溶融接着する。このようにして作製した内張り材の一端から樹脂を注入することにより、外層用フィルムと拡張用チューブに挟まれた積層部材に樹脂を含浸させてから、管路内に引き込む。この工法においても、管路Pへの引き込み時や積層部材2の拡径時などに、積層部材2のガラスロービングクロス5に局所的に大きな外力(引っ張り力)が作用するが、ガラスロービングクロス5に不織布4が重ね合わされて接合されていることから、ガラスロービングクロス5の目ずれが防止される。
【0049】
3]積層部材を構成するガラス繊維からなる織物としては、ガラス繊維を引き揃えたガラスロービングからなるガラスロービングクロスには限られず、撚りのあるガラスヤーンで製織されたガラスクロスを用いることもできる。
【0050】
4]内張り材1に含浸される硬化性樹脂液は、熱硬化性のものには限られず、光硬化性、さらには、常温硬化性のものを使用することもできる。但し、前記実施形態のように、積層部材2の周方向両端部がホットメルト接着剤6によって仮接合される場合には、硬化性樹脂液の硬化とホットメルト接着剤6の軟化(接合解除)を一度に行うことができるように、熱硬化性の樹脂液を採用することが好ましい。
【0051】
5]前記実施形態は、既設管路を補修する場合に内張り材を用いた例であったが、既設、新設を問わず、管路の補強のために内張り材を設置することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 内張り材
2 積層部材
4 スパンボンド不織布
5 ガラスロービングクロス
6 ホットメルト接着剤
P 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維の不織布とガラス繊維からなる織物とが重ね合わされてニードルパンチで接合された、積層部材を含むことを特徴とする管路の内張り材。
【請求項2】
前記積層部材は、前記ガラス繊維からなる織物の両面に、前記不織布がそれぞれ重ね合わされた構造を有することを特徴とする請求項1に記載の管路の内張り材。
【請求項3】
前記ガラス繊維からなる織物が、ガラスロービングクロスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の管路の内張り材。
【請求項4】
前記積層部材が筒状に丸められ、その周方向両端部が重ね合わされた状態でホットメルト接着剤によって接合されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管路の内張り材。
【請求項5】
前記積層部材の周長は、管路周長の1.06倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の管路の内張り材。
【請求項6】
請求項1に記載の管路の内張り材を用いた管路の内張り方法であって、
前記内張り材は、前記積層部材が筒状に丸められてその周方向両端部が重ねられた状態で、硬化性樹脂液が含浸されており、
前記内張り材を管路内に設置する設置工程と、
前記内張り材を加熱するとともに内側から加圧して、前記積層部材の周方向両端部を互いにスライドさせながら前記内張り材を管路内面に密着させつつ前記硬化性樹脂液を硬化させる、加熱加圧工程と、
を備えていることを特徴とする管路の内張り方法。
【請求項7】
筒状に丸められた前記積層部材の周方向両端部は、重ね合わされた状態でホットメルト接着剤によって接合されており、
前記加熱加圧工程において、前記内張り材を加熱するとともに内側から加圧することで、前記ホットメルト接着剤による前記積層部材の周方向両端部の接合を解除することを特徴とする請求項6に記載の管路の内張り方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−86386(P2012−86386A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232838(P2010−232838)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】