簡易にフードを引き下げることができるポップアップフード装置
【課題】一つのアクチュエータによってフードの持上げ及び引き下げが簡易にできるポップアップフード装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アクチュエータ10に接続されるエネルギー吸収アーム30と、一端がフード101に回動可能に固定されるフード持上げアーム40と、前記フード持上げアーム40と前記フード101とを固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータ10のピストン伸張動作により、前記ロック機構部が固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アーム30と前記フード持上げアーム40とが連結して前記フード101を上方に持上げ、前記アクチュエータ10のピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アーム30が前記フード持上げアーム40を引き下げ、前記エネルギー吸収アーム30と前記フード持上げアーム40とが分離し、且つ前記ロック機構部が固定することを特徴とするポップアップフード装置1が提供される。
【解決手段】アクチュエータ10に接続されるエネルギー吸収アーム30と、一端がフード101に回動可能に固定されるフード持上げアーム40と、前記フード持上げアーム40と前記フード101とを固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータ10のピストン伸張動作により、前記ロック機構部が固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アーム30と前記フード持上げアーム40とが連結して前記フード101を上方に持上げ、前記アクチュエータ10のピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アーム30が前記フード持上げアーム40を引き下げ、前記エネルギー吸収アーム30と前記フード持上げアーム40とが分離し、且つ前記ロック機構部が固定することを特徴とするポップアップフード装置1が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動対象との接触時に、車体に配置されたアクチュエータを作動させてフードを持上げるポップアップフード装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車における安全対策は、事故の場合に、乗員の安全性を如何に確保するかに重点が置かれ、シートベルトやエアバックシステム等の開発が重要視されてきた。しかし近年においては、乗員の安全性を確保するのは勿論、所謂パッシブセーフティの考え方を推し進め、歩行者との衝突時に歩行者の安全をも確保するより積極的な安全対策が求められている。
【0003】
歩行者の被害を最小限に抑える対策として、歩行者が車両前方に衝突した際にフードの車両進行方向に向かって後部側を持上げて、フードとエンジン等との間に空間を形成し、持上げられたフードが撓むことで、歩行者衝突のエネルギーをフードの変形エネルギーとして吸収することが考えられた。しかし、歩行者が車両に衝突してフードに乗り上げるまでは瞬時であり、歩行者が衝突してからフードを持上げる方法では、十分な対応ができない。そこで、特許文献1に示されたように、予めセンサー等によって歩行者の衝突を予測して、事前にフードの車両進行方向に向かって後部側を機械的に持上げて歩行者の衝突に対して準備することで、歩行者の被害を最小限に食い止める技術が開発されている。
【0004】
ところが、このようなポップアップフード装置においては、衝突を予測してフードを持上げた場合、運転者のブレーキ操作やハンドル操作等によって歩行者との衝突が回避できる場合もある。また、装置が誤動作をする場合もある。このような場合運転には支障がないことから、運転者はそのまま運転を続行することができるが、フードを持上げた状態では持上げられたフードが運転者の下方視界を遮るため、フードを引き下げる必要性が生じる。従って、持上げたフードを再度引き下げることができるポップアップフード装置が必要とされる。そこで、特許文献2に示されたように、フードを再度引き下げる技術も開発されている。
【0005】
しかし、特許文献2に示されたポップアップフード装置においては、アクチュエータ等を使用してフードを持上げ、歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作だった場合には、別のアクチュエータ等を使用してフードを引き下げるため、ポップアップフード装置全体が大きくなり、車両の大きさによっては、車両に簡易に搭載することが困難であった。また、いずれのアクチュエータも一度動作すると修理工場での交換が必要で、メンテナンス上高コストとなり、実用性に欠けていた。
【特許文献1】特開2003-220972号公報
【特許文献2】特開2001-18844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一つのアクチュエータによってフードの持上げ及び引き下げが簡易にできるポップアップフード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、一端が第1ヒンジ部を介して所定の位置に回動可能に固定されて前記エネルギー吸収アームの上部に配設されたフード持上げアームと、前記フード持上げアームを所定の位置に固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フード持上げアームの他端を上方に持上げ、前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアームを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームを所定の位置に固定することを特徴とするポップアップフード装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、前記エネルギー吸収アームとフードとの間に配設され、一端が第1ヒンジ部を介して車両本体に回動可能に固定され他端が第2ヒンジ部を介して前記フードに回動可能に固定されたフード持上げアームと、前記フード持上げアームと前記フードとを固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームとフードとの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フードを上方に持上げ、前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアーム及び前記フード持上げアームに回動可能に固定された前記フードを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームと前記フードとを固定させることを特徴とするポップアップフード装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一つのアクチュエータによってフードの持上げ及び引き下げが簡易にできるポップアップフード装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態において、同様の構成については同じ符号を付し、改めて説明しない場合がある。
【0011】
本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置は、一つのアクチュエータによってフードの持上げと引き下げを行うことができることを特徴とする。なお、かかるフードの持上げ及び引き下げ双方の動作ができるポップアップフード装置を、以下、「リバーシブルタイプ」ポップアップフード装置という。また、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置は、一度持上げたフードを、運転者が簡易な操作で引き下げることができ、しかも修理等のメンテナンスが不要であるため、メンテナンス性に優れ、且つ低コストなリバーシブルタイプポップアップフード装置であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。図1は、本発明のポップアップフード装置1が車両に搭載された状態を切り欠いた状態で示す全体構成図である。車両本体に本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1が左右一対で配設される。左右一対のポップアップフード装置1は、構造、作用、効果はいずれも同一であるので、以下の説明においては車両前方から見た場合に左側に搭載されるポップアップフード装置1について説明する。本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1は、ポップアップフード機構3と、前記ポップアップフード機構3に連結されたアクチュエータ10と、前記アクチュエータ10とワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)によって連結されたモーターユニット5及びプーリ6とを備える。
【0013】
モーターユニット5及びプーリ6は、アクチュエータ10にワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)を介して連結されている。モーターユニット5のモーターの軸にプーリ6が2個固定され、それぞれのプーリ6にワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)が固定される。それぞれのプーリ6は、相対する方向にのみ回転するように制御される。従って、例えばモーターが正の回転をした場合には、一のプーリ6のみが回転し、モーターが逆回転した場合には、他のプーリ6のみが回転する。
【0014】
モーターユニット5には、センサー2及び制御部(図示せず)が接続される。歩行者の衝突が予め予測される場合、センサー2が感知して制御部に伝達し、制御部はモーターユニット5を駆動する。モーターユニット5が駆動するとモーターの回転がプーリ6を回転させ、ワイヤーケーブル1(7)又はワイヤーケーブル2(8)をプーリ6に巻き上げる。本発明の一実施形態においては、センサー2が予め歩行者との衝突を予測した場合に、制御部がモーターを正回転させワイヤーケーブル1(7)が巻き上げられる。一方、予め設定された時間内にフード101に衝突による荷重負荷がなかった場合又は運転者が所定の操作をした場合、衝突が回避されたものと判断し、制御部がモーターを逆回転させワイヤーケーブル2(8)を巻き上げる。以上の動作に伴って、前記ワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)が接続されたアクチュエータ10が稼動する。なお、プーリ6を使用するのは、ワイヤーケーブル1(7)又はワイヤーケーブル2(8)を瞬時に大量に巻き上げるためである。また、ワイヤーケーブル2(8)の巻き取りは自動制御とせず、トランクオープナー等と同様に運転者が運転席からワイヤー等を引張することにより手動で行ってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態においては、センサー2としてバンパー内に設けたレーダー型の距離センサー及びCCDカメラを用いた。距離センサーが把握した対象物までの距離とCCDカメラが捕らえた画像データから、対象物が歩行者等の人間であるか又は壁等であるかを制御部が判断する。対象物が人間であると判断し、且つ衝突が予測される予め定められた距離以内に接近した場合に、制御部はモーターユニット5を駆動する。なおセンサー2は、これに限定される訳ではなく、例えば、車速を感知して衝突を予測するもの等であってもよい。
【0016】
アクチュエータ10は、異なる2つの動作を行う。即ち、該アクチュエータ10内のピストンロッド13を伸張させるピストン伸張動作と、前記ピストンロッド13を引き戻すピストン引戻し動作である。アクチュエータ10は、ポップアップフード機構3と連結されており、前記ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作のいずれの動作においてもポップアップフード機構3に駆動のための動力を提供する。即ちアクチュエータ10が稼動することで、その動力がポップアップフード機構3に伝達され、ポップアップフード機構3がアクチュエータ10の動作に対応して稼動してフード101を持上げ又はフード101を引き下げる。従って、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1においては、1つのアクチュエータ10によって、フード101を持上げ及び引き下げることができる。
【0017】
アクチュエータ10は、概略アクチュエータ本体11と、アクチュエータ本体11の外周に配設されるコイルばね12と、アクチュエータ本体11内部に配設されるピストンロッド13、ピストンロッド13の先端部であるピストンヘッド14及びピストンロッド13を係止するロック装置(図示せず)から構成される。
【0018】
コイルばね12は、一端がアクチュエータ本体11の一端に係止され、他端がピストンヘッド14に係止される。ピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻されると、ピストンロッド13先端のピストンヘッド14によってコイルばね12が圧縮され、ピルトンロッド13がロック装置(図示せず)によって固定されると、コイルばね12は圧縮状態を保持したまま固定される。そしてロック装置が解除されることで、コイルばね12は圧縮状態から反発し、ピストンヘッド14及びピストンヘッド14に接続するピストンロッド13をアクチュエータ本体11内部から伸張させる。
【0019】
本実施形態においては、一のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル1(7)がロック装置(図示せず)に接続され、他のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル2(8)がピストンロッド13に接続されている。従って、モーターユニット5が所定の方向に回転してワイヤーケーブル2(8)を巻き上げると、ワイヤーケーブル2(8)に接続されたピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻され、コイルばね12が圧縮された状態でロック装置によってロックされる。一方、モーターユニット5が前記所定の方向と逆方向に回転すると、他のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル1(7)が巻き上げられ、ロック装置が解除されて、圧縮状態のコイルばね12が圧縮状態から開放されて反発し、ピストンヘッド14及び前記ピストンヘッド14に連結するピストンロッド13を伸張させる。なお、本実施形態においてはプーリ6が2個の場合について説明しているが、1個の大型プーリ6を使用し、ワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)を、モーター軸を中心に前記プーリ6の相対する位置に接続してもよい。
【0020】
ピストンヘッド14は、ピストンロッド13に直交する方向の断面が、中央部が窪んだ凹型の形状をなし、前記窪みにポップアップフード機構3の動力伝達アーム20の一端が差し込まれ、固定ねじ16で固定される。これによってピストンヘッド14の動きが前記動力伝達アーム20を介してポップアップフード機構3に伝達される。
【0021】
なお、本実施例においては、アクチュエータ10としてコイルばね式アクチュエータを用いたが、これに限定されるわけでなく、油圧式アクチュエータ等であってもよい。
【0022】
次にポップアップフード機構3について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の側面図であり、図3は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の平面図である。本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3は、概略、エネルギー吸収アーム部、フード持上げアーム部、動力伝達アーム部、アーム固定ブラケット部、フード固定ブラケット部、ロック機構部及びダブルラチェット部から構成される。
【0023】
エネルギー吸収アーム部は、エネルギー吸収アーム30、エネルギー吸収アーム30の端部にエネルギー吸収アームバー固定ねじ35によって固定されたエネルギー吸収アームバー32、エネルギー吸収アーム30の端部中央の位置に、エネルギー吸収アーム30長手方向に直交する形で突出して設けられたピン33から構成され、エネルギー吸収アーム30の一部には、図3に点線で示す開口部34が設けられている。なお、前記開口部34はエネルギー吸収アーム30の形状や材質によっては設けられない場合もある。
【0024】
エネルギー吸収アーム30は、一端が固定部材21を介して動力伝達アーム20と固定ねじ23で回動可能に固定され、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20は、常に所定の角度を保持しながら動作する。エネルギー吸収アーム30の他端であるエネルギー吸収アーム端部31は、アクチュエータ10の動力を受けて以下で詳述するフード持上げアーム40に当接し、エネルギー吸収アーム端部31の中央に設けられたピン33が、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43に沿って摺動することで、フード持上げアーム40を上方に持上げる。
【0025】
エネルギー吸収アームバー32は、フード持上げアーム40に回動可能に固定されたロック機構部のロック解除バー71の下側に当接して配設される。図3の平面図において、エネルギー吸収アームバー32とロック解除バー71が上部方向から見た場合に重なっているのが理解される。エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40に当接してフード持上げアーム40を持上げる際に、前記エネルギー吸収アームバー32は、ロック解除バー71を持上げる。これによって、フード固定ピン63に掛止されたロック部70が引き戻されて、フード持上げアーム40とフード101とのロックが解除される。
【0026】
エネルギー吸収アーム端部31の中央に設けられたピン33は、円筒形で先端が一回り大きく形成され、釘の頭様の形状をなしている。前記ピン33は、エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40に当接した際に、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43に嵌合し、ガイドスリット43に沿って前記ピン33が摺動することで、エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40を正確に上方に持上げることを補助する。本体が円筒形であるのは、ガイドスリット43との摩擦を最小限にするためであり、また、先端が一回り大きく形成されているのは、この部分がガイドスリット43とフード持上げアーム40との間に形成された空間に嵌め込まれ、ピン33がガイドスリット43から抜けてしまうことを防止するためである。従って、先端の直径は、ガイドスリット43の幅よりも大きく形成される。
【0027】
フード持上げアーム部は、該略、フード持上げアーム40、第1ヒンジ部41、フード持上げアーム突起42、ガイドスリット43及び第2ヒンジ部44から構成される。
【0028】
フード持上げアーム40は、一端が第1ヒンジ部41を介してアーム固定ブラケット50に回動可能に固定され、他端が第2ヒンジ部44を介してフード固定ブラケット60に回動可能に固定される。エネルギー吸収アーム30が当接して、エネルギー吸収アーム端部31の中央部に設けられたピン33がガイドスリット43に沿って摺動することに伴い、フード持上げアーム40は、第1ヒンジ部41を支点として上方に持上げられ、結果として、前記フード持上げアーム40に回動可能に固定された前記フード固定ブラケット60が、該フード固定ブラケット60が固定されたフード101を上方に持上げる。
【0029】
フード持上げアーム突起42は、フード持上げアーム40の第1ヒンジ部41側の端部に設けられる。フード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を中心に回動する場合、フード持上げアーム突起42がアーム固定ブラケット50の上端部に当接し、フード持上げアーム40がそれ以上回動することを防止する役割を果たす。フード101が所定の高さ以上に開かないようにするためである。
【0030】
ガイドスリット43は、フード持上げアーム40の概略中央部から第2ヒンジ部44方向に向かってL字型に設けられる。ガイドスリット43は、フード持上げアーム40本体と、該ガイドスリット43との間に空間が設けられた二重構造となっており、この空間に上述したエネルギー吸収アーム30のピン33の先端部が嵌め込まれる。ピン33の円筒形の本体部は、ガイドスリット43のL字型形状に沿って摺動し、この動作に伴って、フード持上げアーム40は上方に持上げられるように立ち上がる。そしてフード持上げアーム40は、フード固定ブラケット60に固定されたフード101を所定の高さに持上げる。従って、ガイドスリット43は、フード持上げアーム40、更にはフード101が所定の高さに立ち上がることを補助する役割を果たす。
【0031】
動力伝達アーム部は、動力伝達アーム20、固定部材21、ガイドスリット22及び固定ねじ23から構成される。
【0032】
動力伝達アーム20は、一端が固定部材21を介してエネルギー吸収アーム30と固定ねじ23によって回動可能に固定され、他端がアクチュエータ10のピストンヘッド14の凹型部分に嵌め込まれ、固定ねじ16によって回動可能に固定される。ここで、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20は、固定部材21を中心として常に所定の角度を維持しながら回動する。従って、動力伝達アーム20が図2に向かって右側に回動した場合、エネルギー吸収アーム30は常に同一の角度を維持することから、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられることになる。
【0033】
固定部材21は、エネルギー吸収アーム30を車両本体の所定の位置に固定するための部材であり、本体下部にねじ止め用の穴が設けられている。この穴を介してねじによって車両本体の所定の位置に螺着される。リベットによる鋲着等であってもよい。また、車両本体にエネルギー吸収アーム30を所定の位置に固定するための穴等が設けられている場合には、固定部材21は省略することも可能である。この場合には、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20が直接回動可能に固定される。
【0034】
ガイドスリット22は、ピストンヘッド14を固定ねじ16によって動力伝達アーム20に固定する際の固定用のスリットであり、スリットとしているのは、ピストンヘッド14の取り付けを容易にし、且つ、ピストンロッド13が水平に動作する際に、動力伝達アーム20とピストンヘッド14の固定点がスリットに沿って斜め上方に移動することで、ピストンロッド13の水平運動を確保するためである。
【0035】
アーム固定ブラケット部は、アーム固定ブラケット50と収納ガイド51から構成される。
【0036】
アーム固定ブラケット50は、上述したように第1ヒンジ部41でフード持上げアーム40と回動可能に固定され、フード持上げアーム40を車両の所定の位置に配設する役割を果たす。また、アーム固定ブラケット50の第1ヒンジ部41側の端部は、図2に向かって、所定の角度で右肩下がりとなるように形成され、この端部にフード持上げアーム突起42が当接することで、フード持上げアーム40が所定の角度以上に開くことを防止している。
【0037】
収納ガイド51は、アーム固定ブラケット50の第1ヒンジ部41の反対側の端部にねじ止めされて配設される。収納ガイド51は、フード101を引き下げて収納する場合に、フード101を所定の位置に収納することを補助する。即ち、収納ガイド51は、図2に示すとおり、車両長手方向の断面がU字型より開いた形状に形成されており、この窪みに、フード101に固定された後述するフード固定ブラケット60の先端部に配設されたフード固定ブラケット突起61が滑合する。フード固定ブラケット突起61の先端はU字型に丸みを持って形成されているため、フード101を引き下げた場合、前記フード固定ブラケット突起61が収納ガイド51のU字型より開いた開口部上部に当接し、フード101の自重により窪みに沿って滑合するのである。これにより、フード101を所定の位置に収納することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、上述したようにアーム固定ブラケット50上に収納ガイド51を配設しているが、分離して収納ガイド51を直接車両本体に配設してもよい。また、アーム固定ブラケット50自体についても、車両本体にフード持上げアーム40を回動可能に固定できる強固な固定用部材を設けることで省略することも可能である。
【0039】
フード固定ブラケット部は、該略、フード固定ブラケット60、フード固定ブラケット突起61、ガイドスリット62及びフード固定ピン63から構成される。
【0040】
フード固定ブラケット60は、フード101とフード持上げアーム40とを接続する役割を果たし、フード持上げアーム40がフード固定ブラケット60を持上げることで、フード固定ブラケット60が固定されたフード101自体が上方に持上げられる。フード固定ブラケット60は、幅方向の断面が概略逆凹型の形状で、広い水平面部分においてフード101と螺合又は鋲合され、垂直面の一方に設けられたガイドスリット62においてフード持上げアーム40と回動可能に第2ヒンジ部44で固定される。
【0041】
フード固定ブラケット60の、水平面部分の車両前方側の先端の下側には、フード固定ブラケット突起61が設けられる。フード固定ブラケット突起61は、上述したように、アーム固定ブラケット50先端に設けられた収納ガイド51と滑合して、フード101を所定の位置に収納する役割を果たす。
【0042】
ガイドスリット62は、フード固定ブラケット60の垂直面の一方に設けられる。本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1は、歩行者の衝突が予め予測された場合に、フード101の車両進行方向に向かって後部側の左右をアームで持上げることで、歩行者が衝突した場合の衝突エネルギーをフード101の撓み等によって吸収して歩行者の安全を確保するものである。従って、フード101がアームで持上げられる場合、フード101の車両進行方向に向かって前方側は、一般にフードロック及びフードラッチ(図示せず)と呼ばれる部材によって固定された状態である。この状態でフード101の車両進行方向に向かって後部側左右をアームで持上げた場合、アームに負荷されるフード101の自重とアームの持上げる力の均衡点で止まってしまう。従って、かかる均衡が生じてもフード101を持上げるためには、アームをスライドさせ均衡が生じないようにすればよい。ガイドスリット62は、この役割を果たす。なお、一般的にフードロックはフードの開閉が容易なように、若干の遊びをもって略U字型に形成されている。本発明のポップアップフード装置1を搭載する場合、フードロック及びフードラッチによるフード101の車両進行方向に向かって前方側での固定を確固たるものにするため、前記フードロックの周縁部に溝等を設け、フードラッチがよりしっかり固定されるようにするのが望ましい。
【0043】
フード固定ピン63は、フード固定ブラケット60のガイドスリット62が設けられた垂直面とは異なる垂直面に設けられ、後述するロック機構部のロック部70が前記フード固定ピン63に掛合することで、フード持上げアーム40とフード101を固定し、例えばガソリンスタンド等でのメンテナンス時に、フード101を車両前方から運転席側を支点として開閉する場合に、支障が生じないようにしている。
【0044】
ロック機構部は、ロック部70、ロック解除バー71、ロック機構ばね72及びロック機構固定ピン73から構成される。
【0045】
ロック部70とロック解除バー71は、ねじで固定されて一体化され、ロック機構ばね72を介してロック機構固定ピン73でフード持上げアーム40に回動可能に固定される。
【0046】
ロック部70は、ロック機構固定ピン73を中心に回動するが、ロック機構固定ピン73側の面にU字型の切れ込みを有し、この切れ込みが、フード固定ブラケット60に設けられたフード固定ピン63に掛合して、フード持上げアーム40とフード101とを固定する。
【0047】
ロック解除バー71は、ロック部70とねじで固定され、一体で稼動する。ロック解除バー71の下側には、エネルギー吸収アーム30の先端にねじで固定されたエネルギー吸収アームバー32が当接するように配設される。このため、エネルギー吸収アーム30がアクチュエータ10の動作に伴って、固定ねじ23を中心としてエネルギー吸収アーム端部31を上方に持上げるように動作することに伴って、エネルギー吸収アームバー32は、ロック解除バー71を上方に持上げる。ロック解除バー71とねじで固定されたロック部70は、ロック機構固定ピン73を中心に下向きに回転し、フード固定ピン63との掛合が解かれ、フード101とフード持上げアーム40とのロックが解除される。本発明の一実施形態におけるポップアップフード装置1は、歩行者との衝突が予め予測される場合にアクチュエータ10が動作するが、アクチュエータ10の動作に伴いエネルギー吸収アーム30がエネルギー吸収アーム端部31を上方に持上げ、結果としてフード101とフード持上げアーム40とのロックを解除することとなる。
【0048】
ロック機構ばね72は、一端はロック機構部が配設されるフード持上げアーム40に固定され、他端はロック部70の下側に掛着される。この結果ロック部70とねじで固定されるロック解除バー71を上方に持上げる力が弱まった場合、ロック部70は、ロック機構ばね72の反発力によって時計と反対回りに回転し、フード固定ピン63に掛合する。ロック機構ばね72は、ロック部70がフード固定ピン63に掛合するための力を与える。
【0049】
ダブルラチェット部は、第1ラチェット80(以下、アップ・ラチェットということがある。)、第1ラチェットばね81、第1ラチェット逆回転防止部材82、第2ラチェット83(以下、ダウン・ラチェットということがある。)、第2ラチェットばね84及び第2ラチェット逆回転防止部材85から構成される。
【0050】
ダブルラチェット部は、フード持上げアーム40のガイドスリット43の入り口部分の第1ヒンジ部41側に配設され、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との連結及び分離が確実に行われることを補助する。
【0051】
第1ラチェット80は、第1ラチェットばね81を介して第2ラチェット83の図2に向かって左側中央上に、該第1ラチェット80の左半分が突出するように配設され、上部方向にのみ回動可能に固定される。また、第2ラチェット83上で第1ラチェット80の下側の位置に、第1ラチェット逆回転防止部材82が配設され、第1ラチェット80が下部方向に回動することを防止する。
【0052】
第1ラチェットばね81は、一端が第1ラチェット80に係止され、他端が第2ラチェット83に係止される。第1ラチェットばね81は、第1ラチェット80が上部方向に回転すると圧縮され、第1ラチェット80を下部方向に押し戻す作用をする。
【0053】
第2ラチェット83は、第2ラチェットばね84を介してフード持上げアーム40上に下部方向にのみ回動可能に固定される。第2ラチェット83は、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43の入り口部分の第1ヒンジ部41側に、ガイドスリット43の右側と該第2ラチェット83の左端部が重なる状態で配設される。従って、前記第2ラチェット83上に配設された第1ラチェット80の左半分は、前記ガイドスリット43の入り口の上に突出することとなる。
【0054】
フード持上げアーム40上の第2ラチェット83の図面向かって右側の位置に、第2ラチェット逆回転防止部材85が配設される。第2ラチェット逆回転防止部材85は、第2ラチェット83が上部方向に回転することを防止する。
【0055】
第2ラチェットばね84は、一端がフード持上げアーム40に係止され、他端が第2ラチェット83の下側に係止される。第2ラチェットばね84は、第2ラチェット83が下部方向に回転すると圧縮され、第2ラチェット83を上部方向に押し戻す作用をする。また、第2ラチェットばね84は、上述した第1ラチェットばね81よりも太いばねが用いられる。
【0056】
(ポップアップフード装置のフード持上げ動作)
以上説明したような構成からなる本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の動作について、以下に図4〜図11を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の平常時の状態を示す側面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ開始状態を示す側面図である。また、図6は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ途中の状態を示す側面図であり、図7は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ完了状態を示す側面図である。図8は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ時の拡大図である。図9〜図11は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【0057】
図4において、センサー(図示せず)は、歩行者との衝突等をまったく予測していない。従って、アクチュエータ10はまったく動作せず、ピストンロッド13は、引き戻された状態である。このとき、フード持上げアーム40とフード固定ブラケット60は、ロック部70がフード固定ピン63に掛合し、ロックされているため、フード持上げアーム40とフード101は一体として動作する。一方、エネルギー吸収アーム30のピン33は、フード持上げアーム40のガイドスリット43の入り口の下方に位置するが、まだ入り口に嵌合しておらず、この状態ではエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは分離されており、それぞれ別個に動作する。従って、例えばガソリンスタンド等でのメンテナンス時にフード101を車両進行方向に向かって前方側で持ち上げる場合、フード101と一体として動作するフード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を支点として上方に時計回りに回転する。この場合、エネルギー吸収アーム30は、何ら動作しない。
【0058】
図5において、センサー(図示せず)が対象物を感知すると、感知した対象物との距離及びCCDカメラが捕らえた対象物の形状等から、制御部(図示せず)は、歩行者との衝突を予測し、ポップアップフード装置1にピストン伸張動作の命令を発する。
【0059】
前記命令を受け取ったモーターユニット5は、モーターが正の回転をし、モーター軸に固定されたプーリ6が、ワイヤーケーブル1(7)を巻き上げる。
【0060】
ワイヤーケーブル1(7)が接続されたアクチュエータ10のロック装置(図示せず)は、ワイヤーケーブル1(7)の巻き上げに伴ってロックが解除され、圧縮されていたアクチュエータ10のコイルばね12が反発してピストンヘッド14及びピストンロッド13を伸張させる。図5においては、2段式のピストンロッド13の1段目のロッドが伸張した状態を表示している。
【0061】
アクチュエータ10のピストンヘッド14は、動力伝達アーム20のガイドスリット22を挟み込んで固定ねじ16で固定されているため、ピストンヘッド14の伸張を受けて、動力伝達アーム20が固定ねじ23を中心として、反時計回りに回転する。このとき、動力伝達アーム20は固定ねじ23で一端が固定されているため、ピストンヘッド14は、ガイドスリット22に沿って動力伝達アーム20を図面向かって右側に押しながら、ガイドスリット22の中を上方に移動する。
【0062】
動力伝達アーム20が固定ねじ23を中心に反時計回りに回転すると、動力伝達アーム20と所定の角度を持って固定部材21を介して回動可能に固定されたエネルギー吸収アーム30は、固定ねじ23を中心に反時計周りに回転し、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられるように動く。このとき、エネルギー吸収アーム端部31中央に配設されたピン33が、フード持上げアーム40に設けられたL字型のガイドスリット43に嵌合する。図8を参照すると、ピン33とガイドスリット43が嵌合しているのが理解される。アクチュエータ10の動きに伴って、前記エネルギー吸収アーム端部31は、前記ピン33と前記ガイドスリット43が嵌合しているため、更に前記ガイドスリット43に沿って上方に移動するように摺動するが、ここでガイドスリット43上に突出して配設されたダブルラチェット部の第1ラチェット80に当接する。前記第1ラチェット80は上部方向にのみ回転するアップ・ラチェットであるため、アクチュエータ10の動きを受けてエネルギー吸収アーム端部31が更に持ち上げられるように摺動すると、前記第1ラチェット80は、ピン33に持上げられて上方に回転し(図8参照)、ピン33が第1ラチェットを通過すると第1ラチェットばね81の反発によって元に戻る。この結果、エネルギー吸収アーム30のピン33は、フード持上げアーム40のガイドスリット43内部に完全に嵌合する。これによって、それまで分離されて独立して動作可能であったエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とが完全に連結され、以後一体的に動作することとなる。
【0063】
一方、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられるように動くと、前記エネルギー吸収アーム端部31にねじ止めされたエネルギー吸収アームバー32も、同時に上方に持ち上げられるように動く。前記エネルギー吸収アームバー32はロック解除バー71の下側に当接していることから、エネルギー吸収アームバー32が上方に持ち上げられるように動くと、ロック解除バー71も上方に持ち上げられるように動く(図8参照)。この動きは、ロック解除バー71が接続されたロック部70を下方に引き下げる動きとなるため、結果としてロック部70が引き下げられ、フード固定ピン63とロック部70とのロックが解除されて、フード固定ブラケット60とフード持上げアーム40との連結が解除される。なお、図8においては、ロックが解除される直前の状態を示している。
【0064】
以上説明したように、アクチュエータが動作し始めると、それまでロック部70によって連結されていたフード固定ブラケット60とフード持上げアーム40との連結が解除される。同時に、それまで分離していたエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40が連結される。従って、エネルギー吸収アーム30及びフード持上げアーム40によって、フード101が上方に持上げられ始める。
【0065】
次に、図6を参照しながら、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1におけるフード持上げ途中の状態を説明する。図6において、アクチュエータ10のピストンロッド13は、まだ完全には伸張しきっていない。このとき、動力伝達アーム20は、ピストンヘッド14に押されて固定ねじ23を中心に反時計回りに回転するが、まだ回転の途中である。一方、図6において、フード固定ピン63とロック部70とのロックは完全に解除され、エネルギー吸収アーム30のエネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられ、フード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を支点として上方に持上げられているのが理解される。
【0066】
エネルギー吸収アーム30のエネルギー吸収アーム端部31が、ガイドスリット43に沿って上方に持ち上げられると、前記エネルギー吸収アーム端部31中央に配設されたピン33が、L字型の前記ガイドスリット43の角に当接する。前記ピン33は、円筒形であるため角に当接しても更に前記ガイドスリット43に沿って摺動し、L字型の前記ガイドスリット43の奥まで移動する。フード持上げアーム40は、これによって大きく上方に持上げられる。
【0067】
フード持上げアーム40が大きく上方に持上げられると、前記フード持上げアーム40と第2ヒンジ部44によって回動可能に固定されていたフード固定ブラケット60も大きく持上げられる。前記フード固定ブラケット60が固定されたフード101は、フード101の車両進行方向に向かって前方側において、フード101に取り付けられたフードロック(図示せず)と車両本体に取り付けられたフードラッチ(図示せず)によって固定されている。従って、前記フード固定ブラケット60が大きく持上げられると、フード101は、車両進行方向に向かって前方側の固定部を中心として、車両進行方向に向かって後部側が持上げられることになる。なお、フードロックとフードラッチとは、フード101の開閉を容易にするためある程度の遊びをもって設計され、略U字型のフードロックはフードラッチに対してU字型の底辺部が長く作られている。従って、本発明のポップアップフード装置1を搭載する場合は、フードロックの底辺部の周縁部に溝等を設け、フードラッチが強固に固定されるようにするのが望ましい。
【0068】
なお、フード101が持上げられると、フード101の車両進行方向に向かって前方側が固定されているためフード持上げアーム40に対してフード101の自重が掛かってくる。フード持上げアーム40がフード101を持上げる力とフード101の自重とが均衡する点においてフード101の押上が止まってしまうことを防止するため、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1においては、フード固定ブラケット60にガイドスリット62を設けている。フード固定ブラケット60とフード持上げアーム40は、ガイドスリット62を介して回動可能に第2ヒンジ部44で固定されているため、フード持上げアーム40がガイドスリット62にそって上方にスライドすることで、フード持上げアーム40に掛かるフード101の自重が分散され、フード持上げアーム40がフード101を持上げる動作の支障とならない。
【0069】
続いて、図7を参照しながらフード持上げが完了した状態について説明する。図7において、アクチュエータ10のピストンロッド13が伸びきる。一方、動力伝達アーム20は、固定ねじ23を中心として図面に向かって右側に回転し、ピストンロッド13が伸張しきった時点で回転が終了する。動力伝達アーム20と所定の角度を維持しながら、固定ねじ23を中心に反時計回りに回転するエネルギー吸収アーム30は、最大限に立ち上がり、フード持上げアーム40のガイドスリット43に嵌合したピン33は、L字型の前記ガイドスリット43の奥に達する。第1ヒンジ部41を中心に時計回りに回転するフード持上げアーム40は、該フード持上げアーム40の第1ヒンジ部41側の端部に設けられたフード持上げアーム突起42がアーム固定ブラケット50に突き当たり、それ以上回転することができなくなる。アクチュエータ10のピストンロッド13が伸びきり、フード持上げアーム40もそれ以上回転できないため、この状態で均衡し、フード持上げ動作が完了する。上述した動作により、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1によって、フード101が持上げられる。
【0070】
(ポップアップフード装置のフード引き下げ動作)
続いて、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置のフード引き下げ時の動作について、図を参照しながら説明する。図7は、フード持上げが完了した状態を示す図であるが、一方で、フード引き戻しを開始する状態の図でもある。図7において、歩行者との衝突が回避された場合又は誤動作であった場合、運転者の手動により又は制御部(図示せず)のピストン引戻し動作の命令により、モーターユニット5のモーターがフード持上げ時と反対に回転し、プーリ6に接続されたワイヤーケーブル2(8)を瞬時に巻き上げる。
【0071】
ワイヤーケーブル2(8)は、上述したようにアクチュエータ10のピストンロッド13に接続されている。従って、ワイヤーケーブル2(8)の巻上げに伴い、ワイヤーケーブル2(8)に接続されたピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻され、ピストンロッド13が完全に引き戻されると、コイルばね12が圧縮された状態でロック装置(図示せず)によってロックされる。以上の動作がアクチュエータ10のピストン引戻し動作であり、これによって、アクチュエータ10が元の状態に戻る。
【0072】
一方、ピストンロッド13が引き戻されることに伴い、ピストンヘッド14が回動可能に固定された動力伝達アーム20は、固定ねじ23を中心に時計回りに回転することとなる。すると、動力伝達アーム20と回動可能に固定されたエネルギー吸収アーム30は、固定ねじ23を中心に時計回りに回転し、エネルギー吸収アーム端部31及びピン33が下方に引き下げられるように動く。エネルギー吸収アーム30はピン33がフード持上げアーム40のガイドスリット43に嵌合しているため、エネルギー吸収アーム30が下方に引き下げられると、ピン33はガイドスリット43に沿って下方に摺動し、これに伴ってフード持上げアーム40が引き下げられ、フード持上げアーム40に回動可能に固定されたフード固定ブラケット60が引き下げられ、フード101が引き下げられる。
【0073】
ここで、フード101が引き下げられてくると、フード固定ブラケット60に設けられたフード固定ブラケット突起61と、アーム固定ブラケット50に設けられた収納ガイド51が当接する。フード固定ブラケット突起61は先端が車両長方向に丸く形成され、一方収納ガイド51も車両長方向の断面がU字型よりも開口部が開いた形状に形成されているため、フード101の自重により、フード固定ブラケット突起61が、収納ガイド51の窪みに沿って滑合し、フード101は、完全に元の状態に収納される。以上の一連の動作により、アクチュエータ10のピストン引戻し動作によってフード101が引き下げられ元の状態に収納される。
【0074】
ここで、図9から図11を参照しながら、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との分離、及びフード持上げアーム40とフード固定ブラケット60とのロックについて説明する。図9を参照する。アクチュエータ(図示せず)のピストン引戻し動作に伴い、エネルギー吸収アーム30が時計回りに回転して、エネルギー吸収アーム端部31及びピン33をガイドスリット43に沿って引き下げてくると、ピン33は、ダブルラチェット部の第1ラチェット80に当接する。ここで、該第1ラチェット80はアップ・ラチェットであるため上方にのみ回転し、下方への回転は第1ラチェット逆回転防止部材82によって阻止される。従って、ピン33は、このままではガイドスリット43から外れることはない。
【0075】
ところが、前記第1ラチェット80及び第1ラチェット逆回転防止部材82は、第2ラチェット83上に配設されている。前記第2ラチェット83は、ダウン・ラチェットで、下方にのみ回転するラチェットであるが、第1ラチェット80に使用されている第1ラチェットばね81より太い(従って、強力な)第2ラチェットばね84によって回転が制御されている。第1ラチェット80に当接したピン33に、アクチュエータ(図示せず)のピストン引戻し動作に伴って更に下方に引き戻す力が加わると、図10に示すように、第2ラチェット83が第1ラチェット80ごと反時計回りに下方に回転する。更にピン33に下方に引き戻す力が加わると第2ラチェット83が更に回転して、図11に示すように、ピン33は、第1ラチェット80の当接から外れる。一方、第1ラチェット80を介して下方に引き戻す力が負荷されていた第2ラチェット83は、ピン33が第1ラチェット80との当接を外れたことによって、第2ラチェットばね84の反発で元の状態に戻る。上述した一連の動作で、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との連結が解消され、更にエネルギー吸収アーム30が下方に引き下げられてピン33がガイドスリット43から外れると、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは、完全に分離する。
【0076】
また、上述した一連の動作でエネルギー吸収アーム端部31がガイドスリット43に沿って引き下げられると、エネルギー吸収アーム端部31にねじ止めされたエネルギー吸収アームバー32も引き下がる。すると、エネルギー吸収アームバー32が下方から当接して持上げていたロック解除バー71には、持上げる力は加わらなくなる。従って、ロック解除バー71と接続されたロック部70が、ロック機構ばね72の反発力でロック機構固定ねじ73を中心として時計回りに回転して、フード持上げアーム40の引き下げに伴って引き下げられてきたフード固定ブラケット60のフード固定ピン63に掛合する。この一連の動作によって、フード持上げアーム40とフード固定ブラケット60がロックされ、以後両者は一体として動作する。
【0077】
以上説明したように、アクチュエータ10のピストン引戻し動作に対応して、アクチュエータ10は、ピストンロッド13が完全に引き戻され且つコイルばね11が圧縮されてロックされた状態に戻り、フード101は引き下げられて完全に収納され、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは完全に分離し、且つフード持上げアーム40とフード固定ブラケット60とはロックされて一体として動作する状態となる。この状態は、アクチュエータ10がピストン伸張動作(ピストンロッド13を伸張する動作)を開始する以前の平常時の状態である。従って、修理等を必要とせず、簡易に平常時に状態に戻すことができる。
【0078】
以上説明したように、本発明に係るポップアップフード装置1は、一つのアクチュエータ10によって、フード101の持上げ及び引き下げを行うことができる。従って、装置全体の小型化が可能であり、車両に搭載する場合実装スペースが小さくて済む。
【0079】
また、本発明に係るポップアップフード装置1は、該ポップアップフード装置1で持上げたフード101を、運転者が簡易な操作で引き下げて収納し、再度該ポップアップフード装置1が動作可能な状態に戻すことができる。また、かかる操作を所定時間の経過に伴って自動的に行うことも可能である。従って、歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作の場合、運転者の視界を確保して直ちに運転を開始することができ、且つ再度前記ポップアップフード装置1を使用できる。従って歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作の場合に、修理等のメンテナンスが不要であるため、本発明に係るポップアップフード装置1は、メンテナンス性に優れ、且つ、維持費が低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のポップアップフード装置1が車両に搭載された状態を切り欠いた状態で示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の平常時の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ開始状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ途中の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ完了状態を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ時の拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【符号の説明】
【0081】
1、ポップアップフード装置
3、ポップアップフード機構
5、モーターユニット
6、プーリ
7、ワイヤーケーブル1
8、ワイヤーケーブル2
10、アクチュエータ
12、コイルばね
13、ピストンロッド
14、ピストンヘッド
20、動力伝達アーム
30、エネルギー吸収アーム
33、ピン
40、フード持上げアーム
50、アーム固定ブラケット
60、フード固定ブラケット
61、フード固定ブラケット突起
63、フード固定ピン
70、ロック部
71、ロック解除バー
80、第1ラチェット(アップ・ラチェット)
83、第2ラチェット(ダウン・ラチェット)
100、車両本体
101、フード
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動対象との接触時に、車体に配置されたアクチュエータを作動させてフードを持上げるポップアップフード装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車における安全対策は、事故の場合に、乗員の安全性を如何に確保するかに重点が置かれ、シートベルトやエアバックシステム等の開発が重要視されてきた。しかし近年においては、乗員の安全性を確保するのは勿論、所謂パッシブセーフティの考え方を推し進め、歩行者との衝突時に歩行者の安全をも確保するより積極的な安全対策が求められている。
【0003】
歩行者の被害を最小限に抑える対策として、歩行者が車両前方に衝突した際にフードの車両進行方向に向かって後部側を持上げて、フードとエンジン等との間に空間を形成し、持上げられたフードが撓むことで、歩行者衝突のエネルギーをフードの変形エネルギーとして吸収することが考えられた。しかし、歩行者が車両に衝突してフードに乗り上げるまでは瞬時であり、歩行者が衝突してからフードを持上げる方法では、十分な対応ができない。そこで、特許文献1に示されたように、予めセンサー等によって歩行者の衝突を予測して、事前にフードの車両進行方向に向かって後部側を機械的に持上げて歩行者の衝突に対して準備することで、歩行者の被害を最小限に食い止める技術が開発されている。
【0004】
ところが、このようなポップアップフード装置においては、衝突を予測してフードを持上げた場合、運転者のブレーキ操作やハンドル操作等によって歩行者との衝突が回避できる場合もある。また、装置が誤動作をする場合もある。このような場合運転には支障がないことから、運転者はそのまま運転を続行することができるが、フードを持上げた状態では持上げられたフードが運転者の下方視界を遮るため、フードを引き下げる必要性が生じる。従って、持上げたフードを再度引き下げることができるポップアップフード装置が必要とされる。そこで、特許文献2に示されたように、フードを再度引き下げる技術も開発されている。
【0005】
しかし、特許文献2に示されたポップアップフード装置においては、アクチュエータ等を使用してフードを持上げ、歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作だった場合には、別のアクチュエータ等を使用してフードを引き下げるため、ポップアップフード装置全体が大きくなり、車両の大きさによっては、車両に簡易に搭載することが困難であった。また、いずれのアクチュエータも一度動作すると修理工場での交換が必要で、メンテナンス上高コストとなり、実用性に欠けていた。
【特許文献1】特開2003-220972号公報
【特許文献2】特開2001-18844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一つのアクチュエータによってフードの持上げ及び引き下げが簡易にできるポップアップフード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、一端が第1ヒンジ部を介して所定の位置に回動可能に固定されて前記エネルギー吸収アームの上部に配設されたフード持上げアームと、前記フード持上げアームを所定の位置に固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フード持上げアームの他端を上方に持上げ、前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアームを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームを所定の位置に固定することを特徴とするポップアップフード装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、前記エネルギー吸収アームとフードとの間に配設され、一端が第1ヒンジ部を介して車両本体に回動可能に固定され他端が第2ヒンジ部を介して前記フードに回動可能に固定されたフード持上げアームと、前記フード持上げアームと前記フードとを固定するロック機構部と、を有し、前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームとフードとの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フードを上方に持上げ、前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアーム及び前記フード持上げアームに回動可能に固定された前記フードを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームと前記フードとを固定させることを特徴とするポップアップフード装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一つのアクチュエータによってフードの持上げ及び引き下げが簡易にできるポップアップフード装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態において、同様の構成については同じ符号を付し、改めて説明しない場合がある。
【0011】
本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置は、一つのアクチュエータによってフードの持上げと引き下げを行うことができることを特徴とする。なお、かかるフードの持上げ及び引き下げ双方の動作ができるポップアップフード装置を、以下、「リバーシブルタイプ」ポップアップフード装置という。また、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置は、一度持上げたフードを、運転者が簡易な操作で引き下げることができ、しかも修理等のメンテナンスが不要であるため、メンテナンス性に優れ、且つ低コストなリバーシブルタイプポップアップフード装置であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。図1は、本発明のポップアップフード装置1が車両に搭載された状態を切り欠いた状態で示す全体構成図である。車両本体に本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1が左右一対で配設される。左右一対のポップアップフード装置1は、構造、作用、効果はいずれも同一であるので、以下の説明においては車両前方から見た場合に左側に搭載されるポップアップフード装置1について説明する。本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1は、ポップアップフード機構3と、前記ポップアップフード機構3に連結されたアクチュエータ10と、前記アクチュエータ10とワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)によって連結されたモーターユニット5及びプーリ6とを備える。
【0013】
モーターユニット5及びプーリ6は、アクチュエータ10にワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)を介して連結されている。モーターユニット5のモーターの軸にプーリ6が2個固定され、それぞれのプーリ6にワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)が固定される。それぞれのプーリ6は、相対する方向にのみ回転するように制御される。従って、例えばモーターが正の回転をした場合には、一のプーリ6のみが回転し、モーターが逆回転した場合には、他のプーリ6のみが回転する。
【0014】
モーターユニット5には、センサー2及び制御部(図示せず)が接続される。歩行者の衝突が予め予測される場合、センサー2が感知して制御部に伝達し、制御部はモーターユニット5を駆動する。モーターユニット5が駆動するとモーターの回転がプーリ6を回転させ、ワイヤーケーブル1(7)又はワイヤーケーブル2(8)をプーリ6に巻き上げる。本発明の一実施形態においては、センサー2が予め歩行者との衝突を予測した場合に、制御部がモーターを正回転させワイヤーケーブル1(7)が巻き上げられる。一方、予め設定された時間内にフード101に衝突による荷重負荷がなかった場合又は運転者が所定の操作をした場合、衝突が回避されたものと判断し、制御部がモーターを逆回転させワイヤーケーブル2(8)を巻き上げる。以上の動作に伴って、前記ワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)が接続されたアクチュエータ10が稼動する。なお、プーリ6を使用するのは、ワイヤーケーブル1(7)又はワイヤーケーブル2(8)を瞬時に大量に巻き上げるためである。また、ワイヤーケーブル2(8)の巻き取りは自動制御とせず、トランクオープナー等と同様に運転者が運転席からワイヤー等を引張することにより手動で行ってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態においては、センサー2としてバンパー内に設けたレーダー型の距離センサー及びCCDカメラを用いた。距離センサーが把握した対象物までの距離とCCDカメラが捕らえた画像データから、対象物が歩行者等の人間であるか又は壁等であるかを制御部が判断する。対象物が人間であると判断し、且つ衝突が予測される予め定められた距離以内に接近した場合に、制御部はモーターユニット5を駆動する。なおセンサー2は、これに限定される訳ではなく、例えば、車速を感知して衝突を予測するもの等であってもよい。
【0016】
アクチュエータ10は、異なる2つの動作を行う。即ち、該アクチュエータ10内のピストンロッド13を伸張させるピストン伸張動作と、前記ピストンロッド13を引き戻すピストン引戻し動作である。アクチュエータ10は、ポップアップフード機構3と連結されており、前記ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作のいずれの動作においてもポップアップフード機構3に駆動のための動力を提供する。即ちアクチュエータ10が稼動することで、その動力がポップアップフード機構3に伝達され、ポップアップフード機構3がアクチュエータ10の動作に対応して稼動してフード101を持上げ又はフード101を引き下げる。従って、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1においては、1つのアクチュエータ10によって、フード101を持上げ及び引き下げることができる。
【0017】
アクチュエータ10は、概略アクチュエータ本体11と、アクチュエータ本体11の外周に配設されるコイルばね12と、アクチュエータ本体11内部に配設されるピストンロッド13、ピストンロッド13の先端部であるピストンヘッド14及びピストンロッド13を係止するロック装置(図示せず)から構成される。
【0018】
コイルばね12は、一端がアクチュエータ本体11の一端に係止され、他端がピストンヘッド14に係止される。ピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻されると、ピストンロッド13先端のピストンヘッド14によってコイルばね12が圧縮され、ピルトンロッド13がロック装置(図示せず)によって固定されると、コイルばね12は圧縮状態を保持したまま固定される。そしてロック装置が解除されることで、コイルばね12は圧縮状態から反発し、ピストンヘッド14及びピストンヘッド14に接続するピストンロッド13をアクチュエータ本体11内部から伸張させる。
【0019】
本実施形態においては、一のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル1(7)がロック装置(図示せず)に接続され、他のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル2(8)がピストンロッド13に接続されている。従って、モーターユニット5が所定の方向に回転してワイヤーケーブル2(8)を巻き上げると、ワイヤーケーブル2(8)に接続されたピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻され、コイルばね12が圧縮された状態でロック装置によってロックされる。一方、モーターユニット5が前記所定の方向と逆方向に回転すると、他のプーリ6に接続されたワイヤーケーブル1(7)が巻き上げられ、ロック装置が解除されて、圧縮状態のコイルばね12が圧縮状態から開放されて反発し、ピストンヘッド14及び前記ピストンヘッド14に連結するピストンロッド13を伸張させる。なお、本実施形態においてはプーリ6が2個の場合について説明しているが、1個の大型プーリ6を使用し、ワイヤーケーブル1(7)及びワイヤーケーブル2(8)を、モーター軸を中心に前記プーリ6の相対する位置に接続してもよい。
【0020】
ピストンヘッド14は、ピストンロッド13に直交する方向の断面が、中央部が窪んだ凹型の形状をなし、前記窪みにポップアップフード機構3の動力伝達アーム20の一端が差し込まれ、固定ねじ16で固定される。これによってピストンヘッド14の動きが前記動力伝達アーム20を介してポップアップフード機構3に伝達される。
【0021】
なお、本実施例においては、アクチュエータ10としてコイルばね式アクチュエータを用いたが、これに限定されるわけでなく、油圧式アクチュエータ等であってもよい。
【0022】
次にポップアップフード機構3について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の側面図であり、図3は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の平面図である。本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3は、概略、エネルギー吸収アーム部、フード持上げアーム部、動力伝達アーム部、アーム固定ブラケット部、フード固定ブラケット部、ロック機構部及びダブルラチェット部から構成される。
【0023】
エネルギー吸収アーム部は、エネルギー吸収アーム30、エネルギー吸収アーム30の端部にエネルギー吸収アームバー固定ねじ35によって固定されたエネルギー吸収アームバー32、エネルギー吸収アーム30の端部中央の位置に、エネルギー吸収アーム30長手方向に直交する形で突出して設けられたピン33から構成され、エネルギー吸収アーム30の一部には、図3に点線で示す開口部34が設けられている。なお、前記開口部34はエネルギー吸収アーム30の形状や材質によっては設けられない場合もある。
【0024】
エネルギー吸収アーム30は、一端が固定部材21を介して動力伝達アーム20と固定ねじ23で回動可能に固定され、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20は、常に所定の角度を保持しながら動作する。エネルギー吸収アーム30の他端であるエネルギー吸収アーム端部31は、アクチュエータ10の動力を受けて以下で詳述するフード持上げアーム40に当接し、エネルギー吸収アーム端部31の中央に設けられたピン33が、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43に沿って摺動することで、フード持上げアーム40を上方に持上げる。
【0025】
エネルギー吸収アームバー32は、フード持上げアーム40に回動可能に固定されたロック機構部のロック解除バー71の下側に当接して配設される。図3の平面図において、エネルギー吸収アームバー32とロック解除バー71が上部方向から見た場合に重なっているのが理解される。エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40に当接してフード持上げアーム40を持上げる際に、前記エネルギー吸収アームバー32は、ロック解除バー71を持上げる。これによって、フード固定ピン63に掛止されたロック部70が引き戻されて、フード持上げアーム40とフード101とのロックが解除される。
【0026】
エネルギー吸収アーム端部31の中央に設けられたピン33は、円筒形で先端が一回り大きく形成され、釘の頭様の形状をなしている。前記ピン33は、エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40に当接した際に、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43に嵌合し、ガイドスリット43に沿って前記ピン33が摺動することで、エネルギー吸収アーム30がフード持上げアーム40を正確に上方に持上げることを補助する。本体が円筒形であるのは、ガイドスリット43との摩擦を最小限にするためであり、また、先端が一回り大きく形成されているのは、この部分がガイドスリット43とフード持上げアーム40との間に形成された空間に嵌め込まれ、ピン33がガイドスリット43から抜けてしまうことを防止するためである。従って、先端の直径は、ガイドスリット43の幅よりも大きく形成される。
【0027】
フード持上げアーム部は、該略、フード持上げアーム40、第1ヒンジ部41、フード持上げアーム突起42、ガイドスリット43及び第2ヒンジ部44から構成される。
【0028】
フード持上げアーム40は、一端が第1ヒンジ部41を介してアーム固定ブラケット50に回動可能に固定され、他端が第2ヒンジ部44を介してフード固定ブラケット60に回動可能に固定される。エネルギー吸収アーム30が当接して、エネルギー吸収アーム端部31の中央部に設けられたピン33がガイドスリット43に沿って摺動することに伴い、フード持上げアーム40は、第1ヒンジ部41を支点として上方に持上げられ、結果として、前記フード持上げアーム40に回動可能に固定された前記フード固定ブラケット60が、該フード固定ブラケット60が固定されたフード101を上方に持上げる。
【0029】
フード持上げアーム突起42は、フード持上げアーム40の第1ヒンジ部41側の端部に設けられる。フード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を中心に回動する場合、フード持上げアーム突起42がアーム固定ブラケット50の上端部に当接し、フード持上げアーム40がそれ以上回動することを防止する役割を果たす。フード101が所定の高さ以上に開かないようにするためである。
【0030】
ガイドスリット43は、フード持上げアーム40の概略中央部から第2ヒンジ部44方向に向かってL字型に設けられる。ガイドスリット43は、フード持上げアーム40本体と、該ガイドスリット43との間に空間が設けられた二重構造となっており、この空間に上述したエネルギー吸収アーム30のピン33の先端部が嵌め込まれる。ピン33の円筒形の本体部は、ガイドスリット43のL字型形状に沿って摺動し、この動作に伴って、フード持上げアーム40は上方に持上げられるように立ち上がる。そしてフード持上げアーム40は、フード固定ブラケット60に固定されたフード101を所定の高さに持上げる。従って、ガイドスリット43は、フード持上げアーム40、更にはフード101が所定の高さに立ち上がることを補助する役割を果たす。
【0031】
動力伝達アーム部は、動力伝達アーム20、固定部材21、ガイドスリット22及び固定ねじ23から構成される。
【0032】
動力伝達アーム20は、一端が固定部材21を介してエネルギー吸収アーム30と固定ねじ23によって回動可能に固定され、他端がアクチュエータ10のピストンヘッド14の凹型部分に嵌め込まれ、固定ねじ16によって回動可能に固定される。ここで、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20は、固定部材21を中心として常に所定の角度を維持しながら回動する。従って、動力伝達アーム20が図2に向かって右側に回動した場合、エネルギー吸収アーム30は常に同一の角度を維持することから、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられることになる。
【0033】
固定部材21は、エネルギー吸収アーム30を車両本体の所定の位置に固定するための部材であり、本体下部にねじ止め用の穴が設けられている。この穴を介してねじによって車両本体の所定の位置に螺着される。リベットによる鋲着等であってもよい。また、車両本体にエネルギー吸収アーム30を所定の位置に固定するための穴等が設けられている場合には、固定部材21は省略することも可能である。この場合には、エネルギー吸収アーム30と動力伝達アーム20が直接回動可能に固定される。
【0034】
ガイドスリット22は、ピストンヘッド14を固定ねじ16によって動力伝達アーム20に固定する際の固定用のスリットであり、スリットとしているのは、ピストンヘッド14の取り付けを容易にし、且つ、ピストンロッド13が水平に動作する際に、動力伝達アーム20とピストンヘッド14の固定点がスリットに沿って斜め上方に移動することで、ピストンロッド13の水平運動を確保するためである。
【0035】
アーム固定ブラケット部は、アーム固定ブラケット50と収納ガイド51から構成される。
【0036】
アーム固定ブラケット50は、上述したように第1ヒンジ部41でフード持上げアーム40と回動可能に固定され、フード持上げアーム40を車両の所定の位置に配設する役割を果たす。また、アーム固定ブラケット50の第1ヒンジ部41側の端部は、図2に向かって、所定の角度で右肩下がりとなるように形成され、この端部にフード持上げアーム突起42が当接することで、フード持上げアーム40が所定の角度以上に開くことを防止している。
【0037】
収納ガイド51は、アーム固定ブラケット50の第1ヒンジ部41の反対側の端部にねじ止めされて配設される。収納ガイド51は、フード101を引き下げて収納する場合に、フード101を所定の位置に収納することを補助する。即ち、収納ガイド51は、図2に示すとおり、車両長手方向の断面がU字型より開いた形状に形成されており、この窪みに、フード101に固定された後述するフード固定ブラケット60の先端部に配設されたフード固定ブラケット突起61が滑合する。フード固定ブラケット突起61の先端はU字型に丸みを持って形成されているため、フード101を引き下げた場合、前記フード固定ブラケット突起61が収納ガイド51のU字型より開いた開口部上部に当接し、フード101の自重により窪みに沿って滑合するのである。これにより、フード101を所定の位置に収納することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、上述したようにアーム固定ブラケット50上に収納ガイド51を配設しているが、分離して収納ガイド51を直接車両本体に配設してもよい。また、アーム固定ブラケット50自体についても、車両本体にフード持上げアーム40を回動可能に固定できる強固な固定用部材を設けることで省略することも可能である。
【0039】
フード固定ブラケット部は、該略、フード固定ブラケット60、フード固定ブラケット突起61、ガイドスリット62及びフード固定ピン63から構成される。
【0040】
フード固定ブラケット60は、フード101とフード持上げアーム40とを接続する役割を果たし、フード持上げアーム40がフード固定ブラケット60を持上げることで、フード固定ブラケット60が固定されたフード101自体が上方に持上げられる。フード固定ブラケット60は、幅方向の断面が概略逆凹型の形状で、広い水平面部分においてフード101と螺合又は鋲合され、垂直面の一方に設けられたガイドスリット62においてフード持上げアーム40と回動可能に第2ヒンジ部44で固定される。
【0041】
フード固定ブラケット60の、水平面部分の車両前方側の先端の下側には、フード固定ブラケット突起61が設けられる。フード固定ブラケット突起61は、上述したように、アーム固定ブラケット50先端に設けられた収納ガイド51と滑合して、フード101を所定の位置に収納する役割を果たす。
【0042】
ガイドスリット62は、フード固定ブラケット60の垂直面の一方に設けられる。本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1は、歩行者の衝突が予め予測された場合に、フード101の車両進行方向に向かって後部側の左右をアームで持上げることで、歩行者が衝突した場合の衝突エネルギーをフード101の撓み等によって吸収して歩行者の安全を確保するものである。従って、フード101がアームで持上げられる場合、フード101の車両進行方向に向かって前方側は、一般にフードロック及びフードラッチ(図示せず)と呼ばれる部材によって固定された状態である。この状態でフード101の車両進行方向に向かって後部側左右をアームで持上げた場合、アームに負荷されるフード101の自重とアームの持上げる力の均衡点で止まってしまう。従って、かかる均衡が生じてもフード101を持上げるためには、アームをスライドさせ均衡が生じないようにすればよい。ガイドスリット62は、この役割を果たす。なお、一般的にフードロックはフードの開閉が容易なように、若干の遊びをもって略U字型に形成されている。本発明のポップアップフード装置1を搭載する場合、フードロック及びフードラッチによるフード101の車両進行方向に向かって前方側での固定を確固たるものにするため、前記フードロックの周縁部に溝等を設け、フードラッチがよりしっかり固定されるようにするのが望ましい。
【0043】
フード固定ピン63は、フード固定ブラケット60のガイドスリット62が設けられた垂直面とは異なる垂直面に設けられ、後述するロック機構部のロック部70が前記フード固定ピン63に掛合することで、フード持上げアーム40とフード101を固定し、例えばガソリンスタンド等でのメンテナンス時に、フード101を車両前方から運転席側を支点として開閉する場合に、支障が生じないようにしている。
【0044】
ロック機構部は、ロック部70、ロック解除バー71、ロック機構ばね72及びロック機構固定ピン73から構成される。
【0045】
ロック部70とロック解除バー71は、ねじで固定されて一体化され、ロック機構ばね72を介してロック機構固定ピン73でフード持上げアーム40に回動可能に固定される。
【0046】
ロック部70は、ロック機構固定ピン73を中心に回動するが、ロック機構固定ピン73側の面にU字型の切れ込みを有し、この切れ込みが、フード固定ブラケット60に設けられたフード固定ピン63に掛合して、フード持上げアーム40とフード101とを固定する。
【0047】
ロック解除バー71は、ロック部70とねじで固定され、一体で稼動する。ロック解除バー71の下側には、エネルギー吸収アーム30の先端にねじで固定されたエネルギー吸収アームバー32が当接するように配設される。このため、エネルギー吸収アーム30がアクチュエータ10の動作に伴って、固定ねじ23を中心としてエネルギー吸収アーム端部31を上方に持上げるように動作することに伴って、エネルギー吸収アームバー32は、ロック解除バー71を上方に持上げる。ロック解除バー71とねじで固定されたロック部70は、ロック機構固定ピン73を中心に下向きに回転し、フード固定ピン63との掛合が解かれ、フード101とフード持上げアーム40とのロックが解除される。本発明の一実施形態におけるポップアップフード装置1は、歩行者との衝突が予め予測される場合にアクチュエータ10が動作するが、アクチュエータ10の動作に伴いエネルギー吸収アーム30がエネルギー吸収アーム端部31を上方に持上げ、結果としてフード101とフード持上げアーム40とのロックを解除することとなる。
【0048】
ロック機構ばね72は、一端はロック機構部が配設されるフード持上げアーム40に固定され、他端はロック部70の下側に掛着される。この結果ロック部70とねじで固定されるロック解除バー71を上方に持上げる力が弱まった場合、ロック部70は、ロック機構ばね72の反発力によって時計と反対回りに回転し、フード固定ピン63に掛合する。ロック機構ばね72は、ロック部70がフード固定ピン63に掛合するための力を与える。
【0049】
ダブルラチェット部は、第1ラチェット80(以下、アップ・ラチェットということがある。)、第1ラチェットばね81、第1ラチェット逆回転防止部材82、第2ラチェット83(以下、ダウン・ラチェットということがある。)、第2ラチェットばね84及び第2ラチェット逆回転防止部材85から構成される。
【0050】
ダブルラチェット部は、フード持上げアーム40のガイドスリット43の入り口部分の第1ヒンジ部41側に配設され、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との連結及び分離が確実に行われることを補助する。
【0051】
第1ラチェット80は、第1ラチェットばね81を介して第2ラチェット83の図2に向かって左側中央上に、該第1ラチェット80の左半分が突出するように配設され、上部方向にのみ回動可能に固定される。また、第2ラチェット83上で第1ラチェット80の下側の位置に、第1ラチェット逆回転防止部材82が配設され、第1ラチェット80が下部方向に回動することを防止する。
【0052】
第1ラチェットばね81は、一端が第1ラチェット80に係止され、他端が第2ラチェット83に係止される。第1ラチェットばね81は、第1ラチェット80が上部方向に回転すると圧縮され、第1ラチェット80を下部方向に押し戻す作用をする。
【0053】
第2ラチェット83は、第2ラチェットばね84を介してフード持上げアーム40上に下部方向にのみ回動可能に固定される。第2ラチェット83は、フード持上げアーム40に設けられたガイドスリット43の入り口部分の第1ヒンジ部41側に、ガイドスリット43の右側と該第2ラチェット83の左端部が重なる状態で配設される。従って、前記第2ラチェット83上に配設された第1ラチェット80の左半分は、前記ガイドスリット43の入り口の上に突出することとなる。
【0054】
フード持上げアーム40上の第2ラチェット83の図面向かって右側の位置に、第2ラチェット逆回転防止部材85が配設される。第2ラチェット逆回転防止部材85は、第2ラチェット83が上部方向に回転することを防止する。
【0055】
第2ラチェットばね84は、一端がフード持上げアーム40に係止され、他端が第2ラチェット83の下側に係止される。第2ラチェットばね84は、第2ラチェット83が下部方向に回転すると圧縮され、第2ラチェット83を上部方向に押し戻す作用をする。また、第2ラチェットばね84は、上述した第1ラチェットばね81よりも太いばねが用いられる。
【0056】
(ポップアップフード装置のフード持上げ動作)
以上説明したような構成からなる本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の動作について、以下に図4〜図11を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の平常時の状態を示す側面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ開始状態を示す側面図である。また、図6は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ途中の状態を示す側面図であり、図7は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ完了状態を示す側面図である。図8は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ時の拡大図である。図9〜図11は、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【0057】
図4において、センサー(図示せず)は、歩行者との衝突等をまったく予測していない。従って、アクチュエータ10はまったく動作せず、ピストンロッド13は、引き戻された状態である。このとき、フード持上げアーム40とフード固定ブラケット60は、ロック部70がフード固定ピン63に掛合し、ロックされているため、フード持上げアーム40とフード101は一体として動作する。一方、エネルギー吸収アーム30のピン33は、フード持上げアーム40のガイドスリット43の入り口の下方に位置するが、まだ入り口に嵌合しておらず、この状態ではエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは分離されており、それぞれ別個に動作する。従って、例えばガソリンスタンド等でのメンテナンス時にフード101を車両進行方向に向かって前方側で持ち上げる場合、フード101と一体として動作するフード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を支点として上方に時計回りに回転する。この場合、エネルギー吸収アーム30は、何ら動作しない。
【0058】
図5において、センサー(図示せず)が対象物を感知すると、感知した対象物との距離及びCCDカメラが捕らえた対象物の形状等から、制御部(図示せず)は、歩行者との衝突を予測し、ポップアップフード装置1にピストン伸張動作の命令を発する。
【0059】
前記命令を受け取ったモーターユニット5は、モーターが正の回転をし、モーター軸に固定されたプーリ6が、ワイヤーケーブル1(7)を巻き上げる。
【0060】
ワイヤーケーブル1(7)が接続されたアクチュエータ10のロック装置(図示せず)は、ワイヤーケーブル1(7)の巻き上げに伴ってロックが解除され、圧縮されていたアクチュエータ10のコイルばね12が反発してピストンヘッド14及びピストンロッド13を伸張させる。図5においては、2段式のピストンロッド13の1段目のロッドが伸張した状態を表示している。
【0061】
アクチュエータ10のピストンヘッド14は、動力伝達アーム20のガイドスリット22を挟み込んで固定ねじ16で固定されているため、ピストンヘッド14の伸張を受けて、動力伝達アーム20が固定ねじ23を中心として、反時計回りに回転する。このとき、動力伝達アーム20は固定ねじ23で一端が固定されているため、ピストンヘッド14は、ガイドスリット22に沿って動力伝達アーム20を図面向かって右側に押しながら、ガイドスリット22の中を上方に移動する。
【0062】
動力伝達アーム20が固定ねじ23を中心に反時計回りに回転すると、動力伝達アーム20と所定の角度を持って固定部材21を介して回動可能に固定されたエネルギー吸収アーム30は、固定ねじ23を中心に反時計周りに回転し、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられるように動く。このとき、エネルギー吸収アーム端部31中央に配設されたピン33が、フード持上げアーム40に設けられたL字型のガイドスリット43に嵌合する。図8を参照すると、ピン33とガイドスリット43が嵌合しているのが理解される。アクチュエータ10の動きに伴って、前記エネルギー吸収アーム端部31は、前記ピン33と前記ガイドスリット43が嵌合しているため、更に前記ガイドスリット43に沿って上方に移動するように摺動するが、ここでガイドスリット43上に突出して配設されたダブルラチェット部の第1ラチェット80に当接する。前記第1ラチェット80は上部方向にのみ回転するアップ・ラチェットであるため、アクチュエータ10の動きを受けてエネルギー吸収アーム端部31が更に持ち上げられるように摺動すると、前記第1ラチェット80は、ピン33に持上げられて上方に回転し(図8参照)、ピン33が第1ラチェットを通過すると第1ラチェットばね81の反発によって元に戻る。この結果、エネルギー吸収アーム30のピン33は、フード持上げアーム40のガイドスリット43内部に完全に嵌合する。これによって、それまで分離されて独立して動作可能であったエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とが完全に連結され、以後一体的に動作することとなる。
【0063】
一方、エネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられるように動くと、前記エネルギー吸収アーム端部31にねじ止めされたエネルギー吸収アームバー32も、同時に上方に持ち上げられるように動く。前記エネルギー吸収アームバー32はロック解除バー71の下側に当接していることから、エネルギー吸収アームバー32が上方に持ち上げられるように動くと、ロック解除バー71も上方に持ち上げられるように動く(図8参照)。この動きは、ロック解除バー71が接続されたロック部70を下方に引き下げる動きとなるため、結果としてロック部70が引き下げられ、フード固定ピン63とロック部70とのロックが解除されて、フード固定ブラケット60とフード持上げアーム40との連結が解除される。なお、図8においては、ロックが解除される直前の状態を示している。
【0064】
以上説明したように、アクチュエータが動作し始めると、それまでロック部70によって連結されていたフード固定ブラケット60とフード持上げアーム40との連結が解除される。同時に、それまで分離していたエネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40が連結される。従って、エネルギー吸収アーム30及びフード持上げアーム40によって、フード101が上方に持上げられ始める。
【0065】
次に、図6を参照しながら、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1におけるフード持上げ途中の状態を説明する。図6において、アクチュエータ10のピストンロッド13は、まだ完全には伸張しきっていない。このとき、動力伝達アーム20は、ピストンヘッド14に押されて固定ねじ23を中心に反時計回りに回転するが、まだ回転の途中である。一方、図6において、フード固定ピン63とロック部70とのロックは完全に解除され、エネルギー吸収アーム30のエネルギー吸収アーム端部31が上方に持ち上げられ、フード持上げアーム40が第1ヒンジ部41を支点として上方に持上げられているのが理解される。
【0066】
エネルギー吸収アーム30のエネルギー吸収アーム端部31が、ガイドスリット43に沿って上方に持ち上げられると、前記エネルギー吸収アーム端部31中央に配設されたピン33が、L字型の前記ガイドスリット43の角に当接する。前記ピン33は、円筒形であるため角に当接しても更に前記ガイドスリット43に沿って摺動し、L字型の前記ガイドスリット43の奥まで移動する。フード持上げアーム40は、これによって大きく上方に持上げられる。
【0067】
フード持上げアーム40が大きく上方に持上げられると、前記フード持上げアーム40と第2ヒンジ部44によって回動可能に固定されていたフード固定ブラケット60も大きく持上げられる。前記フード固定ブラケット60が固定されたフード101は、フード101の車両進行方向に向かって前方側において、フード101に取り付けられたフードロック(図示せず)と車両本体に取り付けられたフードラッチ(図示せず)によって固定されている。従って、前記フード固定ブラケット60が大きく持上げられると、フード101は、車両進行方向に向かって前方側の固定部を中心として、車両進行方向に向かって後部側が持上げられることになる。なお、フードロックとフードラッチとは、フード101の開閉を容易にするためある程度の遊びをもって設計され、略U字型のフードロックはフードラッチに対してU字型の底辺部が長く作られている。従って、本発明のポップアップフード装置1を搭載する場合は、フードロックの底辺部の周縁部に溝等を設け、フードラッチが強固に固定されるようにするのが望ましい。
【0068】
なお、フード101が持上げられると、フード101の車両進行方向に向かって前方側が固定されているためフード持上げアーム40に対してフード101の自重が掛かってくる。フード持上げアーム40がフード101を持上げる力とフード101の自重とが均衡する点においてフード101の押上が止まってしまうことを防止するため、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1においては、フード固定ブラケット60にガイドスリット62を設けている。フード固定ブラケット60とフード持上げアーム40は、ガイドスリット62を介して回動可能に第2ヒンジ部44で固定されているため、フード持上げアーム40がガイドスリット62にそって上方にスライドすることで、フード持上げアーム40に掛かるフード101の自重が分散され、フード持上げアーム40がフード101を持上げる動作の支障とならない。
【0069】
続いて、図7を参照しながらフード持上げが完了した状態について説明する。図7において、アクチュエータ10のピストンロッド13が伸びきる。一方、動力伝達アーム20は、固定ねじ23を中心として図面に向かって右側に回転し、ピストンロッド13が伸張しきった時点で回転が終了する。動力伝達アーム20と所定の角度を維持しながら、固定ねじ23を中心に反時計回りに回転するエネルギー吸収アーム30は、最大限に立ち上がり、フード持上げアーム40のガイドスリット43に嵌合したピン33は、L字型の前記ガイドスリット43の奥に達する。第1ヒンジ部41を中心に時計回りに回転するフード持上げアーム40は、該フード持上げアーム40の第1ヒンジ部41側の端部に設けられたフード持上げアーム突起42がアーム固定ブラケット50に突き当たり、それ以上回転することができなくなる。アクチュエータ10のピストンロッド13が伸びきり、フード持上げアーム40もそれ以上回転できないため、この状態で均衡し、フード持上げ動作が完了する。上述した動作により、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1によって、フード101が持上げられる。
【0070】
(ポップアップフード装置のフード引き下げ動作)
続いて、本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置のフード引き下げ時の動作について、図を参照しながら説明する。図7は、フード持上げが完了した状態を示す図であるが、一方で、フード引き戻しを開始する状態の図でもある。図7において、歩行者との衝突が回避された場合又は誤動作であった場合、運転者の手動により又は制御部(図示せず)のピストン引戻し動作の命令により、モーターユニット5のモーターがフード持上げ時と反対に回転し、プーリ6に接続されたワイヤーケーブル2(8)を瞬時に巻き上げる。
【0071】
ワイヤーケーブル2(8)は、上述したようにアクチュエータ10のピストンロッド13に接続されている。従って、ワイヤーケーブル2(8)の巻上げに伴い、ワイヤーケーブル2(8)に接続されたピストンロッド13がアクチュエータ本体11内部に引き戻され、ピストンロッド13が完全に引き戻されると、コイルばね12が圧縮された状態でロック装置(図示せず)によってロックされる。以上の動作がアクチュエータ10のピストン引戻し動作であり、これによって、アクチュエータ10が元の状態に戻る。
【0072】
一方、ピストンロッド13が引き戻されることに伴い、ピストンヘッド14が回動可能に固定された動力伝達アーム20は、固定ねじ23を中心に時計回りに回転することとなる。すると、動力伝達アーム20と回動可能に固定されたエネルギー吸収アーム30は、固定ねじ23を中心に時計回りに回転し、エネルギー吸収アーム端部31及びピン33が下方に引き下げられるように動く。エネルギー吸収アーム30はピン33がフード持上げアーム40のガイドスリット43に嵌合しているため、エネルギー吸収アーム30が下方に引き下げられると、ピン33はガイドスリット43に沿って下方に摺動し、これに伴ってフード持上げアーム40が引き下げられ、フード持上げアーム40に回動可能に固定されたフード固定ブラケット60が引き下げられ、フード101が引き下げられる。
【0073】
ここで、フード101が引き下げられてくると、フード固定ブラケット60に設けられたフード固定ブラケット突起61と、アーム固定ブラケット50に設けられた収納ガイド51が当接する。フード固定ブラケット突起61は先端が車両長方向に丸く形成され、一方収納ガイド51も車両長方向の断面がU字型よりも開口部が開いた形状に形成されているため、フード101の自重により、フード固定ブラケット突起61が、収納ガイド51の窪みに沿って滑合し、フード101は、完全に元の状態に収納される。以上の一連の動作により、アクチュエータ10のピストン引戻し動作によってフード101が引き下げられ元の状態に収納される。
【0074】
ここで、図9から図11を参照しながら、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との分離、及びフード持上げアーム40とフード固定ブラケット60とのロックについて説明する。図9を参照する。アクチュエータ(図示せず)のピストン引戻し動作に伴い、エネルギー吸収アーム30が時計回りに回転して、エネルギー吸収アーム端部31及びピン33をガイドスリット43に沿って引き下げてくると、ピン33は、ダブルラチェット部の第1ラチェット80に当接する。ここで、該第1ラチェット80はアップ・ラチェットであるため上方にのみ回転し、下方への回転は第1ラチェット逆回転防止部材82によって阻止される。従って、ピン33は、このままではガイドスリット43から外れることはない。
【0075】
ところが、前記第1ラチェット80及び第1ラチェット逆回転防止部材82は、第2ラチェット83上に配設されている。前記第2ラチェット83は、ダウン・ラチェットで、下方にのみ回転するラチェットであるが、第1ラチェット80に使用されている第1ラチェットばね81より太い(従って、強力な)第2ラチェットばね84によって回転が制御されている。第1ラチェット80に当接したピン33に、アクチュエータ(図示せず)のピストン引戻し動作に伴って更に下方に引き戻す力が加わると、図10に示すように、第2ラチェット83が第1ラチェット80ごと反時計回りに下方に回転する。更にピン33に下方に引き戻す力が加わると第2ラチェット83が更に回転して、図11に示すように、ピン33は、第1ラチェット80の当接から外れる。一方、第1ラチェット80を介して下方に引き戻す力が負荷されていた第2ラチェット83は、ピン33が第1ラチェット80との当接を外れたことによって、第2ラチェットばね84の反発で元の状態に戻る。上述した一連の動作で、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40との連結が解消され、更にエネルギー吸収アーム30が下方に引き下げられてピン33がガイドスリット43から外れると、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは、完全に分離する。
【0076】
また、上述した一連の動作でエネルギー吸収アーム端部31がガイドスリット43に沿って引き下げられると、エネルギー吸収アーム端部31にねじ止めされたエネルギー吸収アームバー32も引き下がる。すると、エネルギー吸収アームバー32が下方から当接して持上げていたロック解除バー71には、持上げる力は加わらなくなる。従って、ロック解除バー71と接続されたロック部70が、ロック機構ばね72の反発力でロック機構固定ねじ73を中心として時計回りに回転して、フード持上げアーム40の引き下げに伴って引き下げられてきたフード固定ブラケット60のフード固定ピン63に掛合する。この一連の動作によって、フード持上げアーム40とフード固定ブラケット60がロックされ、以後両者は一体として動作する。
【0077】
以上説明したように、アクチュエータ10のピストン引戻し動作に対応して、アクチュエータ10は、ピストンロッド13が完全に引き戻され且つコイルばね11が圧縮されてロックされた状態に戻り、フード101は引き下げられて完全に収納され、エネルギー吸収アーム30とフード持上げアーム40とは完全に分離し、且つフード持上げアーム40とフード固定ブラケット60とはロックされて一体として動作する状態となる。この状態は、アクチュエータ10がピストン伸張動作(ピストンロッド13を伸張する動作)を開始する以前の平常時の状態である。従って、修理等を必要とせず、簡易に平常時に状態に戻すことができる。
【0078】
以上説明したように、本発明に係るポップアップフード装置1は、一つのアクチュエータ10によって、フード101の持上げ及び引き下げを行うことができる。従って、装置全体の小型化が可能であり、車両に搭載する場合実装スペースが小さくて済む。
【0079】
また、本発明に係るポップアップフード装置1は、該ポップアップフード装置1で持上げたフード101を、運転者が簡易な操作で引き下げて収納し、再度該ポップアップフード装置1が動作可能な状態に戻すことができる。また、かかる操作を所定時間の経過に伴って自動的に行うことも可能である。従って、歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作の場合、運転者の視界を確保して直ちに運転を開始することができ、且つ再度前記ポップアップフード装置1を使用できる。従って歩行者との衝突が回避できた場合又は誤動作の場合に、修理等のメンテナンスが不要であるため、本発明に係るポップアップフード装置1は、メンテナンス性に優れ、且つ、維持費が低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のポップアップフード装置1が車両に搭載された状態を切り欠いた状態で示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るポップアップフード機構3の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1の平常時の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ開始状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ途中の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ完了状態を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のポップアップ時の拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るポップアップフード装置1のフード引き下げ時の拡大図である。
【符号の説明】
【0081】
1、ポップアップフード装置
3、ポップアップフード機構
5、モーターユニット
6、プーリ
7、ワイヤーケーブル1
8、ワイヤーケーブル2
10、アクチュエータ
12、コイルばね
13、ピストンロッド
14、ピストンヘッド
20、動力伝達アーム
30、エネルギー吸収アーム
33、ピン
40、フード持上げアーム
50、アーム固定ブラケット
60、フード固定ブラケット
61、フード固定ブラケット突起
63、フード固定ピン
70、ロック部
71、ロック解除バー
80、第1ラチェット(アップ・ラチェット)
83、第2ラチェット(ダウン・ラチェット)
100、車両本体
101、フード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、
一端が第1ヒンジ部を介して所定の位置に回動可能に固定されて前記エネルギー吸収アームの上部に配設されたフード持上げアームと、
前記フード持上げアームを所定の位置に固定するロック機構部と、を有し、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フード持上げアームの他端を上方に持上げ、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアームを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームを所定の位置に固定することを特徴とするポップアップフード装置。
【請求項2】
ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、
前記エネルギー吸収アームとフードとの間に配設され、一端が第1ヒンジ部を介して車両本体に回動可能に固定され他端が第2ヒンジ部を介して前記フードに回動可能に固定されたフード持上げアームと、
前記フード持上げアームと前記フードとを固定するロック機構部と、を有し、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームとフードとの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フードを上方に持上げ、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアーム及び前記フード持上げアームに回動可能に固定された前記フードを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームと前記フードとを固定させることを特徴とするポップアップフード装置。
【請求項3】
前記ロック機構部は、
前記フード持上げアームに回動可能に固定され、一端が前記エネルギー吸収アームと当接し他端が所定の位置に掛合して前記フード持上げアームを固定するロック部材と、
前記ロック部材に嵌合して配設され、前記ロック部材に前記ロック部材の他端が所定の位置に掛合するための不勢力を負荷するロック機構ばねと、
ロック解除バーと、を備え、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記エネルギー吸収アームは前記ロック解除バーを上方に持上げて固定を開放し、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが下方に引き下げられて前記ロック機構ばねの不勢力により前記ロック部材の他端が所定の位置に掛合することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のポップアップフード装置。
【請求項4】
更に、前記エネルギー吸収アームが当接する所定の箇所に相互に接合された第1ラチェットと第2ラチェットと、を備え、
前記第1ラチェットは、前記エネルギー吸収アームの端部が前記第1ラチェットに当接して上部方向に荷重を負荷した場合に単独で上部方向に回転し、
前記第2ラチェットは、前記エネルギー吸収アームの端部が前記第1ラチェットに当接して下部方向に荷重を負荷した場合に前記第1ラチェットと連動して下部方向に回転することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のポップアップフード機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のポップアップフード装置を備えたことを特徴とする自動車。
【請求項1】
ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、
一端が第1ヒンジ部を介して所定の位置に回動可能に固定されて前記エネルギー吸収アームの上部に配設されたフード持上げアームと、
前記フード持上げアームを所定の位置に固定するロック機構部と、を有し、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フード持上げアームの他端を上方に持上げ、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアームを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームを所定の位置に固定することを特徴とするポップアップフード装置。
【請求項2】
ピストン伸張動作及びピストン引戻し動作を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続されたエネルギー吸収アームと、
前記エネルギー吸収アームとフードとの間に配設され、一端が第1ヒンジ部を介して車両本体に回動可能に固定され他端が第2ヒンジ部を介して前記フードに回動可能に固定されたフード持上げアームと、
前記フード持上げアームと前記フードとを固定するロック機構部と、を有し、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記ロック機構部が前記フード持上げアームとフードとの固定を開放し、且つ前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが連結して一体で動作して前記第1ヒンジ部を支点に前記フードを上方に持上げ、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが前記フード持上げアーム及び前記フード持上げアームに回動可能に固定された前記フードを引き下げて前記エネルギー吸収アームと前記フード持上げアームとが分離し、且つ前記ロック機構部が前記フード持上げアームと前記フードとを固定させることを特徴とするポップアップフード装置。
【請求項3】
前記ロック機構部は、
前記フード持上げアームに回動可能に固定され、一端が前記エネルギー吸収アームと当接し他端が所定の位置に掛合して前記フード持上げアームを固定するロック部材と、
前記ロック部材に嵌合して配設され、前記ロック部材に前記ロック部材の他端が所定の位置に掛合するための不勢力を負荷するロック機構ばねと、
ロック解除バーと、を備え、
前記アクチュエータのピストン伸張動作により、前記エネルギー吸収アームは前記ロック解除バーを上方に持上げて固定を開放し、
前記アクチュエータのピストン引戻し動作により、前記エネルギー吸収アームが下方に引き下げられて前記ロック機構ばねの不勢力により前記ロック部材の他端が所定の位置に掛合することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のポップアップフード装置。
【請求項4】
更に、前記エネルギー吸収アームが当接する所定の箇所に相互に接合された第1ラチェットと第2ラチェットと、を備え、
前記第1ラチェットは、前記エネルギー吸収アームの端部が前記第1ラチェットに当接して上部方向に荷重を負荷した場合に単独で上部方向に回転し、
前記第2ラチェットは、前記エネルギー吸収アームの端部が前記第1ラチェットに当接して下部方向に荷重を負荷した場合に前記第1ラチェットと連動して下部方向に回転することを特徴とする請求項1及び請求項2記載のポップアップフード機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のポップアップフード装置を備えたことを特徴とする自動車。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【公開番号】特開2008−114699(P2008−114699A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299137(P2006−299137)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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