説明

粉体およびペースト用の調剤分注装置

粉体またはペーストの形態の調剤材料用に使用できる、本発明による調剤分注装置は、調剤材料を保持する目的のためにハウジングの内側に形成される少なくとも1つのレセプタクル区画を有するハウジングを含む。この調剤分注装置は、弾性材料を備え、調剤材料用の出口を有する少なくとも1つの分注ヘッドをさらに含む。応力のない状態では、すなわちその上に働く機械的な力または圧力がないとき、この出口は外側に対してしっかりと閉じている。力または圧力が加えられるときこの出口は、加えられる力に応じて可変である開口部幅で開口する。さらに、レセプタクル区画および/または分注ヘッドの内側に、それを介して出口を開口させることができる少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状またはペーストのような稠度の物質用の調剤分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の調剤分注装置は特に、例えば有毒な物質の少量の調剤が小さな受け容器内に高精度で分注される用途に使用される。多くの場合、そのような受け容器は、物質が引き続き所与の仕様書に従ってさらに処理できるように、調剤分注装置から排出される物質の重量を測定するために秤の上にセットされる。
【0003】
欧州特許第0527976号に記載される調剤分注装置は、調剤材料用のレセプタクルと弾性材料からなる分注ヘッドを有するハウジングを有する。哺乳瓶乳首のような形状のこの分注ヘッドは、2つの正反対に対向する方向から横方向の力または圧力を加えることによって外側から開けることができるスリット形状のオリフィスを有する。調剤材料の分注中の微粒子のブリッジの形成を防止するために、そのような微粒子ブリッジは、針形状のアクチュエータによって壊すことができる。
【0004】
欧州特許第0527976号に開示されるこの調剤分注装置は、液体、粒、またはほぼ球形であり平滑な表面を有する微粒子を伴う特別な粉体などの良好な自由流れ特性を有する調剤材料にのみ適しているという欠点を有する。粘着性がある、またはその微粒子がその形状のために互いに結合しあう傾向を有する、他の種類の粉体が分注されようとするや否や、アクチュエータでさえほとんど役に立たない。これらの場合に対する解決策として欧州特許第0527976号に記載されているように、この調剤分注ユニットのハウジングは、スリット形状のオリフィスのように両側から一緒に搾ることができる弾性高分子材料から同じように作ることができる。横方向圧縮の結果として調剤材料はレセプタクル区画から押し出され、開口したオリフィスから放出される。この排出モードでは、レセプタクル区画内の空気が圧縮されているとき、特にレセプタクル区画内が材料で完全に満たされていないとき、レセプタクル区画の内側に過圧力が生じる。出口が開口するや否や、この圧縮された空気が出口オリフィスを通る調剤材料を押す。非常に細かい粉体の調剤材料では、これは、排出された微粒子が受け容器内に到達する代わりに広い領域にわたり広がる結果になる可能性がある。余分な清掃労力の他に、これによって有毒な調剤材料の場合、調剤分注装置の周囲が汚染される危険性が作り出される。さらに、撒き散らされる材料に起因する損失の割合は概してランダムなので、材料がこのように振舞うことによって、ミリグラムまたはマイクログラムの範囲での調剤の非常に正確な供給を成し遂げることは困難になる可能性がある。さらに、ハウジングの横方向圧縮は、調剤材料が調剤分注装置から外に供給される代わりに、単に圧縮成型される効果を有する可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、弾性材料から構成される分注ヘッドを有し、調剤材料の流れ特性によって影響を受けない正確かつ汚染のない方式で調剤材料を供給することができる調剤分注装置を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1による調剤分注装置によって満たされる。粉体またはペーストの形態の調剤材料用に使用できる本発明によるこの調剤分注装置は、調剤材料を保持する目的のためにハウジングの内側に形成される、少なくとも1つのレセプタクル区画を有するハウジングを含む。この調剤分注装置は、弾性材料を備え、調剤材料用の出口を有する少なくとも1つの分注ヘッドをさらに含む。応力のない状態では、すなわちその上に作用する機械的な力または圧力が存在しないとき、この出口は外側に対してしっかりと閉じている。力または圧力が加えられるときこの出口は、加えられる力に応じて可変である開口部幅で開口する。さらに、このレセプタクル区画および/または分注ヘッドの内側に、ハウジングの縦方向軸に沿ってハウジングに対して直線移動することができる少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素が配置されている。この少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素によって、少なくともレセプタクル区画の方向から出口の方に向けられ、出口または分注ヘッド上に作用する推進力を発生させることができる。少なくとも1つのアクチュエータ要素を使用して発生させることができるこの推進力で、出口を開口させることができる。
【0007】
したがって、本発明による調剤分注装置は、少なくとも1つのアクチュエータ要素を使用して内側から出口を開口させることができることによって区別される。本文脈での用語「内側(inside)」は、調剤分注装置の、特にハウジングおよび分注ヘッドによって範囲を定められるレセプタクル区画の内部を常に意味する。分注ヘッドが弾性材料を備えるので、この出口の他には、さらなる開口部、スリット、隙間、縫い目、継ぎ目等は必要ない。
【0008】
本発明による調剤分注装置のさらなる発展した実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0009】
この出口は、好ましくは分注ヘッドの弾性材料内に形成される。この弾性材料は、単一の種類の材料または異なる材料、いわゆる複合材料からも構成することができる。これらの複合材料は、例えば充填剤材料を有する高分子の形態、あるいは高分子層および金属層から構成される積層材料の形態さえ取ることができる。さらに、硬さで互いに相違する異なる高分子材料も同様に互いに組み合わせ複合材料にすることができる。この弾性材料は、異なる材料厚さの部分も有することができる。複合材料によって、そしてこの材料厚さに関する設計可能性を利用することによって、分注ヘッドを調剤材料の特性ならびにこの調剤分注装置に最適に合致させることができる。
【0010】
アクチュエータ要素および弾性分注ヘッドに対して適切な設計を選ぶことによって、この2つの要素の間の機械的な連結も行うことができる。2つの要素のこの機械的な連結によって、アクチュエータ要素の直線の変位に応じた出口開口部の能動的制御が可能になる。この能動的制御の結果、出口オリフィスの出口開口部を、したがって調剤材料の供給速度を、非常に正確に制御できるようになる。機械的な連結は例えば、分注ヘッド上に形成される部品、例えば補強材リブ、支柱、突起部、出っ張り等によって少なくとも部分的に取り囲まれる連結器リングをアクチュエータ要素が含む配置によって達成することができる。
【0011】
この連結器リングそれ自体は、出口を通る調剤材料の通過を促進させる様々な形態で設計することができる。例えばこの連結器リングは、鋸刃のようなまたは波形状の外形を有することができる。連結器リングが分注ヘッドに対して回転する能力を有して配置される場合は、連結器リングとリッジが互いに接触するや否や、連結器リングの外形は、例えば分注ヘッドのリッジによる摺動係合を介して決められたコースを辿る。この考え方によって、出口の近傍で分注ヘッドに揺動移動を発生させることができるようになる。
【0012】
上記で述べたように、アクチュエータ要素の力および/または圧力に応答してそれ自体開口する分注ヘッドの出口は、力のかかっていないとき閉じたままであり、力または圧力が加えられるときそれ自体で開口する1つまたは複数のスリットの形態で有利に構成することができる。
【0013】
一例として、交差点の中央点から放射状または星状のパターンで発するいくつかのスリットが存在することができる。
【0014】
さらにレセプタクル区画および/または分注ヘッド内に配置される少なくとも1つの機械的な搬送機手段が存在することができる。この搬送機手段は、出口に向けて調剤材料を前進させる役目をする。これは、調剤材料が常に十分な量で出口への経路内に移動させられ、レセプタクル区画および/または分注ヘッド内での微粒子ブリッジの形成を防止する利点を有する。用語「微粒子ブリッジ」は一般的に知られており、出口が底部部分に配置されるサイロ容器内の微粒子のバルク材料の挙動を意味する。底部近傍での材料の流出中、個々の微粒子は互いに対して押し付けられ、サイロの内側でブリッジを形成する場合があり、その結果、それ以上材料が出口に流れることができなくなる。
【0015】
この少なくとも1つの機械的な搬送機手段は、例えば少なくとも1つのロータおよびステータを含むことができ、このステータは、レセプタクル区画および/または分注ヘッドの内壁に固定して結合され、少なくとも1つのロータは、ステータに対してロータの回転軸の周りを回ることができるように配置される。
【0016】
調剤分注装置の他の実施形態では、この機械的な搬送機手段は、内側ロータと、内側ロータと同軸の、好ましくは反対方向に回転する外側ロータと、場合によってはステータも含む。
【0017】
機械的な搬送機手段がロータ、または内側および外側ロータを含む前述の実施形態では、この1つのロータまたは内側および/または外側ロータは、搬送機スクリューを備えることができ、あるいは少なくとも個々の区画は、搬送機スクリューとして構成することができ、あるいは搬送機翼を装備することができる。搬送機スクリューはしばしば螺旋搬送機またはアルキメデススクリューと呼ばれる。
【0018】
ロータの回転軸、または内側および/または外側ロータの回転軸は、好ましくは分注ヘッドおよび/またはレセプタクル区画の中央長手方向軸に沿って配置される。少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素が少なくとも1つの搬送機手段の一部である場合、機械的なアクチュエータ要素のこの中央長手方向軸は、好ましくは分注ヘッドおよび/またはレセプタクル区画の中央長手方向軸に沿って同様に配置される。
【0019】
レセプタクル区画および/または分注ヘッドから出口に向かって調剤材料を前進させるその機能を実施するのに、ロータ、または内側および/または外側ロータがその回転軸に沿って直線移動で摺動可能である配置によって、この機械的な搬送機手段をさらに支援することができる。
【0020】
このロータが例えば、平滑な内壁表面を有する円筒状のレセプタクル空間内で回転する搬送機スクリューの形状を有する場合は、粘着性の、またはペーストのような調剤材料が中に蓄積し、螺旋スクリューに接着し、螺旋スクリューと一緒に回転し、その結果、出口に向かって前方に移動しない傾向が存在するであろう。上記で述べたステータは、この傾向に対抗する目的を有し、この務めを果たすのに適切であり、内壁表面に対して固定した結合で、または固定した空間的関係で配置される要素を含む。このステータは、例えば少なくとも1つの薄板状のベーンおよび/または少なくとも1つの突起部を有することができる。用語「薄板状のベーン(lamellar vane)」は、例えば溝の間に立ったままにされたラメラを意味し、リブ、案内ベーンおよび連結支柱をも意味する。用語「突起部(projection)」は、全ての種類の凸面体、例えば四面体の突起部またはギザギザ表面のナブを含む。この薄板状のベーン、突起部またはナブは、剛性材料ならびに弾性材料から作ることができる。勿論、このベーン、突起部またはナブも内壁に対して移動可能なように配置することができ、その結果、ロータが一方向に回転しているとき、この突起部が滑らかに内壁に寄りかかることになり、反対向きの回転では、それらは立ち上がることになる。
【0021】
調剤分注装置の一実施形態では、この少なくとも1つの薄板状のベーンは、直線で、分注ヘッドおよび/またはレセプタクル区画の中央長手方向軸に平行に、その縦方向延長部上を移動する。
【0022】
別の実施形態では、この少なくとも1つの薄板状のベーンは、分注ヘッドおよび/またはレセプタクル区画の中央長手方向軸の周りで螺旋状になっている、内部ねじ山に似るように構成される。
【0023】
本明細書で上記で説明したように、このアクチュエータ要素は、その中央長手方向軸(A)に沿って直線移動で摺動できるように配置される。アクチュエータ要素上で出口の閉方向に作用する追加の閉鎖ばねがさらに存在することができる。この閉鎖ばねは、分注ヘッドおよびアクチュエータ要素が互いに連結される場合、分注ヘッドの弾性の自己閉止挙動を助力することができる。さらにこの閉鎖ばねは、出口の偶発的な開口に対するより高い安全余裕を与える。
【0024】
最後に、ロータの、または内側および/または外側ロータの回転ならびに(適用可能な場合)直線移動は、一様な方向にも交互する方向にも行うことができることを述べるべきである。内側および外側ロータを有する実施形態では、2つのロータのうちの1つが休止に設定され、したがってステータまたは追加のステータの機能を果たす可能性がさらに存在する。さらに、回転移動および/または直線移動と重ね合わされる揺動をロータに付与することもできる。これは、ロータおよびステータへの調剤材料の接着を回避するまたは少なくとも妨げる1つの方法を与える。その上これによって、出口オリフィスのリップを揺動に設定するのも可能になる。これは、アクチュエータ要素が中央長手方向軸の方向で揺動移動にかけられる場合と同様である。アクチュエータ要素および搬送機要素がそれらの効果が互いに相殺するように動作させることも可能である。例えば非常に容易に流れる調剤材料の場合、搬送機手段が動作しているにも関わらず、分注工程の終了に向かって出口がアクチュエータ要素によってゆっくりと閉められていることも考え得る。
【0025】
この後本明細書で実施例を介して、ならびに全てが3次元の型式である図面を参照して、本調剤分注装置をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ハウジングと、膜の形態の分注ヘッドと、機械的な搬送機手段と、機械的なアクチュエータ要素とを有する、本発明による調剤分注装置の断面図である。
【図2a】図2aは、スリットの形態の出口と2つの補強材リブを有する膜形状の分注ヘッドの第1の実施形態の図である。
【図2b】図2bは、星形状の出口と3つの補強材リブを有する膜形状の分注ヘッドの第2の実施形態の図である。
【図3】内側ロータおよび外側ロータを有し、機械的なアクチュエータ要素によって能動的に制御される出口を有する、本発明による調剤分注装置の他の実施形態の断面図である。
【図4】機械的な搬送機手段の他の設計と、機械的なアクチュエータ手段とを有する、本発明による調剤分注装置の第3の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示す調剤分注装置1は、調剤材料を保持する役目をするレセプタクル区画の2つの部分3、5を、それぞれ取り囲むハウジング頂部区域2およびハウジング底部区域4から構成される2つの部分のハウジングを有する。ハウジングの頂部区域2と底部区域4を互いに結合できるように、それらはそれぞれ結合部分6および7が装備され、封止部8が結合部分6と7の間に配置される。ハウジング底部区域4の下側に、弾性材料からなり、(ここでは開いた状態で示す)スリット形状の出口10を有する分注ヘッド9が、しっかりと封止された結合で取り付けられている。本明細書での文脈で、「頂部区域」および「底部区域」などの表現は常に、重力の方向に対する部品の位置を意味する。
【0028】
図1に示すように、この分注ヘッド9は、その周囲に沿ってリング形状の出っ張り19を有する平面弾性膜として構成される。このリング形状の出っ張りは、ハウジング底部区域5と保持器リング20の間に形成されるリング形状の溝内にとまりばめで閉じ込められて保持される。これは、膜形状の分注ヘッド9が応力下でその固定した保持から緩んで裂け得るのを防止する役目をする。さらにこの設計によって膜形状の分注ヘッド9をある量の張力の下に設定するのが可能になり、その結果、スリット形状の出口10が最小量の力の下で、例えばレセプタクル区画の底部部分5を充填するとき、早くも開いてしまわないようになる。
【0029】
調剤分注装置1は、ロータおよびステータを有する機械的な搬送機手段を含む。図示の例ではこのロータは、ロータシャフト12に回転的に結びつけられた螺旋状の搬送機翼11を有する搬送機螺旋体である。ステータは、ハウジング底部区域4に対する固定した結合を有する。このステータは、互いに平行に、かつロータシャフト12に平行に配置される薄板状の長手方向リブ13から基本的に構成される。ロータは、ロータシャフト12がハウジングの頂部区域2内の軸受15によって、ならびに螺旋状の搬送機翼11の外側縁部とハウジングの底部区域4内の薄板形状の長手方向リブ13との間の摺動接触によって制約されるので、回転方向および軸方向の可動性を有してハウジングの内側に案内される。ロータシャフト12の上端部の円形の矢印16は、調剤分注装置1の動作中にロータが回転する方向を示し、それによって下向きに向けられた搬送機作用が螺旋状の搬送機翼11を取り囲む調剤材料内に発生する。供給速度はロータの回転速度を変更することによって制御することができ、分注工程はロータを停止させることによって終了する。ロータシャフト12は、両矢印17によって示すようにその中央の長手方向軸Aに沿って上下にも移動可能なので、ロータシャフト12を出口10に向かって押す場合は、ロータシャフト12が回転していないとき、ピストンの作用のように調剤材料を出口10から放出させることも可能である。(図面に示されていない)適切な駆動機構と接続して、この垂直の可動性は、ロータの円運動上に垂直の振動またはシェーキング動作を重ね合わせるためにも使用することができ、このことが調剤材料をほぐし、柔らかな調剤材料で搬送機手段が詰まるのを妨げる役目をする。
【0030】
さらに、機械的なアクチュエータ要素16は、分注ヘッド9の近傍でロータシャフト12に結合される。出口を開口するために、この機械的なアクチュエータ要素18は、出口に向かう方向でその中央長手方向軸に沿って直線の動きで押される。分注ヘッド9およびアクチュエータ要素18が互いに接するや否や、出口10の開口が開始することができる。出口10を閉じるために、このアクチュエータ要素18は、直線の動きで出口10から離れて押される。
【0031】
分注工程を停止させるとき、出口からの圧力を直ちに取り除き、それによって出口がそれ自体を瞬時に閉じさせるために、停止の好ましいモードは、アクチュエータ要素18を後退させ、ロータシャフト12を反対方向に回転させるか、またはロータシャフト12を直線移動で出口10から離して摺動させるかのいずれか、あるいはその両方である。
【0032】
図2aに、スリット形状の出口35と2つの補強材リブ36とを有する膜形状分注ヘッド34の第1の実施形態を示す。図1の説明で既に述べたように、膜形状分注ヘッド34の平らな領域は、リング形状の出っ張り19によって範囲が定められている。補強材リブ36は一方では、出口35の偶発的な開口を防止できるように、膜形状分注ヘッド34を出口の近傍でより剛性にする役目をする。他方では、この補強材リブ36は、図1に示す機械的なアクチュエータ要素のための規定された接触場所としての役目をすることもできる。この補強材リブ36は、分注ヘッド34上に一体で形成することができる。別法として、それらは1つまたは複数の異なる、例えばより弾性の少ない材料から構成し、分注ヘッド34に結合することもできる。さらに、この膜形状分注ヘッド34は、押し下げられた領域37によって示すように、その材料の厚さに変動を有することもできる。その上、前に本明細書で述べたように、この分注ヘッド34は複合材料から構成することもできる。
【0033】
たった今説明した実施形態と比較して、図2bに示す膜形状の分注ヘッド64の実施形態は、それが単一のスリットの代わりに、星形状配置の3つのスリットから形成される出口65を有することによってのみ区別される。このリング形状の出っ張り69は、前述の実施形態のリング形状の出っ張りに対応する。さらに、この星形状の出口65は、3つの補強材リブ66によって強固にされている。リブ66のそれぞれは、アンダーカット67を有し、それがぴったり合った結合によって分注ヘッド64を(図3に示す)機械的アクチュエータ要素に連結する役目をする。これはアクチュエータ要素を使用して出口65を能動的に制御する手段を与える。
【0034】
図2bの実施例の目的は、出口オリフィスの形態は単一のスリット形状の出口に限られず、任意の数のスリットが可能であることを示すためである。勿論、リング形状の出っ張り69は、分注ヘッド64の平坦な領域に対して直角な方向に任意の所望の高さを有するように設計可能であり、それによって本発明による調剤分注装置に同様に使用できるカップ形状の分注ヘッド64が形成される。
【0035】
この分注ヘッドは、例えば軟塩化ポリビニール(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、シリコン、ならびに合成または天然のゴムなどの最新技術の材料のうちの任意のもので作ることができる。さらに、この膜形状の分注ヘッドには使用することができるが、例えば欧州特許第0527976号に開示される分注ヘッドの型式に対しては不適であろうような、他の材料も存在する。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、硬質ポリエチレン、ポリオキシメチレン(POM)、または非常に薄い金属からさえ作られる膜形状の分注ヘッドも使用することができる。
【0036】
図3に、内側ロータおよび外側ロータを有する調剤分注装置101を示す。見れば分かるようにこの装置は、調剤材料用のレセプタクル区画106を一緒に取り囲むハウジング頂部区域102と、ハウジング底部区域103と、ならびに分注ヘッド104とを含む。その星形状の出口105が開口した状態で示されているこの分注ヘッド104は、図2bに示す分注ヘッドにその設計において基本的に対応する。
【0037】
この内側ロータは、内側ロータシャフト108に堅固に結合される螺旋形状の搬送機翼107を有する搬送機螺旋体である。外側ロータは、外側ロータシャフト110に堅固に結合される螺旋形状の搬送機翼109を有する。この外側ロータシャフト110は、ハウジング頂部区域102内の軸受111内に回転可能に支持される中空のシャフトとして構成される。内側ロータシャフト108は、チューブ形状の外側ロータシャフト110の内側に回転可能に支持される。図3の配置では、搬送機翼107は左ねじとして、搬送機翼109は右ねじとして示され、それは搬送機翼107および109が反対に向いたねじ山を有することを意味する。それらの搬送機機能を果たすために、したがってそれらは、ロータシャフト108および110の上端部の円形の矢印113および114によって示されるように、互いに反対に回転するように駆動される。外側ロータの搬送機翼109は、その下端部に内側ロータシャフト108に向かって内向きに突起し、内側ロータシャフト108上で回転可能に支持される軸受116に連結される延長部115を有する。
【0038】
内側ロータシャフト108も、その内部にアクチュエータロッド119が直線摺動移動で案内される中空のシャフトとして構成される。機械的なアクチュエータ要素118がアクチュエータロッド119の下端部に配置される。分注ヘッド104がアクチュエータ要素118に機械的に連結されるように、アクチュエータ要素118の連結器リング120が、図2bで説明した補強材リブ167のアンダーカット内に係合される。補強材リブ167が非弾性材料で作られる場合は、少なくともアクチュエータ要素118は内側ロータ108と一緒に回転できず、これは分注ヘッド104の破壊または少なくとも補強材リブ167の破壊を生じさせるであろうことは明らかである。しかし、補強材リブ167が弾性材料で作られる場合は、これはアクチュエータ要素118の回転を介して、具体的には支持支柱121と補強材リブ167の間の相互作用を介して、出口105の領域内で揺動運動を発生させる可能性を開く。両矢印117によって示すようにアクチュエータロッド119に直線摺動移動を付与する能力によって、およびアクチュエータ要素118が分注ヘッド104に連結されていることによって、出口105の開閉を能動的に制御することができる。
【0039】
しかし、連結器リング120および補強材リブ167は、補強材リブ167に対する支柱121の機械的な作用なしにアクチュエータ要素118と分注ヘッド104の間で相対的な回転が起き得るような方式で構成することもできる。連結器リング120それ自体を、出口105を通る調剤材料の通過を促進できるような異なる方式で設計することができる。この連結器リング120は、例えば鋸刃または波形状の外形を有することができる。連結器リング120が分注ヘッド104に対して回転する自由度を有して構成される場合は、連結器リング120の外形は例えば補強材リブと摺動接触することができ、それによって出口105の領域内で分注ヘッド104の揺動移動も発生させることができる。この構成では、星形状の出口105の個々のセクターが同じ方向に同期して移動することは必ずしも必要ではない。
【0040】
外側ロータシャフト110および内側ロータシャフト108の切欠き図で明らかなように、アクチュエータロッド119を出口105の閉方向に押しやる力をアクチュエータロッド119上に閉鎖ばね112が加えるような方式で、閉鎖ばね112をアクチュエータロッド119および内側ロータシャフト108の間に配置することができる。この閉鎖ばね112は、分注ヘッド104の自己閉鎖弾性挙動を強化する役目をする。さらに、閉鎖ばね112を使用することによって、出口105の偶発的な開口に対するより高い安全余裕を達成することができる。
【0041】
図4は、ロータおよびステータを有する調剤分注装置201を示す。調剤分注装置201のハウジングは、一緒に調剤材料用のレセプタクル区画206を取り囲む、ハウジング頂部区域202と、ハウジング底部区域203と、ならびにスリット形状の出口205を有する分注ヘッド204とを備える。
【0042】
それらの形状および配置でタービン翼のリングに相当する、搬送機翼208を有するロータシャフト207から構成されるロータが、ハウジング内で回転移動で案内され、同時にロータシャフト207がハウジング頂部区域202の軸受212内に保持される方式のために軸方向で制約される。この場合ステータは、案内ベーン210の各リングが搬送機翼208の2つのリングの間の空間内に到達するような方式で、いくつかのリングの形態で同様に配置される半径方向内向きに向けられた案内ベーン210をその内壁209に担持するハウジング底部区域203から構成される。したがって、ロータが回転しているとき、搬送機翼208は、ステータの案内ベーン210間の間隙空間を通りうねる。適切な方向に回転するロータによって、搬送機翼208および案内ベーン210の傾斜した位置の結果はやはり、下向きに向けられる搬送機効果になる。ロータシャフト207の上端部の円形の矢印211は、調剤分注装置201の動作中ロータが回転する方向を示し、それによってレセプタクル区画206内の調剤材料は、下向きに向けられる搬送機作用を受ける。
【0043】
図4の実施形態のロータシャフト207は、その内部にアクチュエータロッド219が直線摺動の動きで案内される中空のシャフトとして同様に構成される。機械的なアクチュエータ要素218が、アクチュエータロッド219の下端部に配置される。両矢印217によって示されるアクチュエータロッド219の直線摺動移動できる能力は、出口105の開口幅を変更する役目をする。さらに、排出速度は開口幅によってのみならず、ロータの回転速度を変更することによっても制御することができる。
【0044】
本発明を特定の実施形態を示すことによって説明してきたが、例えば実施形態の個々の例のうちの機構を互いに組み合わせることによって、かつ/またはこれらの実施形態の個々の機能ユニットを入れ替えることによって、本発明の知識から実施形態の多くの追加の変形形態を作り出すことができることは明らかである。例えば、図2および3に示す分注ヘッドは、図4による調剤分注装置にも使用することができる。同様に、本発明の範囲内で、スリットの配置に関して、あるいは異なる材料または材料の組み合わせの使用に関して、ならびに機械的なアクチュエータ要素を分注ヘッドに連結するための異なるシステムおよび解決策に関して、分注ヘッドのさらなる形態が考え得る。
【符号の説明】
【0045】
201、101、1 調剤分注装置
202、102、2 ハウジングの頂部区域
3 レセプタクル区画の上側部分
203、103、4 ハウジングの底部区域
5 レセプタクル区画の下側部分
7、6 連結部分
8 封止部
204、104、64、34、9 分注ヘッド
205、105、10 出口
109、107、11 搬送機翼、搬送機螺旋体
207、12 ロータシャフト
13 長手方向のリブ、薄板状のベーン
209、14 内壁表面、内壁
212、111、15 軸受
211、114、113、16 円形の矢印
217、117、17 両矢印
218、118、18 機械的アクチュエータ要素
213、69、39、19 リング出っ張り
20 保持器リング
167、66、36 補強材リブ
37 押し下げられた領域
67 アンダーカット
206、106 レセプタクル区画
108 内側ロータシャフト
110 外側ロータシャフト
112 閉鎖ばね
115 延長部
116 軸受
219、119 アクチュエータロッド
120 連結器リング
121 支柱
208 ロータの搬送機翼
210 案内ベーン、薄板状のベーン
A 中央長手方向軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2、4、102、103、202、203)の内側に形成される、調剤材料を保持する目的の少なくとも1つのレセプタクル区画(3、5、106、206)と、弾性材料を備える少なくとも1つの分注ヘッド(9、34、64、104、204)とを有するハウジング(2、4、102、103、202、203)を備え、前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)が、機械的な力がないとき外側に対してしっかりと閉じ、力が加えられるとき可変の開口部幅まで開く出口(10、105、205)を有する、粉体またはペーストの形態の調剤材料用の調剤分注装置(1、101、201)であって、前記レセプタクル区画(3、5、106、206)および/または前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)の内側に、前記ハウジング(2、4、102、103、202、203)に対して、かつ前記ハウジング(2、4、102、103、202、203)の縦方向の軸(A)に沿って直線移動が可能な少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素(18、118、218)が配置されおり、前記少なくとも1つの機械的なアクチュエータ要素(18、118、218)を使用して、少なくとも前記レセプタクル区画(3、5、106、206)の方向から前記出口(10、105、205)の方に向けられる推進力を発生させることができ、前記推進力の結果として前記出口(10、105、205)を開口させることができることを特徴とする、調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項2】
前記出口(10、105、205)が前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)の弾性材料内に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項3】
前記出口(10、105、205)が中に形成される前記弾性材料が複合材料であり、かつ/または異なる材料厚さの部分を含むことを特徴とする、請求項2に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項4】
前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)が補強材リブ(36、66、167)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項5】
前記アクチュエータ要素(18、118、218)が前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)に連結され、それによって前記アクチュエータ要素(18、118、218)の直線の変位に応じた、前記出口(10、105、205)の前記開口部幅の能動的制御を達成することができることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項6】
前記アクチュエータ要素(18、118、218)が前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)に対して回転できる能力を有して配置され、前記アクチュエータ要素(18、118、218)が鋸刃のような外形または波形状の外形を有する連結器リング(120)を備え、前記連結器リング(120)の回転移動中、前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)が摺動係合を介して前記鋸刃のような外形または波形状の外形に従うことができ、前記連結器リング(120)の前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)との接触を介して、前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)に前記出口(10、105、205)の領域内で揺動移動を行わせることができることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項7】
前記出口(10、35、205)が、力のかかっていない状態でスリットの形態を有するように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、201)。
【請求項8】
前記分注ヘッド(64、104)が、力のかかっていない状態で星形状の配置のスリットの形態を有するように構成される出口(65、105)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の調剤分注装置(101)。
【請求項9】
少なくとも1つの機械的な搬送機手段(11、12、13、107、108、109、110、207、208、210)が、前記レセプタクル区画(3、5、106、206)内に、かつ/または前記分注ヘッド(9、34、64、104、204)内に配置され、前記少なくとも1つの搬送機手段(11、12、13、107、108、109、110、207、208、210)が前記調剤材料を前記出口(10、105、205)に向かって前進させるように動作可能であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、201)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの搬送機手段が、少なくとも1つのロータ(11、12、207、208)とステータ(13、210)とを備え、前記ステータ(13、210)が堅固に前記レセプタクル区画(5、206)および/または前記分注ヘッド(9、104、204)の内壁(14、209)に連結され、前記少なくとも1つのロータ(11、12、207、208)が、前記ステータ(13、210)に対して前記ロータの回転軸の周りで回転する能力を有することを特徴とする、請求項9に記載の調剤分注装置(1、201)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの搬送機手段が、内側ロータ(107、108)と、前記内側ロータ(107、108)と同軸の外側ロータ(109、110)とを備え、前記外側ロータ(109、110)の回転方向(114)が前記内側ロータ(107、108)の回転方向(113)に対して反対であることを特徴とする、請求項10に記載の調剤分注装置(101)。
【請求項12】
前記ロータ(11、12、207、208)が、または適用可能な場合、前記内側ロータ(107、108)および/または前記外側ロータ(109、110)が、搬送機スクリュー(11、107、109)を有し、又は少なくとも個々の区域が搬送機スクリューとして構成され、もしくは搬送機翼(208)を装備することを特徴とする、請求項10または11に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのロータ(11、12、207、208)が前記ロータ(11、12、207、208)の中央長手方向軸(A)に沿って直線移動で摺動可能であることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、101、201)。
【請求項14】
前記ステータ(13、210)が、少なくとも1つの薄板状のベーン(13、210)および/または少なくとも1つの突起部を備えることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の調剤分注装置(1、201)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの薄板状のベーン(13、210)が、前記ベーンの長手方向延長部で前記中央長手方向軸(A)に対して平行であるように、あるいは前記分注ヘッドおよび/または前記レセプタクル区画の前記中央長手方向軸(A)の周りをねじ山のように螺旋状になるように配置されることを特徴とする、請求項14に記載の調剤分注装置(1、201)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511706(P2011−511706A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545364(P2010−545364)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063267
【国際公開番号】WO2009/100782
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】