説明

管路の更新工法およびこの更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置

【課題】
既設管路の屈曲部内側コーナー部のバリを効率よく除去できるバリ除去工程を備えた管路の更新工法およびこの更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置を提供することを目的としている。
【解決手段】
研磨部を備えた研磨部材を既設管路内に挿通した後、前記研磨部を既設管路の屈曲部内側コーナー部に配置して、研磨部材の緊張状態を保ちながら研磨部を屈曲部内側コーナー部に押し当てた状態で、研磨部材を既設管路に沿って往復動させて、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程と、バリの除去が完了した既設管路内に更新用合成樹脂管を挿通する工程とを備えた管路の更新工法であって、前記バリ除去工程を複数工程実施するとともに、大きさの異なる研磨部を用いて、後工程における屈曲部内側コーナー部の研磨幅が、前工程の研磨幅に比べて幅広となるように研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管路内に可撓性を有する合成樹脂製管を挿通して、この合成樹脂製管を新しい管路として、既設管路を更新する管路の更新工法において、できるだけ太い合成樹脂製管を既設管路内にスムーズに挿通することができ、かつ、挿通時に合成樹脂製管の表面が損傷しないように、既設管路の屈曲部内側コーナー部のバリを除去するバリ除去工程を備えた管路の更新工法およびこの更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化して使用できなくなった既設管路に代えて新しい管路を敷設する方法として、既設管路はそのまま残しておき、この既設管路をガイドにしながら、既設管路内に合成樹脂製管を挿通して、この合成樹脂製コルゲート管を新しい管路として使用する管路の更新工法が既に開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
すなわち、この更新工法を用いれば、合成樹脂製コルゲート管の既設管路への挿通口と、引き出し口に当たる地面を開削するだけでよいため、既設管路全体を掘り起こし、新設管路を敷設し直す工法に比べ、開削面積が少なく済むとともに、既設管路の掘り起こし作業も不要となり、工期が短縮できるとともにコストを低減できる。
【0003】
しかし、既設管路は、一般に、配管材としての、直管や曲管を、ソケット、短管継手、チーズ、エルボ、ストリートエルボ等の継手を用いて接続することによって形成されており、直管や曲管と、継手との接続部においてどうしても段差が生じる、また、段差がなくても、配管材の管端にバリ(かえり)が残っている場合がある。したがって、合成樹脂製コルゲート管を既設管路に挿通していく場合、これらの段差やバリによって、合成樹脂製コルゲート管に大きな挿通抵抗がかかる。特に、管路途中にエルボやストリートエルボ等を用いて接続された急な曲がり部があるが、このような曲がり部が有る場合、曲がり前後の配管路内にバリがあると、挿通抵抗が著しく増加する。さらに、合成樹脂製であるため、バリによって管の表面に傷がつき、最悪の場合、コルゲート管の管壁に孔が開いて、新設管路として使用できなくなる恐れもある。したがって、既設管路の曲がりの多い部分は、一度にコルゲート管を挿通できる区間が短くなり、開削回数を多くしなければならない。
【0004】
一方、既設管路内に液体を充填しておき、この液体が充填された既設管路に光ケーブルを挿通するようにした既設管路内に光ファイバーケーブルを敷設する方法が既に提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
すなわち、上記の光ファイバーケーブルの敷設方法では、既設管路内に液体を充填しておくことによって、光ファイバーケーブルの既設管路内への挿通の際に光ファイバーケーブルと既設管路の内面との間に摩擦抵抗を減らし、光ファイバーケーブル表面に傷付かないようにしている。
【0005】
しかしながら、この光ファイバーケーブルの敷設方法を利用して既設管路内に合成樹脂製コルゲート管を挿通させようとした場合、表面に凹凸があるため、急な曲がりがある既設管路では、液体が十分に充填されていたとしても、その効果がほとんどみられず、その効果がほとんどみられない。
【0006】
【特許文献1】特開2002-188755号公報
【特許文献2】特開2002-142321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みて提案されたものであり、合成樹脂管を既設管路内に抵抗少なくスムーズに挿通することができ、かつ、挿通時に合成樹脂管の表面に傷がついたりすることを防止できる路の更新工法およびこの更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、可撓性を有する研磨部を長さ方向中間部に備えた研磨部材を既設管路内に挿通した後、前記研磨部を既設管路の屈曲部内側コーナー部に配置して、研磨部材の緊張状態を保ちながら研磨部を屈曲部内側コーナー部に押し当てた状態で、研磨部材を既設管路に沿って往復動させて、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程と、バリの除去が完了した既設管路内に更新用合成樹脂管を挿通する工程とを備えた管路の更新工法であって、
前記バリ除去工程を複数工程実施するとともに、大きさの異なる研磨部を用いて、後工程における屈曲部内側コーナー部の研磨幅が、前工程の研磨幅に比べて幅広となるように研磨することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、研磨部が、既設管路の屈曲部内側コーナー部よりも硬質の材料からなる線材を筒状に編んで形成されており、後工程に使用される研磨部の外径が、前工程に使用される研磨部の外径よりも大径であることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、後工程に使用される研磨部が、前工程に使用される研磨部よりも、研磨部を形成する線材の本数が多く、かつ、線材の外径が小径であることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、可撓性を有する研磨部を長さ方向中間部に備えた研磨部材を既設管路内に挿通した後、前記研磨部を既設管路の屈曲部内側コーナー部に配置して、研磨部材の緊張状態を保ちながら研磨部を屈曲部内側コーナー部に押し当てた状態で、研磨部材を既設管路に沿って往復動させて、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程に用いる前記研磨部材の往復駆動装置であって、
同期して等速で駆動する2つの駆動部を有する本体と、前記研磨部材の一端を把持するとともに一方の駆動部の駆動によって進退する第1の把持部材と、前記研磨部材の他端を把持するとともに他方の駆動部の駆動によって進退する第2の把持部材とを備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、少なくとも一方の把持部材が、研磨部材が引張方向に移動するのを許容し、かつ、緩み方向に移動するのを阻止する緩み阻止手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、請求項1記載の発明は、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程を備えた管路の更新工法において、前記バリ除去工程を複数工程実施するとともに、大きさの異なる研磨部を用いて、後工程における屈曲部内側コーナー部の研磨幅が、前工程の研磨幅に比べて幅広となるように研磨するので、既設管路に屈曲部が多くある場合でも、研磨部を小さいものから大きいものに取り替えながら、複数工程実施することにより、研磨部を既設管路内に無理なく挿通させることができる。その結果、屈曲部内側コーナー部を広範囲に効率よく確実に研磨することができる。
【0014】
また、既設管路内に更新用合成樹脂製管を挿通するときに、更新用合成樹脂製管に最も大きい摩擦抵抗を与える屈曲部内側コーナー部のバリが除去されるので、従来よりも太い更新用合成樹脂製管をスムーズにかつ損傷させることなく、既設管路内に挿通することができる。その結果、既設管路に近い内径の更新管路を得ることができる。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、研磨部が、既設管路の屈曲部内側コーナー部よりも硬質の材料からなる線材を筒状に編んで形成されており、後工程に使用される研磨部の外径が、前工程に使用される研磨部の外径よりも大径であるので、既設管路に屈曲部が多くある場合でも、研磨部を小径のものから大径のものに取り替えながら、複数工程研磨除去を実施することによって、屈曲部内側コーナー部のバリを広範囲に効率よく確実に研磨除去することができる。また、筒の径を異ならせて編むだけで容易に研磨部の大きさを変化させることができるという利点もある。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、後工程に使用される研磨部が、前工程に使用される研磨部よりも、研磨部を形成する線材の本数が多く、かつ、線材の外径が小径であるので、前工程においては、太い線材によって編み目の粗い筒状に形成された研磨部を用いて、強い引張り力を与えながら既設管路に沿って往復動させることができ、短時間で効率よくバリを研磨除去することができる。また、後工程においては、細い線材によって編み目の細かい筒状に形成された研磨部を用いて、バリを広範囲に研磨除去し、更に、そのバリを除去した面を平滑な面に仕上げることができる。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程に用いる前記研磨部材の往復駆動装置が、同期して等速で駆動する2つの駆動部を有する本体と、前記研磨部材の一端を把持するとともに一方の駆動部の駆動によって進退する第1の把持部材と、前記研磨部材の他端を把持するとともに他方の駆動部の駆動によって進退する第2の把持部材とを備えているので、研磨部材の両端を把持した第1の把持部材と第2の把持部材とを同期して進退させることができる。したがって、研磨部材を進退方向いずれの方向にも同程度の引張り力で移動させることができ、短時間で効率よく研磨することができる。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、少なくとも一方の把持部材が、研磨部材が引張方向に移動するのを許容し、かつ、緩み方向に移動するのを阻止する緩み阻止手段を備えているので、前記研磨部が引張り方向に伸びることにより研磨部材が緩むのを阻止することができ、研磨部材を常に緊張状態に保ちながら、良好に屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去することができる。
【0019】
ここで、既設管路に更新用合成樹脂製管をスムーズにかつ損傷なく挿通させるために必要な屈曲部の研磨範囲について説明する。既設管路に更新用合成樹脂製管を挿通させた場合、図9に示すように、更新用合成樹脂製管Qは既設管路Pの屈曲部内側コーナー部に当接した状態で屈曲部に沿って曲がる。なお、図9中のRは、既設管路Pの屈曲部に形成されるバリを示している。したがって、より太い更新用合成樹脂製管Qを挿通させるためには、特に、屈曲部内側コーナー部のバリRを十分に除去する必要がある。バリ除去範囲としては、図9に示すように、既設管路Pの内径を1としたときに、0.82程度の更新用合成樹脂製管Qを挿通させるためには、既設管路Pの中心角αとしたときに、95度≦α≦150度の範囲内の研磨幅W、より好ましくは、α=120度となる研磨幅Wで、既設管路Pの内側コーナー部の内周部分を研磨除去する必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の研磨部材の往復駆動装置1は、図1に示すように、駆動部を備えた装置本体2と、既設管路Pの内部に挿通した研磨部材14の一端を把持する第一把持部3と、研磨部材14の他端を把持する第二把持部4と、駆動部の動力を第二把持部4に伝達する動力伝達ワイヤロープ5とを備えている。なお、動力伝達ワイヤロープ5は、その周囲が保護管6で保護されている。また、動力伝達ワイヤロープ5は、保護管6の内部をその長さ方向に往復移動可能に挿通されている。
【0021】
装置本体2は、第一の駆動部7と、第一の駆動部7に同期して等速で駆動する第二の駆動部8と、既設管路Pの一端部を固定する既設管クランプ9と、保護管6の一端部を固定する保護管クランプ10とを備えている。
【0022】
第一の駆動部7は、図2に示すように、モータ11と、モータ11の回転軸11aに一体に取り付けられた回転盤12と、回転盤12の回転運動を直線往復運動に変換する運動方向変換アーム13とを備えている。
回転盤12には、運動方向変換アーム13に対向する側に、係止ピン121が設けられている。運動方向変換アーム13は、図2に示すように、回転盤12に対向配置されるアーム部131と、アーム部131にほぼ直角に配置される取り付け部133とを備えている。取り付け部133の上面には、第1のラック132が固定されている、取り付け部133の側面には、第一把持部3が取り付けられている。また、アーム部131には、係止ピン121を係合可能な長孔134が形成されている。
【0023】
第二の駆動部8は、図1に示すように、第1のラック131に噛み合うピニオン81と、第2のラック82とを備えている。第2のラック82は、ピニオン81の回転運動を受けて、第1のラック131と同期して逆方向に直線往復運動する。また、第2のラック82には、動力伝達ワイヤロープ5の一端部が固定されている。
【0024】
第一把持部3は、図3、図4に示すように、研磨部材14を把持するワイヤチャック31と、研磨部材14に所定の張力を与えた状態で固定する張力付与部32と、ワイヤチャック31と張力付与部32とが取り付けられるベース部33とを備えている。
【0025】
ここで、研磨部材14は、図7に示すように、ステンレス鋼製ワイヤロープ(以下、研磨ロープという)で筒状に編まれた研磨部141と、この研磨部141の長さ方向両端部に接続されるステンレス鋼製の牽引用ワイヤロープ(以下、牽引用ロープという)142,142とから構成されている。牽引用ロープ142,142は、研磨部141を長さ方向に牽引するためのもので、それぞれ1本のワイヤロープを研磨部141の筒開口部に形成されるループ状の編み目に挿通した後、ワイヤロープの両端部を長さ方向に引き揃えることにより、研磨部141の両端部からそれぞれ2本ずつ延出している。
【0026】
また、研磨部141の筒内には、必要に応じて、合成樹脂で形成された可撓性チューブ143が挿入される。可撓性チューブ143は、既設管路Pの内径より小径の直管状をしているとともに、図10に示すように、既設管路P内に研磨部141を挿通したとき、既設管路Pの屈曲部P1に沿って容易に折り曲げ可能で、折れ曲がったときに偏平になるとともに、屈曲部P1を通過し、直管部分P2までくると、一旦折れ曲がっても再び元の直管状に戻るような材料、例えば、塩化ビニル樹脂等で形成されている。
【0027】
ワイヤチャック31は、図5、図6に示すように、ベース部33に固定された固定ブロック313と、この固定ブロック313を両側から挟むように配置された2つの可動ブロック314とを備えている。
可動ブロック314は、それぞれベース部33の枢支軸を中心に回動するリンク311およびレバー312a付きのリンク312を介して固定ブロック313に離接自在に支持されている。
また、可動ブロック314は、図示していないが、バネによって常に固定ブロック313側に付勢されている。
リンク311およびリンク312は、可動ブロック314側の枢支軸がベース部33側の枢支軸よりも張力付与部32側(以下、後方という)に設けられている。
【0028】
つまり、ワイヤチャック31は、図6に示すように、レバー312aを矢印X方向に押すと、リンク311およびリンク312が平行を保ちながらベース部33側の枢支軸を中心に回動し、可動ブロック314が固定ブロック313から離れ、固定ブロック313と可動ブロック314との間に牽引用ロープ142を挿入する隙間が形成され、レバー312aから手を離すと、図5に示すように、前述のバネの付勢力によってリンク311およびリンク312が逆方向に回動して可動ブロック314が固定ブロック313に当接あるいは牽引用ロープ142を固定ブロック313との間で把持するようになっている。
また、固定ブロック313と可動ブロック314との間で把持された牽引用ロープ142は、前述のように、リンク311およびリンク312の、可動ブロック314側の枢支軸がベース部33側の枢支軸よりも後方に設けられているので、後方側に引っ張られると、後方側にスライド可能であるが、既設管路P側(以下、前方という)に引っ張られても、可動ブロック314が摩擦抵抗によって固定ブロック313側に動こうとして牽引用ロープ142を固定ブロック313との間でさらに強い力で把持し、前方側へスライドしないようになっている。
【0029】
張力付与部32は、2本のテンションスプリング321、321と、テンションスプリング321を圧縮させるための調整ボルト322と、牽引用ロープ142をテンションスプリング321、321に固定する固定部323とを備えている。
【0030】
第二把持部4は、図1に示すように、研磨部材14を把持するワイヤチャック41と、研磨部材14に所定の張力を与えた状態で固定する張力付与部42と、動力伝達ワイヤロープ5の他端部が固定される動力伝達ワイヤチャック17と、ワイヤチャック41と張力付与部42と動力伝達ワイヤチャック17とが取り付けられるベース部43とを備えている。
【0031】
ベース部43は、地面等に設置される設置台44にワイヤの長さ方向に往復動可能に設けられている。また、図1に示すように、設置台44には、既設管路Pの他端部を固定する既設管クランプ15と、保護管6の他端部を固定する保護管クランプ16とが設けられている。
【0032】
なお、ワイヤチャック41、張力付与部42の構造は、第一把持部3のワイヤチャック31、張力付与部32の構造と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0033】
次に、この往復駆動装置1を用いた本発明にかかる管路の更新工法におけるバリ除去工程の一例を詳しく説明する。
【0034】
まず、図1に示すように、往復駆動装置1を設置する。具体的には、装置本体2を既設管路Pの一端側に設置し、既設管クランプ9に既設管路Pの一端部を固定する。また、第二把持部4を備えた設置台44を既設管路Pの他端側に設置し、既設管路Pの他端部を既設管クランプ15に固定する。
【0035】
そして、既設管路Pの一端から他端に向かってエアーブローにて通線用糸(図示せず)を挿通する。そして、研磨部141の一端側に接続された牽引用ロープ142を通線用糸の一端に固定し、通線用糸の他端側から引き抜くことによって、研磨部材14を既設管路P内に挿通する。
【0036】
既設管路Pの一端から外部に出た一方の牽引用ロープ142の端部を第一把持部3に把持させる。まず、牽引用ロープ142をワイヤチャック31に把持させる手順を説明する。図6に示すように、レバー312aを矢印X方向に押す。すると、リンク311およびリンク312が平行を保ちながらベース部33側の枢支軸を中心に回動し、可動ブロック314が固定ブロック313から離れる。
【0037】
固定ブロック313と両可動ブロック314,314の間に牽引用ロープ142を挿入し、レバー312aから手を離すと、図5に示すように、バネの付勢力で可動ブロック314が固定ブロック313側に移動し、固定ブロック313と両狭着ブロック314,314との間で牽引用ロープ142が把持される。
【0038】
次に、牽引用ロープ142を張力付与部32に取り付ける手順を説明する。図3に示すように、調整ボルト322を矢印Y方向に押し込み、テンションスプリング321、321を圧縮させる。この状態で、牽引用ロープ142を固定部323に固定する。その後、図4に示すように、調整ボルト322の押し込みを解除する。すると、牽引用ロープ142は、テンションスプリング321、321から後方に引張力を与えられた状態で固定される。
【0039】
既設管路Pの他端から外部に出た一方の牽引用ロープ142の端部を第二把持部4に把持させる手順も同様にする。
【0040】
そして、保護管6の一端部を保護管クランプ10に固定し、保護管6の内部に挿通されている動力伝達ワイヤロープ5の一端部を第2のラック82に固定する。また、保護管6の他端部を保護管クランプ16に固定し、保護管6の内部に挿通されている動力伝達ワイヤロープ5の他端部を動力伝達ワイヤチャック17に固定する。
【0041】
次に、往復駆動装置1を作動させて、既設管路P内の屈曲部内側コーナー部のバリ除去作業を開始する。なお、このとき、研磨部141は、図10に示すように、既設管路Pの屈曲部内側コーナー部に沿った状態に予め配置されている。
まず、装置本体2のモータ11を駆動させる。すると、図2に示すように、回転盤12が矢印M方向に回転し、回転盤12に設けられている係止ピン121が、運動方向変換アーム13の長孔134内を往復移動する。そして、運動方向変換アーム13が、矢印N方向に往復移動することにより、第1のラック132と第一把持部3とが、矢印N方向に往復移動する。
【0042】
第2のラック82は、第1のラック132に噛み合うピニオン81の回転運動を受けて、矢印N方向に、第1のラック132と交互に直線往復運動する。
【0043】
すなわち、装置本体2のモータ11を駆動すると、研磨部材14の一端部が、装置本体2側に引っ張られ、それに伴って、動力伝達ワイヤロープ5の一端部が繰り出される。また、研磨部材14の一端部が、既設管路P側に繰り出されると、それに伴って、動力伝達ワイヤロープ5の一端部が引っ張られる。
【0044】
また、ワイヤチャック31、41は、研磨部材14の牽引用ロープ142が後方に引っ張り力を受けると、牽引用ロープ142を開放し、牽引用ロープ142が前方に繰り出されると、ワイヤチャック31が牽引用ロープ142をより強く把持して、牽引用ロープ142が緩むのを阻止する構造となっている。したがって、牽引用ロープ142は、張力付与部32、42によって常に後方へ引張力を与えられていて、研磨中に研磨部141が伸びても牽引用ロープ142が後方に引っ張られて常に緊張状態が保たれる。したがって、常に良好な研磨状態を保つことができる。
【0045】
さらに、ワイヤチャック31,41は、レバー312aを備えているので、レバー312aの操作によって、牽引用ロープ142をより確実にかつすばやく緊張状態にすることができる。つまり、レバー312aを矢印X方向に押すと、牽引用ロープ142がワイヤチャック31,41から開放され、テンションスプリング321、321による後方への引張力が直に伝えられて確実にかつすばやく緊張状態にすることができる。この状態で、操作ハンドル311から手を離せば、牽引用ロープ142を緊張状態に保つことができる。
【0046】
したがって、例えば、研磨部141が、繰り返し引っ張り力を受けることによって長さ方向に伸びて、牽引用ロープ142が緩んでしまった場合などでも、操作ハンドル311を操作するだけで、牽引用ロープ142を簡単に緊張状態に戻すことができる。
【0047】
このように、研磨部材14は、常に緊張状態を保ちながら、交互に引っ張られ、既設管路Pの屈曲部内側コーナー部に配置された研磨部141が、屈曲部内側コーナー部に押し当てられた状態で、既設管路Pに沿って往復動して、バリを研磨除去する。
【0048】
バリの研磨除去作業は、(1)荒削り工程、(2)中削り工程、(3)仕上げ工程、の3段階で行う。なお、既設管路内のバリの程度に応じて、「中削り工程」は省略することもできる。
【0049】
各工程において、形状の異なる複数の研磨部を取り替えて作業する。ここで、「荒削り工程」で使用される研磨部141(以下、荒削り用研磨部141aという)を図8(a)に、「中削り工程」で使用される研磨部141(以下、中削り用研磨部141bという)を図8(b)に、「仕上げ工程」で使用される研磨部141(以下、仕上げ用研磨部141cという)を図8(c)に示す。
荒削り用研磨部141aは、図8(a)に示すように、中削り用研磨部141bに比べて、その外径は小径であり、使用される研磨ロープ径は大径で本数も多い。また、研磨部141の筒内部には可撓性チューブが挿入されていない。
一方、中削り用研磨部141b、仕上げ用研磨部141cは、図8(b)(c)に示すように、使用される研磨ロープの径と本数は同一であるが、研磨部の外径は、中削り用研磨部141bの方が、仕上げ用研磨部141cよりも小径となっている。また、中削り用研磨部141b、仕上げ用研磨部141cの筒内部には、それぞれ可撓性チューブ143b、143cが挿入されているが、仕上げ用研磨部141cに挿入される可撓性チューブ143cは、中削り用研磨部141bに挿入される可撓性チューブ143bよりも大径となっている。
【0050】
まず、(荒削り工程)では、荒削り用研磨部141aを備えた研磨部材を往復駆動装置1に装着して、装置を駆動する。荒削り用研磨部141aは、その外径が比較的小径である上、研磨ロープ径が比較的大径であるため、引っ張り力をかけて往復運動させた場合、研磨幅Wは狭いものの、既設管路Pの内側コーナー部に強い摩擦力をかけてバリを効果的に削ることができる。
【0051】
次に、(中削り工程)では、中削り用研磨部141bを備えた研磨部材に取り替えて、装置を駆動する。中削り用研磨部141bは、屈曲部内側コーナー部では、屈曲部内側コーナー部に沿って折れ曲がる。そして、中削り用研磨部141は、内部に挿入された可撓性チューブ143bの偏平化に伴って偏平になる。したがって、屈曲部内側コーナー部に存在するバリが、この偏平になった中削り用研磨部141bによって広い研磨幅Wで研磨される。また、研磨ロープ径が比較的小径であるので、荒削り後の凹凸のある研磨面を平滑にすることができる。
【0052】
そして、(仕上げ工程)では、仕上げ用研磨部141cを備えた研磨部材に取り替えて、装置を駆動する。仕上げ用研磨部141cは、その外径が中削り用研磨部141bよりも大径で、内部に挿入された可撓性チューブ143cも大径であるので、仕上げ用研磨部141cが、屈曲部内側コーナー部で、屈曲部内側コーナー部に沿って折れ曲がり、可撓性チューブ143cの偏平化に伴って偏平になると、屈曲部内側コーナー部に存在するバリが、この偏平になった仕上げ用研磨部141cによって、より広い研磨幅Wで研磨される。また、研磨ロープ径が比較的小径であるので、中削り後の研磨面をさらに平滑にすることができる。
【0053】
上記のバリ除去工程において、既設管路Pの内側コーナー部のバリ除去処理を行った後、従来の工法と同様にして合成樹脂製管を前処理済みの既設管路に挿通する。
【0054】
以上詳述したように、この管路の更新工法によれば、既設管路P内に更新用合成樹脂管を挿通する前に行われるバリ除去工程において、バリ除去工程を(1)荒削り工程、(2)中削り工程、(3)仕上げ工程、の3工程実施するとともに、形状の異なる3種類の研磨部をその外径の小さいものから順に用いることにより、研磨範囲を少しずつ広げながら研磨するので、屈曲部の箇所が多い既設管路であっても、研磨部を既設管路内に容易に挿通させて、所望の研磨範囲を確実に研磨し、バリを除去することができる。
また、各工程における研磨部の研磨ロープ径や研磨ロープ数を変えることにより、荒削り工程では、既設管路Pの内側コーナー部に強い摩擦力をかけてバリを研磨除去し、(中削り工程)、(仕上げ工程)では、研磨面を平滑にしながら研磨範囲を広げるようにしたので、短時間で効率よくバリを除去することができる。
その結果、更新用合成樹脂製管を既設管路P内にスムーズにかつ傷つけることなく挿通させることができ、短時間で更新できるようになり、作業コストを低減できる。
【0055】
また、本実施形態の往復駆動装置1は、第一の駆動部7と第二の駆動部8とが、共に装置本体2に設けられているので、既設管路の両端側にそれぞれ駆動装置を設置する手間が省ける上、装置の設置スペースを低減できる。
また、第二の駆動部8が、ピニオンラックで構成されていて、第二の駆動部8が、第一の駆動部7に機械的に等速で逆方向に往復移動する構造となっているので、2つの駆動部を同調して作動させるための制御装置等が不要で、装置の小型化、簡素化できる。
また、研磨部材14は、第一把持部3と第二把持部4とによって、常に後方への引っ張り力を受けて緊張状態を保たれるので、研磨部141を内側コーナー部にしっかりと押し当てることができ、効率よくバリを研磨除去できる。
【0056】
なお、本発明にかかる研磨部材の往復駆動装置は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、モータによる回転動力を直線運動に変換する方法としては、カム機構を利用したものであっても構わない。また、上記の実施の形態では、研磨部材14は、研磨部141の長さ方向両端部にステンレス鋼製の牽引用ロープ142を接続して形成されているが、研磨部材14全体をステンレス鋼製ワイヤで編んだ筒状の研磨部としたものでも構わない。
また、研磨部は、通常、一箇所であるが、複数個所の設け、同時に複数の屈曲部内側コーナー部を研磨できるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、前方のリンクにレバーが設けられていたが、前後両側のリンクにレバーを設けるようにしても構わない。
【実施例1】
【0057】
(サンプル既設管路の構成)
図13に示すように、サンプル既設管路18aは、呼び径25Aの5本の亜鉛メッキ鋼管(直管:長さ500mm)181を4つのエルボ182を介して接続したものを使用した。
【0058】
(加工プロセス)
このサンプル既設管路18aに、以下に示す各工程用の研磨部材14を挿通し、サンプル既設管路18aの両端にでている牽引用ロープ142をそれぞれ約50kgfの力で引っ張った状態を保持しながら、交互に約150mmの振幅で、所定回数往復運動させて、荒削り工程、仕上げ工程の順に各工程を行った。
(荒削り工程)往復回数500回
(仕上げ工程)往復回数500回
【0059】
(研磨部材)
各工程において、以下に示す所定形状の4個の研磨部141をエルボ182と同じピッチとなるように、牽引用ロープ142(φ3mmのステンレス鋼製ワイヤロープ)で連結した。
(荒削り用研磨部)
φ2.0mmステンレス鋼線6本を円筒状に編んだもの。
(仕上げ用研磨部)
φ1.5mmステンレス鋼線3本を1組として6組を円筒状に編んだもの。
【0060】
(使用した往復駆動装置)
本駆動装置Aは、図11に示すように、第一研磨部支持手段19と、第二研磨部支持手段20とを備えている。
【0061】
第一研磨部支持手段19は、支持アーム21と、駆動手段22とを備えている。
駆動手段22は、ケーシング22aと、回転円盤22bと、リンクバー22cとを備え、ケーシング22a内にモータ(図示せず)が内蔵されている。
回転円盤22bは、上記モータによって矢印H方向に回転するようになっている。
リンクバー22cは、回転円盤22bにその一端が枢支され、他端が支持アーム21に枢支されている。
支持アーム21は、一端がリンクバー22cを介して駆動手段22に支持されて、回転円盤22bの回転に伴って、矢印I方向に直線往復運動するようになっているとともに、他端に第一固定部となる縒り戻しのためのスイベル21aが設けられ、このスイベル21aに研磨部材14の一端が固定されるようになっている。
【0062】
第二研磨部支持手段20は、ベース部材23と、弾性部材としてのコイルスプリング24とを備えている。
ベース部材23は、既設管路Pの一端部が嵌まり込むキャップ状をしていて、既設管路Pの管端に外面に設けられたねじ(図示せず)に螺合する内ねじ(図示せず)が切られている。
【0063】
コイルスプリング24は、一端がベース部材23に固定され、他端に第二固定部となる縒り戻しのためのスイベル24aが設けられ、スイベル24aの先端に研磨部材14の他端が固定されるようになっている。
【0064】
そして、既設管路Pの他端近傍に第一研磨部支持手段19をその支持アーム21の軸が既設管路Pの管端部の軸に一致するように、既設管路Pの他端近傍に設置固定する。また、既設管路Pの他端から外側に出た他方の牽引用ロープ142をスイベル21aに固定するとともに、スイベル21aとスイベル24a間の研磨部材14の張力を所定の張力になるように調整する。そして、第一研磨部支持手段19の駆動手段22を駆動させて支持アーム21を進退させて研磨部材14を進退させ、研磨部141によって既設管路Pの曲がり部においてバリや突出部を研磨する。
【0065】
(試験結果)
試験後、サンプル既設管路18a内の屈曲部(エルボ182およびエルボ182と直管181との接続部近傍)を確認すると、屈曲部の直管181端面のエルボ182内側のバリが完全に除去されており、研磨幅Wは約19mm(α=96.8度)であった。
また、研磨処理後に、更新管としてのポリエチレン製2層コルゲート管(外径22mm)を挿通したところ、4曲がりを通過してサンプル既設管路18a内を挿通することができた。
【実施例2】
【0066】
(サンプル既設管路の構成)
サンプル既設管路18bは、呼び径40Aの5本の亜鉛メッキ鋼管(直管:長さ500mm)181を4つのエルボ182を介して接続したものを使用した。
【0067】
(加工プロセス)
このサンプル既設管路18bに、以下に示す各工程用の研磨部材を挿通し、サンプル既設管路18bの両端にでているワイヤロープをそれぞれ約50kgfの力で引っ張った状態を保持しながら、交互に約150mmの振幅で、所定回数往復運動させて、荒削り工程、中削り工程、仕上げ工程の順に各工程を行った。
(荒削り工程)往復回数1000回
(中削り工程)往復回数500回
(仕上げ工程)往復回数1000回
【0068】
(研磨部材)
各工程において、以下に示す所定形状の研磨部4個をエルボ182と同じピッチとなるように、牽引用ロープ142(φ3mmのステンレス鋼製ワイヤロープ)で連結した。
(荒削り用研磨部)
φ2.0mmステンレス鋼線6本を円筒状に編んだもの。
(中削り用研磨部)
φ1.5mmステンレス鋼線3本を1組として6組を円筒状に編んだもの。
(仕上げ用研磨部)
φ1.5mmステンレス鋼線3本を1組として6組を円筒状に編んだもの。
【0069】
(使用した往復駆動装置)
本駆動装置Bは、図12に示すように、第一研磨部支持手段425aと、第二研磨部支持手段425bとを備えている。
【0070】
第一研磨部支持手段425aは、基台部427と、駆動手段としてのエアーシリンダ428と、第一固定部429と、クランプ部材430と、コントロールボックス431とを備えている。
基台部427は、基台本体427aと、この基台本体427aのレベルを調整するアジャスト付き脚部427bとを備えている。
【0071】
エアーシリンダ428は、ピストンロッド428aが、その軸を基台本体427aの上面と平行とするように、基台本体427a上面の一端部に固定されている。
第一固定部429は、ピストンロッド428aの先端に固定された固定台429aと、スイベル429bとを備えている。固定台429aは、ワイヤロープ429cを介してスイベル429bを支持するようになっている。
【0072】
クランプ部材430は、基台本体427aの他端部に固定され、上下の挟着ブロック430a,430bによって既設管路Pの管端部をクランプするとともに、クランプした状態で、既設管路Pの管端部の軸とピストンロッド428aの軸とを略一致させるようになっている。なお、挟着ブロック430a,430bは、既設管路Pの径に応じて交換可能になっている。
【0073】
コントロールボックス431は、基台本体427aに固定されていて、第一研磨部支持手段425aおよび第二研磨部支持手段425bのエアーシリンダ428を同期させて駆動できるようになっている。なお、図12の中で、431aは運転スイッチ、431bはプリセットカウンタ、431cはレギュレータである。
【0074】
第二研磨部支持手段425bは、コントロールボックス431が設けられていない以外は、第一研磨部支持手段425aと同様になっている。
【0075】
第一研磨部支持手段425aのクランプ部材430によって既設管路Pの一方の管端部をクランプするとともに、第二研磨部支持手段425bのクランプ部材430によって既設管路Pの他方の管端部をクランプする。また、既設管路Pに挿通された研磨部材14の端部をスイベル429b間の研磨部材14が所定の張力となるようにスイベル429bにそれぞれ固定する。そして、両エアーシリンダ428を同期させて駆動させて、研磨部141によって既設管路P内を研磨する。
【0076】
(試験結果)
試験後、サンプル既設管路18b内の屈曲部(エルボ182およびエルボ182と直管181との接続部近傍)を確認すると、屈曲部の直管181端面のエルボ182内側のバリが完全に除去されており、研磨幅Wは約35mm(α=116度)であった。
また、研磨処理後に、更新管としてのポリエチレン製2層コルゲート管(外径22mm)を挿通したところ、4曲がりを通過してサンプル既設管路18b内を挿通することができた。
【実施例3】
【0077】
(サンプル既設管路の構成)
サンプル既設管路18cは、上記サンプル既設管路18aと同一構成とし、呼び径25Aの5本の亜鉛メッキ鋼管(直管:長さ500mm)181を4つのエルボ182を介して接続したものを使用した。
【0078】
(加工プロセス)
このサンプル既設管路18cに、以下に示す各工程用の研磨部材を挿通し、サンプル既設管路18cの両端にでているワイヤロープをそれぞれ約50kgfの力で引っ張った状態を保持しながら、交互に約150mmの振幅で、所定回数往復運動させて、荒削り工程、仕上げ工程の順に各工程を行った。
(荒削り工程)往復回数150回
(仕上げ工程)往復回数150回
【0079】
(研磨部材)
各工程において、以下に示す所定形状の研磨部4個をエルボ182と同じピッチとなるように、牽引用ロープ142(φ3mmのステンレス鋼製ワイヤロープ)で連結した。
(荒削り用研磨部)
φ2.0mmステンレス鋼線6本を円筒状に編んだもの。
(仕上げ用研磨部)
φ1.5mmステンレス鋼線3本を1組として6組を円筒状に編んだもの。
【0080】
(使用した往復駆動装置)
本発明にかかる一実施形態の往復駆動装置1を使用した。
【0081】
(試験結果)
試験後、サンプル既設管路18c内の屈曲部(エルボ182およびエルボ182と直管181との接続部近傍)を確認すると、屈曲部の直管181端面のエルボ182内側のバリが完全に除去されており、研磨幅Wは約19mm(α=96.8度)であった。
また、研磨処理後に、更新管としてのポリエチレン製2層コルゲート管(外径22mm)を挿通したところ、4曲がりを通過してサンプル既設管路18c内を挿通することができた。
【0082】
(比較例1)
(サンプル既設管路の構成)
実施例1と同様のサンプル既設管路18aに、以下の仕様の研磨部材を挿通したところ、3つめの屈曲部で挿通困難となった。
そこで、呼び径25Aの2本の亜鉛メッキ鋼管(直管:長さ500mm)を1つのエルボを介して接続したものを使用した。
【0083】
(加工プロセス)
このサンプル既設管路に、以下に示す研磨部材を挿通し、サンプル既設管路の両端にでているワイヤロープをそれぞれ約50kgfの力で引っ張った状態を保持しながら、交互に約150mmの振幅で、1500回往復運動させた。
【0084】
(研磨部材)
研磨部(φ1.5mmステンレス鋼線2本を1組として6組を円筒状に編んだもの)を牽引用ロープ142(φ3mmのステンレス鋼製ワイヤロープ)で連結した。
【0085】
(使用した往復駆動装置)
本発明にかかる一実施形態の往復駆動装置1を使用した。
【0086】
(試験結果)
試験後、サンプル既設管路内の屈曲部(エルボ182およびエルボ182と直管181との接続部近傍)を確認すると、屈曲部の直管181端面のエルボ182内側面のバリが残り、凹凸面となっていた。また、研磨幅Wは約15mm(α=70度)と狭かった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の往復駆動装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示す研磨部材の往復駆動装置の駆動機構を示す説明図である。
【図3】図1に示す研磨部材の往復駆動装置に牽引用ロープを取り付ける手順を示す説明図である。
【図4】図1に示す研磨部材の往復駆動装置に牽引用ロープを取り付ける手順を示す説明図である。
【図5】図1に示す研磨部材の往復駆動装置のワイヤチャックが牽引用ロープを把持している状態を示す説明図である。
【図6】図1に示す研磨部材の往復駆動装置の操作ハンドルを操作したときのワイヤチャックの動作を示す説明図である。
【図7】本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の一例を示す概略図である。
【図8】(a)本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の一部を拡大して示す要部拡大図である。(b)本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の一部を拡大して示す要部拡大図である。(c)本発明にかかる管路の更新工法に用いる研磨部材の一部を拡大して示す要部拡大図である。
【図9】既設管路の内面における研磨に必要な範囲を示す説明図である。
【図10】研磨部材の既設管路屈曲部内面コーナー部での研磨状態を示す説明図である。
【図11】実施例1で使用した研磨部材の往復駆動装置の概略図である。
【図12】実施例2で使用した研磨部材の往復駆動装置の概略図である。
【図13】実施例で用いたサンプル既設管路の配管図である。
【符号の説明】
【0088】
1 研磨部材の往復駆動装置
2 装置本体(本体)
3 第一把持部(第1の把持部材)
4 第二把持部(第2の把持部材)
7 第1の駆動部(駆動部)
8 第2の駆動部(駆動部)
14 研磨部材
141 研磨部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する研磨部を長さ方向中間部に備えた研磨部材を既設管路内に挿通した後、前記研磨部を既設管路の屈曲部内側コーナー部に配置して、研磨部材の緊張状態を保ちながら研磨部を屈曲部内側コーナー部に押し当てた状態で、研磨部材を既設管路に沿って往復動させて、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程と、
バリの除去が完了した既設管路内に更新用合成樹脂管を挿通する工程とを備えた管路の更新工法であって、
前記バリ除去工程を複数工程実施するとともに、大きさの異なる研磨部を用いて、後工程における屈曲部内側コーナー部の研磨幅が、前工程の研磨幅に比べて幅広となるように研磨することを特徴とする管路の更新工法。
【請求項2】
研磨部が、既設管路の屈曲部内側コーナー部よりも硬質の材料からなる線材を筒状に編んで形成されており、後工程に使用される研磨部の外径が前工程に使用される研磨部の外径よりも大径であることを特徴とする請求項1記載の管路の更新工法。
【請求項3】
後工程に使用される研磨部が、前工程に使用される研磨部よりも、研磨部を形成する線材の本数が多く、かつ、線材の外径が小径であることを特徴とする請求項2記載の管路の更新工法。
【請求項4】
可撓性を有する研磨部を長さ方向中間部に備えた研磨部材を既設管路内に挿通した後、前記研磨部を既設管路の屈曲部内側コーナー部に配置して、研磨部材の緊張状態を保ちながら研磨部を屈曲部内側コーナー部に押し当てた状態で、研磨部材を既設管路に沿って往復動させて、研磨部によって屈曲部内側コーナー部のバリを研磨除去するバリ除去工程に用いる前記研磨部材の往復駆動装置であって、
同期して等速で駆動する2つの駆動部を有する本体と、前記研磨部材の一端を把持するとともに一方の駆動部の駆動によって進退する第1の把持部材と、前記研磨部材の他端を把持するとともに他方の駆動部の駆動によって進退する第2の把持部材とを備えていることを特徴とする研磨部材の往復駆動装置。
【請求項5】
少なくとも一方の把持部材が、研磨部材が引張方向に移動するのを許容し、かつ、緩み方向に移動するのを阻止する緩み阻止手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の研磨部材の往復駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−260847(P2007−260847A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89976(P2006−89976)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度、経済産業省、地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(経年内管対策更新技術開発)委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)」
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000196680)西部瓦斯株式会社 (47)
【Fターム(参考)】