説明

箱抜用型枠及びその型抜き方法

【課題】引抜き抵抗力を確実に低減し打設コンクリートから容易に引抜くことのできる箱抜用型枠及びその型抜き方法を提供する。
【解決手段】箱抜用型枠50は、コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッド35と、吊支ロッド35に固定される剛性を有する枠体53と、枠体53の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体55と、更に弾性被覆体55の外周部に設けられ弾性被覆体55を枠体53の縮径方向に変形させる線状押圧体56と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠及びその型抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の箱抜用型枠は、一対の型片を引張りばねにより連結した略円柱状の箱抜用型枠を基礎形成用型枠内に配置して、打設したコンクリートの固化後に、カム部材を回動操作することで、引張りばねの付勢力により箱抜用型枠を互いに近づくように移動させて、打設コンクリートから分離しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−79042号公報(第4頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、コンクリートが箱抜用型枠の外面と一体化して固化するため、引張りばねの付勢力次第では箱抜用型枠の外面を打設コンクリートから引き剥がすことが出来ず、箱抜用型枠が依然として打設コンクリートに付着した状態のままであり、この打設コンクリートに付着した抵抗力に抗して箱抜用型枠を引抜くために多大な引抜き力及び作業時間を要するという虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、引抜き抵抗力を確実に低減し打設コンクリートから容易に引抜くことのできる箱抜用型枠及びその型抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の箱抜用型枠は、
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠であって、
前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッドと、前記吊支ロッドに固定される剛性を有する枠体と、前記枠体の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体と、更に前記弾性被覆体の外周部に設けられ該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体と、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、枠体の外周部を被覆した弾性被覆体と打設コンクリートとの間に線状押圧体が介在され、この線状押圧体によって、弾性被覆体の外面に対し直接に押圧力を作用させることができるため、弾性被覆体が縮径方向に確実に変形することになり、箱抜用型枠が、コンクリート型枠内で固化し一体化した打設コンクリートから分離でき、打設コンクリートとの一体化に依る引抜き抵抗力を低減して、吊支ロッドを介し箱抜用型枠を容易に引抜くことが出来る。
【0007】
本発明の箱抜用型枠は、
前記線状押圧体は、一端部が前記枠体の所定の止着箇所に止着され前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回されていることを特徴としている。
この特徴によれば、一端部が枠体の止着箇所に止着された線状押圧体を枠体の上方に引き上げることで、螺旋状に巻回された線状押圧体が引き絞られ、弾性被覆体の全周に亘り縮径方向にほぼ均一の押圧力を与えることができる。
【0008】
本発明の箱抜用型枠は、
前記弾性被覆体は、打設コンクリートの圧力に抗して弾性変形代を残す弾性を有する部材から成ることを特徴としている。
この特徴によれば、打設コンクリートの圧力に抗して弾性変形代を残した弾性被覆体を、線状押圧体により押圧し縮径変形できる。
【0009】
本発明の箱抜用型枠は、
前記弾性被覆体及び線状押圧体は、非透水性と柔軟性を有する非透水カバーにより被覆されていることを特徴としている。
この特徴によれば、非透水カバーにより弾性被覆体及び線状押圧体が防水されるため、水分を含む生コンクリートが弾性被覆体及び線状押圧体に浸入し弾性被覆体を変形させる機能を阻害することなく、当該機能を確実に発揮できる。
【0010】
本発明の箱抜用型枠は、
前記枠体は、上下方向に延長可能な構造を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、打設コンクリートに形成する凹部の深さに応じて、枠体の上下長さを適宜調節できる。
【0011】
本発明の箱抜用型枠の型抜き方法は、
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する枠体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体を、該線状押圧体の一端部を前記枠体の所定の止着箇所に止着するとともに前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回し、
前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させ、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜くことを特徴としている。
この特徴によれば、線状押圧体を上方に引き上げることで、螺旋状に巻回された線状押圧体が引き絞られ、弾性被覆体が縮径方向に確実に変形するため、箱抜用型枠を打設コンクリートから容易に引抜くことが出来る。
【0012】
本発明の箱抜用型枠の型抜き方法は、
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する枠体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体を、該線状押圧体の一端部を前記枠体の所定の止着箇所に止着するとともに前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回し、前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を、非透水性と柔軟性を有する非透水カバーにより被覆し、
前記弾性被覆体、線状押圧体及び非透水カバーが装着された前記枠体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させ、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜き、更に前記非透水カバーを取除くことを特徴としている。
この特徴によれば、線状押圧体を上方に引き上げることで、螺旋状に巻回された線状押圧体が引き絞られ、弾性被覆体が縮径方向に確実に変形するため、箱抜用型枠を打設コンクリートから容易に引抜くことが出来るばかりか、非透水カバーにより弾性被覆体及び線状押圧体が防水されるため、水分を含む生コンクリートが弾性被覆体及び線状押圧体に浸入し弾性被覆体を変形させる機能を阻害することなく、当該機能を確実に発揮できる。
【0013】
本発明の箱抜用型枠の型抜き方法は、
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させた状態のままで、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜くことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性被覆体を縮径変形させた状態のままで打設コンクリートと干渉することなく枠体を引抜くことができるため、箱抜用型枠の引抜き抵抗を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アンカーボルトが埋設された高速道路等のコンクリート打設後の橋脚を示したもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】箱抜用型枠がコンクリート型枠に支持され、設置された状態を示す正面断面図である。
【図4】箱抜用型枠が固定された下部吊金具を示す平面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】箱抜用型枠を示す一部断面図である。
【図7】箱抜用型枠を打設コンクリートから抜取る作業を説明するための説明図である。
【図8】変形例における箱抜用型枠を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る箱抜用型枠及びその型抜き方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、高速道路等のコンクリートを打設した後の橋脚1を示したものである。説明の都合上、以下においては、部材の配置関係をX−Y−Zの直交座標系を用いて説明するが、平面位置関係については、図1(a)に示すように左右方向をX方向、上下方向をY方向とする。この例の場合、橋脚1の上面2には、X方向に2個所、それぞれ4本のアンカーボルト3が埋設されている。コンクリートが打設される前の状態では、橋脚1の外形に沿ってコンクリート型枠が設置され、また、その内側には鉄筋が縦・横・高さ方向に配筋され、これら鉄筋の間にアンカーボルト埋設用の縦穴を形成すべく箱抜用型枠が設置されるものである。
【0017】
ところで、橋脚1の上面2は、水平、あるいは図1(b)および図2に示すように一方向に傾斜するように形成される場合がある。いずれの場合でも、図2に示すように、アンカーボルト3は水平面4を基準にして据え付けられるものであるから、凹部としての縦穴5を形成する箱抜用型枠も水平面4を基準にして設置されなければならない。このため、アンカーボルト3の設置面には、橋脚1の上面2とは別に水平面4が形成され、橋脚上面2との間には、段差6が生じるのでこの段差6に型枠を設置する必要がある。橋脚1の外形に沿って設置されるコンクリート型枠には、アンカーボルト3埋設用の縦穴の位置関係が表示されているので、縦穴を形成するための箱抜用型枠の設置は、コンクリート型枠に表示されたこの位置関係を基準にして行われる。
【0018】
本実施例においては、箱抜用型枠支持装置として、4本のアンカーボルトを埋設するように4つの箱抜用型枠を支持する装置について説明するが、これに限らず、箱抜用型枠の数量については適宜設定可能であることはいうまでもない。図3において、両側のコンクリート型枠14、14は、図1(a)のY方向に間隔を有して両側に配設される型枠である。この例では、箱抜用型枠支持装置は、両側のコンクリート型枠14、14に固定されるようにY方向に配置されるものであり、4本のアンカーボルト埋設用の縦穴が同時に形成できるように4個の箱抜用型枠を支持している。この場合、高さ方向の基準は、一番低い位置に形成されるアンカーボルト位置を基準として箱抜用型枠が位置決めされる。
【0019】
箱抜用型枠支持装置は、両側のコンクリート型枠14、14に支持される上部吊金具15の下方に間隔をおいて下部吊金具30を配置し、平面視でアンカーボルトの埋設位置に配置される吊支ロッド35を上部吊金具15および下部吊金具30を貫通するようにして鉛直方向に配設し、上部吊金具15において吊支ロッド35を上下方向調節自在に支持し、箱抜用型枠50を吊支ロッド35を囲むようにして下部吊金具30の下面から下方に向けて配置し、箱抜用型枠50を吊支ロッド35により固定することによりアンカーボルトの埋設位置に保持している。
【0020】
特に図示しないが、上部吊金具15は、X方向に間隔を隔てて平行に配置された一対の梁状部材からなり、それぞれの梁状部材は、断面箱形の形鋼を吊支ロッド35の直径より僅かに大きな間隙を有して平行に配置して両端において溶接等の手段で一体に形成されている。梁状部材表面の長手方向に寸法を表示する目盛りが付されている。また、上部吊金具15の長手方向の両側の上面には、吊りワイヤー取付金具18、18が設けられており、クレーン等の吊上げ装置で吊上げ移動可能となっている。
【0021】
図3に示すように、上部吊金具15の長手方向の両側には、両側のコンクリート型枠14、14に固定するための固定金具、すなわち、コンクリート型枠14を挟持する挟持金具19、挟持金具19から立設され上部吊金具15を貫通して配設されるねじ棒20、上部吊金具15の上下からねじ棒20に螺合して挟着するワッシャー付きナット21、21が装着されている。このため、上部吊金具15は、コンクリート型枠14に対して上下方向に調節可能に固定される。
【0022】
尚、特に図示しないが、上部吊金具15の一対の前記梁状部材に直交して吊支ロッド35の配置される位置に一対のX方向位置決め用定規を配置し、かつ、上部吊金具15の一対の梁状部材の内側に沿うように一対のY方向位置決め用定規を配置することで、4箇所あるアンカーボルト埋設位置のうち、基準となる1個所のアンカーボルト埋設位置から他の3個所のアンカーボルト埋設位置を正確に割り出すことができるようになっている。
【0023】
図4に示されるように、下部吊金具30は、矩形を形成するように四隅に配置されるコーナー金物31とこれらのコーナー金物31を連結する連結部材32とから形成され、それぞれのコーナー金物31は、断面箱形の形鋼を直角に交差させて結合した十字状をしており、その交点には吊支ロッド35を貫通させるための貫通孔33を形成し、隣接するコーナー金物31、31に連結部材32を入れ子式に嵌合させることによりコーナー金物31の位置が調整可能に形成されている。本例において、十字状をしたコーナー金物31は、貫通孔33を基点として連結部材32を嵌合させる嵌合部31aが長く、反対側の外方向に向かう外方部31bは短く形成され、連結部材32を嵌合させる嵌合部31aには固定ボルト34が設けられている。
【0024】
下部吊金具30の周囲に所定の間隔を隔てて段差用型枠36を配置し、段差用型枠36を下部吊金具30のコーナー金物31で支持している。段差用型枠36の各辺部の内側には桟木37が固定され、段差用型枠36の補強および下部吊金具30のコーナー金物31による支持の便宜を図っている。
【0025】
図4,5に示されるように、段差用型枠36は、桟木37に対しほぼ水平に内方へ延びるように設けられた段差用型枠固定棒40がコーナー金物31の上面に固着された箱型金物31cに入れ子式に挿入されることで、下部吊金具30に対し支持されるようになっている。尚、段差用型枠固定棒40は、段差用型枠36の4辺の各辺部それぞれにつき、桟木37に直交するように2個所ずつ設けられる。
【0026】
段差用型枠36の桟木37は、矩形断面をしており、段差用型枠36側から釘(図示略)により固着されている。桟木37には、箱型金物31cに挿入された段差用型枠固定棒40の一端部に設けられたコ字状金物40aが嵌合し、支持ボルト40bにより支持されている。
【0027】
吊支ロッド35は、平面視で、アンカーボルトの埋設位置に配設されるものであって、図3に特に示されているように、上部吊金具15、下部吊金具30を貫通するようにして鉛直方向に配され、下部吊金具30の下面から下方に向けて配置された箱抜用型枠50を吊下げ固定するものである。また、吊支ロッド35は、上部吊金具15において上下方向調節自在に支持されるようになっている。このため、吊支ロッド35は、鋼製で断面円形をしておりその表面には雄ねじが切られており、上部吊金具15の上面側及び下面側からワッシャー付きナット49で締付けられ、所定の高さ位置に吊下げ支持される。
【0028】
図6に示されるように、箱抜用型枠50は、上方から下方に向けて径が漸次小さくなるテーパを有する円形断面であって有底の鋼管51と、必要に応じて鋼管51の上端に配設され、鋼管51の上端と略同径の外面を有する延長部材52とにより、箱抜用型枠50の枠体53が構成されている。鋼管51と延長部材52とは、鋼管51の上端内部の支持羽根51dに支持されたボス51aの雄ネジ部51bと、延長部材52の支持羽根52cの中心に固着されたスリーブ52eに回動自在に支持されたハンドル52dの下端部に配設されたボス52aの雌ネジ部52bとを、螺合することにより結合している。延長部材52の上端には略円形の蓋部材54が配設されており、吊支ロッド35の下端部の雄ネジが、蓋部材54の挿通孔54b、そして延長部材52のハンドル52dに挿通され、更に鋼管51のボス51aに形成された雌ネジ部51cとの螺合により結合している。
【0029】
この枠体53の外周略全面に亘り、スポンジ等の樹脂発泡材から成り任意の方向に弾性変形可能なクッション材55が被覆されており、更にクッション材55の外周面には、樹脂製のロープ56が上下に延びる螺旋状に巻回されている。詳述すると、ロープ56の下端部は鉤状のフック部56bに形成され、このフック部56bは、ロープ56の止着箇所として鋼管51の下底面に溶接された略半円形の環状部51eに係合している。上方に向けてクッション材55の外周面に螺旋状に巻回したロープ56の上端部56aは枠体53の上部まで延びている。尚、枠体に設けられるロープの止着箇所は、必ずしも鋼管51の下底面に限られず、枠体下部の外周面等の所定箇所であって構わない。
【0030】
また、上述した枠体53、クッション材55及びロープ56は、非透水性と柔軟性を有する薄層のビニール袋体57により、枠体53、クッション材55及びロープ56の底部及び外側部が上下方向に亘り覆われた状態で包まれている。
【0031】
すなわち、本実施例のクッション材55、ロープ56及びビニール袋体57は、それぞれ、本発明の弾性被覆体、線状押圧体及び非透水カバーを構成している。
【0032】
尚、本発明の枠体は、アンカーボルトを埋設する縦穴の深さに応じてその長さを調節できるように、上下方向に着脱可能な分割構造を有していることが好ましく、例えば、本実施例のように鋼管51及び延長部材52で構成してもよいし、または鋼管51のみ単独で構成してもよいし、あるいは本発明の変形例として図8に示されるように、鋼管51の上端に二体以上の略同形状の延長部材52、52’を上下に順次積み重ねて構成してもよい。本変形例において、二体の延長部材52、52’同士は、上方の延長部材52のハンドル52d下端のボス52aと下方の延長部材52’のハンドル52d’の上端に固定されたボス52a’との螺合により結合しており、更に下方の延長部材52’のハンドル52d’に固定されたピン61が、鋼管51の支持羽根51dに係止されることにより、延長部材52、52’と鋼管51との相対回転による螺合外れを防止している。
【0033】
更に尚、蓋部材54は、下面周縁に内外2段の段差部54aを有しており、本実施例のように蓋部材54が延長部材52に配設される場合は、段差部54aの外側の段差が延長部材52の上端面に載置され、また蓋部材54が延長部材52よりも肉厚の鋼管51に配設される場合は、段差部54aの内側の段差が鋼管51の上端面に載置される。
【0034】
図6に示されるように、箱抜用型枠50を構成する鋼管51の雌ネジ部51cに吊支ロッド35の下端を螺合させ、図5に示されるように、下部吊金具30の上面側において吊支ロッド35に螺合されたウイングナット47を締付けることにより箱抜用型枠50の上面と下部吊金具30の下面が密着し、箱抜用型枠50が吊支ロッド35に保持される。このような保持機構により箱抜用型枠50が保持されているため、コンクリートが打設された場合でも、箱抜用型枠50の傾き、横移動、あるいは、縦移動を防止することができる。
【0035】
上記のように構成された箱抜用型枠支持装置を設置するには、吊支ロッド35のX−Y方向の位置が設計寸法とおりに位置するように上部吊金具15および下部吊金具30を地上において仮組し、仮組された箱抜用型枠支持装置を吊上げ装置で吊上げてコンクリート型枠14の決められた位置に装着する。その後、上部吊金具15に対する吊支ロッド35の上下方向の支持位置を調節することにより下部吊金具30を介して箱抜用型枠50を水平、且つ、所定の高さ位置に配置し、コンクリート型枠14内に生コンクリートを打設する。打設された生コンクリートは経時とともに固化する。以下、少なくとも固化し始めた時点でのコンクリートを打設コンクリートCとして説明する。箱抜用型枠50に対向する打設コンクリートCにおける対向面は、クッション材55に螺旋状に巻回されたロープ56により、螺旋状の凹凸面に形成されている。
【0036】
図7は、打設コンクリートCが形成された後の、箱抜用型枠の抜き取りを説明するものである。まず、打設コンクリートCと上部吊金具15との間に2台のジャッキ60、60を配設し、挟持金具19を緩めるとともに支持ボルト40bを緩めて段差用型枠固定棒40を内方に引き込む。
【0037】
次に、枠体53の外部上方に延びたロープ56の上端部56aを上方に引き上げる。クッション材55の外面に螺旋状に巻回したロープ56は、上方に引き上げられることで全長に亘り引き絞られ、すなわち図7の囲い部に示されるように、クッション材55を枠体53の縮径方向に押圧する。尚、クッション材55は、打設コンクリートCの圧力に抗して弾性変形代を残す程度の弾性を有する部材から成っている。この押圧により、クッション材55が打設コンクリートCから離間する。尚、クッション材55及びロープ56の外方を被覆したビニール袋体57は、打設コンクリートCに対し直接に接触しているが、薄層であるため、クッション材55が打設コンクリートCから離間して生じた隙間Dに向けて、ビニール袋体57を打設コンクリートCから容易に引き離すことができる。
【0038】
上述したようにクッション材55及びロープ56の外方は、ビニール袋体57により被覆されているため、固化前の水分を含む生コンクリートが、クッション材55及びロープ56自体に浸入することがない。
【0039】
上述したように、ロープ56を引き上げてクッション材55を枠体53の縮径方向に弾性変形させた状態のままで、ジャッキ60にて上部吊金具15を上方に持ち上げると、吊支ロッド35を介して箱抜用型枠50が上方に移動し、打設コンクリートCから抜け出る。この際、箱抜用型枠50のクッション材55が打設コンクリートCから離間していること、および、箱抜用型枠50の鋼管51がテーパを有することから、箱抜用型枠50は容易に打設コンクリートCから抜き取られ、且つ打設コンクリートC内面にロープ56による凹凸面を残すことが出来る。
【0040】
尚、ロープ56を引き上げる作業とジャッキ60にて上部吊金具15を持ち上げる作業とを同時工程で行なうことで、ロープ56の引き上げ力を、クッション材55の縮径方向への押圧力とジャッキ60による持ち上げを補助する補助力とに利用でき好ましいが、例えば、作業工程の前段でロープ56を引き上げ、箱抜用型枠50を打設コンクリートCから一旦離間させて、後段でジャッキ60にて上部吊金具15を持ち上げても、持ち上げ力の軽減に寄与する。
【0041】
抜き取られた箱抜用型枠50は、損傷がなく、また弾性変形したクッション材55は弾性復元するため、何度でも再利用可能である。
【0042】
以上説明したように、本発明の箱抜用型枠50によれば、枠体53を被覆した弾性被覆体としてのクッション材55と打設コンクリートCとの間に線状押圧体としてのロープ56が介在され、このロープ56によって、クッション材55の外面に対し直接に押圧力を作用させることができるため、クッション材55が縮径方向に確実に変形することになり、箱抜用型枠50が、コンクリート型枠14内で固化し一体化した打設コンクリートCから分離でき、打設コンクリートCとの一体化に依る引抜き抵抗力を低減して、吊支ロッド35を介し箱抜用型枠50を容易に引抜くことが出来る。
【0043】
また、一端部が枠体53の止着箇所である環状部51eに止着されたロープ56を枠体53の上方に引き上げることで、螺旋状に巻回されたロープ56が引き絞られ、クッション材55の全周に亘り縮径方向にほぼ均一の押圧力を与えることができる。また、打設コンクリートCとの間であるクッション材55の外周部に設けられたロープ56により、打設コンクリートCの縦穴5の内面に、クッション材55に巻回されたロープ56による凹凸面を形成でき、この凹凸面を利用して、縦穴5に打設する別途のコンクリートを打設コンクリートCに一体化させることで、アンカーボルトを打設コンクリートCに強固に埋設できる。
【0044】
また、打設コンクリートCの圧力に抗して弾性変形代を残したクッション材55を、ロープ56により押圧し縮径変形できる。また、箱抜用型枠50を引抜く際に打設コンクリートCと当接する場合があっても、クッション材55が弾性変形するので引抜き易いばかりか、弾性変形したクッション材55が後に弾性復元するため、箱抜用型枠50を繰り返し使用できる。
【0045】
また、非透水カバーとしてのビニール袋体57によりクッション材55及びロープ56が防水されるため、水分を含む生コンクリートがクッション材55及びロープ56に浸入しクッション材55を変形させる機能を阻害することなく、当該機能を確実に発揮できる。また、ビニール袋体57が柔軟性を有しているので、ロープ56の形状を箱抜用型枠50の外面に残すことができ、この外面形状により打設コンクリートCの縦穴5の内面に凹凸面を形成できる。
【0046】
また、枠体53は、上下方向に延長可能な構造に構成することで、打設コンクリートCに形成する凹部としての縦穴5の深さに応じて、枠体53の上下長さを適宜調節できる。
【0047】
更に、以上説明した本発明の箱抜用型枠50の型抜き方法によれば、線状押圧体であるロープ56を上方に引き上げることで、螺旋状に巻回されたロープ56が引き絞られ、クッション材55が縮径方向に確実に変形するため、箱抜用型枠50を打設コンクリートCから容易に引抜くことが出来る。
【0048】
また、非透水カバーとしてのビニール袋体57によりクッション材55及びロープ56が防水されるため、水分を含む生コンクリートがクッション材55及びロープ56に浸入しクッション材55を変形させる機能を阻害することなく、当該機能を確実に発揮できる。
【0049】
更に、クッション材55を縮径変形させた状態のままで打設コンクリートCと干渉することなく枠体53を引抜くことができるため、箱抜用型枠50の引抜き抵抗を少なくできる。螺旋状に巻回されたロープ56により形成された打設コンクリートCの凹凸面を残すことができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
例えば、前記実施例では、本発明の線状押圧体としてのロープ56が、弾性被覆体としてのクッション材55の外周面に螺旋状に巻回しているが、例えば線状押圧体は、特に図示しないが弾性被覆体の外周面に上下方向に亘り配設した所定条数の棒状体であり、前記棒状体の上端部を枠体の管軸側に向けて押圧することで、弾性被覆体を変形するように構成してもよい。
【0052】
また、例えば、前記実施例では、本発明の非透水カバーとしてのビニール袋体57が、弾性被覆体としてのクッション材55及び線状押圧体としてのロープ56の外方を被覆しているが、例えば非透水カバーは、弾性被覆体及び線状押圧体の表面を被膜した非透水性を有する被膜素材であってもよいし、あるいは、弾性被覆体の非透水カバーとして上記実施例のようにビニール袋体を構成するとともに、線状押圧体の非透水カバーとして該線状押圧体の表面を被膜した非透水性の被膜素材を構成し、前記被膜素材を被覆した線状押圧体を前記ビニール袋体の更に外側に配置してもよい。このようにすることで、前記ビニール袋体が、弾性被覆体と線状押圧体との滑らかな相対移動に寄与し、線状押圧体に押圧力を与え易い。
【0053】
また、例えば、前記実施例では、本発明の弾性被覆体としてのクッション材55が、樹脂発泡材から成り任意の方向に弾性変形可能に構成されているが、例えば弾性被覆体は、低反発性樹脂から成っていてもよく、このようにすることで、低反発性樹脂から成る弾性被覆体が、線状押圧体により縮径変形した形状を比較的長時間保ち続けるので、当該形状を保っている間に箱抜用型枠を引抜き易い。
【0054】
また、例えば、前記実施例では、本発明の弾性被覆体としてのクッション材55が、弾性変形可能に構成されているが、例えば弾性被覆体は、その内面に予め縮径方向に折曲可能な折曲部を有し、線状押圧体により前記折曲部が押圧されることにより弾性変形するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 橋脚
3 アンカーボルト
5 縦穴
14 コンクリート型枠
15 上部吊金具
30 下部吊金具
35 吊支ロッド
36 段差用型枠
50 箱抜用型枠
51 鋼管
52 延長部材
53 枠体
54 蓋部材
55 クッション材(弾性被覆体)
56 ロープ(線状押圧体)
57 ビニール袋体(非透水カバー)
60 ジャッキ
61 ピン



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠であって、
前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支される吊支ロッドと、前記吊支ロッドに固定される剛性を有する枠体と、前記枠体の外周部を被覆するように設けられた弾性被覆体と、更に前記弾性被覆体の外周部に設けられ該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体と、から構成されていることを特徴とする箱抜用型枠。
【請求項2】
前記線状押圧体は、一端部が前記枠体の所定の止着箇所に止着され前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の箱抜用型枠。
【請求項3】
前記弾性被覆体は、打設コンクリートの圧力に抗して弾性変形代を残す弾性を有する部材から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の箱抜用型枠。
【請求項4】
前記弾性被覆体及び線状押圧体は、非透水性と柔軟性を有する非透水カバーにより被覆されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の箱抜用型枠。
【請求項5】
前記枠体は、上下方向に延長可能な構造を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の箱抜用型枠。
【請求項6】
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する枠体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体を、該線状押圧体の一端部を前記枠体の所定の止着箇所に止着するとともに前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回し、
前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させ、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜くことを特徴とする箱抜用型枠の型抜き方法。
【請求項7】
側方を囲むコンクリート型枠内に打設する打設コンクリートに凹部を形成するための箱抜用型枠の型抜き方法であって、
吊支ロッドに固定され剛性を有する枠体の外周部に、弾性被覆体を被覆するように設け、更に前記弾性被覆体の外周部に、該弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させる線状押圧体を、該線状押圧体の一端部を前記枠体の所定の止着箇所に止着するとともに前記弾性被覆体の外周部に沿って上方に向けて螺旋状に巻回し、前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を、非透水性と柔軟性を有する非透水カバーにより被覆し、
前記弾性被覆体、線状押圧体及び非透水カバーが装着された前記枠体を固定する前記吊支ロッドを、前記コンクリート型枠に支持された吊金具に吊支して該コンクリート型枠内に配置し、
前記コンクリート型枠内に打設したコンクリートが固化した後に、
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させ、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜き、更に前記非透水カバーを取除くことを特徴とする箱抜用型枠の型抜き方法。
【請求項8】
前記線状押圧体を前記枠体の上方に引き上げて前記弾性被覆体を前記枠体の縮径方向に変形させた状態のままで、前記吊支ロッドを介し前記弾性被覆体及び線状押圧体が装着された前記枠体を引抜くことを特徴とする請求項6または7に記載の箱抜用型枠の型抜き方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52384(P2012−52384A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197187(P2010−197187)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【特許番号】特許第4607251号(P4607251)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(591124019)株式会社高長建設 (11)
【Fターム(参考)】