説明

籾摺風選装置

【課題】
本発明は、粃を籾殻と共に確実に機外に排出することができ、粃を別途取り扱う手間を省ける高能率の籾摺作業を行なえることを課題とする。
【解決手段】
籾摺ロール(2)で籾摺りされた籾と玄米の混合米から籾殻と粃を分離選別する風選部(5)を設け、該風選部(5)は吸引ファン(13)と、吸引ファン(13)に連通する吸引風路(14)と、吸引風路(14)から落下する粃が通過する粃落下通路(18)と、粃落下通路(18)の下部に設ける粃用羽根(21)とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は籾摺した籾と玄米を風選処理する風選装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は籾摺りして発生した籾殻と粃とを風選装置で風選別し、籾殻は機外に排出し、粃は再度籾摺部に戻すか、粃取り出し口から機外に取り出していた。近年、大規模農家が増加し、迅速な籾摺作業のために粃も籾殻と共に機外に排出したいという要望が高くなっている。
【0003】
特許文献1では、粃を吸引ファン側に送り機外に排出するか、粃受樋から取り出すかをするために風量を調節する弁を設ける技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、風量の調節なので、粃の全てを機外排出できるとは限らないという欠点が生じていた。本発明は、風量に影響されず、粃を機外に排出できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明はかかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を構成した。すなわち、請求項1の発明では、籾摺ロール(2)で籾摺りされた籾と玄米の混合米から籾殻と粃を分離選別する風選部(5)を設け、該風選部(5)は吸引ファン(13)と、吸引ファン(13)に連通する吸引風路(14)と、吸引風路(14)から落下する粃が通過する粃落下通路(18)と、粃落下通路(18)の下部に設ける粃用羽根(21)とを設けたことを特徴とする籾摺風選装置とする。
【0007】
これによると、風選部(5)に供給された混合米から籾殻と粃が吸引風路(14)に吸引され、籾殻は吸引ファン(13)にて機外に排出される。吸引風路(14)の粃は粃落下通路(18)に落下するが、粃用羽根(21)で粃を直接粃用羽根(21)で跳ね上げるか、羽根による送風の作用で粃を押し上げるかして、粃を吸引風路(14)に押し上げ、籾殻と共に吸引ファン(13)にて機外に排出する。
【0008】
請求項2の発明においては、吸引風路(14)は吸引ファンケース(13c)の機体前後側にそれぞれ設ける吸引ファン吸引口(13b)に連通する構成とし、粃用羽根(21)の前後幅(v)を吸引風路(14)の前後幅(w)と略同じとしたことを特徴とする請求項1記載の籾摺風選装置とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明においては、粃を籾殻と共に確実に機外に排出することができ、粃を別途取り扱う手間が省け、高能率の籾摺作業を行なうことができる。
請求項2記載の発明においては、吸引風路(14)前後幅全体から落下する粃を直接粃用羽根(21)で跳ね上げるか、羽根による送風の作用で粃を押し上げるかして、粃を吸引風路(14)に押し上げ、籾殻と共に吸引ファン(13)にて機外に排出するに粃をことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】正面から見た籾摺選別機の内部を説明する図
【図2】正面から見た籾摺選別機の要部を示す図
【図3】斜めから見た発明の要旨を示す図
【図4】正面から見た発明の要旨を示す図
【図5】平面から見た籾摺選別機の伝動構成を説明する図
【図6】平面から見た籾摺選別機の伝動構成を説明する図
【図7】斜めから見た別実施例の要旨を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の籾摺選別機について、図面に基づいて説明する。
図1に基づいて籾摺選別機の全体構成について説明する。
機体左右一側には籾を貯留する籾ホッパ1を設け、籾ホッパ1の下方には籾摺ロール2を内装する籾摺ケース3設けている。
【0012】
籾摺ケース3の下方には籾摺されて籾摺ケース3から排出された籾と玄米の混合米を機体左右中央側に移送する横移送樋4を設ける。横移送樋4の移送終端側には混合米から籾殻や粃を選別除去する風選部5を設け、風選部5の機体後方には風選した混合米を揚穀する混合米揚穀機6を設ける。
【0013】
混合米揚穀機6の混合米投げ出し口側には混合米を一時貯留する混合米タンク7を設け、混合米タンク7の下方で、かつ機体の左右他側には混合米と籾を選別する揺動選別部8を設けている。9は揺動選別部8で選別された玄米を機外に排出する玄米揚穀機で、29は揺動選別部8で選別された籾を籾ホッパ1に戻す戻し揚穀機で機体前側に設けている。
【0014】
揺動選別部8について説明する。
揺動選別部8には混合米を籾と玄米とに分離選別する揺動選別板10を多段に設ける。揺動選別板10の上方には混合米タンク7から排出された混合米を受けて移送する混合米移送樋11を設け、混合米移送樋11の移送終端部には移送された混合米を各揺動選別板に分配して供給する分配ケース12を設ける。揺動選別板10と混合米移送樋11と分配ケース12は一体に左右方向に傾斜して設けると共に、機体左右方向に揺動する構成である。揺動選別板10の選別終端側には玄米を仕切って取り出す玄米仕切板26と籾を仕切って取り出す籾仕切板27とを設ける。
【0015】
次に風選部5の構成について以下説明する。
風選部5の上部には風選部5より前後幅が狭く、機体前後方向略中央位置に設ける吸引ファンケース13cと、吸引ファンケース13cの内部に設ける吸引羽根13aとからなる吸引ファン13を設け、吸引ファンケース13cの前後両側面には吸引ファン吸引口13bを設け、吸引ファン吸引口13bは吸引ファンケース13cの下方に形成するは吸引風路14と連通する構成である。
【0016】
横移送樋4の移送終端部近傍には混合米流下板15の流下始端部を設け、混合米流下板15は機体左右中央側に向かって下がり傾斜状に形成する。混合米流下板15の流下終端側には混合米を混合米揚穀機6に向かって搬送する混合米ラセン16を設ける。
【0017】
吸引風路14は第一吸引風路14aと第二吸引風路14bとから構成する。第一吸引風路14aは正面視で上下方向に沿って屈曲して形成すると共に、吸引口kを混合米流下板15の流下始端部の上方に形成する。第二吸引風路14bは第一吸引風路14aの途中部に形成する開口部m近傍に吸引口gを形成し、第一吸引風路14aの吸引終端側と隣接して並行して形成している。
【0018】
第一吸引風路14aの開口部mの下方には縦長の粃落下通路18を設け、粃落下通路18の下端部に粃樋19を形成する。粃樋19には横軸芯に回転する回転軸20を設け、回転軸20には第一吸引風路14aの前後幅wと略同じ前後幅vの粃用羽根21を取り付けている。粃落下通路18に隣接して粃受路24設ける。粃受路24内に粃受筒22を設け、粃受筒22はその上部に粃受開口部22bを形成し、機体正面側に向かって引き出して取り外し、次いで、粃受路24に挿入できる構成としている。
【0019】
23は切換弁で、横軸心の回動動作により粃落下通路18の上端の開口部s又は粃受路24の上端の開口部tの閉鎖を切換できる構成としている。
切換弁23は機体外側に設ける取っ手23aを操作することにより回動操作を行なう。また、粃受筒22は機体外側に設ける取っ手22aにより引き出し操作を行なう構成としている。
【0020】
粃落下通路18の開口部sを閉鎖する側に切換弁23を切り換えると、切換弁23の取っ手23aが粃受筒22の取っ手22aの正面引き出し側に重なる位置に移動し、粃受筒22を引き出せない構成としている。また、切換弁23を粃受路24側を閉鎖する側に切り換えると、切換弁23の取っ手22aが粃受筒22の取っ手22aの正面引き出し側から離れることで、粃受筒22を引き出すことができる構成としている。
【0021】
なお、図2では理解しやすいように吸引風路14にはハッチングを施している。
次に籾摺選別作業について以下説明する。
籾摺作業開始時には籾ホッパ1底部のシャッタ弁30を開くと籾ホッパ1の籾が籾摺ケース3内に流入し、籾摺ロール2で籾摺り作業がなされる。籾摺ロール2を通過して籾殻が取れた玄米と籾摺できなかった籾の混合米が横移送樋4に供給される。横移送樋4で移送された混合米は順次風選部5に供給され、吸引ファン13の作用で吸引風路14に籾殻と粃が吸引される。混合米は混合米流下板15を流下し、混合米ラセン16で混合米揚穀機6に搬送され、次いで、混合米タンク7に一時貯留され、順次定量ずつ混合米移送樋11に供給され、分配ケース12を経て各揺動選別板10に供給される。
【0022】
揺動選別板10で選別され玄米仕切板26で仕切られた玄米は玄米揚穀機9で機外に排出され、籾仕切板27で仕切られた籾は戻し揚穀機29で籾ホッパ1に戻され再度籾摺作業がなされる。
【0023】
次に風選部5における風選処理について以下説明する。
粃を機外に排出するときには、切換弁23を粃受路22側を閉鎖する側に切り換える。横移送樋4から風選部5に供給された混合米から第一吸引風路14aの吸引口kで吸引された籾殻は、前後両側の吸引ファン吸引口13bからそれぞれ吸引ファンケース13c内に流入して吸引羽根13aにより排塵筒13dから機外に排出される。第一吸引風路14aの吸引口kから吸引された粃は自重で開口部mから粃落下通路18に落下するが、粃用羽根21の跳ね上げまたは送風作用により、第一吸引風路14a又は第二吸引風路14bに押し戻され、第一吸引風路14a又は第二吸引風路14bを経て前後両側の吸引ファン吸引口13bからそれぞれ吸引ファンケース13c内に流入し、籾殻と同様に吸引羽根13aにより排塵筒13dから機外に排出される。
【0024】
粃のサンプルを採取するときは、切換弁23を粃落下通路18の開口部sを閉鎖する側に切り換える。すると、粃が粃受開口部22aから粃受筒22内に流入する。サンプルの粃を粃受筒22で採取しているときは、粃受筒22を機体外に引き出そうとしても切換弁23の取っ手23aが粃受筒22の引き出し軌跡上に位置するため、粃受筒22を引き出せない。従って、誤って粃受筒22を引き出して粃が粃受路22内や機外に散乱することを防止することができる。
【0025】
そして、粃のサンプル採取を終了するときには、切換弁23を粃受路24側を閉鎖する側に切り換える。すると、切換弁23の取っ手23aが粃受筒22の引き出し軌跡上から離れる位置に回動することで、サンプルが入った粃受筒22を機体外側に引き出すことができる。
【0026】
本実施例では、不要な粃を機外に排出することで、粃を揺動選別板10で選別したり、再度籾摺ロール2で籾摺りする手間を省き、その分整粒の籾摺、選別する量を増やして籾摺選別能率を向上させ、仕上玄米の品質を向上させる籾摺選別機とするものである。また、粃のサンプルを迅速に取り出し、チェックしやすくしたことを特徴とするものである。
【0027】
図6と図7は別実施例の粃用羽根21の構成を示す図である。
図3及び図5の実施例との相違点は粃用羽根の前後幅vを吸引ファンケース13cと略同じ幅で吸引ファンケース13cと対向する位置に設けている。また、粃樋19の前端部と後端部とにそれぞれ開口部19aを形成し、混合米ラセン16に対向する構成である。
【0028】
この構成によると、吸引された籾殻は吸引風路14から吸引ファン13の機体前後両側の吸引ファン吸引口13bに分かれて吸引ファンケース13c内に流入して機外排出される。
【0029】
粃は、吸引風路14における吸引ファンケース13cの前後幅の外側、すなわち、吸引風路14の前端及び後端部分の内にある粃は吸引ファン13の吸引作用が強く働き、吸引ファン吸引口13bに直接吸引されやすい。吸引ファンケース13cの前後幅内、すなわち機体中央部分に対向する吸引風路14は、吸引ファン13による吸引作用が弱い部分であり、粃は粃落下通路18に落下する。そして、落下した粃を粃用羽根21で粃を直接粃用羽根21で跳ね上げるか、羽根による送風の作用で粃を押し上げるかして吸引風路14の前端部分及び後端部分に送られ、籾殻と同様に吸引ファン吸引口13bより吸引ファン13で機外に排出される。
【0030】
また、比較的大きな粃や一度に多くの量の粃が落下したときは開口部19aから混合米ラセン16に落下し、揺動選別板10で籾として選別され、再度籾摺ホッパ1に戻され、籾摺作業が行なわれる。
【符号の説明】
【0031】
2 籾摺ロール
5 風選部
13 吸引ファン
13b 吸引ファン吸引口
13c 吸引ファンケース
14 吸引風路
18 粃落下通路
21 粃用羽根
v 粃用羽根の前後幅
w 吸引風路の前後幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾摺ロール(2)で籾摺りされた籾と玄米の混合米から籾殻とシイナを分離選別する風選部(5)を設け、該風選部(5)は吸引ファン(13)と、吸引ファン(13)に連通する吸引風路(14)と、吸引風路(14)から落下するシイナが通過するシイナ落下通路(18)と、シイナ落下通路(18)の下部に設けるシイナ用羽根(21)とを設けたことを特徴とする籾摺風選装置。
【請求項2】
吸引風路(14)は吸引ファンケース(13c)の機体前後側にそれぞれ設ける吸引ファン吸引口(13b)に連通する構成とし、シイナ用羽根(21)の前後幅(v)を吸引風路(14)の前後幅(w)と略同じとしたことを特徴とする請求項1記載の籾摺風選装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−67760(P2011−67760A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220960(P2009−220960)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】