説明

米飯を長期に美味しく保存しえる容器

【課題】米飯保存容器において保存される米飯に、炊き立ての美味しさと香ばしい匂いを長期に保持させることを目指し、そのために、従来の米飯保存容器におけるところの、容器の成形時から米飯保存までの間に、容器の器壁中の酸素吸収剤や消臭剤が酸素や異臭を吸着してしまい、また、保存中に脱臭剤に吸着された異臭が摂食時の加熱処理により脱着されて米飯に移行し、或いは、保存中の水分の消失により硬い御飯になってしまうことなどを抑止する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の米飯保存容器において、米飯収納本体部の開口端部に、切り離し可能な別体部として付設された収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯などの食品を密閉して保存する容器に関わり、詳しくは、炊飯した米飯をそのまま長期に美味しく匂いよく常温にて保存できる熱可塑性樹脂製の保存容器及びその保存容器を製造する方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
最近の日常生活における食品嗜好の多彩化や食生活の簡易化傾向などを反映して、調理済み保存食品や即席の簡易食品などの需要が非常に高まり、主食の米飯においても炊飯済みで加熱によるだけで摂食できる容器収納保存米飯の消費量が急速に増大している。その消費の拡がりに応じて、味付け御飯や御粥或いは無菌米飯や直接容器から好みの量を摂食できるスパウト容器米飯などにも多様化している。
炊き立ての米飯は美味しく匂いも香ばしいものであるが、炊飯米飯を容器に密封収納して長期(数ケ月程度)に常温にて保存する場合、長期の保存中の米飯の変質や匂いと水分の消失により、その美味しさや香ばしい匂いを長期に保持させることは非常に困難であり、現在の市販の保存米飯ではむしろ風味の低下や、米飯の酸化による揮発性アルデヒド成分に起因する異臭の発生が起こりがちで消費者からの改善の要望が強い状況となっている。
【0003】
米飯の美味や匂いは、主食であり味付けのない米飯が嗜好されるための基本かつ重要な要件であり、消費者の要望もこれらにつきるので、保存米飯に美味しさと香ばしい匂いを、さらには米飯の外観の白色や艶を、長期に保持させるための試みが従来から重ねられているが、米飯の長期保存のために酸素吸収樹脂層と酸素バリア層を有す容器はよく知られており(特許文献1)、代表的な改良提案としては、耐湿性熱可塑性樹脂内外層とガスバリア性樹脂中間層及び比表面積が特定の吸着性消臭剤含有樹脂組成物層からなる多層容器に収納した、フレーバー保持性に優れ喫食時に異味異臭の発生なしに加熱できる米飯包装体(特許文献2)、密封容器に閉じ込められた臭気が容器内壁の結露水に溶け米飯の風味を損なうことを防止するために、活性炭と親水性多孔質セラミック成分を含んでなる成形物を低温焼成してなる吸湿能の極めて高い多孔質セラミック吸着体からなる吸湿脱臭剤を容器内に収容しての使用(特許文献3)、洗米した米をアジピン酸含有浸漬水に浸漬した後に浸漬水を水切りした浸漬米を洗米して炊き水を加えて加熱処理することにより炊飯して製造した、常温で長期保存が可能で喫食時の食味や食感が炊き立ての米飯と同等であるという包装米飯(特許文献4)、などの保存米飯が開示されている。
【0004】
これらの米飯保存手法は、主として、酸素バリア層と酸素吸収層を有す多層容器を使用して、外部からの保存容器内部への酸素侵入を抑え、保存容器内部の酸素を吸収して酸素量を低下させることにより、酸素による米飯の化学的な変質と酸素による微生物の増殖を阻止して米飯の食味の変質や異臭の発生を抑止するものであり、また、消臭剤含有樹脂層をさらに使用し、或いは脱臭剤を保存容器内に収容して異臭を吸収除去させる手法からなるものである。
しかし、これらの従来の手法では、長期の保存中の米飯の食味の変質や異臭の発生は抑止することができても、美味しさと香りをそのまま保存するのは困難で、保存米飯に炊き立ての美味しさと香ばしい匂いを長期に保持させることは未だ実現されていないといえる状況である。
【0005】
さらに従来の保存容器では、容器の成形時から米飯保存までの間に、容器の器壁中の酸素吸収剤や消臭剤が酸素や異臭を吸着してしまい、また、保存中に脱臭剤(消臭剤)に吸着された異臭が摂食時の加熱処理により脱着されて米飯に移行し、或いは、保存中の水分の消失により硬い御飯になってしまい、さらには酸味料などの添加剤の変質など、種々の他の問題も派生している。
【0006】
【特許文献1】特開平8−133345号公報(要約)
【特許文献2】特開平7−69380号公報(要約)
【特許文献3】特開平11−137223号公報(要約、特許請求の範囲請求項2)
【特許文献4】特開2000−217521号公報(要約、段落0022〜0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、背景技術を鑑みて、従来の長期保存米飯において要望の強い美味しさと香りを追求して、保存米飯に炊き立ての美味しさと香ばしい匂いを長期に保持させることを、発明が解決すべき課題とするものであり、併せて、従来の米飯保存容器におけるところの、容器の成形時から米飯保存までの間に、容器の器壁中の酸素吸収剤や消臭剤が酸素や異臭を吸着してしまい、また、保存中に脱臭剤(消臭剤)に吸着された異臭が摂食時の加熱処理により脱着されて米飯に移行し、或いは、保存中の水分の消失により硬い御飯になってしまい、さらには酸味料などの添加剤の変質など、種々の他の派生問題の解決をも目指すものである。
【0008】
本発明者は、かかる課題の解決を図るべく、米飯保存容器の多層構成や容器の構造或いは酸素吸収剤と脱臭剤の使用態様及びそれらの吸着機能、さらには、添加剤の影響や米飯の水分の確保などについて、多岐にわたり多角的に思考を巡らして考察を続け、実験的な推考と保存容器の試作などを行って、保存米飯に炊き立ての美味しさと香ばしい匂いを長期に保持させるには、酸素吸収剤と脱臭剤の使用態様が最も密接に関連するとの知見を得ることができ、それらの使用態様と保存容器の構造との組み合わせにおいて新しい構成を見い出すに至り、本発明を創作することができた。
【0009】
その新しい構成は、基本的に、酸素吸収剤と脱臭剤の使用態様として、米飯収納容器本体とは別体の収納部に収容するものである。
具体的には、熱可塑性樹脂製の食品容器において、食品収納本体部の開口端部に別体部として付設された収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納される構造であり、収納別体部の酸素吸収剤及び脱臭剤が保存米飯と部分的に同一収納空間下に在るように、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器であって、図1にその構成が明確に例示されている。
【0010】
さらに本発明においては、摂食時の再加熱による脱臭剤からの異臭の脱着を阻止し、金属粉系の酸素吸着剤が使用されていても電子レンジ加熱を可能とするために収納別体部が切り離し可能に付設され、また、製造の簡易化のために、酸素吸収剤及び脱臭剤がパック体として収納され、収納本体部の開口端部と蓋材の接着接合が部分的になされないことにより、収納本体部と収納別体部とが連通され、米飯の水分の確保のために脱臭剤が米飯保湿用水分を保有し、収納本体部及び蓋材が、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成されている構成をも採用するものである。
【0011】
本発明の保存容器の製造方法としては、各種の成形法により、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料から、食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部を一体に成形し、ミシン目又は切り込み線を形成して収納別体部が切り離し可能に付設させる構成からなる。
また、本発明の保存容器の使用態様としては、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料により成形された食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部が一体に成形され、ミシン目又は切り込み線により収納別体部が切り離し可能にされ、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器において、収納本体部に炊飯された直後の米飯が収納され収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封して製造された、容器収納保存米飯として製品化される。
【0012】
本発明における米飯保存容器の新しい特徴として、食品収納本体部の開口端部に別体部として付設された収納別体部に、酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、それらと保存米飯とが部分的に同一収納空間下に在るように、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されているので、多層容器の器壁に酸素吸収剤や脱臭剤が混入される場合とは異なり、(1)効率よく酸素吸収及び脱臭がなされ、充分な酸素吸収により米飯や添加剤などの酸化による化学的な変質を抑止でき微生物の増殖による食味の変化や腐敗も阻止できて、炊き立ての美味しさを、さらには米飯の外観の白色や艶などの特徴を、長期に確保でき、(2)極微量の異臭吸着のために脱臭機能の低めの脱臭剤を使用すれば、米飯の香しい匂いはかなり保持でき、(3)容器製造時から米飯収納時までの間に、酸素吸着剤や脱臭剤が作用してしまうことはなく、(4)接着剤からの異臭も吸着でき、(5)酸素吸収剤及び脱臭剤が別体収納部に一緒に収納されるので、それらの取扱いや組み込みが簡易であり、(6)そのために保存容器の製造が容易であり、(7)収納別体部が切り離し可能に付設されているので、摂食時の再加熱の際に収納別体部を切り離して除去すれば、再加熱による脱臭剤からの異臭の脱着と米飯への移行が阻止され、(8)金属粉系の酸素吸着剤が使用されていても電子レンジ加熱が可能となり、(9)切り離し部における酸素吸収剤と脱臭剤は廃棄物として分別でき、(10)米飯の水分の確保のために脱臭剤が米飯保湿用水分を保有して、米飯が硬くなることによる食味の低下を抑制でき、(11)脱臭剤が分散されている保水ゼリー体の水分が酸素吸着作用の促進剤となり、(12)収納本体部及び蓋材が、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成されれば、外部からの容器内部への酸素の侵入が抑えられ、かつ容器内の酸素量がいっそう低減され、(13)酸味料のような添加剤が米飯に使用されてもその変質は僅かである、という縷々記載した特異な特徴を本発明の米飯保存容器は顕現するものである。
【0013】
ここで、背景技術における先行文献を鑑みても、米飯保存容器において酸素吸収剤及び脱臭剤が米飯収納部と別体の収納部に収納される技術は見当たらず、段落0009〜0011に記載した本発明の種々の構成の要件の組み合わせ、及び段落0012に記載した本発明の特徴(作用など)は、先行技術から示唆もされない新規な要件であるといえる。
【0014】
以上においては、本発明が創作される経緯と、本発明の基本的な構成要素と特徴について概観的に記述したので、ここで、本発明全体を俯瞰すると、本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]の発明を基本発明とし、それ以外の発明は、基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。なお、発明群全体をまとめて、「本発明」という。
【0015】
[1]熱可塑性樹脂製の食品容器において、食品収納本体部の開口端部に別体部として付設された収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されていることを特徴とする、食品収納保存容器。
[2]食品が米飯であることを特徴とする、[1]における食品収納保存容器。
[3]収納別体部が切り離し可能に付設されていることを特徴とする、[1]又は[2]における食品収納保存容器。
[4]酸素吸収剤及び脱臭剤が収納別体部に一緒に収納収納されていることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおける食品収納保存容器。
[5]収納本体部の開口端部と蓋材の接着接合が部分的になされないことにより、収納本体部と収納別体部とが連通されていることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおける食品収納保存容器。
[6]脱臭剤が保水ゼリー体に分散されていることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおける食品収納保存容器。
[7]熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂又はポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおける食品収納保存容器。
[8]熱可塑性樹脂に酸素透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合体又はポリアミド樹脂が配合されていることを特徴とする、[7]における食品収納保存容器。
[9]収納本体部及び蓋材が、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成されていることを特徴とする、[7]における食品収納保存容器。
[10]熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料から、食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部を一体に成形し、ミシン目又は切り込み線を形成して収納別体部が切り離し可能に付設されることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかにおける食品収納保存容器の製造方法。
[11]熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料により食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部が一体に成形され、ミシン目又は切り込み線により収納別体部が切り離し可能にされ、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器において、収納本体部に炊飯された米飯が収納され収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封して製造されたことを特徴とする、容器収納保存米飯。
【発明の効果】
【0016】
本発明の米飯保存容器においては、脱臭のために竹炭を入れて炊き上げたばかりの御飯に近い、炊き立ての美味しさと香ばしい匂いを、さらには米飯の白色と艶の特徴を、保存米飯に長期に保持させることを実現し、併せて、容器の成形時から米飯保存までの間に、容器の器壁中の酸素吸収剤や消臭剤が酸素や異臭を吸着してしまうことはなく、保存中に脱臭剤(消臭剤)に吸着された異臭が摂食時の加熱処理により脱着されて米飯に移行することも、保存中の水分の消失により硬い御飯になることも、さらには酸味料などの添加剤の変質なども抑制できる。
また、酸素吸収剤及び脱臭剤が収納別体部に一緒に収納されるので、それらの取扱いや組み込みが簡易であり、そのために保存容器の製造も容易であり、収納別体部が切り離し可能に付設されているので、摂食時の再加熱の際に収納別体部を切り離して除去すれば、金属粉系の酸素吸着剤の使用の場合でも電子レンジ加熱が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明については、課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成に沿って前述したが、以下においては、前述した本願の発明群における発明の実施の形態を、具体的に詳しく説明する。
【0018】
1.食品収納保存容器
(1)基本的な構成
本願の基本発明は、酸素吸収剤と脱臭剤の使用態様として、少なくとも一緒に使用し、個別に又は予め一体化して、米飯収納容器本体とは別体に収容するものである。
図1に本発明の保存容器として例示されるように、食品収納本体部(本体トレイ)の開口端部に別体部として付設された収納別体部(別体トレイ)に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納される構造であり、収納別体部の酸素吸収剤及び脱臭剤が保存米飯と部分的に同一収納空間下に在るように、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器であって、収納本体部と収納別体部及び蓋材は熱可塑性樹脂により形成され、蓋材は接着接合或いはヒートシールなどにより収納本体部と収納別体部に密着接合される。
食品保存容器としては米飯の保存に好適に使用され、その場合の作用効果は段落0012に詳述したとおりである。
【0019】
(2)切り離し可能な収納別体部
本発明の主たる特徴は、酸素吸収剤及び脱臭剤が収納別体部に収納され、収納別体部が簡易に切り離しできるように、食品収納本体部の開口端部に別体部として付設されることである。
収納別体部は収納本体部の開口の端部に一体成形され、その境界部にミシン目や切り込みを形成して、消費者が手指にて簡単に切り離せるように構成されている。消費者が保存米飯を摂食する際に、電子レンジで再加熱する直前に収納別体部を切り離して除去することにより、再加熱による脱臭剤からの異臭の脱着と米飯への移行が阻止され、米飯に異臭が移行する惧れはなく、金属粉系の酸素吸着剤が使用されていても電子レンジ加熱が可能となり、切り離し部における酸素吸収剤と脱臭剤は廃棄物として分別できる。切り離すと連通部がスリット孔となるので、電子レンジ加熱の際に、消費者が脱気用として新たに孔をあける必要はない。
収納別体部の酸素吸収剤及び脱臭剤が、保存中に保存米飯と部分的に同一収納空間下に在って、それらの作用機能を米飯にもたらされるように、蓋材にて容器全体を密封する際に、収納本体部の開口端部と蓋材の接着接合やヒートシールなどが部分的になされないことにより、収納本体部と収納別体部とが連通される。連通は収納本体部と収納別体部との間に境壁がある場合に連通孔を設けるなど他の手段も採用し得る。
【0020】
(3)酸素吸収剤
酸素吸収剤は米飯と容器内において一緒に、収納別体部にそのまま収納されるので、容器壁に混入される場合より効率よく酸素吸収がなされ、充分な酸素吸収により米飯や添加剤などの酸化による化学的な変質及び揮発性アルデヒド異臭成分の発生を抑止でき、微生物の増殖による食味の変化や腐敗も阻止できて、米飯の炊き立ての美味しさを長期に確保でき、また、容器製造時から米飯収納時までの間に、酸素吸着剤が作用することはなく、酸素吸収剤の取扱いや組み込みも簡易であり、そのために保存容器の製造が容易である。
酸素吸収剤としては、酸素吸収性と経済性に優れた鉄系脱酸素剤が代表的に使用される。鉄系脱酸素剤は、その優れた還元性(周囲物質からの脱酸素性)により強力な酸素吸収作用をもたらす。酸素吸収剤は酸素透過性フィルムや薄い和紙などにより包装され固形化される。
【0021】
鉄系脱酸素剤としては、従来にこの種の用途に使用されているものは全て使用することができ、例えば、還元性鉄、酸化第一鉄、四三酸化鉄、炭化鉄、ケイ素鉄、鉄カルボニル、水酸化鉄或いはその他の金属粉などを例示できる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。粒径や密度も通常のものが好適である。
酸素吸収剤には、アルカリ化合物やアルカリ土類化合物などの酸化促進剤(助触媒)を併用して、鉄系脱酸素剤などの酸素吸収性を促進させることもできる。これらは、水分の吸収を介して、脱酸素剤の脱酸素効果を促進させるものである。
多価フェノール含有フェノールアルデヒド樹脂のような多価フェノールを骨格内に有する高分子化合物なども酸素吸収剤として使用可能である。
【0022】
(4)脱臭剤(消臭剤)
脱臭剤は、米飯と容器内において一緒に、収納別体部に、収納されるので、容器壁に混入される場合より効率よく脱臭作用がなされ、容器製造時から米飯収納時までの間に、脱臭剤が作用することはなく、また、接着剤や収納本体部及び蓋材から樹脂の酸化分解などにより発生する異臭も吸着でき、保水ゼリー体に分散されている脱臭剤を使用すれば、その水分による保湿作用により、保存中の米飯が硬くなることによる食味の低下も抑制でき、また、その水分が酸素吸着作用を促進する効能ももたらす。
【0023】
収納別体部に入れる脱酸素剤と脱臭剤については、何れも安全な物質から構成され、収納する前に無菌の状態であることが望ましい。また、米飯充填後の加熱殺菌が終了するまでに、脱臭剤を包含する保水ゼリー体から大量の水分が溶出しないで、双方が混ざり合わないことが望ましい。
保水ゼリー体としては、食品の安全上からゼラチンや寒天などの食品や食品添加物から構成されるのが望ましく、イオン交換水にゼラチン粉末の1〜5%と寒天粉末の1〜5%を混合して調製することで、弾性のある保水ゼリー体を作製することができ、また、乾燥後も良好な状態が保持される。好ましくは、ゼラチン、寒天とも2〜3%の濃度である。この保水ゼリー中に活性炭粉末を3〜10%の重量で包含させることができる。なお、ゼラチン単独では、2〜3%の濃度でも柔らかくて融解し易い状態であり、一方の寒天単独では1%以上で固体状であるものの、1〜3%の寒天では堅くて壊れやすく、壊れると粉々に分離してしまう。 そこで、ゼラチンと寒天の各2%の混合で調製したところ、弾性のあるゴム状の硬さとなり、これに活性炭を5〜10%加えても、容易に崩れることはなく良好な状態である。
【0024】
酸素吸収剤と一緒に使用せず、脱臭剤単独の使用では、後記する比較例に示されているように、異臭の除去は充分にはなされず、6ケ月程度の保存後には明らかな異臭が残ってしまう。これは酸素吸収剤を使用しないために、微量の酸素ガスが保存容器中に存在し、その酸素により、米飯に含まれる脂肪酸が酸化分解して揮発性のアルデヒド類が極微量生じるためと考えられる。また、6ケ月程度の保存後には、米飯の食味にも微かな酸味が生じ、これは、微生物抑制剤のグルコン酸を添加使用した場合にはグルコン酸が酸化分解して極微量の酢酸が生じ、グルコン酸を添加しない場合には、米飯に含まれる有機物が酸化されて極微量の酢酸が生じるためと考えられる。
【0025】
脱臭剤としては、従来にこの種の用途に使用されているものは全て使用することができ、例えば、活性炭、珪藻土、アルミノ珪酸塩などが好適に使用される。
活性炭は椰子殻や木材或いは石炭などを原料として製造され、珪藻土は含水非晶質二酸化珪素であって、非常にポーラスであり微細孔を多数有し、異臭成分の吸着性に優れている。
なお、保存中に発生する異臭量は、炊き立ての御飯が有する香ばしい匂いに比べて極微量なので、異臭吸着のために脱臭機能の弱い脱臭剤を使用するなどの工夫を施せば、米飯の香しい匂いはかなり保持できる。
【0026】
(5)容器の多層構成
収納本体部及び蓋材、さらには必要により収納別体部は、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成することもできる。
それにより、外部からの容器内部への酸素の侵入が抑えられ、かつ容器内の酸素量がいっそう低減される。
【0027】
2.保存容器の成形材料
(1)熱可塑性樹脂原材料
収納本体部と収納別体部及び蓋材は、熱可塑性樹脂を原材料として形成され、成形性や経済性或いは各種の物性や資源再利用性などからして、好ましくは熱可塑性ポリエステル樹脂又はポリオレフィン樹脂が使用される。これらの樹脂に酸素透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂をブレンドしてもよい。
【0028】
ポリエステル樹脂としては、主として、通常のポリエチレンテレフタレート(通称PET)が使用される。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、酸成分の90モル%以上がテレフタール酸で、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールである結晶性の樹脂を好適に使用する。このPETの他の酸成分としてはイソフタール酸やナフタリンジカルボン酸など、他のグリコール成分としてはジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールやプロピレングリコールなどが例示できる。
ガラス転移点(Tg)は50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃程度の樹脂が使用され、ポリエチレンナフタレートやポリカーボネートなどを少量(5〜25%程度)ブレンドすることもできる。
【0029】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが使用される。
特に、ポリプロピレン系樹脂としては、主としてそのホモポリマー或いはエチレンなどのα−オレフィンとの共重合体が使用される。具体的には、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、及びこれらのブレンド物が使用される。中でも、融点が155〜165℃、特に160〜165℃のプロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましい。即ち、このブロック共重合体は、それ自体で耐衝撃性に優れ、また、軟化点が高いため、多層シートを用いて容器への成形を行う際に該共重合体層(内外層)に応力が集中して延伸されるので、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性に優れた容器を得ることができる。
【0030】
(2)容器の多層材料
保存容器は、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成することもできるが、遮蔽ないしは吸収されるガスは主として酸素である。
ガス(酸素)遮蔽層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体や環状オレフィン系共重合体或いはポリアミド樹脂などのガス遮蔽性を有する樹脂を用い、最も好適なエチレン−ビニルアルコール共重合体の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
また、ガス(酸素)吸収性層としては脱酸素剤を配合した樹脂、或いはポリアミド系樹脂や酸化性ポリオレフィン系樹脂などが使用される
【0031】
(3)接着剤
収納本体部と収納別体部に蓋材は、好ましくは接着接合して密封されるが、接着剤としては、カルボン酸系の原子団を主鎖又は側鎖に有す熱可塑性樹脂が好ましく使用され、具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが例示される。
【0032】
3.保存容器の成形方法
保存容器は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料のフィルム乃至シートを、圧空成形、真空成形、張出成形、プラグアシスト成形などの手段に付することにより成形され、食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部を一体に成形し、ミシン目又は切り込み線を形成して収納別体部が切り離し可能に付設されることにより、製造することができる。
ミシン目や切り込み線は、それらを形成できる型構造部により成形時に同時に形成される。
【0033】
4.容器収納保存米飯
本発明における食品保存容器の最適の使用態様として、熱可塑性樹脂により食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部が一体に成形され、ミシン目又は切り込み線による収納別体部が切り離し可能にされ、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器において、収納本体部に炊飯された直後の米飯が収納され収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封して、好ましくは無菌状態に製造されることを特徴とする、容器収納保存米飯が製品化される。
【実施例】
【0034】
以下においては、各実施例によって、比較例を対照しながら、本発明をより詳細に具体的に説明して、それにより、本発明の各構成要素の有意性と合理性を実証する。
【0035】
[図面による実施例の説明]
本発明に係る米飯保存容器における構造が、一実施例の概略斜視図として図1に示されている。
【0036】
[実施例−1]
内外層にポリプロピレン、酸素バリヤー層にエチレンービニールアルコール共重合体を用いた多層シートの真空成形により、図1に例示されるように、食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部を一体に成形し、ミシン目を形成して収納別体部を切り離し可能に付設した食品収納保存容器を作製した。食品収納本体部は、容器の深さ31mm、縦105mm、横128mm、内容量340mlであり、一方の収納別体部は、容器の深さ18mm、縦25mm、横100mmであり、内容量が約30mlであった。
別体部に収納する脱臭剤入りの保水ゼリー体としては、100重量部のイオン交換水に2重量部のゼラチン粉末と2重量部の寒天粉末(ともにゲル化剤)を加えて煮沸し、さらに5重量部の活性炭粉末を加えて10分間加熱した後、クリーンルーム内でそれぞれ約15mlの長型個別容器に移して放冷し固形化することにより作製した。
【0037】
うるち米を活性炭処理水で洗米後、2倍量の活性炭処理水に1時間浸漬した。水切りした精白米と炊き上がった米飯のpHが5.2〜5.4になるようにグルコン酸を添加した炊き水を加えて電気炊飯器により炊き上げた。クリーンルーム内でプラスチック成形容器の食品収納本体部に、炊飯器内の米飯を200g充填した。収納別体部には、酸素吸収剤として袋入りエージレス(三菱ガス化学製の4.7g鉄粉末)と脱臭剤入りの保水ゼリー体の約15gを一緒に収納した。
アルミ箔/ポリプロピレンから成る蓋材とカップシーラーを用いて、シール温度190℃、シール時間2秒、シール圧力130kg/容器の条件で密封した。密封後、米飯が70℃以上になるまで加熱殺菌し、常温で6ヶ月間保管した。
【0038】
保管後、別体部を切り離してから、電子レンジで約70℃に加熱して試食した。以下の基準により、食味と匂いを評価した。その評価結果を表1に記載した。
〔食味〕◎:炊き立ての米飯に近い美味しさ ○:美味しさを感じる △:どちらともいえない ×:(長時間保温したご飯の様に)やや不味い ××:(長時間保温したご飯の様に)不味い
〔匂い〕◎:炊き立ての米飯に近い香しい匂い ○:香ばしい匂いを感じる △:長時間保温したご飯の様な劣化臭を微かに感じる ×:長時間保温したご飯の様な劣化臭を感じる ××:長時間保温したご飯の様な劣化臭・異臭を強く感じる
【0039】
[実施例−2]
保水ゼリー体を有さない脱臭剤を使用した以外は、実施例−1と同様に実施した。評価結果を表1に記載した。
【0040】
[比較例−1〜3]
比較例−1として酸素吸収剤と脱臭剤をどちらも使用せず、比較例−2として酸素吸収剤のみを使用し、比較例−3として脱臭剤のみを使用し、それら以外は、実施例−1と同様に実施した。評価結果を表1に記載した。
【0041】
【表1】

【0042】
[実施例と比較例の結果の考察]
実施例−1は、酸素吸収剤及び脱臭剤と保水ゼリー体を全て使用しているので、6月保存後でも、ほぼ炊き立ての米飯に近い美味しさと香しい匂いを保有し、米飯中の異臭成分も検出されない、非常に優れた結果を示している。
実施例−2は、酸素吸収剤及び脱臭剤を使用し保水ゼリー体は使用していないので、実施例−1に準じる優れた結果を示している。
比較例−1は、酸素吸収剤及び脱臭剤と保水ゼリー体を全て使用しないので、6月保存後では食味と匂いが非常に劣る結果を示している。
比較例−2は、酸素吸収剤のみ使用しているので、6月保存後では食味と匂いが劣る結果を示している。
比較例−3は、脱臭剤のみ使用しているので、6月保存後では食味と匂いが劣る結果を示している。
以上の結果は、本発明においては従来例に比べて格別に優れた効果が奏されていることを明白に示し、本発明の構成の要件が合理的で有意性を有することを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明における米飯保存容器の実施例を例示する概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の食品容器において、食品収納本体部の開口端部に別体部として付設された収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されていることを特徴とする、食品収納保存容器。
【請求項2】
食品が米飯であることを特徴とする、請求項1に記載された食品収納保存容器。
【請求項3】
収納別体部が切り離し可能に付設されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された食品収納保存容器。
【請求項4】
酸素吸収剤及び脱臭剤が一緒に収納されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載された食品収納保存容器。
【請求項5】
収納本体部の開口端部と蓋材の接着接合が部分的になされないことにより、収納本体部と収納別体部とが連通されていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載された食品収納保存容器。
【請求項6】
脱臭剤が保水ゼリー体に分散されていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された食品収納保存容器。
【請求項7】
熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂又はポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された食品収納保存容器。
【請求項8】
熱可塑性樹脂に酸素透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合体又はポリアミド樹脂が配合されていることを特徴とする、請求項7に記載された食品収納保存容器。
【請求項9】
収納本体部及び蓋材が、ガス遮蔽性層及び/又はガス吸収性層が設けられている熱可塑性樹脂積層材料により形成されていることを特徴とする、請求項7に記載された食品収納保存容器。
【請求項10】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料から、食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部を一体に成形し、ミシン目又は切り込み線を形成して収納別体部が切り離し可能に付設されることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載された食品収納保存容器の製造方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂積層材料により食品収納本体部及びその開口端部に別体部として付設される収納別体部が一体に成形され、ミシン目又は切り込み線により収納別体部が切り離し可能にされ、蓋材にて容器全体を密封した際に収納本体部と収納別体部とが連通されている食品収納保存容器において、収納本体部に炊飯された米飯が収納され収納別体部に酸素吸収剤及び脱臭剤が収納され、蓋材にて容器全体を密封して製造されたことを特徴とする、容器収納保存米飯。

【図1】
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【公開番号】特開2010−120694(P2010−120694A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298873(P2008−298873)
【出願日】平成20年11月22日(2008.11.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】